音楽科教育における授業研究 : ストップモーション方式による授業研究を中心に
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(2) . 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 1巻 第1号 i lof Hokkaido Univers ionIC) Vo l ion(Sec ty ofEducat jouma t .41 ‐I , No. 平成2年9月 September ,1990. 音楽科教育における授業研究 -- スト ッ プモーシ ョ ン方式による授業研究を中心 に --. 篠. 1. 原. 秀. 夫. は じめ に. 毎年夏から秋にかけて, 各地で教科教育に関わるさま ざまな研究大会, 公開研究授業, 研修会が 目白押しに開かれる‐ 音楽教育界においても同様の傾向が 見られる これらの研究会では あらか . , じめある研究テー マが設定され, それに基づいて研究授業や研究発表が行われる さらにその後に ‐ , 研究発表者 (授業者) と参加者による授業検討会や反省会といった, 研究テーマにそっ た討議が行 わ れる.. しかしながら, これらの研究会が多く開かれるわりには, 音楽科教育に関する授業研究の成果が あがっ ていないというのが教育現場の現状 ではなかろうか. それは, 研究会 が従来の役割を充分に 果たしていないことに原因の一端があるように 思わ れ る‐ 本 来 研究会というものは, 明日からの教育 (授業実践) に役立つだけでなく, 研究者の取り上 げた問題を踏み台にして, 自分自身の明日からの教育 (授業実践) を考えていく上での力として作 用するべきものである‐ ところが昨今の研究会の実情は どう であろうか‐ 研究会で取り上げられるテーマは, 毎年のように似かよ ったものが多く, マンネリ化している . たとえば次のような例 である.「創造的な表現力を生かした音楽の授業をするには どう したらよい か」 「自ら学ぶ子どもを育てる学習指導はいかにあるべきか」 「豊かな情操を養う 音楽指導はどうあ ればよいか」 これらのテーマは, もっ ともつぶしのきく, つまり どのような解釈でも成り立つような適応性の あるもの であり, 研究会としては無難なテーマと言える しかしこれらは, 年を追う ごとに積み重 . ねられ, 討議の高まりの中で立証され, 深まっ ていくものというよりは, その場限りの, 当番校と して か っ こ を つ け る た め に だ け 設 定 さ れ る こ と が 多 い .. また同時に, 授業検討会においても, マンネリ化が見られる. 授業の事実か ら離れたところで教 育理念や目標論に関す ることが討議されたり, 発言が印象批判的なものになりがちである さらに ‐ 検討会の最後は司会者や助言 者のおきまりの抽象的な言葉 でまとめられることが多い . たとえば次のような例 である.「授業を引き受け ていただいて, しかも大変すばらしい授業を見せ ていただいて勉強になり ました‐一 「授業改善の方向が見えてきたの ではないでしょ うか 」 ‐ さらに次のような例もある‐「すばらしい授業でしたね これは00先生でなければ できない境地 . ですね.」 「やはり最後は子ども理解 ですね‐ いきつくところは学級経営なんです 学級経営がしっ ‐ かりしているから, これだけの音楽の指導ができるん です 」 ‐ このようなまとめ では, 研究会に参加する意味が薄れてしまう‐ 00先生の指導のどこがどのよ 149.
(3) . 篠 原 秀 夫. うにすぐれているのか, しかもそれはなぜか, そのような討論がなければ, 研究会の果たす意味は 「 な い し, 参加 す る 意 味 も な い. 音 楽 指 導 の「どこ が, どう な の か」 , こ れら , な ぜ, そ う な る の か」. を授業事実に 基づいて, 検討していくこ とが必要なのである. このようなマンネリ化した, なれあい的な研究会においては, テーマを熟考し, それがどのよう な角度から掘り下 げられ具体的な教授活動と結び付いているのか,あるいは成果をあげているのか, 等の研究を深め, 進めて行くことは難しい‐ 本当の意味での研究 がないというのが実情なのである. このような研究会を繰り返していたので は, 満足な授業研究は 行われない. 授業研究において は, たとえどんな小さな問題であっ ても, 授業の事実に 基づいて検討が行われ なければならない. 「 そこ で, 本稿は授業研究(授業検討会)の進め方に焦 点を当て, ビデオを利用した ストッ プモー ショ ン方 式」 を中心に取り 上げ考察を試みるものである. この方 式が音楽科における授業研究 (授 業検討会) においても実に有効であると考 えるからである.. 1 1 ストッ プモーシ ョ ン方式による授業研究 ス トッ プモーショ ン方式. 1. ビデオを利用したストッ プモーショ ン方式とは どのようなものなのか,最初に取り上げてみたい. 藤 岡信 勝氏は, ストッ プモーショ ン 方式による 授業研究会の案 内の 中 で次のように 説明 して い ) 注1 る( .. 45分) の授業を録画し, 一 「ここに一本のビデオテー プがある. 二台のカメラを使っ て一時間 ( 本に編集したものである‐ これを再生.視聴する‐ ただし, ずっ と通して見るのではない. しばしば画面 を一時停止させ る (ス ト ッ プモ ー シ ョ ン)‐ 一 時 停 止 さ せ て お い て 何 を す る の か.. 解説者が, 授業の背景説明をする. 教師の発問や指示の意味を解説する. 教材の特質を検討す る‐ 子どもの発言や行動の意味を解明する. 授業の組みたてを分析し, 評価し, 批判する. 教師が発問しようとする, まさにその瞬間に, ストッ プモーショ ンをかけ, どんな発問をする か, すべきか参加者に問う. 子どもの反応についても同様に して予想しても らう. そればかりではない. 授業の流れに身を浸す気分でビデオを見ている と, 必ず御自分の経験に 『 てらしてひとこと言いたいことが出てくるはずである. そんな時, 遠慮なく ストッ プ!』 と声 を か け て い た だく. そ し て, 発 言 して い た だ く.. 質 問, 疑 問, 思いつき, 批判, 代案, 分析, 等々何でも 結構である. どん どん 出していただき. たい‐ 参加者間の論争も歓迎する. 活発な発言で, 楽しい研究 会にしたい‐」. つまりこ の方式は, 授業ビデオの再 生をしばしばとめ ながら, 教師の教授行為の細かな検討, 児 童・生徒の発言‐活動の解釈, その他教材と授業のあらゆる側面について 集団の中で議論するとい うやり方である. 「 ビデオを使った授業研究がこれま でなかっ たわけ ではない. 筆者が担当している 音楽科教育概 論」 「音楽科教育特論」 「音楽科教育 法」の授業でも, ビデオを使い授業検討をたびたび行っ てきた. 150.
(4) . 音楽科教育における授業研究. その多くは, ビデオを鑑賞した後感想を書かせ, それを基に討論をするやり方である . 2 注 )ように いくつかの難点があると言える しかしこのやり方には, 藤岡信勝氏も指摘 している( , . 筆者なりに捉えているもの をいくつか上げてみる . 第一は, 一時間 ( 45~50分) の授業を続けて鑑賞することは, たとえ大学生 であっても苦痛であ り, 疲れることである‐ 集中度もかなり異なっ てくるものである したがって 一時間の授業の内 , . 容を学生全員が同じよう に記憶する ことは難しい ある学生が覚えているところをある学生は忘れ . て い る こ と も あ る.. 第二は, 討論で取り上げる発言の内容が, 印象批判的になりがち である 個々の発言が 授業の ‐ , どの場面に関してのことか, 判断するのが難しい また 討論の内容が次々に変わり 問題 点の検 ‐ , , 討が深まらないのである‐ それでは, 従来のやり方とストッ プモーション方式の違いは どこ であろうか 「再生中にビデオを ‐ しばしば止めて, 議論するか, しないか」 ここの違いである この違いが実に大きいと言える こ . . のストッ プモーショ ン方式により授業検討会が非常に活発で意欲的なも のとなるの である ‐ 2. ス ト ッ プモ ー シ ョ ン 方 式 の メ リ ッ ト. ストッ プモーショ ン方式は, 従来のビデオ方式と比べて, どこがよいの であろうか 藤岡信勝氏 ‐. ) 注3 は, 次 の 三 点 を 指 摘 し て い る( ‐. ( 1 ) 議論が授業の事実に即してなされる (実証性のメリッ ト) ( 2 ) 問題を共有し定式 化できる (生産性のメリ ッ ト) ( 3 ) 誰でも口出 しできる (平等参加のメリ ッ ト) その中で筆者は, (1) の 「議論が授業の事 実に即してなさ れる」 が最も大き なメリ ッ トであると 考える. 人間の記憶には限界がある. 従来の授業検討会のように一時間の授業をまる ごと鑑賞した のでは, 授業の細部を記憶しておくことは難 しい 授業者が不適切な教授行為をしている時 す ぐ ‐ , その場で問題点を指摘 した方が, 参加者も授業者も納得がいく あるいは わからない点が出てき , . た時は, その場です ぐ聞いた方が納得がいく つまり議論は終始 授業の事実に密着して行われな . , ければならないの である. 特に授業中の教 師の教授行為を細かく分析したり 検討するにはこの点 , が重要 である‐ } 「参加者が研 究会終了後 『どの発言 また, (2) に関して藤岡信勝氏は次のように述べている鰹4 ‐ も参考になっ た』 と異口同音にのべるのは, 参加者全員 で問題を共有できるか らである 他の参加 ‐ 者の意見に異論がある場合でも, その意見が何をとりあげ どう問題にしているかは理 解できる こ . のように 『問題の共有』 が可能なのは, ビデオで授業を (間接的ながら) 経験するという 『経験の 共有』 があるからである また, 授業の検討をその場限りのも のに終わらせず 一般的に役立つ知 . , 見を定式化していくことも可能である たとえば ある発 問を 『よい』 と評価するだけ でなく 『な ‐ , , ぜよいか』 を問えば発問についての一般原則を定式化 できる この定式化が可能なのは 前後の文 . , 脈と切り離さずに当該の発問を論 じることができるからである 」 ‐ さらに, (3) に関して藤岡信勝氏は次のように述べ ている ㈱) 「ベテランの発言も初任者の疑問 ‐ もすべてが生きる. 参加者全員の知識・経験 が役立つのである だから 参加者の満足度も高い ‐ , . ベ テランも初任者も平等に口出し できるチャ ンスがある ことは この方式の大きなメ リ トであ ッ , る-」 151.
(5) . 篠 原 秀 夫. られない大き このように, ストッ プモーショ ン方 式による授業研究には, 従来の授 業研究には見 な メ リ ッ ト があ る こ と が わ か る‐. ストッ プモーショ ン方式による授業記録. m. 授 業 記 述 と して の ス ト ッ プ モ ー シ ョ ン 方 式. 1. 「ストッ プモーショ ン方 式」 には次の二つの 意味がある. 一つはビデオを用いた授業検討会の方 式であり, もう一つは 授業記録の記述スタイ ルとしてのス トッ プモーション方式である. 現在, こ のストッ プモーショ ン方式は, 授業検討会と授業記述の両側面が支えあいながら授業研究の システ ム と して 広 が り つ つ あ る.. ストッ プモーショ ン方式の授業記録では, 授業で生じた事実を文脈を切らずに 記述することが目 ㈱) 標とされている. そのために, 授業中の教師と子どもの発語行為 , 発語内行為, 発語媒介行為, 言語外行為等の必要に 応じた記述とともに, 発言内容の文脈的意味の記述や授業の構造連関の記述 「 ま で行われる. また, ビデオをとめた 時に議論した内容を 簡潔に授業記録 の 中に 注」 に近 い形 1ストッ プモーション 1で記述するのである‐ その1ストッ プモーショ ン」では, 記録者のコメン トが加えられる‐ つまり, その授業の すぐれた 点を取り上げ, その意味を分析したり, 問題点の指摘と改善策を述べたり, 記録だけではわから な い授業の伏線やつながりを解説したりするの である‐ ( 性のとは明 したがっ て, このストッ プモーショ ン方 式の授業記録は, 従来の 「T-C型」 授業記録 らかに異なるもの と言える. ス ト ッ プモ ー ショ ン 方 式 に よ る 授 業検 討. 2. ここでは, 筆者が担当して いる 「音楽科教育法」 の授業で実際に行っ たストッ プモーショ ン方式 による授業検 討を取り上げたい‐ 4名, 女子14名)で行わ 扱った授業は, 1989年9月21日, 釧路市立駒場小学校5年1組(男子1. れた, 教育実習生山本雅子 (北海道教育大学釧路分校音楽研究室三年生) さんの教育実習研究授業 であ る.. ストッ プモーショ ン方式による 授業検討会は, 参加者がナマの 授業を参観してから再びビデオを 視聴する研究 会 〔参観-視聴型〕 と, ビデオで初めて 授業を見ることになる研究会 〔視聴オンリー 型〕 に二分される. この 授業検討は, 視聴オンリー型である‐ 0名と筆者を合わせ11名 この授業検討 会の参加者は, 授業者(実習生)を含み音楽研究室三年生1 である‐ また, ビデオ撮 影者である筆者が解説者を務めた‐ 教育実習 生の研究授業ということで, 授業検討会ではさま ざまな角 度から多くの鋭い発言が出さ れた. 次はこの授業のス トッ プモーション方式による授業記録である‐ ( ) 授業計画の概略 1 ① 題材名 「白い雲」 (二部合唱) 題材の目標. ②. *曲想を味わわせ, フレー ズを美しく歌わせる (白い雲) . *柔らかい声で, 響きのある 合唱をさせる (白い雲) . *和声の響きを味わわせながら合奏させる (エーデルワイス) ‐ 152.
(6) . 音楽科教育における授業研究. ③ 指導計画 (6時間扱い) *第一時・「白い雲」 の範唱テー プを聴いてイメージをつ かむ. ‐聴唱する‐ *第二時.「白い雲一 の高声部を階名視唱する‐ ・高声部の斉唱の歌唱指導 (発音, プレス) ‐ .「エーデルワイス」 の第1 パートをリコー ダーで練習する (タ ン ギ ン グi プレ ス)‐ *第三時.「白い雲」 の低声部を階名視唱する‐ ・低声部の斉唱の歌唱指導 (半音階的音程) .. 「エ ー デ ル ワ イ ス の 第1 1パ ー ト を リ コ ー ダー で 練 習 す る (タ ン ギン グ, フ レ ー ズ). 」. *第四時.「白い雲」 の合唱をする (柔らかい声で歌う, 頭声的発声) . .「エーデルワイ ス」 をリコー ダーで合奏する (拍の流れ) . *第五時・「白い雲」 の合唱をする (響き合い) . (本時) 「エーデルワイス」 をリコー ダーで合奏する (音の重なり, 和声の響き). *第六時 .「白 い 雲」 の 合 唱 の ま と め を す る. .「エ ー デ ル ワ イ ス」 の 合 奏 の ま と め を す る‐. ④ 本時の目標 (第五時) *音の重なりの美しい響きを感じながら合唱や合奏をすることができる‐ ( 2 ). 授業記録. 挨拶と同時にチャイムが鳴る. チャイムが鳴り終わらないうちに教師は次の発問をする.. 『今 日 は エ ー デ ル ワ イ ス を 先 に や り ま す と こ ろ でエ ー デ ルワ イ ス っ て 何 ? 知 っ て い る ? 』 , .. 「花の一種だと思います」 (金子君) 『そう エーデルワイ スっ て花だね どんな花だか知 っている ?』 . ‐ さ っ と 一 人の 子 ども が 手 を あ げ る. 『あ っ 佐 藤 君 知 っ て いる ? 』 ,. 「アルプス地方に咲く草花で ウスユキ草の一種です」 (佐藤君) , 『実 は ね 先 生 エ ー デ ル ワ イ ス の 花 を 実 際 に 書 い て き ま し た ジ ャ ッ ン ャ ン ャ ~ ン と 言 っ て 』 , . , .. エーデルワイ スが書かれた画用紙を取り出し, 子どもたちに見せる‐. 『エ ー デ ルワイ ス っ て こ う い う 花 な ん だ よ 茎 が ず い ぶ ん 細 い で し ょ か わ い ら しく 小 さ い 花 , ‐ .. なんです‐ みんながよく知っ ているひまわりは, これくらい背が高いでしょ (実際に高さを示す)‐ こ の よ う な 背 の 高 い, 大 き な 花 では なく て, 小 さ な 花 で だ い た い 20cm く ら い の 花 な ん だよ』. 教師は画用紙を黒板にはる‐ ス トッ プモー ショ ン. ①出だしの部分は, チャイムが鳴り終わっ てから発問するべきである‐ チャイムが鳴って いる状態では, 子どもたちの注意力が散漫になる‐ ②教師は画用紙を取り出すことに神経が集中していたようだ‐ したがって発問が誘導的に なっ ている‐ エーデルワイ スに関して初めて発問するのであれば, 一人の子どもの意 見 だけでなく, 他の子どもの意見も聞く配慮が必要である‐ 『今みんな この曲をリコーダーで練習しているよね 実はこの曲に歌があるの です エーデル , ‐ ‐ 153.
(7) . 篠 原 秀 夫. ワイスっていう 歌があるのです. テー プを用意してきたので聞いて みましょ う. 白い小さい花の 様 子をこんなふうに 歌っ ています‐ よく聞いてみてね』 こう言って, エーデルワイ スの範唱テー プをかける‐ 子どもたち が聞いている間, 教師は机間巡 視をする‐ ス ト ッ プモ ー シ ョ ン. ③ここ での机間巡視はそれほど意味のあるものではない‐ むしろ教師は, 鑑賞の雰囲気づ くりに 心掛ける必要がある‐ 状況が許すのなら ば, 教師自身もその 曲を傾聴すること が 大切 である. 『こ ん な 感 じの 曲 な の です こ う いう 可 愛 ら しく, 白 い 花 のイ メ ー ジ を 思 いう か べ な が ら, リ コ ー ‐ ダー で 吹 い て み ま し ょ う』. 『この前の 時間は1番と2番の パー トをやり ました‐ まず, 1番の パートをやりましょ う‐ 先生 が指揮をします』 ス ト ツ フoモ ー シ ョ ン. ④せっかく鑑賞したのだから,子どもたちにどんな光景を思いうかべたか,聞いてもよかっ たのではないか. 子どもたちは, それぞれ独自の 思いうかべ方をしたはずである. 子ど もによっては, 自分の身近にある 小さな白い花を思いうかべた子どももいるの ではない かと思われる‐ 教師は指揮棒を用意する. 教師の指揮で1番の パートをリコー ダーで吹く‐ 『はい みんなよかっ たね ところで, リコーダーを吹く 時はどんな事に 注意すればよかったか . , な ?』 「タンギン グ」 と数名の子どもが答える. 『タ ン キ ン グ そ の 他 に は ?』 ,. 「息の量を同じくらいにする」 とある子ども が答える. 『そ う だ ね 今 の 演 奏 は み ん な 息 の 量, 同 じく ら い でよ か っ た よ』 , . ス トッ プモー ショ ン. ⑤演奏の後の教師の 評価表現は大切 である‐ ここ では, 「みんなよ かっ たね」という評価 表 現が出されている‐ しかし, この場面 での教師の評価表現は, 次の演奏への意欲づけに. つ な が る も の で あ る‐ し た が っ て, どん な 所 が よ か っ た の か(どん な 所 が 悪 か っ た の か),. という具体 的な評価表現が必要ではないか. ⑥教師の話し方や視線が気になる‐ 前の2~3列しかも教師の前にいる数人に対して話を して い る 感 じ で あ る. ま た, や や 早 口 の 傾 向 が あ る. 『そ れ では 2番をや ってみましょう 2番は1 番よりちょっ と難しいから, 今あ げた事に注意 . ,. しながらやっ てみましょう‐ 同じように先生が指揮をします』 教師の指揮で2番の パートをリコーダーで吹く. 『2番は ちょっ とむずかしいね‐ 特に楽譜の右半分むずか しいです. 右半分のはじめの ところ , 154.
(8) . 音楽科教育における授業研究 をや っ て み ま しょ う‐ シ ー シ レ フ ァ か ら ミ レ フ ァ ー ま で, 2 段 目 の 3 小 節 ま でや っ て み ま し ょ う』. 教師の指揮で2番の部分 練習をする. 『は い ま だ 吹け て い な い 人 が い ま す ね そ う いう 人 は こ こ だ け は 吹く ぞ っ と 予 め 構 え て お い , , ‐. てく ださい‐ しならしを予め押さえる準備をしておくのです‐ 今度は1番と2番を分けて合わせて み ま し ょ う. こ こ か ら こ っ ち に す わ っ て い る 人 は 1 番. こ こ か ら こ っ ち の 人 は 2 番 を や っ て く だ さ . ス トッ プモ ー シ ョ ン. ⑦教師が言うように吹けていない子が 鋤こつく‐ その子どもたちをこの授業の中でどのよ う に 指 導 し て い っ た ら よ い の か, 難 しい と こ ろ で あ る‐. 教師の指揮でリコー ダー合奏 (1番・2番) をする. 『は い 前 の 時 間 よ り 1 番 ・ 2 番 そ ろ っ て い た よ 息 の 量 を し っ か り と 同 じく ら い 出 し て い る か , . ら だ よ. 今 度 は, 1 番・2 番 を 入 れ 代 わ っ て や っ て み ま し ょ う. こ っ ち が 1 番, こ っ ち が 2 番 です』. 1番・2番を入れ代わって合奏する. 『1 回 目 よ り だ い ぶ よ く な っ た ね た だ は じめ の 部分 の テ ン ポ が 速 く な っ て し ま っ た よ エ ー , . ‐. デルワイスの合奏, だいぶできるようになっ たね‐ 実際には3番の パート, 4番の パートもありま す‐ 少しずつ練習していきま しょう』 『そ れ では 次 は 白しゞ雲 を や り ま し ょ う』 , ス トッ プモ ー ショ ン. ⑧本時の目標は, 「音の重なりの美しい響きを感じながら合唱や合奏をすることができる」 で あ る. た と え こ の 段 階 (1 番 パ ー ト と 2 番 パ ー ト) で あ っ て も, 二部 に 分 け て い る の. であるから, 「音の重なりの美しさを感じさせる」ような教師の何らかの働きかけがあっ て も よ か っ た の で は な い か.. ⑨ここ でも 「だいぶよくなっ たね」 という評価表現を用いているが, 具体的にどの点がど のようによくなっ たかを明確にすると効果的なのではないか‐ 更に時間が許せ ば, 評価 を子どもに求めるのも効果的である. 子どもたちはエーデルワイ スの楽譜をしまい, 教科書の白い雲のところを開く‐ 教師は, 予め用 意してあっ た移動式黒板を移動させる‐ その黒板には楽譜が書かれた模造紙が貼られており, さら にそれが見えないように別の模造紙が貼られている‐ 『今 日 は 先 生 の 宝 物 を 見せ ま す そ れ は い っ た い 何 で し ょ う か ? , ‐. こ こ に あ り ま す‐ 何 だか わ. か る ? ヘハ\ , ジ ヤ ツ ン ヤ ン ヤ ~ ン』. かぶせてある模造紙を取り外す‐ その下には, 白い雲の楽譜が貼られている. 『み ん な 見 え る ?後ろの方まで見える? それではみんな 起立して 』 , ス ト ッ プモ ー シ ョ ン. ⑩子どもたちに 「いっ たい何であろう」 と知的好奇心を引き起こすような教師の働きかけ は大切 である. ここ でも, 子どもたちに興味を持たせるという意味では楽譜をかく して おいたのは有効 であっ たと 思わ れ る‐ し か し, 「い っ た い 何 であ ろ う」と 問 い か け て い る 155.
(9) . 篠 原 秀 夫. わりには, かくしておいた物があまりにも平凡であった‐ ⑪楽譜を黒板に用 意したのは, 子どもたちを教科書から離れさせる 意味で有効である‐ ⑫黄色の模造紙は一般的に光りやすいので, 今日のような晴れた日には, 不向きである‐ 子どもたちが起立し始めると同時に, 教師は次のような発問をする. 『歌う と き は どん な こ と に 気 を つ け れ ば い い の ?』 ,. 『足は? (子どもたちの様子を見て) ……そう』 『胸は? (子どもたちの 様子を見て) ……背中まがっている人いるよ』 『目は どんな状態? (子どもたちの様子を見て) ……そう』 『口は?』 と教師が聞くと 多くの子どもたちが 「卵を飲み込むよう な感じ」 と答えた. , ス ト ッ プモ ー シ ョ ン. ⑩ 『起立』 がかかっ て子どもたちがガタ ガタしている時に発問しても, 聞いていないこと が多い. 発問する時は, 子どもたちが完全に1つの動作を終えてからする べきである‐ ⑭ビデオで見る限り, 歌う姿勢の指導が全員に徹底されている状態ではない. したがって, 教師の方で, 足はこれくらい開くんだね, 胸はこうするんだね, 等一つずつ繰り返しな が ら 確 認 し て も よ か っ た の で は な い か.. 教師はピアノで単旋律 (シー ドシラソ) を弾く. 『1 番 だけ 上 の パ ー ト を 歌 いま し ょ う い ち ・ に ぃ ・ さ ん』 . ,. 子どもたちは, 教師の弾く ピアノの単旋律に合わせて1番を歌う. 『は い す わ っ て く だ さ い』 , ス トッ プモー ショ ン. ⑮子どもたちの演奏の 後は, いかなる場合であっても教師の評価表現がほしい. 次への意 欲づけにつながるか らである‐ やらせっ ぱなしは, できるだけ避けるようにしたい. 教 師は常に子どもの 演奏を評価する心構えが必要である‐ ⑯指導案にある発声練習はどう したのであろうか.. ⑰教師は, 子どもたちを歌わせる時に右手で旋律を弾いた. この時間は, 「白い雲」に入っ て5時間目なので, もう音取りの段階では ない‐ 右手で旋律を弾くのであれば, 左手で 旋律に合う伴奏を弾いて あげてもよかっ たのではないか‐. 『今1番だけ歌ってもらっ たけれど, この歌を歌う時に注意するところ がいくつかあっ たよね. あ げて み てく だ さ い』. 「音をのばす」 とある子どもが答える . 『どこ を の ばす の ? と教師が尋ねる 」 . 「な が れて く の く の と こ ろ」 と 数 名 の 子 ども が 答 え る . 『そ う だ ね な が れ て く の く の と こ ろ だ っ た よ ね あ と は ?』 と言って予め注意事項を書いた画 . .. 用紙を黒板にはる. 『た っ ぷ り の ばす そ の 他に は ?』 ‐. 「やわらかい声で」 ・とある子ども が答える. 156.
(10) . 音楽科教育における授業研究. 『そう やわらかい声ね と言 て予め用意していた画用紙を黒 っ 板にはる. 』 . 『あ と 他 に な か た 相内君 っ ? … , 』 「ながれてく のがに注意する (相内君) 」 『そうだね ながれてくのがに注意するんだね がじ なくて鼻濁音 のんがね』 と言っ て, 教師 や ‐ . は黒板にながれてくを書き, がに○ をする . 『あ と は な か た か な ? さらに教師は っ 尋ねる‐ 』 『そ れ では ま た 起 立 し て く だ さ い , 』 ス ト ッ プモ ー シ ョ ン. ⑱ 「やわらかい声」 というのは, 抽象的 でわかりにく い表現である 子どもたちが実際に ‐ どのようにすればよいのかわかるような具体的 な指導言が必要 である ‐ ⑩ながれてくのがのところは, ただ注意をするだけ でなく 歌の練習に入る前に 鼻濁音 , , のんがと言わせる練習があっ てもよかったのではないか ‐ 『今 上のパー トを歌っ たね 今度は下のパー トを歌 てみよう , っ . . みんな下のパー ト, ちょ っ と 自信なさそうに歌っ ているよね 下のパート で一番気をつけなければならないのは ここの部分 の . , この音 (3段目の4小節目 のしのシャ ー プ) だよね』 と言っ て 黒板の楽譜を指す , ‐ 『見えない人はちょっと移動して 見るようにして 』 『歌ってみましょ う 姿勢は? さ き 歌うとき に注意す っ , るところ, いくつか出しても らっ た ‐ よ ね‐ そ れ に 注 意 し な が ら 歌 っ て み て く だ さ い そ れ では い ち ‐ に ‐ さ ん っ 』 . ,. 教師の弾く ピアノの単旋律に合わせて子どもたちは下のパー トを1番~3番ま で歌う ‐ 『もう だ い じ ょ う ぶ か な 歌 え る か な ? 』 , .. 『今まで先生 ピアノで音を とっていたのだけれど 今度ピアノの音なし で歌 てみよう だい っ , , ‐. じょ う ぶ か な ?. 下 の パ ー ト だ よ‐ そ れ では い ち ・ に っ ・ さ ん』. 教師の手拍子に合わせながら, 子どもたちは下のパートを1番~2番ま で歌う 歌い終えた後 ‐ , 教師は子 どもたちをすわらせ る. 『それでは 上のパートと下のパー トを合わせてみまし う 舟尾さん 伴奏をお願い します. ょ . , , 上と下を分けます. こちら半分は上, つまり高い方 そしてこちら半分 は下 低いほう です 黒板 , , ‐ にあげてある注意する点に気をつけて歌いま しょう』 伴奏に合わせて合唱する‐ ス ト ッ プモ ー シ ョ ン. ⑳歌唱指導の場合, 子どもたちをすわ らせたままやる場合と 立たせてやる場合がある , . いずれにしても, それぞれ姿勢の指導があってもよいのではないか 特にすわ らせたり . , 楽譜を見ながら歌う 場合は, 姿勢がくずれていることが意外と多いものである ‐ ⑪多くの子どもたちは, 教科書を見ながら歌っ ていたが この段階では 歌詞を 見ないと , , 歌えない状態であろうか. たとえ見るの であっ ても せ っ かく黒板に楽譜が用意してあ , るので, 黒板に注目させ る工夫が必要ではなかろう か ‐ 『み ん な ね な が れ て く の く を の ば す こ と 忘 れ て い た よ こ は た こ っ ぷ り の ばそ う ね. そ れ に 今 , . 日 は, 2番目の 「やわらかい声」 で歌えるようにしましょ う 今度は上下逆でや てみまし う. .. っ. ょ .. 157.
(11) . 篠 原 秀 夫. こちら が上, こちら が下です. たっ ぷりのばすことを忘れないでね』 伴奏に合わせて1番~3番まで合唱する. ス トッ プモー ショ ン. ⑬ 『たっ ぷりのばす』 という指示も具 体性に欠けるものである. 具体的に何拍のばすのか 指摘したり, そこだけ取り上げて練習して もよかったのではないか. あるいは, 指揮を し な が ら 工 夫 し て も よ か っ た の で は な い か.. ⑳ここ でも, 合唱の後の 評価がない. 何らかの評価表現がほしいところである‐ 『今度は 久しぶりにテー プを聞いてみましょう』 と言って範唱テ ープを準備する. , 『今日は この後皆さ んの合唱を録音します‐ 今日はこちら が下の方, こちらが上の方をやっ て , ください. テー プを聞きながら, 上の パートの人は下の パー トを, 下の パートの人は上の パートを 注意深く聞いてみましょう』 範唱テー プの鑑賞をする.. 『テ ー プ を 聞 い て み て どう で し た か ? た っ ぷ り の ば し て い た で し ょ. そ れ で は 起 立 して‐ み ん な. の声がよく録音できるようにマイ クを用 意しました』 と言ってマイ クスタン ドを真ん中にセッ トす る.. 『舟尾さん また伴奏をお願いします』 , 黒板を指しながら, 『みんな, 注意事項を忘れないでね. 今日は特に, やわらかい声で歌うことに 注意してね』 ス ト ッ プモ ー シ ョ ン. ⑭ 『やわらかい声で』 という抽象的な指示を繰り返すよりは, この曲のイ メージを思い出 させ, そのイメージからやわらかい歌い方を求めていく方向が必要ではなかろうか. 教師は, 録音の準備をする. 教師の指揮で, 1番~3 番まで合唱する. 『どう だ っ た ? 緊張した ?』 「鼻つ ま っ ち や っ た」 と あ る 子 ども が 答 え る .. 『これから録音 したものを聞いてもらいます. できたてのほやほやの 録音です』 黒板を指しながら,『先ほどあ げた注意事項に気をつけながら 歌っ ていたかどう か, 聞いてみてく ださ い』. 音がぼそぼそと しか聞こえてこ ない‐ 子どもたちがざわつく. 『ちょっ と録音された音が小さかっ たね. もう一回歌っ てみましょう』 「え ー っ」 と 子 ども た ち の 声 .. 『もう一回挑戦してみよう さ っきより, より上手に 歌えるように 頑張りましょ う ! ‐ んな起 立して. もう一回録音してみます』 教師の指揮で, 1番~3 番まで合唱する‐ 『そ れ で は す わ っ て 聞 い て み ま し ょ う』 ‐. さあ, み. 2回目もうまく録音されていない‐ 同じように音 がぼそぼそとしか 聞こえてこない‐ 小さな音で はあるが, 1番~3 番まで鑑賞する. 158.
(12) . 音楽科教育における授業研究. ス ト ッ プモ ー シ ョ ン. ⑮これは, 初歩的なミスである‐ 事前にきちんと録 音できる状態か どうか確認をしておく 必要がある‐ あるいは別の手立て を用意しておくことも必要かもしれない . ⑮教師の指揮が単調である‐ 気をつけなければなら ないポイントがいく つかあるので そ , の部分 では最低限, 工夫が必要 である. 歌に入る前の小節は少し大きく ふっ てあげると か, のばすところはふらない でのばしたり, やわらかい声を要求するの であれば それ , なりの指揮の仕方がある はずである‐ 『今の録音聞いてみて どう だった ?. の ば さ な け れ ば な ら な い 所, た っ ぷ り の ば し て い た ?』 「の ば して い た と 数 名 の 子 ども た ち が ぼそ ぼ そ と 答 え た 」 ‐ 『や わ ら か い 声 は どう だ っ た ? 』 「や わ ら か い と 言う よ り 小 さ い 声 だ た と あ る 子 ども が 答 え た っ 」 , . 『な が れ てく の が は どう だ っ た ? と教師が発問したところ で授業終. 了のチャイムが鳴る. 』 『下の パー トの人 つられなかっ た? 上のパートの人は 下の パートの人たちにつられなか , っ , た ? 下の パート, まだ不安定なところあるね 下の パートをもう少し練習してみましょう 今日 . ‐ はこれでおしまいだけれど, この次の時間に白い雲をもう 少し練習しましょ う 特に下のパー ト . , 鍵 盤 ハ ー モニ カ も 使 っ て や り ま しょ う』. 『この次は エーデルワイ スの合奏のまとめと白い雲の合唱のまとめをします それではこれで , ‐ 終わりましょ う』 ス ト ツ フoモ ー シ ョ ン. ⑰録音の状態があまりよくないので, 全体的にしらけ ムー ドになっ ている この状態で細 . かな点を子どもたちに聞くよりは, 教師の方から評価表現を与えた方 がよかっ たのでは な いか. た と え ば, 『今 日 は こ の 点 が よ く な り ま し た さ ら に 次 は こ こ を 直 そ う ね 等 の 』 ‐. 評価表現の工夫 である. ⑳子どもたちに とっ て自分達の演奏を録音 して聞くという ことは 客観的に良い所 悪い , , 所を感じとれる, という点でとても有効な方法である 今回は 録音の失敗や時間の問 , ‐ 題もあるが, 子どもたちによる自己評価 に重点を置いて指導す れば 「録音して聞く と 」 , いうことがより生かさ れてくるはずである‐ 子どもが号令をかける‐ 授業終了. 授業時間は47分であっ た ‐ IV 考察と今後の課題 ストッ プモーショ ン方式による授業記録の検討 筆者の担当している 「音楽科教育法」 の授業では 実習生の研究授業や経験豊富な教師の授業を , いくつか取り上 げ, このようなストッ プモーショ ン方式で授業検討を数回行っ ている 最初は要領 ‐ がつかめず戸惑っている学生も, 回を重ねるごとにこの方式に慣れ 授業を検討す る力 (授業を 見 , る目) が養われてくる. 1. 今回取り上げた研究授業の授業記録を検討してみると 実習生の授業ということもあり ストッ , , 159.
(13) . 篠 原 秀 夫. プモーショ ンでは初 歩的なしかも基本的な問題の 指摘が多い. たとえば, ①の出だしの部分の指摘, ⑥の教師の話し方や視線の問題, あるいは⑯のような, 指 導案にはあるが実際授業では行われていない事に関する 指摘, 等である‐ これらのような指摘は, 力のある経験豊富な教師の 授業になると, 減少する‐ この方式に限らず, 授業検討 会では, 参加者自身の力 量の問題が関 与してくる. 教育実習を体験 したとは言え, 学生は所詮学生である. 授業実践の 乏しいことは否定できない. 今回のような実習 0年以 上教育現場に勤務 を終えたばかりの 学生10人が集まっ たストッ プモーションの検討会と, 1 0人が集まっ たストッ プモーショ ンの検 討会では,取り上げる 問題も討論 している経験豊富な教師1 の深みも 当然異なってくると言える‐ しかし, 今回の学生による授業検討会では, 前章で取り上 げたように 28 箇 所 で ス ト ッ プ モ ー シ ョ ンがかかったの である‐ 従来型の授 業研究 (授業検討会) をやったのでは, これだけの具体的な指 摘は出てはこなかったであろう‐ この 点は, 高く評価されるべきであると考える. また, 今回の授業検討会に限らずストッ プモーショ ン方式では, 教授行為に 関する指摘が圧倒的 に 多いと言える‐ 今回取り 上げた授業記録の中の約9割近くは, 教授行為に関するものである. とりわけ, 発問・ 指示・助言等の指導言に関わる問題が多い. すなわち, ①②④⑬ は発問, ⑱⑳⑭は指示, ⑭⑳は助 言, ⑤⑨⑮⑳は評価表現に関する ものである‐ さらに, ③は机間巡視, ⑰伴奏, ⑯は指揮に関するもの である‐ これらも 音楽科における大切な 教授行為である. 残りの 多くも, 何らかの教授行為に関わるものと言える. このように教授行為に関する諸問題が, 終始授業の事実に密着して分析・検討できるこ とは, 他 の方法に ない大きなメリ ッ トである‐ 勿論, ストッ プモーション方式の検討会で取り 上げられるのは, 教授行為だけではない‐ 今回の 授業記録には特別見られない が, 教育内容に関する問題, 教材に関する問題, あるいは教師の 教授 行為に対する子どもの反応の問題等, さま ざまな問題に関してス トッ プモーショ ンがかけら れるの であ る‐. 今回の 授業記録では, 教師の教授行為の悪い面の指摘が多かっ たと言える‐ これは, 前述したよ うに授業者が教育実習生ということで, 力量的にも 未熟であることからすれば止む を得ないことか もしれない. しかしストッ プモーショ ン方式による授業記録では, その授業者の悪い面だけでなく, 良い面, を指摘し, それを自分 自 あるいはす ぐれている所をできる限り取り上 げていく べきである. 悪い面, 身の授業実践に 生かしていこうとすることは大切である. それと同時に, すばらしい面に注目し, それを 吸収し学んでいこうとすることも大切なはず である. 特に, 力のある経験 豊富な教師の 授業 を検討する場合は, このような視点から授業を見ていくことが必要である. 2. ス ト ッ プモ ー シ ョ ン 方 式 の 発 展. ストッ プモーショ ン方式の授業研究 (授業研究会) には, さま ざまなバリエーショ ンが考えられ 8 ( 注 } 受業研究会の あり方を規定する 条件を重要なものから次の 六つ をあげている ‐ る. 藤岡信勝氏は,キ ①参加 者がナマの 授業を見ている か, ビデオで初めて 授業を見ることになるのか‐ ②研究会に授 業者自身が参加 しているか. ③解説者と参加者のどちら がより 多く 「ストッ プ」 をかけ問題を提起する役目をに なっているか‐ 160.
(14) . 音楽科教育における授業研究. ④ビデオは一台のカメラ で録画されたものか二台のカメラで録画されたものか. ⑤参加者の人数は何人くらいか. ⑥関連する文書資料 (特に授業記録) が手もとに用意されているか‐ これらの条件により, あるいは組み合わせによりさま ざまな授業研究 (授業研究会) のあり方が 考えられる‐ ス ト ッ プ モ ー シ ョ ン 方 式 が どの よ う な バ リ エ ー シ ョ ン を 伴 っ て 発 展 しつ つ あ る か, いく つ か 取 り. 上げてみる. 第一は, 「一人 で行うストッ プモーショ ン方式」である. これまで, 公開研究授業等の授業をビデ オ に 収 め, そ れ を 再 生 し 「こ こ の 指 導 は ま ず い な あ ~」 と か 「こ こ は こ う し た 方 が い い の では な い. か」 等, 一人 で検討することはあった‐ この程度の事であれば, 数多くの教師が行っ ているであろ う‐ こ れ を さ ら に 積 極 的 に や ろ う と す る の が, こ の 「一 人 で 行 う ス ト ッ プ モ ー シ ョ ン 方 式」 であ る‐. 特に自分自身の授業をビデオに収め, 授業の改善に結びつけようとするものである‐ 第二は, 「ミニ授業十ストッ プモーショ ン方式」である ㈱} ‐ 優れた実践家の授業を参観できるチャ ンスは少ない‐ そこで, 授業研究会において 多くの参加者が優れた実践家のミニ授業 (すなわち模 疑授業) に参加 し, その後ストッ プモーショ ン方式で検討するという.研究スタイ ルが生み出された ・いうのは 約20分くらいで行われる授業である 参加者の中から生徒役の希 のである‐ ミニ授業と , . 望者が募られ, 残りの参加者は周 囲で参観するの である‐ 0 注1 } 第 三 は, 「リ ター ン マ ッ チ 方 式」 であ る( ‘ これは, 「授業 -- ストッ プモーショ ン検討会 -- 再授業」 という流れで行われるものである‐ ストッ プモーショ ン方式で授業を検討すると, いくつ かの問題点が明らかになる. それを踏まえながら, 授業者はもう一回同じ授業に挑戦す るのである‐ 中学・高校には教科担任制がある. 一人の教師が一日に何回か同じ内容の授業をすることがある‐ この 「リターンマッチ方式」 は, 教科担任制の利点を活かした授業研究と言える‐ 今後の課題としては, できるかぎり数多くの優れた実践家の授業をストッ プモーション方式で検 討し, さらに授業記録として残していくことを考えている‐ 今回, 授業記録を行っ てみて, 実際の 援業を文字で記録するという ことが, いかに難しいものであるかが実感 できた. 記述の問題は, さ ま ざまな問題を含ん でいるので今後の課題とし, 稿を改めたいと考 えている.. 161.
(15) . 篠 原 秀 夫. G主〕 に U. 98 8年 p .5ー ( 1 ) 藤岡信勝 「ビデオをとめて授業の腕を上げよう」『授業づくりネットワーク』No .4 日本書籍 1 ( 2 1 )の文献 p ) 注( .6 )の文献 p ( 3 ) 注( 1 .7 ー8 1 )の文献 p ( 4 ) 注( .8 )の文献 p ( 5 ) 注( 1 .8 0 5 89年 p .99一1 6 ) 藤岡信勝 「授業記録をどうかくか②」 『授業づくりネットワーク』 No ( ‐9 学事出版 19 「発語行為」 は, 言葉を発するという行為である‐ 「発語内行為」 は, 言葉を発する中で行われている行為である‐ 「発語媒介行為」 は 言葉を発し, その中で何らかの行為を行うことによって, 結果的になしとげられる行為であ , る-. 8 6 )の文献 p ( 7 ) 注{ .9 T. …………………. CI … … … … … … …. C2 …………………………… 上のように, 教師の発言と子どもの発言をT, Cで区別し, テープレコーダー等からベ夕おこししたタイ プの授 業記録を 「TーC型」 授業記録という‐ ( ) 注( )の文献 p 8 1 .8ー 9 89年 P .8 9 ) 坂口隆 「ミニ授業とリターンマッチ方式」『授業づくりネットワーク』 No ( .17 学事出版 19 ( ) 注 l o )の文献 p ( 9 ‐10 (本 学 講 師. 162. 釧 路分 校).
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