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初等教育における情報技術教育の提案 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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Proposal on Information Technology Education in Elementary Education

冨 山 瑛 二*

藤 田 孝 夫

Eiji TOMIYAMA

Takao FUJITA

1.緒言  社会の情報化が進むにつれ、子どもたちがインターネットに触れる機会は増えてきている。そして、 インターネットと子どもの関係性は今まで以上に深まってきている。小学校4年生から高等学校2年 生を対象に行われた調査(1)によると、全体の約8割の家庭にパソコンが普及している。日常生活の 中で週に3日以上インターネットを利用すると答えた小学生は約20%にも上っている。  高度情報化社会の今、情報を扱う能力が必要になってきている。国家単位での政策としても平成 13年にe-Japan戦略が打ち出され、その後e-Japan戦略Ⅱ、u-Japan政策と移行してきている。そのよう な社会において、初等教育段階から、情報技術教育についての知識を培っていく事は必須となってき ている。それにもかかわらず、日本での現在の学校教育課程のカリキュラムにおいては、中等教育段 階のみ技術科で情報教育を扱っており、世界中をみても特殊な形態をとっている。このような形態で は、内容に制限が出てしまい、十分な教育を行うことが難しいのではないかと考えた。  本報告においては、初等教育段階で基本的な情報活用能力を身につけさせ、中等教育段階における 技術科の「情報とコンピュータ」領域へと繋げていく手法を検討するとともに、アンケート調査、指 導案の作成、実際の授業等を行った。以下にその概要を述べる。 2.情報教育の実態アンケート調査  実際に初等教育の現場において、情報機器を活用した授業はどの程度行われているのか、その実態 を把握するため、日本国内で比較的情報機器の整備が進んでいる地域である山梨県甲府市と、平均的 な整備状況の香川県東かがわ市の公立小学校を対象にアンケート調査を行った。ここで情報機器とは、 PC(Personal computer)および周辺機器とする。以下に詳細を示す。 (1)概要  (ⅰ)調査対象  山梨県甲府市内公立小学校(27校)、香川県東かがわ市内公立小学校(22校)、計 49校の情報教育担当教諭。質問紙法による郵送調査。  (ⅱ)調査期間 平成18年11月24日~12月31日  (ⅲ)回収率  山梨県20通(74.1%)、香川県14通(63.6%)、計34通(69.4%)  (ⅳ)調査内容    1) 小学校学習指導要領総則に記述されている情報教育に関する内容について、意識して授業 計画を作成しているか。    2)どのような時間(教科)でPC、及び周辺機器を使用しているか。    3)主にどのような内容でPC、及び周辺機器を使用しているか    4)情報リテラシーに関する指導はどの程度行っているか。(自由記述) *教育学研究科修士課程

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   5)授業を実践していく中で、問題点として挙げられる内容は。    6)地方自治体、県に対して望まれる対応。(自由記述) (2)結果  調査内容1)については、解答のあった34校中、31校は意識的に組み込んでいると解答があった。 組み込んでいないと解答した3校については、時間不足、指導できる教諭の不足が原因であるとの解 答があった。  2)については、意識的に組み込み、実施していると返答のあった31校中、総合的な学習の時間 31校(100%)、社会30校(96.8%)、理科24校(77.4%)、国語23校(74.2%)の順で利用し ているという結果となっており、他の教科に関してはいずれも50%以下であった(図1)。PC及び周 辺機器を利用する主たる教科は、ほとんどの学校で共通であり、実技系科目においてはほとんどの学 校において利用されていなかった。  3)については、意識的に組み込み、実施していると返答のあった31校中、インターネットの利用 30校(96.8%)、文章処理ソフトウェアの利用20校(64.5%)、画像処理ソフトウェアの利用16校(51.6%) となっている(図2)。インターネット、及び文書処理ソフトの利用は様々な教科で挙げられていたが、 ペイント等の画像処理ソフトウェアについては、総合的な学習の時間での利用がほとんどとなってい る。また、動画の利用については、実技系科目において、模範演技等を見せるために利用されるケー スが見受けられた。  この結果の中で、項目「その他」において、JustSmileやOpenOfficeが挙げられていた。これは、統 合環境ソフトウェアの名称であり、文書処理、プレゼンテーション等、利用しているソフトウェアに よって分類できるソフトウェアであるが、それが回答で「その他」となっていることから、教員側で ソフトウェアに関する十分な知識がないために出たものであると推測できる。  4)については、文部科学省が目標として掲げている、「情報社会に参画する態度」の指導について、 大半の学校が、ネチケット、ウィルス、有害サイトに関しての指導にとどまり、まったく時間をとっ ていない学校を含め、年間で平均1時間程度の指導となっている。いずれの学校も、中~高学年の児 童に対して指導しており、指導時間の多い学校では、3時間ならびに機に応じて指導を行うとの返答 があったが、大半の学校では著作権、情報の信頼性等の内容に関しては指導できていない。時間不足、 指導可能な教員の不足が主たる理由で挙げられていた。  5)については、時間不足、指導のできる教員の不足が、山梨県と香川県で共通の問題点として出 てきた。これ以外に、香川県では、環境整備が不十分であるとの回答があった。 図1 情報機器の教科別利用状況(全31校)

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 6)については、5)の内容と関連することになるが、情報教育についての専門職の配置、あるいは、 現職教員への啓発活動。機材の維持管理に関わる財的支援。サーバ管理についての強化(フィルタリ ング、回線速度等)。具体的なカリキュラムの提示。といった内容が挙げられていた。 3.情報倫理に関する指導案の作成  調査結果から、指導方法、指導内容ともに学校単位での格差が激しく、情報倫理に関する内容では、 個人情報の管理等に関する内容はほぼ全ての学校で実施されているものの、著作権、情報の信頼性な どの内容に関しての指導を行っている学校は、少数であった。また、初等教育段階での情報技術教育 に関して、指導可能な人材の不足、設備面での不十分、指導内容の不明確さ、等についての問題があ ることが再確認できた。これらの内容を元に、著作権、情報の信頼性など、初等教育段階で教えてお きたい内容※1に関しての指導案の作成を行った。その際に、以下の二点について特に注意し作成した。  まず、指導可能な人材の不足に関しては、情報技術に関しての基礎知識の不足とともに、インター ネットにかかわる法律は、昨今の改変が激しいことも指導が困難である原因のひとつであると考えら れる。そこで、深い知識を待たなくても指導が出来るということを1つ目の注意点とした。これに関 しては、信頼性と、情報の新しさから、政府機関、公共団体等のWebサイトを利用することを考えた。  次に、時間不足に関しては、既存のカリキュラム下において、新たに情報技術教育に関して指導を 行う時間をとることは、ほぼ不可能である。そこで、現在のカリキュラムで行われている情報機器を 利用した授業に組み込む形をとることを2つ目の注意点とした。これには、総合的な学習の時間、学 校図書館におけるオリエンテーション等の時間、社会科、国語科等の調べ学習の時間を利用すること を考えた。  これらのことを考慮し、一例として表1の指導案(草案)を作成した。 �図2 ソフトウェアの利用内容(全31校)

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 この指導案を元に対象となる学校のカリキュラム、指導内容に合わせて改変を行い、指導すること とした。 4.実践授業 (1)概要  作成した指導案を元に、山梨県内の公立小学校5年生(児童数36名(男子20名 女子16名))を対象 に実践授業を行なった。既存のカリキュラム下で行なうことを目標としたため、総合的な学習の時間 における、「自己紹介カードを作ろう」の中で似顔絵を書く計3時間の中での指導とした。通常は2時 間をかけて似顔絵を作成する内容であるが、似顔絵作成に1時間、著作権全体に関する学習に1時間、 予備時間として取られていた1時間を前時の内容と関連付けて、音楽著作権等の学習に使用する形で 授業を行なった。著作権を明確なものとするため、似顔絵作成に関しては、画像処理ソフトウェアの 基本機能のみを利用し、版権の生じる画像等については利用しないように留意した。また、深い知識 を持たなくても指導が出来ることも目標としているので、主に著作権の内容を「社団法人著作権情報 表1 著作権に関する指導案(草案)

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センター」(2)「文化庁」(3)のWebページの教材を使い自己学習を行なわせる形で指導した。情報の信 頼性についての内容は、自己学習を行った場合と、口頭説明のみの場合でどの程度の差が生じるか調 査するため、Webページを見る際に一般的な内容※2についてのみ口頭で説明を行った。 理解度の変化を調査するために、事前に10問の二択方式(附録に提示する。)の調査で現在の著作 権等に関する理解度を調査し、最終(3時間目)の授業終了後4日後に同じ質問紙にて調査した。そ の結果を図3に示す。 (2)理解度の変化  ⅰ)事前調査について    図3において、A群が画像に関する著作権についての理解度である。画像に関する著作権の内容 については、自分が作成したものであるかどうかが問題の中心におかれ、「自分の作ったものだから かまわない。」、「他人が作ったものだから問題が生じる。」程度の認識にとどまっているといえる。    B群が音楽著作権に関する理解度である。音楽に関する著作権の内容については、学校での特別 な指導もなく、また、マスメディア等においても特別な啓発活動を行っていないことから、理解 の程度が薄いといえる。(音楽CDの背面には著作権法による禁止事項についての記述があるものの、 その文字は小さく、初等教育段階の児童では読むことの難しい漢字も使用されているため、音楽に 関する著作権の理解についての認識を低下させているものと考えられる。)    C群が文章に関する著作権についての理解度である。文章に関する著作権の内容については、普 段の学校生活で教師が口にする内容、マスメディア等から得られる知識等で、詳しくは理解してい ないものの、概要的なことは理解できているといってもよさそうである。    D群が情報の信頼性に関する理解度である。Webにおける情報公開の危険性については、80%程 度の児童は危険性を感じている結果となっているが、実際には質問における内容で、特定の商品名 図3�.理解度の変移(各グラフの縦軸は人数で全生徒数は36名)

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を提示したために、その商品を持っているので必要ないといった結論に至った児童も存在すると思 われる。また、Webページの内容に関して、授業等で調査の為に利用することもある為、ほぼ信頼 に足るものだと理解している児童が多い。実際に利用する中で、自身の持っている知識との食い違 いが生じた際に疑問を抱く児童が少数存在するが、疑問を抱く程度で全体として信頼性の薄いもの や虚偽の情報が流れている危険性については考えていない。  ⅱ)事後の調査について    画像に関する著作権の理解度(A'群)については、利用したサイト(2)(3)に明確な定義づけが 無かった為か、個人的に楽しむ範囲での利用については誤解が生じているが、概ね理解度は増加し ているといえる。ただし、版権にかかわる著作権に関しては、事前に比べ約3倍程度伸びてはいるが、 それでも36名中24名と60%程度にとどまり、自分で描いたものということで著作権に関して曖昧 であるようだ。    音楽に関する著作権の理解度(B'群)については、事前調査で理解度が低かった分、確実に理解 が広まったといえる結果になっている。これは、利用したサイトの内容が音楽著作権については詳 しく紹介されていたことも関係していると考えられる。また、授業の導入で、CDやディジタル音 楽プレイヤー等についての話を行なった為、興味の方向が向いていたことも考えられる。    文章に関する著作権の理解度(C'群)については、数値が低下している。これについては、利用 したサイトが、文章の著作権に関しては大きく触れていなかったため、児童の中で、画像や音楽の 著作権についての内容から同様に著作権が生じており、利用に問題が生じると推測した為に誤解が 生じたものと思われる。    情報の信頼性に関する理解度(D'群)については、口頭のみの説明にも関わらず、理解度は増加 している。これは、利用したサイト(2)が学校向けであることから、Flash教材の最後に学校名、 氏名等を記入し、賞状を印刷するものとなっていた。ここで、多数の児童から氏名等の入力の可否 についての質問があった。児童自身の興味からの質問であったため、口頭でその良し悪しについて 答えたのみであったが、個人情報の安易な入力の可否について深く印象づいた為であると考えられ る。   理解度の変化についてまとめると以下のようになる。 図4 理解度の変移(統合)(全生徒数は36名)

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 上昇、下降と、設問によって差はあるが、事後の調査ではすべての内容に関して正答率が50%を超 えている(図中破線が50%ライン)。直後の調査であるため、定着したかどうかについては判断でき ないが、少なくとも直後の理解度が平均的に上昇したことは確認できた。 5.結言  本研究では、「初等教育における情報技術教育の提案」として、アンケート調査により、情報教育の 現状で行なわれている科目、内容、抱えている問題等が判明した。これに基づき、指導案を作成し、 実践授業を行った。その結果、現状のカリキュラムを大幅に変えることなく、専門的な知識を持たな くても情報倫理に関しての指導を行なうことが可能であるか検討した。  初等教育段階における情報教育の必要性は大きく、実践され始めてはいるが、人材不足、時間不足 等により、十分な結果を出すことは困難である。しかし、教材を工夫していくことで、既存のカリキュ ラム下において、意味のある指導も可能であることを示すことができた。今後、すべての教員が情報 技術教育についての必要性を理解し、十分な知識と指導のための技術を身につけることが切望される。 本報告における結果がその足がかりとなることを願う。 謝辞  本研究に際し、快く実践授業の承諾をくださった双葉東小学校入戸野先生をはじめ、調査アンケー トに協力してくださった各小学校の情報教育担当教諭、小学校との橋渡し役としてご尽力下さった山 梨大学教育人間科学部成田先生に心より感謝申し上げます。 参考文献 (1)Benesse教育研究開発センター、「第1回子ども生活実態基本調査」、2004. (2) 「コピーライトワールドKIDS-CRIC」 社団法人著作権情報センター   http://www.kidscric.com/index.html (3) 「楽しく学ぶ・みんなの著作権」 文化庁   http://deneb.nime.ac.jp/contents/school_child/index.htm 全般的に参考にした文献 ・文部科学省、「小学校学習指導要領」、平成10年 告示、平成12年 一部改正. ・社団法人 私立大学情報教育協会、「インターネットと情報倫理」、1999. ・宮田 仁、「ユビキタス社会の情報モラル」、一橋出版、2005. ・永野 和男 / 田中 喜美、「ITの授業革命『情報とコンピュータ』」、東京書籍、2000. 本文註 ※1  「基本的なPC操作、情報の安全性・信頼性、著作権、情報の選別」の4項目を主に教えておきたい内容 と定めた。 ※2  最終更新日の日付、情報掲載者の身元等の確認による情報の信頼性について述べた。

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附録

参照

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