中国における看護職者からみた看護ケアの質に関する検討
胡
景 萍, 児 玉 有 子,
島 るり子
井 上 範 江
要 旨 【背景・目的】 中国においては,社会構造の変化に伴い患者が求める看護は量から質へと変化している.本研 究の目的は, 日本で開発された看護師に対する看護ケアの質質問紙 (QNCQ-NS) の中国語版 (中国語訳 QNCQ-NS) を作成・検討し, 中国語訳 QNCQ-NS を用いて中国の看護職者による看護ケアの質評価を行う ことである. 【対象と方法】 中国語訳 QNCQ-NSを作成・検討し,中国の 3つの 合病院の病棟に勤務する 看護職者に対して無記名自記式の質問紙調査を実施した. 【結 果】 有効回答 (281名) における因子 析 の結果, 日本語版 QNCQ-NSの 40項目のうち 32項目が選ばれ, その中から 7つの因子が抽出された. また, 中国語訳 QNCQ-NS 32項目での Cronbachsαは 0.92であり, 32項目での 得点の平 値の比較では, 職位 別で有意差が認められた. 【結 語】 中国語訳 QNCQ-NSを作成・検討した結果, 32項目 7因子が選ばれ (信頼性を確認), 日本語版との構成概念の違いが見られた.また,中国の看護師の職位別 QNCQ-NS の 得点 の平 値の比較で有意差があった.(Kitakanto Med J 2007;57:1∼6) キーワード:看護職者, 看護ケア, 質評価 は じ め に 中国における社会構造の変化や高齢化, 家族形態の変 化に伴い, 患者のニーズは多様化, 複雑化し, 患者が求め る看護は量から質へ変化している. そのため, 各医療機 関では, 医療・看護の質の保障を目指した取り組みが盛 ん に なって い る. こ の よ う な 背 景 を 受 け, ア メ リ カ ジョージメーソン大学の袁剣云が 1994年に整体護理の 理論を提出し講演した. この理論の提出を機に中国にお ける看護は, 従来の病気を中心とする看護, つまり, 症 状・病状の看護から人間を中心とする看護, 即ち暮らし を支える全人的看護を表す整体看護への変化が求められ るようになった.趙秋利は 2002年に「整体看護の取り組 みの 5年間で, 看護職者の確保や病院全体の連携など管 理面の配慮や議論が多く行われたが, 新しい看護観の確 立や看護職者の知識の向上はただ広範囲での認識に止ま り, 自らその課題に対する具体的対策の検討はまだ少な いようである」と述べており, 看護職者からみた看護ケ アの質に関する研究は未だ行われていない状況である. これまでの病気を中心とする看護では, 医師の指示を行 うことが看護職の仕事の全ての内容であり, 患者の心理 とニード, 経済状況, および社会的サポートなどの問題 は軽視されてきた. このような状況下では, 整体看護と いう看護ケアの本質的な部 は看護実践に反映されず, 正確な評価もできていなかった. 一方, 日本においては看護ケアの質評価に関する研究 は進んでおり, 1992年に堀内らの研究プロジェクト『看 護ケアの質の評価基準に関する研究会』が組織され, 看 護ケアの質を評価する尺度」が開発された. この尺度の 最大の特徴はケア構造, ケア過程, およびケア結果のそ れぞれの側面から, 評価指標に基づいて具体的に現実を 点検評価することによって, 看護ケアの実態を多面的に 浮き彫りにし, 合的な評価を行うことが可能となって いる点である. 看護職者自らが看護ケアの質の評価を行うことが, 中 国における看護ケアの質を向上させることに繫がると 1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科, 中国河北大学医学部 2 東京都港区白金台4-6-1 東京大学医科 学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム部門 3 佐賀県佐賀市鍋島5-1-1 佐賀大学医学部看護学科看護基礎科学講座 看護援助学 野 平成18年8月15日 受付 論文別刷請求先 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学医学部保 学科 森 淑江えたため, 日本で開発された看護ケアの質評価尺度の中 国語版を作成・検討し, 中国の看護職者自身による看護 ケアの質の評価を行った. 対 象 と 方 法 今回の研究の対象者は, 中国にある 3つの 合病院に 勤務する看護職者であり, 同意の得られた 326名を対象 として,2003年に質問紙調査を行った.調査内容は,対象 者の属性 (年齢, 看護職としての経験年数, 最終学歴, 職 位, 等) および看護ケアの質質問紙−看護師用 The Qual-ity of Nursing Care For Nurses (以下, QNCQ-NS と略 す) である. QNCQ-NSは日本の堀内らによって開発さ れた質問紙であり,11のカテゴリー (食事,排泄,清潔,活 動, 環境, 休憩, 観察・診断・検査, 症状, 治療・処置, 対 人関係, 看護師の姿) から成り, 40項目の質問について 4 段階のリカートスケール (1点 : そうではない∼ 4点 : 非常にそうである) で回答するものである. QNCQ-NS は堀内らによって行われた研究において, 妥当性, 信頼 性が確保された質問紙である. 今回の研究では, 日本語 版の質問紙を専門業者から中国語に翻訳したあと, 研究 者間で何回も逆翻訳にして原文との構成概念・意味内容 の整合性を確認したもの (以下, 中国語訳 QNCQ-NSと する) を 用した. 調査方法は看護部長に同意を得てから, 各病棟の看護 職者に配布を依頼した. 質問紙の記入方法は, 持ち帰り 自宅記入形式とし, 配布してから 2週間以内に記入して もらった. 回収方法は協力者の師長と調査者が各病棟を 回って回収した. 析方法は, 中国語訳 QNCQ-NSの信頼性, 妥当性を 検討するため, 40項目について因子 析を行い, 構成概 念妥当性を検討し, に Cronbachsαを算出して内的整 合性を確認した. また, 尺度の 得点を算出し, 対象者の 属性別の群間比較を行うために 散 析を行い, 有意差 があったものについて多重比較検定を行った. なお, 統 計学的処理については,SPSS 10.0 for windowsを 用し, すべてにおいて有意水準を 5%とした. 倫 理 的 配 慮 調査を依頼する施設の看護部長及び看護職者に, 研究 の目的, 内容, 研究方法を説明し, 同意が得られた看護職 者のみ調査用紙を配布した. なお, 調査協力は自由意志 によるもので, 答えたくない項目は記入しなくても良い こと, 結果は統計的に処理し個人や施設が特定される事 は無いこと, 本研究で得られたデータは研究目的以外に は 用しないことを説明した. また, 回答にあたっては, 調査用紙は無記名とした. 研 究 結 果 承諾の得られた調査対象者 326名のうち,298名 (回 収率 91.4%) を回収した. 回収した調査用紙のうち記入 もれ等のない 281名 (有効回答率 86.2%) を 析対象と した. 対象者は全員女性で, 平 年齢は 33.6±8.3歳, 経験年 数は平 12.4±8.3年であった. 看護に関する最終学歴 は,専門学 83名 (29.5%),短期大学 153名 (54.5%),大 学 36名 (12.2%) そ の 他 お よ び 無 回 答 9 名 (3.2%) で あった. 職位は, 護士 76名 (27.1%), 護師 84名 (29.9%), 主管護師 116名 (41.3%), 主任護師 5名 (1.78%) であっ た. 中国語訳 QNCQ-NSの 40項目について, 構成概念妥 当性を検討するために因子 析を行った結果, 質問項目 「14. 移動, 活動方法を具体的に説明する」, 15. 患者が 眠れているか気にかけている」, 16. 患者が眠れるよう 環境を整える」, 19. 快適であるようベッド周囲を整え る」, 33. 患者に頼まれたことはすぐに行う」, 37. 今後 の見通しを患者や家族と話す」, 38. 看護婦間の連絡は 密にとっている」, 39. 規則を患者に合わせて柔軟に適 用する」については共通性が 0.4以下であったため,この 8項目を削除して 32項目で再度因子 析を行った. 中国語訳 QNCQ-NS 32項目の因子 析では 7因子が 抽出され, 第 1因子は「食事や排泄において患者の自立 度などを 慮し気を配るケア」, 第 2因子は「患者の症 状・診療 (処置) に伴う看護行為」, 第 3因子は「患者の 安楽,安心,快適性に配慮するケア」,第 4因子は「患者の 不安を緩和するケア」, 第 5因子は「患者の希望, タイミ ングに応じるケア」,第 6因子は「治療に関するケア」,第 7因子は「検査に関するケア」, 7因子における因子毎の Cronbach sαは 0.757∼0.807であり, 7因子での累積寄 与率は 52%であった (表 1). また,32項目全体での Cronbachsαを算出した結果は 0.928であり,各質問項目毎の得点における Cronbach sα は 0.924∼0.927であった. 中国語訳 QNCQ-NS 得点の平 値は,各年齢層別の 比較では有意差は認められなかった. また, 看護職とし ての経験年数の各段階別, 看護に関しての最終学歴別の 比較においても有意差は認められなかった. 一方, 職位 別の比較では有意差が認められ, 護士 97.7±14.3, 護師 92.5±10.7, 主管護師 97.2±12.8, 主任護師 96.8±3.0であ り, 散 析の結果, 職位による差が有意であった (F (3)=2.974,p=0.032). に,多重比較検定の結果,主管護 師は護師と比べ 得点平 値が有意に高かった (p< 0.05). (表 2)
表1 NCQ-NS因子 析 : 回転後の因子負荷量 (直 回転) バリックス法 (n=281) 因 子 名 変 数 名 第 1因子 第 2因子 第 3因子 第 4因子 第 5因子 第 6因子 第 7因子 共通性 3. 自立度に応じて食事介助する 0.764 0.087 0.1473 0.1111 0.0445 0.144 0.0142 0.65 6. 気兼ねなどを 慮して排泄の援助をする 0.713 0.138 0.1575 0.0572 0.2983 0.02 0.0961 0.655 5. 自立度に応じて排泄の介助をする 0.66 0.0006 0.2923 −0.028 0.184 0.114 0.1123 0.582 第1因子 食事や排泄において患者の 自立度などを 慮し気を配 るケア 4. 相手を 慮して食事指導をする 0.639 0.1743 0.1501 −0.016 0.1964 0.286 −0.062 0.586 2. 食べやすいように配膳する 0.636 0.1148 0.1377 0.1498 0.0397 0.106 0.0366 0.474 7. 生活に合わせて排泄の援助をする 0.629 0.069 0.2566 0.2637 0.3025 −0.12 0.0361 0.643 1. 食欲に気を配っている 0.57 0.1172 −0.091 0.2961 0.1557 0.155 −0.039 0.484 25. 患者の症状を観察し把握している 0.129 0.7262 0.2059 0.0346 0.0911 0.134 0.1165 0.628 26. 痛みを和らげる工夫する 0.081 0.657 0.1246 0.1034 0.0843 0.056 0.1061 0.486 第 2因子 患者の症状・診療 (処置)に 伴う看護行為 24. 採血や注射に自信がある 0.065 0.6281 0.1419 0.1745 0.0362 0.177 0.1086 0.494 13. 活動で危険が起きないよう配慮する 0.124 0.5755 0.1411 0.2414 0.1402 0.062 0.0304 0.449 40. 十 に患者の看護をしようとしている 0.262 0.4232 0.0079 0.3742 0.0863 0.197 0.0313 0.435 20. 同室者と共に快適であるよう配慮する 0.242 0.1195 0.572 0.1565 0.6419 0.198 0.1087 0.49 21. 不安な時, 安心できるように話を聞く 0.005 0.1597 0.5302 0.1582 0.0892 0.186 0.2287 0.427 27. 患者の動揺や不安を かっている 0.253 0.2772 0.5251 0.292 0.0622 −0.08 0.1113 0.524 第 3因子 患者の安楽, 安心, 快適性 に配慮するケア 28. 患者の日課等を 慮し治療を調整する 0.14 0.2104 0.5109 0.2303 0.1463 −0.04 −0.082 0.407 18. 温度等を患者に合わせて調節する 0.313 0.1799 0.4747 0.1442 0.1389 0.104 −0.03 0.408 11. 清潔の援助に遠慮しないように心がける 0.206 −0.005 0.4603 0.0681 0.4037 0.093 0.0754 0.436 17. 治療後等休憩を取れるように配慮する 0.106 0.1964 0.446 0.3523 0.0654 0.103 0.0422 0.389 35. 必要なとき患者を励ます 0.106 0.1603 0.1508 0.6419 0.1145 0.127 0.1243 0.521 34. 患者に信頼されていると思う 0.157 0.286 0.2512 0.5771 0.0778 0.107 0.0839 0.527 第 4因子 患者の不安を緩和するケア 32. 必要とされる時話を聞いている 0.083 0.2268 0.2832 0.5715 0.0714 0.274 0.0405 0.547 36. 不安そうな時, 側にいるようにしている 0.118 0.0569 0.2872 0.5198 0.1214 0.005 0.2013 0.425 10. 希望を入れながら清潔の援助をする 0.192 0.0996 0.1017 0.1692 0.6184 −0.02 −0.003 0.469 8. タイミングよく排泄の援助をする 0.436 0.0695 0.099 0.0362 0.5922 0.192 −0.04 0.595 第 5因子 患者の希望, タイミングに 応じるケア 9 . 状態に合わせて清潔の指導をする 0.356 0.1761 0.4028 −0.006 0.5505 0.057 0.0646 0.631 12. 動けない時必要に応じて援助する 0.131 0.3169 0.18 0.1981 0.4194 0.096 0.1216 0.389 29. 治療について かり易く説明する 0.226 0.2151 0.067 0.1702 0.066 0.632 0.1723 0.565 第 6因子 治療に関するケア 30. 点滴時, 動きやすいよう工夫する 0.401 0.0572 0.0838 0.1167 0.0482 0.581 0.0288 0.525 31. 治療や処置の際必要な観察をする 0.063 0.3437 0.2493 0.1618 0.0744 0.542 0.0338 0.511 22. 検査を かり易く説明する 0.072 0.3035 0.1253 0.2449 0.0689 0.193 0.731 0.749 第 7因子 検査に関するケア 23. 検査の苦痛が少なくなるよう工夫する 0.017 0.3894 0.1954 0.3639 −0.016 0.031 0.4702 0.545 因子負荷量の 2乗和 4.122 2.9041 2.7177 2.4465 1.8278 1.593 1.033 因子の寄与率 (%) 12.88 9.0752 8.4928 7.6453 5.7117 4.978 3.2281 累積寄与率 (%) 12.88 21.956 30.449 38.095 43.806 48.78 52.012 表2 中国語訳 QNCQ-NS 得点の年齢, 経験年数, 最終学歴, 職位別の平 値比較 (n=281) 項 目 人数 (名) 中 国 語 訳 QNCQ-NS得点平 値±SD 統 計 年齢 20歳未満 1 96 20∼25歳 68 97.4±14.6 26∼30歳 68 93.1± 9.9 年齢階層別の比較 31∼35歳 45 95.1±11.9 散 析 : F=1.43 36∼40歳 40 99.6±12.9 not-significant 41∼45歳 35 93.8±14.4 46∼50歳 21 98.6±10.5 50∼55歳 3 98.7±17.2 経験年数 5年以下 69 97.7±15.2 6∼15年 114 94.7±10.8 経験年数階層別の比較 散 析 : F=1.25 not-significant 16∼25年 80 95.5±12.9 26年以上 18 99.3±11.9 最学歴終 専門学 83 95.7±13.3 短期大学 153 95.0±12.3 最終学歴別の比較 大学 36 99.1±12.8 散 析 : F=1.38 その他 6 98.7±12.6 not-significant 無回答 3 106.0±10.8 職位 護士 76 97.7±14.3 護師 84 92.5±10.7 * 職位別の比較 散 析 F (3) =2.97, p=0.032 多重比較 : p<0.05 主管護師 116 97.2±12.8 主任護師 5 96.8±3.0
察 QNCQ-NS は, 看護職者が日常行っている看護ケアの 内容やプロセスに対する自己評価を行うものである. 今 回の研究では中国の看護職者を対象に調査した結果, 日 本語のオリジナル版から 8項目が削除された. その中で, 14. 移動, 活動方法を具体的に説明する」「37. 今後の見 通しを患者や家族と話す」の 2項目については, 中国の 病院では患者とのトラブルを招きやすいため, 病状等の 説明は医者の責任として行うことが決められている. こ れらの項目には癌告知の問題も含まれているが, 中国で は癌の告知は患者ではなく家族に行うことになっている ため, 医療の背景の違いが影響していると えられた. また, 15. 患者が眠れているか気にかけている」, 16. 患 者が眠れるよう環境を整える」, 19. 快適であるよう ベッド周囲を整える」, および「39. 規則を患者に合わせ て柔軟に適用する」の 4項目については, 中国の看護職 者は患者に合わせるのではなく, 病院の規則で患者の生 活を管理しようとする傾向がある現状を反映していると えられる. に, 33. 患者に頼まれたことはすぐに行 う」, 38.看護師間の連絡は密にとっている」の 2項目が 削除され, 中国においてはこれらの項目が看護ケアとし て重要視されていないことが伺えた. これには日本と中 国における看護体制の違い, 患者の意識の違いなどから, 中国の看護職者の役割認識が日本とは異なっている事が 影響していると えられた. 今回の研究において, 日本語のオリジナル版から, 前 述の 8項目を除いた 32項目を対象に因子 析した結果, 7つの因子が抽出された. 日本語版では, 5因子に 類さ れており, 因子の内容も異なる結果となり, 構成概念の 違いが見られた. 日本の竹崎 は, 援助の構造は常に援助 ―観察―判断―援助を繰り返しながら実施する. 看護援 助の中に単独で存在しているのではなく, 援助しながら その結果を観察し, その状況を判断することで, 次の援 助を新たにアレンジするといったように一連に関連し あって存在していたと報告している. つまり日本の看護 職者は看護ケアを行うに伴って,観察・指導・説明,対人 関係を作る場面が多い. しかしながら, 中国の看護職者 はケアの実施時,観察・指導・説明を一連のながれとする ことができず, ばらばらにみる傾向があることが えら れる. 例としては, 袁剣云 により ある一人の看護職者 のベッド掃除を観察したところ, その看護職者は真面目 に 5 間ベッドを掃除したが, 患者を一目も見ていな い との報告がなされた. また, 王ら の研究では, 患者 は看護職者が病室を奇麗に整理する時や安全知識を指導 する時に, 患者への思いやりが少ないと感じている. つ まりこれらの看護行為は管理者の要求と, 病院の規則を 基づいて行い, 必ずしも真に患者のニードを満たすとは 言えない と報告されている.そこで,第 1因子と第 5因 子は入院中の日常生活援助との関わりがあり, 看護職者 の仕事の一部として認識づけられたが, 専門性がある仕 事としての認識は, 日本の看護職者と比べ, 不足な現状 がある.そのため,患者の自立度・必要な時などの気を配 られ, 自主的, 計画的にケアを行うという意識が十 で はない傾向がある. 第 2因子と第 6因子と第 7因子は, 日本においては診療の補助と言われる看護業務であり, 中国では看護業務の核心として, まだ根強く認識されて いる傾向があると思われた. 今後, 中国における看護ケアの質を正しく評価するた めに, 日本と中国の医療環境や看護職に対する社会の期 待の違いを踏まえ, に尺度の内容を検討していく必要 があると える. 今回の調査では, 看護職の年齢と経験年数において, 中国語訳 QNCQ-NS 得点の平 値に有意差は無く,日 本での調査結果 における, 経験年数が長いほど看護ケ アの質評価が高いという報告とは異なる結果であった. 中国において経験年数が長い看護職者のケアの質評価が 必ずしも高くなかったことには, 病気を中心とした看護 を長い間実施してきた看護職者の認識が変化していない ことが影響していると えられた. 一方, 職位別の比較においては, 整体看護がより早い 時期から導入された若い年齢層である護師よりも, 主管 護師の方が平 値が有意に高かった. 主管護師は, 整体 看護の導入によるリーダ的な役割を期待されていること から, それぞれ職位での責任の違いが看護ケアの質の評 価に影響していると えられた. 結 語 今回,中国語訳 QNCQ-NSを作成・検討した結果,日本 語版 40項目のうち 32項目が選ばれ, 信頼性が確認され た. また, 日本語版では 5つの因子が存在したが, 今回の 調査では 7因子が抽出され, 構成概念の違いがみられた. に, 中国の看護師においては, 職位別の QNCQ-NSの 得点の平 値に有意差がみられた. 謝 辞 調査にご協力いただきました中国の病院の管理者, 看 護職者の皆様に深謝致します. 本論文は平成 15年度佐賀大学大学院医学系研究科に 提出した修士論文の一部である. 文 献 1. 趙 秋利.中国の「整体看護」の取り組みと課題・対策.日 中医学. 2002; 16: 30-35.
2. 慧敏. 論整体護理的護理效果評价. 中華護理雑志. 1999 ; 34: 545-547. 3. 堀内成子, 太田喜久子, 小山真理子ら. 看護ケアの質を評 価 す る 尺 度 開 発 に 関 す る 研 究. 日 本 看 護 科 学 会 誌. 1996; 16: 30-39. 4. 近澤範子. 看護ケアの質とその評価. ナースデータ. 1998; 19 : 9-13. 5. 竹崎久美子, 塩塚優子, 三上由郁ら. 患者の日常生活を改 善・維持するための看護技術.看護研究. 1996; 29 : 47-57. 6. 袁 剣云, 金 橋. 系統化整体護理. 中国農業科技出版 社. 1996: 19-133. 7. 王 桂蘭,劉 義蘭.護理行為的関懐性−住院病人和護士 観点的比較. 実用護理雑志. 2002; 18: 74-75. 8. 飯野京子, 山田雅子, 堀内成子ら. 46病棟における看護ケ アの質評価の比較. 看護展望. 1999 ; 24: 80-85. 9. 郭 翠英.臨床護理質量評价方法的研究進展.護理管理雑 志. 2002; 2: 17-18.
Quality of Nursing Care in China Evaluated by the Nurses
Jingping Hu,
Yuko Kodama,
Ruriko Wakeshima
and Norie Inoue
1 Gunma University Graduate School of Medicine, Hebei University School of Medicine 2 Division of Exploratory Research, the Institute of Medical Science the University of TOKYO
3 Division of Human Care & Assist Arts in Nursing, Department of Basic Science for Nursing, Institute of Nursing, Faculty of Medicine,Saga University
Background and objective: Accompanying changes in social structure in China,patients started to seek for quality in nursing. This study is intended to evaluate the quality of nursing care by Chinese nurses using the Chinese version of QNCQ-NS developed in Japan. Subjects and method : The investigation was conducted with the nurses working at three general hospitals in China using the QNCQ-NS prepared in Chinese translation. Result: As a result of factor analysis,32 out of 40 items in the QNCQ-NS were selected and 7 factors were extracted from the 32 items. The Cronbach s α in the Chinese QNCQ-NS was 0.92 indicating a significant difference in the comparison of the mean scores by the occupational position. Conclusion : The Chinese version of QNCQ-NS was prepared and examined to confirm its reliability. As a result of factor analysis,a difference in the construct was shown. The mean total score of QNCQ-NS in the Chinese nurses differed significantly by the occupational position.(Kitakanto Med J 2007;57:1∼6)