Title
石炭燃焼およびガス化における微量元素挙動( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
玉, 永壮
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第263号
Issue Date
2005-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1984
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 専 攻 学位論文題目 玉 永 壮(中 国) 博 士(工学) 甲第 263 号 平成17 年 3 月 25 日 環境エネルギーシステム専攻 石炭燃焼およぴガス化における微量元素挙動
(Behavior of trace elementsin coalcombustion and gasi 学位論文審査委員 (主査)教 授 守 富 寛 (副査)教 授 熊 田 雅 禰 教 授 竹 内 豊 助教授 神 原 信 志
論文内容の要旨
石油に替わるエネルギー資源として石炭は将来とも重要なエネルギーとさオには周知表に存在する希ガス以外のほとんどの元素が含まれている。石炭を:
これらの元素は気体,液体,固体の各種形態に変化して環境に排出される。こ 出物の中には,人間の健康や自然環境に有害とされるものも含まれている。セ に含まれる窒素や硫黄は,燃焼時に窒素酸化物(NOよ)や硫黄酸化物(SOx)と れ,酸性雨の原因となる。また,pPmオーダで含有される水銀,鉛,ヒ素とレ 畳元素の環境影響や健康影響も懸念されている。現在,煙突から排出される排二NO;等については脱硫、脱硝装置の設置により環境への配慮がなされているが,
素の挙動についての知見は少なく,その対策技術については検討が始まった露二 本研究は,既設の石炭燃焼発電プロセスや次世代型の石炭ガス化複合発電ミ ける有害微量元素に対する有効な対策技術の確立することを目的としている。 発電施設からの有害微量元素の排出データは入手が困難であり,本研究では月 事業で行われた産業用発電施設における微量元素の実態調査結果に基づいて ことした。また次世代型の石炭ガス化複合発電で採用される高温灰溶融ガスイ1 おける微量元素データについても公開されていないことから,一部公開され1 ス化による灰溶融プロセスのパイロット試験装置のデ∵タを活用することとl ながら,現在のところ飛灰や排ガス中に含まれる微量元素の分析は元素濃度「 別分析は行われていないことから,本研究では熱力学計算を駆使し,元素分1 _l_ __l一 ヽ .l..1 」 _ ▲, ′.1 l ヽ _一__ ′l_ _ゝ!_上ヽ1′ノ.▲ヽl一..」し 一己′.ヽ口It ⊥ ■ナ ヽ._ l l ヽ 」しの違い,排ガス処理方式わ違い,脱硫装置の違いがボトム灰や飛灰,排ガ ぼす影響を明らかにしている。その主な結果は,ボトム灰による各元素のl 焼炉タイプ,燃焼温度,および元素の揮発性に依存すること,集塵装置と フィルタの方が電気集塵機より多くの元素を捕捉すること,微粉炭燃焼ボ・ 水銀,ホウ素およびフッ素などの揮発性元素の飛灰による回収率が低く,、 ボイラからの灰の回収率は高いこと,ボトム灰および飛灰の濃縮度は元素 ともに減少し,ガス中煤塵の濃縮度は増加すること,湿式脱硫装置は微量 への排出を抑制すること,石炭中塩素濃度は排ガス中微量元素濃度の低減 するが,飛灰中の濃縮度を増加させることなどを明らかにした。 2)燃焼プロセスからの排出物中微量元素の化学形態を熱力学平衡計算により才 NiおよびCoは炉内温度が高温でも,ほとんど凝縮相として存在すること,1
z。,Pb,Sn,ⅤおよびAsは炉内燃焼温度により部分的に挿廃するが,ガスl
おいて固相酸化物や硫酸塩に転換されること,Cdは炉内で完全に揮発す 冷却過程には固相CdSO4に凝縮すること,SeとHgは揮発しやすい元素で でも気相Hg,HgC12と気相SeO,SeO2として存在すること,高塩素石炭の微 化物を生成することを明らかにした。 3)高温灰溶融石炭ガス化プロセスにおける微量元素挙動については,石炭敵 有する気流層石炭ガス化パイロット試験装置からの微量元素の実測デーニ 照として,20種類の元素のスラグ,チャー,飛灰,生成ガスへの分配拳 の化学形態を熱力学計算とチャー循環プロセスを考慮した計算プログラ、 定し,実測結果と比較検討した。その結果,予燃焼器から排出されるス 一回収器で分離されたチャーおよび飛灰を含む生成ガスへの微量元素の分 とんどの非揮発性元素といくつかの揮発性元素に対しては熱力学計算刊 Mn,Cr,Pb,Asなどの半揮発性元素とHg,Fの揮発性元素に対しては予部 分配率の予測が困難な理由として,1600℃以上の高温ガス化炉から排出さ・ ラグ中の成分はすべて溶融相で計算されるのに対し,チヤ⊥や飛灰では噺 が混在し,平衡状態に至たらないためであることを明らかにした。 4)高温灰溶融石炭ガス化プロセスにおける運転パラメータが微量元素の化学 る影響を熱力学計算から検討し,予燃焼器すなわち溶融炉の温度上昇はスう のような半揮発成分を減少させ,チャーへの移行を促進させること,プロ 増加はスラグへの移行を促進し,その他への移行を抑制すること,冷却器 比率を決めるは重要な因子であること,温度上昇はガスへの移行を増加さ やチャーへの移行を抑制することを明らかにした。微量元素に関する知見は少なく,環境影響や健康影響が懸念される一方,既了
発電プロセスについても有害微量金属の対策技術の検討が始まっている。本石
した背景から,石炭燃焼発電プロセスや石炭ガス化複合発電システムにおけj 素の挙動を明らかにし,有効な対策技術の確立することを目的としている。し 現在のところ飛灰や排ガス中に含まれる微量元素については比較的容易に遜 るが,化学形態別分析は困難であり,ここでは熱力学計算を駆使し,元素分オ 収支を判定条件として,化学形態を予測している。 以下に本学位論文で検討した項目とその結論について述べる。 1)10基の産業用石炭火力発電施設を対象に調査した石炭燃焼プロセスの圭 一タを解析し,石炭中に含まれる22種類元素の物質収支,濃縮度,お云 の違い,排ガス処理方式の違い,脱硫装置の違いがボトム灰や飛灰,排フ ぼす影響を明らかにしている。その主な結果は,集塵装置としては,バ∠ 方が電気集塵機より多くの元素を捕捉する,湿式脱硫装置は微量元素のフ を抑制する,石炭中塩素濃度は微量元素の削減に有効であるなどの点で去 2)燃焼プロセスからの排出物中微量元素の化学形態を熱力学平衡計算により NiおよびCoは炉内温度が高温でも,ほとんど凝縮相として存在すること Zn,Pb,Sn,VおよびAsは炉内燃焼温度により部分的に揮発するが,ガニ おいて固相酸化物や硫酸塩に転換されること,Cdは炉内で完全に揮発一 冷却過程には固相CdSO4に凝縮すること,SeとHgは揮発しやすい元素-でも気相Ilg,IlgC12と気相SeO,SeO2として存在すること,高塩素石炭の寺 化物を生成することを明らかにしている。 3)高温灰溶融石炭ガス化プロセスにおける微量元素挙動については,気流月 パイロット試験の実測データを比較対照として,2-0種類の元素のスラ 飛灰,生成ガスへの分配挙動およびその化学形態を熱力学計算とチャー寺 を考慮した計算プログラムにより推定し,元素濃度に対して実測結果J ている。結果としてチャーおよび飛灰を含む生成ガスへの微量元素の分醒 一の元素については熱力学計算により予測できるが,d部の半揮発性元素( に対しては予測できないことを明らかにするともに,その原因を明らか 4)高温灰溶融石炭ガス化プロセスを対照として,予燃焼器温度や圧力,冷〕 ラグ抜き出し割合やチャー循環割合などの運転パラメータが微量元素胡 成に与える影響を検討し,ガス化プロセスの運転指針を与えるとともに, 灰の組成から環境負荷影響を検討するための指針を与えている。最終試験結果の要旨
これまでの研究業績および論文内容を中心とした事項について口頭試験を行った結果, 合格と認められた。