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生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望

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Academic year: 2021

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(1)Title. 生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望. Author(s). 氷見山, 幸夫. Citation. 北海道生涯学習研究 : 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要, 創刊号: 53-61. Issue Date. 2001-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/2776. Rights. 本文ファイルはNIIから提供されたものである。. Hokkaido University of Education.

(2) “北海道生涯学習研究”北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要 創刊号 平成13年3月 ReportoftheResearchandEducationCenterforLifelongLeamlng−HokkaidoUniversityofEducationNo.1 March 2001. 生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望 氷見山幸夫 北海道教育大学旭川校地理学教室. TheSignincanCeandProspectoftheEnvironmentalMapContest intheContextofLifelongLeamlng ● YukioHIMIYAMA InstituteofGeography,AsahikawaCampus HokkaidoUniversltyOfEducation Asahikawa,070−8621,Japan. Abstract TheAsahikawaEnvironmentalMapConteststartedin1991intheoccasionof.’Intemational SymposiumonEnvironmentalChangeandGIS‖.nleMapContesthasbeendeveloping asaleadingmapcontestinJapan.ThetenthanniversaryoftheContest,Whichwasheldin October2000,WaSCelebratedbythecommemorativeeventofthel−EnvironmentalMap. EducationFair2000‖・TheContesthasmadenotablecontributionstowide−ranglng蔦elds includingenvironmentaleducation,mapeducation,geOgraphyeducation,Syntheticstudy,. liftlonglearn1nganduniversltyeXtenSion.Thepaperoutlinesthenatureandachievement OftheMapContest,anddiscussesitsslgnificanceandprospectinthecontextofliftlong leamlng・. Keywords:環境地図(environmentalmap),地図教育(mapeducation),環境教育(environmentaleducation), 生涯学習(1ifelongleaming),総合的学習(Syntheticstudy). はじめに. 1991年8月、旭川で「環境変化と地理情報システム国際会議」(INSEG−91)が開催された。それ は環境変化と地理情報システムをテーマとして国内で開催された初めての本格的国際会議であり、 記念切手が発行されるなど、注目を集めた。この会議が、関連する諸領域の研究の国際的な発展 に貢献したことは言うまでもないが、実はそれはもう一つ、重要な側面をもっていた。即ち、「専 門家の専門家による専門家のための閉ざされた会議」に終わらないための、様々な斬新な仕掛け をもっていたのである。開会式に内外の著名な学者の講演や市内の中学生たちによる器楽演奏が 行われ、市民に無料で公開されたのをはじめ、児童生徒の環境地図展、多数の企業を招いての地 理情報システム展示会、会議ゲストによる市内の学校での講演会、市民との交流の夕べ、などが. 実施された。これらの企画や会議の運営などに、相当数の市民が様々な形で参加あるいは協力し、. −53−.

(3) 氷見山幸夫. 市民に開かれた国際会議の実をあげることができた。 この国際会議を契機として生まれた「私たちの身のまわりの環境地図作品展」(以下「環境地. 図展」と略記)は、会議の精神を引き継いで毎年継続して開催されており、今や規模内容ともに 我国を代表する地図展に成長している。1998年2月に「環境地図教育研究会」が発足してから は、この研究会が主体となりそれを実施している。環境地図展は全国的な学会等の支援を受け、 環境教育、地図教育、地理教育、総合学習を含む広範な分野に貢献している。また生涯学習の振 興や大学開放にも深く関わっている。研究会の主たる目的は環境地図教育の深化と普及であるが、. その影響はこのように多岐にわたり、更なる発展のポテンシャルを有する。第10回目の環境地 図展は2000年10月、「環境地図教育フェア2000」の中核事業として実施されたが、このフェア はそれを存分に示す場となった。 以下で、この環境地図展の経緯と特徴を整理し、「環境地図教育フェア2000」の成果を踏まえ. つつ、生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望を論ずる。 Ⅰ.環境地図展と生涯学習. 1.環境地図展の年寺長. 近年、児童生徒の地図展は全国的な広がりを見せ、それぞれ特色のある発展を遂げている休 見山、1998)。国土地理院はこのような地図展の広がりをバックアップするため、全国の主な地 図展運営団体に呼びかけ、1998年1月に全国児童生徒地図作品展運営団体等連絡協議会を発足さ せた。現在環境地図教育研究会他7団体がこれに参加している(表1)。. 表1全国児童生徒地図作品展運営団体等連絡協議会加盟団体 (平成13年1月現在). 環境地図教育研究会 北海道教育地図研究会・札幌市教育地図研究会 仙台市中学校社会科研究会 身のまわりの環境地図作品展実行委貞会(多摩市). 岐阜県図書館世界分布図センター 広島県地理作品展運営委員会 鳥取県地域社会研究会 徳島地理学会. 環境地図展はその中で次のようなユニークな特長をもっている。. 1)唯一の全国規模の地図展である。海外からの参加も多い。他の地図展はいずれも市レベルな いし県レベルで行なわれている。全国規模で行なうことには、優れた作品が多数集まる、教育界・ 学界・社会へのインパクトが大きい、広域的な交流が進む、地域間理解や国際理解の促進に役立 つ、などのメリットがある。反面、実施に大きな負担が伴う、作品のレベルが全般に高くなるた. め、地元の児童生徒の作品が入賞しづらくなり、地元での関心が薄れてしまう、という間道もあ る。. 2)発足当初から地理学・地図学等の分野の専門家の支援を受けている。それは環境地図展に関. する様々な側面からの研究の推進に役立っている。また関連学会の協力を得たり、逆に学会に新 −54−.

(4) 生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望. しい風を吹き込む上で有効であった。例えば、長い歴史を誇る日本地理学会がこの種の教育イベ ントに学会長賞を出すようになったのは、環境地図展が最初であり、そのような行為は学会の村 社会的活動の一つとして評価され、学会の法人化運動を推進する上で役立った。 3)他に先駆けて1998年2月、教育研究組織としての「環境地図教育研究会」を設立し、環境 地図展をその活動の一部として位置付けた。これは環境地図展を単なる年1回のイベントに終わ らせることなく、教育研究の継続的な発展に結びつけようという意図の表れである。 4)小学校、中学校、高等学校、大学の教員および学生を中心とするネットワークにより支えら れている(氷見山、1995)。小・中・高・大の連携をとることは必ずしも容易ではないが、実現す. れば多彩で強い力を発揮する。環境地図展の場合、小・中学校の教員は児童生徒の指導と実践研 究において、高校の教員は展示会等の企画や運営において、大学の教員は活動の理論化・体系化、 参加する学生の指導助言や卒業生への呼びかけ、対外的活動などにおいて、学生は展示会や研究 会の運営において、特に重要な役割を果している。 5)生涯学習の振興と大学開放に積極的に取り組んでいる。それは、環境地図教育の深化と普及 (氷見山、1997a)、学校における地理教育の多角的展開(氷見山、1997b)、国際理解教育の振興、 総合学習への貢献(山田・氷見山,1999;本松・氷見山,2000)などの、研究会の抱える重要な課 題がそれらと密接に関連しているからである。研究会が事務局を北海道教育大学生涯学習教育研 究センター(以下、センターと略記)に置き、同センターとの協調的発展を希求しているのはそ のためである。. 2.環境地図展と生涯学習 生涯学習と緑のない学問分野はほとんど無いはずである。多様な専門分野をもつ北海道教育大 学旭川校の教官が皆、公開講座に携わった経験をもつという事実は、その表れである。最近まで 専ら学校教育を対象としていた教育大学に於いても、学校教育を生涯学習の大きなコンテクスト. の中で捉えなおそうという意識が高まっている。その意味では、諸学問分野と生涯学習との関係 の深さは、分野の性格だけではなく、そのような意識が分野内でどれだけ高まっているかに大き く依存する。環境地図展との関りが深い環境学、地図学、地理学などの分野はいずれも、分野的 には生涯学習と深い関係があるはずであるが、現実にそうであったかどうかは疑わしい。環境地. 図展がこれらの分野におけるそのような意識を変革する上で果たした役割は小さくない。 以下に環境地図展と生涯学習との関りを述べる。 1)環境地図展と環境教育. 環境地図展が環境教育にどう役立つかについては、①計画立案、②調査観察、③記録、④地 図作製、⑤地図読み取り・説明という環境地図作成のプロセスに沿って、氷見山(1995)が詳しく. 論じている。わが国では環境教育の歴史がまだ浅く、教員や既に社会に出ている大多数の人々に とっても、環境についての理解や捉え方は十分ではない。そのため、野外観察や施設見学を学校. 数育において実践する、あるいは実践できる教員は限られており、その大切さについての認識も 全般に高いとは言えない。環境教育は環境の状態やそれをめぐる諸情勢の激しい変化を遅延無く. 的確に反映しなければならず、その意味でも生涯学習の役割が大きい分野である。 2)環境地図展と地図教育. 従前の日本の地図教育は、上のプロセスの⑤地図読み取りに著しく偏ったものであった。地. 理学界においても地図を自ら作ることを軽視する風潮が強く、地図教育にあたっても実態を観察. ー55−.

(5) 氷見山幸夫. し地図化することは、軽視されてきた。環境地図展は、地図の作成と利用を環境理解の重要な手 段と見なしており、その立場から地図教育の改善に取り組んでいる。それは児童生徒に地図作り の楽しさと意義を知らせるというだけではなく、これまでの地図教育を改善し、新しい地図教育 を提案するものである。学校教育における問題を是正することは、新しい視点や知見を提示する ことと同様に、生涯教育の重要な役割である(氷見山,1995)。 3)環境地図展と総合学習. 2002年に実施される予定の総合学習では、各学校が「地域や学校、生徒の実態等に応じて、横 断的・総合的な学習や生徒の興味・関心等に基づく学習など創意工夫を生かした教育活動を行う」 とされている。環境地図展を核とした環境地図学習普及の試みは総合学習の構想を先取りした内 容をもち、それを実り多いものにする上で示唆に富む。総合学習の掲げる次の目標は、いずれも. 環境地図学習と深い関りをもっている:①創意工夫を生かした教育活動、②自ら学び、考え、 判断する、③主体性・創造性の育成、④横断的・総合的な学習、⑤体験的学習、問題解決的学 習、⑥多様な学習形態、集団指導、地域の教材。環境地図に取り組むことがこれらの目標に照. らしていかなる意義と展望をもち、いかなる課題を抱えているかについては、小学校と中学校の 場合についてそれぞれ本松・氷見山(2000)と山田・氷見山(1999)が詳細に論じている。. 3.環境地図展と北海道教育大学. 前述のように、「私たちの身のまわりの環境地図作品展」の実施主体である環境地図教育研究 会の事務局はセンターに置かれている。センターは公開講座や公開シンポジウムの実施、大学と 地域との連携の推進、生涯学習に関する研究の推進など様々な役割を担っているが、中でも学内 研究者と学外共同研究者による共同研究の振興に力を入れている。それは、北海道教育大学を真 に地域に開かれた、地域とともに歩む教育研究の拠点、我が国の生涯学習普及振興のための一大 中心として発展させたいというセンター設立の意図を強く反映したものである。このセンターの. 前身である北海道教育大学旭川校生涯学習教育研究センターの設置に当たっては、環境地図展の 経験が大いに活かされた。. 環境地図展はこれまで、小学校・中学校・高等学校・大学の連携の上に成り立ってきたが、こ れは全国的に見ても大変珍しいケースである。/ト中・高・大の教員および学生は、お互いに学. び合えること、協力しあえること、交換できる有益な情報などが多いにもかかわらず、これまで あまり交流してこなかった。しかし地図展の活動が生涯学習を視野に入れた教育の改善に寄与す. るうえで、そのような連携のもつ意味は大きく、各地の地図展でそれが実現することを願わずに はいられない。. 大学、とりわけ教育大学は、この種の教育研究活動において、関係者を結ぶネットワークのハ ブとして、重要な役割を果たすことが期待される(氷見山・鈴木,1998)。環境地図展の場合も、 それを中心となって支えているのは、北海道教育大学旭川校の地理学ゼミナールである。このゼ. ミは教員養成系と生涯教育系の学生を擁しているが、両者の間に壁を作らず、むしろ積極的な融 合の中で双方が高めあうような教育を目指している。環境地図教育研究会および環境地図展にお けるその役割は次のように大変幅が広い(氷見山,1995). ア)学生の貢献:環境地図教育研究会の幹事や各種専門委貞として、あるいは環境地図展の実 行委貞として重責を担っている。/ト中・高・大の教員やその他の社会人と共に活動することに より、環境地図教育にとどまらない広い学習と経験をしている。環境地図展に出品された作品や. ー56−.

(6) 生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望. それらを作った子供たちとの出会いから得るものも多い。 イ)卒業生の貢献:卒業生の大半は小・中・高の教員か地方公務員になる。彼らは教室やサー クルにおける児童生徒の指導や社会教育などを通じ、環境地図展に関わっている。旭川市内や近 傍の在住者は、研究会の運営や環境地図展の実施にも携わっている。 ウ)教員の貢献:環境地図展等の活動の理念設定や地図の評価・選考など様々な場面で、専門 的な立場から関与する。全国の専門家や関連の学会、機関、企業等に支援を呼び掛けることと、. 在校生や卒業生の組織化も、彼らの重要な仕事である。 エ)大学施設の利用:教員の異動が少ない上、施設利用において教員のもつ裁量の幅が小・中・. 高よりも広いので、検討会や作品管理の場として都合がよい。 以上のような役割を果たすことは、地域に開かれた大学を目指し、生涯学習研究の全国的な拠点、. 及び全道的な地域情報センターを目指して努力している北海道教育大学にとって、極めて意義が 大きいと思われる。 Ⅱ.「環境地図教育フェア2000」の成果. 環境地図教育研究会は2000年10月、環境地図展が第10回目を迎えるのを記念し、旭川大雪ク リスタルホールを会場として環境地図の展示をはじめとする各種イベントを実施した。これらに は多くの学生が主催者側として、あるいは発表者や報告者として参加し、目覚しい活躍をした(写 真1)。学生たち自身が「生涯学習」、「総合学習」、「大学開放」などを、具体的な実践を通して主 体的に経験したわけで、その意義は大きい。なお、イベントの企画にあたっては、特に次の点が 考慮された。. 写真1堂々と研究発表をする学生. ア)これまでの主な作品を展示し、作品のテーマ、視点、技法などの変遷や、連続して参加して いる子どもたちの成長が辿れるようにする。 イ)これまでの活動をふりかえり、新たな展望を見出す機会とする。. −57−.

(7) 氷見山幸夫. ウ)環境地図作りに関心のある児童生徒が集い、楽しく学びあえる場をつくる。 エ)学生を中心とした企画を設けるなど、学生の活躍の場を広げる。 オ)環境地図展について広く市民に知ってもらうとともに、様々な立場の人々からアイディアや. 助言を受ける。 以上の点を踏まえ、以下の企画が一般公開で実施された。. 1.第10回私たちの身のまわりの環境地図作品展(写真2). 例年と同様、旭川校の学生と旭川市内及び近傍の教員を中心とする実行委貞会を組織し、実施 した。例年その年の優秀作品を60点前後展示するが、今回はそれに加えて過去の作品から主な もの100点余りを選び、展示した。制作者の多彩なアイディアや観察・考察の面白さが光っただ けでなく、地図のテーマや地図作りの技術的な変化も見ることができた。また、何年かにわたり 継続して応募した幾人かの児童生徒の作品も展示されており、子どもたちの成長がどのように地 図に表れているかを見ることもできた。ここに展示された作品の中には、教育関係や地図関係の 雑誌などで紹介され、全国的に知られているものも少なくない。. 写真2 環境地図展会場入口の様子. 2.環境地図子どもワークショップ(写真3,写真4) 研究会のはじめての試みとして、学生だけで実行委貞会を組織し、企画し実施した。環境と地 図に関心のある児童生徒を対象に、クイズなどを通して環境の見方や地図作りについて楽しく学 んでもらうための企画で、表彰式に参加した児童生徒を中心に数十名が参加した。携わった学生. の数は10名余りである。クイズは展示会場に張られた地図に題材を求めたが、ワークショップ の趣旨にあった良い問題を作るのは学生にとってかなり難しい仕事であり、担当者は大変苦労し ていた。しかし子どもたちをグループに分け、それぞれに学生を張り付けての進行は実に見事で、. さすが教育大学の学生だ、との高い評価を得た。クイズを用いたことは、児童生徒にとっても学 生にとっても、環境と地図に対する理解を深める上で大いに役立った。また小・中・高の児童生 徒と大学生が一緒に問題に取り組んだりゲームをしたりするという企画も、新しい学習方法の試. −58−.

(8) 生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望. みとして、興味深いものであった。地図展というこれまでの手法に加え、今後更に研究し発展さ せることのできる試みだったと思われる。. 写真3「子供ワークショップ」の様子. 写真4「子どもワークショップ」に参加した児童・生徒・学生. 3.記念講演「市民からの環境アセスメント」. 我が国の環境アセスメントの草分けである島津康男氏が、「市民からの環境アセスメント」の タイトルで公演した。氏は環境アセスメントの立場から「身の回りの環境診断マップ」(あおぞ ら財団,2000)の普及に取り組んでおり、市民参加の環境地図作りが地域の環境の改善ないし改 悪阻止にどう活かされているかについて具体例を紹介しつつ述べた。取り上げられたのは、マス コミでもしばしば報じられている日本国際博覧会予定地である海上の森の環境アセスメントで活. かされた環境診断マップの例である。残念ながら、環境問題に関心のある市民の間でも、環境地 図作りの意義は、まだあまり広く理解されてはいない。氏の講演は環境に関心のある広範な人々. ー59−.

(9) 氷見山幸夫. に環境地図作りの意義を説いた点でも、地図や教育の立場から環境地図展に関与してきた人々に 環境地図作りが環境改善に結びつくことを示した点でも、示唆に富んでいた。旭川で環境問題に. 取り組んでいる人々と氏の間に交流関係ができたのも、大きな収穫であった。 4.環境地図教育シンポジウム「地図展を語ろう」. 書面参加を含めると25名前後の人々が環境地図展についての思いを発表した。発表者はいず. れもこれまで何らかの形で環境地図展と関わり、それを通して多くを学んできた人々である。こ のシンポジウムで特に印象的だったのは、演壇に立った学生たちが実に堂々と、よくまとまった 話をしたことである。地図展への積極的な関与に裏打ちされた自信がその背景にあることは言う. までもない。また大学を卒業し町役場に勤めはじめた元学生が、社会教育課に配属となり、「学 社融合」と「まちづくり」を目指して、早速「環境マップづくり」に取り組んでいるとの報告も あった。これらは環境地図展が生涯学習の発展に村してもつ意義の幅広さと今後の発展性をよく 表している。他方、準備や運営に携わる人々がそれらの仕事に忙殺され、環境地図教育と研究に 十分な時間を投入できないといった問題点も指摘された。そこで、実行委貞会の組織をより充実 し、負担が特定の人々に偏らないようにすること、研究活動を活発化するために隔月で勉強会を 開催することなどが計画されている。 5.市民シンポジウム「地域の環境宝さがし」 このシンポジウムは、「地域の自然環境や社会環境の面白いところ、珍しいところ、たいせつ なところ、よいところ、直したいところなどを色々な立場の人々に語ってもらい、地域環境を見. る様々な視点を学び、それらをどう環境地図学習に活かすか、よりよい地域環境をつくるにはど. うしたらよいかなどについて考える」ために企画された。地域環境を見る視点は実に多様である が、シンポジウムでは自然環境、社会・文化環境、景観、子どもの視点から見た環境、地域づく りの視点から見た環境について、議論がなされた(表2)。このシンポジウムは、一般市民に地域. 環境の見方と環境地図の有用さを多角的に示しただけでなく、環境地図展の関係者や児童生徒の 指導にあたる教員の視野を大きく広げてくれるものであった。. 表2 市民シンポジウム「地域の環境宝捜し」パネラーと話題 出羽寛(旭川大学):環境保全とは何かを問いつつ、地域の自然環境の豊かさとそれを見る視点 について語る。. 餌取清次(西神楽地域づくり研究会代表):西神楽地域づくり研究会が行なった「美瑛川辺別川. さと川マップ」づくりの経験と、地図をいかした地域づくりの活動について語る。. 東郷明子(旭川女性会議会長):市民運動の豊富な経験をもとに、地域の社会・文化環境に対する 理解を深めることの大切さや面白さを語る。 ドナルドCウォリントン(北海道東海大学):ランドスケープを創造する若者を育ててきた立場 から、良好な景観の形成に必要な視点と、環境地図の果たす役割について語る。. 水野隆祐(北海道教育大学旭川校院生):教育者を目指す学生の立場から、児童生徒の環境理解 を育む上で、環境地図学習の果たす役割とそのあり方について語る。 (シンポジウムの案内ちらしによる). ー60−.

(10) 生涯学習の視点から見た環境地図展の意義と展望. ぁわりに. 北海道教育大学生涯学習教育研究センターに事務局を置く環境地図教育研究会が主催する環境. 地図展は、我国の代表的な地図展の1つとして発展しており、環境教育、地図教育、地理教育、 総合学習などにおいて成果をあげている。その活動は生涯学習、大学開放、社会教育、教育研究 ネットワークの振興などを課題としている当該センターを充実発展させる上で示唆に富む。特に. 学生がこのような活動に取り組むことにより、これまでの大学数育で学べなかった多くのことを. 学び、卒業の後それを活かしてまちづくりや新しい教育に挑戦しているという事実は、21世紀の 北海道教育大学のあり方を考える上で大きな意味をもつ。センターが生涯学習の実践と教育研究 の真の中心として発展するには、生涯学習に関して芽生えているこのような新しい芽を沢山見つ. け、それらの成長を助け、生涯学習の大きな枠組みの中にそれらを位置付けてゆくことが大切だ と思われる。. 生涯学習の普及により、人々は教育について従前よりも幅広く、柔軟に考えるようになったと 思われる。それは学校教育が抱える様々な問題を是正し、それを一層豊かなものにする可能性を もっている。生涯学習は学校教育の軽薄化ではなく充実にこそ役立てられなければならない。ま た一方、旭川校が教育大学として長い間培ってきた教育研究のよき伝統を活かすことが、生涯学 習教育研究の発展にとって重要であることも論を待たない。生涯学習の普及発展と学校教育の充 実という2つの大きな目標に向け、旭川校が果たすべき役割は大変大きい。. 文 献. 1)氷見山幸夫(1995):環境・地図教育の地域ネットワークと教育大学の役割、生涯学習叢書IV,北海道教. 育大学旭川校,pp.229−234. 2)氷見山幸夫(1996):「私たちの身のまわりの環境地図作品展」について,地図ニュース,第284号,pp.3−8. 3)氷見山幸夫(1997a):教育大学における地理学教育の多角的展開の可能性,地学雑誌,Vol.106,No.6,pP. 886−889.. 4)氷見山幸夫(1997b):身のまわりの地図を描く−「私たちの身のまわりの環境地図作品展」より,地理, Vol.42,No.6,pp.69−74. 5)氷見山幸夫・鈴木広基(1998):高等学校における環境地図学習の試みと生涯学習教育研究センターの役割, 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要,第1号,pp.3ト40.. 6)氷見山幸夫(1998):地図作品展雑感,地図ニュース,No.305,pp.2. 7)山田忠・氷見山幸夫(1999):中学校の新設「総合的学習の時間」における環境地図学習展開の意義と展望, 北海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要,第2号,pp.1ト19. 8)本松宏幸・氷見山幸夫(2000):小学校の社会科・総合的学習における環境地図学習展開の意義と展望,北 海道教育大学生涯学習教育研究センター紀要,第3号,pp.6ト70. 9)あおぞら財団編(2000):つくってみよう身のまわりの環境診断マップ,環境庁企画調整局環境影響評価課,. 32p.. −61−.

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