論 文
生体信号の光無線伝送のための基礎的実験
水戸部敏昭 熊新 周欣欣 大木真 橋口住久(平成7年8月31日受理)
Preliminary Experiments for the Wireless Transmission
of the ECG Signal by Infrared Light
ToshiakiMITOBE XinXIONG XinxinZHOU MakotoOHKI SumihisaHASHIGUCHI
Abstract Artifacts to ambulatory ECG system are mainly caused by the electromagnetic coupling between the external noise sources and the electrical leads of the recording system. The optical signal transmission is a promising candidate with excellent noise immunity. We report here the investigations on the possibility of the Wireless optical transmission.
1 まえがき
携帯型心電計は,心電図信号を24時間連続 して記録する.生体用電極部と心電計本体部と を結ぷリード線は,日常生活下におけるさまざ まなノイズ源の影響を受け,誘起されるノイズ は正確な波形記録の障害となる.このノイズを 低減するために,リード線部分を赤外線による 光無線伝送におきかえてデジタル伝送を行うこ とを試みる, 本報では,衣服と皮膚の間を乱反射しながら 伝わる赤外線を利用する方法を検討する,2 赤外光伝送システム
図1は,無線光伝送携帯型心電計システムの 構成である.このシステムは,生体用電極部と 心電計本体部とから成る.生体用電極部では, 人体からの生体信号をデジタル化と振幅変調光 の生成を行って赤外線で送信する.心電計本体 部では,受信した波形を整形して記録する. 図2は,送受信部の構成である,赤外発光 ダイオード(LED)から光信号を空間に放射し *電子情報工学科,Department of Electrical Engineering and Computer Science フォトダイオード(PD)で受信する. PDで光 信号を電気信号に変換,増幅,検波し,積分し た後TTLレベルへの補正を行って出力する. 生体用電極部分は人間の胸の位置,心電計本 体部分は人間の腰の位置に設置する.人間の 胸から腰までの距離は,青年男子の体では約 30cmである. 電極部 「 一一 電極 A/D 変調L
無線 「 受信 検波L__
「
送信」
「 整形 記録 」 心電計部 図1 心電計システムの構成 増幅 検波BPF 積分
図2 送受信部の構成3 赤外線の伝搬特性
3.1 反射特性
図3に示すように,LEDからの赤外線をサ ンプルに投射し,反射光をフォトトランジス タ(PT)で受光してその出力電圧を測定する. LEDはGL514(狭指向性)とGL513F(広指向性),PTはPT371である.2つのLEDは放
射束が等しくなるように駆動電流を設定ずる. サンプルは,人間の皮膚,白地の綿100%の布, 自色上質紙黒色模造紙鏡である. 図4は,入射角度θを変化させたときのPT の出力電圧の変化である.布と肌の反射率はほ ぽ等しく,鏡の30%程度であることがわかる. 指向角が狭い方が単位面積当りの放射束は強く なるので,出力電圧はGL514(狭指向性)の方 が高い.3.2 透過特性
図5に示すようにサンプルを透過した赤外線 をPTで受光して出力電圧を測定する. LEDと PTの間隔は3cmであり,その中央にサンプル を置く.サンプルを回転させて入射角度θを変 化させる.LEDはGL514(狭指向性), PTは PT371である.透過率は,(サンプルがあると きの出力電圧)/(サンプルがないときの出力電 圧)とした.サンプルは,白地の綿100%の布, 白色上質紙黒色模造紙,トレーシングペー パーである. 図6は,入射角度θに対する透過率の変化で ある.黒色のものは透過特性が悪い.また,透 過率はほぼCOSθに比例して減少している.4 光無線伝送の検討
LED
図3 反射測定の実験装置_1000
>旦
出100
腰 ヨヨ 10 1一1000
>且
出100
ヨヨ 10 1LED:GL513F(広指向性)
ID=140mA
0 Rgi・;:;88。 団OO 30 60 入射角度θ[度]LED:GL514(狭指向性)
ID=100mA
0 30 60 入射角度θ[度]4.1 実験方法
布にはさまれた狭い隙間での伝送や布を通し ての伝送がどのようになるかを知るために,布 (白地の綿)を用いて次の測定を行なった.LED とPDを30cmの間隔で対向させ,両側に布が あるときと中間に布が入ったときの伝送特性を 測定する.図4 入射角度と出力電圧
ロ鏡 。上質紙(白) ・色模造紙(黒) ×布(白地の綿) 由肌(手のひら)LEDはLN66(広指向性:指向角半値幅25度), 受光素子は赤外線リモートコントロールレシー バ(組み込み素子)を使用する.光伝送は,副搬 送波周波数38kHz(デューティー比(T/ T)50%) を信号波周波数2kHzの方形波によって振幅変 調したものを用いる. 3cm 図5 透過測定の実験装置
4.2 布による反射の影響
図7においてLEDとPDの両側に布をおき,布の間隔dと布の弛み方を変えたときのPD
の出力電圧を測定する.布の弛み率は(布の長 さ)/30cmであり,0%∼30%とした.受信強度 は,(布があるときの出力電圧)/(布がないとき の出力電圧)である. 図8は,間隔dを変えたときの受信強度の 変化である.間隔が十分広いときには布の影響 はない.間隔が狭くなると受信強度が上昇し, d=20∼30㎜で受信繊が最大となり20∼40% 大きくなっている.さらに間隔を減少させると 受儒鍍は急速に低下する.また,弛み率は増加 すると受信強度がやや減少する.間隔d=50mm 以内では,反射の回数は1∼3回程度である.4.3 布による減衰の影響
100 10哀
鮮 1 0.1 O.Ol COSθ ◇◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇X X × × O o o X o O ● ● ● ● O o図9においてLEDとPDの中央に光路を横
切って布を置き,布への赤外線の入射角度θを 変化させる.受光素子の受信閾値(約1mV)を 得る必要な所要LED電流IDを測定する. 図10は,赤外線の入射角度θと所要LED電流IDの関係である.所要LED電流IDは,布
のないときの3.5倍に増加する.入射角度θが 大きくなると所要LED電流IDは1/cosθに比 例して増加することがわかる.4.4 低消費電流化
図11に示すようにPDをLEDの光軸上に
対してオフセット角0度と25度におき,搬送 周波数38kHzのデューティー比(デ/7)を変化 させたときに,受光素子の受信閾値(約1mV) を得るのに必要なLED電流を測定する. 0 30 60 入射角度θ[度]図6 入射角度に対する透過率
。上質紙(白) ◇トレーシングペーパー ●色模造紙(黒) ×布(白地の綿)布間隔d[mm]
’P Ss
30cm 図7 反射の影響の測定 1.4 1.3 贈1・2 、鰍1°1 1.0 O.9 み率0% 10% 20% 30% 0 50 100 間隔d[mm] 図8 間隔dに対する受信強度図12は,所要LED電流(ID)のデューティー 比依存性である.図中の実線は傾き一1である. オフセットφ=0度のときにはデューティー比の 一〇.5乗に比例しているので,デューティー比 を小さくとる方が平均電流(ID ・(r/T))は少な くなる.平均電流は,デューティー比9.0%の とき最小値0.4mAとなる. 一方,φ=25度のときにはデューティー比 の一1乗に比例しているので,平均電流(ID・ (ア/T))はτ/T)によらず一定であり,3.6mA となる.