〔原 著〕 (東京女医大目第28巻第7号頁501 506昭和33年7月)
農村における血圧調査
皿 埼玉県入間郡毛呂山町における女子の血圧調査
東京女子医科大学衛生学教室(主任 吉岡博人教授) 山 ヤマ グチ金
キン 1 緒 ロ ナこ カ) 子・安 連城 u ア ラ ギ 銀 滋・和 田 ジ ワ グ 即 興・吉 田 ハジメヨシダ 歌 ウタ (受付昭和.33年5月17日) 著者らは,先に埼王県入問郡福岡村および川越 市芳野地区における血圧調査について発表した。 1)2♪従来は女子の血圧値は,男子に比して一般に 低いものと考えられていたが,我々の調査では男 女問の血圧値に著しい差は認められず,むしろ更 年期以後においては,女子の方が男子の同年平帯 に比し高い傾向をきえもっていることがみられ た。岩田5)は国民栄養調査における資料から,20 ∼24才から40∼44才までは男子の最高血圧平均 値が女子のそれよりも高いが,45∼49才以上は女 子の方が高い傾向を示してわり,最低並t圧の平均 値は一般的にみて男女の差は明瞭でないと述べて いる。Hamilton 4)らは病院の外来患者を測定し た結果について,やはり45才あたりから最高1血 圧最低玉1し圧とも女子の平均血圧が男予を凌駕す るといっている。 Com.stock 5ソはGeorgia州 MUtLcogeeにわける白人.と黒人の調査で,白人で は45才,黒入では35才から女子の最高血圧平均 値が男子のそれより高くなっていると述べてい る。著者らはかかる見地から女子壮年層の血圧に 注目し,昭和.R2年2月中旬から約2週間にわた
って,埼玉県入間郡毛呂山町の女子について血圧 調査をおこなった。毛呂山町は,秩父山破が関東 央 ヒロシ 平野に迫ったところにあり,ユ,891世帯のうち大 部分が農業を営んでいる。対象として30才以上 の女子をえらんだが,その総数は1,104名であっ た6そのうちから,商i業を営むものの多い一部落 を除いた994名について調査をおこなったが,測 定を実施しえたものは6割強の599名であった。H 調査方法
血圧の測定は,5分以.ヒ安静にさせたのち椅坐位で 必ず左側から先に左右両側を3回つつ測定した。血圧 値の分析は,左右とも比較的安定した値をえらんで行 った。第1報1)にも述べたように,柴田6/7)が左右両 側同時測定法によって行った研究によれば,左側より 右側の血圧値の高いものの方が多かったと述べている ことを考慮して,本調査においてはすべて右側の血圧 値}こよって分析を行った。血圧の測定とともに,家族 歴,妊娠,労働状態などについて問診し,あわせてズ ルフォサリチ7レ三法による尿蛋白の検査も実施した。 調査期間は,前述の如く2月中旬から約2週聞で,気 温は約10DC∼15。Cであった。III研究結果
(1)年令別血圧分布 30才以上の女子599名を,5才階級に分けて右 側の血圧の分布状態をみると,表1および表Hの ごとくなる。図1は,それらを図示したものであ る。最高血圧の分布状態をみると,30才台ではほTakako YAMAGVCH1, Ilajime ARAKI, Hirosi ’YOSHIDA, Ginji KIN & Uta WADA
(Department of Hygine, Tokyo Women’s Medical College) : lnvestigations ’on the blood pressures of inhabitants in the rural areas. M lnvestigation on the women’s blood pressure in the Moroyama town, lruma County, Saitama.
表1 毛呂山町女子の年令別血圧分布(最高血圧)
云年
令i・・才一135一{・・一45■・・一155−1・・一
圧\\「徽(研爾瀦願(%繭数(勿1騰(%)徽(%綱脇)
65 tv 例数(%) 70 nv 80 rv gO .v lOO ..」 110 .v 120 一v 130 rv 140 /v 150 .v 160 ・v170N
180 rv 190 rv 200 rv 210 .v 220 .v 230 fv 「nmHg, @」、(、.。) 4(6.3)1 7(7.1) 10(ユ5.9)}13(ユ3.1) 19(30.1) 24(24.3) 16(25.4) 33(33.3) 9(ユ4.3) 15(15.2) 2( 2.2) 7( 7. 9) 23(25. 9) 20(22. 5) 16(ユ8.0) 8( 9. 0) 4( 4.5) 5( 5. 6) 1( 1. 1) 1( 1. 1) 2( 2. 2) 3( 3.0) 2( 2. 0) 14(13. 8) 19(18.8) 21(20. 8) 16(15. 8) 10( 9.9) 12(11.9) 2( 2. 0) 2( 2.0) 例数(%) 3( 4. 8) 2( 3. 2) 4( 4. 0) 1( 1. 0) 1( LO)mi
2( 2. 5)2( 2. 6) 9(11.5)1 7( 8.9) 15(19.2)1 6( 7.6) ユ4(17.9) 14(17.7) 6( 7. 7)1 11(13. 9) 6( 7. 7)1 7( 8. 9) 11(14, 1)i 11(13. 9) 5( 6,4)1 9(11.4) 3( 3. 9)1 4( 5. 1) 4( 5. 1)1 5( 6. 3) 2( 2. 6)1 2( 2. 5) IC 1. 3) 1( 1. 3) 2( 4. 5) 5(11. 4) 5(1! 4) 4( 9. 1) 4( 9. 1) 6(13. 6) 7(15. 9) 5(11. 3) 4( 9. 1) 1( 2. 3) 1( 2. 3) 一1 −1 −1 −i 1 2( 5. 7) 3( 8. 6) 3( 8. 6) 4(11. 4) 3( 8. 6) 5(14. 2) 6(17. 1) 1( 2. 9) 3( 8. 6) 4(11. 4) 1( 2. 9) 4(36. 3) 1( 9. 1) 2(18. 2) 1( 9. 1) 3(27. 3) 計 63 so 89 101 78 79 44 35 11 表ll毛呂山町女子の年令別一血圧分布(最低」血圧)血\年令
圧\
mmHg
O rv 1 O rv20N
30 rv 40 rv 50 tv 60 .v 70 rv 80 .v90N
lOO rv llO rv 120 rv 130 rv 140 rv 30才∼ 例数(%) 35 nJ 1 40 rv 鱗(%)「痂(%) 一」 1( 1.0) 1( 1. 6)1 2( 2. 0) 5( 7. 9)[ 6( 6. 1) 17(27. 0)1 27(27. 3) 27(42.9)i 39(39. 4) 8(12. 7)1 18(18. 2) 4( 6. 3)1 4( 4. 0) 1( L6)1 1( LO) 一1 1( 1.0)rl 一l
q L 4s tv 1 so rv I 回数(%)1例数(%) 1一 55 iv ’ 60 xv 例数(%)[例時(%) 1 . ]E 1(・1. 3)! 12(15. 4) 16(20. 5) 20(25. 6) 12(15. 4) 8(10. 3) 7( 9. 0) 2( 2. 5) 65 tv 70 rv 1( 1. 1)1 1( 1. 0) 3( 3. 4)1 一 17(19. 1)1 13(12. 9) 31(34. 8)1 32(31. 7) 25(28. 1)i 27(26. 7) 5( 5.6)j 20(19.8) 6( 6.8)1 6( 5.9) 一[ 2( 2.o) 1( 1. 1)1’ 一 1( 1. 3) 10(12. 6) 20(25. 3) 22(27. 8) 13(16. 5) 6( 7. 6) 5( 6. 3) 1( 1. 3) 1( 1.3) 2( 4. 5) 9(20. 4) 12(27. 3) 9(20. 5) 5(11 4) 3( 6. 8) 3( 6. 8) 1( 2. 3) 例数(%)例数(%) tt A(。;;[ …一 2( 5. 7) 2( 5. 7) 3( 8. 5) 7(20. 0) 10(28. 6)1・ 5(14, 3) 4(11. 4) 1( 2. 9) 1( 9. 1) 2(18. 1) ・4(36. 4) 4(36. 4) 計 63 99 89 101 78 79 44 35 11 ぽ正規分布に近い形を示しているが,40才台にな 低血圧の分布も,最:高一血圧と同様に30才台でほ ると高圧側に伸びてきて,50才以上では最頻値の ぼ正規分布の形をとっている。40∼44才で高圧三 山が低くなり多峰性となっている。最頻値が150 にもう一つの低い山をつくり,45∼49才になるとmmHgを越えるのは,60∼64才以後である。最
その山は消失するが,曲線はやはり高圧側にずれ 一502一e/0 3e 20 Io o ]e xe te o )u ID ’4 1 一 昌昌 %30 A’巳’1 %5a 「 l ? l ? l u t ? I 30∼34一才 Zo l I C 1 ケ[ 、 3ケ∼3ヨ† λo l l ?、 1 ‘ ?l F L I 」 f 、 lo ! ノ’ 」 L lo ’ 、 ノ 、 、 一 噛暦。へ1。o 150 ユ伽 0250 @30 yO loo 350 ユoo 0ユ㌻0 @30 1し 爪1 、 イケ∼4『才 ケ。訪4オ 1 、 λo ’ 」 f し f 」 f 覧 u 、 f 、 26 1 1 u 巳 1。 r 、 ? 、 io , 1
一
「 、 u 、 o 、 沁mRS㌃。 lo∂ 吟b 2。。 λ∫唇 030 5。 「o馳 f 置5・ ユoo 0Q9・ @3δ ざρ∼‘千オ ユLo ハハ1亀 ‘ケー6『才 ユ。 ゾ ’lx!ノ lo ho最離E
OinmH氏ftb t o s 1.S e L−S b−r2 S“O””M’b l a a l e 200 2500pmt l ee ISs 2.b9 ’x蹴●
図1毛呂山町女子の年令別血圧分布図
てきており,その傾向は高年令となるにつれてや や著明となってくる。しかし,最:高一血圧のように 多峰性となることはなく,最頻値の山もあまり低 くはならない。 ② 年令別平均血圧 年令別の平均血圧を,左右とも表HRこ示した。最: 高血圧についてみると,30才台では120mmHgく らいであるが,40才を過ぎると平均血圧値は年令 と平行して上昇しはじめる。岩騨)は,20∼24才から35−39才までは大体120㎜Hg巖とみら
れ,40∼44才以上は年令に90mmHgを加えた数 値がその平均値に該当すると述べているが,本調 査では50才以上の年令層では,年令に90mmHg を加えた数値よりも高い平均値を示している。す なわち,他の年令層に比して,:更年期以後の血圧 がやや著明に上昇する傾向がみられる。 最:低血圧においても,30∼34才と35∼39才で はあまり差を認めず,40才を越えると漸次上昇す る傾向を示すが,50才以後になると年令と平行し て上昇する傾向はあまり明らかではない。 〔3)平均」血圧値の左右差 最高血圧では,すべての年令層において左右の 平均値聞に有意の差は認められなかった。最低血 毘においても,40∼44才の年令層で左81.97 馬脚毛呂山町女子の年令別平均血圧 最:高 血 圧\塾[例墜「
左 右 30∼34才 35N39 40N44 45tv49 50tvor4 55rv59 60N64 65rv69 70tv 63コ@120.24士1.66 99 =120.96士1.48 891 127. 53±2. 33 1011 137.67±2.06 78 146.92土3.15 791 152.59±3.02 441 162.05±3.87 351 175. 29±4. 36 111 175.00±5.92 120.24士1.74 120.45士1.39 130.17士2.16 137.48土1.93 147. 05±3. 15 152. 97±2. 99 161.14士4.02 173.86土4.47 180. 45±8. 41 最:低 血 圧瀞廠
’ 30・)34才 35rv39 40rv44 45rv49 50tv54 55tv59 60t−64 65iv69 70rv 63 99 89 101 78 79 44 35 11 左 右 73. 57±1. 66 75. 71±L 50 8L 97±1. 44 84.51士1.25 88. 97±1. 75 88.29土1。86 93.41士2.66 89.29土3.36 97. 73 ± 3. 49 73. 25±1. 39 73.28士1.24 78.60土1.38 82.62士1.23 86. 79±1. 82 85. 89±1. 80 92. 50 ±2. 62 89.29士3.45 95.00士2.29 一509一mmHg,右78.6e mmHgで左側が有意の差をも つて高いことを見出したのみで,他の年令層では 有意の差は認められなかった。第1報1)では右側 を先に1回ずつの測定値を比較したが,女子にお いては最高血圧,最:低血圧とも有意の差をもつて 右側が高く,第■報で左側を先に1回ずつの測定 値を比較したときは,最:高血圧,最低血圧とも左 右差を認めなかった。本調査では左側を先に左右 とも3回ずつ測定し,そのうちから安定した値を とって比較したが,第2報2)とほぼ同様の結果を えた。これらの結果から,平均血圧値の左右差に ついては,右側がやや高い傾向にあるか,左右差 は考慮するほどのことではないのかは,まだ明ら かにはなしえない。 (4)高1血圧および低血圧の出現率 高血圧,低血圧の出現率を,第1報1),第2報2J に従って,高血圧は最:高一血圧ユ50mmH塞以上,
および最高血圧150mmHg,最低血圧90 mmHg
以上としたものについて算出し,低血圧を最高血L 圧99mmHg以下のものとして算出した。それぞ れ,表W,表Vに示す。 であり,全体を通じて2.8%に過ぎなかった。 表V 毛呂山町女子の低血圧出現率罷職塾魎
30∼34才
35 tv 39 40 rAv 44 45 tv 49 50 .s, 54 55 ・v 59 60 rw 64 65 一v 69 70 N 63 99 89 101 78 79 44 35 11最高血圧99mmHg
以下 (%) 4( 6. 3) 8( 8. 1) 2( 2. 2) 3( 3. 0) o o o o e・・. ㈲ 体格と高血圧表V工体格と高血圧
[ 一一一× 肥 満 39 1中等度・痩身 i 141 計 181体齢甦]融年者瞬血圧祉.
r””” ””” ’[ s4
365 419 計 93 5Q6 599 表IV毛呂山町女子の高血圧出現率\嵩血圧
陣門数例数
令\\ 30∼34才 35rv39 40nu44 45”u49 50iv54 55iv59 60ivO4 65r−69 70iv 63 99 89 101 78 79 44 35 11 最:高 血 圧150mmHg以上
(%) 2( 8.0) 2( 6. 0) 13 ( 14. 5) 26 〈 25. 8) 32 ( ’41. 1) 39 ( 49. 4) 28 ( 63. 6) 27 ( 77. 1) 11 (100.0) 最高七月≡150mm Hg・V最低血圧99i mmHg以上(%)1 1(1.6)[ 2(2.・o)} 「9(10.1) 21 ( 2G.8) 25 ( 32。1)難}:割
i 19 ( 54.3) 9(81.8) 高血圧の出現率を表IVによってみると,30才台 では極めて低率であるが,40∼44才になるとやや 増加を示し,45∼49才,50∼54才以後は急激に増 加してくる。第1報1),第2報2・において,女子 の高血圧出現率が50∼54才あるいは55∼59才あた りから男子の同年令制に比して急に上昇している ことを述べたが,本調査では男子との比較はでき ないが,ほぼ同様の傾向をもつていることが推測 される。 低血圧の出現率は表Vにみるごとく極めて低率 x2=7.4 P〈 O. Ol 体格を調査者の主観によって,肥満,中等度, 痩身に分け,ここでは肥満型の群と中等度,痩身 の群との閥の高血圧出現率を,カイ自乗検定法に よって比較したが,表VIのごとく両者間には明ら かに有意の差が認められた。すなわち,申三度も しくは痩身のものに比して,肥満者には明らかに 高一血圧の出現が多くみられるわけで,これは第1 報1),第2報2)においても同様であった。 C6)妊娠回数と高血圧.表V[妊娠回数と高血圧
一興瞬遡乏.醜興.噸雌者!計
230∼3回
4回以上 114 ,,”一P 一’Sa・一 89 203 計 137 110 247 ’ x2= O.7 P> O. 05 妊娠回数と高血圧の関係をみるために,妊娠の 可能性の少ない50才以上の高年令層について分析 をおこなった。247名のうちで7回以上の妊娠を 経過しているものは97名をかぞえ,39,3%をし めている。ここでは妊娠回数0∼3回のものと,4 一一.Tb14 一回以上のものに分けて高1血.圧の出現率をカイ自乗 検定法により比較したが,表VII Icみるごとく両者 間に有意の差は認められなかった。しかし第1報 1)では,妊娠回数の多いもののうちに高.Ml圧搾が 多いという結果がでている。 (7)労働と高血圧
嫁入労働と高血圧
臆測r問∵…讐瓶i
! 一 ul ’.:1 L:1“ ] n一 1 ・ 一A 114
ヲ判.37一.1..四一…LlO7.
計 1 112ド253}365
L=・ 1.
⑨ 尿蛋白と高血圧表X尿蛋白と高血圧
F壷運薩.酢煮瞬=雌干鳥
陽 陰 性 性 10 170 4 415 14 585 計 18e 419 599 )c L’ =Ll P> O. 05 労働状態を知る…っの方法として,福田8・は1 戸当りの耕地面積をとりあげて高.血圧の出現との 関係を論じているが,ここでは1人当りの耕地面 積が4反未満のものと4反以上のものとに分けて, 両者間の高血圧出現率をカイ自検乗定法により比 較した。その結果,表V皿にみるごとく有意性は見 出しえなかった。 (8)高血圧の遺伝表IX高1血圧の遺伝
遜晦1璽ユ塾暁璽蝿L孟1
親に継当あり「 親に脳卒中な司 73 107 116 303 189 410 計 180 419 599 xL’ =9.7 P〈 O. Ol 高血圧の遺伝関係を分析するうえに,誤差を避 ける意味で両親との遺伝関係のみに限定し,遺伝 標識疾患としては,脳卒中で死亡したもの,およ び罹患中のもののみとした。両親とも脳卒中のも のは,599名中21名で3.5%,:父のみ脳卒中のも の104名17.4%,母のみ脳卒中のもの64名(0.7 %)を示し,従って両親ともあるいは片親のみ脳卒 中のあるものは189名で31。6%をしめている。 親に脳卒中のあるものとないものとに分けて,両 者聞の高血圧出現率をカイ自乗検定法により比較 したところ,表医のごとく明らかに有意の差が認 められた。すなわち,第1報1)でもみられたよう に,親に遺伝関係を認められたもののうちから, より多くの高!血圧の出現がみられたわけである。 x2=IL 7 P 〈 O. Ol 尿蛋白陽性のものは,599名中14名で2.3%に 過ぎなかったが,陽性のものと陰性のものとの間 の高血圧出現、率をカイ自乗検定法によって比べる と,表Xのごとく両者聞に明らかに有意の差を認 めた。すなわち,第1報1),第2報2)においても 観察されたように,尿蛋白陽性のもののうちか ら,より多くの高∫漏話の出現がみられた。 IV 総 括 埼玉県入間郡毛呂山町において,30才以上の女 子のうちで商業を営むものの多い1部落を除いた 994名の対象のうち,6割強の599名について1血 圧の集団検診をおこなった。血圧の測定は,椅油 漉で左側から右側に移り,左右とも3回ずつ測定 したうちから比較的安定した値をとった。調査期 間は2月中旬から約2週間で,気温は10つC∼1su Cであった。 (1)年令別∫血圧分布をみると,最高.1肛圧は30才 台ではほぼ正規分布に近い形を示しているが,40 才台にるなと高圧側に伸び,50才以上では最頻値 の山が低くなり多峰性となっている。最:低.血圧の 分布は,30才台では最高血圧と同様にほぼ正規分 布の形を示している。40才以後になると,分布は やや高圧側にずれてきて,その傾向は高年令とな るにつれてやや著明に認められる。しかし,最:高 血圧のように多峰性となることはなく,最頻値の 山もあまり低くはならない。 (2)年令別平均血圧では,最高血圧は30冊子で は120 mmHgくらいで安定しているが,40才を 過ぎると年令に平行して上昇しはじめる。更年期 以後の血圧が,他の年令層に比してやや著明に上 昇する傾向がみられる。最低血圧においても,40 才を過ぎると漸次上昇する傾向を示すが,50才以 後になると年令と平行して上昇する傾向はあまり 明らかではない。 (3)左右の平均!血圧値を比べたが,最高血圧, 一 505 一最:低血圧とも,ほとんどすべての年令層において 有意の差は認められなかった。 (4)高血圧の出現率は,30才台では極φて低率 であるが,40∼44才になるとやや増加を示し,45 ∼49才,50∼54才以後になって急激に増加してく る。すなわち,女子の更年期以後における高血圧 の増加を示しているものと思われる。 低.血圧の出現率は,極めて低率であり,全年令 を通じて2.8%に過ぎなかった。 ⑤ 体格を肥満型と中等度および痩身とに分け て両者間の高血圧出現率を比較したところ,有意 の差をもって前者に高.血圧:の出現が多かった。 (6)50才以上の高年令者について,妊娠回数0 ∼3回のものと,4回以上のものどに分けて高血 圧の出現率を比較したが,両者間に有意の差は見 出しえなかった。 (7)労働状態を1人当りの耕地面積であらわし て,4反未満のものと4反以上のものとの聞の高 一血圧出現率を比較したが,両者間に有意の差は認 められなかった。 (8)高血圧の遺伝関係をみるために,親の脳卒 中のみをとりあげ,それのあるものとないものと に分けてそれぞれの高血圧出現率を比較したとこ ろ,有意の差をもつて遺伝関係を有するもののう ちに高thtE者が多く出現することをみた。 (9)尿蛋白陽性のものと陰性のものの高血圧出 現率め間には,有意の差をもつて前者が高率であ った。すなわち,尿蛋白陰性のものに比べると, 陽性のもののうちに明らかに多くの高血圧者が認 められた。 おわりに,吉岡博人教授のご指導とご校閲を深く感 謝いたします。 文 献 1)諸岡妙子・他:農村における血圧調査,1 埼 玉県福岡村における調査,東京女子医科大学雑 誌, 26, 397 (日召 31) 2)諸岡妙子・他:農村における血圧調査,■ 埼 玉県川越市芳野地区における調査,東京女子医 科大学雑誌,27,89(昭32) 3)岩田昌一:日本人の血圧一国民栄養調査から一 厚生の指標,4(5)20(昭32)
4) Hamiiton, M., et al. : The arterial pressure in the population at large and its relationship
to age : A consideration of fnormaS’/ and
’/highV blood pressure, in : George White Pickering;High B]ood Presg. ure J. & A.
Churchill ]しtd. (1955)
5) Comstock, G.W. : An epidemiologic study of
blood pressure leve]s in a biracial community
in the Southern United States, American
Journal of Hygiene, 65, 271 ( 1957) 6)柴田勝:早坂式両側同時測定法に依る左右上搏 血圧の比較研究,正常血圧に干て(附血圧と上 搏囲との関係)口本内科学雑誌,23,955(昭 10) 7)柴田 勝:両側同時測定法に依る左右上搏血圧 の比較研究(2),高』血圧者及び低血圧者,保 険医学雑誌,35,(4)400(昭11) 8)福田篤郎:秋田県の農村高血圧,日本医事新報 No.1740(昭32) 一 506 一