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糸状菌のα-1,3- グルカン合成酵素

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Academic year: 2021

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350 生物工学 第96巻 第6号(2018) 著者紹介 琉球大学農学部亜熱帯生物資源科学科発酵・生命科学分野(准教授) (PDLOPL]XWDQL#DJUXU\XN\XDFMS Aspergillus属糸状菌は,糸状に伸びた菌糸を形成し, さらにその菌糸を分生子(無性胞子)柄および分生子と いった細胞へ分化させる能力を持った多細胞微生物であ る.いわゆるカビであるが,この属には,清酒や味噌, 醤油などの発酵に役立つ麹菌(Aspergillus oryzae)も含 まれる.Aspergillus属糸状菌の細胞壁は複数種の多糖 や糖タンパク質から成るが,主たる構成要素の一つとし てĮ-1,3-グルカンがあげられる.Į-1,3-グルカンは,そ の名の通りグルコースがĮ-1,3-グルコシド結合したホモ ポリマーで,Aspergillus属糸状菌の細胞壁中には,数% 程度のĮ-1,4-グルコシド結合も含む状態で存在する.そ の生合成機序に関する詳細は長らく不明であったが, 2005年に病原性糸状菌であるA. fumigatusにおいて,細 胞壁Į-1,3-グルカン合成酵素(Ags)の存在が初めて報 告されて以来,同酵素遺伝子の遺伝学的解析が大きく進 展している.当初は,A. fumigatusにおけるags遺伝子 の破壊,および得られた遺伝子破壊株の表現型解析から, Į-1,3-グルカンは糸状菌の形態形成に関与していると考 えられていた.しかしながら,その後のより詳細な解析 から,現在では形態形成には関与していないことが,複 数のAspergillus属糸状菌で報告されている1,2) .本稿で は,近年の細胞壁Į-1,3-グルカンやその合成酵素の研究 動向,および進捗を紹介したい. Aspergillus属糸状菌は,そのゲノム内に複数のags遺 伝子を保持する場合が多い.また厄介なことに,種間で 遺伝子数が異なっていたり,オルソログ間での名称が統 一されていなかったりするため,この分野を勉強しよう とする際の壁となっている.吉見らは,Aspergillus属 糸状菌のAgsオルソログを,そのアミノ酸配列情報を基 にした系統解析を行うことで,体系的に再分類した3). その一例を表1に示した.モデル糸状菌の一つであるA.

nidulansは,二つのags遺伝子(agsAagsB)を持つ.

agsB破壊株では,細胞壁Į-1,3-グルカン含量の顕著な

減少が認められた.しかしながら,寒天培地上では,

agsB破壊株,agsA agsB二重破壊ともに親株と同等の

生育,および形態形成能を示した.一方で,agsB破壊 株を液体培地で培養すると,菌糸が凝集せず完全に分散 するという表現型が観察された.これは,Į-1,3-グルカ ンが細胞壁表層に局在しており,その生物物理学的な性 質として凝集性を示すためと考えられる4) . 有用タンパク質生産にも広く用いられるA. oryzae

三つのags遺伝子(agsAagsBagsC)を持つ(表1). これら遺伝子をすべて破壊した三重破壊株を寒天培地上 で培養すると,A. nidulans agsB破壊株と同様に,その 生育は親株と同程度であった.液体培養でも菌糸の凝集 性が低下したが,A. nidulansで観察されたような完全 分散にまでは至らず,三重破壊株は親株よりも小さな菌 糸塊を形成した.しかしながら,分散性の増加に伴う菌 糸塊サイズの減少により菌糸塊表面積が増え,好気代謝 を行う細胞が増加した結果,菌体量が増加し,さらにタ ンパク質(クチナーゼ)の生産性も著しく向上した5) . 従来は,菌糸がジャーファメンターの撹拌子に絡まった り,あるいは撹拌子に切断されたりすることで,糸状菌 の高密度培養は非常に困難であった.ags遺伝子が破壊 された麹菌を用いることで,さらなるタンパク質高生産 が可能になると期待される.加えて,A. oryzaeの細胞 外多糖として知られるガラクトサミノガラクタンも菌糸 の凝集に関与しており,Į-1,3-グルカンとガラクトサミ ノガラクタンの両方を欠損させると菌糸が完全分散する ことが観察されている6) . 一方,Ags酵素の活性測定系は未だに確立されておら ず,酵素タンパク質そのものに対する生化学的な研究の 進展が強く期待される.Į-1,3-グルカンは,ヒト免疫細 胞に認識されないステルス機能を有している.また, Į-1,3-グルカンの加水分解物である二糖類(ニゲロース) は,食品に芳醇なコク味を形成させる糖質として知られ ている.そのため,Ags酵素が自由に扱えるようになれ ば,人工的なĮ-1,3-グルカン合成やそのオリゴ糖の生産 が進み,医療や食品業界での利用が活発化していくもの と期待される.当該研究分野の今後のさらなる発展が注 目される.

1) Yoshimi, A. et al.: PLoS One, 8, e54893 (2013).

  +HQU\&et al.: Eukaryot. Cell, 11, 26 (2012).

3) Yoshimi, A. et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 80, 1700 (2016).

4) Fontaine, T. et al.: Fungal Genet. Biol., 47, 707 (2010).

  0L\D]DZD . et al.: Biosci. Biotechnol. Biochem., 80, 1853 (2016). 6) 宮澤 拳ら:糸状菌分子生物学コンファレンス要旨集, P-28 (2017).

糸状菌の

Į-1,3-

グルカン合成酵素

水谷 

表1 各種Agsの相同性によるグループ分け A. nidulans

$JV$JURXS A. nidulans $JV%JURXS A. fumigatus $JVJURXS その他

A. nidulans AgsA AgsB

A. fumigatus Ags2 Ags1 Ags3

A. oryzae AgsA AgsB AgsC

参照

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