ろう学校における発達障害を併せ有する児童の指導
Training for a Child with Developmental Disorders in the Deaf School
≪
実践研究》
はじめに 現在の特別支援教育は、障害の種類や程度等 に 応 じて特別の場で指導を行 う特殊教育か ら一人一 人の教育的ニーズに応 じて適切な教育的支援 を行 うもの (文部科学省,2001)として転換 された。 これによって、従来の特殊教育では対象 とされな かった、通常の学級 に在籍するLD、ADHD
、高 機能自閉症等の発達障害がある児童生徒への対応 が注 目されるようになった。文部科学省が2002 年 に小 中学校に実施 した 「通常学級に在籍する特 別な教育的支援 を必要 とする児童生徒に関する全 国実態調査」では、教員の印象判断で発達障害が 疑われる児童生徒 (以下、サスペク ト児)は6
.
3
%
とされている。 これは3
0
人学級 に2
人程度のサ スペク ト児が存在するという数字であ り、小中学 校の通常学級 を担当する教員の多 くがその指導に 当たっているという実態 を示 している。特別支援 教育は2007年度 より本格的に施行 されてまだ 日 が浅 く、通常学級の教員の中には発達障害児への 対応に悩む者が多い。またそのような児童生徒の 困難状況は多様で、教員にとっては毎年異なるタ イプの発達障害児を担当することになるため、適 切な教育的支援 を行 うために類似 した事例を求め る声 も多 く聞かれる。 ところで、通常の小中学校のみならず、聴覚障 害児 を教育する特別支援学校 (以下、ろう学校) にも発達障害児は在籍 している。潰田・大鹿(2009) によると、ろう学校の在籍児のうちサスペク ト児 の割合 は、幼稚部1
6
.
0
%
、小学部1
6
.
7
%
、中学部長 野 大 学 社 会 福 祉 学 部 臼 井 な ず な
Nazuna Usui
1
5
.
6
%
であ り、聴児 を対象 とした研究 よ りも高い ことが示 されている。聴覚障害児の場合、その児 童生徒の抱える困難が聴覚障害に由来するものな のか発達障害に由来するものなのかの見極めが薙 しい とい う問題があ り、指導事例の蓄積 も進んで いない。 そこで本実践研究では、聴覚障害 と発達障害を 併せ有する児童への指導の一事例 を報告する。特 に、WI
S
C-
Ⅲと学校生活の観察によるアセスメン トから決定 した指導方法が有効であったかどうか について焦点を当て考察することを目的とする。 1.研究方法 (1) 対象児 ろう学校小学部通常学級に在籍する男児 平均聴力は左右 とも1
0
0
d
B
程度 父 (ろう)、母 (ろう)、兄 (聴)、本児 (ろう) の4人家族 コミュニケーション手段は、家庭 において も学 校 においても手話であった。学校では補聴器 を装 用 していたが聴覚はあまり活用 してお らず、音声 言語での表出 もほとんどなかった。 幼稚部3年生か ら、毎 日ろう学校 に通 うように なった。それまでは主に保育園に通ってお り、ろ う学校 にも在籍 していたが、登校 は週 1回程度で あった。小学部に入ってか らは、毎 日元気に登校 していた。 (2)実践期間 20ⅩⅩ年4月∼ 20ⅩⅩ+2年3月 (計 2年)この間の対象児の年齢は
、
9
歳2
ケ月∼1
1
歳1
ケ 月 (小学部4年生及び5年生)であった。 (3) 手続 き 筆者が学級担任 として行 った実態把捉、 目標や 手立ての設定、指導 を報告する。 実態把 握 及 び 目標 や手 立 ての設 定 の方法 は、 WISC-Ⅲの結果の解釈 と学校 生活 の観察であっ た。WISC-Ⅲ は、20ⅩⅩ-1年12月、対 象児 が 3年生の ときに実施 された ものを利用 した。2.
対象児の実態把握 と課題 (1) 在籍校及び在籍学年の児童の様子 幼稚部 と小学部のみの公立ろう学校であ り、通 常学級 は各学年1-3
学級、重複学級は小学部に 2学級設 置 されていた。小学 部 の児童数 は約60 名であった。 教員のほとんどは聴者であ り、音声併用手話 を 用いて指導 を行っていた。児童同士 は主に手話 を 用いて コミュニケーシ ョンを行 っていた。同校の コミュニケーシ ョンについての方針 は、聴覚活用、 読話、発音、手話、読み書 き、視覚教材、身振 り など、児童一人一人のニーズに応 じて どんな方法 で も使用するとい うものであった。 対象児 の学年 は3
学級 あ り、1
3
名の児童が在 籍 していた。対象児以外 の12名 も、学年対応 の 学習が十分理解で きる児童の他、生活面では学年 相応であるが学習面では下学年対応 の児童、生活 面学習面 ともに個別 に配慮 を要す る児童がお り、 課題 は様 々であった。 (2) 在来校における一人一人の教育的ニーズへの対応 (∋習熟度別学習グループ 教科の学習 (国語、社会、算数、理科)は習熟 度別のグループ指導 を行 っていた。習熟度別のグ ループ指導は、どの学年で も行われてお り、グルー プ編成や時間割は小学郡全体で協議 して決定 した ものであった。 また、年度途中で も柔軟に編成 し 直す ことになっていた。その他の授業 (道徳、総 合、音楽など)は、学級別 または学年合同で行 っ ていた。 (参個別の指導計画 と保護者面談 児童一人一人 について個別の指導計画 を作成 し、学期 ごとの成績通知表 として も利用 していた。 教員は学期の始めに、児童の実態、指導の 目標や 手立てを記入 し、保護者 との面談で内容 を確認 し 合 った。学期末には評価 を記入 し、再 び面談で詳 細 を説明 した り来学期の 目標 を相談 した りした。 学級担任 と保護者 との個別面談は、基本的には年 間3回程度であった。 (参ケース会議 と校内支援会議 特 に配慮 を要する児童 については、年度当初 に 小学部の教員全員でケース会議を行い、担任の指 導方針 を検討 した り担任以外の教員の対応 を周知 した りした。 さらに、学級措置や保護者対応、進 路 などの課題があるケースでは、進路指導部が中 心 となって、管理職、コーディネーター、学級担 任 な どを参加者 と した校 内支援会議 を行 ってい た。 (彰個人ファイル 在籍児一人に1
冊ずつ ファイルを用意 し、個別 の指導計画や検査結果な ど、現担任か ら次の担任 へ と引 き継 ぎたい資料 をはさんでい くことになっ ていた。幼稚部入学 (転入)か ら小学部卒業 (蘇 出) まで同 じファイルを使用 した。 ⑤NPOとの連携 聴覚障害児 ・者 を支援するNPO法人 との連携 が行 われていた。NPOの活動 には様 々な種類が あった。その中で、発達障害 を併せ有する児童 を 対象 とした学習活動 も行われていた。月2
回土曜 日の午前中に、個別学習 と集団活動が行われてい た。またこの活動は保護者支援の機会 で もあった。 参加児童の担当者 と保護者 と学級担任 とは、記録 用紙 をファイル した ものを回覧 して、児童の様子 や各 々の取 り組み についての情報 を共有 してい た。学習活動の担当者が前述の校内支援会議に参 加することもあった。 また、気になる児童の発達 検査 を実施するなどの協力 も得 られていた。-8-(3) 対象児へのアセスメン ト (
DwI
S
C-Ⅲ (
2
0
ⅩⅩ-1
年1
2
月、8
歳1
0ケ月時 実施) 対象児に最 も分か りやすい手段 として、手話 を 用いて実施 した。手話の表現が正答 を教 えること になる場合 には、指文字やパ ソコンによる文字提 示 を行った。 IQ及び群指数 を表 1に示す。 表1 1Q及び群指数 下位検査 の評価点 を表2に示す。 表2
下位検査の評価点 所見 全検査IQ69である。 しか し聴覚障害児 は、 日 本語の知識 を使用する言語性検査で数倍が落ち込 むことが多 く、動作性IQ85の結果か ら、明 らか な知的障害 とは結論付けに くい。 言語性IQは61で、動作性IQとの差が2
4
点 と大 きく、個人内の発達 にばらつ きがある。動作 性IQの方が高い対象児 にとっては、視覚 一運動 処理 を利用 した支援が有効 と考 えられる。 群指数においては、言語理解が落ち込んでいる ことが分かる。言語的知識の乏 しき、言語 を利用 した推理や表現の苦手 さが うかがわれる。知覚統 合、注意記憶、処理速度については、平均 を下回っ てはいるが標準の範囲である。 言語性下位検査 の中では、「算数」だけが標準 の範囲に入ってお り、対象児 にとって高い数倍 と なっている。また学校の授業やテス トにおいて も、 算数 だけは学年相応に進 んで きている。 したがっ て、計算のように記号 を機械的に処理することが 得意であると思われる。ただ し、その他の言語性 下位検査の評価点が低いことや対象児が文章題 を 読んでいる様子か ら判断すると、文章の内容 を理 解 してはいない と考 えられる。 動作性下位検査の中では、「絵画配列」 だけが 標準の範囲を下回っている。 これは、生活に基づ いた知識 を利用 して結果 を予測する力や時間概念 が乏 しいことを示 していると思 われる。その他の 動作性下位検査 は、評価点が7-1
1であ り、対 象児 にとって得意 とする検査であったことが分か る。 (参学校生活の様子 <性格 > 面 白い顔や動作で友 だちを笑わせ るな ど、たいへん明るい性格であった。 <学習 > 前述の習熟反別グループで、国語、社 会、理科 は二つ または三つに分 けた内の最 も配慮 を要するグループ(
C
グループ)であったが、算 数 だけは学年対応 のグループ (A グループ) で あった。 算数の中で も、特 に計算の方略は正確 に習得 し ていた。分度器やコンパスは上手に使 えなかった。 数字 を見てグラフに点を打つ ことはで きるが、グ ラフを最初か ら作成 した り、グラフの折 れ線の意 味 を読み取 った りすることはで きなかった。 対象児が手話で表現 した話 は、なかなか相手に 伝 わらなかった。相手の もっている知識 に関わ ら ず大部分の情報 を省略 して自分の言いたいことだ けを言 うことが多かった。友だちの手話 による話 は、おお よそ理解で きていた。 日本語の語桑は少 なかった。身の回 りにある物 の名前で も、分か らなかった り誤って覚 えていた りした。 日本語 については、助詞その他の文法事 項 も習得で きていなかったため、正確 な文の読み 書 きも困難であった。 小 さい字やマスに合わせた大 きさの字 を書 くこ とが薙 しかった。 また、字の形 を整 えることも難 しい ようであった。名前の欄 に入 りきらない大 き さで最初の文字 を書 き始め、最後の文字が小 さく なって しまうこともよくあった。 テス トの後 に感想 を聞 くと、必ず 「簡単だった」
と自信満 々に答えるが、実際の結果 は点数が取れ ていないことが多かった。<行動 > 教室の移動や帰 りの準備など、おおむ ね何において もゆっ くりのペースであった。 本人な りにあわてて準備をしている際にふでぽ こを落 として中身を散 らば した り、カバ ンにひも が絡 まって上手 く背負えなかった りしたときなど に、かん しゃくを起 こす ことがあった。また友だ ち との トラブルで気持 ちの整理がつかな くなる と、にぎりこぶ Lで自分の頭 をなぐることもあっ た。 友だちや教員に積極的にかかわってい くが、そ の発話 は自分の興味のあることに限 られてお り、 説明 も不十分なため一度で伝わらないことが多々 あった。4年生4月ごろには、友だちに 「分か ら ない」 と冷た く言われて話の続 きをあ きらめる様 子 もみ られた。 休み時間に対象児が泣 き出す ことが度々起 こっ た。対象児に理由を尋ねると
「
A
くんがベロを出 してばかにした」などと説明するが、その場 にい た児童か ら話 を聞 くと、泣 く前に対象児 もAくん に対 して同 じことをしていたということが分かっ た。対象児にそれを伝 えても、自分はやられた側 だと主張するばか りであった。 集団に対する教員の指示 を見ていなかった り理 解 に時間がかかった りすることが多かった。 同学年や高学年で行 う話 し合い活動では、他の 児童に合わせた内容が設定 されているため、対象 児 にとっては杜 しく付いていけないことが多かっ た。 対象児 にとっては魅力的な ものがい くつかあ り、授業や会話の中でその単語や実物などが登場 すると、他の ものが 目に入 らな くなって しまうよ うであった (例:金色、プ-さん、1
番、草など)0 <運動 > 租大運動 も微細運動 も幼い様子であっ た (例 :縄跳びの際に腕 を伸ば して縄 を回す、折 り紙 に措いた絵 を切 り抜 こうとして ぐちゃぐちゃ になって しまうなど)。 自立活動の発音指導 にお いて も、呼気の調節や舌の運動が上手にできない ことが多かった。 (4)対象児の課題 学校生活の観察の結果、かんしゃくや自分の頭 をなぐる行為、友だちとの トラブルを解決するこ とが必要であると考えた。 また、学習、行動、運 動面の特徴 と、
WI
SC-
Ⅲの結果を照 らし合わせて、 対象児の課題 として以下の 2点が挙げられた。 (∋言語による意思疎通の姓 しきWI
SC-
Ⅲでは、言語性検査、特 に言語理解 の 能力の弱 さが示 された。 自分の気持ちが上手に表 現で きないためにフラス トレーシ ョンを感 じ、か ん しゃ くを起 こ した り自分 の頭 をな ぐった りす る。対象児の言語表現の拙 さが友だちの誤解を生 み、 トラブルが生 じることになる。また、伝えた いことが伝わらない経験 を繰 り返すことで、話す 意欲がな くなって しまうことも懸念された。 (参自分の行動 を客観的にとらえることや他の人の 気持ちを考えることの錐 しさ 友だちと トラブ両 こなったときに、実際にした 行動を 「やっていない」 と言い張るのは、おこら れないために嘘 をつ くとい う考えか らではな く、 自分の行動が客観視で きないためのようである。 また、自分にとって面白い ものを他の人 も面白い と思 うか どうかは分か らないことや、相手が知 ら ない情報はていねいに説明する必要があることな どが理解できていないため、友だちに話を理解 さ れない場面が生 じていた。WI
S
C-
Ⅲでは、「理解」 と 「絵画配列」の検査が社会的理解の能力 と関連 深い とされている。対象児 は、「理解」の評価点 が 1で非常 に低 く、「絵画配列」の評価点 も4で 動作性検査の中では最 も低かった。学校生活で友 だちと トラブルになる点 とこの検査結果が示す も のは一致 していた。3.
目標 と手立て 上記の課題を解決するために、以下の長期 目標 を設定 した。 <長期 目標1>手話で伝 え合 うことがで きるよう にする <長期 目標2
>
自分の行動 を客観的にとらえ、状-1
0-況に合った言動をとれるようにする 手立てについては
、WI
S
C-
Ⅲの結果 をもとに、 対象児が得意 とする方略を用いた。すなわち、対 象児は言語を利用するよりも視覚的な情報処理が 優位であることから、視覚的手がか りを用いるこ ととした。 4.指導 (1)
「手話で伝え合うことができるようにする」ために (かく短期 目標 >積極的に話をする 指導期間 :2
0
Ⅹ
Ⅹ年4
月∼2
0
ⅩⅩ+
1年3
月 (対 象児は4年生) 手立て :黒板の利用 内容 :同学年の児童たちが、対象児の話は理解 しようと思っても結局分か らないので最初か ら 聞かないという態度になっていたので、担任が 根気 よく対象児の話に付 き合った。聞き返 して も分からないときは、黒板に絵をかかせるよう にした。この様子を見ていて、友だちも伝わら ないことがあると対象児を黒板の前に連れて行 くようになった。内容が伝わ り、それについて 友だちと一緒にや りとりする機会が増えた。 ② <短期 目標 >質問に正 しく答えた り、友だち に質問した りする 指導期間 :2
0
Ⅹ
Ⅹ年4
月∼2
0
ⅩⅩ+
1年3
月 (対 象児は4年生) 手立て :絵 日記の発表 内容 :国語のC
グループでは、1
週間に1
回、 月曜日は絵 日記の発表の日と決めて、1
年を通 して取 り組んだ。金曜 日に宿題 として絵 日記用 紙を持ち帰 り、週末に家庭で行ったことの中か ら一つ選んで絵 と文章を記入 し、月曜 日に発表 するという方法であった。Cグループは対象児 を含んで 4名のグループであ り、一人の発表に 対 して他の3
名や教員が質問 をした。対象児 は、休 日に家族で過ごしたことを発表すること が多かった。文は「
○
○に行 きました。△△ と 行 きました。□口をしました。」のようにパター ン化 した した ものであるが、休み時間の会話 と比べて、友だちに上手に伝えようという意識 をもって発表できた。質問については、最初は 何 を聞いた らよいのか分か らず、「それは何色 ですか」とばか り尋ねていた。 しか し、絵 を手 がか りに 「これは何ですか」
「これは誰ですか」 と尋ねることか ら、徐々に 「誰 と行 きましたか」
「何 を食べ ましたか」などと質問で きるように なった。 (参<短期 目標 >テーマに沿 った会話がで きるよ うにする 指導期間:
2
0
ⅩⅩ+
1年4
月∼2
0
ⅩⅩ+2
年3
月(対 象児は5
年生) 指導の場 :NPO
の学習活動 効果的なコミュニケーション指導の方法を探る には、学級担任だけでは限界があるように思わ れたため、NPO
の学習活動 に参加 してはどう かと3
年生のときから保護者に検討 を依頼 して いたが、3、4年生の間は別の用事 を優先 して いて、参加に至 らなかった。4年生後期の面談 において再度参加 を勧めたところ、5
年生から 参加することになった。指導 の③① は、NPO
の学習活動で得 られた知見である。 手立て :ア.紙にメモを残 しなが ら会話する ィ.注 目シールと違 うよシール 内容 :会話をしているうちに、テーマがずれて いった り質問が言い換えられると答えが変わっ た りすることがあ り、対象児 も会話の相手 もお 互いに伝わらないという感覚 をもって しまって いた。そこで、紙に絵などをかいて話を整理 し て目の前に残す と、今何について話 しているか がはっきりし、一つのテーマについて長 く会話 ができるようになった。それに伴い、一つのテー マで細かい内容 も話題にで きるようになった。 また、対象児にとって魅力的なものが授業や会 話の中で登場すると、考えがそれから離れられ ないことがあった。学習活動で も、一つの単語 から連想する単語を交互に書いてい く連想ゲー ムで も、直前の単語ではなくすでに終わった単 語の中に気になるものがあると、それから連想 したものを書いた り突然それについて話 し始めた りした。そこで、今注 目すべ き単語に注 目シー ル (日の絵)、こだわっている単語に違うよシー ル (×印)を貼 ることで、ルール通 りにゲーム を進めることがで きた。 (動く短期 目標 >相手の話 をしっか り理解する 指導期間
:
2
0
ⅩⅩ+1
年4
月∼2
0
ⅩⅩ+2
年3
月(対 象児は5
年生) 指導の場 :NPOの学習活動 手立て :指示を復唱 してか ら行動する 内容 :手話で指示 されたことをその通 り実行 するとい う指令ゲームを行った。ゲームの指示 は 「ノー トとの りとはさみを、かばんに入れて、○
○先生に渡 して ください」などである。初め てこの指導を行ったとき、簡単な指示には従 う ことがで きたが、途中に「
1周走って」 などの 動作が入ると、後の指示 を忘れて しまった。そ こで、指示 を聞いて実行する前に復唱させるこ とに した。すると、担当者が難易度 を高めに作 成 した指示にも正確 に従 うことがで きた。 (2)「自分の行動を客観的にとらえ、状況 に合 っ た言動をとれるようにする」ために <短期 目標 >絵 カー ドの登場人物 の気持 ちを想 像 し、状況に合った言動を考えらえるようにする 指導期 間 :2
0
Ⅹ
Ⅹ年1
0
月∼2
0
ⅩⅩ+1
年3
月 (対 象児は4年生) 手立て :絵 カー ドを用いたソーシャルスキル ト レーニ ング 内容 :年度当初、道徳の授業は学級 ごとに行って いた。 しか し、担任が4
年生に考えてほしいと願 う内容 を理解できない児童が、対象児 を含めて何 名か挙 げられた。そこで、二つの学級の児童 を2
グループに分けてそれぞれの課題に応 じた道徳の 授業 を行 うことに した。対象児のグループでは、 絵 カー ドを用いてソーシャルスキル トレーニング を行 った。「どうしているの ?」「次は どうな りそ う?
」
「どうすれば良い ?」 とい う3
段階の絵カー ドであった。対象児は、内容を理解 した上で積極 的に発言するようになった。また、身近な トラブ ルを取 り上げて3
段階の絵 を作成 し、同様 に授業 を行った。対象児 も、ふざけている子 どもの絵 を 見て自分や友だちが以前 したことがあると発言 し た り、迷惑そうな顔の人の絵 を見てどうして迷惑 なのか理由を説明 した りした。道徳の授業では「ど うすれば良い?
」 とい う質問に対 して自分 な りに 望 ましい行動 を考 えて発言できるようになった。 しか し実際の場面では、 自分はふ ざけていない、 や られた側だと主張することが続いた。そこで休 み時間に友だち同士でふ ざけあっているときに、 「今お互いにふ ざけ合 っているね」
「もしもっと本 気 になったらどんなことが起 きるかな ?」 と声 を かけ、 トラブルが起 きる前に考えさせるようにし た。その後 も トラブルは起 きたが、自分はふざけ ていないと言い張ることはな くなった。5.
考察 本実践研究の聴覚障害 と発達障害を併せ有する 児童に対する指導において、効果的であったと思 われる点について考察する。 (1)WI
S
C-
Ⅱの利用 本実践研究では、WI
S
C-
Ⅲと学校生活の観察 によるアセスメン トか ら指導 目標 と手立てを決定 し、指導を行った。他の児童については学校生活 の観察のみで児童の課題、指導 目標、手立てを決 定するが、対象児に関 しては学習や行動など様々 な面で課題に思えることがた くさんあ り、 とらえ どころがない状態であった。また、保護者に対応 するときや手立てを検討するときなどに、全体的 に遅れがあるととらえて もよいのか、今後の指導 や環境によって大幅な伸びが期待 されるのか、個 人内の得意不得意の差が大 きいのかが判断で きな いで困っていた。wI
SC-
Ⅲを実施 した ことによ り、個人内の能 力のアンバ ランスが明 らかになった。苦手 とする のは言語操作 と社会的理解であることが分かった ため、全ての課題に一つ一つ対処 していかなけれ ばならない という考えか ら、苦手な二つのポイン トを押 さえた指導を心掛ければよいという考えに 変化 した。バラバラに生 じているように思えた対 一 12-象児の課題 となる行動に、共通する苦手 さを発見 で きたためである。 また、視覚的な情報処理は得意 としているとい う結果 を得た。そのため視覚にうったえる教材 を 用いて、会話や行動の変化がみ られた。児童の得 意 とする能力を正 しく把握 しなければ、有効な手 立てが見出せず児童の力 を伸 ば しきれなかった り、どんな指導 も効果が期待で きない という考え でそもそも目標 を低 く設定 して しまった りするお それがある。 児童の実態を整理 して把握 し、有効な手立てを 知るために
、WI
S
C-
Ⅲの利用は効果的であった。 (2)手立て 本実践研究で用いた視覚的な手立ては、黒板、 絵 日記、紙のメモ、シール、絵 カー ドであった。 対象児は日本語の語桑が少なかったので、黒板や 紙にか くもの も多 くは絵であった。絵か らはた く さんの情報を同時に得ることがで きるため、対象 児のように言語力には課題があるが視覚的な情報 処理には強い児童にとって、絵が有効な手段であ ることが改めて示 された。また、予め用意 してお く場合は絵 カー ド、その場でか く場合は近 くの黒 板や紙、詳細な話をする場合には絵 日記の ように 詳細な絵、ぱっと見たときに一つの意味を伝える 場合には注 目シールのようなシンボリックな絵な ど、ねらいに応 じて様々な絵の使用方法で成果を あげられることが示 された。 指示通 りの行動をするために、対象児にとって は指示の復唱が有効な手段であった。指令ゲーム は、相手の話を覚えるつ もりで聞 くことを意識 さ せ、自分の行動 を客観視することが苦手な対象児 に対 して覚 え られたか どうか を楽 しくフィー ド バ ックして くれるという点で、大変良かった。ま た効果的な手立てが見出せたために、学校生活に おいても行動する前に対象児に指示 を確認 させる とい う具体的な支援がで きるようになった。 もと もと、相手の話に集中せず別のことを考えている ように見えて 「集中 して。」 と声 をかけた り、話 を聞 き流 しているような印象 を受けて 「よく問い て。」 と注意 した りしていたが、対象児 にとって は集中した りよく問いた りする状態やその方法が 分か らなかったのではないだろうか。児童が言わ れて もどうしたらよいか分か らない注意を繰 り返 すのではな く、こうしたらよい という具体的な方 法を教えられるように、課題 となっている行動の 要因と効果的な手立てを探ることが重要であると 示唆 された。 (3)学校 としての取 り組み 対象児の在籍枚の一人一人の教育的ニーズ-の 取 り組みについて前に述べているが、具体的に本 実践研究において役立った点を以下に挙げる。 習熟度別学習 グループに分 けて、一人一人の ニーズに応 じた学習を保障 していた。対象児が絵 日記 の学習 を1
年 間継続 し、毎 回時間 をか けて 発表や質問の練習をで きたのは、習熟度別グルー プの学習だったためである。 また、年度途中で も 柔軟にグループを編成 し直せるの も良い点であっ た。対象児については、年度途中で道徳のグルー プを分 け直 して以降、内容が理解で きる ように なったため積極的 に授業 に参加 し、徐 々にソー シャルスキルを身につけてい くことがで きた。 個別の指導計画 を作成するために児童の実態 を 把握するよう努め、 目標を立てた ら計画的に指導 することがで きる。保護者 とともに作成すること になっているので、面談 も定期的に実施すること にな り、情報交換や連携 も行いやすい。対象児の 指導 について も、定期的 な面談で保護者 と担任 の信頼関係があ り、情報交換 もで きていたため、NPO
の学習活動 を紹介 した りグループ分 けを提 案 した りすることが容易だった。 対象児 の個人 フ ァイルには、WI
S
C-
Ⅲの結果 や保護者 にNPO
の学習活動 を紹介 した経過な ど が とじてあ り、大変役立った。 本実践研究 においては、NPO
の学習活動のメ ンバ ーにWI
S
C
-
Ⅲの検査 を依頼 し、対象児が土 曜 日の活動に参加するようになってか らは、手話 で伝 え合 うために効果的な手立てを探 り、指導 も して もらった。この活動がなかったら、担任が検査 を行 う時間を作 るのは困柾なことであった。ま た担任 だけで支援 の方法 を考 えるの も負担 であ り、専 門的な助言 を受け、チームで指導にあたれ たのが効果的であった。 おわ りに 聴覚 障害 と発達障害 を併せ有す る児童 に対 し て、 ろ う学校通常学級 にお いて2年 間の指導実 践 を行 った。児童の実態把捉、 目標や手立ての設 定 にあた り、行動観察の他 に