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数学の授業過程に数学的なプロセスを創出する教師の役割に関する省察 授業における教師の「聞くという行為」に着目して

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14 1.はじめに 算数数学の授業を通して,児童生徒の数学的に 考える資質・能力をはぐくむことが求められてい る(中央教育審議会, 2016)。そのためには,算数 数学の内容はもちろんだが,算数数学ならではの, 算数数学らしいプロセスの面を考慮した算数数学 の授業の構想と展開が必要かつ重要である。 これまで,小学校算数科および中学校数学科に おいて,授業前に数学的活動を構想・想定し,そ の構想し想定した活動を授業で展開することを通 して,授業に数学的なプロセスを創出することに 関する研究(例えば,西村・長崎, 2008;馬淵・西 村・櫻本・風間・松本・口分田, 2018 など)は行 われてきているが,高等学校数学科においてはそ の検討はほとんどなされてきていない。 加藤・森本(2020)は,高等学校数学科「三角 関数」の授業を事例として,授業前に数学的活動 を構想・想定し,その構想し想定した活動を授業 で展開することを通して,授業に数学的なプロセ スを創出しようと模索してきた。 確かに,数学的なプロセスを創出するために授 業前に数学的活動を構想・想定し,その構想し想 定した活動を授業で展開することは重要である。 しかしながら一方で,授業前に活動を構想し想 定するだけでは不十分(西村・長崎, 2008)で,教 師が授業における教材を介した生徒とのかかわり を通して,生徒の学びの事実に即して数学的活動 をリデザインしてその後の授業を展開することが, 数学的なプロセスを創出することにおいて必要か つ重要である。

教師の役割に関する省察

:授業における教師の「聞くという行為」に着目して

(2021 年 3 月 12 日 受理) 秋田大学 加藤 慎一 福島大学 森本 明 要約 本研究は,授業前に構想し想定した数学的活動を,教師が授業における教材を介した生徒とのか かわりを通して,生徒の学びの事実に即してリデザインしてその後の授業を展開し,数学的なプロ セスを創出する教師の役割について,高等学校数学科の授業を事例として省察する試みである。本 稿では,教師における「聞くという行為」が生徒の学びの事実に即した数学的活動のリデザインに どのような影響をもたらしているかについて,その一端を明らかにすることを目的とする。そのた めに,高等学校の生徒 10 名を対象にした高等学校数学科の「図形と方程式」「三角関数」の授業 を事例として,教師における「聞くという行為」が生徒の学びの事実に即した数学的活動のリデザ インにどのような影響をもたらしているかについて省察した。省察から,教師における「聞くとい う行為」が,生徒が問題の置かれている文脈と状況にかかわり,それらを既習の数学と結びつけて 問題を解決する過程に内在された生徒のアイデアを掘り起こし,その後の授業の展開に顕在化す る契機となっていて,それは同時に生徒の学びの事実の新たな一端を教師が発見する契機となっ ていることが示唆される。その結果として,授業前に構想し想定した数学的活動を,教師は生徒の 学びの事実に即してリデザインして授業を展開することで,数学的なプロセスを創出することに かかわっている。 キーワード:数学的なプロセス,教師における「聞くという行為」,数学的活動,数学的活動のリ デザイン

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15 これまで例えば加藤・森本(2020)のように, 授業前に数学的活動を構想・想定し,その構想し 想定した活動を授業で展開することに重きを置い て,数学的なプロセスの創出について検討を行っ てきた。本稿では,これまでの検討に加えて新た に,授業前に構想し想定した数学的活動を,教師 が授業における教材を介した生徒とのかかわりを 通して,生徒の学びの事実に即してリデザインし てその後の授業を展開し,数学的なプロセスを創 出することについて検討を行う。 本研究は,授業前に構想し想定した数学的活動 を,教師が授業における教材を介した生徒とのか かわりを通して,生徒の学びの事実に即してリデ ザインしてその後の授業を展開し,数学的なプロ セスを創出する教師の役割について,高等学校数 学科の「図形と方程式」「三角関数」の授業を事例 として省察する試みである。 本稿では,特に教師における「聞くという行為」 に着目し,それが生徒の学びの事実に即した数学 的活動のリデザインにどのような影響をもたらし ているかについて,その一端を明らかにすること を目的とする。 2.数学的活動をリデザインすることと 教師における「聞くという行為」 (1) 数学的なプロセスを創出する 数学的活動のリデザイン 地面から 20m の高さにある乗り場の観覧車が ある(図1)。 図1 乗り場から出発したゴンドラが地面からの高 さが最大になる(地面から40m)のに3分かかる。 ゴンドラの速さが一定(角速度が一定)であると き,ゴンドラの地面からの高さが 30m になるに は,出発してからどれくらいの時間がかかるか。 この素材,文脈と状況を設定し,数学Ⅱ「三角関 数・三角関数を含む方程式・不等式」の単元の数 学的活動を構想した。 ある生徒は,「20m 移動するのに3分かかる」, 「10m は 20m の半分である」,を根拠にして,ゴ ンドラの地面からの高さが 30m になるには,出 発してから 1.5 分になると考えている。この生徒 の考えに対して,他の生徒が次のように発言して いる[註1]。 生徒:ゴンドラはこう(円を描くよう に手を動かしてゴンドラの動き を表現する)動く。(円を描くよ うに手を動かしてゴンドラの動 きを表現しながら)最初は,ベ クトルの向きが上方向。でもだ んだんと(向きが横方向に変わ っていく様子を手で表現しなが ら)ベクトルの向きが変わる。 この生徒の発言を受け止めた教師は,数学的な プロセスを創出する契機と捉え,この文脈と状況 を平面図形で表現している。教師はその平面図形 の特徴を三角関数のグラフを用いて捉え考察する ことで,乗り場から出発したゴンドラの地面から の高さが 30m になるのに何分かかるかを明らか にする数学的活動を授業前に構想していた。そし てその構想し想定した活動を授業で展開しようと 考えていた。 しかしながら,実際の授業では,その構想し想 定した活動と異なる生徒の活動に直面する。生徒 は,文脈と状況を平面図形で表現し,その平面図 形の特徴をベクトルを用いて捉え考察し,問題を 解決しようとしていたのである。

経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development)(略称:OECD) (以下「OECD」とする)によって実施されてい る学習到達度調査(Programme for International Students Assesment)(略称:PISA)(以下「PISA」 とする)では,「定式化する(Formulate)」「活用 する(Employ)」「解釈する(Interpret)」の3つ の言葉を用いて数学的なプロセスを捉え,それら は,生徒が積極的な問題解決者として関与するプ ロセスであることを指摘している(経済協力開発 観覧車 乗り場

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16 機構(OECD)・国立教育政策研究所, 2016)。 つまり,生徒が積極的に問題の置かれている文 脈と状況にかかわり,それらを学び得た既習の数 学と結びつけて,自ら積極的な問題解決者として 問題を解決することが重要であり,そもそも教師 に指示されたから行うというものではない。 数学をするということは「数学は素早く答える もの」「数学をすることとは教師に示された手順に 従うこと」「数学を知るとは教師に聞かれたことに 正しい規則を思い出し,それを用いること」「数学 の問題への答えは教師の権威に是認されるとき正 しい」ということではない(de Corte al., 2002)。

したがって,生徒が積極的な問題解決者になる には,授業前に数学的活動を構想し想定するだけ では不十分である(西村・長崎, 2008)。生徒は, 問題を発見し解決する過程において,数学的な見 方・考え方を働かせながら新たな問いを創出し問 題を変形させていくことがある(Polya, G., 1945)。 そのため,教師が授業における教材を介した生徒 とのかかわりを通して,生徒の学びの事実を把握 することが,生徒が積極的な問題解決者になるこ とにおいて重要であるだろう。そして,教師は, その学びの事実に即して,構想し想定した数学的 活動をリデザインしてその後の授業を展開するこ とで,数学的なプロセスをよりよく創出すること ができるであろう。 授業前に数学的活動を構想・想定し,その構想 し想定した活動を授業で展開し,数学的なプロセ スを創出することについての検討はこれまでにも なされてきている(加藤・森本, 2020;新井, 2016; 馬淵・西村・櫻本・風間・松本・口分田, 2018)。 新井(2016)は,全国学力・学習状況調査中学 校数学の主として「活用」に関する問題(以下『「活 用」の問題とする』)作成の枠組み(表1)にある, 2つの数学的なプロセス;「α3(1)数学的な事 象を結果に即して解釈すること」,「β2(1)結 果を振り返って考えること」を創出することをね らいとした中学校数学科の教材を開発している。 表1 「活用」の問題作成の枠組み (国立教育政策研究所教育課程研究センター, 2016, p.7) 授業前に数学的活動を構想・想定し,その構想 し想定した活動を授業で展開し,ねらいとした数 学的なプロセスが創出されているかについての考 察を行い,その教材の有効性について検討してい る。 馬淵・西村・櫻本・風間・松本・口分田(2018) は,新井(2016)の開発した教材を,より多くの 数学的なプロセスを創出することをねらいとして, 再開発している。そして,授業前に数学的活動を 構想・想定し,その構想し想定した活動を授業で 展開し,ねらいとした数学的なプロセスが創出さ れているかについての考察を行い,その教材の有 効性について検討している。 加藤・森本(2020)は,高等学校数学科「三角 関数」の授業を事例として,授業前に数学的活動 を構想・想定し,その構想し想定した活動を授業 で展開することを通して,授業に数学的なプロセ スを創出しようと模索してきている。 以上のように,授業前に数学的活動を構想・想 定し,その構想し想定した活動を授業で展開し, 数学的なプロセスを創出することについての検討 はこれまでにもなされてきている。 本研究では,これまでの検討に加えて新たに, 授業前に構想し想定した数学的活動を,教師が授 業における教材を介した生徒とのかかわりを通し て,生徒の学びの事実に即してリデザインしてそ

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17 の後の授業を展開し,数学的なプロセスを創出す ることについて検討を行う。 (2) 数学的活動をリデザインすることと 教師における「聞くという行為」 授業過程に数学的なプロセスを創出するため には,生徒が積極的に問題の置かれている文脈と 状況にかかわり,それらを学び得た既習の数学と 結びつけて,問題を解決することが重要であり, 生徒がどのように文脈や状況にかかわっているか, どのように既習の数学と結びつけようとしている か,どのように問題解決しようとしているかなど を捉え,授業前に構想し想定した数学的活動をリ デザインする教師の果たす役割は大きい。 先ほどの,数学Ⅱ「三角関数・三角関数を含む 方程式・不等式」の授業において,生徒は,文脈 と状況を平面図形で表現し,その平面図形の特徴 をベクトルを用いて捉え考察し,問題を解決しよ うとしていた。これは,教師が授業前に構想し想 定した数学的活動とは異なる。 このとき,生徒は,積極的に問題の置かれてい る文脈と状況にかかわり,それらを既習の数学と 結びつけて,問題を解決しようとしている。ここ で,授業前に構想し想定した数学的活動を授業で 一方的に展開することは,積極的な問題解決者と して関与している生徒から,数学的なプロセスを 創出する機会を奪うことにもなりかねない。一方 で,授業前に構想し想定した数学的活動を,教師 が授業における教材を介した生徒とのかかわりを 通して,生徒の学びの事実に即してリデザインし てその後の授業を展開することは,生徒が授業に 数学的なプロセスを創出することを促す契機とな るであろう。このように,教師が授業過程におい て果たす役割によって,また教師が授業をどのよ うに展開するかによって,生徒の学びも変わって くることが考えられる。 学びを創る責任を生徒に委ねる教室において, 教師として大切なことは,権威者として存在する ことではなく,生徒の多様な意見を受容し,生徒 の理解に教師が寄り添いながら,根拠に基づき互 い の 考 え を 比 較 し 議 論 を す す め て い く こ と (Cazden, 2001)である。 生徒の多様な意見を受容し,生徒の理解に教師 が寄り添いながら,生徒の学びの事実に即して指 導の軌道修正を行いながら授業を展開することが 必要かつ重要である(能田, 1979)が,高等学校数 学科の授業において,それが具現化されていると は言いがたい。 教師が,生徒の多様な意見を受容し,生徒の理 解に寄り添うためには,教師における「聞くとい う行為」が重要な役割を果たす。「聞くという行為」 は,単に音・音声情報を受け止めるばかりではな く,能動的な「知る」という活動に媒介された行 為である(森本, 2006)。本稿では,森本(2006) に依拠し,「聞くという行為」を,単に音・音声情 報を受け止めるという受動的な行為としてではな く,教師が,生徒が解決したい問題は何か,生徒 がどのようなことを考えているか,どのようなこ とを伝えようとしているか,そして教室でどのよ うな学びが生じているかについて捉えようとする 能動的な行為として捉える。 以上のような「考えながら聞く」,「聞きながら 考える」という「考える」をともなう「聞く」(森 本, 2006)を,教師が大切にすることが,生徒の学 びの事実の一端をつかまえることを可能にする。 つまり,授業前に構想し想定した数学的活動を, 教師が授業における教材を介した生徒とのかかわ りを通して,生徒の学びの事実に即してリデザイ ンしてその後の授業を展開するためには,教師に おける「聞くという行為」が必要不可欠であると 考えられる。 3.方法と手続き (1) 対象生徒 調査の対象は,A 特別支援学校(聴覚障害)の 高等部第2学年の生徒である。対象生徒は聴覚に のみ障害があり,高等学校に準ずる教育を受けて いる。事例1は,授業時数が1時間であり,対象 生徒が10 名である。事例2は,授業時数が2時間 であり,第1時の対象生徒が9名(欠席者1名), 第2時の対象生徒が10 名である。 (2) 数学的活動の構想・想定と 数学的なプロセス 本稿では,加藤・森本(2020)と同様に,PISA の概念的枠組みを参考としている,全国学力・学 習状況調査中学校数学の「活用」の問題作成の枠 組み(国立教育政策研究所教育課程研究センター, 2017)(表2)[註2]を用いて,数学的なプロセス を捉えることにする。

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18 表2 「活用」の問題作成の枠組み (国立教育政策研究所教育課程研究センター, 2017, p.7) ① 事例1 事例1の授業は,2017 年 11 月 17 日(金)に 数学Ⅱ「図形と方程式・軌跡と領域」の単元で行 ったものである。そのねらいは,「バスのドアの動 きと立ち位置の関係を探る活動を通して,軌跡や 領域を事象の考察に活用できるようにする」こと である。次の8つの数学的なプロセス;「α1(3) 理想化,単純化すること」,「α1(1)ものごと を数・量・図形等に着目して観察すること」,「β 1(2)解決の方針を立てること」,「α2(2) 必要な情報を適切に選択し判断すること」,「β1 (3)方針に基づいて解決すること」,「α3(1) 数学的な結果を事象に即して解釈すること」,「β 2(1)結果を振り返って考えること」,「β2(2) 結果を改善すること」,を創出して,そのねらいを 達成できるように,次のような数学的活動を構想 している(表3)。 表3 活動1−1 素材,文脈と状況を数理的に 捉え,問題を見いだす 活動1−2 見いだした問題を自立的に解 決する 活動1−3 自立的に解決したことをもと に,協働的に解決する 活動1−4 問題発見・解決の結果や過程 を振り返る 活動1−1では,「扉が折り戸2枚ドア(図2) のバスに乗っているとき,扉の近くに立っていた ら扉が開かなかった」という素材,文脈と状況を 設定し,文脈と状況から,生徒が「2枚のドアの 動きに着目して,どの位置に立っていればよいか」, あるいは「どの位置に立っていてはいけないか」 という問題を見いだすことを想定している。 図2 折り戸2枚ドアの動き 活動1−2では,例えば,バスの扉の開閉を平面 図形で表現し,ドアの動きを考察したり,バスの 扉の2枚のドアの接続部分を点で表現し,その点 の軌跡を考察したりなどして,どの位置に立って いればよいか,あるいはどの位置に立っていては いけないかについて考えることを想定している。 活動1−3では,活動1−2において,自立的に 解決した結果や過程などを全体で共有し,それら を比較・検討することを想定している。 活動1−4では,どのように問題を発見し解決 したか,どのような結果になったか,結果からど のようなことがわかるかなどについて考えること を想定している。 なお,図2のBP の軌跡は,アステロイドにな る。アステロイドは未習であるため,BP の正確な 軌跡を求めることではなく,BP の軌跡の概形を 捉えることを想定している。 ② 事例2 事例2の第1時は,2017 年 11 月 24 日(金) に,第2時は,2017 年 11 月 27 日(月)に数学Ⅱ 「三角関数・三角関数の性質」で行ったものであ る。そのねらいは,「障害物の先にあるマークを見 るためにはどこに立てばよいかを探る活動を通し て,三角比を事象の考察に活用できるようにする」 ことである。次の8つの数学的なプロセス;「α1 A B C D Q P C Q D P D Q C P A B A B

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19 (3)理想化,単純化すること」,「α1(1)も のごとを数・量・図形等に着目して観察すること」, 「β1(2)解決の方針を立てること」,「α2(2) 必要な情報を適切に選択し判断すること」,「β1 (3)方針に基づいて解決すること」,「α3(1) 数学的な結果を事象に即して解釈すること」,「β 2(1)結果を振り返って考えること」,「β2(3) 発展的に考えること」,を創出して,そのねらいを 達成できるように,第1時では,次のような数学 的活動を構想している(表4)。 表4 活動2−1 素材,文脈と状況を数理的に 捉え,問題を見いだす 活動2−2 見いだした問題を自立的に解 決する 活動2−3 自立的に解決したことをもと に,協働的に解決する 活動2−4 問題発見・解決の結果や過程 を振り返る 活動2−1では,「立ち位置から床に置いてある 鏡をのぞいて障害物の先にあるマークを見る(図 3)」という素材,文脈と状況を設定し,文脈と状 況から,それぞれの生徒によって立ち位置が変わ ることに気づき,「自分自身がどこに立てばよいか」 という問題を見いだすことを想定している。 図3 活動2−2では,例えば,鏡を点で表現したり, 目とつま先,鏡の3点を結んでできた図形を直角 三角形としてみなしたりなどして捉え,自分自身 がどこに立てばよいかについて考えることを想定 している。 活動2−3は,活動2−2において,自立的に解 決した結果や過程などを全体で共有し,それらを 比較・検討することを想定している。 活動2−4は,どのように問題を発見し,解決し たか,どのような結果になったか,結果からどの ようなことがわかるかなどについて考えることを 想定している。 本来,事例2については,1時間のみで終える 予定であったが,生徒A のアイデアを取り上げる ために,第2時を実施することを決めている。 第1時において,最小限の情報で自分自身がど こに立てばよいかを調べるときに,生徒たちは, 身長(図4の辺AB の長さ)と図4の∠ACB の大 きさがわかればよいと考えている。 そのなかで,生徒A は,角度(図4の∠ACB の 大きさ)がわからなかった場合には,誰か1人の 身長と鏡から立ち位置までの距離の比を求めれば 解決できるとノートに記述している(図5)。 図4[註3] 図5 生徒A のノートへの記述 生徒A は,このことについて授業中に直接は発 言していないが,生徒A が教師に質問するなかで, そのように考えていると捉えられる発言はしてい る。しかし,教師は,それに気づいていない。授 業の終盤に生徒A のノートへの記述(図5)に気 づき,そのアイデアを取り上げるために,第2時 を実施することにしている。 第2時の素材,文脈と状況,ねらいなどは,第 1時と同様である。次の7つの数学的なプロセス; 「β1(2)解決の方針を立てること」,「α2(2) 必要な情報を適切に選択し判断すること」,「β1 人 鏡 障害物 マ ー ク A B C E D F G

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20 (3)方針に基づいて解決すること」,「α3(1) 数学的な結果を事象に即して解釈すること」,「β 2(1)結果を振り返って考えること」,「β2(3) 発展的に考えること」,「γ3:事象を多面的に見 ること」,を創出して,そのねらいを達成できるよ うに,第2時では,次のような数学的活動を構想 している(表5)。 表5 活動3−1 生徒A のアイデアを全体で共 有する 活動3−2 生徒A のアイデアをもとに, 問題を自立的に解決する 活動3−3 自立的に解決したことをもと に,協働的に解決する 活動3−4 問題発見・解決の結果や過程 を振り返る 活動3−1では,上記の生徒 A のアイデアを取 り上げ,なぜそれで問題を解決できるかを全体で 共有することを想定している。 活動3−2では,そのアイデアを用いて,ある3 人のデータ(表6)を用いながら自分自身がどこ に立てばよいかについて考えることを想定してい る。 表6 生徒に提示したある3人のデータ[註4] 身長 鏡から 立ち位置までの距離 (ア) 178 149 (イ) 79 68 (ウ) 200 166 活動3−3では,活動3−2において,自立的に 解決した結果や過程などを全体で共有し,それら を比較・検討することを想定している。 活動3−4では,どのように問題を解決したか, どのような結果になったか,結果からどのような ことがわかるかなどについて考えることを想定し ている。 (3) 省察のための資料 本稿では,実施した3回の授業(事例1が1回, 事例2が2回)において収集した次の4つの資料; (ⅰ)生徒のノートへの記述,(ⅱ)ビデオカメラ で撮影した映像記録,(ⅲ)ビデオカメラで撮影し た映像記録をもとに作成した発話プロトコル,(ⅳ) 板書,をもとに省察する。 4.事例的省察 (1) 授業の実際 ① 事例1 教師は,授業の冒頭で,バスの扉が開閉する映 像を視聴し,「扉が折り戸2枚ドア(図2)である バスに乗っているとき,扉の近くに立っていたら 扉が開かなかった」という素材,文脈と状況を設 定している。文脈と状況から,2枚のドアの動き に着目して,「どの位置に立っていればよいか」, あるいは「どの位置に立っていてはいけないか」 という問題を見いだしている。 生徒たちは,バスの扉を真上から見た様子を平 面図形で表現し,ドアの動きを考察したり,バス の扉の2枚のドアの接続部分を点で表現し,その 点の軌跡を考察したりするなどして,どの位置に 立っていればよいか,あるいはどの位置に立って いてはいけないかについて探っている(図6,図 7)。 図6 生徒B のノートへの記述[註5] 図7 生徒C のノートへの記述 その後,それぞれの生徒における解決の結果や 過程を共有している。生徒C は,扉の2枚のドア の接続部分の軌跡が四分円弧になるため,四分円 内(境界線も含む)に立っていてはいけないと説 明している。また,右側のドア(図2の BPQC) A P B

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21 の動きにも着目し,扉が完全に閉まっている状態 と完全に開いている状態を除くと3点A,P,B(図 6)が二等辺三角形になることを説明し,二等辺 三角形APB の内部(境界線を含む)も立っていて はいけないと説明している。 生徒D と生徒 E は,2枚のドアの接続部分の 動きを一定間隔で捉えたときに,動く前と動いた 後のドアの交点(例えば,図8のB1P1(動く前の ドア)とB2P2(動いた後のドア)の交点をE1,図 8のB2P2(動く前のドア)と B3P3(動いた後の ドア)の交点をE2)を観察し,その軌跡が曲線に なると説明している(図9)。 図8 図9 生徒E のノートへの記述 生徒B に生徒 E がどのようなことを説明して いるかを確認すると,生徒B は次のように説明し ている[註1]。 生徒B:生徒 E の場合,実際に二等辺 三角形を細かくかいてみて, (点)P の軌跡を求めた結果, 円ともう1つの(点P の軌跡 である円の)逆になっている ような図形になる,って言っ てくれたと思う。 生徒B は,BP(図8)の軌跡が円になるのでは ないかと考えている。 そこで,事前に教師がソフトウェアを用いて作 成したアニメーションで,点P の軌跡と BP の軌 跡を確認している(図10)。 図10 教師が作成したアニメーション BP の軌跡が曲線になっていることを確認して から,教師は,アニメーション(図10)のなかに 適当な円を表示しBP の軌跡に重ね合わせ,それ が円にならないことを説明している。 生徒B と生徒 E は,教師の説明に納得しておら ず,2人で,半径を大きくすればよいのではない かというやりとりをしている。教師は,2人のや りとりに気づき,生徒の発言を受け止め,先ほど 示した円より半径が大きい円を表示しBP の軌跡 に重ね合わせ,それが円にならないことを説明し ている。 何人かの生徒は,そのことについて納得してい ない様子であるが,教師は,アステロイドを表示 し,BP の軌跡と一致することを示して BP の軌 跡はアステロイドであると説明している。 その後,協働的に解決した結果や過程を振り返 り,図9の斜線部分には立っていてもよいが,点 P と BP の軌跡の内部(境界線を含む)には立っ ていてはいけないことを確認している。 最後に,教師が,「(図6の)AP を短くして,そ の分(図6の)BP を長くすると,人が乗れるスペ ースが広がるのではないか」と問いかけると,生 徒たちは,右側のドア(図6のBP)がバスからは み出てしまうことになるため,それは扉の構造上 できないと説明している。 ② 事例2 a.第1時 教師は,授業の冒頭で,「立ち位置から床に置い てある鏡をのぞいて障害物の先にあるマークを見 A P B3 B2 B1 B P1 P2 P3 E1 E2

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22 る」という素材,文脈と状況を設定している。障 害物の先にあるマークを見る実験を通して,生徒 によって立ち位置が異なるため,「自分はどの位置 に立てばよいか」という問題を見いだしている。 教師が,「どのように自分の立ち位置を決めれ ばよいか」,「自分の立ち位置を決めるために必要 な情報は何か」と問いかけている。それぞれの生 徒が,文脈と状況を理想化したり,単純化したり して,図(図4)に表現し,自分の立ち位置を決 めるために必要な情報を探っている。 生徒たちは,必要な情報として,身長(図4の 辺AB の長さ)と図4の辺 AC の長さ,マークの 高さ(図4の辺DE の長さ)と鏡からマークまで の距離(図4の辺CE の長さ),身長(図4の辺 AB の長さ)と図4の∠ACB の大きさ,などを挙げて いる。そこで,教師は,「最小限の情報で自分の立 ち位置を決めるために必要な情報は何か」と問い かけ,生徒たちは1人またはペアで考えている。 このとき,生徒A は,教師に対して,次のような 質問をしている。 生徒 A:先生,これって,もし,角度 (図4の∠ACB の大きさ)を 選んだとしたら,この角度(図 4の∠ACB の大きさ)を求め るために,身長と鏡からの距 離を求めないといけないから, 角度(図4の∠ACB の大きさ) っていうので数えるのか,角 度(図4の∠ACB の大きさ) を求めるための情報も入れる か。 1人またはペアで考えた後に,生徒たちは,目 とつま先,鏡を点で表現し,その3点を結んでで きた図形を直角三角形としてみなし,その直角三 角形に三角比を活用することによって,自分の立 ち位置を決めることができることから,必要な情 報は,身長(図4の辺AB の長さ)と図4の∠ACB の大きさであると答えている。 その後,∠ACB(図4)の大きさを 48°と仮定 して,∠ACB(図4)の大きさと身長(図4の辺 AB の長さ)の情報で,自分の立ち位置を求めて いる。 最後に,求めた式の意味を確認したり,計算の 結果として出た値が何を表しているかを確認した りしている。 b.第2時 教師は,授業の冒頭で,∠ACB(図4)の大き さがわからないことを想定し,誰か1人の身長と 鏡からの距離の比を使って自分の立ち位置を決め るという生徒A のアイデア(図5)を取り上げて いる。 このとき,生徒F がホワイトボードに表現した 図(図11)を用いながら, と の比がわかれば, ∠ACB(図4)の大きさの情報が必要ないことを 確認している。 図11 生徒 F のホワイトボードへの記述 生徒A のアイデアを全員で共有してから,ある 3人のデータ(表6)を用いながら自分の立ち位 置を求めている。 その後,それぞれの生徒における解決の結果や 過程を共有している。生徒D は,図 12 のように 記述し,不等式を用いて鏡から自分の立ち位置ま での距離( )を表している。 図12 生徒 D のノートへの記述 生徒D が,ある3人のデータ(表6)を用いて 求めた自分の立ち位置に誤差が生じていることを, マークが見える距離の範囲として捉えていること を確認している。 また,生徒A は,図 13 のように記述し,3つ の計算結果を平均,四捨五入して鏡から自分の立

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23 ち位置までの距離を表している。 図13 生徒 A のノートへの記述 生徒A が,ある3人のデータ(表6)を用いて 求めた自分の立ち位置に誤差が生じていることを, 3人が鏡にマークが映ったということにおける判 断の違いと捉え,平均値を求めることによって, マークがより鏡の真ん中に映ると捉えていること を確認している。 最後に,ある3人のデータ(表6)を用いて, 鏡から自分の立ち位置までの距離を求めるときに 生じる誤差をどのように捉えるかについて議論し ている。 (2) 省察 ① 事例1 アステロイドは未習であるため,教師は,授業 前に生徒がBP(図8)の正確な軌跡を求めること ではなく,BP の軌跡の概形を捉える活動を構想 し想定している。そして,その構想し想定した数 学的活動を授業で展開しようとしている。 しかしながら,生徒B の発言や生徒 B と生徒 E のやりとりなどから,生徒たちは,BP の軌跡が円 になるかどうかをはっきりさせたいと考えている ことがわかる。 このとき,教師は,授業前に構想し想定した数 学的活動を授業で展開するために,事前に作成し たアニメーションによって,BP の軌跡が曲線に なることを確認したうえで,画面上に適当な円を 表示してBP の軌跡に重ね,それが円にならない ことを説明している。 これに対して,生徒たちは,納得していない様 子である。 このとき,生徒たちは,積極的な問題解決者と して,BP の軌跡が円になるかどうかについて,例 えば,既習の円の方程式と結びつけて,次のよう に問題を解決しようとしていたかもしれない。 動く前と動いた後のドアの交点(例えば,図8 の B1P1(動く前のドア)と B2P2(動いた後のド ア)の交点をE1,図8のB2P2(動く前のドア)と B3P3(動いた後のドア)の交点をE2)をより詳細 に調べて観察したり,ICT を活用してその交点の 座標を調べ,適当な3点の座標から円の方程式を 求められるかどうかを確かめたりすることによっ て,BP の軌跡が円になるかどうかを探ろうとし ていたかもしれない。 しかしながら,教師は,生徒が BP の軌跡がな ぜ円になると考えているか,それをどのようには っきりさせたいか,などについて聞くことなく, 授業前に構想し想定した数学的活動を授業で一方 的に展開している。そのため,教師は,生徒たち がなぜBP が円になると考えているか,それをど のようにはっきりさせようとしているか,などに ついて把握できていない。 この局面において,教師が,生徒たちにBP の 軌跡がなぜ円になると考えているか,それをどの ようにはっきりさせたいか,などについて聞くこ とは,生徒の学びの事実を把握する契機になると 考えられる。 また,BP の軌跡が円になるかどうかを,既習の 円の方程式を用いて捉え考察することは,3点の 座標から円の方程式を求めることだけではなく, その3点の座標を通る円が存在するかどうかを確 かめるための手段として,円の方程式が活用でき るという新しいアイデアを創り出す契機になるだ ろう。 以上のように,授業前に構想し想定した,生徒 が BP(図8)の正確な軌跡を求めることではな く,BP の軌跡の概形を捉える活動を,BP の軌跡 が円になるかどうかをはっきりさせたいという生 徒の学びの事実に即してリデザインしてその後の 授業を展開することによって,次の7つの数学的 なプロセス;「α1(1)ものごとを数・量・図形 等に着目して観察すること」,「α1(2)ものご とも特徴を的確に捉えること」,「α2(1)与え られた情報を分類整理すること」,「β1(2)解 決の方針を立てること」,「β1(3)解決の方針 に基づいて解決すること」,「β2(2)結果を改 善すること」,「γ3:事象を多面的に見ること」, を創出することが期待できると推察できる。 ② 事例2 教師は,目とつま先,鏡を点で表現し,その3 点を結んでできた図形を直角三角形とみなして捉

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24 え,自分の立ち位置を求める活動を構想し想定し ている。特に,最小限の情報;身長(図4の辺AB の長さ)と∠ACB(図4)の大きさ,から自分の 立ち位置を求める活動を構想し想定している。そ して,その構想し想定した数学的活動を授業で展 開しようとしている。 しかしながら,生徒A は,角度(図4の∠ACB の大きさ)がわからなかった場合には,誰か1人 の身長と鏡から立ち位置までの距離の比がわかれ ば解決できると考えていることがわかる。 このとき,教師は,生徒A の発言や生徒 A のノ ートへの記述から,生徒A がそのように考えてい ることに気づいていないため,授業前に構想し想 定した数学的活動を授業で展開しようとしている。 授業の終盤に,教師は,生徒A のノートへの記 述に気づき,それを受け止め,生徒A が文脈と状 況を既習の数学とどのように結びつけ,問題を解 決しようとしているか,について把握するために, 本来1時間で終える予定だった授業の第2時を計 画し,実施している。 教師は,生徒A が自分の立ち位置を求めるとき に必要な情報は何かについて考えるときに,角度 (図4の∠ACB の大きさ)がわからなかった場合 には,誰か1人の身長と鏡から立ち位置までの距 離の比がわかれば解決できると考えているのはな ぜかについて聞き,全体で共有する機会を創って いる。その機会を創ったことは,生徒A が,ある 直角三角形において,角度が1つ決まれば,それ に対応して,三角形の3辺の比がただ1つに決ま ると考えていることを把握する契機になっている。 また,3辺の比を角度の関数として捉え問題を 解決する過程で,ある3人のデータ(表6)を用 いて求めた自分の立ち位置に誤差が生じているこ とに気づき,その誤差を,3人が鏡にマークが映 ったということにおける判断の違いと捉え,誤差 や平均をとることへの意味づけを行っている。 以上のように,授業前に構想し想定した,生徒 が目とつま先,鏡を点で表現し,その3点を結ん でできた図形を直角三角形とみなして捉え,自分 の立ち位置を求める活動を,角度(図4の∠ACB の大きさ)がわからない場合には,誰か1人の身 長と鏡から立ち位置までの距離の比がわかれば解 決できるのではないかと考えている生徒の学びの 事実に即してリデザインしてその後の授業を展開 したことによって,次の7つの数学的なプロセス; 「α1(1)ものごとを数・量・図形等に着目し て観察すること」,「α2(1)与えられた情報を 分類整理すること」,「α3(1)数学的な結果を 事象に即して解釈すること」,「β1(2)解決の 方針を立てること」,「β1(3)解決の方針に基 づいて解決すること」,「β2(1)結果を振り返 って考えること」,「β2(3)発展的に考えるこ と」,を創出できたと推察できる。 5.まとめと今後の課題 生徒が積極的に問題の置かれている文脈と状 況にかかわり,それらを学び得た既習の数学と結 びつけて,問題を解決する,積極的な問題解決者 になるためには,授業前に構想し想定した数学的 活動を,教師が授業における教材を介した生徒と のかかわりを通して,生徒の学びの事実を把握す ることが重要である。そして,教師は,その学び の事実に即して,構想し想定した数学的活動をリ デザインしてその後の授業を展開することで,数 学的なプロセスを創出することができるであろう。 その過程において,教師の果たす役割は大きい。 本稿では,高等学校の生徒 10 名を対象にした 高等学校数学科の「図形と方程式」「三角関数」の 授業を事例として,教師における「聞くという行 為」が生徒の学びの事実に即した数学的活動のリ デザインにどのような影響をもたらしているかに ついて省察した。 省察からは,教師における「聞くという行為」 が,生徒が問題の置かれている文脈と状況にかか わり,それらを既習の数学と結びつけて問題を解 決する過程に内在された生徒のアイデアを掘り起 こし,その後の授業の展開に顕在化する契機とな っていて,それは同時に生徒の学びの事実の新た な一端を教師が発見する契機となっていることが 示唆される。その結果として,授業前に構想し想 定した数学的活動を,教師は生徒の学びの事実に 即してリデザインして授業を展開することで,数 学的なプロセスを創出することにかかわっている。 今後の課題は,教師における「聞くという行為」 を,理論的かつ実践的に精緻化することである。 生徒の学びの事実を把握するためには,教師が 「聞くという行為」を意識化して行うことが必要 かつ重要であると考える。そのため,教師におけ る「聞くという行為」を支える要素を抽出し,そ の特徴を捉えることが必要であるだろう。教師が

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25 どのように聞くことが大切であるか,生徒のアイ デアに数学的価値をみいだすときに必要となる教 師における数学的な見方・考え方は何か,など, 「聞くという行為」を支える要素はさまざま考え られる。抽出した「聞くという行為」を支える要 素を整理しながら理論的に吟味・検討するととも に,授業の省察を通して,実践的に吟味・検討す ることが必要かつ重要であると考える。 註 1)下線部分は,ビデオカメラで録画した映像を もとに筆者らが生徒の手話を読み取ったもの である。 2)国立教育政策研究所教育課程研究センター (2019)において,全国学力・学習状況調査中 学校数学の問題作成の新しい枠組みが示され ているが,省察の対象とした授業は,2017 年度 に計画し行われたものであるため,国立教育政 策研究所教育課程研究センター(2017)におい て示されている全国学力・学習状況調査中学校 数学の「活用」の問題作成の枠組みを用いてい る。 3)図の「A」,「B」,「C」,「D」,「E」,「F」,「G」, 「マーク」は,筆者が書き加えたものである。 4)筆者らによって誤差が生じる数値を設定して いる。例えば,(ア),(イ),(ウ)のtanθの値 は,それぞれ約1.19,約 1.16,約 1.20 となっ ている。 5)図の「A」,「B」,「P」は,筆者が書き加えた ものである。 引用・参考文献 1)中央教育審議会(2016). 「算数・数学ワー キンググループ審議のとりまとめ」. 2)加藤慎一・森本明(2020). 「数学的なプロ セスを重視した授業の構想と展開についての 事例研究:高等学校数学科「三角関数」を事例 として」, 『東北数学教育学会誌』, 第 51 号, pp.17-26. 3)西村圭一・長崎栄三(2008). 「数学教育に おける算数・数学と社会をつなげる力の意義と 学習指導に関する研究」, 『日本数学教育学会 誌』, 90(9), pp.2-12. 4)経済協力開発機構(OECD)(編)・国立教育 政策研究所(訳)(2016). 『PISA2015 年調査 評価の枠組み OECD 生徒の学習到達度調査』. 株式会社明石書店.

5)de Corte, E., Op t Eynde, P., & Verschaffel, L. (2002). 「"Knowing what to believe": The relevance of students' mathematical beliefs for mathematics education.」, 『In B. K. Hofer & P. R. Pintrich (Eds.), Personal epistemology: The psychology of beliefs about knowledge and knowing』, Lawrence Erlbaum Associates Publishers, pp.297-320.

6)Polya, G. (1945). 「HOW TO SOLVE IT:A NEW ASPECT OF MATHEMATICAL METHOD.」, Princeton University Press. 7)新井仁(2016). 「「数学的なプロセス」と「記 述式問題」に焦点を当てた教材開発」, 日本教 材文化研究財団『数学的リテラシーの育成を図 る教材の開発』, pp.52-59. 8)馬淵俊秀・西村保三・櫻本篤司・風間寛司・ 松本智恵子・口分田政司(2018). 「中学生を 対象とした数学的リテラシーを育む教材開発 -数学的なプロセスの複数回体験とその俯瞰 に着目して-」, 『福井大学教育実践研究』, 第 43 号, pp.35-44. 9)国立教育政策研究所教育課程研究センター (2016). 「平成 28 年度全国学力・学習状況調 査解説資料 中学校数学」.

10)Cazden, C. B. (2001) 「Classroom Discourse: The Language of Teaching and Learning (2nd ed.).」, Heinemann. 11)能田伸彦編著(1979). 『算数・数学科 授 業の設計と実際―評価を中心にした科学的方 法―』. 株式会社東洋館出版社. 12)森本明(2006). 「算数の授業における「聞 く」という行為への接近:「考える」をともなう 「聞く」」, 『日本数学教育学会誌』, 88(12), pp.11-18. 13)国立教育政策研究所教育課程研究センター (2017). 「平成 29 年度全国学力・学習状況調 査解説資料 中学校数学」. 14)文部科学省(2018). 「高等学校学習指導要 領(平成30 年度告示)解説 数学編 理数編」.

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Reflection on the Role of Teachers to Create Mathematical

Processes in Mathematics Lessons

:Focus on Teacher’s Listening to Student’s Mathematical

Ideas in High School Class

KATO, Shinichi

MORIMOTO, Akira

Abstract

In study we reflect on the role of teachers to create mathematical processes through developing mathematics lessons redesigned mathematical activities designed before lesson through the relations between teacher and student with teaching-materials in learning and teaching for students in High School. The purpose of this paper is to elucidate whether what teachers listen to student’s mathematical ideas role in redesigning mathematical activities for students. In this paper we reflect whether what teachers listen to student’s mathematical ideas role in redesigning mathematical activities for students on coordinate geometry and trigonometric function for 10 students in High School. The result of the reflection was that it is suggested that what teachers listen to student’s mathematical ideas uncover student’s mathematical ideas in process of mathematical problem solving through correlate contexts and situations in problems with leaned mathematics and teachers discover a part of new aspects of what students learn in mathematics lessons. As a result, it is important for creating student’s mathematical processes in mathematics lessons to develop lessons through teachers redesign mathematical activities designed before lesson.

Key Words:Mathematical Processes,Teacher’s Listening to Student’s Mathematical Ideas, Mathematical Activities,Redesigning Mathematical Activities Designed before Lesson

参照

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