教員養成大学における情報リテラシ教育の実施
8
0
0
全文
(2) 1.「 情 報 教 育 入 門 」 実 施 の 経 緯 IT を 基 盤 と し た 情 報 活 用 技 術 は ,教 師 の 身 に 付 け る べ き 基 本 的 な 能 力 の 一 つ で あ る と 文 部科学省は位置付けている.そのために教員免許法の改正にともない,教員養成課程の学 生 全 員 に 対 し て「 情 報 機 器 の 操 作 」( 2 単 位 )の 必 修 化 が 行 わ れ た .し か し ,こ の 科 目 の 具 体的な教育内容や,講義科目とするか演習科目とするかなどの運用方法は各大学の裁量に 任されている. 本 学 は ,平 成 12 年 に 教 員 養 成 課 程 と 学 芸 4 課 程( 国 際 理 解 教 育 ,生 涯 教 育 ,情 報 教 育 , 環境教育)の5つの課程に改組をした.あわせて共通科目(従来の教養科目)カリキュラ ム 改 訂 が 実 施 さ れ る こ と と な り ,「 情 報 機 器 の 操 作 」 の 実 施 方 法 の 検 討 を 行 っ た . 共 通 科 目 は ,全 て の 学 生 が 受 講 す べ き 必 修 科 目(「 日 本 国 憲 法 」「 ス ポ ー ツ 」)と ,学 生 が 選 択 し て 受 講 で き る 「 基 礎 科 目 」「 主 題 科 目 」 に 大 別 で き る .「 情 報 機 器 の 操 作 」 は , 教 員 免許法上の必修科目であるため,教員免許を取得しない一部の学生(学芸 4 課程の一部) へ の 対 応 の 検 討 が 必 要 に な っ た .そ の 結 果 ,IT 教 育 は 教 師 に 限 ら ず 職 業 人 に は 不 可 欠 で あ る,また受講した学生としない学生間に情報格差が生ずることなどから,全学生に対する 必修科目とすることにした. また,内容や 2 単位の使い方についても検討を行った。その中では「そもそも『機器の 操 作 』が 大 学 で 教 え る べ き 学 問 な の か ? 」と い う 根 源 な 問 題 提 起 も あ っ た が ,「『 機 器 の 操 作』という表面的な部分をさらうだけでなく,情報活用能力を専門の学問分野と結び付け て 涵 養 す る 」と い う コ ン セ プ ト を 得 る こ と が で き た .ま た ,授 業 科 目 名 は「 情 報 教 育 入 門 」 と名付けた. こ の コ ン セ プ ト に 基 づ い て ,半 期 2 単 位 の 講 義 科 目 と し て で は な く ,前 期 ・ 後 期 1 単 位 ずつの演習科目として開講することが決定された.これは前期は全学に共通した内容を, 後期は各専攻に即した内容を教育するためである. 実習環境についても種々の検討がなされた.本学の情報処理センターの演習室を利用す れ ば ,約 900 人 の 学 生 に 対 し て 週 1 回 の 演 習 を す る こ と は 不 可 能 で は な い .し か し ,自 習 時間を十分に取れないこと,お仕着せの情報環境を使うことになることなどから,学生の 情報活用能力を涵養するには不十分であると考えた.そこで,持ち運びの容易なノート型 パ ー ソ ナ ル コ ン ピ ュ ー タ ( 以 下 , ノ ー ト PC) を 全 入 学 生 に 購 入 さ せ る こ と に し た . 「 情 報 教 育 入 門 」 を 開 講 し て , 平 成 14 年 度 で 3 年 目 と な る . 現 在 , 2,700 名 余 の 学 生 が ノ ー ト PC を 所 有 し , 学 内 の 各 所 で 活 用 し て い る . い わ ば , こ れ は キ ャ ン パ ス に コ ン ピ ュータユーザが分散した,まさに「分散コンピューティング環境」が自然発生的に構築さ れている.このため従来のセンターシステム型のキャンパス情報ネットワークの運用・管 理形態をモバイル環境主体の形態へ変革していく必要に迫られてきている. 本報告では,まず「情報教育入門」の理念,カリキュラムの内容,実施方法について述 べる.次に学生に対するアンケート調査に基づいて,その効果を検討する.これによれば 比較的良好な結果が得られているように見えるが,果たして「学生に情報活用能力がつい たか?」という根本的な疑問は残る.講義の実施経験を踏まえて情報リテラシを身に付け させるための授業改善の試みについて述べる.. 2.「 情 報 教 育 入 門 」 と は 2.1.概 要 前述したように「情報教育入門」は,本学 1 年生の必修科目として位置付けられた科目 2 −26−.
(3) である.学内でも議論されたが,単なる『操作』を教授するのではなく,コンピュータを 大学4年間通して,使いこなし知的生産の道具として活用ような基礎的な情報活用能力の 涵養を目的としている. この目的を実現するために,以下のような方針をたてた. 方針Ⅰ: 基本的な情報リテラシを身につける 方針Ⅱ:大学 4 年間の学生生活を通じて利用するキャンパス情報ネットワークを 正しく使えるように指導する. 方針Ⅲ:道具としてコンピュータを活用できるようにするため,操作の意味や目 的を理解させる. 方針Ⅳ:専門教育とシームレスに接続できるように,カリキュラム上の工夫をす る配慮する. 方針Ⅴ:学生生活全般にコンピュータを活用できるように,アクセスポイントを 十分設ける. これらの方針に基づきカリキュラム設計や環境構築を行った.方針Ⅰ∼Ⅲ,Ⅴの実現方 法は,次節以降で述べる.また,方針Ⅳを実現のために,全ての受講生に共通した内容を 扱 う「 情 報 教 育 入 門 Ⅰ 」( 以 下 ,入 門 Ⅰ )と ,専 攻 ご と に 独 自 の 内 容 を 付 加 し た「 情 報 教 育 入 門 Ⅱ 」( 以 下 , 入 門 Ⅱ ) と に 分 け て 実 施 す る よ う に し た . こ れ ら は と も に 1 単 位 の 演 習 科目で,入門Ⅰは前期,入門Ⅱは後期に開講している.. 2.2.情 報 教 育 入 門 Ⅰ 入門Ⅰでは,方針ⅠおよびⅢを実現するために,基本的な内容を徹底的に教育するとい う 方 針 を と っ て い る . カ リ キ ュ ラ ム の 概 略 は 以 下 の 通 り [1][2][3]で あ る . 1) ノ ー ト PC の 起 動 方 法 や 操 作 方 法 を 習 得 し , ネ ッ ト ワ ー ク 接 続 の 確 認 を 行 う . 2) キ ー ボ ー ド 入 力 の 基 本 技 能 タ ッ チ タ イ ピ ン グ の 習 得 を 行 う . 3) 仮 名 漢 字 変 換 に よ る 日 本 語 入 力 を 習 得 す る 。 4) MS-Word を 用 い て 簡 単 な レ ポ ー ト 作 成 に よ る 文 書 作 成 の 基 礎 を 学 ぶ 。 5) ネ ッ ト ワ ー ク 上 で 問 題 と な る 法 律 上 の 問 題 や い わ ゆ る ネ チ ケ ッ ト に つ い て 学 ぶ 。 6) W W W ブ ラ ウ ザ の 使 い 方 と 情 報 検 索 の 基 礎 に つ い て 学 ぶ 。 7) 電 子 メ ー ル の 基 本 的 な 使 用 方 法 、メ ー ル の 書 き 方 の 基 礎 に つ い て 、メ ー ル を や り と りする上で適切な件名・本文書き方や返信方法について学ぶ。 8) コ ン ピ ュ ー タ ウ ィ ル ス に つ い て 仕 組 み や 被 害 、 そ の 対 策 方 法 に つ い て 学 ぶ . 半期での教育内容としては,非常に少ないように思えるかもしれない.実際,開講前の 担当者間の打合せでは「半期で教える内容としては少なすぎ,教える内容がなくなって しまうのではないか」という疑問の声があった.しかし実際に授業を行ってみると,これ だけの内容を学生に十分理解させるには半期でも足りないという印象を持つ担当者も多い. なぜならば,学生個別に行わなければならないケアが多く授業進行がうまくいかない,ネ ットワークの不調により演習の効率が下がることがある等の理由からである. 入門Ⅰの教育で,特に重点を置いているのは方針Ⅱと方針Ⅴ,すなわち文書作成と高度 情 報 化 社 会 に 参 画 す る 態 度 の 育 成 で あ る .文 書 作 成 で は , タ イ ピ ン グ と レ ポ ー ト を 作 成 す る意味に重点をおく.キーボード入力は,単に日本語入力できるだけでなく,正しくタッ チ タ イ プ が で き る よ う に ,大 岩 方 式 [4]に よ る タ イ ピ ン グ 練 習 ソ フ ト ウ ェ ア [5]を 用 い て タ イ プ練習を行う.レポート作成は,ワープロの細かな操作を覚えるのではなく,レポートを 書くことの意義や表紙の作成,本文の書き方など,いわゆるコンピュータによる文書作成 の本質について教育するよう配慮している. 3 −27−.
(4) インターネットでの学生の非常識な発言や不用意なパスワード管理が,周囲に迷惑をか けることは少なくない.また,そうした学生の行為によって大学の社会的責任も問われな い と も 限 ら な い .そ こ で 学 内 の 法 律 関 係 の 教 官 に 依 頼 し て ,各 ク ラ ス に つ き 2 時 間 ず つ 情 報化社会に参画する基本的な態度について講義を行っている.内容は,パスワード管理の 重要性,ネチケットなどの基本的な知識から知的所有権,学生が知らず知らずのうちに犯 罪に関ったりしないような護身術的な側面についてまで,学生の専攻を考慮して幅広い内 容で講義している.この講義を受講した後でなければ,電子メールアカウントを発行しな い.この講義内容を前提にして,メールの読み書き,適切なメールの出し方,メールでの レポート提出方法(適切な添付の方法)について講義する.. 2.3.情 報 教 育 入 門 Ⅱ 入門Ⅱでは,入門Ⅰの内容を踏まえて,ファイルやワープロの高度な使い方,表計算ソ フ ト の 使 い 方 ,Web ペ ー ジ の 作 成 等 を 学 習 す る [6].ワ ー プ ロ で は ,見 易 く 読 み や す い 文 書 の作成をするために,書式設定や表,図の活用,他ソフトとの連携等について教える. 表1. 情報教育入門の開講方式と講義内容. 開 講義名. 講. 方. 式. 学生数 時期. コマ数. (コ マ 当 り). 18 情報教育入門 Ⅰ. 情報教育入門 Ⅱ. 前期. 後期. 週 6回 3 コマ 同時開 講. 23 週 7回. 教官 2名. 約 50. 15∼ 56. 情報教 育講座 で担当. 1∼ 3 名 各専攻 担当教 官. 講義内容 ・基本操作とネットワークの利用 ・ワープロ入門とレポート作成 ・法律,ネチケット,護身術 ・情報検索の方法 ・電子メールの読み書き ・ワープロ応用 ・表計算の基礎 ・ Web ペ ー ジ の 作 成 ・そ の 他 ,各 専 攻・コ ー ス ご と に 独 自 の内容を講義. 表 計 算 で は ,作 表 ,計 算 な ど 基 本 的 な 操 作 を 教 え た 後 ,マ ル チ シ ー ト や 簡 易 デ ー タ ベ ー ス 機 能 ,グ ラ フ 作 成 と 簡 単 な シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 等 を 教 育 す る .以 上 の よ う な 教 育 内 容 を ガ イ ド ラ イ ン と し て 担 当 者 に 示 し て い る .し か し ,方 針 Ⅳ に 示 し た よ う に ,入 門 Ⅱ と 2 年 次 以 降 の 専 門 教 育 が シ ー ム レ ス に 繋 が っ て い る こ と も 重 要 な 要 素 の 一 つ で あ る .そ こ で ,入 門 Ⅱ の 教 育 内 容 は ,授 業 担 当 者 の 裁 量 で ガ イ ド ラ イ ン の 示 す 教 育 内 容 の 取 捨 選 択 を 行 い ,各 専攻の教育内容に基づいた計算機やネットワーク利用に合わせた形で内容を拡張してよ い こ と に し て い る . そ の た め , 専 攻 に よ っ て は Fortran に よ る 科 学 技 術 計 算 や Java に よ る プ ロ グ ラ ミ ン グ や MIDI に よ る 音 楽 情 報 の 扱 い な ど を 取 り 入 れ て い る .. 2.4.開 講 方 式 表 1 に ,情 報 教 育 入 門 の カ リ キ ュ ラ ム の 概 要 と 開 講 方 式 を ま と め た .入 門 Ⅰ は ,入 学 者 全 員( H13 年 度 ,920 名 )を 学 籍 番 号 順 に 18 ク ラ ス に 分 け て ,1 週 に 6 コ マ( 3 ク ラ ス ず 4 −28−.
(5) つ 同 時 に ) 開 講 す る . 各 ク ラ ス の 学 生 数 は 50 名 を 超 え , 全 て の 学 生 に 対 す る ケ ア が 困 難 な た め 学 生 25 人 に 1 人 の 教 官 が 担 当 す る こ と を 目 安 に し , 各 教 室 2 名 ず つ 教 官 を 配 置 し て い る .ま た ,法 律・ネ チ ケ ッ ト 関 連 の 講 義 は ,各 ク ラ ス 2 回 ず つ ,法 律 の 専 門 教 官 が 講 義している. 入 門 Ⅱ は , 専 攻 ご と に ク ラ ス 分 け を し て い る た め , 各 専 攻 の 定 員 ご と に 10 数 名 の ク ラ ス か ら 最 大 56 名 の ク ラ ス ま で と , 人 数 は か な り ば ら つ い て い る .. 2.5.自 習 場 所 の 増 設 方 針 Ⅴ を 実 現 す る た め に は ,講 義 の 空 き 時 間 に 利 用 で き る 実 習 環 境 を 十 分 に 用 意 す る 必 要 が あ る . PC を 使 用 す る こ と が で き な い . そ こ で 平 成 12∼ 13年 度 に か け て , 教 室 お よ び 自 習 用 教 室 ,自 習 用 ス ペ ー ス を 確 保 し た( 表 2).各 教 室 に は ,情 報 コ ン セ ン ト お よ び 電 源 , フ ァ イ ア ウ ォ ー ル( SonicWall)お よ び ロ ー カ ル サ ー バ( Cobalt RaQ3)を 配 置 し て い る . また. こ の う ち , 100 口 の 情 報 コ ン セ ン ト 数 を 持 つ , 大 教 室 は で き る だ け 空 け て お く よ う. に ス ケ ジ ュ ー ル さ れ て お り , 常 時 200 人 以 上 の 学 生 が 自 習 可 能 で あ る . な お ,フ ァ イ ア ウ ォ ー ル は 有 害 コ ン テ ン ツ の フ ィ ル タ リ ン グ 機 能 を 有 し て お り ,学 生 た ちの寛ぎの場にならないような配慮をしている. 表2. 学内の情報コンセント数 場. 12 年 度. 13 年 度. 所. 講 義 棟 314 教 室 講 義 棟 315 教 室 情報処理センター1 階講義室. 講 義 棟 313 教 室 講 義 棟 301 教 室 講 義 棟 201 教 室 附属図書館 大学会館 合. 計. 口数 56 56 54 56 100 100 104 64 590. 3. 授 業 内 容 評 価 本 学 の 共 通 科 目 委 員 会 が 受 講 学 生 に 対 し て「 授 業 改 善 の た め の ア ン ケ ー ト 」を 半 期 ご と に 行 っ て い る . 2001 年 度 前 期 の 調 査 結 果 [7] に 基 づ い て 授 業 内 容 の 評 価 を 試 み る 。. 3.1.学 生 に よ る 評 価 学 生 の 積 極 的 参 加 : 学 生 が 講 義 に 積 極 的 に 参 加 し て い る か ど う か を 問 う と ,97%の 学 生 が「 積 極 的 参 加 」と し て お り ,さ ら に 講 義 を 通 じ て 得 る も の が あ っ た 者 は 96%,講 義 の 内 容 に 触 発 さ れ , さ ら に 進 ん だ 学 習 を 自 ら 行 っ た も の は 44%に お よ ん だ . 学 生 の 期 待 す る 内 容 :「 イ ン タ ー ネ ッ ト 」 や 「 電 子 メ ー ル 」 に 関 す る 内 容 の 期 待 度 が 高 く,反面それに付随する「法律と著作権」や「ネチケット」に関する期待度が低い. 学 生 の 満 足 度 : 88%が 肯 定 的 回 答 で あ っ た . 学 生 か ら 見 て 良 か っ た 点:教 官 の 講 義 そ の も の( つ ま り 話 し 方 ,説 明 の 仕 方 等 )が 良 か っ た と す る 学 生 は 57%で , や や 低 率 で あ る 反 面 , 教 官 の 個 別 指 導 が よ い と す る 学 生 が −29− 5.
(6) 37%と , 他 の 科 目 に 比 較 し て 高 率 で あ っ た . 自 由 記 述 欄 で の 学 生 の 意 見: 基 礎 的 な 内 容 重 視 だ っ た た め「 と て も 良 か っ た 」と「 退 屈 で あ っ た 」と い う 意 見 に 正 反 対 に 分 か れ た .ま た ,ノ ー ト PC に 関 し て は「 価 格 が 高 い / 安 い 」「 軽 く て 便 利 /重 く て 不 便 」 と い う 意 見 に 2 分 さ れ て い る . 同 様 に 「 内 容 が 簡 単 / 難 し い 」「 説 明 が 分 り や す い /分 り づ ら い 」な ど ,ど れ も ち ょ う ど 正 反 対 の 意 見 が 出 て い る .「 教 官 が 2 人 い る の が 安 心 で き て よ い 」 な ど 個 別 指 導 が 行 き 届 い て い た と い う 意 見 もあった.. 3.2.成 績 評 価 の 特 性 上 記 の 調 査 報 告 に は ,「 参 考 」と し て 各 ク ラ ス の 成 績 評 価( A,B,C 評 価 )の バ ラ ツ キ に 関 す る 調 査 が 掲 載 さ れ て い る .あ く ま で 参 考 デ ー タ な の で 本 稿 で の 掲 載 は 避 け る が ,入 門 Ⅰ の 各 講 義 の A,B,C の 配 分 比 率 は ,ほ ぼ ど の ク ラ ス も 同 じ に な っ て い る .こ れ は ,試 験 内 容 を 共 通 的 な も の す る な ど の 話 し 合 い が 授 業 担 当 者 ML 上 で 行 わ れ た こ と が 要 因 で あ ろ う .. 3.3.考 察 同 様 な 調 査 は , 2001 年 度 後 期 以 降 も 半 年 ご と に 行 わ れ て い る が , ま だ 正 式 な 結 果 は 出 て い な い . 単 純 集 計 結 果 を み て み る と ,入 門 Ⅰ よ り も 入 門 Ⅱ の 方 が 教 官 ・ 学 生 と も 「 専 門 的 知 識 の 習 得 」を 目 的 と し て お り ,ほ ぼ 目 的 に そ っ た 授 業 展 開 が な さ れ て い る と 考 え ら れ る.ただ,一部には,専門的過ぎて難しすぎるという意見もあることから,入門Ⅰと入門 Ⅱの間,入門Ⅱのそれぞれの専攻同士で難易度のバランスを調整する必要もあるだろう. 以 上 の よ う な 結 果 を 見 る と ,学 生 の 期 待 に そ っ た 授 業 が な さ れ て お り ,ほ ぼ 期 待 通 り の 結 果 を 得 ら れ て い る よ う に と ら え る こ と も で き る .反 面 ,教 師 側 が 特 に 身 に つ け て 欲 し い と 思 っ て い る 情 報 化 社 会 に 参 画 す る 態 度 に 関 す る 教 育 に ,学 生 は あ ま り 興 味 を 示 し て い な い.彼らは単に他の講義とは異なった形式の,そしていわゆる「ハイテク」の講義を受け ら れ た こ と に の み 満 足 し て い る の で は な か ろ う か と 感 じ ら れ る .そ う し た 意 味 で は さ ら に 踏み込んだ調査が必要であると加賀得ている.. 4.効 果 的 な リ テ ラ シ 教 育 の た め に 4.1. 学 生 の 理 解 に 関 す る 考 察 前節で述べたように,情報教育入門の講義は,共通科目としては一応の成果をあげてい る.しかし,本当に学生たちに真の情報機器や情報の活用能力が付いたかといえば,疑問 がないわけではない.情報教育入門以外の授業を担当する教官から学生が「フロッピード ラ イ ブ の 扱 い も 知 ら な い 」「 簡 単 な フ ァ イ ル の コ ピ ー も で き な い 」な ど の 指 摘 を 受 け る こ と がある.講義の演習の際には,一度体験していることがらであるのに自分一人では同じこ とができなかったり,あまりに基本的な事柄を理解できていかったりすることもしばしば 見られる問題である. こ れ を 確 か め る た め に ,本 学 の 情 報 教 育 講 座 1 年 生 に 対 し て 教 科 書 と そ こ で 使 わ れ て い る 用 語 に つ い て ,ア ン ケ ー ト 調 査 を 行 っ た [8].そ の 結 果 を 表 3 に 示 す .こ れ を 見 る と 学 生 は「授業は面白い」と感じているものの,実際の所はあまり「理解していない」ととらえ ることができる.専攻が情報教育の学生であっても,このような結果であることから,文 科系等の他専攻ではさらに,理解度は低いと推察される. 6 −30−.
(7) 表3. 教科書の理解度に関するアンケート調査. 教科書をどのくらい 理解できていると思いますか ほとんど理解できている 7人 少し理解できている 21 人 あまり理解できていない 23 人 ほとんど理解できていない 4人. 12.7% 38.1% 41.8% 7.3%. コンピュータ関係の用語について詳しく知っている 方だと思いますか 1.8% よく知っている方だと思う 1人 14.5% 知っている方だと思う 8人 32.7% あまり知らない方だと思う 18 人 50.9% 知らない方だと思う 28 人. 講義ではきめ細かな教育を行っているわけであるが,このような問題が起きるのは何故 であろうか?考えられる原因を以下にあげる. 1)学 生 は 操 作 手 順 に の み 注 目 し て い る コ ン ピ ュ ー タ に 目 的 の 動 作 を さ せ る た め に は ,一 連 の 操 作 シ ー ケ ン ス を 行 う 必 要 が あ る . 例 え ば「 今 編 集 し て い る 文 書 を 別 の 名 前 の フ ァ イ ル に 保 存 す る 」操 作 は Windows の 場 合 、 [ フ ァ イ ル → 名 前 を 付 け て 保 存 → フ ァ イ ル 名 を つ け る → OK を ク リ ッ ク ] と い う 操 作 に 分 解される.それぞれの操作には,それぞれの意味があるのだが,学生は一つの塊(いわば 構文)として覚えようとする傾向が強く,一つ一つの操作の意味を理解しないためだろう と考えている. 原因は教師がプロジェクタで操作画面を投影する教授法にあるのでは,と考えている. この方法では,教師が画面で行う通りに操作をすれば目的の結果が得られるため,学生は 教師の操作手順のみを注目し,教師が行う意味説明の部分にはあまり注意を払わなくなる 傾向にあるのではないだろうか.また,教師の説明や操作の速度と同期がとれないと,な にをすべきかさえも全く理解できなくなることもある. こ の こ と は 半 田 ら も 指 摘 し て い る [9]. 2)操 作 と 用 語 の 多 様 性 先ほどの「名前をつけて保存」の例では,一旦,ファイルに保存してからコピーする, コピーしてから名前を替えるなどの様々な操作方法が考えられる.このような操作の多様 性にとまどいを覚える学生が多い.また,教師が講義の際に用いる用語にも「フロッピー デ ィ ス ク 」を「 FD」「 フ ロ ッ ピ ー 」「 デ ィ ス ク 」等 と 様 々 で あ る .学 生 は 慣 れ な い 用 語 を 使 われると,大変戸惑うことが多い. 3)組 合 せ , 応 用 が で き な い 1)で 述 べ た よ う に 学 生 は 一 連 の 操 作 を 「 構 文 」 と し て 覚 え て し ま う 傾 向 が あ る . こ の た め個々の操作に分解(例:ファイル名をつける)した上で,組合せて応用することができ ない.. 4.2.授 業 改 善 の 試 み 以上の見てきたように,表面的には効果が上がっている情報教育入門も,学生の情報活 用 能 力 向 上 の 観 点 か ら は , さ ら に 改 善 す る 必 要 が あ る . 改 善 の 方 法 に は , 1)カ リ キ ュ ラ ム の 改 善 , 2)教 授 方 法 の 工 夫 , 3)自 習 時 に お け る ネ ッ ト ワ ー ク 教 材 の 提 供 等 が 考 え ら れ る . ここでは,現在行なっている試みについて述べる. 1)「 例 外 」 の 教 育 操作を行なう授業では,ほとんどの学生はネットワーク接続できるが,一部の学生がで きないというように,一部の例外のために授業進行が混乱することがある.教師側は例外 に陥らないために,最も安全な筋道しか教えない.したがって,少しでも例外が起きると 7 −31−.
(8) 学生は対処できない. そこで,よく起きる例外を本題に先立って予行演習する方法を取る.例えばコンピュー タとケーブルを繋がないでコンピュータを起動させ,ネットワークに接続していないと, どのような現象が起きるか観察させておく.そして,その場合の対処方法のいくつかを教 えた後,ケーブルを接続して起動させる.その際,大部分の学生はうまく接続できるが, たとえ接続できなくとも対処方法を既に知っているので,うまくいかない学生も不安に陥 らず混乱せずにすむ. 2)「 や っ て み る 」 の 教 育 学 生 が 操 作 を 覚 え て し ば ら く す る と ,「 こ こ で ∼ し て い い ん で す よ ね ? 」と い う 質 問 に し ばしば出くわす.教師が間違えてはいけないことを強調するあまり,例外が表れてはいけ ないと思い込むからではないかと思っている.周囲に甚大な影響を与えるような誤りや例 外(例えばメールアドレスの誤り)は予め避ける教育をすべきであるが,個人的な環境の 中で収まるような例外ならば,あえて「やってみる」ことによってコンピュータの反応を 観察させ考えさせる機会を与える教育を行うべきではないかと考えている. 3)自 習 教 材 の 提 供 1),2)の 教 育 と も ,起 き う る 例 外 や 障 害 な ど を 予 め 想 定 し て お く 必 要 が あ る .ま た 想 定 し た例外や障害は,積極的に自習的教材として提供していく必要がある.. 5.まとめ 本 稿 で は ,本 学 で 行 っ て い る 情 報 リ テ ラ シ 教 育 の 実 施 に つ い て 述 べ た .最 初 の 2 年 間 は , ともかく授業がうまく行くこと,システムが落ちないこと,ウィルスの蔓延を防ぐことな ど,もっぱら技術的な側面に偏った授業運営にならざるをえなかった.幸い昨年度後半か らシステムも安定し,トラブルが現象したことなどから,受講生向け情報提供のための Web ペ ー ジ の 構 築 や サ ポ ー ト 体 制 の 充 実 を は か る こ と が で き た . 本学の共通科目は,3年を区切りに,そのあり方を見直すことになっている.今後は2 年間の授業の経験を反映させ,カリキュラム内容の見直しや授業運営方法をよりよいもの にしていきたいと考えている. 【参考文献】 [1]「 愛 知 教 育 大 学 オ ン ラ イ ン ・ シ ラ バ ス 」, http://syllabus.aichi-edu.ac.jp,愛 知 教 育 大 学 [2]竹 田 尚 彦 編 著 , 中 西 宏 文 他 著 :「 情 報 教 育 入 門 」, 愛 知 教 育 大 学. (2000). [3]竹 田 尚 彦 編 著 , 中 西 宏 文 他 著 :「 情 報 教 育 入 門 」, 学 術 図 書 出 版. (2001). [4]大 岩 元 監 修 ,「 5 時 間 10 分 キ ー 入 力 習 得 法 」, マ グ ロ ウ ヒ ル (1990) [5]慶 応 義 塾 大 学 大 岩 研 究 室 ,「 Crew Typing」, http://www.crew.sfc.keio.ac.jp [6]中 西 宏 文 ,「 実 践 情 報 活 用 」 ,学 術 図 書 出 版 (2001) [7]愛 知 教 育 大 学 共 通 科 目 委 員 会 ,「 共 通 科 目 の 授 業 改 善 の た め の 調 査 報 告 」,同 委 員 会 編『 教 養 と 教 育 』 創 刊 号 , 愛 知 教 育 大 学 (2001) [8]佐 合 尚 子 , 平 川 恵 里 , 竹 田 尚 彦 :「 情 報 リ テ ラ シ 教 育 に お け る 教 科 書 デ ー タ の 電 子 化 」, 2002 火 の 国 情 報 シ ン ポ ジ ウ ム 論 文 集 , pp211-218 (2002) [9]半 田 亨 , 橘 孝 博 , 高 橋 裕 治 , 中 川 剛 佑 :「 大 学 付 属 高 校 に お け る 情 報 教 育 用 教 科 書 の 開 発 」, コ ン ピ ュ ー タ & エ デ ュ ケ ー シ ョ ン ,Vol.9,pp97-103 (2000) −32− E-88.
(9)
関連したドキュメント
仏像に対する知識は、これまでの学校教育では必
非自明な和として分解できない結び目を 素な結び目 と いう... 定理 (
ライセンス管理画面とは、ご契約いただいている内容の確認や変更などの手続きがオンラインでできるシステムです。利用者の
【細見委員長】 はい。. 【大塚委員】
遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば
今日のセミナーは、人生の最終ステージまで芸術の力 でイキイキと生き抜くことができる社会をどのようにつ
・ホームホスピス事業を始めて 4 年。ずっとおぼろげに理解していた部分がある程度理解でき
自然言語というのは、生得 な文法 があるということです。 生まれつき に、人 に わっている 力を って乳幼児が獲得できる言語だという え です。 語の それ自 も、 から