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四重極質量分析SXP300による反応性プラズマ診断 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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四重極質量分析SXP300による

反応性プラズマ診断

秋津哲也 桜田良雄 (昭和63年8月31日受理)

Reactive Plasma Monitoring by Quadrupole

Mass Spectrometer SXP300

TetsuyaAKITSU YoshioSAKURADA       Abstract   This paper presents a plasma monitoring system for experimental study of the decomposi− tion process of the reactive gases used in the plasmac hemical processing, by the use of the SXP300 quadrupole mass spectrometer   The decomposition process of the sulphur−hexafluoride, SF6, in a low pressure,2×10−4 Torr, multipolar argon plasma was studied.

1.序

論  SF6,6フッ化イオウは,純粋な形か,あるいは他の 気体との混合気体の形で,高電圧工学や電気工学の多 数の応用分野において気体の絶縁用誘電体として利用 され,あるいは,希ガスとの混合気体の形でエクサイ マー・レーザーの媒質として利用されている化合物で ある。これに関連して,多数の電子一SF、,あるいは窒 素や希ガスとの混合気体間の反応に関する研究が発表 されている1)。  シリコンや他の電子材料(脆性化合物半導体,シリ サイド,ポリイミド,硬質金属)に対するSF6プラズ マの化学的反応性の応用は最近さかんになった使用方 法の一つである2)・3)・4)。SF6によるエッチング速度は CF4プラズマ中におけるエッチング速度よりも一桁 大きく,フレオンとは異なって半導体表面にポリマー 膜が形成されない。しかしながら,プラズマ生成の立 場からは,SF6を用いることによって反応媒質の制御 が非常に複雑になる。この理由は二つあり,第一の理 由は,莫大な数の二次的な反応生成物がプラズマ中で 形成されることである。  SF6プラズマをシリコン表面の微細加工に用いた場 合に,プラズマと電極表面の境界領域に形成されたシ *電気工学科,Department of Electrical Engineering. 一ス内の電界によって加速されたフッ素イオンによる 非等方的な化学反応と,放電プラズマ中で生成されて 熱速度で境界に拡散してくる原子状のフッ素による等 方的な化学反応との競合が生じる。電界によって制御 できない中性原子による反応はアンダーカット等の原 因となる可能性があるため,表面微細加工に必要な異 方性エッチングが得られるプラズマ反応装置の動作条 件を実験的に押さえる必要がある。この問題は,特に 化学反応の制御の目的で,希釈ガスや02との混合気 体が用いられた場合に顕著である。第二の理由は,SF6 分子が高い電子付着力を有するため,電子密度を越え る負イオンが形成され,プラズマ中の電位構造に特殊 性が生じるためである。  この論文の目的は,製作したプラズマ・モニター・ システムの概要を説明し,これを用いて行ったAr− SF6プラズマの分析結果の一例を示すことである。こ こで行った実験は,多重極カスプ閉じ込め方式プラズ

マ源を用いて全圧が2×10−4TorrのArとSF6の混

合気体を70eVの一次電子ビームで電離し, SF6の混 合比と電子ビーム電流に対するSF6の解離生成物の 質量スペクトルの依存性を調べた。この実験の目的は, さらに,第一の問題点に対して解答を与えることであ る。プラズマ・プロセッシング装置の動作条件として は,無衝突領域で,反応性イオンによる非等方性エッ チングが得られる動作条件をモデルとしている。

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2.実験装置

 Figure 1に,実験に用いた多重極カスプ閉じ込め方 式プラズマ源5}の概略が示されている。この装置は,長 さ1500mm,直径404 mmの非磁性のステンレス製真 空容器で,長さ1100mmの拡散領域と,長さ400 mm のDC放電プラズマ源として用いている領域に分割さ れ,それぞれの内部には,24極の表面閉じ込め用カス プ磁場を発生させるための異方性バリウム・フェライ ト製永久磁石が備えられている。  この実験では小型真空容器側の閉じ込め磁場内部の 自由空間内に取り付けた直径0.1mmの1%トリエイ テッド・タングステン製フィラメントから一次電子ビ ームを放出し,低気圧のAr+SF6混合気体を電離して プラズマを生成している。一次電子ビームのエネルギ ーは70eVに設定され,ビーム電流はフィラメント電 流を変化させて温度制限領域で熱陰極放出を制御して 変化させている。予備圧力容器から供給される混合気 体の流量と排気速度を変化させて,実験装置内部の混 合気体の圧力は2×10’4 Torrで一定に維持された。プ ラズマ中にハロゲン化合物が含まれているために,高 気圧領域で連続的に放電させた場合に化学反応による タングステン・フィラメントの急速な消耗が起こる可 能性があり,この点ではRF放電等の無電極放電を用 いた方が有利であるが,プラズマの空間電位の決定が 明確であることと,静電プローブを用いたプラズマの 基本的なパラメーターの測定に対してRF電界揺動が        Pnmary dectron 影響を与えるために,熱陰極DC放電を用いている。  四重極質量分析計SXP300プラズマ・モニター・シ ステムは大型容器の中央部に接続され,直径1mmの ニッケル製オリフィスを通してサンプリングされた中 性気体分子の質量分析と,イオン光学的にプラズマ中 心部からサンプリングされた正イオンの質量分析を行 うことができる。このシステム内部は501/secのター ボ分子ポンプによって10−6Torr以下の高真空に差動 排気されている。これは,イオン化された被測定粒子 の四重極電場内における無衝突運動を保証し,イオシ 検出用のチャンネルトロンの電極間の絶縁破壊と,四 重極電場のRF電圧のサージを防止するためである。     質量分析計SXP300の性能諸元6) 質量測定域 イオン検出方法 感度 最小検出分圧 イオン源 イオン検出感度 1−300amu チャンネルトロン N2(28)イオンに対して        200A/mbar以上 N2(28)イオンに対して          5×10−14mbar 電子衝撃型イオン源 エミッション電流 O.03−3mA 電子エネルギー  25−100eV イオンに対する減速電界O−SO eV 正イォン*1×10−3A/mbar 負イオン 1×10−6A/mbar Quadrupele mass spe⊂trometer

『士:

*正・負イオン検出のための静電レンズの極性切り換えスイ ッチが装備されている。イオンを直接サンプリングによっ て分析する場合,電子衝撃型イオン源は自動的に停止さ れ,静電レンズ系の電位分布は,プラズマから飛来するイ オンのサンプリングに適した分布に自動的に切り換えられ る。 Figure 1 多重極カスプ型プラズマ源とSXP300プラズマモニターシ     ステム     Multipolar plasma source and SXP300 plasma monitor     system.

3.実験結果

 Figure 2にはバックグラウンド・スペクトル の典型的な例が示されている。測定に際して多 数のパラメータをマニュアルで設定する必要が あり,これらを各実験データのFigure caption に示しておく。四重極質量分析計に関するもの は,QMS(Quadrupole Mass Spectrometer)以 下のパラメータであり,多重極カスプ閉じ込め 方式プラズマ源に関するものは圧力と一次電子 ビーム電流である。  バックグラウンドにはH2, H20, N2,02な どのピークが観測される。F(原子状フッ素)の

(3)

ピークはH20のピークと接近しているため,測定に 先だって実験装置のエージングを長時間行った。  Figure 3に, ArとSF6の混合気体質量スペクトル の典型的な例が示されている。このプラズマ中で生成 される粒子種としてはF,SF5, SF4, SF3, SF2, SF, Sが有り,さらに希釈ガスとして用いているArのピ ークが観測される。混合気体中に含まれていたSF6は 四重極質量分析計の電子シャワーを通過する際に完全 に解離されてしまい,質量スペクトルには現れていな い。  Figure 4(a),(b), Figure 5(a),(b)には, SF6をそれ ぞれ20%と50%含んだAr+SF6混合気体プラズマ中 の各分解生成物の質量スペクトルのピークの電子ビー ム電流に対する依存性が示されている。SF5, SF4, SF3 などの分解生成物は単調に減少する傾向を示す。SF とSF2は一次電子ビームの電流値の増大とともに最 初増加するが,ある電流値において最大値を示し,そ れから後は減少する傾向を示す。これに対して,F(原 Figure 2バックグラウンド質量スペクトル     Background mass spectrum, of residual gas. QMS parameter:Span scan:45%,scan time:300 sec, ion retarding potential:50 eV, elecron energy:50 eV, emission:1mA, resolution: 46,delta M parameter:10%, pole center bias:OV Detection:Ion current range:10−7 A, response:3mS, multiplier bias:1.17 kV,6). Plasma source parameter:Primary electron beam emission:OmA, pressure:5×10 6 Torr、 ぞ § Figure 3 Ar+SF6混合気体の質量スペクトル     Mass spectrum of the Ar十SF6 mixture, neutral mole−     cules. QMS parameter:Span scan:47%,scan time:300 sec, Ion retarding potential:38 eV, elecron energy:50 eV, emission:1mA, resolution: 46,delta M parameter:10%,pole center bias:O V. Detection:Ion current range:10−8 A, response:3mS, multiplier bias:117 kV,6). Plasma source parameter:Primary electron beam emission:OmA, pressure:2×10 4 Torr. 子状フッ素)の分圧は一次電子ビームの電流値 の増大とともに増加するが,一定の大きさの電 流値において飽和し,それ以上増加しなくなる。 飽和が起こるビーム電流の値はSF6の混合比 が高いほど大きくなる。  Figure 6(a),(b)には,プラズマ中心部から直 接サンプリングされた各イオン種のピークの電 子ビーム電流に対する依存性が示されている。 SF6の混合比が小さい場合には,希釈ガスが電 離されて生成されるAr+が支配的な正イオン であるが,混合比が大きくなると,正イオンと してはF+が支配的になる。 4.実験結果に対する考察  無衝突領域の反応性プラズマ中では,エッチ ングの非等方性の減少の原因は,プラズマ中で 生成された活性フッ素原子による化学的エッチ ングである。  ここで,中性のフッ素原子による等方性エッ チングに対して,正イオンの衝突によって導入 される非等方性エッチングを優勢にするために 必要な条件を求める。Bohm判別則によって計 算される正イオン流束P+と中性粒子のランダ ムな運動による流束F。の比は次式で与えられ る。  F+/P, =1.52×(n+/ηq))×(Te/T,))1/2       ×(」V。/M.)1/2 ここで,%は活性な中性粒子の密度である。電 子温度Teは,中性粒子の温度T。と比較して非 常に高温であり,中性粒子の温度が容器壁の温 度程度であるとすると,電子温度の典型的な値, 2−3eVでは102倍程度になる。さらに,活性な イオンと中性粒子が同じ質量を有するF原子 とF+イオンであると仮定すると,次式のよう に変形できる。  F+/Fo=1.52×10×(n./%)  このような簡単なモデルによる計算では,イ

(4)

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      EMISSION(mA) Figure 4 SF6が20%含まれたAr−SF6混合気体プラズマ中     の(a),F, SF5, SF4(b), SF3, SF2, SFのピーク値の     一次電子ビーム電流依存性     Dependense of the mass spectrum peak value for     F,SF5,and SF4((a), SF3,SF2, and SF,(b), in 20%     SF6十Ar mixture. QMS parameter:Fixed mass number, ion retarding poten− tial:5eV, electron energy:50 eV, emission:1mA, resolu・ tion:46, delta M parameter:10%,pole center bias:OV. Detection:Ion current range:10−8−10−9 A, response:3mS, multiplier bias:1.17 kV,6). Plasma source parameter:Primary electron beam emis− sion:0−200 mA, pressure:2×10−4 Torr. オンの粒子束と中性原子の粒子束が等しい大きさにな るためには,6−7%の電離度のプラズマが必要になる。  中性気体の圧力を2×10“‘ Torrとしたとき,気体の 密度は7×10’2 cm−3である。SF6を20%含むSF6+Ar 混合気体の場合に完全に解離した中性気体中の組成比 を計算すると,F原子は全粒子の0.54,3.8×10’2 cm’3, Ar原子は0.36,2.54×1012 cm−3,残りがS原子であ る。6%の電離度のプラズマが仮に得られたとして,プ ラズマ中のイオンの密度は,n+=4×10” cm 3にな る。  電離エネルギーと電子温度によって各イオンの組成 比は大きく変化するものと考えられるが,実際に四重 極質量分析計によって測定された容器壁におけるF+ とAr+イオンの粒子電流から推定すると,イオン検出 tO ¢? 30 ’? 憂 E ro

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0 Figure 5         100      200       日MISSION(mA) SF6が50%含まれたAr−SF6混合気体プラズマ中 の(a),F, SF5, SF4(b), SF,, SF2, SFのピーク値の 一次電子ビーム電流依存性 Beam current dependense of the mass spectrum peak value for F, SF5, and SF,,(a)SF3, SF2, and SF,(b), in 50%SF6十Ar Mixture plasma with same QMS parameters as fig. 4. 用チャンネルトロンの感度が各イオンに対して等しい ものと仮定して,  FAr/FF=0.55 さらに,プラズマ中におけるイオンの構成比は,シス テム全体の透過効率が質量比の平方根に逆比例するも のと考えると,  Ar+/F+=(MAr/M.)1/2×(rAr/FF)      =0.8  SF6の混合比を20%以上に増大させると,F+が支配 的な正イオンになる。  Arプラズマの場合,70 eV,200 mAの一次電子ビー ム電流を用いて生成できるプラズマの電子密度の最大 値は,ne=5×101°cm−3である1)。 SF6を20%含む混 合気体プラズマの静電プローブ特性の測定では,電子 飽和電流は1/5程度に減少する。負イオンによる負電 荷の置換と,電子損失の増大や電離の減少による電子 密度の減少の相対的な大きさが現状では明らかになっ ていないが,一次電子ビーム電流の単純な増大のみに

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ズマを用いて非等方性エッチングを行うためには,サ ブストレートに加えられる自己バイアス電界によるイ オン加速と,反応性イオンの運動エネルギーによる化 学反応の活性化の効果によってプラズマ中に存在する 粒子数の絶対的な大きさの違いを補償する必要がある ものと考えられる。 30 ’9x ro 豆 出

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 0      100       200       EMISSI:)N(m▲) Figure 6(a)SF6が5%含まれたAr−SF6混合気体プラズマか     ら直接サンプリングされた正イオンF+,Ar+ピーク     値の一次電子ビーム電流依存性。(b)SF6が20%含     まれたAr−SF6混合気体プラズマからの直接サンプ     リングされた正イオンF+,Ar+, S+のピーク値の一     次電子ビーム電流依存性     Beam current dependense of the mass spectrum     peak value for the directly sampled F+and Ar+     ions in 5%SF6十Ar mixture plasma,(a), F+,Ar+,     and S+ions in 20%SF6十Ar mixture plasm. QMS parameter:Fixed mass number, ion retarding poten− tial:OeV, elecron energy:OeV, emission:off, resolution: 46,delta M parameter:10%, pole center bias:OV. Ion optics:Positive ion direct sampling. Detection:Ion current range:10−9 A, response:1000 mS, multiplier bias:2.2 kV,6). Plasma source parameter:Primary electron beam emis− sion:0−200 mA, pressure:2×10−4 Torr. よっては,単純なモデル計算によって求められた電離 度やイオン密度のプラズマを生成することは困難なよ うである。  現在の実験装置で生成することができる反応性プラ

5.結

論  四重極質量分析計SXP300を用いて, Ar+SF6プラ ズマ中の解離反応による生成物,SF, SF2, SF3, SF4, SF5, Fおよび各イオンの質量スペクトルの一次電子 ビーム電流に対する依存性を調べた。生成されたF原 子はビーム電流が一定の値まで増大すると飽和する傾 向を示すが,F+イオンは飽和せずに増加する傾向を示 した。ArとSF6の混合比が0.8:0.2の場合に,プラズ マ中のAr+とF+の組成比は0.4:0.6になり,これ以 上SF6の混合比を増大させるとF+イオンが支配的に なる。  低圧力領域における非等方性エッチング用プラズマ のモデルとしてこの実験装置を用いるためには,プラ ズマ中の電極の自己バイアスによって加速された反応 性イオンの運動エネルギーによる化学反応の加速効果 が不可欠であるものと考えられ,これについては今後 の実験によって明らかにする。 謝 辞  プラズマ・モニター・システムに用いた超高真空容 器の製作にあたりご指導いただいた松沢秀典教授,な らびに,機械加工を担当していただいた工学部機械工 場雨宮 健技官に深く感謝いたします。

参考文献

1)A.Picard, G. Turban and B. Grolleau:J. Phys. D:Appl.  Phys.,19(1986)991−1005 2)P.Parrens:J. Vac. Sci. Technol.,19(1981)1403−1407 3)TD. Mantei and T, Wicker:Appl. Phys. Lett., 43(1983)  84−87 4)C.Pomot, B. Mahi, B. Petit, Y. Amal and J. Pelletier:J.  Sci. Vac. Technol, B4(1)(1986)1−5 5)秋津哲也,大津孝佳,河西善夫,松沢秀典:山梨大学工学部  研究報告,No.34(1984)9−18 6)SXP3000peration manual

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