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HbA1cと歯周ポケットの状態及び喪失歯数の疫学的関係

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Academic year: 2021

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(1)

HbA1cと歯周ポケットの状態及び喪失歯数の疫学的

関係

著者

渡辺 俊吾

52

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

歯博第896号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130050

(2)

- 52 -

論 文 内 容 要 旨

歯周疾患と心臓血管病や骨粗鬆症,糖尿病といった全身性疾患との関連がこれまでの研究によって 示されており,特に糖尿病は歯周疾患との間で双方向の関連性があることが古くから示唆されている。 HbA1cと歯の本数の関連性に関しても先行研究にて報告されている。そうした現状の中においても, 歯周病の指標である歯周ポケットの深度を中等度歯周炎と重度歯周炎の目安に分けた各段階及び喪失 歯数,それぞれと糖尿病の関連性の強さなど解明すべき余地は残っている。本研究では歯周炎の重症 度に応じて歯周疾患と糖尿病の関連性を調査することを目的とした。研究に際して,「HbA1cに対して, 歯石の存在や,中等度歯周炎の目安とされる歯周ポケットの深さ(PPD)4 ~ 5mmの状態及び重度歯 周炎の目安とされるPPD6mm以上の状態は正の関連性を示し,喪失歯数は負の関連性を示す」という 仮説を立て,日本の地域住民においてそのような結果が認められるかを検証した。 本研究は,宮城県北部の農村地帯にあるM町の住民健診における2012年から2015年にかけての4年間 のデータを用いて,糖尿病の指標であるHbA1cと歯周炎歯数及び喪失歯数の間の関係を重回帰分析で 解析した。分析で使用する項目は,従属変数であるHbA1cに対して,統制変数が年齢,性別,BMI, 収縮期血圧,拡張期血圧,喫煙習慣,1年以内の歯科定期受診の有無,刺激唾液量の8項目,独立変数 が歯石付着歯数,中等度歯周炎歯数,重度歯周炎歯数,第三大臼歯を含む喪失歯数の4項目として強制 投入法で分析した。 単変量解析の結果では,HbA1cに対して有意な関連性が認められたのは,歯石付着歯数,中等度歯 周炎歯数,重度歯周炎歯数であり,いずれも正の関連性であった。多変量解析の結果では,HbA1cに 対して,有意な正の関連性が認められたのは歯石付着歯数,重度歯周炎歯数であり,有意な負の関連 性が認められたのは喪失歯数であった。 統制変数により調整した上でHbA1cの増加と有意な因果関係を持つ歯周状態は,歯石の存在と6mm 氏 名(本籍)   : 渡わた 辺なべ 俊しゅん 吾ご(宮城県) 学 位 の 種 類  : 博 士  ( 歯 学 ) 学 位 記 番 号  : 歯 博 第 8 9 6 号 学位授与年月日  : 令和 2 年 3 月 25 日 学位授与の要件  : 学位規則第4条第1項該当 研 究 科 ・ 専 攻  : 東北大学大学院歯学研究科(博士課程)歯科学専攻 学 位 論 文 題 目  : HbA1c と歯周ポケットの状態及び喪失歯数の疫学的関係 論 文 審 査 委 員  : (主査)教授 小 坂   健 教授 五十嵐   薫   教授 小 関 健 由

(3)

- 53 - 以上の深い歯周ポケットであり,喪失歯の増加はHbA1cの低下と有意な関連性を持つことが示唆され る。多変量解析において仮説と異なった結果となったのは,中等度歯周炎がHbA1cと有意な関連性を 示さなかったことである。PPDが6mm以上まで到達しないと,多くの場合歯周炎により発生した炎症 性サイトカインがHbA1cの増加を引き起こすレベルの量に到達していない可能性があると考えた。 本研究によって,口腔内における糖尿病の増悪因子と寛解因子の両方が示されたと言える。糖尿病 患者に対して歯石の除去などの歯周病の治療を進め,浅い歯周ポケットを保つことだけでなく,回復 の見込めない重度歯周炎を持つ歯についてはできる限り早期の抜歯を行うことが,良好な血糖コント ロールにつながる可能性を高めると考えられる。今後は医科歯科連携をより強化し,歯科におけるこ うした段階を踏むことが,糖尿病の治療において欠かせない視点となると思われる。

審 査 結 果 要 旨

歯周疾患と心臓血管病等の全身性疾患との関連はこれまでの研究によって示されて来ている。糖尿 病については歯周疾患と双方向の関連性があることが示唆されている。しかしながら,歯周病の指標 である歯周ポケットの深度と重度歯周炎の程度及び喪失歯数といった項目と糖尿病の関係など解明す べき余地は残っている。本研究は宮城県の農村地帯にあるM町の住民健診において2012 ~ 2015年にわ たる4年間のデータを用い,糖尿病の月単位の指標となるHbA1cと歯周炎歯数及び喪失歯数の関係につ いて,重回帰分析を用いて解析している。調整変数は,年齢,性別,BMI,収縮期血圧,拡張期血圧, 喫煙習慣,1年以内の歯科定期受診の有無,刺激唾液量の8項目,独立変数が歯石付着歯数,中等度歯 周炎歯数,重度歯周炎歯数,第三大臼歯を含む喪失歯数の4項目として強制投入法で分析している。 多変量解析の結果,HbA1cに対して,有意な正の関連性が認められたのは歯石付着歯数,重度歯周 炎歯数であり,有意な負の関連性が認められたのは喪失歯数であった。変数を調整した上でHbA1cの 増加と有意な因果関係を持つ歯周状態は,歯石の存在と6mm以上の深い歯周ポケットであり,喪失歯 の増加はHbA1cの低下と有意な関連性を持つことが示唆された。中等度歯周炎がHbA1cと有意な関連 性を示さなかったことは仮説と異なった結果であったが,これはPPDが6mm以上になって,歯周炎に より発生した炎症性サイトカインがHbA1cの増加をより強く引き起こす可能性があることも考えられ た。 本研究により,糖尿病の増悪因子とともに寛解因子も示されたと言える。糖尿病患者に対して,デー タに基づいた新たな知見を付け加えたといえる。以上のことから,本論文を博士(歯学)の学位授与 に値するものと認める。

参照

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