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知られざる計算機:10.並列推論マシン PIE

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Academic year: 2021

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(1)田中 英彦. 東京大学大学院情報理工学系研究科 教授. [email protected]. 当時:東京大学工学部 教授. 網で,負荷分散をする場合,IU それぞれが自分の忙し さを提示することにより,それが最小の IU へ自動的に 負荷が配送される機能(坂井が考案した)を備えており, 第五世代計算機プロジェクトが 1982 年に始まったと. 高橋栄一がその特殊スイッチを開発した. IU は,論理型言語処理に特有の Unification や Reduce. き,東京大学工学部元岡・田中研究室でも並列論理型 言語やその処理機械の研究を開始していた.それは,. 処理を高速に実行するとともに,コンテキストの切り. 言語 Prolog を OR 並列処理するもので,処理モデル,処. 換えがクロックごとに変更可能なハードウェアで,島. 理系,推論専用ハードウェア(PIE-I, PIE-II, PIEEE),お. 田健太郎の開発した UNIRED を備えており,そのロー. よび構造記憶などの研究に結実し,相田仁,後藤厚宏,. カルメモリは他の 63 台すべてからも結合網経由でアク. 坂井修一,丸山勉,平田圭二らが推進した.. セス可能である.この多重コンテキスト処理機構は,. 1985 年に元岡達教授は逝去したが,その研究は大幅. 結合網を経由したリモートデータアクセスの遅延によ. な変更を加えて田中研究室で続行された.ICOT の上田. る性能低下をほとんど解消している.また IU には,負. 和紀の開発した言語 GHC の簡易版として M.Nilsson が. 荷分散を含め,他 IU との通信を司る,清水剛の開発し. 開発した言語 Fleng への切り換えと,それに伴う処理モ. た Network Interface Processor NIPと,制御プロセッサ. デルの変更を行い,ソフトウェアを含む専用マシン全. としての Sparc が載せられている.これら UNIRED,. 体の開発計画が立てられた.研究は 1986 年より始まり,. NIP のほか,結合網のスイッチチップを併せて 3 種が. 1987 年には文部省科学研究費特別推進研究「大規模知識. 1.2µ CMOS ゲートアレイで作成された.マシン PIE64は,. 処理システムの研究」の研究費を得て,具体的なマシン. ポート当たりそれぞれ 40MB/s のスループットを持つ結. の開発が進められた.処理モデル開発の後,ハードウ. 合網(転送遅延は 80 クロック)2 セットを囲んで 64 枚の. ェアアーキテクチャの概要設計を小池汎平が担当して,. IU が配置され,10MHz で稼働した.. 3 種類のチップ開発,マシン組み上げ,デバッガ・モニ. である.. -1 はその全体像. タ・コンパイラ・粒度制御用ランタイムシステムなど の諸ソフトウェア開発を経て,1993 年にハードウェア が日高康雄の長年にわたる努力で完成し,1994 年に稼 処理対象の言語は,コミッテドチョイス型言語 Fleng. 働を始めた.. で,高速で効率よい実装が可能であり,単純で理解し やすい特徴を持っている.コンパイラは,UNIRED の アセンブリコードを出力し,それを変換することで 最終の開発マシン PIE(Parallel Inference Engine)は, PIE64 と呼んでいるが,Inference Unit(IU)と称するプ ロセッサが 64 台,2 つの結合網により接続された形をし ている.結合網は,それぞれ 8bit 幅 64 ポートのガンマ 43巻2号 情報処理 2002年2月. −1−. PIE64 のネイティブコードが得られるが,静的な負荷分.

(2) クポイントを設定し,プログラムコー ドを効率よくブラウズすることができ る.さらに,実行性能をチューニング するために,プログラム作成者の書い たプログラムを仮想的なクロックで実 行し,その並列実行状況を提示して処 理ネックを明示し,プログラムの変更 に対するヒントを提示する機能を備え ている. PIE は分散型メモリシステムである が,それに実装されたガーベッジコレ クション手法は,小池が開発した Generation Scavenging GC であり, -1 PIE64. オブジェクトの寿命を考慮し,擬実時 間的に動作可能となっている.これら. 割機能を持ち,対応するランタイムシステムは,動的. のほか,メッセージの並列解釈を行うストリーム向き. 負荷分割機能を備えている.コンパイラは中田秀基と. オブジェクト指向言語 Fleng++ も中村宏明,吉田実によ. 馬場恒彦が担当したが,システムの負荷が高い(実行並. って開発された.. 列度が高い)状況に適した細粒度のコードと,負荷が低 い状況に適した疎粒度コードの 2 つを出力し,ランタイ ムシステムが実行時の状況に合わせてコードを動的に 切り換えることにより,システムが常に最適な状態で. PIE のプロセッサの中核は UNIRED である.それは. 稼働するような工夫がされている.この機構は,バン. 4 つのコンテキストそれぞれに 32 個の汎用レジスタが用. バン粒度制御機構と呼んでおり,日高の考案開発した. 意されており,合計 128 個の汎用レジスタを持っている.. 方式であるが,一般に低負荷状態では静的分割が有効. 命令セットは,論理型言語処理に向いたものとして設. で,高負荷時は動的負荷分割が有効であり,これらを. 計され,73 命令からなる.SPARC と比較すると,同じ. 動的に切り換えることが可能なシステムとなっている.. プログラムを書くのに,ほぼ 1/4 のコードサイズで. この工夫は,並列処理に求められる 3 つの要求,並列性. 済む.. を最大限に抽出すること,負荷のバランスをとること,. また,処理速度は,33MHz の SPARC と比較して 1.3. 通信オーバーヘッドを減らすことを同時に可能ならし. 倍速く,これは,同じクロックにすれば,3.9 倍となる.. める方策として考えられた.また,もともとのコンパ. 総合性能として,UNIRED は 10MHz の実装で,1 台あ. イラの出力するコードは処理粒度がかなり小さいので,. たり 920KRPS(Kilo Reductions Per Second)を達成し,. そのまま処理するとオーバーヘッドが大きい.そこで,. 64 台で,実測性能 58MRPS を出した.また利用可能な. 小さなゴールをまとめて大きくする工夫を備えたコン. IU が 1 台の時と,64 台の時とで,1 つのプログラム実行. パイラを荒木拓也が開発した.. を比較すると,スーパーリニアとなる場合がある.こ れは,64 台実行では,使える主記憶が 64 倍となり,GC. システムの支援ソフトウェアとしては,HyperDEBU. の実行時間が著しく小さくなるためであった.. と呼ぶデバッガが舘村純一によって開発された.これ. 2001 年 8 月現在,PIE64 の本体はいまだ稼働状況に. は,Fleng のように複雑な多重の制御/データ流を持つ. ある.. プログラムを,効率よく調べたり操作したりするため のもので,制御ビュー,データ流ビュー,実行スナッ. 1) Tanaka, H. ed.: Parallel Inference Engine − PIE − , Ohmsha IOS Press (2000). (平成13 年9 月14 日受付). プショットなどの形で,見たいところへ効率よくズー ムインする機構を備えるとともに,並列実行にブレー. IPSJ Magazine Vol.43 No.2 Feb. 2002. −2−.

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