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持続睡眠療法の経過における尿中ノルエピネフリン値の変化

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(1)

18 原 著

特別掲載

( 東 女 医 大 誌 第55巻 第7号1 頁 576-578 昭和60年7月J

持続睡眠療法の経過における尿中ノルエビネフリン値の変化

東京女子医科大学神経精神科(主任柴田収ー教授〉

贋 瀬

俊 夫

(受付昭和60年4月30日〕

Urinary Excretion of Norepinephrine during and after the Continuous Sleep Treatment

Toshio HIROSE

Department of Neuro-Psychiatry (Director: Prof. Shuichi SHIBATA) Tokyo Women's Medical College

Although the continuous sleep therapy is thought to be c1assical nowadays, it is well known that it is quite effective in some cases of the so-called endogenous psychoses.

I

t

s effect may be due to the modification of biological rhythm, which is assumed to be changed during the endogenous psychosis. The measurement of the catecholamine (norepinephrine: NE) excretion was attempted

since it has been reported that its excretion showed a certain rhythm

especially with male subjects. 4 male manic patients who showed the typical biological symptoms such as the disturbances of sleep and of the autonomic nervous system were applied to the therapy for 14 days. The urinary NE of the 3 recovered patients was suppressed during the therapy

but that of one unrecovered was not suppressed. On the other hand

in all cases but the unrecovered case

the f1uctuations of NE excretion in the former 7 days were suppressed in the latter 7 days during the therapy. 緒 言 持続睡眠療法は薬物療法の普及後は古典的治療 法とされているが,薬物療法の効果の不十分な, 内因性精神病の症例に対しては時に著効を示すこ とが知られている.しかし,持続睡眠療法の作用 機序については全く説明がなされていない.一方, 断眠療法についても同様であり,両対照をなすこ れら二治療法については,内因性精神病の本態と して想定される日リズム異常川こ及ぼす影響が治 療効果をもたらすのではなし、かと推測できるが, 現在のところ証明されていない.生体のリズムの うち,内分泌器官は明確な日リズムを示し,中枢 神経性のコントロール下にある.このホルモン排 世量を連日測定する事によって,持続睡眠療法の 生体リズムに対する影響の一端をうかがおうとす る事がこの研究の目的であり,治療経過と尿中カ テコールアミン値との聞に,特徴ある関係を観察 することができたので報告する. 方 法

4

例の男性操欝病の操病相の症例(表1)に対 表1 持続睡眠療法を施行した操欝病〔操病相〉の症 17Uの経過様式と効果. 症例No.年齢 経 過 症状の程度 予後 1. 50 慢状性態的に軽繰返状態と操 の繰り し. 重症 軽快 2. 65 病数年相おがあきにる繰,病相と童書 重症 悪化 3. 51 5年ぶりの操病相. 重症 軽快 4. 35 比と較欝的病短相期の間繰でり返際病し相. 比較的重症 軽快

(2)

-576-表2 各症例の早朝尿の測定時期とその回数. 症例 前持続2日眠 施7日迄行 8日より 後終 2 了日 合 計 回 数 No 14日迄 1. 2回 5回 5回 2回 14回 2. 2回 5回 5回 2回 14回 3. 2回 5回 5回 2回 14回 4 2回 6回 4回 2回 14回 して持続睡眠療法を施行した.本研究は生体のリ ズムと精神症状との聞の関係をうかがうことが目 的であるので, 日リズムの乱れをうかがわせる典 型的な症状,即ち睡眠覚醒リズムの障害,自律神 経症状等を強く示している症例を治療上の必要と あわせて研究対象とした.そのため,研究対象の 症例数は4例のみとなった.尿は早朝自然排尿を 集めた.本研究では尿中カテコールアミンの排世 総量を問題としているのではなく,連日早朝の尿 中カテコールアミンの排世量の経時的変化につい て観察している.尿失禁,尿閉などで, どうして も尿を採取できないときは測定を行なわなかっ た.各症例の各治療期間についての測定回数は表

2

に示した. (早朝尿は前回の排尿より大体,

6

-8時間経過している.)食事,飲みものの摂取量, 排尿,排便については,全例がほぼ一定の状態を 保 つ よ う に 努 め た . 採 取 し た 尿 は

6N-HCl

に よって処理し,凍結保存した後, 日立カテコール アミン分析器

(638-50

型高速液体クロマトグラ フィー,

6

3

5

型反応槽,

650-10LC

型蛍光分光器, 目立

G

e

l 3

0

1

1

c

)

に よ っ て 定 量 し た .

(THI

method

2 )の応用による.)各症例の向精神薬の投与 量 は

Chlorpromazine

(1

00-200mg/day)

H

a

l

o

p

e

r

i

d

o

l

(6-12mg/

d

a

y

)

Levomepromazine

(150-200mg/day)

に併せて,

B

a

r

b

i

t

a

l

Amobar-b

i

t

a

l

を加えて浅 中等度睡眠を維持するように した.方法は大体,矢部の方法3)に従った. 結 果 持続睡眠療法を

1

4

臼間行なって

3

例が症状軽快 したが

1

例では同療法終了

1

週間後に再度,睡 眠短縮が目立ち,精神症状が増悪した.そのため,

2

週間後に再度,持続睡眠療法を施行しているが, 一応の軽快状態に達するまでに比較的長期間を必 19 NE ng/ml 症例 1>{ 症例2

+

症例 3中 症例

4

+

50

+

A -T 両 H γ 人 V

W

持続睡眠療法前2日 間 施 行 前 半7日 間 後 半7日間 終了後2日間 図l 各治療期間における尿中NEの 平 均 値 と 測 定 値の範囲. (縦軸 :NE,横軸:治療期間〉 要とした.持続睡眠療法施行前

(

2

日間),同療法 前半c7日間),後半c7日間〉及び同療法終了後

(

2

日間〉の尿中ノルエビネフリン

(

N

E

)

の平均 値と測定値の範聞の比較を図1に示す.軽快した

3

例(症例1,

3

,4)については

NE

値が持続睡 眠前半と比較して,後半で抑制をうけたが,再度 悪化した症例(症例2)では同時期に

NE

値はむ しろ増加している.また,症例2以外では同療法 中は測定値の範囲が施行前に比して広くなる傾向 が観察されたが,一方,治療の後半では測定値の 範囲は狭まる傾向が認められた.症例

2

では,同 療法前半と後半で測定値の範囲は変化が少ない. 考 察 病的状態にない人を持続睡眠状態において対照 群とすることは不可能であるので,文献と比較し て考察する.男性の

v

o

l

u

n

t

e

e

r

達の尿中カテコー ルアミン値を日常生活の状態で

m

o

n

i

t

o

r

した報 告がありベこれによると尿中ノルアドレナリン は明確な日内変動を示し連日の測定値には日常の ストレス下では著しい変動は認められなかった. つまり連日定時測定では測定値の変動は極く少な いのである.一方,持続睡眠療法とは対照的であ るが,男性

v

o

l

u

n

t

e

e

r

達を

6

4

時間の断眠状態にお き,対照群との比較をしたところ,両群の概日リ ズムの差は認められるが,各群の連日測定値には 著しい変動を認めなかったという報告もある5) 人間の生体リズムについての研究は多数あるが, 上記二文献は尿中カテコールアミンの日内変動に

(3)

577-20 ついて,かなり正確な報告であると思われる.上 記二文献と本研究の結果とを比較して最も異なる 点は,連日の定時測定値の変動である.著者は他 に男性の欝病例(操欝病の3回目の欝病相〉の早 朝尿中カテコールアミン値を, 60日聞にわたって 本研究と同様の方法で測定したが,生気的症状の 消退に伴って,測定値の変動が少なくなる傾向を 認めた(未発表).この症例ではNE値の推移が, 入院から14日間の昼夜を通じての制止症状と食思 不振の続く間は, NE値が最低値と最大値の闘で 16倍 (5-80ng/mI)の変動を示すのに対して,ほ ぼ正常な生活状態となった退院前14日間では4倍 (0.5-2ng/mI)の変動しか示していない.このよ うに別の機会に観察した,欝病の症例についても NE値の推移が,自律神経性の症状の経過と関係 を持つように観察された.但し,感情面での症状 経過については,本研究では研究対象としていな L

本研究の方法については,症例数の少ない点, 尿の採取について厳密性を欠くこと及び測定回数 が不足する点,つまり排出される全尿に対して測 定を行なっていなL、点については,不完全である と認めざるをえないが,対象が精神症状の著しい 症例であるため止むなく現実に研究可能な範囲で 研究計画を立てたものである. ま と め 自律神経症状の著しい4例の男性操病例に対し て施行した,持続睡眠療法前半と後半の早朝尿中 NE値の平均値の推移及び測定値の変動の範囲に ついて,自律神経症状の軽快した症例では,平均 値が抑制を受け,測定値の範囲が減少している. 一方, 自律神経症状の軽快しない症例では,平均 値の抑制はなく,測定値の範囲も減少しなかった. また,文献上で過去に行なわれた volunteer達の 日常生活状態及び断眠状態のNE値の推移と,著 者が過去に行なった1例の男性欝病例の尿中NE 値の推移についてもこの研究結果と比較して考察 を加えた. この研究は(財〉高尾保養院・研究室の協力で,昭 和56年から 58年にかけて行なった.尚,原稿を御校開 いただいた柴田収一教授に深謝いたします. 文 献 1)末国田鶴子・繰欝病における24時 間 リ ズ ム の 変 動.精神経誌、 62 1449-1485 (1960) Chidani, Schichiro; Fluctuation du rythme de 24 heures del'xecretion de sodium de potas -sium et de calcium dansl'urine chez 1巴sperson -nes atteintes de d邑pressionet les maniaques. Revue de medecine fonctionelle. 93 -122. (1969). Paris.

2) von Euler

U.S. and Lishajka

F.: Improved techniquεfor the fluorimetric estimation of catecholamines. Acta Physiol Scand 51 348 -356(1961) 3)矢部徹持続睡眠療法についての一試案.精神 医学 2 623-627 (1960) 4) Forsman

L.: Habitual excretion and its relation to habitual distress. Biol Psychol 11 83-97 (1980)

5) Akerstedt

T. and Froberg

J.E.: Sleep and stress exposure in relation to circadian rhythm incatecholamine secretion. Biol Psychol 8 69-80 (1979)

表 2 各症例の早朝尿の測定時期とその回数. 症例 前持続 2 睡 日眠 施 7日迄 行 8 日より 後終 2  了 日 合 計 回 数 No  1 4 日迄 1 .  2 回 5 回 5 回 2 回 1 4 回 2 .  2 回 5 回 5 回 2 回 1 4 回 3 .  2 回 5 回 5 回 2 回 1 4 回 4  2 回 6 回 4 回 2 回 1 4 回 して持続睡眠療法を施行した.本研究は生体のリ ズムと精神症状との聞の関係をうかがうことが目 的であるので, 日リズムの乱れをうかがわせる典

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