中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析 : 「柔軟性」と「安定性」の分析枠組より
26
0
0
全文
(2) 20. (382). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). でも企業の取組みは幅広い制度から構成されて. ついて,佐口(1972)は,企業福祉を社会保障. いる.例えば,従来から推進されていた育児休. とは一線を画すものとして,その社会的位置づ. 業制度や短時間勤務制度などの「両立支援策」 ,. けを明らかにした.武川・佐藤(2000)は,生. フレックスタイム制度や裁量労働制度,在宅勤. 活保障の一つの手段として企業福祉を位置づ. 務制度などの「柔軟な働き方のための支援策」 ,. け,「企業保障」と称した.次に,藤田(1997). 長時間労働の削減や年次有給休暇の取得促進な. は,企業福祉と社会保障の一般関係について論. どの「働き方の見直し策」が企業の取組みとし. じ た.そ し て,橘木(2005),西久保(2007). て挙げられる.その他に,若年層の失業対策や. は企業の社会保障費負担(法定福利厚生費)と. 非正規労働者の雇用問題への対応も WLB 促進. 企業福祉費負担(非法定福利厚生費)との関係. 政策の一環とされている.. の推移から,企業福祉の変化の方向性について. 上記の制度の中で,育児休業制度や短時間勤. 検討 し た4).さ ら に,西久保(2009a)は 企業. 務制度,有給休暇制度などは,企業が企業福祉. 福祉の方向性について “企業福祉の「社会化」”. の一環として推進してきた福利厚生制度にも含. ともいえる変化が進んでいると論じた.. まれる.時代ごとに企業福祉の役割は変わって. その他に,企業福祉の各制度について,社会. おり3),平成時代の少子高齢化や長期経済停滞. 保障との関連から分析を行った研究もある.丸. の下では,企業福祉の内容の見直しが迫られて. 山(1997)は育児休業制度・介護休業制度の問. い る.例 え ば,西久保(2009a)は,現段階 で. 題点について,費用負担という視点から検討を. は社宅や独身寮などの施設型の「ハコモノ」施. 行い,育児休業制度の場合では企業に負担が重. 策から,健康や働き方などに関連する「ヒトモ. くなっていることを明らかした.特に,育児休. ノ」施策へと重点を変える意向が高まっている. 業制度を利用する可能性が高い若い女性労働者. と指摘し,企業福祉の「社会化」が進んでいる. を多く抱える企業ほど,その負担が重くなるた. と分析している.高度成長期の「会社人間モー. め女性労働者の採用を手控えるという,制度本. ド」に立脚した福利厚生制度を「WLB モード」. 来の目的とは正反対の現象が起こりうる可能性. に切り替えることで,改めて企業の競争力を強. を 示唆 し た.西久保(2009a)は,企業福祉 の. 化しようとする動きが近年見られる(西久保. 個別制度の動きについて分析を行い,企業は施. 2009b:3) .ま た,少子化・家族 の 変化(共働. 設型施策からの撤退意向が明確に現れ, 「メン. き世帯の増加)は「従来の福利厚生に WLB を. タルヘルス」や「自己啓発支援」に代表される“ヒ. 統合 し,CSR(企業 の 社会的責任:Corporate. トモノ” への投資意欲が観測されたという結論. Social Responsibility)にも配慮した今日型の. を得た.. 福利厚生を登場させている. 」 (藤田 2007:1)と. 以上の企業福祉論は,企業が行う福祉の費用. いう議論もある.. 負担に着目した研究であり,近年の法定福利厚. 企業福祉論については,企業福祉と社会保障. 生費の負担増により,非法定福祉厚生の実施に. 制度との関係の変化を問うという観点からの研. 制約がかかってくることについて論じた.西. 究が挙げられる.まず,企業福祉の位置づけに. 久保(2009b)や藤田(2007)の論じるように WLB の施策が今日型の福利厚生に切り替える. . 3)企業福祉論に見る企業の役割の変化は,「代 替」役割 か ら「補完」役割 へ,そ し て「任意的補 完」役割 か ら「強制的補完」役割 へ 変 わって き て いると整理できる.その内容については,韓(2011) を参照.. と,企業福祉の「社会化」による法定福利厚生 . 4)社会保障制度 の 成熟化 は,企業 の 法定福利 厚生費の企業負担の増加をもたらし,非法定福利 厚生費の縮小や撤退を招いている..
(3) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). (383). 21. への負担感はさらに増えることになる. しかし,. によって測定し,企業における WLB 取組みの. 近年,企業では従業員の WLB のための取組み. 充実度9)と財務パフォーマンス,職場生産性の. は経営上のコストではあるが,重要な支出にな. 間にプラスの相関関係が成立すると立証して. ると考えて WLB 制度を導入していく企業も少. い る.武石(2007)は,WLB 施策 と 従業員 の. なくない.このように企業福祉としての WLB. モチベーションとの関連について分析を行い,. 制度が導入されれば,その運用面への分析が課. 「WLB 施策の定着を進める企業において従業. 題になるだろう.. 員のモチベーションが高まる」,「WLB が実現. 近年の WLB 論については,企業の人材確保. している従業員はモチベーションが高い」とい. や 生産性 の 向上 と いった 人事・経営戦略的 な. う結論を得た.. 観点から,WLB の重要性を強調した研究が挙. 上述の企業福祉論及び WLB 論の多くは,費. げられる5).その代表的な議論はワーク・ライ. 用または企業業績といった企業経営戦略の観点. フ・シナジー論である.この議論では,WLB. と結び付けて分析する傾向がある.すなわち,. の推進と企業業績との関係は対立的なものでは. WLB の取組みへの投資は,優秀な人材の確保,. なく,むしろ企業にとってプラスの相乗効果を. 従業員の定着率の向上,従業員の働く意欲の向. もたらすと論じている.代表的な研究には,坂. 上,業務運営の効率化といった 4 つの経路を通. 爪(2002) ,阿部・黒澤(2006) ,脇坂(2006,. じて,生産性の向上,企業業績の向上に結び付. 2007,2008,2009) ,武石(2007) ,佐藤・武石. くという考え方である.こうした観点は,WLB. (2008)の 実証研究が挙げられる.その中で,. の推進において確かに欠かせない重要な論点で. 坂爪(2002)は,先駆的研究 と し て,ファミ. ある.しかし, このような研究では従業員の「効. リー・フレンドリー施策が組織のパフォーマン. 用」あ る い は「福祉」の 視点 か ら,WLB 制度. スに与える影響について検討を行った.分析の. を分析することはあまりなされていない.. 6) 結果, 「多様性ファミリー・フレンドリー」 は,. ただし,先行研究の中には,従業員の「福祉」. 働きやすさに対してプラスの影響を与え,企業. について個々人の「多様なニーズ」に着目した. の経営利益をプラスの方向に変化させるという. 研究もある.脇坂(2008)は,企業戦略として. ことを明らかにした.脇坂(2006,2007,2008,. の WLB について議論しつつも,従業員のニー. 2009)は,企業 の WLB の 取組 み を「男女均等. ズについて次のように論じている10).すなわち,. 7) 8) 推進度」 と「ファミ リー・フ レ ン ド リー度」. WLB の考え方の特徴は,従業員に対して一律. . 5)企業の経営戦略的な観点の以外に,男性の育 児参加促進の視点から WLB にアプローチした研 究もある.坂本(2002),松田(2002,2006),佐藤・ 武石(2004),大沢(2006)が挙げられる.松田(2002, 2006)は,男性の育児参加の規定要因について分 析を行い,「労働時間が長い場合,父親の育児参加 が減少する」という結果を示している.坂本(2002), 佐藤・武石(2004)は 男性 の 育児休業取得率 が 低 い原因について考察し,「多くの職場では,男性は 育児休業を取得しにくい」と指摘している. 6)「多様性 ファミ リー・フ レ ン ド リー」と は, 就業形態や勤務形態における多様性や柔軟性に関 するものである. 7)「男女均等推進」度とは,男女が同等に活躍 できるような組織風土が整っていることである.. 的に行われる所定の労働時間の短縮,休暇日数 の増加,残業手当の割増などだけではなく, 「従 . 8) 「ファミリー・フレンドリー」度とは,家族 にやさしい仕事と家庭の両立支援制度が整ってい ることである. 9)WLB 充 実 度 と は, 「男 女 均 等 推 進 度」 と 「ファミリー・フレンドリー度」の度合いが高いこ とを指している. 10)脇坂(2008)は WLB の考え方の二つの特 徴について説明している.一つは,企業と従業員 が「Win─Win」の関係であるべきだという考え方 である.もう一つは, 「従業員のニーズ」に沿った 施策を企業が戦略的に導入するべきだという考え 方である..
(4) 22. (384). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). 業員個々のニーズ」に沿った施策を企業が戦略. わち,それは社会の枠組みの中で,その人が持っ. 的に導入するという考え方である.また,大森. ている資源で何ができるかという可能性を表. (2010)は,経済的な観点から,個人が多様な. し,「選択可能性の幅」として捉えられる.「潜. 選択肢から個人の効用を最大化する選択ができ. 在能力」が大きいほど,価値ある選択肢が多く. るとき,個人の WLB が達成されると論じてい. なり,行動の自由も広がる.この意味で,「潜. る.すなわち,従業員は経済合理的に行動する. 在能力」は「自由」と密接に結びついた概念で. 個人であり,異なるライフスタイルを持ち,異. ある.「潜在能力」の視点は,「機能」そのもの. なるライフサイクルの段階にあるその個人が,. よりも,人が「機能」を達成するにあたって選. 自らの効用を最大にしようとする選択を行うと. 択の自由を行使できる実質的な機会をどの程度. いう考え方である.以上の研究で,従業員の「福. 有するかにより重点がおかれている.. 祉」について「多様なニーズ」に着目した観点. このような「潜在能力」の視点からみれば,. は重要なポイントではある.しかし, 「多様な. WLB に関わる「潜在能力」が高いということ. ニーズ」に沿った施策を導入することだけで,. は,WLB 制度を利用するにあたって自由度が. そのニーズが満たされたと言えるのか,個人が. 大きいということと同義である.人々は WLB. 多様な選択肢から自らの効用を最大にする選択. のためのニーズが発生したとき,WLB 制度を. ができるためには,どのような条件が必要にな. 自由に利用することで仕事と生活の調和を実現. るのかといった問題についてはあまり論じられ. することができる.個人が制度を利用すること. ていない.では,どうすれば「多様なニーズ」. の自由があるということは,それだけ WLB 制. を持っている個人の効用を最大にすることがで. 度が利用しやすいことを意味する.. きるだろうか.. しかし,WLB の取組みがなかなか進まない という状況,特に従業員にとって WLB 制度が. 2 本論文の視点. 利用しにくい現実に鑑みると,制度が利用でき. 本論文では,WLB に向けた個人の選択の「自. る「自由」が欠けていると考えられる.例えば,. 由」を企業が保障することにより,個人は効. 育児休業制度は,女性にとってはある程度利用. 用を最大化し,WLB が達成できると考える.. しやすい制度として定着してきたが,男性に. WLB の推進のポイントは,個人が WLB のた. とってはまだ利用しやすい制度とは言い難い12).. めに使用する諸制度をいかに利用しやすくする. これは男性が育児休業を自由に選び取ることが. かにある.. 難しく,「潜在能力」の視点からみれば,男性. そのため,本論文では「ニーズ」だけでなく,. の「潜在能力」の欠如を意味する.制度を利用. 制度を利用することができる選択の「自由」に. したい人が利用しにくいということは,「ニー. 11) 着目する.選択の自由について, 「潜在能力」. ズ」のある制度が設けられているにも関わらず,. というアマルティア・センの理論を参考にす. 選択できる「自由」が不十分であることを表す. る. 「潜在能力」とは,ある人が選択すること. のである.. ができる「機能」 (ある状態になったり(being) ,. 以上より,単に従業員の「ニーズ」に沿った. 何かをすること(doing) )の集合である.すな. 制度を企業の経営戦略として導入するだけでな く,人々の「潜在能力」を高める選択の「自由」. . 11) ア マ ル ティア・ セ ン(1999) が 論 じ る 「潜 在 能 力」 ア プ ローチ は,「エージェン シー」 (Agency),「機 能」(Functioning),「潜 在 能 力」 (Capability)の 3 つの主要概念から構成される.. . 12)厚生労働省 が 発表 し た 2011 年度雇用均等基 本調査によると,女性の育児休業率は 87.8% である のに対して,男性の育児休業取得率は 2.63% である..
(5) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). (385). 23. を保障するという視点も WLB の取組みに入れ. も,フォーマルな制度とインフォーマルな制度. 込む必要がある.. の両面から把握することができる.さらにいえ ば,現在,WLB 取組みの施策として取り上げ. 3 本論文の分析枠組. られている制度には,育児・介護休業制度や短. 本 論 文 で は, 個 人 の「ニーズ」 に 沿った. 時間勤務制度などの法律で定められたものと,. WLB 制度が利用できる「自由」を企業が保障. フレックスタイム制度や在宅勤務制度などの働. 13). す る と い う「企業保障」 の 観点 か ら,WLB. き方の柔軟性に関する,企業が自主的に制定し. 制度の分析方法を提示する.まず,WLB の取. たものとがある.しかし,このような制度は,. 組みの制度について概観し,その諸制度を利用. 導入するだけで必ずしも効果をもたらすわけで. しやすくするための制度の組み合わせを探る.. はなく,実際にその制度が利用され機能しなけ. そして,その制度の組み合わせを分析枠組とし. ればならない.. て実証分析を行う.. フォーマルな制度が機能することを支えるイ. ⑴ WLB 制度とは. ンフォーマルな制度もセットで考える必要があ. WLB とは個々の施策あるいは制度を表した. る.例えば,法律で定められた育児・介護休業. 言葉ではなく,到達すべき状態を表している.. 制度,短時間勤務制度や柔軟な働き方のための. そこで,その状態の実現に向けた施策や制度の. フ レック ス タ イ ム 制度,在宅勤務制度 な ど は. 制定が求められ,実際に近年では育児・介護休. フォーマルな制度に近い.一方,これらの制度. 業制度や働き方の柔軟化などにかかわる各種の. を利用しやすくするための運用面での対応とし. 制度の設置が進められている.ただし,WLB. て考案された代替要員制度,有給休暇取得の促. の実現のためには,法律や企業内規則のような. 進策などはインフォーマルな制度に近い.. 公式の制度の導入だけでなく,働き方の見直し. それでは,企業はどのような制度の組み合わせ. や制度の利用環境の改善を含めた運用が重要で. を実施すれば,従業員のワーク・ライフ・コンフ. ある.. リクトを緩和できるのだろうか.あるいは,従業. では,制度とは何か.ノース(North(1990) ). 員は WLB 制度を利用しやすくなるのだろうか.. によれば,制度とは社会におけるゲームのルー. ⑵ WLB 制度の分析枠組:「柔軟性」と「安定性」. ルである.そして,社会における制度の主要な. WLB を図るための取組みを推進するために. 役割は,人々の相互作用に対する安定した構造. は女性だけでなく,男性も含めたすべての人の. を確立することによって不確実性を減少させる. WLB が実現できる制度設計が要求される.そ. ことである.その際,制度はフォーマル(例え. の際に,個人の多様なニーズに対応できる「柔. ば,人が考案するルール,政治・経済制度など). 軟性」を高めることが一つのキーワードとなっ. でもあり,インフォーマル(例えば,慣習や行. て い る.例 え ば,WLB 研究 で 代表的 な 山口. 為コードなど)でもありうる.. (2009a)は,WLB 社会を達成するための働き. このロジックに従うと,WLB のための制度. 方における時間的柔軟性について論じている14).. . . 13)個人の WLB を保障する主体として,国家, 企業,家族がある.しかし,個人の WLB を実現す るための働き方の問題は,働く場としての企業の 保障抜きでは論じることができない.そこで,本 論文では企業に焦点を当てる.国家や家族の役割 に関する議論も重要であるが,本論文の主要な議 論の対象ではない.. 14)山口(2009a)は,WLB 社会を達成するキー ワード と し て, 「柔軟性」以外 に「多様性」 , 「時間 の質」を提起している. 「多様性」とは,人々が多 様なライフスタイルやライフ・プランニングの選好 を持つこと, 「時間の質」とは,プライベート時間 の質とその満足感,労働生産性というものを時間単 位でみたときの時間の質であると解釈している..
(6) 24. (386). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). この「柔軟性」を担保するためには一定の「安. る発想である.. 定性」が必要となってくる(韓 2011:64) .な. 欧州委員会 は 2007 年 6 月 27 日,「柔軟性 と. ぜなら,企業が従業員の多様なニーズに沿った. 保障を通じてより多くの,より質の高い雇用. 「柔軟な働き方」のための制度を増やし,対象. を 創出 す る フ レ キ シ キュリ ティの 共通原則」. を拡大しただけで,従業員の WLB が実現され. ( Commission of the European Communities. るとは言い難いからである.例えば,企業が働. 2007)を提案し,フレキシキュリティこそが成. き方において,柔軟性を持つ裁量労働制度や在. 長と雇用の機会をグローバル化から引き出すた. 宅勤務制度を導入しただけで,従業員のニーズ. めの EU にとっての最善の方法であることを強. に応えたとは言えない.その制度が実際に機能. 調した.「フレキシキュリティの共通原則」に. しない限り,有名無実な制度になる.また,男. おいては,フレキシキュリティが企業,労働者. 性にとって育児休業制度などの諸制度が利用し. 双方に利益をもたらす可能性があることを強調. にくいのは,休業による収入の減少や処遇的評. し,柔軟性と保障は対立的ではなく相互に促進. 価が懸念されるからである.このように,男性. 的な補完的関係15)を構築しているとして以下. 従業員の「柔軟な働き方」を実現するには,彼. のように述べている.. らの経済的安定や昇進機会を安定的に保障する. 「フレキシキュリティは,労働市場において. ような支援策が合わせて必要である.そこで,. 柔軟性と保障を同時に高める統合的戦略として. 本論文では「柔軟な働き方」のための「柔軟性」. 定義することができる.柔軟性は,労働者が仕. 系制度だけでなく,その制度が実際に機能し従. 事を替えたり,移ったりすることを容易にする. 業員が安心して働けるような「安定性」系制度. ことを目的としており,企業以外の異動と同一. もセットで考えることを WLB 制度の枠組とし. 企業内の異動のフレキシキュリティを対象とし. て提示する.. ている.他方,保障は,労働者のみならず,企. この「柔軟性」系制度と「安定性」系制度の. 業にも安定を提供する.労働者の技能が向上す. 2 軸は,これまで主に EU において雇用戦略と. ることで,雇用主にとっての安定と利益も高め. して議論されてきた解雇,失業中心の「フレキ. 16) られる」 .. シキュリティ」 (flexicurity)論を援用したもの. 「フレキシキュリティ」論の中で「柔軟性」は,. である.北欧をはじめ EU や OECD 諸国では,. マクロ・ミクロレベル17)のいずれにおいても,. 解雇や失業問題の一つの解法として, 「フレキ. 空間的異動に着眼点を置いているが,本論文で. シキュリティ」の雇用戦略を掲げている.フレ. 扱う「柔軟性」とは,働き方における空間的柔. キ シ キュリ ティと は,労働市場 に お け る「柔 軟性」 (flexibility)と 労働者 へ の 生活「保障」 (security)を結合した造語であり,1990 年代 におけるデンマークとオランダの労働市場改革 の成功を特徴づける用語として知られている. ここ で い う「柔軟性」とは,労働市場,雇用, 労働編成のフレキシビリティのことである.そ の一方 で, 「安定性」とは,被雇用者にとって の所得や雇用のセキュリティのことである(若 森 2009:21) .このような雇用戦略としての「フ レキシキュリティ」は,雇用の流動化における 問題を解決しようとした福祉国家の政策におけ. . 15)欧州委員会によるフレキシキュリティの提 案は,柔軟性と保障のバランスを欠いていて,保障 よりも柔軟性を優先していることになると批判さ れている.具体的には,欧州議会は,欧州委員会案 の柔軟性への偏重を指摘し,雇用保障と職保障を同 時に改善する必要性を訴えた(若森 2009:28) . 16)European Commission News ‘Flexicurity: Getting more people into good jobs’(2007.6.27) より. 17)マクロレベルの雇用の流動化とは,企業と 企業間の転職や失業と雇用創出などの問題である. ミクロレベルの雇用の流動化とは,企業内の転職 や移動の問題である..
(7) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). (387). 25. 表 1 WLB 制度の分析枠組 制度分野. 個別制度 1. 育児休業制度. 「柔軟性」系制度. 2. 介護休業制度 育児・介護関連制度. 3. 短時間勤務制度 4. 配偶者出産休暇制度 5. 所定外労働を制限する制度 6. フレックスタイム制度. 働き方の弾力化. 7. 在宅勤務制度 8. 裁量労働制度. 有給休暇関連 長時間労働関連. 9. 有給休暇制度 10. 長時間労働解消のための支援策 11. 経済支援制度(法定超) 12. 事業所内託児所の運営. 「安定性」系制度. 育児・介護関連支援制度. 13. 再雇用制度 14. 代替要員制度 15. 復帰支援制度 16. 定期昇給. 評価制度. 17. 定期昇進 18. 仕事評価. 有給休暇取得の促進. 19. 有給休暇取得の促進策 20. キャリア研修制度. その他の制度. 21. メンタルヘルス制度 22. 転勤への配慮. 出典:筆者作成.. 軟性だけでなく時間的柔軟性も持つことを指. この枠組みの中で,「柔軟性」系制度は,個. す.近年,企業で導入している WLB 制度はこ. 人の多様なニーズに対応できるよう働き方の. のような働き方における柔軟性を持たせる制度. 「柔軟性」を高める取組みである.それは,育児・. である.しかし,制度は導入されても,それが. 介護関連制度,働き方の弾力化のための制度,. 実際に機能しないならば,個人の WLB は実現. 有給休暇制度などの分野で構成される.そのな. できない.そこで,本論文では WLB 制度が企. かで育児・介護関連制度には具体的に育児・介. 業レベルで機能するための解法として, 「フレ. 護休業制度,短時間勤務制度,配偶者出産休暇. キシキュリティ」論を援用し, 「柔軟性」系制. 制度などがある.働き方の弾力化のための制度. 度と「安定性」系制度を組み合わせた分析枠組. には,フレックスタイム制度,在宅勤務制度,. (表 1)を提示する18). . 18)フレキシキュリティの雇用戦略は,労働市 場が進展するなかで,正規・非正規を問わず雇用 問題 の 解決 に お い て「柔軟性」と「安定性」の 両 側面で進めてきた.フレキシキュリティ論を援用 した本論文でも正規・非正規を問わず制度が機能. 裁量労働制度などがある. . するためには 2 軸の枠組で見ていくことが必要だ と考える.なぜなら,非正規において柔軟な働き 方が実現されたと言っても彼らには「安定性」の 保障が必要だからである.そして,労働者として 均等待遇が行われなければならない..
(8) 26. (388). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). 一方, 「安定性」系制度 は,個人 の 経済的,. 度 と は,「柔軟性」系制度群 の 有給休暇制度 や. 処遇的「安定性」を確保することや「柔軟性」. 働き方の弾力化のための制度,「安定性」系制. 系制度を安定的に利用しやすくするために支援. 度群の長時間労働解消のための支援策,評価制. する取組みである.それは,長時間労働解消の. 度,キャリア研修制度などである.個々のニー. た め の 支援策,育児・介護休業関連支援制度,. ズに沿った制度とは,「柔軟性」系制度群の育. 評価制度,有給休暇促進のための支援策,その. 児・介護関連制度,「安定性」系制度群 の 育児. 他の支援制度などのような「柔軟性」を担保す. 介護関連の支援制度,メンタルヘルス制度など. るための支援制度で構成する.そのなかで育. である.. 児・介護休業関連支援制度には具体的に,法定. これらの制度は,「柔軟性」系制度と「安定. を超える経済的支援制度,代替要員制度,復帰. 性」系制度の関係において補完的である.例え. 支援制度,再雇用制度,事業所内託児所の運営. ば,評価制度 は,共通制度 と し て の「柔軟性」. などがある.評価制度とは定期昇給,定期昇進,. 系制度の利用を後押しするだけでなく,個々の. 仕事評価に関する支援体制が明確に設定されて. ニーズに沿った制度としての育児・介護関連制. いるかである.そして,その他の支援制度には. 度の柔軟な利用も支援している.人々の WLB. キャリア研修制度やメンタルヘルス制度,転勤. が達成されるためには,どちらか一つの制度が. への配慮などがある. 「柔軟性」系制度と「安定性」系制度の関係は,. 充実されるだけではなく, 「柔軟性」系制度と 「安定性」系制度の両方が充実されなければな. 基本的に補完的である.「制度的補完性」の理. らない.. 論では,任意の 2 つの制度において,どちらか. 本論文では「柔軟性」系制度と「安定性」系. の制度を単独で導入するよりも同時に導入した. 制度の 2 軸の分析枠組を用い,企業レベルでの. 場合の方がその追加的なパフォーマンスが向上. 実践について検討する.その前に次節では企. すると論じている(磯谷 2004:116) .例えば,. 業における WLB の現状について概観してみよ. 「柔軟性」系制度群 の 育児休業制度 は,導入 さ れただけで機能するわけではない.この制度を 柔軟に利用できるようにする支援制度に後押し されてこそ,育児休業制度が利用しやすくなる. う. Ⅲ 中小企業における WLB 制度の導入状況 及び利用状況―大企業と比較して. のである.その支援制度が, 「安定性」系制度. 本節では,次節の事例分析に入る前に,神奈. 群に属している代替要員制度や復帰支援制度な. 川県19)における WLB の現状に関する調査をも. どである.同様に, 「柔軟性」系制度群の有給. とに , 中小企業が大企業に比べて制度の整備が. 休暇制度についても,柔軟な利用を担保する「安. 遅れていることを把握することが目的である.. 定性」系制度群の有給休暇促進のための支援策. 以下,神奈川県で実施された「神奈川県働く環. が設けられた方が取得効果をもたらすことがで きる. 加えて,WLB 制度はすべての人々に適用さ れる制度であるが,人生の各段階においては多 様なニーズが発生するはずである.すべての人 に共通なニーズ以外に,育児,介護,病気など のオプションのニーズも出てくる.WLB 制度 には,すべての労働者に共通な制度と個々の ニーズに沿った制度が含まれている.共通な制. . 19)首都圏の一翼を担う神奈川県は,都市部ゆ えに女性労働力率が低く,男性の労働時間が長い 傾向があり,また 3 世代同居率も低いことから子 育てにあって両親の協力が得られにくい状況があ る.そ の た め,神奈川県 で は,商工労働局労働部 労政福祉課 が 中心 と なって,福祉・次世代育成部 次世代育成課及 び 県民活動部人権男女共同参画課 を合わせた 3 課で WLB の取組みを推進している. (筆者が 2012 年 2 月 10 日に行った神奈川県庁への ヒアリング調査の記録より).
(9) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). (389). 27. 境に関する従業員調査」 (2009)及び「神奈川. て聞いたところ,「定時退社や休暇が取得しに. 県働く環境に関する事業所調査」 (2009)を中. くい雰囲気」と答えた人が 4 割超で一番多い.. 心に WLB が企業規模別,業種別にどのように. その次が,「収入の減少」で 2 割を占めている.. 異なるか量的に概観してみよう.. 他方,育児休業制度 を 利用 で き な い 理由 に つ いては,「休業を取得できる職場の雰囲気がな. 1 従業員調査から見る WLB の現状. い」と 答 え た 人 が 一番多 い.特 に 男性 は 5 割. 従業員の WLB については,調査結果から見. に近い.その次に,男性は「休業中の収入の減. る限り,企業規模別,業種別に違いがあるとは. 少」(47.9%),「復帰後,原職に戻れるか心配」. 言い難い.仕事と仕事以外の生活のバランスに. (20.4%),「昇進・昇格への影響が心配」 (15.4%). ついて「希望するバランスよりも仕事に係る時. と答えた人が多い.. 間が多くなっている」と答えた人の中で, 「30. WLB への有効な取組みとして何を希望する. ~49 人」の企業は 41.5%, 「1000 人以上」の企. かについては,「年次有給休暇の取得促進」と. 業は 46.1% となっている.大企業に勤める従業. 答えた人が 4 割強で一番多い.次に, 「仕事と. 員の方が若干バランスは取れていないようで. 家庭等を両立するための制度整備」と答えた人. あるが,「わからない」と回答した項目で「30. が 3 割強を占めている.. ~49 人」の 企業 は 9.7%, 「1000 人以上」の 企. このように従業員は,仕事と生活のバラン. 業は 4.1% となっていることを考慮すればその. スを取りたくても現実ではそれが難しい状況. 格差は明確ではない.なぜなら,従業員にとっ. に置かれている.企業側では実際にどのよう. て WLB は,企業規模や業種に関係なくすべて. な WLB 取組みが行われているのか.そして,. の従業員に共通する課題であるからだろう.そ. WLB に関する制度の利用状況はどうなってい. こで,この節では企業規模を分けずに従業員の. るのかを,次に見よう.. WLB の現状について定量的に把握する. まず,従業員の WLB がとれているかどうか. 2 企業調査から見る WLB 現状. という現状についてみよう.調査対象の約 4 割. 企業が実施している WLB のための制度及び. 超の従業員は「希望するバランスよりも,仕事. 取組み状況(図 1)について全体的にみたとこ. にかかる時間が多い」と回答した.仕事量につ. ろ,「柔軟性」系制度において「育児休業制度」. いて尋ねたところ,男女とも「多い」と答え. (85.7%)と「介護休業制度」(78.8%)を 規定. た人が 7 割以上であり,特に男性は 8 割近い.. している企業が一番多い.「育児休業制度」に. 「ちょうどいい」と答えた男性は全体の 2 割で. ついて企業規模別に見ると,「1000 人以上」の. ある.他方,育児休業制度の利用について, 「利. 企業は 99.7% が規定しているのに対して, 「30. 用したい」 , 「利用したいが難しい」と思ってい. ~49 人」の企業は 64.5% とその格差は大きい.. る人が 4 割程度である. 「利用したいと思わな. 規定内容に関しても大企業の方は中小企業より. い」と答えた女性はわずか 2%,男性は 11% で. 法定内容を超えて規定している.「育児休業制. 20). ある .. 度」は法律で定められている制度であるにも関. 希望する WLB を取る上での阻害要因につい. わらず中小企業は大企業と比較して整備が遅 れている.一方, 「実施していないし,今後も. . 20)調査では「利用する必要がない」と答えた 人が 4 割を占めているが,この回答項目について は子どもがもう大きくなって必要がない人と子ど もを持つ予定がないと考えている人が答えている.. 予定なし」の制度としては「テレワーク制度」 (84.2%),「フレックスタイム制度」(53.2%)が 一番多い. 他方,「安定性」系制度において「仕事の進.
(10) 28. 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). (390). 実施している 実施していないし、今後も予定なし. 実施していないが、今後予定あり 無回答. 0% 柔軟性系制度. 20%. 40%. 25.1. 43.3. 3.8. 53.2. 8.5 8.4. 15.4. 46.4. 5.1. 76.4. 3.0 5.3. 9.3. 81.8 52.8. 9.8 17.4. 57.7. 仕事の進め方の見直し 19.8 1.6 4.3. 7.9. 84.2. 33.1. 年次有給休暇の取得促進. 事業所内託児施設の設置. 8.8. 10.0 4.2. 仕事優先の意識改革ための研修. 7.3. 48.5. 9.1. 4.8. ノー残業デーの導入 育児を行う従業員への金銭的支援 介護サービスの費用の助成. 9.4. 29.2 2.7. 5.2 14.5 1.5 52.2. 44.1. 短時間勤務制度 フレックスタイム制度. 100%. 7.8 1.2. 5.3. 15.4. 34.3. 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ制度. テレワーク制度. 80%. 78.8. 介護休業制度 所定外労働をさせない制度. 安定性系制度. 60%. 85.7. 育児休業制度. 25.9 22.9. 20.1. 52.7 86.0. 3.9. 16.6 2.9 7.5 8.1. 注: 「育児休業制度」 , 「介護休業制度」については選択項目として「規定がある」 , 「規定はないが慣行 注: 「育児休業制度」 ,「介護休業制度」については選択項目として「規定がある」 ,「規 として実施」 , 「規定もなく慣行もない」 , 「無回答」となっている., 定はないが慣行として実施」 ,「規定もなく慣行もない」 「無回答」となっている. 出典:神奈川県(2009) 『神奈川県働く環境に関する事業所調査』 (pp.26)より筆者が一部修正して作成.. 出典:神奈川県(2009)『神奈川県働く環境に関する事業所調査』(p. 26)より筆者が 一部修正して作成.. 図 1 WLB ための制度及び取組みの状況 図 1 WLB ための制度及び取組みの状況. め方の見直し」 (57.7%) , 「有給休暇の取得促進」. 「利用する必要がない」と答えた人を除外する. (52.8%) , 「ノー残業デーの導入」 (33.1%)の順. 場合,少ない数値ではない.また,WLB 促進. に制度を実施している企業が多い.そのなかで. の阻害要因について従業員側は「定時退社や休. 「ノー残業デーの導入」について企業規模別に. 暇が取得しにくい雰囲気」や「収入の減少」を. 見 る と,特 に「1000 以上」の 企業 は 49.7% が. 挙げている.しかし,それは企業側とのギャッ. 実施しているのに対して「30~49 人」の企業. プを現している.例えば,企業側は「有給休暇. は 22.8% しか実施していない. 「有給休暇の取. の取得促進」の取組みを行っているが,従業員. 得促進」の詳細な内容については後ほど説明す. 側は取得しにくいと思っているのである.従業. る.一方, 「実施していないし,今後も予定な. 員側が WLB 実現のために有効な取組みとして. し」の制度として「事業所内託児施設の設置」. 「年次有給休暇の取得促進」を挙げているが,こ. (86%) , 「介護 サービ ス 費用 の 助成」 (81.8%) ,. れは制度が機能していない証拠である.「収入. 「育児 を 行 う 従業員 へ の 金銭的支援」 (76.4%) 2 が多く挙げられている.. の減少」の問題についても従業員側のニーズが. ところが, 前の従業員調査と比較してみると,. 援を行う予定がないのである.そこで,以下「有. 企業側と従業員側の間にギャップが存在するこ. 給休暇の取得促進」,「経済的支援」の取組み状. とがわかる. 「育児休業制度」について企業側. 況や「育児休業制度」,「有給休暇制度」の取得. の 8 割強は規定しているにも関わらず,従業員. 状況について企業規模別,業種別にその詳細な. 側には利用が難しいと考えている人がいる.特. 内容を見ていこう.. に,男性の 3 割程度はそう考えている.これは. まず,WLB のための制度及び取組みのなか. あるにも関わらず,企業側の大部分は経済的支.
(11) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). (391). 表 2 WLB のための制度及び取組みの実施状況 年次有給休暇の取得促進. 有. 無. 実施していない 今後の実施予定 有. 無. 無回答. 今後の実施予定. 実施している. 実施していない. (単位:%). 育児を行う従業員への金銭支給 無回答. 実施している. 合 計. 合 計. 業種・企業規模. 29. 業 種 企業規模. 100.0. 52.8. 17.4. 25.9. 3.9. 10.0. 4.2. 76.4. 9.3. 建設業. 100.0. 44.4. 19.1. 34.6. 1.9. 1.2. 7.5. 89.9. 1.5. 製造業. 100.0. 45.3. 21.1. 30.6. 3.0. 8.9. 3.2. 80.7. 7.2. 電気・ガス・熱供給・水道業. 100.0. 69.3. 0.0. 19.2. 11.5. 8.4. 0.0. 76.3. 15.3. 情報通信業. 100.0. 62.2. 11.4. 24.1. 2.3. 8.8. 6.5. 82.5. 2.3. 運輸業・郵便業. 100.0. 50.1. 17.1. 31.4. 1.4. 6.5. 5.5. 79.9. 8.1. 卸売業・小売業. 100.0. 62.3. 17.3. 20.4. 0.1. 12.4. 4.0. 77.6. 6.1. 金融業・保険業. 100.0. 83.1. 4.3. 12.7. 0.0. 11.0. 0.0. 85.7. 3.3. 不動産業・品物賃貸業. 100.0. 51.4. 13.6. 25.6. 9.3. 7.6. 4.7. 73.7. 14.0. 宿泊業・飲食サービス業. 100.0. 40.7. 27.0. 22.9. 9.4. 14.4. 4.2. 54.0. 27.4. その他. 100.0. 51.2. 14.8. 28.5. 5.6. 9.4. 4.1. 77.6. 8.9. 30 ~ 49 人. 100.0. 43.9. 20.8. 29.5. 5.7. 4.9. 8.4. 73.2. 13.4. 50 ~ 100 人. 100.0. 49.0. 19.9. 27.3. 3.7. 6.2. 4.4. 81.3. 8.1. 101 ~ 200 人. 100.0. 44.8. 23.0. 30.1. 2.1. 10.4. 4.4. 82.6. 2.6. 201 ~ 300 人. 100.0. 49.4. 18.9. 31.7. 0.0. 10.5. 1.4. 87.4. 0.6. 301 ~ 999 人. 100.0. 59.6. 13.5. 21.2. 5.7. 16.1. 1.0. 76.0. 7.0. 1000 人以上. 100.0. 67.3. 9.9. 19.7. 3.1. 16.4. 1.7. 68.8. 13.1. 出典:神奈川県(2009)『神奈川県働く環境に関する企業調査』(p. 65,67)より作成.. で「有給休暇の取得促進」と「経済的支援」の. みたところ,従業員数が「300 人以下」(4~. 取組み状況について見ていく(表 2 を参照) .. 5 割)の企業は「300 人以上」 (6~7 割)の企業. 「年次有給休暇の取得促進」について企業業種. より「実施している」と回答した割合が低い.. 別に見ると,「実施している」と回答した割合. 「経済的支援」に関する取組みについて企業. は平均で 52.8% であるが, 「宿泊業・飲食サー. 業種別に見ると,当該制度を「実施している」. ビ ス 業」 ( 40.7%) , 「建設業」 (44.4%) , 「製造. と答えた業種は,「建設業」(1.2%),「運輸業・. 業」 (45.3%)などは平均に満たない水準で 4 割. 郵便業」(6.5%)な ど が 一番低 い 水準 で あ る.. を少し超える程度に留まっている.また, 「今. 一方,企業の規模別に見ると,従業員数が「100. 後の実施予定」についても「無」しと答えた企. 人以下の」企業では「実施している」と答えた. 業業種 は「製造業」 (30.6%) , 「運輸業・郵便. 割合が一番低い.企業規模が「300 人以下」の. 業」 (31.4%) , 「建設業」 (34.6%)の順で平均値. 企業は「300 人以上」の企業より経済的支援制. (25.9%)を超えている.一方,企業の規模別に. 度の整備が遅れていることが分かる..
(12) 30. 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). (392). 表 3 育児休業の取得状況. (単位:%). 業種・企業規模. 男女計. 男 性. 女 性. 合 計. 業 種 企業規模. 40.1. 1.2. 93.1. 建設業. 13.8. 0.2. 96.8. 製造業. 18.0. 2.8. 82.7. 電気・ガス・熱供給・水道業. 61.7. 0.0. 100.0. 情報通信業. 24.9. 3.1. 93.3. 運輸業・郵便業. 17.2. 1.5. 93.8. 卸売業・小売業. 22.2. 0.0. 68.5. 金融業・保険業. 37.6. 1.1. 93.3. 不動産業・品物賃貸業. 29.4. 4.2. 60.0. 宿泊業・飲食サービス業. 55.3. 0.1. 99.8. その他. 51.4. 1.2. 91.1. 30 ~ 49 人. 31.0. 0.6. 79.0. 50 ~ 100 人. 32.3. 0.6. 90.7. 101 ~ 200 人. 36.0. 2.8. 93.9. 201 ~ 300 人. 29.4. 2.4. 86.5. 301 ~ 999 人. 30.7. 3.5. 88.4. 1000 人以上. 43.0. 0.6. 94.2. 注:2008 年 4 月 1 日~ 2009 年 3 月 31 日までに育児休業を開始した人の割合. (2008 年 4 月 1 日~ 2009 年 3 月 31 日までに出産した人(男性従業員については配偶者が出産し た人)= 100) 出典:神奈川県(2009)『神奈川県働く環境に関する企業調査』(p. 45)より作成.. 次に,従業員調査で制度が利用しにくいと答. 的 に 進 ん で い る 業種 は「不動産業・品物賃貸. え た 人 の 割合 が 高 かった「育児休業制度」と. 業」(4.2%),「情報通信業」(3.1%)及び「製造. 「年次有給休暇制度」の取得状況について見て. 業」(2.8%)であり,企業規模に関しては「101. いく.前者については平均的に 4 割の人が育児. ~300 人」( 2.4~2.8%) と「 300 人~999 人」. 休業を取得している(表 3 参照) .業種別に見. (3.5%)のグループで比較的に取得率が高い.. る と,男女計 で は, 「建設業」 (13.8%) , 「製造. しかし,女性と比べると男性の育児休業の取得. 業」 (18.0%) , 「運輸業・郵便業」 (17.2%)にお. 状況は,非常に低い.. いて育児休業の取得率が低いことが分かる.一. 他方, 「年次有給休暇制度」の 取得状況(図. 方,規模別 に 見 る と, 「201~300 人」 (29.4%). 2 を 参照)に つ い て は 平均的 に 5 割(51.4%). 及び「301~999 人」 (30.7%)の企業において,. の人しか取得していない.業種別に見ると「電. 育児休業の取得率が一番低い.取得状況が一番. 気・ガス・熱供給・水道業」(69.9%)の取得状. 高いのは, 「1000 人以上」の企業である.男女. 況が一番高い.続いて,「情報通信業」(58.0%). 別にみた場合,男性の育児休業取得状況が比較. と「金融業・保険業」(55.2%)が高い取得状況.
(13) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). 0.0%. 20.0%. 40.0%. 60.0%. (393). 31. 80.0%. 51.4%. 合計 43.8%. 建設業. 50.6%. 製造業. 69.9%. 電気・ガス・熱供給・水道業 58.0%. 情報通信業 51.3%. 運輸業、郵便業 45.1%. 卸売業、小売業. 55.2%. 金融業、保険業 43.9%. 不動産業、物品賃貸業. 39.4%. 宿泊業、飲食サービス業. 43.4%. その他 30~49人. 41.5%. 50~100人. 50.0%. 101~200人. 53.7%. 201~300人. 44.5%. 301~999人. 50.1%. 1000人以上. 52.5%. 出典:神奈川県(2009)『神奈川県働く環境に関する企業調査』(p. 22)より作成.. 図 2 年次有給休暇の平均取得率. を示している.それ以外の業種では平均値にも. 便業」の 3 業種 に お い て WLB 制度 の 実施状況. 及ばない低い取得状況に留まっている.一方,. と取得状況が比較的に低い.神奈川県調査の対. 企業規模別にみたところ,どのような規模の企. 象者を見ると, 「その他(学術研究,サービス業,. 業でも年次有給休暇の取得状況は高い状況では. 医療福祉など) 」 (38.3%)以外に「製造業」で働. ない.特に, 「30~49 人」 , 「201~300 人」の企. いている人が 22.3% と大きい割合を占めた.. 業では 4 割を少し超えている程度である.. そこで,本論文では調査対象を,神奈川県内. 以上から,中小企業は大企業に比べて制度の. の中小の製造業の企業に限定する.神奈川県調. 整備が遅れていることが分かる.WLB に関す. 査から見えてきた WLB の現状の問題について. る諸制度の中でも,特に従業員側のニーズが反. 分析するには,現地の企業を対象にすること. 映された「年次有給休暇の取得促進」及び「経. が有益だと考えられる.次節では,先進的に. 済的支援制度」に ついて企業の規模別に見る. WLB の取組みを行っている企業現場では,ど. と,従業員数が「300 人以下」のグループでは,. のような実践があるのかについて見てみよう.. 「300 人以上」と比べて実施している企業が少 ない.この点,本論文では説明していないが,. Ⅳ 中小企業における事例分析. その他の制度においても同様の状況である.神. 本節 で は,中小企業 の な か で も 先進的 な. 奈川県内の企業のうち 99.3% が従業員数 300 人. WLB の取組みを行っている企業事例を分析す. 未満の企業であることを念頭に置くと,中小企. ることで,中小企業において WLB 制度が機能. 業において WLB の取組みを進めていくことが. するための条件について探る.その際に,第Ⅱ. 重要となる.. 節で提示した「柔軟性」系制度と「安定性」系. とりわけ, 「建設業」 , 「製造業」 , 「運輸業・郵. 制度の 2 軸の分析枠組を用いて分析を行う..
(14) 32. (394). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). 表 4 調査対象企業の概要 A社. B社. 業 種. 製造業 (機械器具). 製造業 (化学工業). 従業員数. 249 名 (うち女性 47 名). 341 名 (うち女性 54 名). 設 立. 1966 年. 1947 年. 出典:筆者作成.. 『少子化社会対策に関する先進的取組み事例. 1 調査の概要. 研究報告書』 (2006)で は,近年,日本 で 従来. 本論文では,その対象として WLB の推進に. 型 の 雇用制度 や 処遇制度 が 変 わ り つ つ あ り,. ついて先進的な取組みを行っている事例を収. WLB が実現できる働き方をしたいと希望する. 集・選定し22),2011 年 10~12 月にかけて神奈. 労働者が増えていると指摘している.また,男. 川県内にある中小企業23)2 社に対して人事部門. 性の間にも子育てと仕事の両立を求める者や管. の担当者と育児休業を取得した男性従業員 6 人. 理職の中に介護などにより今まで通り働けな. へのヒアリングとアンケートを併用した調査を. くなってきた者も出ている.ここから,日本に. 行った.両社(以下 A 社,B 社 と 称 す る)と. おいて WLB の推進に取り組み,ワーク・ライ. も中規模の製造業の企業である.対象企業の概. フ・コンフリクトを解消することは急務である. 要は表 4 に示した通りである.. ことが分かる.しかし,WLB のための制度を. A 社では,経営者・労働組合・総務部が一体. 導入するだけで制度が機能するわけではない.. となり,「働きがいある職場」,「安心して働け. その WLB の制度や施策あるいは柔軟な働き方. る職場」という考え方を出発点にして,WLB. をどのように定着させたらよいのかという問題. のための子育て支援や働き方の改善に取り組ん. が,今後日本企業の直面する課題である.. でいる.創立以来,伝統的に両立支援を行うと. これまで幾つかの制度を導入しても,それが. いう雰囲気があったが,数年前から WLB によ. 機能せず, 定着しなかったことには原因がある.. り積極的に取り組み始めた.景気変動の非常に. WLB 制度の導入効果21)が期待でき,従業員が. 激しい業界にいるので,長時間労働をしている. 満足する制度を導入するためには,WLB の取 組みを先進的に実施している事例を紹介するこ とが有益である.では,企業がどのような制度 あるいは制度の組み合わせを実施したら従業員 のワーク・ライフ・コンフリクトが解消でき, 制度の導入効果をもたらせるのか.そのような 制度の組み合わせにはどのような特徴が見られ るのか.企業の事例研究を通じてこの点につい て考えてみよう. . 21)WLB 制度 の 導入効果及 び 企業 の 経営業績 との関係に関する議論は先行研究ですでに紹介さ れている.. . 22)事例の選定は,厚生労働省や神奈川県で先 進的取組み事例として表彰を受け,WLB 推進企業 事例集に掲載された企業の中から事例分析を目的 に抽出して調査依頼をした. 23)通常,中小企業と言えば,製造業の場合に は資本金の額又は出資の額が 3 億円以下の会社又 は常時使用する従業員の数が 300 人以下の会社及 び個人である.ただし,大企業である親会社から 出資を受けている場合は具体的な基準が異なって いるため担当者に確認するようになっている(中 小 企 業 庁 HP:http://www.chusho.meti.go.jp/faq/ faq/faq01_teigi.htm#q12) .本論文では,B 社に対 してインタビューの際に人事担当者が同社を中小 企業として位置付けていたため中小企業の事例と して扱うことにする..
(15) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). (395). 33. 社員が多いなど健康面も含め労働環境の悪化が. を明らかにするため,調査対象の企業において,. 恒常化したことがきっかけである.従業員の意. WLB 制度の導入状況と利用状況に関するアン. 見を反映させた組合からの積極的な提案に基づ. ケート調査を実施した.アンケート調査から抜. き,次世代育成支援対策推進法に基づく行動計. けた内容については,別途のヒアリング調査を. 画を作り,以前から取り組んできた育児休業制. 通じて補完した.両調査で入手したデータは,. 度や短時間勤務制度,年次有給休暇の取得促進. 本研究で提示した分析枠組を用いて整理した.. などに加えて,残業時間縮減のための取組みを. そ の 際 に,「柔軟性」系制度 と「安定性」系制. 進めた.. 度におけるそれぞれの取組状況を明らかにする. B 社では,社是・企業理念に基づく企業のビ. ため得点化し,その得点化方法は表 5 に示した.. ジョン を 行動指針 と し て 発表 し て,会社全体. アンケート調査では,制度の導入状況を質問し. で「社会とのかかわり方」24), 「働く環境と風土. たうえで,導入済みの制度について過去の利用. づくり」という指標を用いて「働きやすい豊か. 状況を質問するという設問形式をとっているた. な環境作り」という考え方を推し進めている.. め,それに沿って以下の手順で諸制度指標の値. WLB について人材=企業という考えの下,人. が算出される.説明の便宜上,「柔軟性」系制. 材は企業の未来を担う大切な存在であり,技術. 度は「F」,「安定性」系制度は「S」と標記し,. 力の流出防止という意味でも両立支援は必要と. 各個別制度には番号を付ける.例えば,表 5 の. 考えている.B 社は以前から WLB の取組みを. 中 で「育児休業制度」の 場合,「F─1 育児休業. 企業の福利厚生制度の一環として取り組んでき. 制度」と標記することで,「柔軟性」系制度グ. たが,B 社が独自の技術開発力を中核とする研. ループの 1 番の制度であることがわかる.なお,. 究開発型企業として成長するなかで女性社員の. 諸制度指標の値は,最高点を 2 点,最低点を 0. 採用数が増えたことが触媒作用を果たした.. 点と統一する.. このように WLB の取組みについて前向きな. まず,導入状況に関する得点の算出方法であ. 考え方を有する企業では,WLB 制度の導入状. る.「柔軟性」系制度 の 個別制度 は,制度 の 整. 況と利用状況はどのようになっており,どのよ. 備が進むほど高得点になるように得点方法を定. うな特徴が見られるのか.以下でこの点を検討. め て お り,「導入済 み」2 点,「導入検討中」1. する.. 点,「導入予定なし」0 点となる.例えば,「F─ 1 育児休業制度」に対して「導入済み」と回答. 2 WLB 制度分析の得点化方法. すれば 2 点,「導入検討中」とすれば 1 点,「導. 本節では,職場レベルでの WLB の取組みや実. 入予定なし」とすれば 0 点となる.. 践を検討するため,ヒアリングとアンケート調. 一方,「安定性」系制度 の 個別制度 は,得点. 査で得られた知見25)に基づいて分析する.その. 化の方法が少し複雑である.「S─11 経済支援制. 際に,本研究で提示した分析枠組を用いて企業. 度」,「S─12 事業所内託児所 の 運営」,「S─13 再. の WLB 取組みにおいての特徴を明らかにする.. 雇用制度」,「その他の支援制度」の個別制度(S. 本論文では,企業の WLB の取組状況の特徴. ─20~22)に対しては,「柔軟性」系制度の算出. . 24) 「社会とのかかわり方」とは,社会との信頼・ 安心の枠を広げるために社員・家族に生きがいと安 心を与えることが継続した活動につながり,組織と して経験と成果を積み上げていくというものである. 25)インタビュー内容とヒアリングの際に頂い た関連資料内容からまとめている.. 方法と同様に「導入済み」2 点,「導入検討中」 1 点,「導入予定なし」0 点とする.また,「S─ 10 長時間労働解消 の た め の 支援策」や「S─19 有給休暇取得の促進策」に対しては,選択肢か ら具体的な取組みについて複数選択できるよう にした.そのため,それぞれの制度の中で企業.
(16) 34. (396). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). 表 5 WLB 制度の導入及び利用状況における得点化方法 制度分野. 回答と得点化の例. 個別制度. 導入状況. 利用状況. 1.育児休業制度 2.介護休業制度 柔軟性系制度 F. 育児・介護 関連制度. 3.短時間勤務制度 5.所定外労働を制限する制 度. 労働時間の 弾力化 有給休暇制度. 導入済み. 2. かなりある. 2. 導入検討中. 1. すこしある. 1. 導入予定なし. 0. 全くない. 0. 4.配偶者出産休暇制度. 6.フレックスタイム制度 7.在宅勤務制度 8.裁量労働制度 9.有給休暇制度. 残業時間を経営管理指標とする/ その他 長時間労働解消 10.長時間労働解消のための ノー残業デーの実施 のための支援 支援策 退勤時刻の際に終業呼びかけ 長時間労働者への助言・相談. 3 ~ 5 個:2 1 ~ 2 個:1 0 個:0. ―. 長時間労働者の上司への注意 11.経済支援制度(法定超). 導入済み 検討中 予定なし. 12.事業所内託児所の運営 13.再雇用制度 育児・介護 休業関連 支援制度. 14.復帰支援制度. 安定性系制度. 15.代替要員制度. 16.定期昇給. S 評価制度. 17.定期昇進. 18.仕事評価. 2 1 0. 原則として原職復帰. 2. 本人の希望を考慮し会社が決定. 1. 会社の人事管理の都合による. 0. 社内人員異動/社外から補充. 2. 原則は決めず状況により対応. 1. 補充は行わない. 0. 定時昇給時期に昇給. 2. 復職後に昇給. 1. 低い評価. 0. 評価対象期間から除外. 2. 休業直前/標準的評価. 1. 低い評価. 0. 時間あたり成果で評価/ 成果全体で評価. 2. 労働時間が短い分低く評価. 1. 残業等の融通がきかない分低く評価. 0. かなりある. 2. すこしある. 1. 全くない. 0. ―. ―. 年休取得率を経営管理指標と明記 有給休暇 取得の促進. 管理職への理解促進 19.有給休暇取得の促進策. 半日年休制度の導入 一斉年休の実施. 3 ~ 5 個:2 1 ~ 2 個:1 0 個:0. ―. 取得低調な者への通知/その他 その他の 支援制度 出典:筆者作成.. 20.キャリア研修制度 21.メンタルヘルス制度 22.転勤への配慮. 導入済み 検討中 予定なし. 2 1 0. かなりある すこしある 全くない. 2 1 0.
(17) 中小企業におけるワーク・ライフ・バランス制度分析(韓). (397). 35. が実際に取り組んでいる支援策の数が「3~5. いため,1 点を与えることにする. 「補充は行. 個」であれば 2 点, 「1~2 個」であれば 1 点, 「0. わない」場合には,制度がないことと同じとみ. 個」であれば 0 点とする.さらに, 「S─14 復帰. なして 0 点を与える.なお,得点の算出方法に. 支援制度」,「S─15 代替要員制度」 , 「評価制度」. おいて,異なる内容にもかかわらず同じ値が設. の 個別制度(S─16~18)に 対 し て は,表 5 の. 定されたのは,実際の運用でみると同程度であ. 「回答と得点化の例」の「導入状況」の欄にお. ると判断したからである.例えば, 「導入検討. いて示したとおりに選択肢に対応する値を付与. 中」は,従業員のニーズが発生したときに,積. する.例えば, 「S─14 復帰支援制度」について,. 極的に対応しようとする高い意識を持っている. 「原則として原職復帰」と回答すれば 2 点, 「本 人の希望を考慮し会社が決定」であれば 1 点,. が, 「導入済み」よりその程度が低いため 1 点 とする.「S─15 代替要員制度」の「状況により. 「会社の人事管理の都合による」であれば 0 点. 対応」も,前述のように「社内人員異動」など. とする. 「S─15 代替要員制度」に対する回答は. の明確な対応がある場合と比較して,対応の意. 複数選択の形式をとっており,選択された選択. 識が低いため同じく 1 点とする.. 肢の得点の平均値を値としている. 例えば, 「社. 次に,利用状況に関する得点算出の方法であ. 内の人員を異動」 (2 点)と「状況により対応」 (1. る.利用状況の質問は,導入状況において「導. 点)が選択された場合,両選択肢の平均である. 入済み」と回答したことを前提としている.企. 1.5 点が指標の値になる.. 業が「導入済み」と回答した制度について,利. 上記のように, 「安定性」系制度に関する得. 用状況が「かなりある」の場合には 2 点,「す. 点化方法について,単に制度の導入有無の設問. こしある」の場合には 1 点, 「全くない」であ. ではなく, 制度の具体的な内容の設問を設けた.. れば 0 点とする.例えば,「回答と得点化の例」. こ れ は, 「柔軟性」系制度 と「安定性」系制度. の「利用状況」の 欄 に お い て,「F─1 育児休業. の性質が異なるからである. 「柔軟性」系制度. 制度」が「導入済み」の制度であり,その利用. の個別制度は,働き方の柔軟性を高めるための. 状況が「かなりある」の場合には 2 点とする.. 制度であり,制度を利用するにあたって制度導. な お,「S─10 長時間労働解消 の た め の 支援策」. 入の有無が重要なポイントになる. しかし, 「安. や「S─19 有給休暇取得 の 促進策」,「S─15 代替. 定性」系制度の個別制度は,従業員が安心して. 要員制度」,「S 評価制度」については,その利. 働くことや「柔軟性」系制度の諸制度を利用し. 用状況に対して説明することができないため空. やすくする支援の役割を果たすのである.一部. 欄とし,平均得点の算出には入れないことにす. の制度を除いて,制度の内容が重要なポイント. る.. になる.例えば, 「S─15 代替要員制度」は, 「F. 上記の得点化方法に基づいて,各企業におけ. ─1 育児休業制度」を利用する人が安心して育. る「柔軟性」系制度の平均得点と「安定性」系. 児休業を取得できるように支援する制度であ. 制度の平均得点をそれぞれ算出する.その際に,. る.この制度の場合は,単に導入の有無ではな. 個別制度の平均得点と制度分野の平均得点をそ. く実際の運用方法に応じて値を算出する.制度. れぞれ算出し,企業の WLB 取組状況について. が導入されるにあたって, 「社内人員異動」や. 検討する.制度分野の平均得点は,個別制度の. 「社外から補充」などの明確な対応がある場合. 得点に基づいて得られた分野得点(例えば,「労. には,従業員が制度を利用することの懸念や負. 働時間 の 弾力化」分野得点 は,「F─6 フ レック. 担が軽減されるため,2 点を与えることにする.. スタイム制度」,「F─7 在宅勤務制度」,「F─8 裁. 「原則は決めず状況により対応」の場合には,. 量労働制度」のそれぞれに対応する得点に基づ. 明確な対応がある場合より負担軽減の程度が弱. いて算出する.)を平均したものである..
(18) 36. (398). 横浜国際社会科学研究 第 17 巻第 3 号(2012 年 9 月). なお,本論文で扱う得点化方法には次のよう. の実績を聞いてない点である.なぜなら,これ. な留意点がある.第 1 点目は,制度指標の値に. らの項目については,利用状況の判断及び把握. 対して最高値を 2 点とした点である.企業調. が難しいからである.以上の留意点は,今後の. 査では個別制度の導入状況について, 「導入済. 課題として修正することにしたい.ただし,本. み」 , 「検討中」 , 「導入予定なし」の項目のみを. 論文ではこのような留意点が,中小企業の事例. 設定しており, 「導入済み」の場合にはその内. を分析する際に与える影響は小さいと考えるた. 容が「法定通りに規定」されているのか「法定. め,上記の得点化方法に基づいて各企業の平均. を超えて規定」されているのかという詳細内容. 得点を算出する.. までは聞いていない.そのため,得点の計算に おいて「法定を超えて規定」しても加点をして. 3 分析結果. いない.なぜなら, 「育児・介護関連」の諸制. 2 社における WLB 制度の導入状況及び利用. 度は法定で定められている制度であるのに対し. 状況の結果から,次のようなことが明らかにな. て,その他の制度は企業が自主的に行っている. る.得られた知見について先取りして言えば,. 制度もあるため統一性がないからである.そ. 同じ規模の企業では制度の導入で「安定性」系. こで,本論文では「育児・介護関連」の諸制度. 制度の基盤が強い企業ほど,制度の利用状況が. は少なくとも「法定通りに規定」することを最. より高いという結果であった.. 低ラインとし,単純に導入の有無についての設. その理由について分析する前に,本論文では. 問を設定した.また,第Ⅱ節でも見てきたよう. 「安定性」系制度の基盤が強いと判断するため. に「育児休業制度」は法定制度であるにも関わ. の 2 つの基準について説明する.一つは,両枠. ら ず,中小企業(特 に「30~49 人」企業)で. 組の制度の平均得点である.すなわち,表 5─1. は大企業に比べてまだ導入していない企業が多. で見られるように「柔軟性」系制度と「安定性」. い.そこで,中小企業に対しては「法律を超え. 系制度の平均得点において,点数が高い方がそ. て規定」することよりも最低「法律通りに規定」. の制度の基盤が強いということである.ただし,. することが優先であると考えられる.. 両社とも先進的に WLB の取組みを行っている. 第 2 点目は,本論文で提示した個別制度以外. 企業であり,最高点(2 点)に占めるそれぞれ. に,企業が独自に行っている制度についての扱. の制度の得点は高くなっている.もう一つの基. いである.例えば,ある企業において法定で定. 準は,両枠組の制度の構成比である.両枠組の. められた「年次有給休暇制度」以外に,自主的. 制度を構造的にみたとき,「安定性」系制度に. に「地域活動のための有給休暇制度」などを規. 対する「柔軟性」系制度の割合が,1 より大き. 定している場合,それに関する制度項目を設け. い場合 に は「柔軟性」系制度 が 強 い と 判断 す. ていない.なぜなら,これは第 1 点目の理由と. る.他方,その割合が 1 より小さい場合は「安. 関連しているが,中小企業ではそのような制度. 定性」系制度が強いと判断する.. を導入している企業が少ないからである.. では,どのような手順を踏んでこのような知. 第 3 点目は,利用状況において, 「かなりあ. 見が導かれたのだろうか.以下,3 つの段階に. る」 , 「すこしある」の主観的指標に関する扱い. 分けて見ていく.. である.例えば, 「かなりある」と判断する基. 第 1 段階として,WLB 制度の導入状況から. 準(具体的な数値を基準とするなど)は何であ. 見ていく(表 5─1 を参照).まず,両枠組の個. るかの判断は人事担当者に委ねられている.. 別制度の平均得点でみたところ,「柔軟性」系. 第 4 点目 は,利用状況において, 「長時間労. 制度 の 個別制度得点 は,A 社 が 1.56 と B 社 の. 働解消のための支援策」や「評価制度」ではそ. 1.33 より 0.23 ポイント高い.分野得点におい.
関連したドキュメント
Hoekstra, Hyams and Becker (1997) はこの現象を Number 素性の未指定の結果と 捉えている。彼らの分析によると (12a) のように時制辞などの T
保安業務に係る技術的能力を証する書面 (保安業務区分ごとの算定式及び結果) 1 保安業務資格者の数 (1)
燃料・火力事業等では、JERA の企業価値向上に向け株主としてのガバナンスをよ り一層効果的なものとするとともに、2023 年度に年間 1,000 億円以上の
上であることの確認書 1式 必須 ○ 中小企業等の所有が二分の一以上であることを確認 する様式です。. 所有等割合計算書
一方で、平成 24 年(2014)年 11
本案における複数の放送対象地域における放送番組の
定性分析のみ 1 検体あたり約 3~6 万円 定性及び定量分析 1 検体あたり約 4~10 万円
これら諸々の構造的制約というフィルターを通して析出された行為を分析対象とする点で︑構