<資料>
小学校3年生版集団式潜在連想テストの作成
守 一雄・松本衿奈・唐澤勇利
江島正芳・牟禮晶絵・内田昭利
The Composition of a Group Performance Implicit Association Test
for Third-Grade Elementary School Children
MORI Kazuo, MATSUMOTO Erina, KARASAWA Isari,
EJIMA Masayoshi, MURE Akie, UCHIDA Akitoshi
要 旨
秋田ら(2019)は Mori et al.(2008)が開発した集団式潜在連想テスト(FUMIE テスト)を小学生で も実施できるように小学校6年生でも熟知している評価語を選択して「小学校6年生版 FUMIE テス ト」の開発を行った。本研究では、さらに低年齢の小学校3年生にも使えるよう、FUMIE テストの 評価語をひらがな3文字で作り直した。まず、候補となるひらがな3文字の単語を良い意味悪い意味 それぞれ15語ずつ選び出し、その熟知度を小学校3年生で調べた。この熟知度調査に基づいて熟知 度の高いものからそれぞれ10語ずつを選び「小学校3年生版 FUMIE テスト」とした。さらに、「いじ め」「おんな」をターゲット語にして、小学校中学年児童に新しい FUMIE テストを実施したところ、 期待どおりの結果が得られることがわかった。キーワード
小学校3年生 FUMIE テスト 熟知度 ひらがな3文字単語目 次
Ⅰ.はじめに Ⅱ.小学校3年生での評価語の熟知度の測定 Ⅲ.小学校3年生版 FUMIE テストの作成 Ⅳ.小学校3年生版 FUMIE テストの試行 Ⅴ.まとめになった(Nosek, Greenwald, & Banaji, 2007)2)。
一方、Mori, Uchida, & Imada(2008)3)は、パソ
コンが必要な潜在連想テストは学校教育現場で は活用が難しいという問題点に注目し、潜在連 想テストを紙と鉛筆だけで実施ができるよう改 良した筆記式の潜在連想テストである「FUMIE テスト」を開発した。この FUMIE テストは、集 団で一斉に実施できるという利点もあり、学校 などで広く活用がされるようになった。FUMIE テストでは、被検査者がどれだけ速く反応した かを反応ごとに計測する代わりに、一定時間(標 準的には20秒間)内にどれだけ反応できたかを 調べることで反応の速さを計測するという方式 が使われる。そこで、集団での一斉実施が可能 になるわけである。 世界中で活用されている大元の潜在連想テス トほどではないものの、FUMIE テストも国内 を中心に活用が進んでいる。例えば、内田・守 (2018)4)は FUMIE テストを使って、潜在的には 数学を肯定的に考えているにもかかわらず、ア ンケートでは「数学が嫌い」と答えるような「偽 装数学嫌い」の中学生がいることを見出した。 さらには、その救出のための対策が効果を示し たことを実験的に検証している。障害者に対す る態度測定(Kurita & Kusumi, 2009)5)や、外国
人の潜在イメージ(Sakai & Koike, 2011)6)、「お
たく」に対する大学生のイメージ(菊池・金田・守, 2007)7)などの研究にも活用されてきている。 しかしながら、FUMIE テストは中学校1年生 を用いて評価語の選定をしたものであるために、 基本的に中学生以上の大人用である。そのため、 まだ FUMIE テストの小学校での活用例はない。 そこで、秋田・對馬・齋藤・守(2019)8)は、現行の FUMIE テストで使われている評価語が小学校6 年生児童にも十分熟知されているかを調べ、「小 学6年生版 FUMIE テスト」を作成した。それで も、小学校6年生版では、まだ使えない小学生の 方が多く、活用範囲がわずかに広がったに留ま
Ⅰ.はじめに
アメリカの社会心理学者グリーンワルドら (Greenwald, McGhee, & Schwartz, 1998)1)が開発した「潜在連想テスト(Implicit Association Test: IAT)」は、認知心理学の分野で研究され てきたプライミング(priming)という潜在連想 メカニズムを活用して、社会的態度の測定がで きるようにしたものであった。この IAT の特徴 は、被調査者に2つの分類課題を組み合わせたも のをできるだけ速く行うように求めることにあ る。具体的には、良い意味と悪い意味の単語を パソコンの画面上に提示して、「良い」か「悪い」 に応じて、「Q」か「P」のキーを押して反応する ことが求められる。これが第1の分類課題「評価 課題」である。この評価課題と交互に提示され るのが、態度測定に用いられる「測定課題」であ る。例えば、黒人と白人の顔写真を提示して「黒 人」「白人」に分類させる「人種課題」を組み合わ せる。そして、パソコン内のタイマーを利用して、 課題の提示からキー押しまでの反応時間をミリ 秒単位で計測する。潜在連想テストの基本的原 理は、こうした2つの課題を反応キーの組み合わ せを変えて行わせると、潜在連想構造の違いが 反応時間に反映されて、数100ミリ秒程度の違い が生じることにある。 例えば、普段から黒人より白人を良いものと 考えている被検査者の場合には、「良い」と「白 人」を同じ反応キーにした課題の組み合わせの 方が、わずかながら反応が速くなる。反対に、黒 人をより良いものと考えている場合には、反応 が遅くなる。これを逆に考えると、「良い」と「白 人」を同じ反応キーにした課題をより短い反応 時間で行える被検査者は、「普段から黒人より白 人を良いものと考えている」ことがわかるとい うわけである。潜在連想テストは、こうしたシ ンプルな原理が高く評価され、社会心理学の領 域だけでなく、世界中で幅広く活用されるよう
る。そこで、本研究では、評価語の選定をやり直 すことで、小学校3年生でも使えるような「小学3 年生版 FUMIE テスト」を作成することを目的 とする。
Ⅱ.小学校3年生での評価語の
選出と熟知度の測定
1.どんな評価語を用いるかの決定
中学1年生の熟知度調査に基づいて作成され た現行の FUMIE テストでは、評価語として良 い意味と悪い意味が対になった漢字2語熟語が 用いられている。しかし、小学校3年生では、ま だ読める漢字が限られているため、最初の方針 としてひらがなの単語を用いることとした。次 に、文字数は3字とすることとした。それは、ひ らがな2字の単語は数も少なく、その中から良い 意味と悪い意味の単語を評価語として使える数 だけ選び出すのは困難だと考えたからである。 逆に4文字とする案も検討したが、FUMIE テス ト用紙に印刷することを考慮すると、4文字は長 すぎるという判断に至った。また、文字数を揃 えずに、2~4文字の範囲内での単語を選ぶこと も考えたが、多くの単語が選べるという利点が ある一方で、テスト用紙上に単語が均一に並ば なくなる難点があり、これも採用しないことと した。英語版の FUMIE テストでは、単語を縦 に並べることで単語の長さ(文字数)のばらつき の問題を解決している。そこで、2~4字のひら がな単語を用いる場合にも「縦版」にすれば、長 さのばらつきの問題は解消できる。ただし、英 語版の場合と違って、同じ日本語版の FUMIE テストで、小学校では縦版、中学校からは横版と いうことになると連続性を欠くことになること は問題である。こうしたことから、最終的に「ひ らがな3文字単語」による評価語の選定を行うこ とにした。2.ひらがな3文字単語の選出
評価語の候補となるひらがな3文字単語の選 出は、良い意味の単語と悪い意味の単語を対で 選び出すことは難しいと考え、良い意味の単語、 悪い意味の単語を別々に選び出すことにした。 表-1 評価語の候補となった 123 単語 下線は第 2 次候補 30 単語 --- +*Ab *Y+ ++L ,Y+ -0. -a+ ./: ./L
1W, 1d+ 3<b 5h1 6A- 7lc ;_, :h/ :hX <7+ <E1 >+2
A/a D`+ F1c Eh: G3+ I.c I/Y IFc M@Z N/> Rl< Q;h
QIh PhG T+f Uhb VG4 V\c Y;\ YG] Z/A ZhI Za+ [E1 \+` \0Z \Bc ]Ec ^<+ ^c1 _,1 _/+ `+6 `,1 f/+ f/c fa, m*+,-. !# n + *3Y +38 +A+ +Nh +h1 ,9+ .6c .?+ .O/ /a+ 14h 1D+ 1]+ 1a+ 38+ 38c 3a+ 5Ph 4[: 4h/ 6H3 6f+ 8Wc :/c ;8D =c+ >6+ A+/ A+V B8+ AA3 B\L Bc+ C/h C63 DIZ Da+ H*V H;c Hd+ IZB J0+ J0E K<Z L3a MeY N=d PH+ S,h S4D S6, S94 SUh We+ Y4c Y=+ YK4 Z;\ [/: [:O ^39 ^Y+ `?Z `f+ `f1 fc+ m*+,-. "" n 表1 評価語の候補となった123単語 下線は第2次候補30単語
まず、著者ら3人が個別に適切と思われる単語を 選び、その和集合123単語を第1次候補とした(表 1)。次に、この第1次候補の単語について、合議 によりより適切と思われる単語を選び出した。 最終的に、良い意味の単語と悪い意味の単語を それぞれ15語選んだ(表1に下線をつけて示し た)。
3.小学校3年生を対象とした熟知度
調査
合議によって選び出した評価語の第1次候補 が実際に小学校3年生にどの程度熟知されてい るかを確認するための調査を行った。 1)調査日 2019年1月23日 2)調査対象者 熟知度調査には、長野市立山 王小学校3年生2クラス計43名(男子22名、女子21 名;年齢8~9歳)が参加した。 3)調査用紙 第2次候補30単語を、ランダムに 印刷したものを用意した(資料1)。 4)調査実施手順 調査はクラスごとにクラス 担任に依頼して実施した。上記「調査用紙」を児 童たちに配布し、約10分間程度の時間で、それぞ れの単語の意味を「良い意味(○)」「悪い意味 (×)」「わからない/知らない(△)」の3択で回答 させた。4.熟知度測定の結果
調 査 結 果 は、表2の よ う に な っ た。秋 田 ら (2019)8)と同様に、小学校3年生でも「良い意味」 の熟知度に比べて「悪い意味」の単語の熟知度が 低い傾向が見られた。小学生が「良い意味」の単 語の方をたくさん知っているということは、そ うした単語に出会うことが多く、小学生自身も そうした「良い意味」の単語を使う機会が多いた めかもしれない。そうだとすると、それは喜ば しいことである。Ⅲ.小学校3年生版 FUMIE テ
ストの作成
1.評価語の選定と配置
上記の調査で、正しく分類されなかったり、知 らないと回答されたりした度数の多かった単語 を除き、熟知度の高いものから順に「良い意味」 「悪い意味」それぞれ10語を評価語とすることに した(表2ではゴチック体で示した)。「良い意味」 の評価語では、43人中39人(90.7%)が正しく「良 い意味」と認識した単語が11語あった。しかし、 「えらい」は2人が逆の意味に判断していたため、 評価語から外し、残りの10語を選んだ。「悪い意 味」の評価語では、「きけん」「ずるい」「にがて」 について43人中35人以上が正しく判断できてい たが、逆の意味に捉えている児童が2~4人いた ことから、逆の意味に捉えている児童がいなか った「はずれ」「ふけつ」(それぞれ34人が正しく 判断)の方を採用することとした注1。最終的に選 ばれた20の評価語は、現行の FUMIE テストの 評価語の位置に、良い意味と悪い意味が対応す るように配置した。2.小学3年生版 FUMIE テスト
最終的な「小学3年生版 FUMIE テスト」は、 資料2のようになった。従来の2字熟語をひらが な3字にしたため、単語間の間隔がはっきりする ように各セルの幅を25%広げることとした。そ のため、1行に並ぶ単語数が50単語から40単語に 減ることになったが、20秒間の作業時間で小学 生が40語以上はできないと思われるので、問題 ないと思われる。仮に、40単語では不足するよ うな場合には、実施時間を15秒に減らすなどで 対応することにしたい。 テスト用紙には小学生にもわかりやすい表現 として「○×テスト」というタイトルをつけた。行がわかりやすくなるよう、偶数行はグレーの 網掛けをつけた。教示は、現行の FUMIE テス トの教示をひらがな表記に直し、小学生にもわ かりやすい表現に適宜修正した。もっとも、実 施にあたっては、口頭で教示を与える必要があ ることはいうまでもない。なお、資料2では次節 での実施例に対応して、ターゲット語「おんな」 と「いじめ」を用紙1枚に収録した例を示した。
Ⅳ.
「いじめ」「おんな」をターゲ
ット語にした小学校3年生版
FUMIE テストの実施
1.実施の目的
新たに作成した「小学3年生版 FUMIE テス ト」が、小学校3年生の潜在意識の測定に使える かどうかを、実際に小学校3年生を被験者にして 確認することを目的とした。 ターゲット語には「いじめ」と「おんな」を用 いた。実は、評価語の選定に際し、「ひらがな3文 字の言葉」を選ぶことにしたのは、「いじめ」「お んな」「てすと」「じぶん」など、FUMIE テストで 子どもたちの本音を調べたい概念の多くが「ひ らがな3文字」であることを考慮した。そこで、 「いじめ」は、悪い意味の評価語とはせず、ター ゲット語として使えるよう残しておいた次第で ある。 この FUMIE テストが期待どおりに潜在意識 を反映した結果を示すとすれば、「いじめ」は悪 いものとして潜在連想指数がマイナスの値にな るはずである。また、ターゲット語の「おんな」 に対しては、秋田ら(2019)8)の小学校6年生での 結果のように、男女差が見られることが予想さ れる。女子児童では潜在連想指数がプラスとな る一方で、男子児童ではプラスになったとして も女子児童よりも低い値となるであろう。2.授業の概要と FUMIE テスト実施
の手順
1)実施日 2019年2月26日 2)授業対象児童 授業対象児童は、熟知度調 査をした長野市市立山王小学校3年生2クラス計 45名(男子23名、女子22名;年齢8~9歳)であっ た注2。 3)FUMIE テスト実施手順 通常の授業内で 表-2 小学 3 年生での評価語の熟知度調査 (被調査者 43 名のうちの回答者数) ゴチック体で示す単語を評価語として採用 --- 評価語 良い意味 悪い意味 わからない --- へいわ 43 0 0 げんき 43 0 0 ゆうき 42 0 1 きれい 42 0 1 うまい 42 1 0 きぼう 41 0 2 すてき 40 0 3 とくい 40 0 3 せいぎ 39 0 4 べんり 39 0 4 H 40 2 1 +I 38 0 5 G 38 0 5 1O# 37 0 6 MH 37 2 4 AJ 2 29 12 M 2 33 8 O 4 36 3 &J 2 35 6 61 2 35 6 はずれ 0 34 9 ふけつ 0 34 9 いたい 2 36 5 あくま 1 36 6 ずるい 1 36 6 おこる 2 37 4 まずい 1 41 1 けんか 1 42 0 ださい 0 42 1 わるい 0 42 1 表2 小学3年生での評価語の熟知度調査 (被調査者43名のうちの回答者数) ゴチック体で示す単語を評価語として採用約5分間程度を使って「小学3年生版 FUMIE テ スト」をクラス内で一斉に実施した。実施者は それぞれのクラス担任が担当した。内田・守 (2018)4)の「FUMIE テスト実施マニュアル」に 示されている標準的な FUMIE テストの実施手 続きでは、○をつける課題と×をつける課題を それぞれ3行分ずつ、各20秒実施することになっ ている。しかし、小学3年生でも集中力が続くよ う配慮し、「いじめ」「おんな」という2つのターゲ ットを1枚の用紙に納めて、各課題を2行分ずつ 実施することにした(資料2参照)。
3.
実施結果
1)手順どおりに実施できたか 小学校3年生が集中力を切らさずに各行20秒間、 8行分の課題ができるかどうかが心配されたが、 2クラスどちらも予定どおりに実施ができた。本 来の意味とは関わりなく、ターゲット語に◯を つけたり×をつけたりする課題は児童にも容 易だったと思われる。 ひらがな3文字を評価語やターゲット語に用 いることとしたことから、各行の単語数が50語 から40語へと10語少なくなった。遂行時間は20 秒間のままであったため、40語を超えることが 心配されたが、今回の試行では、男子児童1名が 練習行で40語まで遂行していたのを除くと、全 てが40語以内に収まっていた。そこで、このま ま20秒間で実施することで問題ないことも確認 できた。 2)FUMIE テスト結果の分析 成人用では3行分ずつ計60秒の課題が、小学校 3年生版では2行分ずつ計40秒であった。結果分 析の指標となる潜在連想指数(IAQ100)は、以下 の計算式に示すように、課題の実施時間に影響 されないものであるため、各課題の遂行数をそ のまま計算式に当てはめて IAQ100を算出した注3。 (この指数は「◯をつける課題と×をつける課 題を100単語分遂行した場合に生じる両課題の 遂行差」に相当する。) IAQ100=◯をつける課題遂行数 − ×をつける課題遂行数×100 ◯をつける課題遂行数 + ×をつける課題遂行数 「いじめ」と「おんな」の IAQ100の平均値は、図 1に示すような結果となった。予想どおりに「い じめ」は IAQ100がマイナスとなった。また、「い じめ」についての IAQ100に際立った男女差は見 られなかった。一方、「おんな」については実施 前に「男女とも潜在連想指数がプラス、女子児童 の方が男子児童よりも高い値」という予想を立 てていたが、予想に反する結果となった。まず、 男女ともに IAQ100がややマイナスという結果に なった。また、男女での差がほとんど見られず、 わずかとはいえ、むしろ女子の「おんな」に対す る IAQ100の方が低いことが示された。もっとも、 エラーバーの重なりが示すように、その差は誤 差の範囲である。 なぜ「おんな」の IAQ100がマイナスだったの かについては、確かに「おんな」という表現には マイナスイメージがあるのかもしれない。一般 にも「女」はあまり使われることがなく「女性」 とすることが多い。また、学校においても「女子」 や「女の子」と呼ぶことが普通である。秋田ら 図1.小学校3年生の「いじめ」「おんな」に 対する潜在連想指数(IAQ100)の平均 (エラーバーは標準誤差を示している。)(2019)8)において、「女性」の潜在連想指数がプ ラスであったのも、ターゲット語が「女性」だっ たからと考えられる。 以上の結果から、新しく小学校3年生でも実施 できるよう作成した FUMIE テストは、既存の ものと同様に、課題遂行者の潜在連想構造を反 映した結果を得ることができるようなものにな っていることが確認された。
Ⅴ.まとめ
本研究では、標準的な FUMIE テストの評価 語を小学校3年生でもわかる「ひらがな3文字」の 単語に入れ替えることで、小学生に対しても実 施できるような「小学校3年生版 FUMIE テス ト」を作成した。そして、このテストが「いじめ」 や「おんな」をターゲット語として実施された時 に、想定どおりの結果が得られることを小学校3 年生の被験者による実験で検証した。今後、こ の「小学校3年生版 FUMIE テスト」が小学校3年 生以上を対象とした潜在意識の調査に活用され ることを期待している。 秋 田 ら(2019)8)が 試 作 し た「 小 学6年 生 版 FUMIE テスト」は、小学5年生でも活用が可能 であると思われる。そこで、本研究と合わせて、 小学校高学年用、中学年用の FUMIE テストが 揃ったことになる。今後は、小学校低学年版の FUMIE テストを作成することが望まれる。そ のためには、小学1年生でもわかる評価語を選定 する必要がある。小学校低学年向けには、実施 の手続きなども見直す必要があるかもしれない。 例えば、古門(2006)9)は評価語とターゲット語に 相当する概念を絵にしたカードを作り、そのカ ードを「良い」と「悪い」にできるだけ速く分け るという課題に改変した。潜在連想テストを4歳 児向けに改訂した試み(Cvencek, Greenwald, & Meltzoff, 2011)10)もある。実施方法などを工夫 することで、早期に小学校低学年版 FUMIE テ ストの開発も行いたいと考えている。謝辞
評価語の調査にご協力くださった長野市立山 王小学校の3年生児童のみなさまに感謝申し上 げます。引用文献
1) Greenwald, A. G., McGhee, D. E., & Schwartz,
J. L. (1998). Measuring individual differences in implicit cognition: the implicit association test. Journal of personality and social psychology, 74(6), 1464. doi: 10.1037/0022-3514.74.6.1464
2) Nosek, B. N., Greenwald, A. G., & Banaji, M.
R. (2007). The Implicit Association Test at age 7: A methodological and conceptual review. In J. A. Bargh (Ed.), Automatic processes in social thinking and behavior (pp. 265-292). New York: Psychology Press.
3) Mori, K., Uchida, A., & Imada, R. (2008). A
Paper-format group performance test for measuring the implicit association of target concepts. Behavior Research Methods, 40(2), 546-555. doi: 10.3758/BRM.40.2.546
4) 内田昭利・守 一雄(2018).『中学生の数学嫌い
は本当なのか:証拠に基づく教育のススメ』北大 路書房
5) Kurita, T. & Kusumi, T. (2009). Implicit and
explicit attitudes toward people with disabilities and effects of the internal and external sources of motivation in moderating prejudice. Psychologia: An International Journal of Psychological Sciences, 52, 253-260. doi: 10.2117/psysoc.2009.253
6) Sakai, H. & Koike, H. (2011). Implicitly and
explicitly measured attitudes towards foreigners: A Dual-Process Model
Perspective. JABAET Journal 14/15, 39-58. (The Japan-Britain Association for English
Teaching) 7) 菊池 聡・金田 茂裕・守 一雄(2007).FUMIE テ ストを用いた「おたく」に対する潜在的態度調査 『人文科学論集』(信州大学人文学部人間情報 学科)41,105-115. 8) 秋 田 真・對 馬 秀 孔・齋 藤 敏 一・守 一 雄 (2019).小学6年生版集団式潜在連想テストの試 作と実践、『松本大学研究紀要』 9) 古門明菜(2006).ジェンダー差に対する幼児の態 度~FUMIE-C テストの開発~2005年度信州大 学教育学部教育カウンセリング課程卒業論文(未 公刊)
10) Cvencek, D., Greenwald, A. G., & Meltzoff, A.
N. (2011). Measuring implicit attitudes of 4-year-old children: The Preschool Implicit Association Test. Journal of Experimental Child Psychology, 109, 187-200. doi: 10.1016/ j.jecp.2010.11.002 注 注1) 実は、熟知度調査用紙の作成の際にうっかりミスが あり、「ずるい」を2度使ってしまい、「ふべん」が抜 けていたことに、調査実施後に気づいた。それでも、 表2に示すように、「悪い意味」の評価語は重なりな く10語が選定できたので、特に問題はなかった。 注2) 潜在連想テストの実施にあたっては「このテストが 潜在意識をあぶり出す可能性があること」を十分 に説明した上で、被検査者の同意を得ることが求 められる。しかし、今回の試行では「無記名で個人 としてのデータを使わない」ため、そうした措置は取 らなかった。 注3) 男子児童1名が、3行目(「いじめ」に×をつける課 題)を全く遂行していなかった。何らかの事情でこ の行だけ遂行できなかったようである。ここでは、2 行目(「いじめ」に◯をつける課題)の遂行数を代入 し、差を0とすることで、平均値への影響を最小にす る措置を取った。なお、この児童のデータを丸ごと 削除した場合でも結果にほとんど影響はなかった。