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<リサーチコンペ研究成果> <活動報告> 中国における環境意識について

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Academic year: 2021

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<リサーチコンペ研究成果> <活動報告> 中国におけ

る環境意識について

著者

張 思宇

雑誌名

関西学院大学先端社会研究所紀要

18

ページ

101-103

発行年

2021-03-31

URL

http://hdl.handle.net/10236/00029515

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!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! " リサーチコンペ研究成果 " ◆ 活動報告 ◆

中国における環境意識について

思 宇

1.はじめに

筆者は、2019 年度関西学院大学先端社会研究所リサーチコンペにおいて研究助成を獲得し、 2020 年 3 月まで該当助成金を用いて研究を行った。その結果は、2020 年度日中社会学会にて「日 中における環境意識の比較」というテーマで発表する予定である。また、今年度中に日中社会学研 究に投稿する予定となっている。以下では、研究助成金を用いた研究活動において得られた知見の 概要を示す。

2.研究概要

2.1.研究背景 環境問題は経済発展と強い関係を持っている。経済発展による利益と環境問題による被害のジレ ンマのなかで深刻化している。特に、中国の場合、1970 年代から改革開放政策を実施したことに よって、経済力が急速的に高まったと同時に環境問題も生み出された。郝・李(2014)は中国にお ける大気汚染防止の状況を四つの段階に分けた。第一段階(1972∼1990)を初期段階、第二段階 (1991∼2000)を発展段階、第三段階(2001∼2010)を変換段階、第四段階(2011∼)を攻略段階 としている。それぞれの段階について「主要な出来事」、「汚染特徴」、「環境保護機関」、「防止対 象」、「重点的対策」、「法律法規」、「汚染度基準」の七項目の変化をまとめている。本研究でも、こ の分類の視点に基づいて歴史的背景を整理する。 法令に関しては、1973 年に第一次全国環境保護会議が開かれ、環境保護に関する方針が制定さ れた。1978 年の第 5 回全国人民代表大会にて、「環境および自然資源を保護し、汚染問題と公害問 題をなくす」という文章が新しい「憲法」に書き加えられた。翌年に中国で初めての総合的環境保 護基準法「中華人民共和国環境保護法(試行)」が発布された。1987 年に「大気汚染防治法」が発 布された。 各自治体にも自治体にあう条例、政策が作られている。北京市は 2014 年 1 月 22 日に「北京市大 気汚染防治条例」を採決した。政策には、曜日ごとの走行自動車ナンバープレート規制、暖房用熱 源の石炭から天然ガスへの変更、排出が多い工場の強制移転などが含まれる。 ────────────── * 関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程 関西学院大学 先端社会研究所紀要 第 18 号

Annual Review of the Institute for Advanced Social Research vol.18

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2019 年現在、北京市の大気汚染は改善し続けている。PM 2.5 など主要な汚染物質が以前に比べ 減っている。李(2020)によると、2019 年北京市の PM 2.5 の平均濃度は 42 mg/m3 であり、前年 度に比べ 17.6% 減っていて、二酸化窒素(NO2)、PM 10 の平均濃度は初めて国家基準に達した。 二酸化硫黄(SO2)も年間平均濃度は基準に達し、かつ 3 年間平均濃度は一桁台になっていること が分かった。 また、環境意識に関しては、土井(2010)は環境問題への関心や知識があっても実際の行動には 結びつかない、あるいは、「日常の環境意識・行動」と「環境問題解決に向けた意識・行動」が一 致しないと述べている。 2.2.研究目的と方法 本研究の目的は先進国である日本と発展途上国である中国のそれぞれにおいて、人々は環境政策 に関してどのように考えているのかを明らかにし、なぜ中国で環境保護優先と回答した人が多く、 日本は少ないのか、その背景を考えたい。 本研究では、まず中国の河北省及び北京市にいる住民に中国の大気環境汚染について、インタビ ュー調査を行った。調査期間は 2019 年 8 月 20 日から 2019 年 9 月 13 日までである。参加者は 9 名、そのうち北京市在住者が 4 名、河北省張家口市在住者が 3 名、廊坊市在住者が 2 名である。 また、日本と中国の SNS(Twitter と Weibo)上で、環境に関する政策について検索テキストマ イニングを行い、さらに、Twitter でのつぶやきには感情分析も行った。 2.3.調査結果 インタビューを行ったところ、「植樹造林」というキーワードが複数の協力者によって語られた。 特に注目に値するのが、「植樹造林」という政策の評価が異なっていた点である。 インタビュー対象者の一人は、「植樹造林」は黄砂を防ぐために有効的な手段だが、植林によっ て、風が通りにくくなったため、PM 2.5 が濃くなる原因の一つにもなっていると考えているが、 別の一人は「植樹造林」は黄砂を防ぐこともできて、風の通しには何の影響もないと考えている。 同じ政策に対して評価が異なるところは環境意識の差に繋がっていると思われる。 また、「植樹造林」について Weibo と Twitter でどのように語られているか分析を行った。「植樹 造林」(どちらも中国語簡体字で)を検索したところ、Weibo では、「植樹造林」は砂漠がなくなっ た、黄砂が飛ばなくなった、二酸化炭素を吸収できたのようなポジティブな評価がほとんどであっ たのに対し、Twitter では中国が行った「植樹造林」によって、土壌の水分が失われ、土壌中の微 生物が生きられなくなるといったツイートが多く見られる。イギリスの BBCNEWS(2020)の中 国語チャンネルで「環境保護知識:緑化はいいことだらけではない、不適切な造林は害がある」と いう記事があって、単に一つの種類の木や特定の種類の木が植えられた場合、生物の多様性が破壊 される恐れがあると指摘されている。どちらが正しいのか、ここで論じないが、環境意識の差があ ることが明らかとなった。 インタビューで明らかとなった二つ目のことは、今の中国の若者はアリペイ1)を通じて、積極的 ────────────── 1)アリババグループのスマートフォン決済サービス 関西学院大学 先端社会研究所紀要 第 18 号 102

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に植林活動を行っているということである。 このサービスは日常生活にアリペイを使ってバーコード決済をしたり、公共交通機関の利用など のエコ行動をとったりすることによって、エコポイント(二酸化炭素の排出減少量)がもらえ、一 定のポイントが貯まった場合、アリババグループが一本の木を植えてくれるというサービスであ る。この活動が 2016 年に始まってから、5.5 億のユーザーが参加し、2.23 億本の木が植えられてき た。 特に、多くの人は Weibo を使って、一緒に植樹するよう呼び掛けたり、好きなアイドルのため に植樹したり、家族、恋人、クラスメートと記念の木を植えたりする現象が起こっている。また、 この活動を通じて、自分が植えた木を見に行く人が増え、植林地周辺の観光事業が賑わっているこ とが明らかとなった。

本研究においては上記のインタビューと並行して、Twitter と Weibo で(Twitter は日本語で、 Weibo は中国語簡体字で)環境に関する政策(パリ協定、京都議定書など)をキーワードにして、 テキストマイニングを行った。その結果、どの媒体でもアメリカがパリ協定を離脱した件について 多く取り上げられていたことが明らかとなった。詳細については、投稿論文に記する。

3.今後の課題

今回のインタビュー調査では、中国国内の北京市と河北省を対象に住民の環境意識を調査してき たが、経済は発展している地域が更なる経済発展を望んでいる傾向は日中の間だけでなく傾向が日 中の間、発展途上国と先進国の間でも見られる。中国国内において、そのような意識の相違が生じ た原因について明らかにしたい。また、中国国内で多くのユーザーを持っているアリペイの植林ア プリ、アントフォレストの利用者に対して、利用する理由や環境意識について調査を行っていきた い。最後に、テキストマイニングのデータをもとに、感情分析を行いたい。 参考文献 BBC NEWS, 2020,「环保知识:绿化并非都好 造林不当“有害”」 (https : //www.bbc.com/zhongwen/simp/science-53155657,2020 年 8 月 25 日アクセス). 土井美枝子,2010,「環境問題についての意識と行動に関する比較研究−広島大学・復旦大学・マラヤ大学の 学生に対する質問紙調査をもとに−」『環境教育』20(2):26-39. 郝吉明・李欢欢,2014,「中国大气污染防治进程与展望」『世界环境』2014(1):58-61. 李玲玉,2020 年 1 月 8 日,「用脚歩丈量城市用行动守护蓝天」『中国环境报』 (http : //epaper.cenews.com.cn/html/2020-01/08/node_2.htm,2020 年 12 月 1 日アクセス). 中国における環境意識について 103

参照

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