グラフはデータ分析において使用される一般的なテクストであり、したがって、グラフ を正確に読み取ることのできる能力は学習における成功の鍵となります。履修開始時、
DPの生徒はデータ分析やグラフに関してそれぞれ異なる背景知識を持っているかもしれ ません。例えば、科学的なデータ分析においては正確性と客観性が重視されますが、中に は「莫大な増加」や「劇的に減少した」などのような表現に見られる形容詞や副詞を使っ たある種の主観的なグラフの読み取り方に慣れている生徒もいるでしょう。グラフを解析・
作成する際に正確性と客観性を保つため、生徒は適切な言葉の使い方を学ばなければなり ません。
いており、次の4点を目標としています。
• グラフの説明に用いられる言語に関しての既得知識を活性化する。
• グラフの説明に用いられる学習言語を構築し、洗練させる。
• グラフの説明に用いられる学習言語を実際に使う機会を持つ。
• グラフの説明に用いられる学習言語に関する知識を定着させ、さらにこれを応用する。
(生徒のレベルや既得知識によっては、不要だと思われる学習活動もあるかもしれませ ん。ただし、これらの学習活動はグループ内のレベルの差を見つけるために役立つことが あります。また、状況によっては、言語サポートを専門とする教師と協力しながらこれら の学習活動を活用することもできます)
図3は、CALPの発達を設計するための枠組みの実例です。
C ognitive
(認知)
A cademic
(学習)
L anguage
(言語)
P roficiency
(運用能力)
ス キ ル
指導法
背景知識を活性 化する
新 た な 学 習 の た め のス キ ャ フォールディン グ(足場づくり)
を行う
実践を通して新 たな学びを得る
能力を発揮する
聴解力 学習活動4
発話力 学習活動2 学習活動4
対話力 学習活動2 学習活動2、3 学習活動3、4
読解力 学習活動2 学習活動2、3 学習活動3、4 試験問題 作文力 学習活動1、2 学習活動3 学習活動3、4 試験問題 指示用語と
思考力
指示用語:「簡単に述べなさい」(outline)「詳しく述べなさい」(describe) 思考力:「科学的な情報を伝える」(評価目標1、2より)
図3:CALPの発展を設計するための枠組みの実例
認知学習言語運用能力(CALP)
「生物」教師用参考資料 36
学習活動1 背景知識を活性化する 目標
• データ分析およびグラフに関連する概念の理解と、これらに必要な学習言語に関する背 景知識を活性化する。
• グラフの説明に関連する学習言語および概念の理解を構築する。
成果
• すでにもっている背景知識や理解が活性化される。また、さらなる学習に必要なレベル にまでこれらを引き上げることができる(必要であれば)。
用意するもの
• ノート、異なる色のペンもしくは色鉛筆を2~3本(各生徒)
• 付箋(1人1~2枚)
手順
• 生徒に、グラフに関する理解、知識、語彙について、思いつくものをどんなものでも構 わないのでノートに書き出すように指示します(これにより、授業のトピックが「グラ フ」であることを示すことができます)。多言語使用の生徒に関しては、どの言語(も しくは使用できるすべての言語)を使っても構わないことを伝えます。書き出したもの を生徒同士で共有する必要はありませんが、助けが必要な生徒に関しては、周りのクラ スメートにサポートするように促しても構いません。書き出したものについては、授業 の最後でもう一度触れます。
• 授業の最後、もしくはある程度の時間をかけて背景知識を活性化・構築した後(例え ば、学習活動2の終了後)、生徒は、授業の最初のブレインストーミングにおいて書き 出したものを見返し、授業内で触れられたすべての用語や知識を色分けしながら囲んで いきます。新たに学んだことについては、別の色を使ってノートに書き加えます。最後 に、ノートに書き出したものの中で、授業内では触れられなかった知識や語彙を付箋に 書き、教師に提出させるようにしてください。
• この付箋は、さらなる指導のための情報として役立つ場合があります。例えば、付箋か ら、生徒が科学的な分析には適さない主観的な形容詞や副詞を使ってグラフを説明する ことに慣れていることがわかるかもしれません。また、この付箋が、生徒の言語プロ フィールや、他言語で持っている知識に関する情報を提供することもあります。
学習活動2
背景知識を活性化し、新たな学習のためのスキャフォールディング(足場づくり)を行う 目標
• データ分析とグラフに関連する概念の理解と、これらに必要な学習言語についての知識 を強化する。
• データ分析とグラフに関連する概念や、これらに必要な学習言語を新たに学ぶための足 場をつくる。
成果
• データ分析とグラフに関連する学習言語についての知識が定着する。
用意するもの
• 教室に掲示するための、サイズの大きいさまざまなグラフ
• 色の違うカード2組:1組目のカードにはそれぞれ用語が書かれており、2組目のカー ドにはこれらの用語に対応する意味が書かれている(図4を参照)。
手順
• クラス全員に見えるようにグラフを掲示します。
• 2組のカードを混ぜ、生徒にカードを1枚ずつ渡します。生徒は、単語と定義が合致す るよう、組み合わせの相手を見つけてペアを作ります。
• もしくは、クラスをいくつかのグループに分け、各グループに単語と定義のカードの両 方を渡し、組み合わせを作るように指示します。
• それぞれのペアに、単語とその定義を読みあげるように指示します。また、掲示してあ るグラフに言及することによって、単語の意味を文脈の中でも示すようにします。
• 定義のカードをもっている生徒にカードを伏せるように指示し、どの生徒が用語に対し ての定義を説明できるか、クラス全体に質問をします。続いて、用語のカードを持って いる生徒にカードを伏せるように指示し、どの生徒が定義と合致する用語を答えられる か、クラス全体に質問をします。
• いくつかの単語と定義が抜けている穴埋め問題のプリントを生徒に配布します(図5を 参照)。完成させたプリントは今後の参考のためにファイルに保管するように指示して ください。
認知学習言語運用能力(CALP)
「生物」教師用参考資料 38
1組目のカード 用語
*用語は生徒のレベルやニーズに合わ せて変えても構いません。
2組目のカード 意味
*これらは絶対的な定義というわけではないので、実際に使 われている他の説明で代用しても構いません。
X軸 グラフの横軸
Y軸 グラフの縦軸
変数 研究・調査に影響をおよぼす可能性のある、変化し得 る要因
独立変数 研究・調査において、研究者が操作する要因
従属変数 研究・調査から得られる結果
交点 線グラフにおいて、2本以上の線が交わる点
凡例 グラフにおいて、異なるデータを表すために使用され た色や形状などの記号の意味を解説したもの
正相関 独立変数が増加すると従属変数も増加する相関関係 逆相関 独立変数が増加すると従属変数が減少する相関関係 平坦域 独立変数が増加しているにもかかわらず従属変数が一
定のままである状態
~において最大値に達する その点において値が最大となる
増加した 数値が大きくなった
減少した 数値が小さくなった
図4:学習活動2のためのカードのひな型
生徒は以下の表において欠けている用語もしくは意味を書き入れます。
用語 意味
X軸
Y軸
変数 研究・調査に影響をおよぼす可能性のある、変化し得 る要因
研究・調査において、研究者が操作する要因
用語 意味 従属変数
線グラフにおいて、2本以上の線が交わる点
凡例
独立変数が増加すると従属変数も増加する相関関係
独立変数が増加すると従属変数が減少する相関関係
平坦域 独立変数が増加しているにもかかわらず従属変数が一 定のままである状態
~において最大値に達する
数値が大きくなった
数値が小さくなった
図5:学習活動2のための穴埋め問題
学習活動3:
グラフの分析に使用する言語を正確に扱うための教師のサポートを伴う実践 目標
• グラフの分析に関連する学術的言語を正確に実際に使う練習をする。
成果
• 実践を通して、グラフの分析に関連する学術的言語についての正確な知識が定着し始める。
用意するもの
• 図6のワークシート(各生徒に配布)
• 異なる色のペンもしくは色鉛筆
• 教師用に拡大した図6のワークシート(生徒全員に見えるようにする)
• 学習活動2の語彙リスト(図4をコピーすること)
認知学習言語運用能力(CALP)
「生物」教師用参考資料 40
学習活動3:
グラフの分析に使用する言語を正確に扱うための教師のサポートを伴う実践 手順
• 生徒を小さな作業グループに分けます。指導言語での学習に努力を要する生徒が、同じ グループの他のクラスメートから学ぶことができるよう、グループのバランスにはよく 気を配るようにしてください。
• 各生徒にワークシートと語彙リストを配り、以下のタスクに協力して取り組むよう説明 します。
- グラフの説明にあてはまる用語を見つけて書き出す。用語は何回使っても構 わない。
- グラフの説明に適切だと思われるその他の用語を別の色のペンもしくは色 鉛筆を使って書き加える。
- 語彙リストの中で使用しなかった用語を丸で囲む。
• 教師用に拡大したワークシートを使いながら、以下をクラス全体で確認します。
- 正確さ
- その他の同義語
- 科学的なデータ分析に主観的な言葉は適さないということ - 前置詞の重要性
*代わりの(もしくは追加の)学習活動として、クロスワード、単語探し、アナグラムなど を実施してもよいでしょう。
グラフのサンプル
(他のグラフと差し替えても構いません) 用語