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鉄酸カリウムK_2FeO_4による糸状性細菌の脱水素酸素活性阻害 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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(1)

論 文

鉄酸カリウムK2FeO4による糸状性細菌の

脱水素酸素活性阻害

風間ふたば

加藤健司 (昭和61年9月1日受理)

Inhibition of Dehydrogenase Activity

of Sphaerotilus by Potassium Ferrate

FutabaKAZAMA KenjiKATO       Abstract   In!lib_it.ory eff.ect of externally added potassium ferrate on behydrogenase activity of intact cell・・f・Sphaer・til・・ ・p・w・・ex・mi・・d・The en・ymi・acti・ity w・・i・hibit・d・v・・80%by 10 t。 }5mg−F・/9“cell・t pH 6・2・P・・創・・f th・i・hibiti・n was simil・・t・th・t・f th・,e,pi,at。,y lnhibition.   Inactivat・d d・hyd・・g・na・e by・nly l・w・・ncent・ati・n・f ferrat・was reactiv。t。d by。ddi. tion of 2−mercaptoethanol(MCE). Kinetic analysis by Lineweaver−Burk plot indicated that the inhibition of dehydrogenase activity by ferrate might be non−competitive.   Ab・v・m・nti・n・d・b・e・v・ti・ns sug9・・t th・t th・i・hibiti・n・f・e・pi・ati・n f・und i。 Sph。、r− otilzcs attacked by low concentration of ferrate might be due not to oxidative destruction of cell wall, but to inactivation of dehydrogenase by some chemical species of iron penetrated the cell wall.      ・

1。はじめに

 さきに1),著者らは鉄酸カリウム(K2 FeO4)のほか 数種の鉄化合物の糸状性細菌の呼吸活性に及ぼす影響 を検討し,K2 FeO4が強力な呼吸阻害作用を示すこと を指摘した。また,システイン鉄錯体のように外生呼 吸のみを著しく阻害する場合と異なり,K2 FeO4は内 生呼吸をも強力に阻害すること1),さらにこの特異的 な呼吸阻害効果が,菌体に収着された鉄のうち,とく に鞘皮を通りすぎ細胞内部にまで進入した鉄と関係す ると考えられること2)を報告した。これらの結果はK2 FeO4の場合,鉄が菌体内の呼吸酵素系に阻害的効果 を与えることを示唆していると考えられるが,このよ うな観点から,K2 FeO、が微生物に及ぼす影響を検討 した研究は見当たらない。  そこで本報では,呼吸関連酵素のひとつである脱水 素酵素をとりあげ,この活性に及ぼすK2 FeO4の影響 *第19回水質汚濁学会にて発表 ** ツ境整備工学科,Department of Environmental Engineering を明らかにするとともに,酵素反応速度論的な検討も 行って,K2 FeO4による糸状性細菌の脱水素酵素活性 の阻害機構について考察を試みたので,それらの結果 について報告する。

2.実

験  2.1 実験材料および実験方法

 i)供試菌株:GCY培地を用いて25℃にて60時

間通気培養したSPhaerotilzas natans SY−1株を,さき の報告1)と同様に処理して実験に供した。  ii)K2 FeO4溶液(50 mg−Fe/1(1.0×10−3 mol/1)): Schreyerら3)の方法に従い合成した純度94.5%のK2 FeO4粉末を,使用直前に蒸留水に溶解した。  iii)脱水素酵素活性の測定:下水試験方法4)に準じ て以下に述べる方法でTTC脱水素酵素活性を測定し た。この方法は,水素転移によって行われる生体内酸 化還元反応において,水素受容体として2.3.5−Tri一        ノ phenyltelrazolium chloride(TTC)を用い,これが赤 色の2.3.5−Triphenylformazam(TF)に還元される反 応を利用したものである。

一88一

(2)

鉄酸カリウムK2 FeO4による糸状性細菌の脱水素酸素活性阻害  さきに1),K2FeO4による呼吸阻害を調べた場合と同 様に,菌体を懸濁させたpH 6.2,あるいはpH 7.0の M/30Sφrensenリン酸塩緩衝溶液に,所定量のK2 FeO4溶液を添加して,25℃にて30分間放置したの

ち,その5mlを10 ml容量の共供付遠心管にとり

2000rpmで5分間の遠心にて集菌後,菌体をpH 7.0 のリン酸塩緩衝溶液に再び懸濁させて全量5mlとし た。これにTTC溶液(0.5 W/V%)を0.5 ml,亜硫 酸ナトリウム溶液(0.5W/V%)を3滴加え,20℃の 暗所に60分間放置したのち遠心し(2000rpm,5分), 上澄み液を捨て,菌体に95%のエチルアルコールを5 ml加えてよく撹拝し,冷暗所に90分間放置した。その 後3000rpmで5分間遠心し,上澄み液の吸光度(480 nm)を分光光度計で測定し,菌体懸濁液にTTC溶液 のかわりに純水を加えた場合の吸光度を差し引いて, あらかじめ作成しておいた検量線よりTF生成量を求 め,TF生成速度を算出した。同一のサンプルについ て,3∼5回の繰返し測定を行って求めたTF生成速度 と,別に測定しておいた菌体乾燥重量より脱水素酵素 活性(mg−TF/hr/g−cel1)を算出した。また,今回の 実験ではとくに外部からのグルコースなどの基質の添

三2

F

   051015202530

      Fe added     {mg・・Fe/9・ cell )  ●pH 6.2  0pH 7.O Fig. l  Inhibition of dehydrogrnase activity and     concentration of K2FeO4 added 加は行っていないので,測定値は内生呼吸状態での脱 水素酵素活性である。  2.2 K2FeO4による脱水素酵素活性の阻害  K2 FeO4の添加量を1.1∼26.5 mg−Fe/g−cellの範囲 に変えてpH 6.2とpH 7.0とで脱水素酵素活性を測定 し,添加量と阻害率との関係をプロットしたものが Fig.1である。これより明らかなように,10∼15mg/ Fe/g−cell以上添加すれば,いずれのpHにおいても 90%以上の阻害が認められた。  2.3 阻害された脱水素酵素活性の回復  菌体どK2 FeO4とを10分間接触させて呼吸酵素系 の阻害された菌体をpH 7.0のM/30 Sφrensenリン

酸塩緩衝溶液に移し,これに2−Mercaptoethanol

(MCE)を加えて30分間反応させてから,前述の方法に 従い脱水素酵素活性を測定し,酵素活性の回復の様子 をみた。Table 1より明らかなように, K、 FeO、を1.6 mg−Fe/g−cellとなるよう添加した場合,56.7%にまで

酵素活性が低下したのに,9倍モルのMCEを添加す

ると酸素活性は68。1%にまで回復した。またMCEの 添加量を増やしてゆくと,活1生の回復率はさらに高く なり,91倍モルの添加では酵素活【生は93%にまで回復 した。ところがK2 FeO4の添加量を3.1 mg−Fe/g−cell, 7.9mg−Fe/g−cellと多くして阻害を苛酷にすると, MCEを13倍モル添加しても活性の回復率は低下し, それぞれ24.5%,7.1%にとどまっていた。  つぎに,K2 FeO4による脱水素酵素活性の阻害機構 を考察するために,酵素反応速度論的な検討を試みた。 すなわち,脱水素酵素活性の回復が認められたK2 FeO4濃度(0.72 mg−Fe/g−cell,1.43 mg−Fe/g−cell)に おいて,脱水素酵素活性測定時のTTC濃度を変え,初

速度Vを測定してLineweaver−Burkプロットを行

った(Fig.2)。この酵素反応速度論的検討結果よりみ て,K2 FeO4は糸状性細菌の脱水素酵素活性に対して 非拮抗型阻害剤として挙動することが判明した。 Table l Reactivation of the inhibited dehydrogenases by MCE treatment (pH 7.0)     K2FeO4 dose 高〟│Fe @      (M)9−cell Without MCE treatment `ctivity(%)  Inhibition(%)        With MCE treatment 0.0  (0.0) 100.0      0.0 0       100.0       0.0      一 1.6 (2.1×10−5) 56.7      43.3  9       68.1       32.9       26.3 S5      81.0      19.0      56.1 X1       93.0      7.0      79.2 3.1 (3.0×10−5) V.9 (1.0×10−4) 22.3      77.7 P4.9      85.1 13      41.4      58.6      24.5 P3      15.5      84.5       7.1

一89一

(3)

昭和61年12月 山梨大学工学部研究報告 第37号 {2} {1}

642024681012

1/S

      佃}  −1 {%) (1)K2 FeO4  0mg−Fe/g−Cell (2)K2FeO4  0.72 mg−Fe/g−Cell (3)K2 FeO4  1.43 mg−Fe/g−Cell Fig.2 Lineweaver−Burk plot of K2FeO4    inhibitor

3.考

察  現在,上下水の殺菌剤として広く使用されている塩 素においても,いまだにその抗菌作用の機構は必ずし も明らかではなく,細胞壁の損傷5),酵素6)・7)や核酸8)へ の使用など数多くの報告がある。また濃度によって作 用点やその強さが異なること9}も報告されているよう に,薬剤がどのような機作で微生物に対し抗菌作用を 発揮するかを明らかにすることは容易でない。  また,脱水素酵素活性の測定において,今回のよう に生菌体そのものを対象とし,特定の基質の添加を行 わない場合には,測定された脱水素酵素活性は菌体内 の加水分解酵素などの働きを含めたover allの生物活 性を反映すると考えられるし,またさらに,TTCを用 いる酵素活性の測定そのものも実際の反応条件とは異 なる状態が生ずる可能性が指摘されている1°)ことなど を考慮すれば,今回得られた脱水素酵素活性の測定値 の解釈にもおのずと限界があることはやむを得ない。  このような多少の問題はあるにしても,今回のK、 FeO4による脱水素酵素活性の阻害と呼吸阻害との関 連性や,それらの阻害機構の特異性について,以下, 二,三の考察を試みた。  i)脱水素酵素活性の阻害と呼吸阻害との関連性  前述のように,今回は内生呼吸状態での脱水素酵素 活性を測定したので,内生呼吸阻害と脱水素酵素活性 阻害との関係をみるため,今回得られた結果に,さき に測定した内生呼吸阻害の結果を重ねてプロットした ものがFig.3である。脱水素酵素活性の阻害率がやや 100

_80

 60

E

:≡40 .三

E20

0 0 5  10 Fe added Dehydrogenase activity Endogenous respiration Fig.3  Relation    drogenase    resporation2) 15    20   25   30  {mg・Fe/9・cell} between activity ●pH 6.2 0pH 7.0 ▲pH 6.2 △pH 7.O  inhibition  of dehy・  and  endogenous 高めに現われてはいるものの,K2 FeO4の添加量と両 者の阻害率とはよく似た結果を示しており,脱水素酵 素活性の阻害が内生呼吸の阻害を引き起こす重要な要 因のひとつであることに間違いあるまい。  ii)K2 FeO4による脱水素酵素活性の阻害機構  K2 FeO4による殺菌や呼吸阻害の機構に関しては, 現在までほとんど明らかにされていなかったが,今回 の実験により,15mg−Fe/9−cell程度のK2 FeO4の添

加で40%以上阻害された脱水素酵素活性がMCEの

添加によって大きく回復したこと,Lineweaver−Burk プロットによりK2 FeO4が非拮抗型阻害剤として挙 動することも明らかとなり,K2 FeO、による脱水素酵 素活性の阻害が可逆的であること,またさらに脱水素 酵素活性の阻害には少なくとも脱水素酵素のSH基の 不活化が関与していると考えることができる。  従来から酵素のSH基は重金属との結合により不活 化されることが知られており,:§>Meあるいは一S−

Me−Sを形成するためであろうと考えられてい

る11)。現在の時点ではK2 FeO4によるSH基の不活化 がどのような反応により生じたものか判断することは 困難であるけれども,糸状性細菌の菌体内の鉄の分布 を測定した際2),細胞内に鉄が検出され,その鉄量と呼 吸阻害率が良い対応を示したことを考えれば,細胞内 の鉄がSH基と反応してこの不活化を生じさせた可能 性も考慮できよう。  また,K2 FeO4濃度が低い場合,酵素活性がMCEに より回復した事実は,強力な酸化剤であると言われて いるK2 FeO4において,細胞構成物質に対する無差別 的な酸化による細胞の物理構造の破壊が生じなかった ことを示唆していると見ることもできる。

一90一

(4)

鉄酸カリウムK2FeO4による糸状性細菌の脱水素酸素活性阻害  著者らはこれまでにも,K2 FeO4による大腸菌群の 殺菌効果が共存する有機物の影響を受けにくいこと12) や,Eschen’chia coliを対象とした殺菌実験においてそ の殺菌効果が供試液のpH緩衝能によって大きく支配 されること13)などを指摘したが,これら一連の実験結 果は,K2FeO4の微生物に対する影響を考察する場合, K2 FeO4が解離したFeO42一イオンのみの作用と考える にはあまりに問題が多い。  一方,K2 FeO4の酸化作用に関する実験からは, K2 FeO4が水溶液中で共存する有機物の酸化を行うとと もに,自己分解反応も進行するものと考えられてお り14・15),K2 FeO4の分解経路はかなり複雑であることが 指摘されてはいるものの,未だ多くの疑問を残してい る。このK2 FeO4の酸化機構や酸化作用と抗菌作用と の関係は,水中でのK2 FeO4の分解経路の解明を進め るとともに,酸化反応ならびに微生物への影響に関す る検討をその両面から進めることが極めて重要である と考えている。今回の実験より得られた結果ならびに さきの細胞内の鉄の存在2)をこのような観点から見直 してみると,微生物表面を通過し易く,かつSH基を 不活化させる形態の鉄が存在したことを示しており, 自己分解反応や酸化機構を考察する上で極めて重要な 示唆を与えるものと考えている。

参考文献

1)風間ふたば,加藤健司:鉄化合物が糸状性細菌の呼吸に及ぼ   す影響,山梨大学工学部研究報告,36,102(1985) 2)風間ふたば,加藤健司:糸状性細菌へ添加された鉄の分布と   呼吸阻害効果,山梨大学工学部研究報告,37,77(1986) 3)Schreyer, J.M., Ockerman, LT. and Tompson, G.W.:   Potassium Ferrate, Inorg. Symth.4,164(1953) 4)日本下水道協会,下水試験方法,1974年版 5)Chang, S.L.:Destruction of Microorganisms,ノburn   AWWA 36,1192(1944) 6)Green, D.E. and Stumpt, P.K.:The Mode of Action of   Chlorine,/ourn AWWA 38,1301(1946) 7)Venkobachar, C., Iyengar, L. and Prabhakara Rao, A.V.   S.,Mechanism of Disinfection, VVater Res.9,119(1975) 8)Hass, C.N. and Engelbrecht, R.S.:Chlorine Dynamics   during Inactivation of Coliforms, Acid−fast Bacteria and   Yeasts, Water Res.14,1749(1980) 9)Venkobachar, C., Iyengar, L. and Prabhakara Rao, A.V.   S.,Mechanism of Disinfection:Effect of Chlorine on Cell   Membrane Functions, Water Res.11,727(1977) 10)di rgensen, K.P.:Determination of the Enzyme Activity   of Activated Sludge by Methylene Blue Reduction,ノbur   WPCF 56,89(1984) 11)村上枝彦:入門生化学,培風館(1981) 12)加藤健司,風間ふたば:鉄酸カリウムの殺菌特性(1)河川水や   下水などの水質因子と殺菌効果,水処理技術,24,13(1983) 13)加藤健司,風間ふたば:鉄酸カリウムの殺菌特性(2)検水の緩   衝能と殺菌効果,水処理技術,25,9(1984) 14)Waite, T.D.&Gilbert, M.:Oxidative Destruction of   Phenol and Other Organic Water Residuals by lron(VI)   Ferrate. lournal WPCF 50(3)543(1978) 15)Carr, J.D.:Ferrat Ion:Potential Use in Advanced Waste・   water Treatment, NTIS PB rep. PB83−256751(1982)

一91一

参照

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