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ドイツ連邦憲法裁判所論(7) 利用統計を見る

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(1)

ドイツ連邦憲法裁判所論(7)

著者名(日)

クラウス,シュライヒ[著]/名雪,健二[訳]

雑誌名

東洋法学

39

1

ページ

135-169

発行年

1995-09-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000520/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

[翻 −訳]

ドイッ連邦憲法裁判所論

クラウス・

名  雪

シュライヒ著

健  二訳

戻洋滋学

       パ   国 裁判所の手続の審査  憲法訴願は、裁判所の手続による基本権の違反をも主張しうる。その場合、審査基準は、主として司法上の基 本権である︵ボン基本法第一〇一条第一項第二段、第一〇三条第一項、第一〇四条、第一九条第四項︶。これらの憲法訴 願は、あらゆる憲法訴願のほとんど半数に達している。これらの憲法訴願が比較的に高い成功率をもつという第 一印象は、誤解である。これらの絶対的に大きな数の憲法訴願のみが原因で、訴願を肯定する多くの決定が下さ  パ  れる。  裁判所の手続に対して提起される判決に対する憲法訴願において、連邦憲法裁判所は、特別に広範な審査範囲 を主張する。他の場合、しばしばいわれる﹁専門裁判所﹂に対する自制は、手続批判についての決定においてほ         パ  とんどみあたらない。 135

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かイツ遵窺翻裁繍御

 とくに、ボン基本法第一〇三条第一項による法律上の聴聞違反の批判にあたって、連邦憲法裁判所は、1当 該基本法第一〇三条第一項から、訴訟関係人の聴聞のために訴訟手続を超えた独自の義務を読み取ることを別に  パ  してi、法律上の聴聞を保障する訴訟手続の規定の提供において、裁判所の行動の法律適合性そのものの審査 に移行する。ここでの﹁法理﹂は、まさに、他の場合、避けられるものである。すなわち、ボン基本法第一〇三 条第一項は、訴訟手続が保障する﹁法律上の聴聞﹂を保障する。したがって、訴訟手続の遵守が、直接的に基本        む 権上重要である。  例えば、﹁区裁判所裁判官は、民事訴訟法第一二八条第三項の誤った適用によって、この︵ボン基本法第一〇三条         第︸項の︶原則に違反した﹂ような主張がある。また、﹁民事訴訟法第九一a条第一項に基づく決定に対する即時 抗告に関する決定の前に、相手方が聴聞されるべきである︵民事訴訟法第九九条第二項第二段︶。ボン基本法第一〇       パ  三条第一項も、それを命ずる﹂というように、憲法および単純法が、単純に並べられる。  その結果として、連邦憲法裁判所は、この手続においてしばしば広範囲な、かつ詳細にわたる調査や単純法に        よる考慮を行わなければならない。  連邦憲法裁判所判例集第四二巻三六四頁 訴訟関係人の論述を承知せず考慮しない裁判所は、﹁法律上の聴聞﹂に違反す ︵獅︶ る。  連邦憲法裁判所判例集第四一巻二三頁”ボン基本法第一九条第四項および第一〇三条第一項は、略式訴訟に対する書面 での異議をなすにあたって、市民の責任ではないドイツ連邦郵便による郵便の輸送、または配達の遅延が市民に責任を負わ        ハ  せられないように刑事訴訟法第四四条を解釈することを命ずる。 136

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葵洋滋学

 連邦憲法裁判所判例集第四四巻三〇二頁。自己責任ではない期間の解怠における原状回復。  連邦憲法裁判所判例集第六三巻四五頁︵五七頁−五八頁︶における効果のない憲法訴願の例.ボン基本法第一〇三条第一 項は、刑事裁判所の実際に手元にある記録を知る権利を保障するけれども、裁判所に提出されなかったため知らない記録 ︵ここでは証拠の記録︶に関する知識を、裁判所が裁判所自体のためや訴訟関係人のために手に入れなければならないとい う権利を保障しない。  連邦憲法裁判所は、今になって、あまりにも審査範囲を広範囲に拡大することの危険性を認めた。今や、それ と結合した負担加重を修正しようとしている。すなわち、単純法の規定の違反は、あわせてボン基本法第一〇三 条第一項に違反するわけではなく、個別的事件においては、﹁それによって、同時に憲法上保障された最低不可欠 な法律上の聴聞が侵害されたのではないかどうか﹂の審査を必要とする。つまり、連邦憲法裁判所は、他の場合         と同様、﹁法律上の聴聞について狭義の憲法上に保障された範囲﹂を問う。加えて、連邦憲法裁判所は、審級裁判 所をして、当該憲法裁判所経由の﹁回り途﹂を避けるために、﹁訴訟規定の基本権へ方向づけられた取り扱い﹂を        パ  配慮させた。なぜならば、審級裁判所の業務は、ここでは、根本において連邦憲法裁判所の業務と同じである。        連邦憲法裁判所は、公平な裁判手続への権利を具体化するのはまず立法者の義務であるということをも強調した。  ちなみに、  ここで取り扱われる訴訟上の問題を超えて1連邦憲法裁判所がまさに司法上の基本権に関する裁判を もって、市民の権利保護を決定的に改善したということを指摘したいと思う。司法上の基本権、法治国家原理、そして、ま すます基本権自体にも、﹁実際的な効果のある裁判所の審査請求権﹂、﹁効果的な権利保護﹂請求権、もっと一般的には、﹁検 察官と被疑者の間の手続法上の一種の機会均等﹂を含めて、﹁公平な裁判手続﹂請求権が、それらから取りだされる。裁判 所は、これを訴訟手続法の文言を超えてでも保障しなければならないという。連邦憲法裁判所の裁判は、﹁目下、恐らく、 137

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だイツ蓮窺融裁翫読》幻       パ  もっとも進んでいる訴訟法上の立法﹂であるということがいわれた。裁判所の手続に関する基本権から生ずる保障は、行政 手続へも拡大される  この手に関する裁判は、ミュールハイム・ケルリッヒ原子力発電所事件についての決定とそこでの        へ  少数意見において総括される。  四 根拠となった法律の審査  最後に、判決に対する憲法訴願の目的として、決定の根拠になっている法律の憲法違反を︵間接的に︶主張する こともある。訴願人は、裁判官が規範を憲法違反と考えなかったなどの理由で、ボン基本法第一〇〇条により疑 義提示しなかったので、これまでの裁判所手続において、いまだ行われていない︵﹁具体的な﹂︶規範審査を最終審 の判決に対する憲法訴願の仕方で補填させることができる。間接的に法律に向けられる裁判所の判決に対する憲 法訴願において、直接的に法律に対する憲法訴願の場合の連邦憲法裁判所法第九三条第二項の一年の期間は、あ てはまらない。  ここでは、すべての規範審査の審査範囲を定める原則が妥当する。連邦憲法裁判所は、法律の憲法適合性を全 面的に審査する。各裁判所との関係と同時に、﹁超上告裁判所﹂ではないとする連邦憲法裁判所の姿勢は、判決に 対する憲法訴願に埋め込まれたこの規範審査においては関係がない。むしろ、立法者との関係が、問題となって         いる。ここでも、連邦憲法裁判所は、その審査の比重を区分するための規則を設けた。これを別の関係で取り扱う。  労働裁判所など、各裁判所が妥当なことに裁判官立法を行う場合には、連邦憲法裁判所は、かような裁判官立 138

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戻洋滋学

       法を成文法による規則と同じ審査の対象とする、といい加えなければならない。

 三 審査範囲の決定に際しての憲法上の準則

 裁判所の判決の審査における連邦憲法裁判所の正当な審査範囲の問題は、1裁判に相応して  ある慎重さ をもって述べられなければならない。しかしながら、その問題は、過大評価されるべきではない。確かに、連邦 憲法裁判所と立法者との関係において、権力分立、言い換えれば、権カ所在の問題というような国家諸機能の分 担等の根本問題が取り扱われていることに対して、ここでは裁判機能内における意義ある分業という緊張関係の        パ  はるかにゆるい問題が取り扱われている。これは、一次的には、実体法上の問題ではなくて、機能上の法的問題      である。上告裁判所の役割の拒否および分業の観点は、かような機能上の法的論証である。  それにしても、審査範囲についての連邦憲法裁判所の実際は、その詳細にまでおよばなくても、その根本にお いては、機能上の法的観点によってのみならず、実質的憲法によっても特色づけられている。確かに、あらゆる 法の角度への﹁放射﹂が進められたので、︵﹁狭義の﹂︶憲法と単純法との間の限界はますます難しく、かつ流動的       になったゆえに、1前述のように  その区分は、審査範囲をもはや十分に制御しえない。しかし、その背景 とその基本において、実質的憲法が、ここでもなお制御の要素であり続ける。それに簡単に触れたいと思う。  すなわち、連邦憲法裁判所は、裁判所の手続を広範囲にわたって、ボン基本法第一〇三条第一項の基準により 事後審査する。それに対して、とくに、民事裁判所の判決は、その内容において、それほど詳しく審査されない。 139

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済イツ遵窺融裁繍周

他方また、行政裁判所ないしその他の法による手続における決定は、より厳格に審査される。それに対する一つ の根拠は、それぞれの違った法律分野における訴訟当事者である市民の種々の基本権該当の度合いと、それから 生ずる異なった基本権違反の可能性にある。  例えば、当事者の提訴の拒否や裁判官の釈明義務の行使等手続の運営において、裁判官は、国家権力の担い手 として当事者に対立する。ここでは、その措置は、訴訟当事者としての市民に対する国家的干渉として現われる。 各裁判所の手続運営の基本権適合性を、憲法裁判所が徹底的に審査することがそれに対応する。このことは、あ らゆる裁判所の手続に通用する。  それに対して、民事判決自体は、私人間の争訟決定をなす。裁判官は確かに国家権力の担い手として決定する        パ  が、その作業は市民の権利領域および自由領域を互いに限界づけることにある。その際に、基本権のかかわりあ         いは、一次的には裁判官の干渉に対する擁護ではなくて、私法における基本権の効力である。ここで、周知のご とく、直接的な基本権効力ではなくて、いわゆる間接的な、または﹁基本的な﹂︵第三者︶効力が想定されている ので、裁判官の手続に関する決定による﹁より直接的な﹂基本権被害において可能であり、かつ必要であるよう な包括的な憲法裁判所による審査の余地はない。連邦憲法裁判所が民事判決をその内容に応じて包括的に審査す るのを妨げるのは、私法の領域では基本権適用の度合いが比較的に低いからである。なぜならば、個別的事件に おける私法の解釈と適用に関する拘束力ある指示は、普通、憲法から生じるものではない。  それに対して、行政裁判所の訴訟、その他公法の適用における国家権力が下した決定の法適合性が間われる裁 140

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判所の手続では、普通、基本権の担い手および基本権に拘束される行政部が当事者として対立する。公法上の争 訟関係において、基本権は、直接的に︵﹁具体化された憲法としての行政法﹂︶効力がある。それゆえに、行政裁判所 の判決に対する憲法訴願においては、連邦憲法裁判所の審査範囲が拡大されるし、実際問題としても、連邦憲法        パ  裁判所は、民事判決に対する憲法訴願において起こるよりも、より頻繁に超上告審の役割に陥るのである。それ は批判されるべきではなくて、これらの場合には、根本的には明確に憲法によって特色づけられた争訟の対象で あるということの帰結である。基本権の﹁放射的効果﹂は、民事法よりは公法において大きい。連邦憲法裁判所 は、行政裁判所の判決の審査においても、普通は、その一般論的な限定的事後審査の言い回しを使用する。つま         り、憲法訴願の対象となった決定の根拠には、﹁根本的に﹂間違った基本権の解釈があったかどうか、と。しか し、連邦憲法裁判所は、行政裁判所み決定の審査にあたって、普段よりもそれを守らないようである。その上、 連邦憲法裁判所は、ここで時折、その言い回しを省略し、単刀直入に基本権的事後審査や包摂に移行することも  パ  ある。

庚洋芸学

141

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済イツ運窺茜滋裁艦話周

第六章 その他の手続

A

      パ 

憲法擁護手続

⑨ ボン基本法第六一条、連邦憲法裁判所法第ニニ条第四号、第四九条以下による連邦大統領に対する訴追手 142   続  ボン基本法第六一条は、特別な手続の性質をもつ。この手続においては、刑事訴訟手続とのある表面的な類似 があ6けれども、それでもやはり、その手続は、憲法的性質しかもたない。この手続は、連邦大統領によるボン 基本法、またはその他の連邦法律の故意の違反を処罰するためにある。政治的意義がない規範の違反は、ボン基 本法第六一条による訴追の事由となりえない。連邦大統領は、私的な誤ちによって、政治的に国家元首としての       パ  資格に疑義が生じた場合にも、その誤ちによってのみ連邦憲法裁判所に訴追されえない。  連邦憲法裁判所は、連邦議会、または連邦参議院の提訴に基づいて、ボン基本法第六一条による手続において、 憲法上の地位に関してのみ決定する。その提訴には、連邦議会、または連邦参議院の議員定数の少なくとも三分 の二︵ボン基本法第一二一条︶の多数の賛成が必要である。ボン基本法第六一条第二項、連邦憲法裁判所法第五六 条によって、連邦憲法裁判所は、連邦大統領が法違反をしたかどうかを確定する。加えて、連邦憲法裁判所は、

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連邦大統領に対して、その職の喪失を宣告することができる。場合によっては、三分の二以上の多数が必要であ る︵連邦憲法裁判所法第一五条第二項第二段︶。連邦大統領の同じ行為は、通常裁判所の手続の対象でもありうるし、 その結果はボン基本法第六一条による手続に左右されない。免職の重要さのため、この手続は、連邦憲法裁判所 法第四九条から第五七条をもって、比較的詳細に規定されている。連邦憲法裁判所は、仮の命令をなすことによ って、一時的に大統領の職務の執行を停止することができる︵連邦憲法裁判所法第五三条︶。  この手続が必要であるかどうかという問題がでてくる。しかしながら、連邦大統領が議会に対しても、その他 の機関に対しても、直接的に政治的に責任を負わないので、この手続には、少なくとも理論的必要性がある。

庚洋滋学

 ⑫ ボン基本法第九八条第二項・第五項、連邦憲法裁判所法第=二条第九号、第五八条による裁判官訴追  ボン基本法第九八条第二項は、連邦裁判官に、ボン基本法の原則および連邦の個々の州の憲法的秩序の遵守を 義務づける。職務上、またはその他の場合でのこの義務違反において、連邦議会だけの提訴により、連邦憲法裁 判所は、連邦裁判官を他に転職もしくは退職せしめ、または1故意の違反の場合ー免職せしめることを命ず ることができる。連邦憲法裁判所の権限ある部会は、かような命令を三分の二の多数、つまり、少なくとも六票 をもってなさなければならない︵連邦憲法裁判所法第一五条第二項第二段︶。三分の二の多数の要件は、事実の幅広さ ︵﹁ボン基本法の原則﹂に対する違反︶に相応する。しかしながら、最高の裁判所の管轄およびこの多数の要件が事 実の曖昧さを補うことができるかどうかは、法治国家の原則からみて確かに疑わしいところがある。この手続に 143

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禿イツ遵瓢融裁繍周

おける決定は、これまでにはない。  州の立法者は、ボン基本法第九八条第五項によって、州裁判官に対して、第二項に相応する規則を定めることを委ねられ ている。しかし、その場合にも、裁判官の訴追に関する決定権は、連邦憲法裁判所にのみある。その決定権は、州憲法裁判        所に移行することができない︵ボン基本法第九八条第五項第三段、連邦憲法裁判所法第六二条︶。  ボン基本法第九八条第二項・第五項によって、裁判官の一般的職務規定は、中止、または停止されるのではな くて補完される。ボン基本法第九八条による手続は、一般的職務規定があてはまらない場合に、初めて実行され る。そこで、ボン基本法第九八条第二項・第五項は、終身の裁判官ないし長期にわたって任命された裁判官にと         ってだけ妥当する。これらの場合において、連邦憲法裁判所に決定独占権がある。ボン基本法第九八条第二項第 二段の事実上の前提がある場合にも、連邦憲法裁判所は、処分の言い渡しを義務づけられるのではなくて、処分 が当該憲法裁判所の裁量に任せられる。  ボン基本法第九八条第二項は、裁判官としての国家公務員の採用に関する基準を含まない。 144  日 ボン基本法第一八条、連邦憲法裁判所法第=二条第一号、第三六条以下による基本権喪失手続  ボン基本法第一八条により、連邦憲法裁判所は、連邦議会、連邦政府、または州政府の提訴︵連邦憲法裁判所法 第三六条︶に応じて、基本権上擁護された活動の権利の喪失に関して決定する。被提訴人に不利益な決定は、連邦 憲法裁判所法第一五条第二項第二段により、部会の構成員の三分の二以上の多数を必要とする。連邦憲法裁判所

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は、どの基本権を喪失せしめるか、また、どの期間喪失せしめるかを確定する︵連邦憲法裁判所法第三九条第一 項︶。その喪失は、特別な憲法上の保障に限定される。連邦憲法裁判所法第三九条第二項により、連邦憲法裁判所 は、選挙権および被選挙権をも剥奪することができる。  この手続には、今まで、実際的な意義がなかった。連邦憲法裁判所は、二つの提訴を不十分な理由のため却下  ︵鵬︶ した。  しかしながら、その実体法上の趣旨において、ボン基本法第一八条には、﹁戦闘的民主主義﹂のための構想的で        パ  本質的な憲法規範の意義がある。

捷洋滋学

 四 ボン基本法第二一条第二項第二段、連邦憲法裁判所法第=二条第二項、第四三条以下による政党禁止手続       パ   ボン基本法第二一条第二項第二段による政党禁止手続は、﹁組織的な憲法敵対性﹂に向けられ、かつ予防的な憲 法擁護のためにある。決定独占権が連邦憲法裁判所にある。すなわち、連邦憲法裁判所のみが、建設的な作用を もって、政党法第二条の意味における政党の憲法違反に関して、また、それに伴う解散︵連邦憲法裁判所法第四六 条第三項︶に関して決定しうるのである。﹁建設的﹂というのは、ここでは、連邦憲法裁判所によって禁止された 政党の元の党員や支持者にとって、その資格から、またはその支持によって、事後になって不利益が生じてはな らないということを意味する。なぜならば、連邦憲法裁判所が禁止を宣告しないうちは、政党は、合憲とみなさ れる。 145

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禿イツ運荊融裁繍周

 ボン基本法第二一条第二項第二段による手続は、連邦議会、連邦参議院、または連邦政府によって開始されう る︵連邦憲法裁判所法第四三条第一項︶。これらの憲法機関にとり、提訴をなす義務はない。提訴は、政治的ご都合 の観点から行ってもいいし、行わなくてもよい。予備手続︵連邦憲法裁判所法第四五条︶および本案手続の遂行の後 に下される決定で、連邦憲法裁判所は、政党の憲法違反を確定する︵連邦憲法裁判所法第四六条第一項︶。そのため には、連邦憲法裁判所法第一五条第二項第二段により、部会における三分の二以上の多数が必要である。この確 定は、政党の解散だけではなくて、代替組織の禁止︵連邦憲法裁判所法第四六条第二項︶およびその議員の議席の喪        パ  失︵連邦選挙法第四六条第一項第五号︶をも伴う。ボン基本法第二一条第二項およびそこに根拠づけられた連邦憲法        裁判所による特別な禁止手続は、政党にとり、当該基本法第九条第二項に対する特別法である。        パ   今までに行われた二つの手続は、成果があった。一九五五年の最後の決定以来、政党禁止手続は、もはや開始         されなかった。しかしながら、ボン基本法第二一条第二項第二段の規定は、その間に廃れたわけではない。

   B ボン基本法第四一条第二項、連邦憲法裁判所法第二二条第三号、第四八

    条以下による選挙審査手続

 連邦憲法裁判所の選挙審査には、連邦議会による選挙審査手続が先行する︵ボン基本法第四一条第︸項︶。選挙の       ハ  有効性、または連邦議会議員の資格の取得もしくは喪失に関する連邦議会の決定に対して、連邦憲法裁判所への          パ  ﹁訴願﹂が認められる。 146

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 提訴権者は、連邦憲法裁判所法第四八条に列挙されている。選挙審査は、憲法訴願手続とは違って、客観的手    ハ  続である。それゆえに、主張された法違反によって、選挙されるべき団体の法律が定めた構成に対して影響があ       パ  りうる場合にのみ、訴願が成功しうるのである。選挙審査手続の中で、選挙法の憲法適合性が付随的に審査され ︵謝︶ る。  連邦選挙法第四九条により、選挙手続に直接的に関係する決定および措置に対する憲法訴願が除外される。そ        の意味において、ボン基本法第四一条第二項は、手続法上特別法とみなされうる。

庚洋滋学

147

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みイツ遅蹴融裁繍周

第五部 決定の言い渡しとその効果

 連邦憲法裁判所法は、手続の種類ごとにその適格要件およびその決定の言い渡しをそれぞれ定めている。しか しながら、別々の法律上の規定にも拘わらず、決定の言い渡しは、内容的には決定が下される手続の種類によっ てではなくて、決定の目的によって決まる。例えば、あらゆる規範審査の決定において、それは、抽象的、また は具体的規範審査の過程でもしくは憲法訴願の過程で規範審査となっていようと、その決定の言い渡しは同一で ある。それゆえに、第四部の適格要件の取り扱いと違って、以下の描写は、手続の種類によってではなくて、決 定の目的︵憲法機関の問の争訟、裁判所の判決に対する憲法訴願、規範の審査︶によって整理される。もっとも重要な 手続の種類における決定の言い渡しだけを取り扱うことにする。  連邦憲法裁判所は、稀なことに、口頭弁論が行われるときは﹁判決﹂によって決定し、それ以外は、﹁決定﹂と いう形式をとる︵連邦憲法裁判所法第二五条第二項︶。

   A 不適格性および理由がない場合の決定の言い渡し

 連邦憲法裁判所法は、提訴の不成功の場合における決定の言い渡し︵決定主文︶の内容を定めない。それに関連 して、連邦憲法裁判所法第九三a条第三項および第四項による憲法訴願の不受理と当該憲法裁判所法第二四条に 148

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戻洋滋学

       こ よる提訴の却下だけが、定められている。その他の場合に、連邦憲法裁判所は、一般の裁判所の実例に頼る。不        パこ       ハ ロ 適格な疑義提示ないし提訴は、判決主文の中で、そのようなものとされないし不適格なものとして﹁棄却﹂、また    パざ       こ は﹁拒否﹂され、理由のない提訴は﹁却下﹂される。  連邦憲法裁判所は、規範審査の決定において、提訴を理由のないものとして却下することに限る必要はなく、        を 同時に規範のボン基本法との一致を確認することができる︵連邦憲法裁判所法第三一条第二項︶ということに、特殊 性がある。連邦憲法裁判所は、恐らく、憲法訴願の範囲内では、連邦憲法裁判所法第三一条第二項による決定の        パヱ 一般的拘束力を避けようとしてこの方法をとらない。  規範一致の確認においては、たびたびその規範はボン基本法と﹁⋮⋮限り﹂、一致するという言い方が使われる。例え ば、ある決定主文は、次のようであった。すなわち、﹁母性保護法第八a条第一項第二号は、⋮⋮母性保護の期間の開始に       パヱ 職業に従事しなかったし、失業中でもなかった母親が出産手当受給から除外されている限り、ボン基本法と一致する﹂だっ た。または、民事訴訟法第八五条第二項は、﹁庇護権者としての承認に関する行政法上の手続でも、解怠期間回復の問題に       すレ おいて、訴訟代理人の過失が当事者の過失と同様にみなされる限り﹂、ボン基本法と一致するものと宣言される。この言い 方は、誤解されなくはない。すなわち、連邦憲法裁判所は、規範がその限りにのみボン基本法と一致するが、それ以外では 一致しないということをいおうとはしな憧。そうではなくて、規範のどのような事件への適用ー一定の状況での母親、行       パ  政法上の手続、別なものはないーのみが、審査の対象であったかを述べようとしている。それゆえに、その﹁限り﹂の言 い方は、最初の事件の形態に由来する。つまり、具体的規範審査の手続において、規範が最初の事件にとり決定にとって重 要である限りにのみ審査される。その限りにのみ、規範の一致が確認される。そこで、最初の事件は、決定主文を経て連邦 官報に載せられることさえある。 149

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かイツ齢融裁繍周

   B 機関争訟手続と機関争訟類似の手続における決定の言い渡し

 機関争訟および機関争訟類似の手続における決定の言い渡しは、﹁被提訴人の異議を唱えられた措置、または不 作為がボン基本法の規定に違反するかどうか﹂を連邦憲法裁判所が確認するということである︵連邦憲法裁判所法      パど 第六七条第一段︶.それは、通例、連邦争訟にもあてはまる︵連邦憲法裁判所法第六九条、第七二条、第七四条︶。つま り、連邦憲法裁判所は、確認だけをする。連邦憲法裁判所は、憲法機関を義務づけないし、それらに何かをする ように申し渡さず、また、通例、その確認を執行もしない。法律は、憲法機関が連邦憲法裁判所の単なる確認の        パお ﹁合図﹂で要求されたものを行い、またはしないであろうということを前提にする。連邦争訟において、連邦憲 法裁判所は、義務づけを宣告しうる︵連邦憲法裁判所法第七二条第一項第二号および第三号︶。

   C 判決に対する憲法訴願における決定の言い渡し

 連邦憲法裁判所法第九五条第一項第一段により、連邦憲法裁判所は、憲法訴願が認められるべきである場合に、       パぎ ﹁ボン基本法のどの規定が、また、どの行為およびどの不作為によって侵害されたか﹂を決定主文においてまず 確認する。連邦憲法裁判所は、連邦憲法裁判所法第九五条第一項第二段により、異議を唱えられた措置の繰り返 しが憲法違反であるということを同時に宣告しうる。連邦憲法裁判所法第九五条第一項は、公権力のどの措置を 対象にもとうと、あらゆる憲法訴願に妥当する。 150

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莫離芸学

 さらに、連邦憲法裁判所は、連邦憲法裁判所法第九五条第二項によって、決定主文の中で、異議を認めた決定 の破棄を宣告する。連邦憲法裁判所法第九五条第二項における﹁決定﹂は、そもそも、当該憲法裁判所法第九〇 条第一項により、憲法訴願の対象である公権力のすべての措置である。しかし、決定が法律であるならば、連邦 憲法裁判所法第九五条第三項の特別規定が適用される。  連邦憲法裁判所法第九〇条第二項のため、直接執行部の決定に対する憲法訴願がめったにないので、当該憲法 裁判所法第九五条第二項前段にとって、おおむね裁判所の判決と決定しか残らない。これらは、全部、または一  ど 部破棄され、権限ある裁判所に差し戻される。連邦憲法裁判所は、場合によっては、当該事件における別の裁判 所の決定、例えば、上告審の決定も根拠がなくなったということを同時に宣告する。連邦憲法裁判所は、これを、        パ  場合によっては、決定主文の中で、場合によっては、理由の中で行う。  そこで、判決に対する憲法訴願の判決主文は、例えば、﹁ミュンヘン上級地方裁判所の決定は、⋮⋮訴願人のボン基本法 第一二条から生ずるその基本権を侵害する。その決定は、破棄される。その事件は、ミュンヘン上級地方裁判所に差し戻さ れる。ー連邦通常裁判所の決定は、⋮⋮根拠がない。  バイエルン州は、訴願人に⋮⋮必要な経費を補償しなければな    お らない﹂と、なっている。  連邦憲法裁判所は、判決に対する憲法訴願において、裁判所への差し戻しなしに、その事件をみずから最終的       ヨ に決定する権限を取得した。この法の適用は、法律の文言を超える。その際、連邦憲法裁判所は、当該憲法裁判 所によって展開された憲法上の基準の適用において、権限ある裁判所に決定の余地がなくなるゆえに、差し戻す 151

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六イツ遵瓢鰍裁繍周

ことは﹁あまり意味がない﹂という状況の特殊性を引き合いにだす。なぜならば、権限ある裁判所は、連邦憲法        ハお 裁判所の決定を繰り返すしかないからである。しかしながら、これを判断するのは、権限ある裁判所の任務であ って、連邦憲法裁判所の任務ではない。  判決に対する憲法訴願が同時に︵間接的︶に裁判所の決定の基礎になっている法律に対して向けられ成功する限 り、連邦憲法裁判所は、連邦憲法裁判所法第九五条第三項第二段によって、決定の中で、裁判所の決定の破棄と 並んで規範の無効ないし不一致を宣告する。しかも、その宣告を判決主文の中で、ゆえに一般的に拘束力のある 効果をもって行う︵連邦憲法裁判所法第三一条第二項︶。それは、法律に対する直接の憲法訴願︵連邦憲法裁判所法第 九五条第三項第一段︶、または他の規範審査の提訴︵連邦憲法裁判所法第七八条、第八二条第一項︶と同様に、規範審 査の決定である。

   D 規範審査における決定の言い渡し

152  目  次  原則。憲法に違反する規範の無効宣言 e 憲法に違反する法律の遡及的無効と法律上当然に無効 口 一部無効 日 規範条項の削除のない一部無効宣言 四 無効宣言の法的効果︵連邦憲法裁判所法第七九条︶

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萸離芸学

  @ 立法者の義務づけ   ㈲ 出発点となった事件と類似の事件における手続の停止   ⑥ 憲法違反の法律の適用可能性。裁判の叙述    ⑯ 最初の見解    ㈹ 無効と不一致の同じ効果    @ 新しい裁判の結果として広まった不安   ⑥ 大多数の事件における決定類型の不必要性   ㈲ 規範の存在と適用可能性との間の相違   ◎不一致宣言の効果    ㈱ 規範の存続    岡 通常の措置として適用の阻止。裁判所の命令    ㈹ 法律の改正までの手続の停止   ⑥ 決定類型の適用基準  e 適用形態 三 決定類型n﹁いまだ憲法に適合する﹂法律  ㈲ 構想的な考慮  四 法的効果︵以下次号︶  日 適用形態︵以上本号︶  口 用語について  e 連邦憲法裁判所による創造 二 決定類型一憲法に違反する規範の不一致宣告の限定 153

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凶’イツ遵窺融裁筋灘御

     四

伍)(四)口に)←) に) 性格づけ  拘束力  憲法に適合する解釈の優先原則 決定類型.法律の憲法に矛盾しない解釈  法的効果  ﹁憲法に方向づけられた解釈﹂との相違  憲法に矛盾しない解釈の限界 154

 一 原則”憲法に違反する規範の無効宣言

 連邦憲法裁判所はそのために設けられた手続の種類︵抽象的、または具体的規範審査、法律に対する直接・間接の憲 法訴願︶において、当該憲法裁判所によって審査される法律が憲法に違反するという確信に到達するとき、当該憲 法裁判所は、その法律を無効と宣言する。それは、連邦憲法裁判所法第七八条第一段、第八二条第一項、第九五 条第三項第一段において、そのように規定されている。法規命令や規則にとっても、同様である。この原則の例 外が、以下取り扱われる。規範審査決定は、連邦官報に公布され、一般的に拘束力のある効果ないし﹁確定力﹂ をうる︵連邦憲法裁判所法第三一条第二項︶。 e 憲法に違反する法律の遡及的無効と法律上当然に無効

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庚洋芸学

 この法律上の規定は、憲法違反の法律が無効であるというドイツの伝統的な見解を前提にする。  すでに、一九世紀の前半に、憲法違反の法律が初めから無効であるというもともと連邦憲法裁判所法の基礎になっている       パ  今日の支配的な考えを創りだしたのは、︵付随的な︶裁判官の審査権を説明し、正当とする意図であった。すなわち、無効 の法律は、存在しないし、したがって、裁判官は、それを適用する必要もないし適用することもできない。裁判官による不 適用は、この見解において、権力分立に違反しない。無効の規範の不適用は、裁判官の規範服従にいささかもかわりはな い。        パ   連邦憲法裁判所が言い表すように、憲法違反の法律は、﹁ボン基本法と一致しないゆえに、無効﹂である。憲法        パむ 違反の法律は、最初から︵遡及的に︶、かつこれを別に形成する行為なしに︵法律上当然に︶、法上無効である。この 基本的で重要な原則は、奇妙なことに、ボン基本法にも、連邦憲法裁判所法にも、また、現行法のどこにもはっ きりと規範として言い表されていない。その上、連邦憲法裁判所法第三一条第二項によると、憲法違反の法律は、 無効としてではなくて、ボン基本法とただ﹁一致しない﹂とみなされる。ともかく、その原則が、連邦憲法裁判 所法第七八条第一段に現われる。その原則は、ボン基本法第一〇〇条第一項第一段の規定の前提でもある。そこ では、裁判官は、その﹁有効性の有無﹂が問題である限り、憲法違反と考える法律の疑義提示を義務づけられる。       パま つまり、ボン基本法第一〇〇条第一項第一段は、憲法違反の法律が﹁無効﹂であるということを前提にする。そ こで、憲法違反の法律が無効であるという文章が、憲法上の原則︵ボン基本法第一条第三項、第二〇条第三項、第七        パま 九条第一項第一段、第一〇〇条第一項、第一二一二条第一項︶としてみなされるし、みなされるべきである。  この原則が、法論理的に、必然的ではないということをオーストリア法学および法実例が示す。すなわち、一九七五年の 155

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みイツ遵瓢.融裁繍周 文言における連邦憲法第一四〇条によると、オーストリア憲法裁判所は、憲法違反の法律を破棄する。その破棄は、その公 示をもって発効︵遡及的に︶し、または公示から一年間を超えてはならず、連邦憲法裁判所の決める時点において、初めて 発効することでさえある。それまで、憲法違反の法律は有効であり、連邦憲法第八九条によって、執行部にも、裁判所に       パお も、その間は審査権がない。オーストリアの規定は、恐らく、憲法が違反する規範の破棄に関する規定を含む以上、違憲規 範の効力を憲法が規定するというテーゼを主張するケルゼンにさかのぼるであろう。すなわち、﹁いわゆる﹃憲法違反の﹄       パ  法律は特別の手続で破棄しうる法律ではあるが、憲法に適合する﹂。  ドイツの見解によれば、連邦憲法裁判所は、憲法に違反する法律を破棄せず、それを破棄しない。つまり、連 邦憲法裁判所は、無効を︵宣言的に︶確認するだけである︵無効論︶。          ヴァイマール時代にはほとんど論争がなかった憲法違反の法律の無効に関する原則は、︵もはや︶異論がないわ けではない。その原則には、いわゆる破棄可能論が対立している。ボン基本法下でのその出発点は、行政の規範 審査権能の問題であった。憲法違反の法律の法律上当然に無効の原則が否定された場合に、それに対して、法理       パむ 上、説得力をもってより反駁されえたのである。しかしながら、単なる破棄可能を支持する決定的な理由が、ボ ン基本法第一〇〇条第一項に求められる。疑義提示義務は、憲法違反の法律が法律上当然に無効ではないという ことを意味する。なぜならば、無効の場合、裁判官は、一時的に法律に拘束されうるわけではなくないし疑義提       パ  示を義務づけられうるわけではないからである。加えて、誰もがいつでも法律を無視することが許されるわけで はないので、法的安定性の考えからも、単なる破棄可能性が根拠づけられる。憲法に違反する規範の効力によっ て、憲法の部分違反がありうる。なぜならば、ボン基本法第一〇〇条で、まさに憲法が一時的有効性を認めてい 156

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東撃蹉学

     パ  るからである。          廃棄可能論に対して、二つの観点が提示されるべきである。ボン基本法第一〇〇条第一項は、すでに述べたよ うに、有効な法律と無効な法律との判別、したがって、憲法に違反する規範の無効性の法的効果を前提にもつ。 すなわち、その判別論は、裁判官が憲法に違反する規範を1無効のものとして1適用しえないため、適用し ないということをまさに前提にする。それゆえに、ボン基本法第一〇〇条第一項は、疑義提示義務を定めている。 その他に、無効論の広範囲におよぶ効果および無効論が憂慮する法的不安定性は、大体において、連邦憲法裁判 所法第七九条︵以下日参照︶の法的効果に関する規定によっても、行政決定の公定力および裁判所の決定の確定力 に関する原則を用いても解消できる。それゆえに、法律上当然に無効論が堅守されるべきである。  それにしても、連邦憲法裁判所は、無効論を堅守しながらも、厳格な無効論の緩和のために、不一致宣告︵以下 二参照︶という制限の決定類型をもって、その自己の途を歩む。この類型は、ボン基本法第一〇〇条第一項による 疑義提示をも含む。有効であるものを将来のためにはっきりと規定する権限を憲法裁判所に与えるオーストリア のより直接的な規定は多くの利点をもってはいるが、ドイッ連邦共和国においては、憲法上の規定なしではでき ない。

ロ 一部無効

連邦憲法裁判所は法律上の授権はないが、 法律の一部無効宣言を使っているし、それは妥当である。一部無効 157

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かイツ遁窺融裁繍幻

       む が原則である。法律の一つ、またはいくつかの規定の無効は、原則として、全体の法律の無効をもたらさない。 一部無効の形態に関して、無効という概念は、法律の全体、または法律の範囲内で︵完結した︶規則もしくはある 法律の範囲内で特別な問題について︵完結した︶法律改正のための法律を含みうる。すなわち、この概念の範囲 は、相対的であるということが考慮されるべきである。一部無効は、規範の文言の削除という意味である。  一九八一年の国家賠償法は、本質的部分において、連邦に必要な立法権能が欠けていたし、法律の権能に反しおよび権能 に適合する要素への分裂が可能と思えず、しかも、その他の法律の規定が権能に反する中心規範と切り離すことのできない       パゑ 関係にあったので、全体として無効と宣言された。それに対して、一九八二年の国勢調査法は、個々の条項においては不一         致、かつ無効であり、いくつかの各条においては一致したが、補完の必要があったし、それ以外は一致した。  一部無効宣言は、場合によって、判決主文において、各条、各項、各段、または各段の部分の表示によって行 われる。一部無効は、場合によって、﹁の限り﹂の文章を用いて間接話法で、無効の部分を繰り返すことによって    ハお 行われる。この内容的繰り返しは、個々の言葉の削除よりもより明確でありうる。  ここで、今まで実際にその重要性を欠くので、ついでに触れることにとどまるが、連邦憲法裁判所は連邦憲法 裁判所法第七八条第二段により、決定の対象を拡大することもできる。すなわち、連邦憲法裁判所は、訴願の対 象となった規則と同じ理由から、憲法違反である訴願の対象となった法律の別の規定をも同じく無効と宣言しう る。 158

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戻洋滋学

 日 規範条項の削除のない一部無効宣言  元来無効宣言は、条項に適用されている。無効と宣言された条項ないし条項の一部は、書かれていないものと みなされるーいわゆる﹁量的な︵一部︶無効﹂である。しかしながら、連邦憲法裁判所は、一致宣言においてす でに現われた形態を無効宣言でも用いる。すなわち、連邦憲法裁判所は、規範を一定の条項の一部ないし言葉に       パ  おいてではなくて、規範条項に別に明らかにされていない事件の形態に関して無効と宣言する。﹁規範条項の削除       む のない量的な一部無効宣言﹂、または﹁文言に触れない無効宣言﹂が使われている。ここでも、﹁⋮⋮限り、⋮: 無効﹂という決定主文が、用いられる。例えば、次のような決定主文がありうる。すなわち、﹁大学外郭法第三二 条第二項第一段第五号による転部規則は、一九七四年の冬学期までに、当時存在した転部の可能性をあてにして、 別の専攻科目を勉強し始めた大学生をも含めて、医学部への転部に対してもとの専攻科目の意味ある補完をなす         という条件を設ける限り、無効である﹂。法律の文言は変更されていないが、一定の適用形態がボン基本法と一致        しないものとし、ゆえに無効のものとして切り離される。規範の条文は、1一般条項と同じようにー﹁一連 の規範﹂︵従属規範︶を現わすことができる。これらの従属規範のうちの一つ、またはいくつかは、その場合、無       ハ  効と宣言される。  規範条項の削除のない無効宣言は、実際的にみて、後に取り扱う憲法に矛盾しない解釈と一致するが、解釈上 はそうではない。すなわち、憲法に矛盾しない解釈において、一定の可能な解釈が憲法違反と宣言されるが、こ こでは一定の適用事件がそれを憲法に矛盾しない解釈の過程で、すでに規範の適用領域から取りはずされえない 159

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材ツ遵瓶鰭裁漸雛周

限り、憲法違反と宣言される。  第一部会と第二部会が憲法違反の除去のための可能な方法に関して意見が一致しなかったため、連合部会の決定となっ た連邦憲法裁判所判例集第五四巻二七七頁以下による次の例は、この二つの法形態の類似性を示す。すなわち、訴願の価値 が四〇、OOOマルタを上回る財産権の請求に関する法争訟の上告裁判所は、その事件が基本的に重要性を有しない場合 に、上告の受理を拒否してもよいということを一九七五年の文言における民事訴訟法第五五四b条第一項は規定する。連邦 憲法裁判所︵連邦憲法裁判所判例集第四九巻一四八頁以下参照︶に同意して、法治国家原理および平等原理は、法律上の手 段が実際的には成功の見込をもつにも拘わらず、基本的に重要でない事件の理由で、上告を決定のために受理しないことを 禁ずるという考えであるならば、規範に対してこの見解がいかに主張されうるかという問題が残る。普通の手段である条項 の無効宣言を避けようとするならば、憲法に矛盾しない解釈および規範条項の削除のない一部無効宣言という方法がある。 その問題を解釈のレベルで解決するならば、基本的に重要ではないすべての上告が拒否されてもよいという民事訴訟法第 五五四b条第一項の文言によって可能である解釈は、憲法に矛盾しない解釈の方法において排除される。連邦憲法裁判所の 連合部会は、このように決定した。すなわち、﹁民事訴訟法第五五四b条第一項は、最終結果において成功への見込をもっ ている上告の受理が拒否されてもよいという意に解釈されるべきではない﹂︵連邦憲法裁判所判例集第五四巻二七七頁およ びそれ以前に、連邦憲法裁判所判例集第四九巻一四八頁−第二部会︶。それに代わって、民事訴訟法第五五四b条第一項 を結果において見込がある上告の適用事件に適用することは、規範条項の削除のない民事訴訟法第五五四b条第一項の無 効宣言によっても排除されえた。すなわち、﹁民事訴訟法第五五四b条第一項は、その規定が暫定的な審査の結果、最終的 には成功の見込を有している上告にも適用される限り、ボン基本法と一致しないゆえに、無効である﹂。ーその結果は、 実際には同じである。その方法は、︻方では、憲法に矛盾しない解釈を用いて規範を維持し、他方では、規範条項の削除の ない無効宣言を用いる。後者も、いうまでもなく、結果において、規範の維持を意味する。両方の場合においても、規範の 範囲が限定された。それゆえに、両方の決定類型に対して、憲法裁判所が立法者の意思をあまりにも変更するという同じ疑 義が提起される。規範条項の単純な無効宣言の方が正しいものではなかったであろうかという疑念が根強く残る。その場合 160

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庚洋滋学

に、立法者は、すぐに新たな規定を創設しなければならなかった。その発布まで、あらゆる上告が受理されなければならな かった。それは、立法者に対してすばやく行動するよう必要な圧力を与えたはずである。        パも  文献が規範条項の削除のない無効宣言の問題を取り扱う限り、批判が多い。一方では、一部無効宣言そのもの が問題にされる。すなわち、規範を無効の部分と憲法に適合する部分に分けることで、立法者によって創設され る規定は、一部、裁判活動の限界に近づいていきながらも、他の規定によって置き換えられる。他方では、連邦 憲法裁判所が包括的無効宣言をもって立法者を﹁煩わさない﹂意図によって、規範のこのような内容的変更の資 格をどの程度認めているのかは、より狭義の問題である。この問題は、後述の﹁憲法に矛盾しない解釈﹂のとこ ろで、再び取り上げる。  規範条項の削除のない無効宣言というこの形態は、かなりの理解の難しさと範囲設定の難しさを含むといわず にはおかれない。はっきりとした説明の鍵は、いまだみいだされていない。  ここでは、それについて総括的に指摘すると、﹁限り﹂の文章は、連邦憲法裁判所の決定主文において、いくつ かの異なった関係にある。  すなわち、1﹁限り﹂の文章をもって、一定の適用事件に限定されるという一致宣言︵前述A︶   ﹁限り﹂の文章が、無効の条項部分を間接話法で指称するという一部無効宣言︵前述一の口︶ i﹁限り﹂の文章の中で、規範条項において直接的表現はないが、その適用が憲法違反である適用事件が記述 されるという規範条項の削除のない無効宣言︵ここで、一の日︶。 161

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内イツ遵窺蓄蹉裁編周  四 無効宣言の法的効果︵連邦憲法裁判所法第七九条︶  憲法に違反する規範の遡及的無効宣言からして、その間にこの規範に基づいて下されたあらゆる行為が除去さ れるということが、論理的帰結として生ずるはずである。抽象的、または具体的規範審査および法律に対する間 接の憲法訴願による無効宣言にとり期限が設けられていないということに鑑みて、この帰結は、実際には存在し ない。連邦憲法裁判所法第七九条は、無効宣言、そして、不︸致宣言の法的効果をも、その間に下された行為の 存続に関して遡及的無効の解釈上の主張がほとんどなくなり、実際的な結果において、遡及的無効のテーゼが廃 棄可能論に限りなく接近するように定めている。  すなわち、後になって、無効、または不一致と宣言された法律に基づく確定力ある刑事判決に対して再審が許 される︵連邦憲法裁判所法第七九条第一項︶。その他、もはや取り消すことができず、または憲法訴願の対象にもな らなかった決定は、関係がない︵連邦憲法裁判所法第七九条第二項第一段︶。その決定がいまだ執行されていない限り にのみ、その執行は、許されない︵連邦憲法裁判所法第七九条第二項第二段︶。判決に基づく執行は、民事訴訟法第 七六七条により阻止されうる。公法上の賠償請求を含めて、不当利得による請求は、排除される︵連邦憲法裁判所 法第七九条第二項第四段︶。つまり、後で無効と宣言された法律に基づいてすでに支払われた税金は、返済されな い。但し、納税者が課税決定に対して、いまだ確定力をもって決定がなされていない異議申立てをした場合は別 である。 162

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 それゆえに、連邦憲法裁判所法第七九条第二項は、場合によっては、後の規範無効宣言の恵をも受けるために、いかなる 理由であろうと、負担を加える行政行為に対して異議を申し立て、国家への支払うべき給付をできる限り長く引き延ばすこ とをも勧めていると思わせるーこれは、連邦憲法裁判所法第七九条第二項の規定の必ずしも歓迎すべきではない結果で ある。  連邦憲法裁判所法第七九条は、法的安定性と実質的正義との対立の中で、通常憲法違反の状態を選んで、個別        的事件における正義を捨てる形で決定をなす。この硬直さは、さもなければ、見通しがつかない結果のため、法 関係にとって必要であると思われる。しかしながら、それは、異論が多く、しかも、多くの場合、その結果にお       パお いて不満を残す。         お       パ 

 二 決定類型”憲法に違反する規範の不一致宣告の限定

 これから描写しようとするこの決定類型は、困難な分野である。前もって、いくつかの引用によって、このことを暗示さ        パ  せたいと思う。すなわち、﹁この適用可能性の多様性のため、憲法違反の宣言がとらえにくい﹂。﹁決定の実際は、一部動機        ゼ        がみあたらなく、多くの場合、この決定類型の理由のない利用によって特徴づけられる﹂。﹁その混乱は、最大限である﹂。

戻洋滋学

 e 連邦憲法裁判所による創造  連邦憲法裁判所は、連邦憲法裁判所法に初めから規定されている憲法に違反する規範の無効宣言に加えて、も う一つの決定類型を文字通り創りだした。それによって、法律を憲法違反と宣言しながらも、その無効を確認し 163

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み’イツ遵窺灘裁繍周 ないまま︵﹁不一致にすぎない﹂︶とする。遡及的無効宣言から生ずる効果が、避けられるためである。  連邦憲法裁判所は、この決定類型を法律上の授権なしに、いや厳密にいえば、法律に違反して創りだしたとい うことをまずいっておかなければならない。なぜならば、連邦憲法裁判所法は、一九七〇年まで、憲法違反を︵有 無をいわせず︶遡及的に無効ないし無効と関連づけたし、叙述された連邦憲法裁判所法第七八条、第八二条第一 項、第九五条第三項において、今日なおそれを前提にしている。憲法と一致しないが無効ではない法律という形 態を法律的に認めたのは、かかる裁判があったからである。一九七〇年に、この決定類型が、連邦憲法裁判所法 に受け入れられた︵連邦憲法裁判所法第三一条第二項第二段および第三段、第七九条第一項︶。しかしながら、連邦憲法 裁判所法は、この決定類型について承知しているにとどまり、その効果を断片的にのみ定めている︵連邦憲法裁判 所法第三一条第二項、第七九条第一項︶。しかし、連邦憲法裁判所法は、依然として、どのような場合にこの類型が        おロ あてはめられるべきであるかを定めていない。つまり、連邦憲法裁判所法は、その条件を定めていない決定の法 的効果を定めている。その上、法律の文言は、統一的ではない。すなわち、連邦憲法裁判所法第七八条第一段に おいて、コ致しない﹂法律が無効と宣言されるのに対して、第三一条第二項、第七九条第一項−第七九条第二 項とは違ってーは、一致しない法律と無効の法律とを区別する。連邦憲法裁判所は、その決定主文の中で、一 方では、コ致しない﹂法律の文言を使用し、他方では、﹁一致しない︵ゆえに︶、無効の﹂法律の文言を使用す る。その決定類型は、裁判によると、あらゆる規範審査決定においてなされうる。  ちなみに、連邦憲法裁判所は、もともとの決定主文の中で不一致宣言を宣告したのではなくて、理由の中で無効宣言の放 164

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         パ  棄を説明しただけである。連邦憲法裁判所判例集第一三巻二四八頁︵二四九頁︶の決定が、例外をなした。ここでは、初め て法規命令が、決定主文の中で﹁憲法違反﹂と宣言された。        む  一九八O年以来、統計的には、無効宣言と不一致宣言は、均衡すら保っている。一部無効︵前述一の口︶ないし         規範の削除のない︵一部︶無効宣言︵前述一の日︶に関する原則は、不一致宣言にもあてはまる。

庚離瑳学

 ⇔ 用語について       パま  文献上、この決定類型に関して、一般的に、恐らく、マウラーの論文にしたがって、無効宣言と憲法違反宣言         とを区別し、またはペスタロッツァの論文にしたがって、無効宣言と﹁単なる憲法違反の﹂法状態ないし﹁単な           る憲法違反の確認﹂とを区別するというような用語が、普通となった。ここでは、この用語をそのまま受け入れ ない。むしろ、以下の用語を使用することにした。すなわち、憲法に違反する規範は、常に、そして、無条件に 憲法違反である。憲法違反の結果として、連邦憲法裁判所は、規範を無効と宣言するか︵無効宣言︶、それとも不        一致宣告に限定するか︵不一致宣言︶である。この用語は、それがもっとも簡単で、もっとも明瞭であるからここ で提議する。  用語を明らかにするために付け加えよう。ボン基本法第一〇〇条第一項により、裁判官は、ある規範を﹁憲法違反﹂と考 える場合に、連邦憲法裁判所に疑義提示しなければならない。裁判官は、無効宣言になると思っていようと、または不一致        り 宣言になると思っていようと提示しなければならない。裁判官は、規範の違憲確認をその憲法に矛盾しない解釈によって回 避しうる場合に、疑義提示しなくてもよい。しかしながら、ボン基本法第一〇〇条第一項は、法律の憲法違反性の法的効果 165

(33)

みイツ翻灘裁繍周

につき、前述の区別を使用していない。ボン基本法第一〇〇条第一項は、憲法違反の法律が無効である︵﹁有効﹂︶というこ とを前提にする。さらに、ボン基本法第九三条第一項第二号は、また別に、法とボン基本法とのコ致﹂および州法と連邦 法との一致という言い回しを使っている。

 国 適用形態

 この決定類型の出発点になったのは、特別な適用形態であった。すなわち、ある法律、例えば、所得税法はあ るグループの市民を優遇するが、適切な理由もなく他のグループの市民をその優遇から排除するーいわゆる平       ハ  等に反する優遇の排除である。連邦憲法裁判所が不利に扱われたグループにその優遇を判決の言い渡しによって 直接に宣告しうるのは、例外的場合にのみ可能である。こうするためには、みずから優遇者の範囲を拡大したと        パ  証明されうることが前提である。しかしながら、全体の法律の無効宣言は、場合によっては、致命的な結果につ ながる。極端な場合は、例えば、所得税法において、立法者による新しい規定の制定まで、国庫は、この規定に 基づく全体の税収入を断念しなければならないことになる。いずれにせよ、優遇されたグループも、一時的にそ の優遇を断念しなければならない。要するに、無効宣言の断念は、憲法違反の法律の︵一時的、かつ部分的な︶適 用を可能にするためである。立法者の不作為のみが憲法と一致しない場合には、この形態が適切である。その場 合にも、この法律は、その言い表された要素をもって、場合によっては、︵引き続き︶存在しうるけれども、ボン         パ  基本法と一致しない。 166

(34)

庚洋滋学

 例えば、ある観点からすれば、俸給を不適当に規定しているので、ボン基本法第三三条第五項と一致しない公務員俸給法 は、無効ゆえに、適用不可能であってはならない。さもなければ、俸給の支払いのために、法律上の基礎が必要であるの        パむ で、一時的に俸給が全く支払われえないことになる。  他の場合と同様に、無効宣言の断念によって、法律上の空虚︵または文献で多く指摘され、実際にはほとんどあり そうにない法律上の混沌︶を回避することが、目標である。  連邦憲法裁判所は、﹁ただ﹂一致しないが無効ではない法律のこの決定類型を一層頻繁に使用する。この類型 は、解釈上でまだ限定でき、かつ長い間に文献にも受け継がれた平等に反する優遇の排除から独立した。そこで、         ﹁立法者にとって、憲法違反を除去するためにいくつかの可能性が残されている場合に﹂、連邦憲法裁判所は、無 効宣言を断念した。保持すべき立法者による事情整備の自由へのこの指摘は、いまになって﹁一致しない﹂とい        う決定類型に関する一般条項になった。憲法違反の欠陥を含む﹁もともと﹂憲法に適合する法律の場合でも、連 邦憲法裁判所は、その規定を無効と宣言しないで、むしろ、﹁連邦の立法者が、判決文で明らかにされた範囲でボ        ロ ン基本法第一四条第二項に違反した﹂という判決理由における指摘にとどまる。立法者は、その法律を堅持しよ うとする限り、その欠陥を埋めなければならない。そして、最後に、連邦憲法裁判所は、無効宣言による規範の 代替のない廃止から生ずる状態がその一時的な継続よりも、﹁なお憲法に違反している﹂と思えるという理由をも         っただけでも、不一致宣言にとどまることもある。  そこで、連邦憲法裁判所は、例えば、連邦憲法裁判所判例集第三三巻三〇三頁︵三四七頁⊥二四八頁︶の中で、学生の大 167

(35)

内イツ遵那.翻裁鰭周 学入学許可に関連して、次のように論じた。すなわち、無効宣言は、大学にとってどのような法律上の基礎もない入学制限 の緊急権限を与えることになる。しかし、現状では、入学制限が不十分とはいえ、少なくとも部分的には、法律に基づいて 規定されているのに対して、無効宣言した場合の状況は憲法上の秩序から一層遠ざかる結果になる。つまり、憲法違反の状 態を無法な状態に優先する。  ある特有の適用形態を解決するための経過期間の認定をもって、連邦憲法裁判所は、その手段を拡大しないし 一定の適用形態にとってそれを具体化した。すなわち、連邦憲法裁判所が、例えば、刑の執行における基本権の 制限、または学校における生徒の留年等一定の特有な措置にとって、これまでの見解や実例によると、行政内部 の訓令で十分であったのに、法律上の基礎が必要であるということを確認する場合である。かような連邦憲法裁 判所の確認の時点で、必要な法律がもちろんいまだ存在しないが、刑の執行も、学校行政も、一時的ではあって も停止されてはいけなく、法律上の基礎を欠いたため、行政にとって一時的にも行動を不可能とされることが許 されるはずがない。そこで、連邦憲法裁判所は、立法者および行政に経過期間を認める。すなわち、﹁十分な法律 上の基礎を欠いていたにも拘わらず、このような学校の廃止が可能であった経過期間の承認は、憲法上受け入れ ることができると思える⋮⋮。ただし、この経過期間中に、憲法上問題があった旧規定は、もはや引き続いて適 用されえなかった。むしろ、憲法上保護された権利への干渉についての官庁と裁判所の権能は、具体的事件にお        へ  いて、機能的な運営の秩序ある継続にとって不可欠であったものに限定されていた⋮⋮﹂。それゆえに、ここで は、経過期間の中で、いわば、﹁この理由により﹂、つまり、公共施設の運営に対する不可欠性の必要にしたがっ 168

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て・規範を適用することができることになる。

東洋瑳学

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