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ディプロマプログラム (DP) 生物 教師用参考資料 2016 年第 1 回試験 (2015 年改訂 )

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「生物」

教師用参考資料

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「生物」

教師用参考資料

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2014年8月に発行の英文原本Biology teacher support material の日本語版 2014年11月発行(2015年改訂) 本資料の翻訳・刊行にあたり、 文部科学省より多大なご支援をいただいたことに感謝いたします。 注: 本資料に記載されている内容は、英文原本の発行時の情報に基づいています。なお、日 本語版「生物」教師用参考資料には、「個人研究」の採点例は含まれていません。 ディプロマプログラム(DP) 「生物」教師用参考資料

International Baccalaureate Organization

15 Route des Morillons, 1218 Le Grand-Saconnex, Geneva, Switzerland International Baccalaureate Organization (UK) Ltd

Peterson House, Malthouse Avenue, Cardiff Gate Cardiff, Wales CF23 8GL, United Kingdom

www.ibo.org

© International Baccalaureate Organization 2014

www.ibo.org/copyright http://store.ibo.org

[email protected]

International Baccalaureate Baccalauréat International Bachillerato Internacional International Baccalaureate Organization

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IBの使命

IB mission statement ᅜ㝿ࣂ࢝ࣟࣞ࢔㸦㹇㹀㸧ࡣࠊከᵝ࡞ᩥ໬ࡢ⌮ゎ࡜ᑛ㔜ࡢ⢭⚄ࢆ㏻ࡌ࡚ࠊࠉ ࡼࡾⰋ࠸ࠊࡼࡾᖹ࿴࡞ୡ⏺ࢆ⠏ࡃࡇ࡜࡟㈉⊩ࡍࡿࠊ᥈✲ᚰࠊ▱㆑ࠊᛮ࠸ࡸ ࡾ࡟ᐩࢇࡔⱝ⪅ࡢ⫱ᡂࢆ┠ⓗ࡜ࡋ࡚࠸ࡲࡍࠋ ࡇࡢ┠ⓗࡢࡓࡵࠊ㹇㹀ࡣࠊᏛᰯࡸᨻᗓࠊᅜ㝿ᶵ㛵࡜༠ຊࡋ࡞ࡀࡽࠊࢳࣕࣞ ࣥࢪ࡟‶ࡕࡓᅜ㝿ᩍ⫱ࣉࣟࢢ࣒ࣛ࡜ཝ᱁࡞ホ౯ࡢ௙⤌ࡳࡢ㛤Ⓨ࡟ྲྀࡾ⤌ࢇ ࡛࠸ࡲࡍࠋ 㹇㹀ࡢࣉࣟࢢ࣒ࣛࡣࠊୡ⏺ྛᆅ࡛Ꮫࡪඣ❺⏕ᚐ࡟ࠊேࡀࡶࡘ㐪࠸ࢆ㐪࠸࡜ ࡋ࡚⌮ゎࡋࠊ⮬ศ࡜␗࡞ࡿ⪃࠼ࡢேࠎ࡟ࡶࡑࢀࡒࢀࡢṇࡋࡉࡀ࠶ࡾᚓࡿ࡜ ㄆࡵࡿࡇ࡜ࡢ࡛ࡁࡿே࡜ࡋ࡚ࠊ✚ᴟⓗ࡟ࠊࡑࡋ࡚ඹឤࡍࡿᚰࢆࡶࡗ࡚⏕ᾭ ࡟ࢃࡓࡗ࡚Ꮫࡧ⥆ࡅࡿࡼ࠺ാࡁ࠿ࡅ࡚࠸ࡲࡍࠋ

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この「IBの学習者像」は、IBワールドスクール(IB認定校)が価値を置く人間性を 10 の人物像として表して います。こうした人物像は、個人や集団が地域社会や国、そしてグローバルなコミュニティーの責任ある一員と

探究する人

私たちは、好奇心を育み、探究し研究するスキルを身につけま す。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。熱意 をもって学び、学ぶ喜びを生涯を通じてもち続けます。

知識のある人

私たちは、概念的な理解を深めて活用し、幅広い分野の知識を 探究します。地域社会やグローバル社会における重要な課題や 考えに取り組みます。

考える人

私たちは、複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、 批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性 的で倫理的な判断を下します。

コミュニケーションができる人

私たちは、複数の言語やさまざまな方法を用いて、自信をもっ て創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のもの の見方に注意深く耳を傾け、効果的に協力し合います。

信念をもつ人

私たちは、誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって 行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重し て行動します。私たちは、自分自身の行動とそれに伴う結果に 責任をもちます。

心を開く人

私たちは、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止め ると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け 止めます。多様な視点を求め、価値を見いだし、その経験を糧 に成長しようと努めます。

思いやりのある人

私たちは、思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人 の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くす るために行動します。

挑戦する人

私たちは、不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合 います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究し ます。挑戦と変化に機知に富んだ方法で快活に取り組みます。

バランスのとれた人

私たちは、自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を 構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解 しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世 界と相互に依存していることを認識しています。

振り返りができる人

私たちは、世界について、そして自分の考えや経験について、 深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長 所と短所を理解するよう努めます。

IB

学習者像

すべての IB プログラムは、国際的な視野をもつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと 地球を共に守る責任を認識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます。 IBの学習者として、私たちは次の目標に向かって努力します。

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(9)

はじめに

1

教師用参考資料の目的 1 科学の本質(NOS) 2 国際的な視野 5

授業の構成

7

授業計画 7 サブトピックの配当授業時間数 8 HLクラス授業計画 11 SLクラスの授業計画 13 SL・HL合同クラスの授業計画 15

サブトピックの学習活動の計画

17

はじめに 17 サブトピックのページの指導案 19 学習活動1:学習のポイント 20 学習活動2:受動輸送 21 学習活動3:「認知学習言語運用能力」(CALP) 22 学習活動4:能動輸送 24 学習活動5:浸透圧の調査 25 学習活動6:腎臓透析 27 学習活動7:臓器提供 29 学習活動8:高分子の輸送 30 学習活動9:まとめのシート 31

認知学習言語運用能力(CALP)

32

「認知学習言語運用能力」(CALP)活用のための枠組み 32

情報コミュニケーション技術

42

はじめに 42 スマートフォンの使用 49 シミュレーションの使用に関する指針 56

(10)

実習

59

はじめに 59 生物学におけるデータの提示 61 グループ4プロジェクト 65 IB認定校における動物の取り扱いに関するガイドライン 67

内部評価

71

個人研究の実施 71 内部評価の評価規準 75 内部評価規準の使用に関する指針 80

付録

83

シラバスの内容の変更点 83 日本語版「生物」教師用参考資料には、「個人研究」の採点例は含まれていません。採点 例については、英語版の教師用参考資料をご参照ください。

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教師用参考資料の目的

「『生物』教師用参考資料」(TSM:teacher support material)へようこそ。「『生物』指導 の手引き」(2016年第1回評価)では、「生物」のカリキュラムにいくつかの重要な改訂が 行われました。本資料は「生物」の指導経験がある教師や、これから「生物」の指導に乗 り出そうとする教師が、新しい「指導の手引き」に従って授業を構成したり、組み直した りするのをサポートするためのものです。 この教師用参考資料は、以下の3点を目的としています。 • 教員としての年数にかかわらず、担当教師が授業を組み立て、授業を行うことをサ ポートする。 • 教師が実習を計画することをサポートする。 • IBの教員研修を補完する。 この教師用参考資料では、新しい「指導の手引き」における「科学の本質」や「国際的 な視野」の取り扱いといった概要的な内容のほか、上級レベル(HL)と標準レベル(S L)の別を問わず、ディプロマプログラム(DP)の「生物」の授業に特有の考慮事項な どを取り上げています。また本資料には、サブトピックの内容をどのようにクラス内での 学習活動として取り入れるかについてのセクションがあり、個人研究の組み立てや評価に 関する全体的な概念や指導をサポートするほか、実習に関する役立つ情報も盛り込まれて います。 本資料は、「生物」を担当する経験豊かな専門教員によって執筆されました。授業計画や 授業実践で教師をサポートすることを目的としていますが、IBの「生物」にまつわるあ らゆる問題点を解決する処方箋、あるいは百科事典のようなものと位置づけられているわ けではありません。

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「生物」教師用参考資料 2 はじめに

科学の本質(NOS)

「科学の本質」についての考え方

新カリキュラムでは、「科学の本質」(NOS)という観点を明確に打ち出しています。 「科学の本質」では、さまざまな科学分野で科学者がどのように対象に取り組んでいるの か、各科学分野では、それぞれに異なりながらも補完し合い、時に重複する科学的方法を どのように用いているのか、また、すべての科学分野に共通する問題にはどのようなもの があるかなどについて考察します。「指導の手引き」では、「科学の本質」の項でさまざま な具体例を取り上げています。 新カリキュラムでは、「科学の本質についての考察が理科教育には不可欠であり、『科学 の本質』の学習を理科のカリキュラムに明確に組み込まない限り、科学の本質は十分に理 解されず、価値を置かれることがない」とする研究結果を踏まえ、「科学の本質」を導入し ました。「科学の本質」の導入は、現在、IBの理科教師の間で「最善の試み」として受け 止められています。 新しい「指導の手引き」では、「科学の本質」を表面的な追加項目として扱うのではな く、あくまでも新カリキュラムの全体に組み込むことを意図しています。「科学の本質」 は、通常の授業の一部として捉えられるべきものであり、当然のことながら試験問題の一 部として評価の対象となります。具体的には、試験問題の見本や、本資料の「サブトピッ クの学習活動の計画」に関するセクションで挙げられている各学習活動で見ることができ ます。 ただし、新カリキュラムにおいても、理科の各科目は、物理、化学、生物の知識と理解 を身につけることを主眼としていることには変わりありません。「科学の本質」は、指導 や学習の方法の中に統合的に組み込まれるものであることを念頭に置くようにしてくださ い。「科学の本質」は、そのものを単独で教えたり、評価したりする性質の要素ではありま せん(この点が、「科学の本質」に主眼を置き、いくつかの科学的トピックを単なる例とし て取り上げる他の授業とは対照的なところです)。

「科学の本質」の説明

「科学の本質」を考察することは、「生物」「化学」「物理」の各科目に共通するテーマで す。そのため「生物」「化学」「物理」のいずれの「指導の手引き」にも「科学の本質」と 題したセクションが設けられています。「『科学の本質』とは何か」を教師が理解するため の参考としてください。21世紀における「科学の本質」とは何かをについての包括的な説

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は評価に関して、上記3科目のテーマすべてを詳細に取り上げることはしていません。 「指導の手引き」では、「科学の本質」の各段落に 1.1、1.2 などの番号がつけられていま す。シラバスには、「『科学の本質』(NOS)との関わり」の欄があり、関連する段落の番 号と要点が明記されています。

「科学の本質」とシラバス

「指導の手引き」のシラバスにある「『科学の本質』(NOS)との関わり」の欄には、学 習内容の例が示されています。各サブトピックの上に記載された内容は、そのサブトピッ クの中で行われる理解や知識・スキルの活用を通じて、1つあるいは複数の「科学の本 質」のテーマがどのように例証されることができるかを述べています。これは、「『科学の 本質』(NOS)との関わり」の欄の記載内容に関して詳述したものとお考えください。そ れは、「指導の手引き」の「科学の本質」のセクションの具体例と直接関連づけられてお り、教師が取り扱うべきテーマに対する理解を深める補助ツールとして使用することがで きます。

「科学の本質」と評価

「科学の本質」は、SLおよびHLの筆記試験の各試験問題(「試 ペ ー パ ー 験問題1」「試 ペ ー パ ー 験問題 2」「試 ペ ー パ ー 験問題3」)で評価されます。「科学の本質」が単独で試験問題として出題されるこ とはありません。各科目の文脈の中に位置づけられて出題されます。出題例に関しては、 オンラインカリキュラムセンター(OCC)上の試験問題の見本を参照してください。

「科学の本質」と「知の理論」(TOK)

「指導の手引き」の「科学の本質」は、 「知の理論」(TOK)が取り扱う知識の領域のう ち、 「自然科学」と呼ばれる領域の対象となります。教師用参考資料での「科学の本質」と TOKの関連は、TOKの担当教師が特定のTOKの授業で取り上げたり、理科教師がグ ループ4の授業で取り上げたりすることが可能です。教科学習の領域の内外でTOKの指 導が行われることは、自然で望ましいことであり、理科教育と矛盾するものではありませ ん。 「指導の手引き」における「科学の本質」とTOKの違いは以下の通りです。 • 「物理」「化学」「生物」の「指導の手引き」では、「科学の本質」に関する記述(各 サブトピックの1行目)は、その背景となる科学的な例に言及しています。 • 一方、TOKに関する記述(各サブトピックの右欄)は、科学的トピックに端を発 し、一般的なTOKの「知識に関する問い」へと展開されます。

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はじめに 「生物」教師用参考資料 4 TOKについては、「所定課題エッセイ」(TOKエッセイ)で評価が行われるため、理 科の各科目では「指導の手引き」で挙げられているTOKの項目についての評価は行われ ません。

「科学の本質」と「ねらい8」

「ねらい8」は、倫理面に関係した要素です。生徒は、グローバルな社会の一員として科 学技術を用いることの倫理的な影響を批 クリティカル 判的に認識します。 特に「科学の人間的な側面」と「科学の知識と科学の一般的な理解」の項では、「ねらい 8」と「科学の本質」が明らかに重なり合っています。

役立つリンク

カリフォルニア大学古生物学博物館によるウェブサイト「Understanding Science(科学を 理解する)」(http://undsci.berkeley.edu/)は、科学の本質に関して、教師や生徒に役立つ幅 広いリソースを提供しています。内容は、定期的にアップデートされています。「指導の手 引き」の「科学の本質」のセクションに図を転載していますので参照してください。 科学の本質の倫理面に関しては、以下のウェブサイトに指導や学習に役立つ多くのリ ソースがあります。 生物と倫理教育プロジェクト(BEEP):www.beep.ac.uk/content/index.php 物理と倫理教育プロジェクト(PEEP):www.peep.ac.uk/content/index.php

科学と倫理一般に関するリンク

scienceonline.tki.org.nz/Nature-of-science/Nature-of-Science-Teaching-Activities 生徒は、理科の学習を通じて「科学の本質」を学び、その理解をより巧みに応用できる ようになることが望まれています。「科学の本質」を深く理解することで、科学的主張に対 して知識のある判断を下し、科学技術の発展から生じ、自分たちに影響が及ぶ重要な社会 的問題を理解し判断することができるようになることを目指します。

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国際的な視野

「国際的な視野」は、すべてのIB科目における重要な要素です。IB教育では、教師 全員がそれぞれの科目の専門性を超えた役割と責任を有していることが特色となっていま す。国際的な視野は、「IBの使命」に組み込まれているほか、「IBの学習者像」にも明 示されています。「IBの学習者像」では、「すべてのIBプログラムは、国際的な視野を もつ人間の育成を目指しています。人類に共通する人間らしさと地球を共に守る責任を認 識し、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する人間を育てます」としています。 科学は常に国際的な試みであり続けてきました。現代におけるグローバルな規模の科学 は、何世紀にもわたり国境を越えて考えが交換されてきた結果です。科学の発展には、イ ンドや中国、アラビアなどの多くの異なる文明による長い時間をかけての貢献が不可欠で した。教師は、さまざまなトピックを教えるにあたり、この貢献をウェブサイトの年表な どを利用して強調することが推奨されています。 • www2.gsu.edu/~mstnrhx/9870/science.htm • trailblazing.royalsociety.org/ • www.physics.ohio-state.edu/~wilkins/science/sctmln.html • en.wikipedia.org/wiki/Category:Science_timelines 「科学年表」と検索すると、より多くの年表が検索結果として表示されます。ウィキペ ディアの「History of science(科学史)」の項も、この点において価値のあるリソースです。 理科の各科目の「指導の手引き」の「科学とその国際的側面」と題されたセクションで は、科学における「国際的な視野」がより深く展開されています。理科のシラバスには、 必要に応じて、科学の国際的側面を例示するサブトピックの具体例が示されています。 最も広い意味での「科学的方法」とは、開かれた心と自由な思考に重点を置き、政治 的、宗教的な境界や、国境を越えるものです。これは「指導の手引き」の「科学の本質」 のセクションの 1.6、1.12、3.7、4.1 ~ 4.5、4.8、5.5 に示されています。教師は、新カ リキュラムでの「科学の本質」の重点を踏まえつつ、授業を行う際に実際に用いられてい る科学的方法を示すこともできます。理科の各科目の「指導の手引き」では、サブトピッ クのレベルで具体例が示されています。 グローバルなレベルでは、現在、科学を推進するために多くの国際機関が存在していま す。科学が重要な位置を占める国連教育科学文化機関(UNESCO)、国連環境計画(U NEP)、世界気象機関(WMO)などの国連機関がよく知られていますが、さらに分野別 に何百もの国際的な機関があり、そのほとんどすべての機関には独自のウェブサイトがあ ります。

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はじめに 「生物」教師用参考資料 6 物理学で用いられる粒子加速器やヒトゲノム計画のような大規模な実験科学の施設は費 用がかかるため、 多くの国々からの協力的財政支援が必要になります。そのような研究か ら得られたデータは、全世界の科学者の間で共有されます。生徒は理科の学習を通じて、こ うした国際的な科学機関の充実したウェブサイトにアクセスし、科学の国際的側面につい ての認識を高めることが奨励されています。これらのウェブサイトは有益な教育的リソー スであり、DPの理科の各科目を学ぶ生徒の学習に適した項目がある場合もあります。例 えば、欧州原子核研究機構(CERN)や欧州宇宙機関(ESA)のウェブサイトでは、 IBの「物理」で扱う題材が取り上げられています。 気候変動からエイズまで、多くの科学的問題は本来、国際的なものであり、多くの分野 で研究のための国際的な取り組みが行われています。「気候変動に関する政府間パネル」 (www.ipcc.ch)の報告は、この典型的な例です。こうした研究のための国際的な取り組み の形態を、生徒が取り組む理科の共同研究である「グループ4プロジェクト」に取り入れ ることも可能です。他の地域のIBワールドスクール(IB認定校)の生徒との共同研究 として取り組むのです。 「科学的知識には、社会を変革する大きな力があります。科学的知識には、多大な普遍的 利益を生み出す可能性もあれば、不平等を拡大し、人々と環境に害を引き起こす可能性も あります」――「IBの使命」を踏まえ、生徒は理科の学習を通じて「科学者には、科学 の知識やデータをすべての国々で公平に利用できるようにする道徳的責任と、持続可能な 社会を発展させるよう知識やデータを用いることのできる科学的能力をもつ道徳的責任が あること」を認識する必要があります。

参考文献

Brian Arthur, W. 2009. The Nature of Technology. London, UK. Penguin Books.

Gerzon, M. 2010. Global Citizens: How our vision of the world is outdated, and what we can do about it. London, UK. Rider Books.

Headrick, D. 2009. Technology: A World History. Oxford, UK. Oxford University Press. Martin, J. 2006. The Meaning of the 21st Century: A vital blueprint for ensuring our future. London, UK. Eden Project Books.

Roberts, B. 2009. Educating for Global Citizenship: A Practical Guide for Schools. Cardiff, UK. International Baccalaureate Organization.

Winston, M and Edelbach, R. 2012. Society, Ethics, and Technology. (4th edition). Boston, Massachusetts, USA. Wadsworth CENGAGE Learning.

教師は「Global Engage」ウェブサイト(globalengage.ibo.org)のリソースも活用すること が可能です。

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授業計画

各科目で取り扱う学習内容は、「指導の手引き」の「シラバスの概要」で一覧できるほ か、「シラバスの内容」に詳述されています。教師は、利用できるリソースや地域の状況に 適した形で、教師の関心にも生徒の関心にも合った独自の授業計画を立てることが望まれ ます。本資料では、そうした授業計画を立てるための一助となるよう「指導の手引き」を 補足していきます。 次の「サブトピックの配当授業時間数」では、各サブトピックに割りあてる授業時間の 目安が示されています。ここで示される授業時間数は、規定されたものではありません。 あくまでも、IBの授業に新たに取り組む教師のための参考として示されているものです。 「SL・HL合同クラス」「HLクラス」「SLクラス」の授業計画表では、それぞれの授 業を2年間にわたってどのように編成し得るかが示されています。ここで示されている編 成も、規定ではありません。あくまでも、さまざまな考え方に応じて学習内容を編成でき ることを示すための例として挙げられているものです。

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「生物」教師用参考資料 8 授業の構成

サブトピックの配当授業時間数

SL・HL共通項目 95時間 トピック1 —— 細胞生物学 時間数 15 1.1 細胞の概論 2 1.2 細胞の微細構造 3 1.3 膜構造 2 1.4 膜による輸送 3 1.5 細胞の起源 2 1.6 細胞分裂 3 トピック2 —— 分子生物学 21 2.1 分子から代謝まで 1 2.2 水 2 2.3 炭水化物と脂質 2 2.4 タンパク質 3 2.5 酵素 2 2.6 DNAおよびRNAの構造 2 2.7 DNA複製、転写、および翻訳 3 2.8 細胞呼吸 3 2.9 光合成 3 トピック3 —— 遺伝学 15 3.1 遺伝子 2 3.2 染色体 3 3.3 減数分裂 2 3.4 遺伝的形質 4 3.5 遺伝子組み換えとバイオテクノロジー 4 トピック4 —— 生態学 12 4.1 種、群集、生態系 3 4.2 エネルギーの流れ 3 4.3 炭素循環 3 4.4 気候変動 3 トピック5 —— 進化と生物多様性 12 5.1 進化の証拠 2 5.2 自然選択 3

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5.4 分岐分類学 3 トピック6—— 人間生理学 20 6.1 消化と吸収 3 6.2 血液系 4 6.3 感染症に対する防御 3 6.4 ガス交換 3 6.5 神経とシナプス 3 6.6 ホルモン、恒常性、生殖 4 HL発展項目(AHL) 60 時間 トピック7—— 核酸 9 7.1 DNAの構造と複製 3 7.2 転写と遺伝子発現 3 7.3 翻訳 3 トピック8—— 代謝、細胞呼吸、光合成 14 8.1 代謝 4 8.2 細胞呼吸 5 8.3 光合成 5 トピック9—— 植物生物学 13 9.1 植物の木部における輸送 3 9.2 植物の師部における輸送 3 9.3 植物の生長 4 9.4 植物の繁殖 3 トピック10—— 進化と生物多様性 8 10.1 減数分裂 3 10.2 遺伝的形質 3 10.3 遺伝子プールと種分化 2 トピック11—— 動物生理学 16 11.1 抗体産生と予防接種 4 11.2 運動 4 11.3 腎臓と浸透圧調節 4 11.4 有性生殖 4 選択項目 15 時間(SL)/ 25 時間(HL) A.神経生物学と行動 SL・HL共通項目のトピック

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授業の構成 「生物」教師用参考資料 10 A.2 ヒトの脳 5 A.3 刺激の知覚 5 HL発展項目のトピック A.4 生得的行動と学習による行動 3 A.5 神経薬理学 4 A.6 行動学 3 B.バイオテクノロジーとバイオインフォマティクス SL・HL共通項目のトピック B.1 微生物学 ―― 生物の産業利用 5 B.2 農業分野のバイオテクノロジー 5 B.3 環境保護 5 HL発展項目のトピック B.4 医学 5 B.5 バイオインフォマティクス 5 C.生態学と環境保全 SL・HL共通項目のトピック C.1 種と群集 3 C.2 群集と生態系 4 C.3 生態系への人類の影響 4 C.4 生物多様性の保全 4 HL発展項目のトピック C.5 個体群生態学 5 C.6 窒素とリンの循環 5 D.人間生理学 SL・HL共通項目のトピック D.1 人間栄養学 4 D.2 消化 4 D.3 肝臓の機能 3 D.4 心臓 4 HL発展項目のトピック D.5 ホルモンと代謝 5 D.6 呼吸ガス輸送 5

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HLクラス授業計画

「指導の手引き」のトピックの記載順は、 そのトピックの授業を行う順序を意味するもの ではありません。教師は自由に独自の授業計画を立てることが推奨されています。下記の 表は、SLの生徒とは別に授業を受けるHLの生徒用のトピックの並べ方の一例です。 SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究 第1年次 5.3 生物多様性の分類 5.4 分岐分類学 4.1 種、群集、生態系 4.2 エネルギーの流れ 持続可能性の実証を試みる ために閉鎖系メソコスム(海 洋や湖沼の現場の生態系構 成要素を取り込んだ実験生 態系)を設置する。(実習5) 5.2 自然選択 5.1 進化の証拠 10.3 遺伝子プールと種分化 1.1 細胞の概論 1.2 細胞の微細構造 1.5 細胞の起源 光学顕微鏡を用いて、細胞お よび組織の構造および超微 細構造を調べ、細胞をスケッ チし、スケッチの拡大率と、 スケッチまたは顕微鏡写真 に見られる構造の実際のサ イズを計算する。(実習1) 1.3 膜構造 1.4 膜による輸送 低張液や高張液にサンプル を浸すことによって組織の 浸透圧を推定する。(実習2) 2.1 分子から代謝まで 2.2 水 2.3 炭水化物と脂質 2.4 タンパク質 2.5 酵素 酵素活性に影響する要素の 実験的調査。(実習3) 2.8 細胞呼吸 8.1 代謝 8.2 細胞呼吸 クロマトグラフで光合成色 素を分離する。(実習4)

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授業の構成 「生物」教師用参考資料 12 SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究 6.1 消化と吸収 6.2 血液系 6.3 感染症に対する防御 6.4 ガス交換 6.5 神経とシナプス 6.6 ホルモン、恒常性、生殖 11.1 抗体産生と予防接種 11.2 運動 11.3 腎臓と浸透圧調節 休息時と穏やかな運動後お よび激しい運動後のヒトの 換 気 を モ ニ タ リ ン グ す る。 (実習6) 「グループ4プロジェクト」 第2年次 2.9 光合成 8.3 光合成 9.2 植物の師部における輸送 9.1 植物の木部における輸送 9.3 植物の生長 吸水計を用いて蒸散速度を 測定する。(実習7) 4.3 炭素循環 4.4 気候変動 選択項目 選択項目(発展) 内部評価・個人研究 1.6 細胞分裂 3.3 減数分裂 10.1 減数分裂 9.4 植物の繁殖 2.6 DNAおよびRNAの 構造 2.7 DNA複製、転写、およ び翻訳 7.1 DNAの構造と複製 7.2 転写と遺伝子発現 7.3 翻訳 3.1 遺伝子 3.2 染色体 11.4 有性生殖 3.4 遺伝的形質 3.5 遺伝子組み換えとバイ オテクノロジー 10.2 遺伝的形質 復習・試験

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SLクラスの授業計画

「指導の手引き」のトピックの記載順は、 そのトピックの授業を行う順序を意味するもの ではありません。教師は自由に独自の授業計画を立てることが推奨されています。下記の 表は、HLの生徒とは別に授業を受けるSLの生徒用のトピックの並べ方の一例です。 内容 研究 第1年次 5.3 生物多様性の分類 5.4 分岐分類学 4.1 種、群集、生態系 4.2 エネルギーの流れ 持続可能性の実証を試みるために閉鎖系メ ソコスム(海洋や湖沼の現場の生態系構成要 素を取り込んだ実験生態系)を設置する。(実 習5) 5.2 自然選択 5.1 進化の証拠 1.1 細胞の概論 1.2 細胞の微細構造 1.5 細胞の起源 光学顕微鏡を用いて、細胞および組織の構造 および超微細構造を調べ、細胞をスケッチ し、スケッチの拡大率と、スケッチまたは顕 微鏡写真に見られる構造の実際のサイズを 計算する。(実習1) 1.3 膜構造 1.4 膜による輸送 低 張 液 や 高 張 液 に サ ン プ ル を 浸 す こ と に よって組織の浸透圧を推定する。(実習2) 2.1 分子から代謝まで 2.2 水 2.3 炭水化物と脂質 2.4 タンパク質 2.5 酵素 酵素活性に影響する要素の実験的調査。(実 習3) 2.8 細胞呼吸 2.9 光合成 クロマトグラフで光合成色素を分離する。 (実習4) 6.1 消化と吸収 6.2 血液系 6.3 感染症に対する防御 6.4 ガス交換 6.5 神経とシナプス 6.6 ホルモン、恒常性、生殖 休息時と穏やかな運動後および激しい運動後 のヒトの換気をモニタリングする。(実習6) 「グループ4プロジェクト」 4.3 炭素循環 4.4 気候変動

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授業の構成 「生物」教師用参考資料 14 内容 研究 第2年次 選択項目 内部評価・個人研究 1.6 細胞分裂 3.3 減数分裂 2.6 DNAおよびRNAの構造 2.7 DNA複製、転写、および翻訳 3.1 遺伝子 3.2 染色体 3.4 遺伝的形質 3.5 遺伝子組み換えとバイオテクノロジー 復習・試験

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SL・HL合同クラスの授業計画

「指導の手引き」のトピックの記載順は、 そのトピックの授業を行う順序を意味するもの ではありません。教師は自由に独自の授業計画を立てることが推奨されています。下記の 表は、またはSLの生徒がHLの生徒と合同で授業を受ける場合のトピックの並べ方の一 例です。 SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究 第1年次 5.3 生物多様性の分類 5.4 分岐分類学 4.1 種、群集、生態系 4.2 エネルギーの流れ 持続可能性の実証を試みる ために閉鎖系メソコスム(海 洋や湖沼の現場の生態系構 成要素を取り込んだ実験生 態系)を設置する。(実習5) 5.2 自然選択 5.1 進化の証拠 10.3 遺伝子プールと種分化 1.1 細胞の概論 1.2 細胞の微細構造 1.5 細胞の起源 9.1 植物の木部における輸送 光学顕微鏡を用いて、細胞お よび組織の構造および超微 細構造を調べ、細胞をスケッ チし、スケッチの拡大率と、 スケッチまたは顕微鏡写真 に見られる構造の実際のサ イズを計算する。(実習1) 1.3 膜構造 1.4 膜による輸送 2.2 水 11.3 腎臓と浸透圧調節 吸水計を用いて蒸散速度を 測定する。(実習7) 低張液や高張液にサンプル を浸すことによって組織の 浸透圧を推定する。(実習2) 2.1 分子から代謝まで 2.3 炭水化物と脂質 2.4 タンパク質 2.5 酵素 9.2 植物の師部における輸送 8.1 代謝 酵素活性に影響する要素の 実験的調査。(実習3) 2.8 細胞呼吸 2.9 光合成 8.2 細胞呼吸 8.3 光合成 クロマトグラフで光合成色 素を分離する。(実習4)

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授業の構成 「生物」教師用参考資料 16 SL・HL共通項目 HL発展項目(AHL) 研究 4.3 炭素循環 4.4 気候変動 6.1 消化と吸収 6.2 血液系 6.3 感染症に対する防御 6.4 ガス交換 6.5 神経とシナプス 6.6 ホルモン、恒常性、生殖 11.1 抗体産生と予防接種 11.2 運動 休息時と穏やかな運動後お よび激しい運動後のヒトの 換 気 を モ ニ タ リ ン グ す る。 (実習6) 「グループ4プロジェクト」 第2年次 選択項目 選択項目のエクステンション 内部評価・個人研究 1.6 細胞分裂 3.3 減数分裂 10.1 減数分裂 9.4 植物の繁殖 9.3 植物の生長 2.6 DNAおよびRNAの 構造 2.7 DNA複製、転写、およ び翻訳 7.1 DNAの構造と複製 7.2 転写と遺伝子発現 7.3 翻訳 3.1 遺伝子 3.2 染色体 11.4 有性生殖 3.4 遺伝的形質 3.5 遺伝子組み換えとバイ オテクノロジー 10.2 遺伝的形質 復習・試験

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はじめに

「指導の手引き」の内容は以下の3つに分かれています。 • SLとHLの生徒が共通して学習する「SL・HL共通項目」 • 「HL発展項目」のトピック • SLとHLの生徒が共通して学習する「SL・HL共通項目」のサブトピックとH Lクラスの生徒のみが学ぶサブトピックのそれぞれに伴う「選択項目」 教師は、サブトピックを構成する各項目を活用して、教案を練ることが望まれます。そ うすることで、科目に共通する基盤を失うことなく、生徒に合わせて個別に対応したり、 活用できるリソースや学校の立地、背景状況の差異に対応したりしながら教材を提示する ことができるからです。 各サブトピックは、以下のようなレイアウトで構成されています。 【学習のポイント】サブトピックを学習する際のポイントを示します。 1.1 サブトピック 科学の本質(NOS)との関わり サブトピックを「科学の本質」(NOS)のテーマに関連づけます。 理解 • 各サブトピックで学習する内容を具体的 に示します。 知識・スキルの活用 • 生徒がどのように理解したことを活用す るかを詳述します。例えば、数学の計算 や実用的なスキルを示すことなどが含ま れます。 指導 • 「理解」や「知識・スキルの活用」に関して の具体的な要件や制限事項を示します。 国際的な視野 • 教師が授業を行う際に簡単に組み込む ことのできる考えを取り上げます。 「知の理論」(TOK) • TOKの「知識に関する問い」の例を 挙げます。 自然や人間生活との関わり • 「指導の手引き」の中の他のトピックや 実社会でのさまざまな応用例および他 のDP科目との関連性を取り上げます。 ねらい • 「理科」(グループ4)のねらいとの関 連性を示します。 「学習のポイント」は、サブトピックのテーマや焦点を表しています。 「科学の本質(NOS)との関わり」では、学習する科目の領域の中から、「科学の本質」 とサブトピックの内容に関連する例を取り上げます。 表のその下の部分は2つの欄に分けられており、左欄には、「理解」「知識・スキルの活 用」「指導」として、そのサブトピックで指導するべき内容を示しています。

(28)

サブトピックの学習活動の計画 「生物」教師用参考資料 18 「理解」では、理論的解釈に関する内容を示します。この内容は、他のサブトピックと並 行して指導したり、他のサブトピックに組み入れて指導したりすることができます。 「知識・スキルの活用」では、理解したことをどのように文脈の中で活用するかを示しま す。この項には、「実習学習」のための必修の領域などが指定されている場合もあります。 「指導」では、「理解」と「知識・スキルの活用」で要求される深さや内容に関する補足 事項を説明します。 右欄は、「国際的な視野」「『知の理論』(TOK)」「自然や人間生活との関わり」「ねら い」で構成されています。これらの項は、サブトピックをより大きな文脈の中に位置づけ、 関心や多様性を高めることを目的としています。 「国際的な視野」では、国際的な取り組みを通じて理解を深めることができる領域、もし くはそのような可能性がある領域に目を向けます。 「『知の理論』(TOK)」では、TOKの問いに関連する生物ならではの事例を取り上げま す。TOKの問いをめぐるディスカッションは、生徒がTOKで取り扱う諸問題と生物との 関連性を見いだすのに役立ちます。また、ディスカッションは、生物の事例をTOKの授 業で活かすだけでなく、TOK的思考を「生物」の授業にもたらすことにもつながります。 「自然や人間生活との関わり」では、「生物」の中での関連するサブトピックを結びつける だけでなく、同じような内容を別の角度や見方で捉えている他科目とも結びつけます。相 互に関連づけ、科目内や科目間、および外の世界の要素とサブトピックを結びつけること で、DPというプログラム全体に、より全 ホリスティック 人的なアプローチで取り組むことができます。 最後の「ねらい」では、サブトピックと「理科」(グループ4)のねらいとの関連性が示 されています。ねらいがサブトピック内の他の「知識やスキルの活用」に言及している場 合もありますが、これらはあくまでも提案であり、内容を深めるための発展的な機会とし て捉えられるべきものです。

(29)

サブトピックのページの指導案

本章で紹介する活動は特定のサブトピックを教える際に使用できる例です。各活動は、 下の表の左欄の「学習のポイント」、「科学の本質(NOS)」、「理解」、「知識・スキルの活 用」から右欄の「国際的な視野」、「知の理論(TOK)」、「自然や人間生活との関わり」、 「ねらい」などの付加価値的なIBの要素まで複数のサブトピックの内容をカバーしてい ます。このように、多くの要素を総合的かつホリスティックな方法で教えることが可能で す。 【学習のポイント】膜は、能動輸送および受動輸送により細胞の組成をコントロールしている。[学習活動 1] 各サブトピックで上記すべての学習活動を実施することが求められているわけではありません。説明の便宜 上、1 つのサブトピックを取り上げ、そのサブトピックの各要素ごとの学習活動を例示しています。 1.4 膜による輸送 科学の本質(NOS)との関わり 実験計画――浸透圧の実験では、正確な量的測定が不可欠である。(3.1) [学習活動 5] 理解 • 粒子は、単純拡散、促進拡散、浸透圧、能動輸送 によって膜を通過する。 [学習活動 2] [学習活動 3] [学習活動 4] • 膜の流動性のおかげで、物質はエンドサイトーシ スにより細胞に取り込まれ、エクソサイトーシス により放出される。小胞は、細胞内で物質を輸送 する。[学習活動 8] 知識・スキルの活用 • 知識の活用 : 能動輸送のためのナトリウム‐カリ ウムポンプの構造と機能、軸索での促進拡散のた めのカリウムチャンネル。[学習活動 4] • 知識の活用 : 医療処置で用いられる組織または器 官は、浸透を防ぐために細胞質と同じ浸透圧の溶 液中に浸されなければならない。 • スキルの活用 : 低張液および高張液にサンプルを 浸すことによって組織の浸透圧を推定する。( 実 習 2)[学習活動 5] 指導 • 浸透圧の実験は、科学実験では正確な質量および 体積の測定が必要であることを強調する有効な機 会である。[学習活動 5] 自然や人間生活との関わり • 腎臓透析は、適切な膜と濃度勾配を用いて、ヒト の腎臓の機能を人工的に模倣したものである。 [学習活動 6] 《シラバスや他科目との関連性》 「生物」 トピック 6.5 神経とシナプス [学習活動 4] ねらい •  ねらい 8:臓器提供は、臓器提供の利他的な本質 や、ヒトの器官の販売に関する懸念など、いくつか の興味深い倫理的問題を提起する。[学習活動 7] •  ねらい 6:透析チューブ実験は膜活動のモデルと して機能し得る。ジャガイモ、ビートの根、また は単細胞藻類を用いた実験を、実際の膜の研究に 用いることができる。[学習活動 5]

(30)

「生物」教師用参考資料 20 サブトピックの学習活動の計画

学習活動1:学習のポイント

「学習活動1」は、「学習のポイント」について議論します。 「サブトピックのページの指導案」のセクションで例として挙げられたサブトピック「膜 による輸送」の背景知識として、生徒はすでに細胞膜の構造を学習しているものとします。 それを踏まえて、今度は、物質が細胞に出入りする方法を理解します。ここでの学習のポ イントは、「細胞内外の物質の出入りの制御に膜が関与している」ということです。 議論では、細胞を出入りするものは何かについて、そして、この移動を制御する利点に ついて取り上げます。 以下の点について考えるとよいでしょう。 • アデノシン三リン酸(ATP)産生 • その他の代謝過程に必要な物質 • 代謝の老廃物 • (植物細胞の場合に)代謝過程で必要とするよりも多くの水を必要とする理由 また、トピックを発展させることで、生徒は、細胞に出入りする物質の移動が、一部で は受動的で、濃度勾配の影響を受けており、一部では能動的で、濃度勾配に逆らった物質 移動がなされていることを理解します。膜の浸透性は、濃度勾配に加えて、どの物質が細 胞に出入りできるのかを決定する重要な要因です。

(31)

学習活動2:受動輸送

この学習活動では、問いを投げかけ、それに対する答えを考えることを通じて、浸透作 用および単純拡散のメカニズムを説明します。 • 何が粒子の移動を引き起こすのか。 • 粒子が移動する時に細胞膜を通り抜けるための別の方法とは何か。  上記への答えから、生徒は、膜の浸透性を変化させることが、粒子の受動輸送を制御す る唯一の方法であると気づきます。

参考用動画

highered.mcgraw-hill.com/sites/0072495855/student_view0/chapter2/animation__how_osmosis_ works.html www.wiley.com/college/boyer/0470003790/animations/membrane_transport/membrane_ transport.htm

(32)

「生物」教師用参考資料 22 サブトピックの学習活動の計画

学習活動3:「認知学習言語運用能力」(CALP)

学習活動3は、言語習得のための活動です。ここでは、粒子が細胞膜を透過するメカニ ズムに関連する語彙の習得を目指します。CALPの詳細については、 本資料「「認知学 習言語運用能力」(CALP)活用のための枠組み」を参照してください。

C

ognitive (認知)

A

cademic (学習)

L

anguage (言語)

P

roficiency (運用能力)

スキル

指導法

背景知識 スキャフォールディング(足場づくり) 拡張された CALP 背景知識の構 築と活性化 新たな理解 の導入(イン プット) 新たな理解 の処理 新たな理解 の表現(アウ トプット) 能力の発揮 と応用 聴解力 「輸送」に関す る学習活動 発話力 「輸送」に関す る学習活動 対話力 「輸送」に関す る学習活動 読解力 「膜による輸 送」に関する カード合わせ 記述力 定義を書く 思考力 カード合わせ 図1:CALPを発達させるための枠組み

(33)

CALPに関する学習活動 ―― カード合わせ

浸透圧 osmosis 半透膜 permeable membrane 小胞 vesicles 単純拡散 simple diffusion 濃度勾配 concentration gradient 流動性を持つ細胞膜 fluid plasma membrane

促進拡散 facilitated diffusion ATP ATP 粒子 particles 能動輸送 active transport 平衡 equilibrium 水 water エンドサイトーシス endocytosis 膜チャネル membrane channels トランスポーター・ポンプた んぱく質  transporter/pump proteins エクソサイトーシス exocytosis リン脂質二重層 phospholipid bilayer 上記のカードを切り離します。 左端の行のカード(背景に色がついているもの)から、1枚を生徒に渡します。 生徒は、渡されたカードに関連のあるすべてのカードを選び出します。例えば、色つき のカードが「浸透圧」であった場合、生徒は浸透圧の説明をするために、「半透膜」、「濃度 勾配」、「平衡」、「リン脂質二重層」、「水」のカードを選びます。また、「物質移動」、「高濃 度」、「低濃度」など、カードにはない他の用語を加えることもできます。 あるいは、生徒に「膜による輸送」に関する白い方のカードを複数枚渡し、これらに該当 する色つきのカードを選択させることもできます。例えば、白いカードが「トランスポー ター・ポンプたんぱく質」、「粒子」、「ATP」である場合には、生徒は色つきのカードか ら「能動輸送」を選びます。

(34)

「生物」教師用参考資料 24 サブトピックの学習活動の計画

学習活動4:能動輸送

学習活動4は、与えられた状況から特定の問題を解明する活動です。 この学習活動で生徒は、粒子が濃度勾配に沿って移動し、その粒子に対する透過性がある 膜だけを通過できることを理解した上で、細胞外液よりも細胞内液の濃度が高い粒子を細 胞がどのようにして獲得するのかを解明することに取り組みます。例えば、無機物の濃度 が細胞内よりも土壌内で低い時の根の上皮細胞による無機物の摂取は、これに関する典型 的な例です。他には、細胞または血中の糖の濃度が消化管の内容物よりも高い場合に、消 化管から糖を吸収する例が挙げられます。受動輸送が唯一のメカニズムである場合、消化 管への糖の喪失が起きます。生徒は、上記の状況の1つについて、1人でまたは小グルー プで問題に取り組みます。 能動輸送の説明は、ナトリウム・カリウムポンプ、および、軸索内外の不均衡な電荷の 差について示します。また、このサブトピックは、活動電位を教える時に復習することが できます。

参考用動画

インターネット上には、このトピックの理解に役に立つ多くの動画があります。以下に 2つを示します。 brookscole.cengage.com/chemistry_d/templates/student_resources/shared_resources/animations/ ion_pump/ionpump.html www.blackwellpublishing.com/patestas/animations/actionp.html

(35)

学習活動5:浸透圧の調査

学習活動5は、観察実験に基づいて行います。 溶液の浸透圧は、事実上、溶質ポテンシャルです。これは、溶液の浸透ポテンシャルひい ては溶液を含む細胞の浸透ポテンシャルに影響するので、露出した細胞に対する体外環境 の影響の予測因子になります。細胞が高張液中にある場合、浸透作用によって水が細胞の 外へと移動しやすくなります。細胞が低張液中にある場合、水は細胞内へと移動します。 さらに、細胞が外液と等張である場合には、見かけ上の水の移動がなくなります。こうし たことを理解することによって、細胞の浸透圧、より具体的には、細胞の内部環境を構成 する溶液の浸透圧を算出できます。 これを達成するためには、以下の2つが必要です。 1. 独立変数として、異なる濃度のさまざまな溶液 2. 細胞による水の摂取または喪失の測定手段 - タマネギ細胞の浸透圧の測定では、0 ~ 1mol/dm-3のさまざまな濃度でスク ロース溶液に組織の薄片を浸します。 ヒント! 赤タマネギを使うか、溶液にメチレンブルーを添加することで、膜が見やすく なります。 - 次に、 校正された接眼ミクロメーターを備えた顕微鏡のスライドガラス上 に組織サンプルを移して、細胞の液胞殻から水分を喪失していることを示し ている、目に見える液胞膜を持つ細胞を確認します。 ヒント! サンプルが厚すぎる場合、縁の部分は薄い場合が多いので、そこを観察するこ と。 - 細胞膜と液胞膜の間の距離を測定して、 定量化できる勾配に対する水分喪 失のレベルを評価します。 結果として得られるグラフは、以下のようなものになるでしょう。

(36)

サブトピックの学習活動の計画 「生物」教師用参考資料 26 グラフから、タマネギ細胞の溶質ポテンシャルの分析を行うことができます。グラフは、 ある一定の範囲内に収まることが予測されますが、より正確な分析を行う方法についての 議論をすることは有益です。溶液の濃度のより小さい勾配および顕微鏡のより高い解像度 を軸に議論することになるでしょう。 変数制御の課題に取り組むことにより、議論が活性化します。 浸透作用の効果的なシミュレーションが以下のリンクから入手できます。シミュレー ションでは多くのパラメーターを変更することができます。 lsvr12.kanti-frauenfeld.ch/KOJ/Java/Osmosis_fast.html ねらい6に沿った発展学習活動として、生徒に浸透圧の観点からさまざまな組織を調査 させ、集計表に結果を記録して、発見したことのデータベースを作製させるというものが 考えられます。後に、組織の機能に関してデータベースを活用することができます。

液胞膜と細胞膜の

間の距離

液胞が浸透作用によって

水分を失い始める点

溶液の濃度

(37)

学習活動6:腎臓透析

腎臓透析は、理論的には簡単な技術です。膜による輸送の方法について評価したり、理 解を深めたりするのに、さまざまに活用することができます。多くのアプローチがありま すが、以下に3つの学習活動を挙げます。 オプション1 生徒に透析装置を設計するよう求めます。以下のようなポイントについて検討します。 • どの物質を血液から除去して、どの物質を血液中に残す必要があるのか。 • これらの物質の適切な濃度はどの程度のものか。 • 透析に使う膜の性質はどのようなものか。 • 人工的な装置では、膜を通した輸送はどの形態が適切か。 オプション2 腎臓の役割には、血液から潜在的に有毒な粒子を除去する一方で、その他の有益な物質を 保持することが挙げられます。血液は、大型のタンパク質および血球を除く成分がろ過さ れ、次に、選択された物質を毛細血管に再吸収することができる細胞膜を持つ腎細管に通 されます。 以下の表は、腎細管および尿の中の尿素(潜在的に有毒)、グルコースおよびアミノ酸(と もに代謝に重要)のレベルを示しています。この表は、腎静脈の血液中に残るこれらの粒 子の割合も示しています。 成分 液体中の濃度 (g/100ml) 血漿 腎細管(濾過物) 尿 再吸収% 尿素 0.03 0.03 1.8 50% グルコース 0.10 0.10 なし 100% アミノ酸 0.05 0.05 なし 100%

(38)

サブトピックの学習活動の計画 「生物」教師用参考資料 28 腎臓を摘出した人は、血中から老廃物を除去して、尿中に排出することができません。こ れを人工的に行うためには、週に数回腎臓透析を受ける必要があります。 a. 血漿の内容物と腎細管の濾過物を、尿素、グルコース、およびアミノ酸について比較 しましょう。 b. 尿素、グルコース、およびアミノ酸は、どのようにして腎細管へ移動しますか。 c. 毛細血管への尿素の再吸収は受動輸送であり、 グルコースおよびアミノ酸の再吸収 には能動輸送が関与しているという主張を、データはどのように支持しますか。 d. 腎細管と尿に含まれる尿素の濃度の違いについて説明しましょう。 オプション3 以下の図は、尿素、グルコース、およびアミノ酸について、血液中の内容物を表しています。 以下の図と同じ記号を用いて、グルコースおよびアミノ酸のレベルを保持しつつ患者の血 液から可能な限り多くの尿素を除去するために必要とされる透析液の組成を書き込みま しょう。 尿素 グルコース アミノ酸 透過性の異なる膜が患者の血液を 透析液から分離する 患者の血液 透析液

(39)

学習活動7:臓器提供

臓器移植および移植のための臓器提供は、今日的な医学の問題であり、倫理的な探究や 議論の機会を幅広く提供します。例えば、以下のような問題があります。 • 生体ドナー • 臓器売買 • インフォームドコンセント • ドナーとレシピエントの匿名性 • 動物のドナー • 臓器提供は一種の利他的行為か 臓器提供同意書に署名する意欲は、国ごとに異なっています。以下のグラフは、同じよ うな経済的・社会的発展の度合いの国の間に顕著な差があることを示しています。 これらの国の臓器提供の違いの原因は何でしょうか。 この違いの根本にあるのが、「能動的な同意」か「受動的な同意」かの問題(デンマー ク、オランダ、英国、ドイツにおいては、該当欄に印を記入することで同意を示しますが、 グラフの残りの国では、該当欄に印を記入しないことで同意したことになります)である ことに考えが至れば、この行為の倫理に関する議論につなげることができるでしょう。

同意の割合

同意の割合

デンマーク

オランダ

英国

ドイツ

オーストリア

ベルギー

フランス

ハンガリー

ポーランド

ポルトガル

スウェーデン

(40)

「生物」教師用参考資料 30 サブトピックの学習活動の計画

学習活動8:高分子の輸送

細胞のエンドサイトーシスとエキソサイトーシスのプロセスは、一連の過程で行われま す。この過程は、以下のカードを順序づけることによって組み立てることができます。一 連の事象をまとめたら、色つきのカードを用いて、事象の説明をつけ加えることができま す。基本的なところは、教師によってまたは動画を用いて説明できます。 詳しく述べる (describe) 説明する (explain) 小胞は、内部で粒子を処理するための他の細 胞小器官(リソソームなど)と融合すること ができる。 細胞膜の流動性により、細胞膜は、必要であ れば壊れて再形成することができる。 細胞外の粒子が検出される。 細胞は、栄養摂取のため、または小胞を破壊す るために、小胞の内容物を消化しようとする。 細胞膜は粒子を取り囲む。 粒子は、タンパク質チャネルを通して取り込 まれるには大きすぎる。 細胞膜は、細胞質内で小胞を形成するために ちぎれる。 細胞小器官は、細胞膜と同じような膜をもっ ているので、小胞と融合することができる。

参考用動画

www.youtube.com/watch?v=XFxHWWOpHDI life9e.sinauer.com/life9e/pages/06/062003.html highered.mcgraw-hill.com/sites/007337797x/student_view0/chapter5/animation_quiz_-_ endocytosis_and_exocytosis.html

(41)

学習活動9:まとめのシート

このシートは、制御に力点を置いて、細胞膜を通した粒子の輸送に用いられる方法をま とめるために活用することができます。 まとめの問い 何が細胞に出 入りしていま すか。 膜輸送タンパ ク質は必要で すか。 濃度勾配は必 要ですか。 ATPは必要 ですか。 細胞はこのプ ロセスを制御 できますか。 浸透作用 単純拡散 促進拡散 能動輸送 飲食作用 開口分泌

(42)

「生物」教師用参考資料 32 認知学習言語運用能力(CALP)

「認知学習言語運用能力」(CALP)活用のための

枠組み

IBの生徒は、学習にしっかりと参加しながら能力を十分に発揮するため、各科目におい て必要となる学習言語を自由に扱える能力を身につけなければなりません。理科の科目も 例外ではありません。科学には科学のための独自の言語があり、そこでは日常で使用する 数々の言葉が異なる(多くの場合においてより精密な)意味をもちます。また、このよう な言語には、理解や解釈が必要となる数学記号や数学的描写も含まれます。正確さや精密 さは、科学が「知る」ための効果的な手段である理由であり、また、科学における思考の 根幹を成します。世界中の科学者たちがさまざまな表現の意味を共有することにより、科 学者同士の協力やコミュニケーションが可能となり、研究の進歩へとつながっています。 生徒は、科学に対する理解を深めながら、カミンズ(1979)が呼ぶところの認知学習言語 運用能力(CALP)を発達させていきます。 図2は、科目の学習を通してCALPを発達させる方法を設計するための枠組みです。 この枠組みは、以下で紹介する、グラフの理解およびデータ分析のための学習活動を計画 する際に使用されています。これらの学習活動は応用可能であり、学習におけるさまざま な状況において活用することができます。

(43)

C

ognitive

(認知)

A

cademic

(学習)

L

anguage

(言語)

P

roficiency

(運用能力)

指導法

背景知識を活性 化する 新 た な 学 習 の た め のス キ ャ フォールディン グ(足場づくり) を行う 実践を通して新 たな学びを得る 能力を発揮する 聴解力 発話力 対話力 読解力 作文力 指示用語と 思考力 図2:CALPの発展を設計するための枠組み

認知学習言語運用能力の発達を設計するための枠組みを

理解する

枠組みは表を使って体系化されており、CALPのスキルを構成する要素(学習言語運 用能力と密接に関連する思考力を含む)は縦の列に、指導法は横の行にそれぞれ配置され ています。背景知識とは、該当科目で使われる言語に関して生徒がすでにもっている知識 のことを指します。

背景知識を活性化する

背景知識は以前に学習した科目などから得られます。また、背景知識が全く別の言語に よって培われていることもあります。背景知識を活性化することで、新たな学習の土台を 築くことができます。

(44)

認知学習言語運用能力(CALP) 「生物」教師用参考資料 34

スキャフォールディング(足場づくり)と実践

スキャフォールディング(足場づくり)とは、学習者が自分の背景知識をベースにしな がら学びを広げ、より難しい課題を達成するための助けとなる方法です。スキャフォール ディング(足場づくり)のための学習活動は文脈化を可能にするため、新たに学習する情 報が生徒にとってしっかりと意味をもつようになります。また、新たな学びは実践を通し て体得されます。

認知学習言語運用能力を発揮する

新たに得られた認知学習言語能力(CALP)を、生徒が自らの力でさまざまな状況にお いて適用したり発揮したりできるようになることは、学習の成功を意味します。さらに、 このようにして得られた新たな学びは生徒の背景知識の一部となり、新たな段階でのより 発展した学習を支えるようになるでしょう。

認知学習言語運用能力の発展を設計するための枠組みを使う

上記の表のすべてのマス目を隈なく詳細に扱う必要はありません。多くの場合において、 1コマの授業の中では一部のスキルと指導法の要素にのみ焦点をあてることになるでしょ う。ただし、長期的に考えると、一連の授業もしくは探究の単元を通してすべての領域を 十分に扱うことが望まれます。

指導法に関する補足:アイデンティティーの肯定

生徒のアイデンティティーを肯定することは、CALPの発達を目的とする学習活動を 組み込んだ、実りある学習のための指導法を支える中心的原理です。アイデンティティーの 肯定には、言語を問わず生徒がもっているスキルや知識をはっきりとわかる形で尊重し、 これらを新たな考え方や学び方を指導・学習するためのリソースとして認識することが含 まれます。

グラフの分析に必要な認知学習言語運用能力を発展させる

グラフはデータ分析において使用される一般的なテクストであり、したがって、グラフ を正確に読み取ることのできる能力は学習における成功の鍵となります。履修開始時、 DPの生徒はデータ分析やグラフに関してそれぞれ異なる背景知識を持っているかもしれ ません。例えば、科学的なデータ分析においては正確性と客観性が重視されますが、中に は「莫大な増加」や「劇的に減少した」などのような表現に見られる形容詞や副詞を使っ たある種の主観的なグラフの読み取り方に慣れている生徒もいるでしょう。グラフを解析・ 作成する際に正確性と客観性を保つため、生徒は適切な言葉の使い方を学ばなければなり ません。

(45)

いており、次の4点を目標としています。 • グラフの説明に用いられる言語に関しての既得知識を活性化する。 • グラフの説明に用いられる学習言語を構築し、洗練させる。 • グラフの説明に用いられる学習言語を実際に使う機会を持つ。 • グラフの説明に用いられる学習言語に関する知識を定着させ、さらにこれを応用する。 (生徒のレベルや既得知識によっては、不要だと思われる学習活動もあるかもしれませ ん。ただし、これらの学習活動はグループ内のレベルの差を見つけるために役立つことが あります。また、状況によっては、言語サポートを専門とする教師と協力しながらこれら の学習活動を活用することもできます) 図3は、CALPの発達を設計するための枠組みの実例です。

C

ognitive

(認知)

A

cademic

(学習)

L

anguage

(言語)

P

roficiency

(運用能力)

指導法

背景知識を活性 化する 新 た な 学 習 の た め のス キ ャ フォールディン グ(足場づくり) を行う 実践を通して新 たな学びを得る 能力を発揮する 聴解力 学習活動4 発話力 学習活動2 学習活動4 対話力 学習活動2 学習活動2、3 学習活動3、4 読解力 学習活動2 学習活動2、3 学習活動3、4 試験問題 作文力 学習活動1、2 学習活動3 学習活動3、4 試験問題 指示用語と 思考力 指示用語:「簡単に述べなさい」(outline)「詳しく述べなさい」(describe) 思考力:「科学的な情報を伝える」(評価目標1、2より) 図3:CALPの発展を設計するための枠組みの実例

参照

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