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無水マレイン酸とのDiels-Alder反応を利用するアントラセン迅速定量法 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

無水マレイン酸とのDiels−Alder反応を利用する

アントラセンの迅速定量法

古澤源久

(昭和44年8月25日受理)

Rapid Determination of Anthracene by

Diels-Alder Reaction with Maleic Anhydride

MotohisaFURUSAWA

Synopsis  Various methods have been used for the quantitative determination of anthracene by using its Diels・Alder reaction with maleic anhydride. A new modified method of the determination which is more rapid than previous method is studied. The method is based on that the reaction can be carried out within 10 minutes by using o・dichlorobenzene as the solvent. 0.5gof the sample and O.5gof maleic anhydride are dissolved in 10 ml of o・dichlorobenzene and boiled gently for 10 minutes. After the solution is cooled to room temperature,100 ml of distilled water is added. The aqueous phase is titrated with O.25 N sodium hydroxide solution using a mixed indicator consisting of cresol red and thymol blue. The determination can be carried out in 30 minutes.  Comparing the experimental results of this method with those by the ultraviolet spectropho・ tometric method proposed previously by the authors, it is concluded that this method is applicable to the determination of anthracene in anthracene cake with the accuracy of 1∼2%error.

1,緒

言  アソトラセソの純度分析法としてアソトラキノソ法に かわって無水マレイソ酸とのDiels・Alder反応を利用す るジエン法が開発された。アントラセン試料中には不純 物としてアソトラキノソが含まれていることが判明し, アントラキノン法は正確な分析法とは言えないことが指 摘された。ジエソ反応を利用するアソトラセソの定量法 については多くの研究成果が発表されている1)一”8)。これ らの定量法はいずれも有機溶媒中でアントラセソを過剰 の無水マレイソ酸とともにその沸点温度において反応さ せてアソトラセソと無水マレインとの付加物を形成さ せ,過剰分の無水マレイソ酸をアルカリ滴定することに より無水マレイン酸と反応したアソトラセンの量を求 め,これより試料中のアソトラセンの量を求める方法で ある。  著者らはこの定量法を正確度を落すことなく,さらに 迅速に分析する方法を研究した9)∼1°)。またこの方法の低 純度アントラセンへの適用の可否を検討したので11),こ れらの研究の経過ならびに成果をまとめて報告する。

2,基礎 実 験

 2.1溶媒の選定とその経過  ジエソ反応に使用する有機溶媒としては,キシレソ,モ ノクロルベンゼソが従来から使用されており,JIS法に もクロルベンゼン法,キシレン法と呼ぽれる2つの方法 が採用されている。クnルベンゼソの沸点は132°Cで あり,キシレンは138∼142°Cであるので,キシレン法 の方がジエン反応を行なわせる温度が高く,そのために 反応時間が短かくてよいという長所を有する。一方キシ レンは比重が水より小さく,クロルベソゼンは大きいた めに,ジエソ反応後過剰の無水マレイン酸をアルカリ滴 定する際,クロルベソゼソ法では水相が有機相の上部に 存在するので直接アルカリ滴定ができるのに反し,キシ

一1一

(2)

昭和44年12月 山梨大学工学部研究報告 第20号 レン法の場合には有機相が水相の上部に存在するので直 接アルカリ滴定は困難である。したがって,キシレソ法 の場合には,キシレンを水蒸気蒸留によって留去し,残 った水相をアルカリ滴定する手段がとられているが,付 加物の加水分解などで誤差を伴いやすく,特に低純度の 試料に応用すると誤差が大きい。以上の結果クロルベン ゼン法はアントラセソの分析法としてより正確ではある が,分析所要時間は3∼4時間である。一方キシレン法 は正確さはやや劣るが,分析所要時間は2∼3時間でよ り短時間である。著者らはこの両分析法の長所をそれぞ れ生かした分析法の開発を試みた。すなわち,ジエソ反 応は沸点の高いキシレソを使用することにより反応時間 を短縮する。次にキシレソ法ではキシレソを留去するこ とが必要であるが,この際誤差を生ずるしまた時間を要 するので,留去することなく滴定する方法を考案した。 その方法はジエソ反応を行なわせたのち,四塩化炭素を 加える方法である。四塩化炭素は比重が大きいので,混 合した有機相は水を加えた際水相の下に沈むので,クロ ルベンゼソ法の場合と同様の効果があり,キシレソを留 去する必要がなくなる。この方法9}により分析所要時間 を1時間に短縮することができた。その後キシレソは少 量ではあるが無水マレイン酸と反応し,その結果,アソ トラセソ定量値が若干高値を示すことが発表された。12) 著者らはこの点を検討した結果,わずかではあるがキシ レンは無水マレイン酸と反応することが認められた。し たがって,正確でかつ迅速な分析法を完成させるために は,さらに適当な有機溶媒を見出す必要を生じた。著者 らの迅速分析法の主旨を生かすためには,有機溶媒の沸 点はキシレンより高いもので入手し易く,かつ無水マレ イソ酸と反応しないものでなけれぽならない。多くの有 機溶媒について検討したが,その中の若干の有機溶媒と 無水マレイン酸との反応性を示すと表一1のようであっ た。表一1の実験結果から,o一ジクロルベンゼンが最も 研究目的に合致している有機溶媒であると考えられる。 o一ジクPルベンゼソの沸点は180°Cであり,キシレソ より沸点が高いので,反応時間の短縮が可能と考えられ る。o一ジクロルベンゼンは比重が水より大きいので,水 を加えた場合水相の下に沈み,・直ちにアルカリ滴定が可 能で好都合である。  2. 2加熱時間と付加反応率  ジエン反応に必要な加熱時間を検討した結果は表一2 に示すようであった。表一2から,約7分加熱すれぽ付 加反応率は99.84%で一定値を示すようになることが判 明した。本定量法においては10分間加熱することにし た。未反応アソトラセンは0.16%で少量ではあるが, 一応係数を乗じて補正することにした。 表一2 加熱時間と付加反応率 加熱時間 (mim) 未反応アントラセン   (mg) 反応 率 (%) 3 4 5 6 7 7 8 9 10 10 32 4.1 1.5

L1

0.8 0.9 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 0.7 99.18 99.70 99.78 99.84 99.82 99.84 99.84 99.84 99.84 99. 84 99.86 表一1各種溶媒と無水マレイン酸との反応  2,3 無水マレイン酸の滴定率および共存物質の影響  この定量が正確に行なわれるためには,反応後に残存 している無水マレイソ酸を付加物ならびに溶媒が存在す る状態で正確に求め得ることが必要である。この点を検 討した結果,付加物などが共存していても滴定には影響 しないことが認められた。アントラセソ中に存在が予想 される物質として,カルバゾール,フェナントレン,フ ルオレン,アントラキノン,ジフェニレンオキシド,ア セナフテンについて影響を検討したがいずれも影響は認 められなかった。         加熱時間 溶媒の種類          (分) 未反応百分率  (%) 3.定  量  法 モノクロルベンゼ’ン     〃 O一ジクロルベンゼン イソプロピルベンゼン     〃

エチルベンゼン

120 〃 30 〃 〃 〃 99.9 99.8 99. 9 93.3 92.7 93.3  o一ジクロルベンゼンを溶媒とするアントラセソの迅速 定量法の操作法は次のようである。分析所要時間は約30 分である。  試料約0.5g(低品位の試料の場合には1g)と無水マ レイン酸約0.5gとを正確にはかりとり,反応容器に入 れる。反応容器は容量200 mlの三角フラスコにすり合 せの空気冷却管をとりつけたものを使用する。o一ジクロ ルベンゼン10mZを加える。金網上で加熱し,沸とうを 始めてから10分間加熱する。加熱終了後,2∼3分間放 置してから水道水で常温まで冷却する。冷却管などを約 100 mZの水で洗浄する。クレゾールレッドとチモール ブルーとの混合指示薬を使用して,0.25N水酸化ナトリ ・・一一一

Q一

(3)

無水マレイソ酸との反応を利用するアントラセソの迅速定量法 ウム標準溶液で滴定する。終点より少し前によく振とう し,青紫色を呈した点を終点とする。別に無水マレイソ 酸の純度に対する補正を行なうために,無水マレイン酸 約0.5gをはかりとり,水100mZに溶解し,混合指示薬 を使用して滴定する。付加反応割合0.998,の逆数1.0016 を乗じてアントラセンの定量値を求める。 4. アントラセンケi・一一キへの応用の検討  アソトラセンケーキのような多成分混合物中のアント ラセソの定量に,この容量法が適用できるかどうかを検 討した。カルバゾール,フェナソトレソなどがアソトラ センに比して多量に存在する場合にも,付加反応は定量 的に行なわれることが認められた。次に市販アントラセ ンケーキ3種類につき容量法と紫外吸収法13)とを比較し て適用の可否を検討した。この定量結果は表一3,表一4 に示すようであった。 表一3容量法によるアントラセンの定量結果

試料欝取鞭軽禦酔聯

0.06 0.03

 0

0.06 0.03  0 0.06 0.03  0

A

B

  0.943   0.928

A

  O.809   0.815

iliiii{lii i6}34・・2

360   1.150 B  1.063   0.981

iliiii議iili}33・・5

議lilii ili}24・・

380   1.110 C  O.962   0.987 *水酸化ナトリウム標準溶液の濃度は0.2508N   表一4紫外吸収法によるアントラセンの定量結果

試料試

??z光度・分(析%)値平(熔)値

400    83.7 A    93.6    102.0 0.680 0.772 0.839 iili} 33.1

B

92. 2 95.0 94.9 0.735 0.750 0.750 iili} 32,0

C

99.9 91.3 85.4 0.567 0.512 0.482 ii;i} 22.8 *試料を25m1に溶解し,さらに62.5倍に希釈して吸光度を測定した。  表一3,表一4の結果から容量法が紫外吸収法に対し1 ∼2%高値を与えることが認められた。この原因を明ら かにするために次の実験を行なった。表一4のA,B, C 図一1無水マレイン酸処理液にアントラセンを添加した     溶液と試料溶液との吸収スペクトルの差 試料の測定に使用した対照液に純アソトラセンを一定量 添加した。添加量は380mμにおける吸収が試料溶液に おけるそれとほぼ等しくなるようにした。この溶液を対 照液として,試料溶液の350∼400 mPtにおける吸収を 測定した。この結果は図一1に示すようであった。図一1 からみると,350∼400mμにおける吸収はほぼ一致して いるが,完全には一致していない。どの試料の場合にも 吸収の差が最も大きいのは,367mμ付近と386 mμ付 近とである。このことは,これらの波長付近において吸 収の極大を示し,かつ無水マレイン酸と反応する物質が アントラセソケーキ中に含まれていることを示してい る。この物質が単独であるか,混合物であるかは不明で あるが,かりに単一物質であるとした場合,どのような 物質であるかを推定してみた。長波長側に二つの極大を 示す吸収スペクトルの形状はアソトラセンの場合に非常 に類似している。さらにこの両ピーク間の波長の差もア ソトラセソの場合と同じように約19mμである。かつ 両ピークを示す波長はアントラセソの両極大より,それ ぞれ6mμ程度長波長側にずれている。メチルアソトラ セソの吸収スペクトルはこのような吸収を示し,またメ チルアソトラセン類はアソトラセンと同様,ジエソ反応 を起こすことが文献上認められている。これらのことか ら考えて,アソトラセンのメチル誘導体ではなかろうか と推定される。しかし,この量は少ないので,紫外吸収 法による定量値は実際の値と大差ない結果であると考え られる。  試料中に無水マレイン酸と反応する物質が存在する場 合,容量法においてはモル比に相当する量だけアントラ セン定量値が高くなる。紫外吸収法においては,その物 質が380 mPtにおいて吸収を示さない場合は定量値に影 響なく,また380mμに吸収を示す場合にはグラム吸収 率の比に相当する量だけ定量値を高くする。容量法と紫 外吸収法との定量値の差はこれらのことに起因する。以 上の実験結果から,この容量法は1∼2%程度の正の誤

3一

(4)

昭和44年12月 山梨大学工学部研究報告 第20号 差で,アントラセンケーキの中のアントラセソを定量し 得るものと考えられる。

5.結

言  アソトラセソの純度分析法として,無水マレイソ酸と のDiels・Alder反応を利用する方法が開発されている。 この方法は有機容媒中でアントラセンを過剰の無水マレ イン酸とともに加熱して反応させ,過剰分の無水マレイ ソ酸をアルカリ滴定により求めて分析する方法である。 著者らはこの分析法を正確度を落すことなくさらに迅速 に分析する方法を研究した。反応に使用する有機溶媒を 種々検討した結果,o一ジクロルベンゼソが最適であるこ とが認められた。o一ジクロルベソゼソを使用することに より,従来2∼3時問を要した分析時間を30分に短縮 することができた。この定量法のアントラセソケーキへ の適用の可否を紫外吸収法との比較により詳細に検討し た。この結果1∼2%の正の誤差で分析しうることが認 められた。  終わりに,ご指導を賜った名古屋大学工学部武内次夫教授に 厚くお礼申し上げます。 文 献 1) 1.Ya Postovskii et a1,1. Aカpl. Chem.(U.S.S.R.)  10, 759 (1937) ; 17,463 (1944) 2) 1.Ubaldini et al, Ann ch im.ψカ〃cata 39,77 3) 4) 5) (1949)  A.F. Titley et al,1. Soc. Chem. Ind.(London) 69,SupPl No.1,523(1950)  W.Schmidt, Brennstoff Chem.33,176(1952)  船久保英一・,松本祐太郎および共同研究者,工化56,  798(1953);工化57,559,562(1954) 6)船久保英一,松本祐太郎および共同研究者,工化57,  143, 145, 556 (1954) 7)船久保英一,松本祐太郎および共同研究者,工化57,  916 (1954);エイヒ 59, 422, 429 (1956) 8) E.Funakubo usw, Brennstoff Chem,40,377  (1959);41,46,243,308 (1960);42,54 (1961);44,  210 (1963) 9)武内次夫,占沢源久,分析化学,6,621(1957) 10)武内次夫,田中保,古沢源久,工化,66,1656(1963), 11) 武内次夫,古沢源久,工化,67,1007(1964) 12)船久保英一,学振116委員会で発表(昭和37年1月22日) 13) 古沢源久,武内次夫,関戸和子,工化,66,1809  (1963)

一4

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