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地球環境を追って: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Author(s)

宇井, 純

Citation

沖縄大学紀要 = OKINAWA DAIGAKU KIYO(11): 95-160

Issue Date

1994-03-01

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/5804

(2)

報告(含む資料)

地球環境を追って

宇井純

(1)研修旅行報告(93.4.10土曜教養講座にて報告)

こんにちは、大変ご無沙汰いたしました。 今ご紹介いただきましたように沖縄に来ましてから6年間ずっと働いており まして、そのあいだにどうもかなりストレスがたまったらしく、心臓の血管が 詰まっていて造影剤を入れて見た時に私もびっくりいたしまして、これはほと んど完壁に詰まっている、いつ心筋梗塞の発作が起こってもおかしくはないと いう話ですっかりおどかされまして、琉大の病院の先生方がこれは大丈夫、バ イパス手術で良くなるからということで手術をしてみました。何といっても生 まれて初めての経験なので本人はうまくいったのかどうかよくわからない。こ んなもんだろうなという事しかわかりませんが、たしかにやる前よりはだいぶ 楽になったというか疲れやすさなんかは取れたなということと、それで手術を してくださった先生方は自信満々でして、大丈夫だもうくっついているからと 手術が12月ですけれども4月から旅行に出ても大丈夫ですよと言うことを信じ て、幸いに途中で発作でひっくりかえることもなく元気に行って来られまして、 予定通り丸1年沖縄大学の海外研修ということで休ませていただきました。こ れは大変有り難い制度でして、以前もこういうことを東大でやったことがあり ますが、その時は助手だったものですからはじめの1年だけはなんとかかんと か渋々給料がでたんですが、だいぶ教授会で文句を言われまして2か月ほど最 後は休職処分されまして、あとあとまでマイナスが響いたことがあります。そ の点私立大学の沖縄大学のほうが国立の東大よりもいい待遇で、ちゃんとボー ナスまで払ってくれましたからこれはいい制度だと思います。今後もこういう 機会をどんどん利用して先生方がリフレッシュするということは必要だなと痛 -95-

(3)

感しました。私も6年ここで講義して来ましたが、だんだん同じことの繰り返

しになってまいりまして新しいことは入ってきませんで、こんどアメリカにつ

いては10年ぶりにしばらく滞在しましてみたところ、やはりこれは来てみない

と解らんことがあるなということを痛感しました。ですからその成果はこれか

らの講義やいろんな活動に反映できると思いますが、小さい大学ではおもいきっ

たいい制度であると感じます。

囮沖縄での苦労

正直な話、沖縄に来ましてから曰本の外のことに構っている暇がなかった。

それはご承知のように新石垣空港をはじめとして沖縄県内の問題というのは、

あまりにも目の前でめちやくちゃなことが進行するものですから、それをとも

かくも多少なりとも食い止めるのに精一杯だったと言うことが正直なところで

あります。特に新石垣空港の問題については、なんといったって県庁という権

力をもったところが計画を進めるものですからどんなインチキでも通る。イン

チキのところを掘り起こして、誰が見てもこれはおかしいじゃないか、やめた

ほうがいいというふうなことを-つこしらえるために、何か月かこちらは足で

歩かなければならない。新石垣空港でこんなばかばかしい事がおこっていると

いうことがいくつもあったんですが、ひとつはたとえば工事のために士をとる

ところには雨がふるから、そこへ降った雨は海へ泥を流さないように沈殿池を

つけます。埋め立てをじゃんじゃんやっているリーフの中の珊瑚礁の中の埋め

立て地の方は雨は降らないから何もしなくていいんです。こんなものが環境ア

セスメントとして通る、通るというか出てくる。これはおかしいじゃないか、

たった4キロしか離れていない土採り場でどしゃぶりの雨が降って、それで埋

め立て地は雨も降らなきゃ台風も来ない、潮の干満もなんにもないとはおかし

いんじゃないかということになると、いやこれはこれでいいんですというふう

なことを、半年くらいは県庁はがんばります。県庁と押し合っていてもしょう

がないから環境庁なり建設庁なりに行ってこんな馬鹿馬鹿しいのがあるけど、

どうする気だ。これはいくらなんでも酷いからちょっと考えます。というふう

な繰り返しです。 -96-

(4)

あるいは十分な対策を立てたから泥は一切流れません。その証拠に同じ工法

でやった奄美の空港は全然珊瑚に損害はありませんと言うから、行ってみると

珊瑚は全滅、こういう事実を積み上げて動きが取れないようにして、さあどう

だということをやらないと権力というものは足を止めない。何を言うか沖縄大

学ごとき私立大学の吹けば飛ぶような大学教授が、沖縄の東大と言われた琉球

大学の教授に対してけちをつけるとは何ごとだというような調子で権力が押し

通る、これが沖縄の実情です。ですからその中で互角に喧嘩をするためにはど

うしたって相手の3倍ぐらい勉強しなければならない。3倍くらいの時間とエ

ネルギーを掛けなければ互角にならない。これは沖縄だけではありません、日

本全国どこでもそうでありまして、曰本全国の住民運動はやはり相手の3倍5

倍の努力をしてどうにか互角に喧嘩を進めてきたんですが、沖縄でもその通り

でありまして、それで時間はとられる、それからストレスはたまるということ

で、これで病気にならなかったほうがおかしいのですが、ともかくそれでも命

はとりとめたということで、沖縄の外のことをかまっている暇はほとんどあり

ませんでした。その間にやはり事態が進行しているらしいという噂、あるいは ニュースはぽちぽち入ってきました。例えば台湾とか、韓国とか東南アジアと か時々通りがかりに眺める程度でも、これは公害がえらいことになっているな というのがわかる状況がありました。ですからこのへんでやっぱり1年かけて

すこしゆっくり見なおしてこよう、そして曰本の経験がどこまで通用するのか、

ひょっとすると曰本で我々が経験したことというのは世界のかなりの部分で共

通に起こっているんではなかろうか、そうすると曰本の経験をどうやって先手

を打って伝えるかということがこれからの仕事になるのではないかという予感

をもちながら歩いてきました。案の定、やはりそういう現実にぶつかりました。

囮カナダ・モントリオール郊外のもう一つの生き方勉強会

たまたまリオの地球サミットの前にカナダで会議がありました。カナダの白

人の研究者から手紙と電話を貰いまして、どうも白人が作ってきた文明とは非

常に破壊的である、これまでその破壊的な文明が原住民の文明などを滅ぼして

きたのだが、あきらかに行き詰まっている。あらためてもっと自然に対して優 -97-

(5)

しい、自然のなかで生きている原住民の文明から学ぶ必要があると思うのだが、

もう残っているのはいくらも無い。アジアでは、例えば沖縄はまだ残っている

と聞いたが、あるいはアイヌの生き方には勉強になるものがあると聞いたが、

そういうグループがあったら送ってくれないだろうか、もちろん旅費は持ちま

すという話です。それからおまえも来てくれないかという話があって、いろい

ろ調べてみたけれども、沖縄ではそういう目に見える形で伝統的な暮らしをし

てきた体験をもっているグループはなかなかみつからない。こっちからあの人

がいいんじゃないかという場合には、また地元で忙しかったりなんかしてそん

な事に出掛けられるかというふうな事情もいろいろありまして、アイヌの方も

同じような状況で、やはり固有の生き方をずっともってきている所はほんとに

わずかになってしまって、とても動きが取れないということでちょっとこれは

無理だよという話になりまして、じゃあ、まあ曰本から何を持って来れるんで

すかというわけですから、それほど目立ったものではないかもしれないけれど

も、すくなくとも1950年代ぐらいまでの曰本の伝統的な農村生活を今やってい

るグループはある。まあヤマギシ会というのを多少付き合いがあって知ってい

るからそこではどうだといったら、なんでもいい、ともかく曰本の伝統的生活

が解るもんならどこでもいいです、という話になりまして、ヤマギシ会の方も

今まであんまり外に出たことは無いけど-度行ってみましょうかというので、

何人かの人が参加してくれました。沖縄ではあまりヤマギシ会というのは知ら

れてないんですけども、だいたい三重県から京都府ぐらいにひろがった、一種

の新興宗教に分類すればできないこともないんですが、要するに私有財産を持

たないで皆で一緒に暮らして、そして何ごとも相談ずくで決めて有機農業をや

るというグループがある。割合にのんびりして縛りがすぐないものですから、

例えば自主講座にきていた若い人がいつの間にか見えなくなったなと思ったら

ヤマギシ会に入っていましたとか、逆にヤマギシ会でちょっと行き詰まったん

でこんどは自主講座に来てみますとかいうふうなことで人の行き来があったの

で知ってたものですから、そこへ話しましたら大変カナダでも喜ばれまして、

たしかに私有財産を持たないというのは白人の社会ではめったにないことです

し、キリスト教の宗派の中でこれまで歴史的にそういうものが幾つかありまし

-98-

(6)

たけれども、宗派になりますとこれは当然かなり集団としてがっちりした枠組

みをもっているわけですね。例えばアメリカでよく知られているアーミッシュ

なんかは自動車は使わない。それから着ているものは汚れが目立たない黒い服

だけで、20世紀に入っての文明の力っていうのは原則として使わない。だから

村の中で使っているのは馬車とそれから牛がスキを引いていてトラクターはあ

りませんという暮らしがあります。アメリカのような開拓地に入ってきた集団

というのは幾つもそういった宗派があって、曰本でも去年ちょっと知られるよ

うになりました手作りの家具で非常に質のいいものを作ってそれで暮らしてい

たグループがありまして、ちょっと詳しいことを度忘れしましたけれども、た

しかシェーカーといったようです。曰本で展覧会力潤かれて、かなり有名になっ

たというふうな事例があります。ですが、そういうキリスト教の中で少数派の

グループとか、あるいはヤマギシ会のような曰本の伝統的農業を共同生活でやっ

ているグループとか、現状からあんまり大きくかけはなれることは無くて、少

しずつ現状を変えていこうという考え方を実行しているグループと、もう片方

にアメリカ大陸原住民のインディアンですとか、あるいはオーストラリアのア

ポリジニとかアフリカの部族社会とか自然の中で育ってきた自分の文化をとも

かく頑張って守って行こうというグループがありまして、これは白人社会から

するとかなり違ったというか、そもそも発生の元が違う、次元の違うようなと

ころもあります。そういう解りにくい所からも学んでいこうという空気が出て

来ました。これは曰本ではそこまで行ってないのですが、ヨーロッパや特にカ

ナダなんかですと相当いろんな所で、特に宗教関係がだんだん行き詰まって多

様化してまいりますから、その中でいろんな生き方から学ぼうという動きがず

いぶんあるようであります。この場合はかなり組織的に一種の勉強会を作って

勉強をするんだという機会がありまして、私もおおいに参考になりました。何

と言っても環境問題というのは、そういう中で一番大事なひとつの基盤になり

ます。環境を壊さないでどうやって生きて行くかということをカゴ土台の一つに

なりますから、そういう点では参考になりましたし、曰本の在来農業のやり方

である有機農業のヤマギシ会が、大変評判が良かったというか期待されたのは

有り難い次第でした。 -99-

(7)

田ブラジル社会の変化の動き

これはブラジルに行ってみたら実はもっと大きな問題だったという事に気が

付いたんですが、今まで私はブラジルに何回か行っておりまして今度は4回目

なんですけれども、今まではせいぜい長くて2週間、短い時は3曰間なんてい

うひどい曰程がありまして、会議に出るとかそれが精一杯だったんですが、幸

い今回はこの沖縄大学が、サンパウロにありますマッケンジィ大学と提携をす

る話が進んでいまして、先方に知念先生という沖縄出身の法律の先生がいらっ

しゃって、この先生が中心になって話を進めているんですが、大変に事業家と

しても成功された方で、町の中にアパートの空いているのを持ってるもんです

から、そこへ入れていただいて、そこがサンパウロの町の目抜き通り、-番に

ぎやかなところということは一番物騒な所ということですが、そこでしばらく

ゆっくり大学の様子とか町の様子とか見る機会ができました。今まではそうい

う機会が無かったものですから、ブラジル社会というものを十分つかみきれな

かった。今度はややゆとりをもって見ることができました。なにぶんにも凄ま

じい所でありまして、まあ我々が行きますとまずびっくりするのは、食べ物を

はじめ何でもある豊かな国で、何でこんなに貧乏人が多いかということですね、

1曰1パーセントのインフレで町を歩いていても、ひったくりに気をつけない

とあぶなくて歩けないサンパウロの町中です。これはだいたいブラジルの大都

市はほとんどそうだとういうことでして、表通りだけみると見えにくいもので

すが、ちょっと裏へ入るといたる所にスラムがありまして地方から流れこんで

きた食うや食わずの人達がそこに住みついて、そして仕事もありませんから、

かっぱらい、ひったくりというのもりっぱな職業になるという状況です。中南

米全体にある程度共通にあるわけですけども、その中で何とかしなきゃならな

いという考え方は当然スラムの人間を含めてあるわけですが、一つの現れが例

えばペルーで出てきた、まともな政治家をかついでまともにやろう。それには

曰本人が真面目だから日本人をかついでみたというフジモリ現象ですね。これ

はサンパウロなんかでもやっぱり最近曰本人や沖縄人の政治家が州議会ぐらい

まで出てくる。あるいは国会でもぽちぽち出てくるというふうなかたちで、信

用されてかつがれている動きとしてひとつあります。つまり政治を上から何と

-100-

(8)

か改革しようとしてブラジルの場合には、ちょうどこの流れが地球サミットの

直後に表面化してきまして、大統領が首になったんですね。汚職をやっている

というので上院で首になって、そして上からの改革路線というものは少なくと

も一歩は踏み出された。

しかしそれと平行しまして、下から変えていこうという動きもあるわけです。

それで今から10年くらい前まで新左翼の運動として非合法左翼、都市ゲリラや

何かの形で出てきたんですが、これはどうもやはり壁にぶつかり挫折しましたo

今度は合法的に地方自治体、例えばサンパウロの市ですとか、あるいは比較的

成功してよく知られているのがパラナ州の州都クリティバですけれども、そう

いう市町村のレベルで下からの改革をやっていく手段がないか、クリティバな

んかは治安もいいしブラジルで一番綺麗な町だということで、ごみも無い、リ

サイクルも徹底しているというかたちで、成功している例としてよくあげられ

ます。今度も世界環境都市会議というのがクリティパで開かれまして、曰本か

らもずいぶん人が行きましたし、やっぱりブラジルのなかで他の町を見ますと

クリティバというのはずば抜けてきれいで安全な町で目立つ。少なくともそこ

では政治がまともに機能をしているという印象を受けます。そういう上からと

下からの両方の改革路線がブラジルのようなめちゃくちゃな国でさえ進行して

いるということは事実です。そのなかで、しかも曰系人、沖縄出身者も多いも

のですから、その人達が非常に高く評価されている。事業も成功しているとい

うのは大変心強い事態でありまして、日系人の悪口を言う人間は全くいないし、

それから沖縄にいますとて_げ-な沖縄人に随分ぶつかるわけですけど、ブラ

ジルにいくとまず見当たらない。人が変わったみたいに皆頑張るというところ

でして、私もいろんな会合にやはり引っ張り出されて、環境問題、公害問題に

ついてずいぶん話をさせられました。集まって来ていた沖縄出身者の事業家達

も非常に熱心で、真面目に聞いて熱心に事業をやって成功している例がほとん

どです。もちろんなかなか失敗例というのは我々の目に見えるような所に出て

こないということはあるのですが、全体として大変評価が高いというのが、ブ

ラジル社会の中での日系人の状況です。

これには確かにだんだんブラジルの社会が解ってきますと根拠がある。とい

-101-

(9)

うのは、何しろブラジルというのはポルトガルが植民地にした国でありまして、

15世紀、16世紀からポルトガル、スペインの大航海時代という植民地ぶんどり

合戦が始まったわけです。これはまあむちゃくちゃなものでありまして、つく

づく沖縄にしても日本にしても地球の裏がわにあったのが運がよかったという

ことであります。多少カリブ海の歴史なんかを調べてみますと切り取り強盗、

そこにいた原住民をこき使って働かして死に絶えちゃったら、こんどは黒人を

奴隷として入れてきてこき使って砂糖で儲けて、その儲けた分はみんなスペイ

ンとポルトガルが持って行ったんですが、その割にどっかいっちゃったわけで

すね。今になってみるとちっとも残っていない。もの凄い金を持って行ったは

ずなんですが、全然残っていない。ポルトガルが一番ヨーロッパに近いレシフェ

のあたりに上陸しまして、それでさとうきびを植えたら大いに儲かった。当時

のさとうきびは随分太かったらしいのですが、今行ってみましても親指ぐらい

の太さはあります。肥料なんかはやったこと無い、400年間肥料をやらずにさ

とうきびを作り続けてそれでも親指の太さがあるんですから、最初はどれぐら

い肥えてたか見当がつかない。沖縄ですと、肥料をやらないと人差し指ぐらい

の太さになっちゃいますから、レシフェ周辺のブラジルの場合にはよほど肥え

てたらしいんですが、さとうきびがあまりできないとなると今度は胡椒を植え

て、胡椒がまたできなくなりますとコーヒーを植えて、コーヒーができなくな

りや今度は次の土地があるざと、だんだん南の方に行く。リオデジャネイロの

奥がミナスジェライスという州ですけれども、これはどこでもみんな鉱山とい

う名前なんですね。ポルトガル語でどこでも鉱山というのをミナスジェライス

というので、どこを掘っても金が出てきた、何かお金になるものが出てきたと

いうところで、そこもみんな掘ってしまいまして、それから今度はサンパウロ

の方に行って、サンパウロも大体コーヒーが行き詰まってあんまり採れなくなっ

たから、もう少し奥の方へ行こうか、そこでパンタナールとかアマゾンとかが

今狙われている。アマゾンの場合の開発なんかも非常に舌曝なものでして、こつ

からここまで畑にしますとなりますと火をつけて焼いた後、牧場にしてそれで

10年もすればあんまり草も生えなくなりますから、そこは終わり、また新しい

ところに火を点けていくというのを繰り返して行くわけですから、そこに住ん

-102-

(10)

でいた原住民なんかはたまったもんじゃありません。どんどん追い立てられて

滅亡して行きます。地球サミットでもよく南北問題の中で議論された、先進国

が地球環境を色々言うのはけしからんじゃないか、俺達は環境を開発する権利

があるというふうな事をブラジルやマレーシアの政治家なんかが言って、南北

問題は難しい問題という話になったんですが、ブラジルに行ってみますとこれ

はよくわかる。つまり今まで切り取り強盗をずっとやってきて最後に残ったの

がアマゾンである。そいつをまた思いどおりに切り取り強盗をする権利がある

と言っているのがブラジルのエリートであって、こういう連中はいくら土地が

あったって足りることがない。10年もすればまた土地を枯らしてしまって次の

土地に行くに決まっている。だから環境問題における南北対立というのは誰が

言っているのかということについて眉に唾をつけてじっくり聞かないと、とん

でもないインチキな議論が出てくる。

囮アジアの持続性農業

その中で例えば曰本の農業というのは同じところで畑を作って肥料を入れて、

そして何十年でも同じ土地で生きていこうというんですから明らかに異質です。

我々の農業のイメージというのは持続可能な発展のイメージでして、何十年何

百年同じ所で土地を肥やしながら生きていくのが農業のイメージなんですが、

ラテンアメリカの農業のイメージは違います。肥料もやらずに、作物をまいて

採れたものはみんなひったくってどっかへ持って行って、何にも生えなくなっ

たら最後は放牧です。牛を放して、これは何にもしなくても増えますから、増

えた分を採っていればいいというのが、これが農業のイメージです。ですから

ラテンアメリカあるいは南ヨーロッパの農業のイメージというのは非常に掠奪

的でして、我々が持っている農業のイメージとはまるっきり違う。そこへ北ヨー

ロッパのもっとやせた所あるいはアジアの農業が入ってきますと、これはせっ

せと土地を耕し肥料を入れてこつこつやるもんですから、周りで見ている方が

あっけにとられるんですね。ヤマギシ会の農場が、やはりサンパウロ州にあり

まして1,000ヘクタールほどのオレンジ畑を手にいれた。オレンジ畑というの

は、30年に-度ぐらいずつ木を植え直さないといけないんですけれども、日本

-103-

(11)

でやっている流儀でオレンジの苗木を植えたときに、堆肥を入れたら周りの連

中がびっくりした。木を植える時に堆肥を入れるなんてことは初めて見たとい

うんですね。曰本から行った方はそれが当たり前で、堆肥を入れないでオレン

ジを植えるなんて考えたこともなかったと言うんですけれども、周りの人間は

日本人が堆肥を入れるのを初めてみた。そういうふうに手をかけて植えますか

ら、1ヘクタールだいたい1,000本くらいの苗木を植えますけど、植えた人は

全部覚えているんですね、どの苗木はどういうふうなかっこうだったとみんな

頭に入っているというその話をすると、やっぱりブラジルの連中はみんなあっ

けにとられる。曰本人というのはコンピュータみたいな頭を持っているな、1

枚の畑に1,000本植えたやつが全部1本1本覚えているということが信じられ

んという話になるんですが、そういう農業についての非常に広い考え方の違い

があるなかで日本の農民というのはどうやら定着している。これは曰本だけじゃ

なくてヨーロッパの農民でもスペイン、ポルトガル以外はもう少しまともにや

ります。ですからヤマギシ会の村の側にオランダっていう村がありまして、こ

こはオランダの農民が定着したんですが、ちゃんとチューリップを植えて花で

儲けて食っています。これもブラジル流ではない、かなり定着した農業ですね。

我々はイタリーなんていうと随分ちゃらんぽらんで、いい加減なもんだと思っ

ていたんですが、ブラジルにいくとイタリーは随分真面目な方に入りまして、

だいたいパラナ州の移民というのはドイツ人とイタリー人が多いので、やっぱ

り農業がちゃんとやられている。北の方に比べて遥かに生産性が高いというこ

とになっています。そういう点ではブラジルの農業も新しい動きが出てきて、

今後はもっと持続可能なものになるかもしれない。それで分配が旨くいくとす

ると日本よりは随分ましな国になるだろう。よくブラジルの人に日本を説明す

るのに、だいたい曰本の面積とサンパウロ州が同じくらいの広さで、8割が山

で人が住めませんで残りの2割の平らなところにだいたいブラジルよりちょっ

と少ないぐらいの人口が住んでいます、というと皆あっけにとられるんですね。

あんな狭いところにどうやって1億2千万人入っているんだというから、他に

行く所がないから入っているんです、それぐらいのやり方でやればブラジルは

20倍以上の広さがありますから3億人や5億は食えるでしょうね、という話を

-104-

(12)

すると皆納得してくれるんですね。やっぱり今のブラジルの政治と経済がおか

しいから食えないのであって、まともにやりやあ曰本より遇かに豊かに食える

はずだという可能性のある所です。その点では曰本の農民の進出というのはブ

ラジルの役にたっているなということを痛感します。 囮政府間会議の評価

そこで開かれた地球サミットの方は、これはルーズなブラジル調プラスどこ

でなにが起こっているかわからないということで大混乱でありまして、よく国

際会議として期曰以内に治まったもんだというか、私も中へ入っていたもので

すから、どこで何が起こっているのかさっぱりわからん。そこへもって、異常

気象で非常に暑い時期だったものですから暑さに参ってしまいまして、2.3

曰寝込んだりしてさっぱり様子がつかめなかったところがあります。20年前の

ストックホルムの国連環境会議の時は民間団体が随分いろんな企画をやって政

府を突き上げたんですが、その時の各国の仲間をほとんどみかけないんですね。

どうしたんだろうと思って聞いてみますと、だいたい曰本以外は政府の代表団

に民間団体が入っていろいろ助言したり政府を誘導したりして、日本だけが民

間団体というのはともかく政府の言うことをきかない反体制だから中には入れ ない。ブラジルがやはり政府がうまく民間の力を使いこなせなくて、弾き出さ れた民間団体が民間会場で気勢を上げていたようでした。結局、民間会場で一

番目立ったのがブラジルと曰本で、両方とも政府の団体に入れなくてそれで自

分達で気勢を上げていた。それはそれである程度効果はあったんですけれども、

他の国は巧みに民間団体の力を取り入れているところがほとんどであった。こ

れは日本政府としても我々としても両方反省しなきゃならないことでして、あ

とでこの事についてもう一度触れますけれど、地球環境について例えば竹下さ

んなんかが大変熱心だということについて我々は初めちょっと意外な感じがし たんですけれども、これはヨーロッパやアメリカなんかではあたりまえだとい

う状況を、もう一遍我々は見直す必要があるだろうと思います。ただ国際会議

としては、保守的あるいはおよび腰で全体のまとめの足を引っ張ったという批

判を浴びたのはアメリカ、イギリス、曰本で、そのなかでアメリカは特に共和

-105-

(13)

党政権のブッシュさんが表向きはいいこと言ったんだけれども、実際には生物 種の多様化条約なんかは調印しない。それから妥協点をみつけるためにいろい ろ皆が相談するときにアメリカが反対だからということで、だんだんに合意の 線を引き下げて来て、最後に「調印しない」と言うものですから皆が怒っちゃ うんですね。「おまえの言い分を入れてずっと妥協してきたのに、最後にやら ないとはなにごとだ」ということで、アメリカは大変評判を落としました。そ れからやはり合意形成過程でねばって全体の妥協水準を下げてきたということ でイギリスが批判された。曰本はやや別でして、曰本はできることもやらない、 それから口ではいいことを言うんだけれども、いざという時にちゃんと動かな いというので、-番象徴的なのは宮沢さんが忙しいから来られないのでビデオ で演説をしますというのがありまして、これはやっぱり皆に袋叩きにされて結 局実現しなかったのがありますけれども、曰本は金は出すんだけれども、かえっ て自然を壊すような計画に金を出している。例えばブラジルの中でもその種の 計画が幾つかありますし、それからインドのナルマダダムは世界中にも知られ た例ですが、曰本の援助で沢山の農民が追い立てられて役に立たないダムを造っ た。自然破壊の度合の大きいダムを造るというふうな批判があちこちにありま して、結局国際会議で一番評判が悪かったのはアメリカ、2番目がイギリス、 3番目が曰本ということで表彰されたというのはへんな言い方ですけれども、 NGOの会議で民間団体の会議でもっとも態度が悪かった国というのを三つ上 げたら3番目が曰本になったというふうないきさつもありました。アメリカの 場合には、ただしこの後で大統領が交代しまして、クリントン・ゴアというチー ムが選出されて、ゴアは世界を代表する環境問題に詳しい政治家のひとりとい うことなのでかなり変わることが予想されます。イギリスはなんと言ってもヨー ロッパの一部でそれほど影響力は大きくない。結局アメリカが方針がかわりま すと日本が目立つことになるとは今後当分の見通しです。 囮左翼の行き詰まり それからラテンアメリカでやはりある程度共通にあってブラジルでも目立っ たことなんですけれども、リオデジャネイロ州とか幾つかの州では左翼の州政 -106-

(14)

権が成立しています。左翼といっても、自分は左翼だと名のって、マルクシズ ムのたぐいを理論として採用しているグループというぐらいのもので、本当に 左翼かどうか解りません。リオでは労働民主党というのが政権をとっているけ れども、ちっとも労働者の党でもなきや民主主義でもないよとリオの市民は言っ ていましたから、名前と中身はだいぶ違うんだということを皆知っているんだ が、それでも一応左翼ということになっている。左翼の連中がいうのは環境問 題なんかに金をかければ、労働者の取り分が減る、だから環境問題なんていう のは資本主義の二次的な矛盾なんだから資本主義を打倒すれば自動的に解決す る、したがって左翼はそういうふうなものにエネルギーを注がないでよい、と こういっていたんですね。どっかで聞いた議論だなあと思うと、これは実は 1967.8年ごろヨーロッパで労働党や社民党が言っていた議論ですし、それから 70年代を通じまして曰本社会党なんかがやっぱり言っていた議論です。社会主 義になれば公害問題は自動的に解決するんだから、社会主義政権下では公害は ない。「いやあそんなことないよ、俺は東ヨーロッパを歩いて調べたけどだい ぶ酷いぜ、ソ連とか中国ではだいぶえらいことになっている」という話をしま したら、おまえは「社会主義の敵」だと言うんですね。社会主義を誹誇するも のだとだいぶ日本共産党や曰本社会党、特に社会主義協会の人達から怒られた ことがあります。実際には蓋を開けてみましたら、ソ連にしましても東ドイツ にしましても東ヨーロッパにしましても大変な産業公害で、社会主義のもとで こそ公害は進展するというふうな実例が沢山出てきたわけですけれども、1992 年になってもまだそういうことを言ってるのが中南米にはある。もちろん中南 米の労働者諸君に言わせると、「あんなもの左翼でも社会主義でもなんでもな い。労働ボスだよ。あいつらの言うことなんか信用したってだめだよ」という 反応がかえって来ますけれども、一応表向きは左翼が環境問題を解決するみた いなことをまだ言っているやつがいるというのがこのラテンアメリカの現状で ありまして、そう長続きはしないと思いますが、要するに勉強しないんですね。 自動的に解決する問題だから勉強する必要はない。これが-歩進みますとちょ うどスターリンの下のソ連みたいなもんで、自分達がやっている事は絶対間違 いないんだけども旨くいかないとすれば、どっかで資本家のスパイが邪魔して -107-

(15)

いるからに違いない。だからそいつは見つけて出して粛清しろということにな

ります。そういう過程を見てきますと、曰本の左翼なんかが言っていた「自分

達が政権をとれば全て旨くいく」というのは全然根拠のない話だというふうに

考えるようになってくるんですが、これはまたあとで沖縄の現状と照らし合わ

せて考えてみることにします。

ラテンアメリカで解った事は、左翼は勉強しないということでした。ただ彼

等も人気を取るカンはいいので、地球サミットが始まりまして市民が皆環境問

題に対して大変熱心に発言するようになったんで、今度は彼等飛び乗ってきま

して、それで会合なんかがあると知事さんだとか市長さんだとか、先頭に立っ

て「わが党は昔から環境問題について頑張ってきました」というふうな演説を

やります。そういうふうな事を見ていますと、昨日まで言っていた事とまるっ

きり逆な事を言って恥ずかしくないのかなと知っている人は言うわけですけれ

ども、本人は大まじめでそういう180度態度を変えて逆の行動をとるというの

がやはり目立ちました。ですから、政治家の質の悪いのはどこでも同じような

もんだなあということは感じました。もちろんまともなのもあるわけですね、

クリティバの市長なんかはまともにやってきて実績が上がってきた。それから

サンパウロの市長もかなりそういう点で評判が良かったんですが、リオデジャ

ネイロの知事というのは非常に評判が悪かった。嘘っぱちでその時に応じてな

んでも言うくずの政治家だと、労働者は言っておりました。そういう点では民

衆は政治家を見抜いている面があります。

ブラジルではそういうラテンアメリカの社会というのは非常に収奪的で、そ

の時限りの飯の食いかたをしてきた。それが今行き詰まったんだということを

痛感しました。いい例がサンパウロから海へでたところ、サントスの手前にあ

りますクパトンという工業地帯がありまして、これはブラジルでも最も公害の

進んだ死の谷として有名でありますけれども、本当に救いのないような産業公

害の激化が起こっていまして-度行ってみたいと思っていたんですが、今回ゆっ

くり見てくることができました。こういう所へ工場を作ったら必ずこうなるな

という、空気の流れのない谷間に公害企業をいっぱい作って、しかも対策を始

めから全然立てないのですから煙も汚水も出し放題ということになりますと、

-108-

(16)

平均寿命がちぢまる、あるいはスモッグが溜ると死者が大量に出るというふう な事態が起こっています。あとから金をかけて多少の対策をやって、3割ぐら いは良くなったという話なんですけれども、それでも日本からいってみますと 1965年ごろの四日市が丁度こんな按配だったなあというふうな感じですね。逆 に言いますと、曰本もそこから後だいぶ改善されたわけですから、改善しよう と思えば手がある。ただ金がかかるからいやだと言っているだけの事でありま して、それを強制的に金をかけろということにすれば、産業公害はかなり改善 できるということも歴史の中で解ったことであります。 囮初めてのオセアニア その後、私はまだオーストラリア、ニュージーランドは行ったことがなかっ たものですから、今度は行ってみようということで、しばらくゆっくり行って きたんですが、私が行かないところというのは環境のいい所で、今までたいが い私が行った所というのは公害問題があってしょうがなくて行った所ですね。 曰本国内でもですから全部の県は結局行ったことになりますけど、しかしその 中でも比較的後から行った佐賀県ですとか、あるいは北海道の標津の辺りなん てのは公害が少なかったことになります。そういう点ではオーストラリア、ニュー ジーランドは確かに公害が少なかったということは事実です。ただやっぱり行っ て見る値打ちはあるところでありまして、実はヨーロッパ人が入ってきてから ほぼ200年ぐらいになりますけれども、その間に随分自然が変わってしまった。 というのは、大きな変化はまず鯨ですね、一番最初にオーストラリアにヨーロッ パ人が来たのは鯨を捕るためだったそうです。その次は海豹の毛皮を捕るため だった。その次には木を切る、材木ですね。4番目が金です。ともかく金にな るということでわあっとやって来て、わあつと物を持って行ったもんですから、 森林も大部分は切っちゃって、その後が牧草地になって羊がいる。これも行っ て話を聞くまではやっぱり解らなかったですね。ヨーロッパにはないすばらし い性質のいい木があって、1本で5軒も家が建った、というそんな太い木があ るんですね。直径が3メートルから5メートルぐらいの巨木があって、それを 輪切りにして牛で引っ張っている写真を見ますと、なるほどこんな素晴らしい -109-

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木があったのか、それで木造の家屋を建てて、しかもそれがヤニが詰まってい

るものですから全然腐らない。それから軽いので船の構造材料にすると大変い

い木造船ができる。さらにはスエズ運河を建設する時の鉄道の枕木に大量に使っ

たというんですね、ですからヨーロッパの入り口までは持っていった。世界の

よその地域にはないそういういい材木がいっぱいありまして、ほとんど絶滅に

近く切ってしまったという。今お土産に輪切りにした松の材を売っているわけ

ですけど、直径30センチぐらいの松で200年とか300年とかいう年輪が数えられ

るんですね。それぐらい成育が遅い。それで全然腐らない木がありまして、そ

れを使って今度は金を掘ったんですね。金というのがまたこりや恐ろしいもん

でありまして、金が出るということになると世界中から金掘り人夫がやってき

ます。だいたいオーストラリアやニュージーランドの場合ですと、今から100

年ぐらい前にゴールドラッシュがありまして、それで我々よく足尾銅山が曰本

のグランドキャニオンみたいだ、というんですけれども、足尾銅山の何十倍の

規模の山を掘って裸にしちゃったなというのが、例えばタスマニアとかニュー

ジーランドとかあちこちにありまして、皮肉なことに丁度ビクトリア女王の時

代なもんですからクイーンズタウンという地名をつけて、クイーンズタウンと いうのは必ず金が出て、そしてイギリスから金掘りが来て荒らした所です。オー

ストラリアの場合もニュージーランドの場合も、それが19世紀の末に大変な自

然破壊を引き起こし、金の精練のために木を切ってしまいまして、残った材木

を今売っているのが曰本だというんですね。それで今不景気なもんですから、

特にオーストラリアの中でもそういう木が残っているタスマニアの場合には、

曰本にパルプの材料になるチップを売って国有林を払い下げている。それに勿

論反対する運動も地元にありまして、森林の搬出に対して座り込んでそれを止 めようとしている、けが人が出る一歩手前までいったという座り込んだ人達か ら話を聞いたけれども、材木屋の方もそうとう乱暴な事をやるんで、車に火を つけて燃されちゃったとか、危うく殺されるところだったとか、かなり際どい 話を聞いたことがあります。どうするかということで、こっちもじゃあ悪知恵 を少しつけようか、どういう会社が買っているんだと聞くと、三菱製紙と大昭

和製紙だっていうわけですね。三菱も評判悪いけど、大昭和というのもあんま

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り評判のいい会社じゃあないよ。確か2,3年前にゴッホの絵を百何十億円で

買ったのは大昭和の前の会長、これはみんなよく知っている話だね。駿河湾の

田子ノ浦をパルプの廃水でめちやくちやに汚しちゃいまして、それで儲けた金

でゴッホを買った。だから皮肉な言い方をすれば駿河湾の海を売ってゴッホを

買った。それを聞いたオーストラリアの連中が喜びましてねえ、そういう事で

儲けた金か、それじゃあ俺達もその話を利用させてもらおう、今度曰本へ代表

団を送って抗議に行くから、ゴッホを買うぐらいに儲かるんだったらもう少し

別の仕事をしろと涙じ込むことにする。おそらく7月か8月に代表団が来ると

いうことでしたから、多分これから多少ニュースになるかもしれません。

囮アマゾンのゴールドラッシュ・金が自然の息の根を止める

金の話というのはしかし、今実はアマゾンで大変な大きな問題になっていま

して、80年代にはいって今度はアマゾンで金が見つかった。そうしますとブラ

ジルの東北部の食うや食わずの人夫が、大量に20万人以上というんですけれど

も、アマゾンに流入しましてそれで金探しをやります。これは簡単なやつは鍋

みたいなもので砂金を拾うというか、水で洗うのが-番原始的なやつですが、

大規模なものになりますと、高圧のホースで泥を押し流しましてその中に入っ

ている砂金をあつめます。キャンバスみたいな布に水銀を塗り付けまして、そ

この上を泥水を流しますと、砂金が水銀に溶けましてそこへ吸い込まれる。そ

れから鍋の中にも水銀をちょっと入れておきまして、こうやるとそれに金が溶

ける。そうやって集めました金を含んだ水銀を、ガソリンバーナーで焼きます

と水銀は蒸発してあとに金が残ります。ですからだいたい1グラムの金を採る

のに2グラム近くの水銀を使うんだそうですけれども、1980年代に入ってアマ

ゾンで採れた金は、だいだい1,000トンぐらいと推定されています。これは公

式の統計でつかめるのは2割ぐらいであとはみんなやみですが、実際に金に関

係している人間は、だいたい1,000トンは採れているんじゃないかといいます

と、2,000トン近くの水銀がアマゾンに流れ込んだことになります。当然水俣

病の心配がなされたわけですけれども、まだ今のところ患者は見つかってない

というのがブラジル側の調査の結果なんですが、たまたまもう20年以上も昔の

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話ですけれども、水銀が問題になったのがスウェーデン、フィンランドという 北欧諸国だったもんですから、水銀に関する研究というのは北欧が進んでいる んですね、そこでブラジルの電力会社がヘルシンキの大学に調査を依頼しまし て、大学院学生数名ぐらいが現地に1年間近く住み込んで調査した結果が漏れ てきまして、それを見ますと髪の毛の中に200PPMくらい水銀が溜まった例が ある、というんですね。これはもうどうみても水俣病がでてもおかしくない水 準でして、そういうふうな情報がリオで会議に漏れてきたもんですから、気に なりましてアメリカにいったついでにヨーロッパへ渡りまして、ヘルシンキ大 学でその調査をやった教室の主任教授が昔からの親友だったもんですから聞い てみたんですが、いや、別に秘密にしているわけじゃない、かなりデータも有 るが、ただなんといっても遠くてちょくちょく調べに行くわけにはいかないも んだから予備調査のままになってる。そこから先は金がなくて進んでないとい うことだったんですが、どうも水俣病一歩手前までいっていることは確かで、 ひょっとすると患者がでているかもしれない。これは当然のことですが原住民 あるいはそこに住んでいる貧困層の中に患者がでてくるもう片っ方で、金堀り 人夫というのもこれは食うや食わずなんですね、本当にからだひとつでやって きて、鍋ひとつで金が何グラムか採れれば大儲けなんですけれども、それを売っ た金では酒と女で使っちゃいまして結局もとの黙阿弥になります。本当にやっ と生きているだけの金堀り人夫が環境を汚染して、またやっと生きているだけ の原住民がそれで病気になるという構造がアマゾンで進行しているもんですか ら、これはまあなんとかせにゃならない。しかし地球の裏側なもんで我々も打 つ手がなかった。 田割り込んで来る環境庁 幸いなことに東大の同僚で、中西準子さんが中心になって調査チームを組ん でくれることになって、それで東大とか熊本大学、水俣病に詳しい熊本大学と かが組んで研究計画を立てた。そうしましたらそこへ横から環境庁が乗り込ん で来まして、そっくり似たような研究計画を何倍かの国家予算で立てて割り込 んで来た。これは帰ってからのことで1月になってそういう話を聞きまして、 -112-

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どうしたもんだろうなと話になりました。悪い事じゃあないと思うよ。つまり

どうせお金のたっぷりある環境庁の計画なんてのは、本当に身をいれた我々の

仕事に比べれば机の上のいい加減なものにどうしてもなる。中西さんなんかの

は手作りというか、自分達で少しずつ金を集めてやるもんだから必死でやるこ

とになる。私達もよく今まで国の計画なんかと競争するというか立ち会う場合

があったんですが、背水の陣で真面目にやる。それからもうひとつそういう競

争関係なんかがあると国の計画の方もいいかげんにやるわけにはいかなくなる。

少しは真面目になる。だからまあ腹立つけどこれでやったらどうという話になっ

たんですが、日本からそういうわけで国が金をだした相当大規模な予算の調査

計画と、それから大学中心のあんまり金のない計画と二通りが今年からアマゾ

ンの調査を始める事になります。どういうことになるのかが楽しみで、おそら

くこれは二つが競争するために少しはまともなことになるだろう。

曰本という国はいまそういう国でありまして、金はうなっているんですね。

あるところにはいくらでもある、どう使っていいかわからない、だからなんか

名目の立つような使い道があるとどんと乗つかってきます。援助だとかいうふ

うなことでどんと乗つかってくるんですが、それをうまく使いこなすような条

件がないもんですから結局無駄使いになる。あるいは変な使い方をされて迷惑

が他のところに出る。インドのサルダル・サロバルダムなんかそうですね。ひ

とつの工事でお金を沢山くいますから、そこに住んでいる人間が迷惑するかど

うかなんてことお構いなしにダムをどんと造る計画が出来る。そうすると土建

屋はそれで儲かる、儲かればまた政治家にお金が還流するという曰本国内と全

く同じ構造が世界中で起こっている。それは沖縄にいるとよく見えることです。

つまり要りもしないダムやいろんな工事が次々沖縄でなされている。それでか

えって被害の方が出てくる。今まで珊瑚礁のところで波が砕けてどうというこ

とがなかったのをわざわざテトラポッドと直立した護岸をコンクリートで作っ

て、かえって塩害をこしらえるような事が沖縄では起こっていますが、そうい

うふうにして日本のお金というのはあちこちで環境を壊していく。全然被害も

何もなかったような小さな小川を三面張りにして水を溢れさせるとか、役人と

士建屋と政治家が食うために環境を次々と壊しているというのが、沖縄の至る

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所で見られますけれども、これがまあ世界中に今広がっているんだなというふ うなことがよく解ります。

田現場で見たアメリカ大統領選挙

去年の留学計画の山になったのが、アメリカのフルブライトの短期プログラ

ムでして、これは丁度アメリカ大統領選挙を見物するために行ってたんですけ

れども、なるほどにぎやかなもんでありまして、アメリカはやっぱり4年に一

度ぐらいあれぐらいのお祭りをやらないと、ストレスが溜まってどっかで爆発

するから、息抜きに大統領選挙ってのはやっているんだなという実感がありま

す。そういう点では沖縄の知事選なんかも悪くはないんだろうと思いますね。

できるだけ派手にやって`息抜きにやるというのは悪いものではない。ただアメ

リカの選挙というのはよくまあ立候補する者がいるというぐらいに過酷な競争

でありまして、1年以上前から予備選挙で政策を訴えて、あいつは若い時に女

と浮気してたんじゃないカユとか、徴兵のがれのためにごまかしやったんじゃな いかと力。、片っ端からあらを拾われてそれをまた何とか防戦して、とういうこ

との中でだんだん力が付いてくるのでありまして、まあやる方は大変だけれど

も、制度としちゃ悪くないなあというのが見た感じであります。

大学なんかでもやっぱり、俺は共和党支持だ、いや俺は民主党支持だ、ある

いはペローを支持するというふうな学生グループが、それぞれに自分の責任で

お祭りを用意して、候補者を呼んで一席ぶたして比べるということをやります

から、いい政治的訓練の機会にはなっているということと、もうひとつ今度の 選挙で意外だったのは、アメリカ人に聞きますと税金の話をしたら絶対当選し ない。だから自分は税金をまけるということは言っても、税金をかけるという ことは絶対に言っちゃあならんのだというのですね。税金を増やすって言った ら絶対に当選しない。ところが今度の大統領選挙でペローはそれをはっきり言っ たわけです。アメリカの財政赤字はここまできている、これを改善するには税

金を掛けるしかない。どうやって税金掛けるか、それはガソリンに税金を掛け

ると言ったんですね、アメリカでは自動車っていうのは生きるために絶対必要

なものでありまして、下駄が燃料食っているようなもんですからガソリンに税

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(22)

金を掛けると大変な大衆課税になります。それでもこうやらなきゃアメリカは

立ち直れないとこうペローは言ったら、そしたら皆結構十何パーセントが支持

したんですね。ひょっとするとペローが勝つかもしれんというぐらいのところ

まで彼が追い上げた。途中で-度降りるっていうことがなかったらひょっとし

たら2位にはなっていたんじゃないか、万一1位になったかもしれないという

ぐらいの勢いがあった。これはアメリカのこれまでの大統領選挙の中では考え

られなかったことだというのをアメリカの友人が言ってたんですね、税金を上

げると言ってそれが支持を集めたっていうのは初めてだ。それだけつまりアメ

リカ人も真剣に財政赤字を考えた部分がある。もう片方で選挙ですからなんで

も勝てそうな事は使えるのでありまして、例えばオレゴン州とかワシントン州

で原生林を切って、これはだいたい曰本に売って儲けようという話なんですが、

そこに絶滅に瀕したフクロウがいるから切るのはまてという保護運動の主張と、

それからいやそんなフクロウなんかよりは労働者の職のほうが大事だと主張す

る、これは共和党の副大統領のクエールっていう男が先頭に立って、日本でい

うとまあ名前を上げたらちょっと気の毒ではありますけれども、イトヤマエイ

タロウとかハマダコウイチというタイプの政治家ですね。ようするに保守派で、

しかも言うことが全然、なんていうかどあほうなところが売り物で票を集めて

いるという男です。だからこそブッシュは副大統領にそういうところの票を集

めるためにかついだんですが実際裏目にでて、だいたいクエールのおかげで票

は減ったという評判だったんですけれども、このクエールってのはそういう大

企業の利益を代表して、そして一切企業の規制はやるなと、企業の規制をやる

と国際的な競争力は落ちる、だから企業保護の政策で国際的な競争力をつけて、

日本企業なんかを駆逐するようにやっていこうという政策をクエールは代表し

ていたわけですけれども、環境の規制なんかも一切やるなっていう主張ですね。

こんなのが副大統領ってのは、大統領に事故があったら大統領になるわけです

から、よく民主党支持の連中が冗談に言っていたのが、クエールのおかげでみ

なプッシュに投票しない。万一ブッシュに事故があってクエールが大統領になっ

たらアメリカはどこ行くか解らないから、あいつが副大統領をやっているおか

げで俺達は有利なんだという悪い冗談を言ってたぐらいに保守派の言い分を代

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表していた男ですが、それが先頭に立ってフクロウか仕事かというふうなキャ ンペーンをやるんですね。こういう次元の低いのが票を集める面もある、アメ リカってのは非常にこう幅広い国でありまして、ふところも大きいからばかな 事も起こるわけです。 囮フラストレーションと直接行動 その一方で、しかし大企業中心の共和党政権が12年も続きますと、そろそろ やっぱりいろんなところにフラストレーションが溜まってきます。それで環境 保護運動なんかではグリーンピースみたいな合法的な運動なんかまどろっこく てやってられないってやつが出てきまして、それはもっと非合法でもいいから 直接効果のある行動でいこうってわけですね。今から十何年ぐらい前にエドワー ド・アベイ、もう亡くなった小説家がモンキーレンチギャングって小説を書い た。これはベトナム帰りで世の中からはみ出しちゃったマリーン(海兵隊)と か、非常に腕のたつ外科のお医者さんなんだけれども、夜中に観光地の立て看 板に火を点けて燃やすのが趣味だっていう人とか、世をすねた人間が4人集ま りまして、それで環境破壊をやるような開発行為を片っ端からぶつ壊して歩く。 ダムの建設現場にあるブルトーザーのオイルを抜いて替わりに糖蜜を詰めてお くとか、ありとあらゆるいたずらをやるんですね。工事用の鉄道を爆破すると か絶対ばれないようにやる、小説ですけど大変うけましてあちこちにモンキー レンチギャングってやつがでた。そういうグループがまあ主としてアメリカで も南部とか西部とか辺境の地帯で活躍しまして、そのうちに自分達の新聞を出 して、アースファースト/っていう新聞なんですけれども、そこに書いてある のは、我々はネットワークは組まない、ネットワークはFBIとか警察のやつ が入ってくるから危険である、そういうものは一切組まないかわりに新聞の投 書欄で連絡を取ろう、こういうのをやってみたら旨くいったっていうのを皆よ く気をつけて読んでてくれってわけですね。それで流行ったのは、例えば森林 の伐採計画がありますと五寸釘を片っ端から打ち込む、そうしますとチェーン ソーがかからなくなるんです。それから切った材木を製材しようと思うと帯鋸 が切れちゃう、五寸釘を打ってというのは曰本でも昔から人を呪うのにあった -116-

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んですけども、丑三つ時に藁人形を打ち込むってのはありましたけども、それ

を組織的に大々的にやる。そうしますと林業の儲けなんてのは薄いもんですか

ら、あそこの木には釘が入っているぞという噂がたつともう初めから切ったら

損だということで手を引く。だから森林は守れる。実際にこれはオビノコが切

れてけがしたやつなんかも出て批判くったんですけれども、かなり効果があっ

たらしいです。

それからこれは陸上の話ですが、海の上では曰本の漁船が中心にやっている

流し網ってのがありまして、これは6.70キロぐらいの長い網を公海で使って魚

を捕るやつで、無差別的に魚でもイルカでも引っ掛かっちゃう、公海ですが、

流し網は国際的にも批判されて禁止されたんですけれども、それでもやるやつ

はいる。船を雇いまして流し網をやっている日本漁船を探しちゃ体当たりをし

て穴を空けて沈んだって構われえってわけです。自業自得だってというので体

当たり作戦を展開したシーシェファードというグループがありまして、そこが

撮ったビデオで本当に曰本漁船とぶつかる、そうすると穴が空いて曰本漁船の

方もまた防戦して石投げたりなんかをやるんですけれども、これをちゃんとビ

デオに撮っていまして、NBCのネットワークでよく聴視者のビデオのコンテ

ストがありまして、そういうのを写してこのとおり俺達はやっているんだ、日

本漁船をこらしめる活動をやっているから資金を集めると、堂々と資金を集め

てそういう直接行動をやるグループもでてきました。やっぱりそういう直接行

動派というのがアメリカで-部に出てきて相当ある意味じゃ荒っぽい事もあえ

てするようになった。これはひょっとすると曰本にもある程度波及するかもし

れない。今までいろいろ真面目に運動やってたけど、どうも効果があんまりな

いという中で少々乱暴な事をやってでも食い止めるというふうな議論もあった

んですけれども、アメリカの動きを見ているとひょっとするとこれは日本に波

及するかもしれないなという気がしてます。私自身はあんまり賛成できないの

ですけれども、まあ客観的な状況から言ってアメリカで起こる事っていうのは

曰本でもだんだん起こるようになるもんですから、直接行動の議論は出てくる

んじゃなかろうかと予想してます。 -117-

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囮アメリカに遅れた反省 こうして1年近くいろいろ回って来ての結論なんですけれども、しまったと いいますか、この10年位立ち遅れた面がアメリカと比べてみるとありまして、 1970年ごろにちょうど私達が東大で自主講座を始めて、公害問題ではこういう 勉強をしなきゃならないという議論を始めたころ、アメリカではだいたい同じ ような議論をやっていたんですが、曰本ではいくつかの国立大学、だいたい十 幾つぐらいの国立大学で環境科学科とか環境工学科とかいうふうなものを作っ た。作ったんですが石油危機の後研究費がそういう事には付かなくなっちゃい ますと皆もうちょっと儲かるような研究テーマに先生方鞍替えしまして、それ で地味な仕事はやらなくなっちゃった。我々自主講座で自腹切ってやっていた のがそういう仕事ですけれども、何と言っても制度化されていないもんだから、 進みが遅い。特になぜ公害はいけないか、汚したらいかんか、なぜ環境は守ら なきゃなんないか、そういう思想的な面までとても手が回らなかったというの が正直なところでありまして、我々まあ火消しに追われて駆け回っているので、 そういう理屈のところまでは本当に手が回らなかった。これは反省としてござ います。それは本当は大学のような制度の中で用意するものだったんですが、 用意しなかったもんですから。 さて80年代の末になって地球環境の問題が浮かび上がって来たときに、金に なるもんですから、またわあつと大学の先生方が集まって来て研究計画を立て るんですけれども、肝心のなんでそんな事をやるか、なんのために必要かの思 想がないんですね。哲学なき思想なき技術の議論なんです。日本はいつもこの 思想なき技術の議論が続いてくる。これには皮肉な見方もあるんです。日本人 には思想がないからここまで経済発展できたんで、途中で考えたりなんかして たらとてもこんな具合にいかなかったでしょうという悪口もあるんですね。思 想も節操もなく儲かる事ばかり飛び付いてるから儲かるんであって、真面目に 考えていたらとてもここまで臆面もなく破廉恥な事はできねえだろう、という 悪口もある。ヨーロッパの連中なんかはよくそう言うんですけども、半分当たっ ている面はあります。ですが環境問題なんかちょっと全然無思想で、技術だけ で解けるものではない。その点で私たちが日本で、現に水俣病で代表されるよ -118-

参照

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