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バイオ水素研究の過去・現在・未来:東京農工大学工学部 学部長/松永是

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Academic year: 2021

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水素エネルギーシステム Vol.28,No.2(2003) 巻頭言 -1- 巻頭言

バイオ水素研究の過去・現在・未来

東京農工大学工学部 学部長 松永 是 細菌や微細藻類により生成する水素をバイオ水素と呼んでいる。残念ながらバイオ水素 は、まだ実用化されていない。しかし、バイオ水素は、太陽エネルギーにより再生可能な クリーンなエネルギー源として将来期待されている。 バイオ水素の研究の始まりは、19世紀にさかのぼる。アメリカの研究者が、池にいる シアノバクテリア収集し、水素ガスを生成することを確認したのが、現在わかっている最 も古い論文である。20世紀には入り、細菌による水素生成が盛んに行われた。20世紀 の半ばになり、緑藻や光合成細菌による光水素生成が報告された。バイオ水素の研究を、 世界中が注目し多くの研究者が取り組んだのは第一次石油ショックの後であった。この中 で、バイオ水素研究で世界のトップを走り続けたのがマイアミ大学の三井旭教授であった。 三井教授はカリブ海を中心とした熱帯・亜熱帯の海からシアノバクテリアと光合成細菌を 探し続け水素生成能の高い株を見つけ出すと同時に、微生物の光水素生成の機構を明らか にした。 現在、微生物の水素生成方式は大きく次の3 種類あるといわれている。 1)細菌による暗水素生成―炭水化物を分解して水素を生成するが有機酸などの副生成物 が残る。 2)光合成細菌による光水素生成―有機酸や硫化水素から光エネルギーにより水素を生成 する。 3)微細藻類による光水素生成―水を分解して光エネルギーにより水素を生成する。 最後の水素生成に関与する酵素は、ヒドロゲナーゼまたはニトロゲナーゼである。ニトロ ゲナーゼは水素生成にATP を必要とする。1)の方式は、炭水化物を完全に分解できずに 副生成物として有機酸を生成するという問題点がある。2)3)の方式は、利用できる光 のスペクトルの範囲、クロロフィル系の光エネルギー変換効率にそれぞれ限界がある。 一方、近年ゲノム情報を用いた未知微生物の探索技術の進歩、燃料電池の小型化などの 新たなブレークスルーが起こりつつある。また、世界中でバイオマスの利用に機運が高ま っている。このような中で、バイオ水素の研究は新たな脚光を浴びるための素地ができつ つあるといっても過言でないだろう。昨年マサチューセッツ大学のLovely 教授らは、メデ ィエーターを使わずに電極に直接電子を渡す微生物を海から分離することに成功し、新た な生物燃料電池の可能性を示した。 これからのバイオ水素研究は、これまでの研究の積み重ねをふまえつつ、経済、エネル ギー、二酸化炭素バランス(効率)を考慮に入れて行われることが重要である。バイオ水 素生成プロセスは陸上だけでなく海洋にも目を向けて考えるべきであろう。バイオ水素の 実用化が行われる日が来ることを、研究者の一人として切望している。

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