論 文
土地利用・交通モデルを用いた震災時交通ネットワークの
サービス水準変化が圏域活動量パターンに及ぼす影響分析
西井和夫 近藤勝直 植北浩典
(平成8年8月31日受理)Effects of Transportation Network Service on Land-Use Patterns in
Metropolitan Areas : A Case Study on Hanshin-Awaji Earthquake
KazuoNISHII KatsunaoKONDO HironoriUEGITA
Abstract In血is paper, the ME&P typed land−use transport interaction model is applied to an empirical examination of effects of Hanshin・Awaji earthquake on the spatial distribution of households and employments in the metropolitan area. Two cases are used for this comparative study;one is the level of expressway service after one month since the earthquake happened, and the other is the level after three months. The results indicate that this model can explain the spatial effects caused by the these changes of level of service in the expressway network.
1.はじめに
平成7年1月17日に発生した大地震は、阪神・淡路地 域に大災害をもたらした。5,400人を越える死者、34,000 人以上の負傷者、そして約40万世帯を越える人々が直 接的な被害を受けたが、その被災エリアが広域的であっ たことが今回の震災の最大の特徴であったといわれてい る。そのため、震災による建物・交通基盤等への被害総 額は、平成7年2月の速報推計で約10兆円にのぼって いる。これは、兵庫県の県内生産額(91年度実績で約19 兆円)と比べるまでもなく甚大な被害規模といえる。と りわけ、この中では都市インフラを支える高速道路 *土木環境工学科,Department of Civil and Environmental Engin㏄ring **ャ通科学大学,University of Marketi ng and Distribution Sciences ***蜉w院博士前期課程,Gaduate・Student (6,000億円)、公共土木施設(3,500億円)、鉄道(3,500 億円)、港湾(1兆500億円)、ガス・電気・水道(5,000 億円)などの社会資本面での被害が3兆円規模になって おり、地域社会に大きなダメージを与えた。 またこうした直接被害だけでなく地域経済活動を中心 とした間接的影響が、地場産業としての製造業、醸造 業、ファッション産業、また商業(大規模小売店、地元 商店街)、観光業(ホテル・旅館)といった産業面に現 れ、さらに、日常生活面における住宅(居住環境)ある いは消費活動に関わる部門へも波及している。1》 現在は、上述の震災状況と復旧事業の進捗をふまえ、 当該地域に関する本格的復興の議論が様々な形でなされ ているが、その中の主な論点としては、(1)高速道路や 港湾施設といった都市基盤の早期復旧・整備、(2)地域 経済の本格的復興のために(震災前への復旧では十分で なく)思い切った産業高度化の推進、そして(3)震災と 交通体系の観点から都市構造そのものの機能分散化を前 提とした(長期的視野に立った)危機管理システムとし平成8年12月 第47号 てのライフラインの構築といった諸点が挙げられてい る。2) これらは、広域的ネットワークの充足のもとで連携し た都市圏づくりの再構築を21世紀に向けて推進するこ とが地域社会の復興の実現の鍵となる考え方に基づくも のである。このとき、特に地域社会のインフラとしての 高速道路の果たす役割・機能は重要であり、圏域の土地 利用や産業構造との相互関係のもとで大きな影響力を持 つと考えられる。 そこで本研究では、著者らにより都市高速道路の経済 効果分析のために開発された広域的土地利用・交通モデ ル3)を用いて、交通サービス低下やBasic活動量の低下 がどのように圏域活動パターンに影響するかを明らか にすることをねらいとしている。具体的には震災によ りダメージを受けた高速道路を中心とした道路ネット ワークにおける交通サービスの低下ならびに夜間人口 流出を伴う都心部の活動量低下を取り上げている。 また本研究の意義は、圏域の都市圏形成における高 速道路を中心としたインフラ整備の果たす役割を計量 的に把握することにあると考えているとともに、震災 復旧・復興の手掛かりを圏域構造(土地利用と夜間人 口の立地と配置)の視点から探る上でも意義があると 考えている。 2.モデルの基本構造 貸料を介した市場均衡をモデル化し、交通条件の変化に 伴う土地利用変化をよりダイナミックに追跡できる特徴 をもつといえる。 本モデルは、基本的には阪神高速道路の経済効果分析 を目的に開発されたために、対象圏域は大阪府全域と兵 庫県,京都府,滋賀県,奈良県,和歌山県の2府4県とし、 第3回京阪神PT調査時の中ゾーンをもとにした域内69 ゾ・一一ンと、域外20ゾーンにゾーニングされている。な お、モデル適用結果の考察の際にはこの89ゾーンを25 ゾーンに集約した形での検討を行っている。 一方、活動立地主体はそれら一つ一つの立地傾向の把 握や立地変化の読み取 りが難しいので、各業 種を集約しておくこと にする。具体的には産 業部門に関しては、基 幹産業(Basic)、非基幹 産業部門(Retail 1∼ Retail 3)の3主体の4 分類を考え、これに世 帯(Household)を加え 表24 各主体の業種分類 世帯部門 Household 農林水産業・建設業Basic鉱業・製造業・国家事務 @ 電気・ガス・水道・熱供給業 Reωin卸売・小売業
・醐霜翼峯輸業
Re伍il3サービス業 た合計5部門とした。(表2−1参照) 3.ケース設定と外生データの基本特性 交通と土地利用との相互関係を明示的に扱ったモデル は、アクセシビリティの概念に基づくローリーモデルを 始め数多く開発されており、本モデルのベースとなって いるMEPモデルも1970年代後半に開発され、80年代に 主として都市基盤整備効果分析ツールとして適用がはか られたものである。4) 著者ら(1995)s)は、これまでにこのMEPモデルの考 え方を生かして、モデル構造をより単純化して操作性を 高め、かつ都市高速道路の建設・整備による圏域の従業 者と世帯の立地及び配置パターンへの影響を把握できる モデルを構築し、阪神高速道路とその関連圏域を対象と した実証的検討を試みてきた。 本モデルにおける土地利用部門では、立地主体間の床 面積の需給均衡は、内生変数としての賃貸料を介するこ とにより土地開発者利潤(供給側)及び立地効用(需要 側)の関係として表現される。また、交通部門から各期 ごとに算出される交通条件(ゾーン間所要時間)は、床 需要を派生する立地ゾーン活動量(従業者数及び世帯 数)を推計するときの説明変数として用いられている。 このモデル構造は、各ゾーンへの従業者及び世帯の配置 に関して従来のローリモデルの考え方に沿うものの、賃 3.1ケース設定の考え方 ここでは、表3−1のようなケース設定を行った。以下 に表中に示したBasic部門従業者データ及びゾーン間所 要時間に関する各ケースの設定レベルについて述べる。 表3−1 ケース設定 ,幹 門” 者 Basic ゾーン日 間 i“ ケース0 1985 データ レベル.0 一 一 一 @ 一 ぺ . ケース2 1995年テストデータ レペルー2 基幹産業部門従業者数(Basic)については、昭和60年 度(1985年)従業者データに平成2年度(1990年)国勢 調査と平成7年度(1995年)国勢調査の夜間人ロデータ の各ゾーン増減率を乗じて1995年テストデータを作成 し、これを用い た。各ゾーンにお ける基幹産業部門従業者数の総数
は、表3−2に示す ようになっている。 表3・2 基幹産業部門従業者の総数 Basic i従業者数) 減少分 i比率%) 1985年 P995年テ川テ㌦タ 5864800 T852450 1Z350人減少 iα21%減) このケース設定においては、Basic/世帯ノRe面11∼3部 門の各トータル量は変化させていない。すなわち、京阪神都市圏全体におけるBasic総数(ひいてはRetail ta数、 世帯総数)の量はケース1及びケース2で変化がないも のと仮定する。言い換えれば、各ゾーンの活動量の変化 は、該当ゾーンでの活動ポテンシャルの変化の相対的な 増減パターンに基づき決定されることになる。したがっ て、ここでは、交通ネットワークへのダメージのレペル (ケース1及びケース2)による各ゾーンの活動ポテン シャルの変化を、活動量(世帯数・従業者数)水準の増 減パターン(特に、減少パターン)に注目し都市圏形成 への影響の観点から眺めていくことにする。 3.2外生データの基本特性 (1)所要時間データ 今回のケース・スタディにおいては、震災前の現況 ネットワークを前提に、震災直後、震災3ヶ月後の2時 点での交通網の不通・規制の状況を考慮して、表3−3に 示すようにネットワークを構成するリンクおよびリンク 速度を操作することによって、各レベルに対応したゾー ン間所要時間をノード間の時間最短経路探索によって求 めた。ここで、各ケースの現況ネット(ケース0:震災 前)との所要時間差を算定し、神戸市長田区を発着とす るODペアを眺めると、図3−1に示すように最大で500分 近い所要時間差がケース1(震災直後)の交通サービス レベルとの比較において現われ、またケース2(震災 3ヶ月後)では、ケース1のおおよそ20%程度(100分 ∼130分)に改善されていることがわかる。また、神戸 市中央区についてもほぼ同じ傾向をもつが、ケース1 (震災直後)において最大800分∼1㎜分と極端に大き な所要時間差となっているODペアも存在している。 なお、こうした交通条件の変化パターンの特徴は、震 災を受けたネットワーク上の路線特性にも密接に関係す るために、今後さらに詳細な検討が必要であることは言 うまでもない。 (2)基礎的産業部門従業者数 表34は、Basic従業者数の1995年テストデータにお ける値を求めるために用いる夜間人口の経年的増減を示 表3−3 ゾーン間所要時間(Tij)推計のための条件 レベルO 1995年1月 レペル・1 不通:名神高速(尼崎以西) 神戸市中心部5㎞血 震災直後 中国道(宝塚∼西宮北) その他神戸市内、 (1月下旬) 湾岸線(中島以西) 阪神間臨海 10㎞両 神戸線(武庫川以西) 交通規制:中国道(吉川∼吹田)20㎞∩ 北神戸線(全線) 平常時速度の1ρ 一 lz’ レベルー2 不通:名神高速(尼崎以西) 神戸市内、阪神間臨海 震災3ヶ月後 神戸線(武庫川以西) 15ヒπVh (4月以降) 交通規制:なし 図3−1 震災前との所要時間差:神戸都心を発着するODペァの場合 したものである。これより、1990年から1995年にかけ ての減少量が最も著しいのは、9:神戸市南部(−102,499 人,−1830%)、11:阪神(−47598人,・3.04%)であり、これ ら2地域に続いて、14:京都市中心部(−13,302人,−3.289。)、 3:大阪市臨海(−12,692人,−1・.43・9・)、1:大阪市都心(−7,576 人,−2.osq。)となっている。この中で、神戸市南部は減少 率でも一18.3%と極端に大きな落込みを示し、震災によ るダメージの大きさを物語っている。また、阪神地域に ついても50,㎜人(3%)の減少となり、その影響は小さ いとは言えない。一方、増加量の多い上位地域として は、23:滋賀域外(+68,246人,10.45%)、10:神戸市北部 (+48,919人,5.33%)、13:東播臨海(+45,545人,6.85%)、 18:東南奈良(+39,839人,4.78%)、12:東播(+37,544人 ,13.83%)、そして19:南滋賀(+35,416人,6.68%)となっ ている。これらのうち、神戸方面では、神戸市北部、東 表3−4 1990年∼1995年の夜間人口の変化 (人) (人)
平成8年12月 山梨大学工学部研究報告 第47号 播臨海そして東播地域での伸びが大きく、地域の発展動 向を反映した結果を示している。 今回のBasic従業者数に関する設定値は、最新の(つ まり震災後における)従業者数や事業者数動向を得る以 前の段階であったために、このような夜間人口の伸び率 を用いることにした。しかしながら、Basic産業部門と 世帯部門との立地選好パターンの違いから必ずしもこれ ら両者の増減の傾向が一致するとは言えず、事業所統計 ペースの最新データが得られた段階で再検討をする必要 があろう。 そして、神戸市南部に関する夜間人口減少についてさ らに詳細に眺めておくことにする。図3−2は、神戸市内 の区別の夜間人口に関する経年的推移を示したものであ る。これより、神戸市南部の落込みは、1985年から1990 年の過去5年間の伸びに比べて異常であり、やはり震災 によるものであることは明らかである。 4.モデルの適用結果の考察 本モデルの適用にあたっては、まず現況再現性の確認 を通じて交通条件と土地利用変化との因果関係の表現の 妥当性を検証する必要があるが、これに関してはモデル 構築の段階で検討しており、本論文の主題ではないので ここでは割愛する。したがって、以下の考察は、前述の 3ケースに関する推計値よりケース間比較を通じて震災 に起因する交通サービス低下による影響を明らかにする とともに、モデル構造と照らし合わせた特徴点の把握を 中心に行っていくことにする。(なお、以下の推計結果 表4−1 活動立地量における非基幹産業部門の増減率 2: 3: 4:北 5:北 6: 7:堺・和泉 8:泉南 9: 南部 10:神戸市北部 11: 12: 14: 15: 18: 19:南滋 20:和歌山 Retail 1 ケづ2 一・T.3% −1.80% 一〇.03% ・1.63% 1.23% 5.13% O.66% 0.02% 東灘区 灘区 兵庫区 中央区 長田区 神戸市南部 須磨区 垂水区 北区 西区 神戸市北部 神戸市総計 西宮市 芦屋市 50% .30% .10%0% 1《)% 30% 50% 3.00% 1 ● ・1?.21% 1 1 ・ ● ● ● 1 ・3.1脇 1 1 一24↓78% ■ 1 ● 1 1 1 ぷ鵬 ● 一20.23% ● ‘ 1 ロ1985年∼1990年 1 .±40傷 団1990年∼1995年 1 . 1 ・7.90% ● 1 .29.28% 1 1 1 .2】75% 1 1 ・2046% ● ● 1 ⑪ 3メ↓0% ・ 1 1 4.18% ■ 1 1 ‘ 1 1 ■ ● h I ● ⑨0% ・ @ 1 ● ■ λ13% ● l l● ● 12㎜1 l l 1614%} ● ● ● I l 43.20% ● ● I l α10% l I 12.43%1 ● 4 11.40% ・ ● ● P .3.(丘 1 4フ2% ・ @ 1 ● ■ 130% ■ 1 .8.55%1 1 1 ■ ■ ● ● 1 050% 1 ●1428% ● ● 図3−21985年∼1990年・1990年∼1995年の夜間人口の変化率 の数値に関しては、個々の地域を集計化した場合の合算 値のオーダーを示すことに注意されたい。) 4.1非基幹産業部門の活動量パターンの ケース間比較(表4−1及び図4−1∼図4−3 参照) 表4−1はRetail部門の各ケースにおけるケース0に対 する増減率を表したものである。Retaill部門において ケース1では、明らかに神戸市南部と大阪市都心の落込 みが目立ち、またその周辺の阪神および北東大阪につ いても減少率が大きい。これに対して、ケース2では、 交通条件の改善効果によって神戸市南部については増 加パターンに転じており、大阪側の減少率も緩和され る傾向にあることがわかる。 Retail2部門の増減パターンは他のRetail部門のグルー プと異なっていることが特徴である。すなわち、活動立 地量の減少地域としては大阪市都心とその周辺、そし て東南奈良など外縁部に及んでいるものの、神戸市南 部および阪神地域については減少地域には入っていな い。ケース2では、増減の変化率の幅自体が狭くなり、 この業種グループへの影響が弱くなっている。 Retai13部門の増減パターンは、基本的にはRetai11と 類似している。すなわち、ケース1では、神戸市南部及 び大阪市都心の落込みに加え、阪神,東大阪,北東大阪 の減少率が大きい。そして震災3ヶ月後を経て交通条 件の改善が見られたケース2では、全体としての増減率 のばらつきも小さくなり、かつ、その空間分布も狭く
なってきている。 次に、図4−1から図4−3に示したRetai1部門における 現況再現ケース(ケース0)との比較結果を検討してい きたい。 1]Retail 1 ケース1での特徴としては、大阪市都心及び神戸市南 部の大阪・神戸の2都心における落ち込みが顕著で、約 22000人の減少がある。一方、相対的に増加した地域と しては、和歌山、京都市(その他)そして兵庫域外等の 圏域の外縁地域となっており、震災による影響が小さ かったといえる。また、ケース2では、全体として、増 減の幅が小さいことがわかり、Retail 1に関してケース2 レベルでは震災の影響がそれ程大きくないといえる。大 阪都心の落ち込みを始め、大阪市臨海、約5000人の減 少が目立つ程度である。 2]Retai12 ケース1では、大阪都心を中心にその周辺地域で増減 の差引き計算では約4000人の減少が見込まれる。一方、 これまでのケース1の世帯やRetail 1でその大半が減少地 域であった神戸市南部は約2200人の増加となっている。 この傾向は他のケースにおいても増加パターンを示して おり、このRetairzの特徴といえる。すなわちRetai rzは、 RetaillやRetai13に比較して神戸市中心部であっても震 災によるダメージがそれほど大きくなく、むしろ大阪市 1:大阪市都心 9:神戸市南部 11:阪神 5:北東大阪 2:大阪市東部 ・8000 4000 0 (人) 一15084 一3233 唱936 102 一3598 │3507 4” 气Pース2 ←1393 955 図4−1Retail 1の増減量(ケース1で減少量上位5位の地域) 1:大阪市都心 5:北東大阪 2:大阪市東部 25:和歌山域外 22:京都域外 一2000 0 (人) 一4943 一1506・ }:iiiii≒S:、: 一858 @ −422 @ −418 94 闘ケース1 ゙ケース2 一220 @ −48 │183 │197・ 図4−2 Retai12の増減量(ケース1で減少量上位5位の地域) 9:神戸市南部 5:北東大阪 11:阪神 1:大阪市都心 2:大阪市東部 ・1000 0 (人) 囹薗ケース1 函ケース2 図4−3 Retai13の増減量(ケーX lで減少量上位5位の地域) 都心地域を中心とした地域への影響が大きいことを示唆 している。また、ケース2との比較では大阪市都心側で の落ち込みに対して神戸側ではそうした減少は見られな い0 3]Retail3 ケース1との比較で、全体的には神戸市南部、阪神間、 大阪市都心とその周辺での減少が目立ち、これらの地域 で合計約10000人の減少が見込まれている。次に、ケー ス2との比較結果を眺めると、ケース1に比べて増減の 幅はずい分狭いが、やはり大阪都心とその周辺で約1700 人の減少が目立っている。 4.2 世帯部門における活動量パターンの ケース間比較(図44 参照) 図44より、ケース1(震災直後のサービスレベル)と の比較から立地量の増減の顕著な地域をまとめると以下 のようになる。すなわち減少量の著しい地域は、5:北東 大阪(−11238世帯)、1:大阪市都心(−8964世帯)、9:神戸 市南部(−6820世帯)、2:大阪市東部(6277世帯)、ll:阪 神(−5230世帯)となっている。一方増加量の大きかった 地域は、4:北大阪(12153世帯)、15:京都市その他(11704 世帯)、20:和歌山(8217世帯)、12:東播(6528世帯)、3: 大阪市臨海(5660世帯)、そして23:滋賀域外(4091世帯) となっている。 このうち、やはり震災被害の中心的地域である神戸市 南部、阪神地域の減少が目立ち、これらの地域の他にも 21:兵庫域外、13:東播臨海の減少も現れてきている。こ れらの合計で約20000世帯に及ぶ。一方、北東大阪、大 阪市都心大阪市東部の3地域については、増加地域とし ての北大阪および大阪市臨海の両地域とのバランスを考 慮しておく必要があり、例えばこれらの5地域合計の増 減としては差引き約8000世帯の減少を見込むことがで きると考えられる。 本モデルは、圏域内の各ゾーン間の活動量のシェアが どのように変化するかを中心にアウトプットすることを
平成8年12月 山梨大学工学部研究報告 第47号 5:北東大厘 1:大阪市都心 9:村戸市南部 2:大阪市東部 11:阪神 .10000 .5000 0 (世帯)
蜘
園ケース1 函ケース2 図4−4 ケ弓1で減少量の大きい地域における 増減パターン(世帯部門) 目的としており、対象ケース間で総活動量の変化を原則 としては想定していない。そのために、交通サービスレ ベルの低下により地域の活動ポテンシャルが低下した ゾーンがあれば、相対的に(つまり、全体のパイの大き さを不変と仮定しているので)活動ポテンシャルが変化 していなくても、言い換えれば震災影響の少ないゾーン では立地量の増加が期待されることになる。 こうした視点に立つとき、ケース1で増加した地域 (京都市(その他)、和歌山、東播、滋賀域外)は、いず れも影響の少ない外縁部に位置していたためであること がわかる。 図4−3より、ケース2(震災後3ヶ月後)との比較では、 5:北東大阪(−5869世帯)、21:兵庫域外(−5535世帯)、3: 大阪市臨海(−5312世帯)、4:北大阪(4482世帯)、22:京 都域外(−3935世帯)で大きな減少を示す。逆に絶対量の 増加の大きかったのは、11:阪神(6032世帯)、10:神戸 市北部(4982世帯)、16:京都東南部(4911世帯)、9:神 戸市南部(2490世帯)となっている。 このケースにおける増減パターンは、ケース1それと は異なる。すなわち、神戸市南部、阪神の両地域はこれ までの減少パターンから逆に増加パターンへ転じてい る。このうち阪神地域は、これに隣接する北東大阪や北 大阪の減少分と相対的関係があるとすれば、その周辺で 差引き約4000世帯の減少が見込まれる。それに対して、 神戸市南部は神戸市北部とともに増加地域となってお り、兵庫域外の減少分を考慮しても神戸方面は約2000 世帯の増加が期待できる。大阪市臨海及び大阪都心の減 少と大阪市東部の増加との関係から、約4000世帯の減 少が推計できる。そしてその他の増加地域としては京 都・滋賀方面で約3000世帯となっている。5.まとめ
本研究では、交通サービスレベルの低下・及び都心部 の活動量低下の状況のもとで圏域構造がどのようなパ ターンとなるかを推計し、それによって高速道路を中心 とした道路ネットワークというインフラの圏域形成に果 たす役割や機能がどのようなものであるかを計量的に把 握することを目的としていた。またこの分析フレームに ついての妥当性や信頼性は、定式化されたモデルの現況 再現性に負う部分が多いこと、そして、ケース・スタ ディにあたっての前提条件となる種々の設定値によるこ との2点が大きくかかわると考えられる。本研究では、 これまでの本モデルに関する諸検討を通じて前者の現況 再現性についてはある程度信頼性があると考えている。 一方、後者のモデル操作上必要な諸値の設定の妥当性に っいては、データ収集の制約等から必ずしも十分な検討 を行ったとは言えず、この点は今後の検討の余地が残さ れている。以下では、今回のケース・スタディより得ら れた結果の集約を行い結論としたい。 1)世帯部門においては、震災直後のケース1で、震災 の影響が大きく生じた神戸市南部および阪神地域の減少 が目立つことがわかった。これは、震災との直接的な因 果関係から発現したものと解釈できる。またこうした震 災の影響は、広域的な範囲に分布しており、とくに大阪 市都心や大阪市東部についても減少が大きかった。ま た、交通条件の復旧により交通サービスレベルが向上し たケース2については、こうした地域の中に増加パター ンに転じたものもあり、そして全体的には地域による増 減の幅も狭くなっている。 2)Retail部門については、 Retail 1とRetai13はほほ伺じ 傾向で出力結果が得られている。すなわちケース1で は、大阪市都心および神戸市南部・阪神の落込みが目立 つ。そしてケース2ではこの傾向は緩和されるととも に、全体としても活動量の増減そのものが小規模なもの になっている。一方、Retail2については、震災による活 動量の減少は、神戸市南部や阪神地域に発現せず、大阪 市都心や北東大阪といった大阪側に偏っている。この原 因についてはモデル構築等の誤差も介在している可能性 もあり現段階では明確に述べることはできない。ただ し、立地パターンのRetailグループ間の差異が影響して いることも十分考えられるので、今後の詳細な検討が必 要といえる。 本研究の遂行にあたり、震災関連のデータ収集に関し てはとくに地域・交通計画研究所戸松稔氏、米田英雄氏 の協力を得た。ここに感謝の意を表します。 参考文献 1)財団法人中内育英会:「阪神淡路大震災のもたらした 経済被害と復興状況」1995年度/研究成果報告書 (研究代表者・近藤勝直)2)近藤勝直・正司健一(1995):「震災と交通体系」 日本交通学会・研究報告会発表資料 3)阪神高速道路公団(1994): 「阪神高速道路料金体系研究業務報告書」 4)Webster,F.V.et a1.(Editers)(1988): 「LAND−USEARANSPORT INTERA(r. rlON: POLICIES AND MODELS」Avebury,UK,1988 5)西井和夫・近藤勝直・戸松稔・津島康弘(1995): 「都市高速 道路整備に伴う都市圏構造変化の予測: MEP型土地利用・交通モデルによる」 土木計画学研究・論文集No.12,pp 195−205