― ―61 第52巻 第1号(2019年12月) p.61~72
大学アメリカンフットボールにおける守備選手の
パフォーマンス評価基準
―整合性と信頼性の検証―
時 本 昌 樹 抄録 アメリカンフットボールのランプレー、パスプレーに対する守備側の3つのポジションのパフォー マンス評価を行うために、新たな評価基準項目を作成し、その整合性および信頼性を明らかにするこ とを目的とした。新たに作成した評価基準項目に基づき、3名の評価者がランプレーおよびパスプ レーを映像分析の上、評価点の整合性を Cronbach のα係数にて、信頼性を級内相関係数および評価 者間の相関にて検定した。Cronbach のα係数はランプレー、パスプレーで0.979, 0.901、級内相関係 数はランプレー、パスプレーで0.92, 0.745、また評価者間には全て有意な相関があり、ほとんどが強 い相関を示した。本研究で新たに作成した評価基準項目でのパフォーマンス評価は、評価者が変わっ ても、整合性・信頼性の高いツールとして活用できることがわかった。今後、この評価基準の妥当性 についての検証も必要ではあるが、今回の評価基準を元に、様々なスポーツ・分野で応用できる可能 性がある。 キーワード アメリカンフットボール、守備、パフォーマンス、評価基準Criterion for Evaluating the Performance Level of Defensive American Football Players
―Verification of the Consistency and the Reliability― Tokimoto, Masaki
Abstract
To verify the consistency and reliability of our new criterion to evaluate the performance level of defensive players in run or pass plays in American football. Based on a new criterion set by 3 experts and the first author in this study, 3 experts evaluated the performance level of defensive players in 44 run and 35 pass plays with the video analysis. Statistical analyses were performed to evaluate the consistency with Cronbach alpha coefficient and the reliability with intraclass correla-tion coefficient. Cronbach alpha coefficient in run and pass plays were 0.979 and 0.901, respectively. Moreover, intraclass correlation coefficient in run and pass plays were 0.92(0.8760.960)and 0.745(0.6040.851), respectively. There were significant correlations in all inter-observer cor- relation coefficients in both run and pass plays. These results showed high consistency and relative high reliability of our new criterion. In the previous reports, the clear criterion to evaluate the performance level of defensive players in American football could not be established. However, in this study, our new criterion is available for the evaluation of the performance level by every expert. Although it is necessary to verify the validity of our new criterion in the near future, this criterion could be widely applicable to a lot of fields of study as well as sports.
Key Words
American football,Defense,Performance level,Criterion for evaluation
近畿大学短期大学部助教 2018年9月27日受理 目 次 Ⅰ 緒言 Ⅱ 方法 1)評価基準項目作成 2)ランプレーでの各ポジションの評価基準項目 3)パスプレーでの各ポジションの評価基準項目 4)信頼性の検証 5)統計学的処理 Ⅲ 結果 Ⅳ 考察 Ⅴ まとめ
Ⅰ 緒 言 日本の大学アメリカンフットボールは1934年に 関東に3チーム、1935年に関西に1チームが誕生 したことから始まり、その後徐々に普及し、現 在では関東96チーム、関西49チーム に至る。 競技形式は、楕円形のボールを使い、2チームが 陣取り合戦をしながら試合を進めて行くが、攻撃 側に4回の攻撃権(ダウン)が与えられ、4回の 攻撃中にボールを10ヤード以上前進することがで きれば、新たに4回の攻撃権が与えられる。逆に、 4回の攻撃中にボールを10ヤード以上進めること ができない場合、相手側に攻撃権が移る。このよ うに徐々にボールを進め、相手チームのエンドゾー ンにボールを持ち込むとタッチダウン(以下、TD) となり、得点(6点)が与えられる。守備側は、 タックルやインターセプト(攻撃側が投げたボー ルを空中でキャッチする)などによって、攻撃側 がボールを前進させることを阻止しようとする。 プレーヤーの数は攻守それぞれ11人であり、攻 撃側は、司令塔であるクォーターバック(以下、 QB)、ランプレーでは相手のディフェンスプレー ヤーをブロックしランナーの道をつくり、パスの ときは QB を守る壁をつくるオフェンシブライン (以下、OL)、さらに QB から手渡し(ハンドオ フ)されたボールを持って走ることが主な役割で あるランニングバック(以下、RB)や QB から 投げられたパスをキャッチすることが主な役割で あるワイドレシーバー(以下、WR)に分けられる。 一方、守備側は第1列にランプレーを止め、パ スを投げようとする QB にタックルを試みるディ フェンシブライン(以下、DL)、その後方の2列 目に、ランプレーを止め、かつ短いパスを防ぐラ インバッカー(以下、LB)、そして、最後尾でパ スを防ぐことを主目的とするディフェンシブバッ ク(以下、DB)に分けられる。つまり、アメリカ ンフットボールは守備と攻撃の中でも、さらにい くつかのポジションに分かれ、各ポジションで役 割が細分化されている非常に特徴的な種目である。 このようなアメリカンフットボールにおいて、 先行研究では、傷害、バイオメカニクス、運 動生理学、栄養学、実験心理学 などの自 然科学的な手法に焦点を当てたものが多く見られる。 また、パフォーマンスに関わるゲーム分析、映 像分析に関連する研究は、アメリカンフットボー ルの作戦選択を推定する方法を提案したもの や アメリカンフットボールにおける試合データの作 成・閲覧を支援するシステムの実現をしたもの、 さらには、アメリカンフットボール映像をもとに、 ボール検出結果とボール保持者の推定結果を統合 することによりボール移動軌跡を抽出したもの などが見られる。 しかし、パフォーマンスの評価や評価基準項目 を明確に述べた先行研究は数少ないのが現状であ る。 アメリカンフットボールにおけるゲームパフォー マンスを正確に評価するとなると、ゲームパフォー マンスそのものが多面的で非常に複雑な構造を 持っていることから、それは簡単なことではない。 それゆえ、アメリカンフットボールでは、ゲーム パフォーマンスの評価方法を考案することはコー チング技術の向上のみならず、パフォーマンスの 向上にも役立つものと考えられる。 数少ないアメリカンフットボールのパフォーマ ンスの評価に関連する研究の中で大変興味深い研 究報告も見られる。そこでは、評価項目を時系 列に沿った①スタート時のポジション、②役割実 行、③状況判断、④プレー終了時の行動について、 すべての選手に評価を行い、その結果は、指導者 の主観的評価と整合性が見受けられ、戦術的評価 法の可能性が示唆されたとしている。 また、ゲームパフォーマンス評価法「The Game Performance Assessment Instrument」のアメリ カンフットボールへの適応を検討した研究では、 観察が可能な要素は競技スポーツでのポジション の枠を超えた視点による多角的かつ汎用性のある パフォーマンス評価が期待できるが、全体におい
て観察できない項目があることや、特定の観察項 目に偏るポジションがあり、アメリカンフットボー ルへの導入には異なる視点による評価方法の改良 や検討が必要であると述べられている。 評価方法や基準を作成する上で、これらの研究 は大変参考になる。 一つは、プレーに対しての評価項目を時系列に 沿って行うこと、もう一つは、ポジション別の役 割を明確にすることの必要性である。 しかしながら、ここでは、具体的なポジション 及びその役割の具体的内容やランプレー、パスプ レーを区別した評価基準項目の信頼性は明確に示 されていない。 そこで、本研究では、アメリカンフットボール の攻撃をランプレーとパスプレーに区別し、それ ぞれのプレーに対応する守備の評価法をポジショ ン別に5段階評価を行い、それぞれの信頼性を明 らかにすることを目的とした。 Ⅱ 方 法 1)評価基準項目作成 アメリカンフットボールの攻撃のプレーは、大 別するとランプレーとパスプレーに分けられる。 ランプレーは、ハンドオフまたは、後方へボー ルを投げること(バックパス)でボールを受けた 選手(ボールキャリア注1))が走って前進を狙う プレーであり、比較的短い距離を確実に前進する ために行われることが多い。 パスプレーは、前方へのパスを使ったプレーで ある。アメリカンフットボールで「パス」と言っ た場合は、前方へのパスを意味することが一般的 である。 先にも少し触れたが、アメリカンフットボール の守備チームは大きく、3層によって構成されて いる。最前列に位置する DL 、その後方に位置す る LB 、最終ラインを守る DB である。これら3 ポジションは攻撃側のランプレー、パスプレーに 対して、それぞれの役割を持ちながら、固有の技 術を駆使して、攻撃チームの前進を防ぐ ことに なる。 評価基準項目の作成にあたり、対象とした28試 合(2014年度関西学生アメリカンフットボール連 盟 Division1)の映像から、ランプレー、パスプ レーに対して、ボールキャリアに関係する DL 、 LB、DB の3ポジションのプレーヤーに関するパ フォーマンスを分析し、それらの戦術的結果によっ て評価を5段階で行うこととした。 尚、下記の項目に該当するプレーは除外した。 ①アメリカンフットボールのフィールドの縦は 100ヤードであり、100ヤードを10ヤードずつにA からJの10のエリアに区分し、守備側のエンド ゾーンから見て最長のエリアがA、最短のエリア がJとなるよう区分した(図1)。また、一般的 にA,B,I,Jのエリアでの攻撃側のプレーに は、偏りが多いため今回の分析では除外した。こ れは、自陣での攻守の交替は、相手攻撃チームに 優位なフィールドポジションで攻撃権を与えてし まうため、攻撃側は手渡しでのランプレーなどミ スが起こりにくいプレーを選択することが多い。 また、敵陣ゴール前においては、フィールドのス ペースが限られているため、ロングパスなどを行 えないためである。 ②特殊なプレーであるスペシャルプレーについ ても除外した。なお、スペシャルプレーには、 ダブルパス注2)、ラテラルパス注3)、リバースプ レー注4)といったプレーが該当する。 ③ RB や WR によるスクリーンパス注5)やスイ ングパス注6)は除外した。 ④スクリメージライン注7)後方での攻撃側のミ スによって進行が止まったプレーは除外した。ニー ダウン注8)、ミスピッチによるファンブルが該当 する。 ⑤反則により無効になったプレーは除外した。 除外対象となるプレーは、分析を行った映像115 プレー中27プレーであった。 ― ―63
2)ランプレーでの各ポジションの評価基準項目 ランプレーにおけるポジション別の評価基準項 目について、まず DL では、スクリメージライン 上で、OL に押し込まれたり、責任ギャップを押 し広げられたりせず、OL のブロックを受け止 め、または、押し返し、攻撃目標となる自分の責 任ギャップを守りきれば第一目的は達成である。 自分の責任ギャップを守り、かつ割り込んでボー ルキャリアに絡むことができれば、守備チームに とっては大きく優位になる。次に、LB は、スク リメージラインに詰め寄り責任ギャップを守り、 かつ、ボールキャリアに絡むことが求められる。 ランプレーとパスプレーの判断を素早く行い、OL がブロックにくる前に、スクリメージラインの責 任ギャップに詰め寄り、ボールキャリアに絡むこ とが重要である。最後に、DB は、ディフェンス の種類によっては、ランサポートし LB の役割を 担うこともあるが、ランプレーよりもパスプレー に重点を置いていることが多い。守備チームとし ては、ランプレーを DL と LB で止め、DB がボー ルキャリアに絡む必要がないことは望ましいこと である。逆に言えば。DB がタックルをすること が多い場合は、攻撃チームにランプレーでの大き な前進を許していることが考えられる。 以上の点を踏まえて、5段階評価の基準となる 3点を以下のように設定した。DL、LB では「ス クリメージラインから守備側の3ヤードまでのエ リアで責任ギャップを守りきれている」、DB で は、「DB がボールキャリアにタックルし進行を阻 止できたか」または、DB がボールキャリアに絡 んではいない場合もあるが、「DB を含める2人目 以降のディフェンダーによるタックルで進行を阻 止した状況にある」などの場合である。これらの 3点を基準に、この3点の内容を上回るパフォー マンスを示すものを4点、5点とし、逆に下回る ものを2点、1点として5段階評価を行う基準を 設定した(表1)。 3)パスプレーでの各ポジションの評価基準項目 パスプレーにおけるポジション別の評価基準項 目について、まず DL では、QB にプレッシャー をかけ、タックルを狙うことである(QB サック)。 同時に、自分の守るべき走路を守りながら QB に 迫り、腕を上方にのばして QB の視野をさえぎり、 パスをブロックすることが求められ、LB では、 ブリッツ注9)により、DL 同様 QB にプレッシャー をかけ、QB サックを狙うか、パスゾーンに下がっ て5ヤードレベルの短いパスから10ヤードレベル のパスを防ぐことが役割である。パスゾーンに下 がる際は、自分より前方でのパスには素早く反応 し、パスをインターセプトするか、またはパスを カットすることが求められる。WR が捕球した場 ― ―64 図1 アメリカンフットボール フィールドのエリア区分
合は、即座にタックルすることが求められる。自 分より後方のパスには WR の前に入りボールをイ ンターセプトするか、パスをカットするか、また は、QB と WR の間に位置し、QB に正確に投げ させないようにすることが求められる。また、DB では、ディフェンスの種類によっては、5ヤード レベルの短いパスから、15ヤード以上の長いパス をカバーし、QB に正確に投げさせないようにす るか、インターセプト、またはパスをカットする ことが求められる。自分より前方でのパスには素 早く反応しパスをインターセプトするか、または パスをカットすることが求められ、WR が捕球し た場合は、即座にタックルすることが求められる。 自分より後方のパスには WR をカバーし QB に正 確に投げさせないようにすることが求められる。 以上の点を踏まえて、5段階評価の基準となる 3点を以下のように設定した。DL は、「QB にス クランブルをさせる」、「QB がパスを投げたがミ ススロー、または WR のミスキャッチを強いる」、 LB 、DB は、「パスをカットしているか、WR を うまくカバーすることにより、QB に正確に投げ られない」、または「QB のミススローや WR の ミスキャッチを強いる」などの場合である。 ランプレーでの評価と同様に、これらの3点を 基準に、5段階評価を行った(表2)。 ― ―65 表1 ランプレーに対する評価基準項目 DL / ランプレーに対しての評価基準項目 ・スクリメージライン奥で責任ギャップを守り、かつ、割り込んでタックル。または、ボールキャリアに絡んでいる。 5点 ・スクリメージライン上から3ヤード手前までで責任ギャップを守り、かつ、オフェンシブプレーヤーを押し返して タックル。または、ボールキャリアに絡んでいる。 4点 ・スクリメージライン上から3ヤード手前までで責任ギャップを守りきっている。 3点 ・責任ギャップを守ってはいるが、オフェンシブプレーヤーに押し込まれて、スクリメージを下げられている。また は、ギャップを広げられている。 2点 ・責任ギャップを守りきれず、責任ギャップを走られている。または、ミスタックルをして責任ギャップを走られて いる。 1点 LB / ランプレーに対しての評価基準項目 ・スクリメージライン奥で責任ギャップを守り、かつ、割り込んでタックル。または、ボールキャリアに絡んでいる。 5点 ・スクリメージライン上から3ヤード手前までで責任ギャップを守り、かつ、タックル。または、ボールキャリアに 絡んでいる。 4点 ・スクリメージライン上から3ヤード手前までで責任ギャップを守りきっている。 3点 ・責任ギャップを守ってはいるが押し広げられている。または、スクリメージライン付近まで詰め切れていない。 2点 ・責任ギャップを守りきれず、責任ギャップを走られている。または、ミスタックルをして責任ギャップを走られて いる。 1点 DB / ランプレーに対しての評価基準項目 ・スクリメージ付近で DL、LB でボールキャリアを止め、DB が絡む必要が無い。 5点 ・1人目の DB がスクリメージライン付近まで詰め寄り、タックルすることによりボールキャリアの進行を阻止。 ・DL、LB が押し込まれながらタックルし、DB がボールキャリアに絡む必要が無い。 4点 ・1人目のディフェンダーがミスタックルし、DB を含める2人目以降のディフェンダーによるタックルでボールキャ リアの進行を阻止。 ・1人目の DB が DL、LB の責任ギャップを走り抜けてきたボールキャリアをタックルし進行を阻止。 3点 ・1人目の DB がオフェンシブプレーヤーのブロックにて邪魔される。または、ミスタックルし、2人目のディフェ ンダーによるタックルでボールキャリアの進行を阻止。 2点 ・2人以上の DB がオフェンシブプレーヤーのブロックにて邪魔をされる。または、ミスタックルし、3人目以降の ディフェンダーでボールキャリアの進行を阻止。または、阻止できない。 1点
4)信頼性の検証 ランおよびパスプレーでの評価基準項目の信頼 性を検討するために、3名の専門家に映像3試合 (前半のみ)のランプレー(44回)、パスプレー (35回)に対する DL、LB、DB の3ポジションの 評価を行った。尚、実施に当たって、3名の専門 家には、観察項目の内容に関する説明と記録の方 法を事前に伝え、同意を得た。専門家3名(T氏、 K氏、S氏)は関西学生アメリカンフットボール 連盟に所属する指導者で年齢は35.3±9.1歳、指導 歴は7.0±4.6年である。本研究で、試合の前半の みを扱った理由としては、アメリカンフットボー ルは、得点差がついた場合、多くのチームがレギュ ラー選手の怪我を避けるために控え選手を試合に 出場させることが多く、レギュラー選手と控え選 手には能力差から、評価への影響が出ることフが 考えられることから、評価対象を前半のプレーの みとした。 ― ―66 表2 パスプレーに対する評価基準項目 DL / パスプレーに対しての評価基準項目 ・QB サック。または、自分のサポートにより、ブリッツしている LB が QB をサック。 5点 ・QB にプレッシャーをかけ、正確に投げることができていない。または、自分のサポートにより、ブリッツが詰め 寄っている LB が QB にプレッシャーをかけ、正確に投げさせていない。 ・プレッシャーによる QB スクランブルを3ヤード以下で止めている。 4点 ・QB にプレッシャーをかけ、投げることができない状況をつくり、QB に走らせている。(QB スクランブル3ヤー ド以上) ・QB のミススロー。または、WR のミスキャッチである。 ・QB にプレッシャーをかける前の早いタイミングで短いパスを正確に投げられている。 3点 ・QB にプレッシャーをかけられず、10ヤード以下の短いパスを正確に投げられる。 ・QB にプレッシャーはかけられていないが、LB、DB の優れたパスカバーにより、ターゲットに投げられない状況 を作らせスクランブルしている、または、正確に投げられていない。 2点 ・QB にプレッシャーをかけることができず、かつ、10ヤード以上の長いパスを正確に投げられている。 1点 LB / パスプレーに対しての評価基準項目 ・ブリッツによる QB サック。 ・パスをインターセプト。 5点 ・ブリッツ、または、QB に詰め寄ることでプレッシャーをかけ、QB に正確に投げさせていないか、スクランブル させている。 ・優れたパスカバーにより QB にスクランブルさせている。 4点 ・パスをカットしている。または、優れたパスカバーによって QB に正確に投げさせていない。 ・DL のサック、または、QB へのプレッシャーにより、正確に投げられていないか、QB がスクランブルしている。 ・DL のパスカットまたはインターセプトである。 ・QB のミススロー。または、WR のミスキャッチである。 ・LB のパスカバーゾーンより深い場所へのパスである。 3点 ・LB のパスゾーンにスペースを空け、パスを捕球されたところで前進を阻止。 ・10ヤード以下の短いパスを捕球された後、1人目のディフェンダーのタックルによりボールキャリアの前進を阻止。 2点 ・パスを捕球された上に、LB のミスタックルにより前進されている。または、前進を阻止できない。 1点 DB / パスプレーに対しての評価基準項目 ・パスをインターセプト。 5点 ・DB の正確なパスゾーンカバーによって QB がスクランブルしている。 4点 ・パスをカットしている。または、優れたパスカバーによって QB に正確に投げさせていない。 ・DL 、LB のサック、または、QB へのプレッシャーにより、正確に投げられていないか、QB がスクランブルして いる。 ・DL のパスカットまたはインターセプトである。 ・QB のミススロー。または、WR のミスキャッチである。 3点 ・DB のパスゾーンにスペースを空け、パスを捕球されたところで前進を阻止。 ・LB のパスゾーンでパスを捕球され、1人目のディフェンダーのタックルによりボールキャリアの前進を阻止。 2点 ・DB のパスゾーンでパスを捕球された上に、ミスタックルにより前進される。または、前進を阻止できない。 1点
5)統計学的処理
統計処理には SPSS Statistics version 24.0 SPSS Inc., IBM, USA を用い、3名の評価者の内的整 合性の確認には Cronbach のα係数による信頼性 分析を用い、評価尺度の評価者(検者)間信頼性 については級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient: ICC)を用いて、有意水準は p<5 % として行った。また、評価者それぞれの組み合わ せでの相関関係について、Spearman の順位相関 係数を用いて検討した。 Ⅲ 結 果 評価項目の信頼性については、ランおよびパス プレーとも、Cronbach のα係数・ICC は高値を 示しており(表3)、3名の評価者の内的整合性 に加え、検者間信頼性も高いことがわかった。 また、評価者2名ずつでの組み合わせにおける 相関係数を表4に示す。また、それぞれ2者の組 み合わせにおいてもランプレー、パスプレーとも に高い正の相関を認めた。 評価者T氏とK氏のランプレーでの評価点の相 関係数は DL r=.969(図2A)、LB r=.994(図 2B)、DB r=.991(図2C)であり、パスプ レーにおいても DL r=.858(図2D)、LB r=.868 (図2E)、DB r=.1(図2F)とランプレー、 パスプレーともに高い正の相関関係が認められた (p<.001)。 評価者T氏とS氏のランプレーでの評価点の相 関係数は DL r=.842(図3A)、LB r=.920(図 3B)、DB r=.915(図3C)であり、パスプ レーにおいても DL r=.880(図3D)、LB r=.779 (図3E)、DB r=.949(図3F)とランプレー、 パスプレーともに高い正の相関関係が認められた (p<.001)。 評価者K氏とS氏のランプレーでの評価点の相 関係数は DL r=.873(図4A)、LB r=.922(図 4B)、DB r=.920(図4C)であり、パスプ レーにおいても DL r=.838(図4D)、LB r=.681 (図4E)、DB r=.949(図4F)とランプレー、 パスプレーともに高い正の相関関係が認められた (p<.001)。 ― ―67 ICC2,1(95%信頼区間) Cronbach のα係数 .929(.876.960)*** .979 Run Play .745(.604.851)*** .901 Pass Play 注)***は p<.001 を示す 表3 評価者内信頼性 K & S T & S T & K POS. .873*** .842*** .969*** DL Run Play LB .994*** .920*** .922*** .920*** .915*** .991*** DB .838*** .880*** .858*** DL Pass Play LB .868*** .779*** .681*** .949*** .949*** 1.000*** DB 注)***は p<.001 を示す POS.=ポジション 表4 3名それぞれの組み合わせでの順位相関係数(r)
― ―68 図2A ランプレー / DL に関するT氏とK氏の 評価の相関 図2D パスプレー / DL に関するT氏とK氏の 評価の相関 図2B ランプレー / LB に関するT氏とK氏の 評価の相関 図2E パスプレー / LB に関するT氏とK氏の 評価の相関 図2C ランプレー / DB に関するT氏とK氏の 評価の相関 図2F パスプレー / DB に関するT氏とK氏の 評価の相関
― ―69 図3A ランプレー / DL に関するT氏とS氏の 評価の相関 図3B ランプレー / LB に関するT氏とS氏の 評価の相関 図3C ランプレー / DB に関するT氏とS氏の 評価の相関 図3D パスプレー / DL に関するT氏とS氏の 評価の相関 図3E パスプレー / LB に関するT氏とS氏の 評価の相関 図3F パスプレー / DB に関するT氏とS氏の 評価の相関
― ―70 図4A ランプレー / DL に関するS氏とK氏の 評価の相関 図4B ランプレー / LB に関するS氏とK氏の 評価の相関 図4C ランプレー / DB に関するS氏とK氏の 評価の相関 図4D パスプレー / DL に関するS氏とK氏の 評価の相関 図4E パスプレー / LB に関するS氏とK氏の 評価の相関 図4F パスプレー / DB に関するS氏とK氏の 評価の相関
Ⅳ 考 察 専門家それぞれによる映像分析と評価の結果、 評価基準自体の整合性だけでなく、評価者内およ び評価者間での信頼性も高いことが示された。す なわち、アメリカンフットボールについて一定の 知識を持った複数の者が、この評価基準項目を用 いて評価を行っても、そこで与えられた評価点は 信頼性が確保されており、守備のパフォーマンス 評価として用いることが可能になったと言える。 このことは今後、先行研究では見られなかったア メリカンフットボールの守備に関する評価基準の 一つの指標として活用できると考えられる。ただ し、今後実際の喪失距離や失点などとの関係を検 討し、今回用いた評価基準項目が妥当であるかに ついてのさらなる検証が必要である。 Ⅴ ま と め 本研究の目的は、アメリカンフットボールのラ ンプレー、パスプレーに対する守備側の DL、LB、 DB の3ポジションのパフォーマンス評価を行う ための評価基準項目を作成することであった。3 名の専門家による評価の内的整合性を分析するた めに Cronbach のα係数を求めたところ、ランプ レー、パスプレーの評価はともに非常に高い整合 性が認められた。また、級内相関係数を用いて評 価者間の検定を行った結果、高い信頼性が得られ た。さらに評価者2名ずつの組み合わせでの評価 点の相関を Spearman の順位相関係数によってそ れぞれ調べたところ、強い正の相関が認められた。 これらの結果から、今回作成した評価基準項目が 守備のパフォーマンス評価として信頼性の高いも のであることがわかった。 注記 注1)ボールキャリアとは,ボールを持ったプレーヤーで ある. 注2)ダブルパスとは,バックフィールドで最初のランナー から後方のプレーヤーがボールを受け,受けたプレー ヤーからフィールド前方に走り込んでいるプレーヤー に再度パスを投げるプレー.バックフィールドとは, 一般に攻撃チームのバックスが位置する地域を指す. 注3)ラテラルパスとは,スクリメージラインに水平か後 方に投げられるパス. 試合中のいかなる時,どんな位置からでも投げるこ とができ,誰でも捕球できる.ただし,一度グラウン ドについた場合に守備側がリカバーした時点でボール デッドとなる. 注4)リバースプレーとは,バックフィールドで最初のラ ンナーからボールを受け,その逆方向に走るトリック 的なランプレー.例えば,右に走るランナーから正対 して走ってきた WR にボールを渡し,左オープンを 走るプレー,リバースは逆進の意味. 注5)スクリーンパスとは,パスを捕球した後ラインのブ ロックの壁を利用して前進を計る攻撃のショートパス プレー. 注6)スイングパスとは,スクリメージラインの手前でサ イドラインに向かって走る RB に投げる短いパス. WR の場合は,キャッチしてからの前進を目的とする. 注7)スクリメージラインとは,地上におかれたボールの 両先端を通る,各ダウン(4回の攻撃圏の1つ1つ) の攻撃開始地点を仮想の線.正確には,地上におかれ たボールの先端を通り,エンドラインに平行に両サイ ドラインを結ぶ(フィールドを横切る)線. 注8)ニーダウンとは,攻撃側の QB がスナップを受けた と同時に膝をつき自らボールデッドとしプレーを止め ること.時間を消化したい場合に行うことが多い. 注9)ブリッツとは,守備の奇襲攻撃.攻撃を後退させよ うと LB か DB がスナップと同時にスクリメージライ ンを越えてタックルに向かう行動. 参考文献 後藤完夫(1995)最新版 新フットボール専科.タッチ ダウン株式会社:東京,p16, p.204. 関東学生アメリカンフットボール連盟:URL: www. kcfa.jp, 2019 関西学生アメリカンフットボール連盟:URL: www. kansai-football.jp, 2019 渡邊裕之,長瀬エリカ,原田長,一原克裕:アメリカ ンフットボールにおける脳震盪予防,理学療法学 Supplement 46S1(0),F-30-F30(2019) 吉田早織:アメリカンフットボールの障害予防にまつ わるエトセトラ(特集 Football for Health),フット ボールの科学 12(1),p.1822(2017),日本フットボー ル学会 松尾博一,松元剛:アメリカンフットボールにおける タックル技術指導プログラムに関する研究,試合中の タックル様相の変化に着目して,日本体育学会大会予 稿集第67回(2016) Whiting Williams C,アメリカンフットボールで発生 しやすい筋骨格系障害のバイオメカニクス,Strength ― ―71
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