会社法の見地か らの企業結合形成 段階の法規制 について ( 1)
野 田
目 . 次
Ⅰ
序
Ⅱ
企業結合形成段階の規制の視角( 1
) コンツェル ン形成 とコンツェル ン指拝 の区分
(2)上位会社の局面 と下位会社の局面 1.上位会社の局面
2.
従属 (下位)会社 の局面( 3 )
企業結合の実態 と規制の適合性 について
Ⅱ 規制 モデルの検討 ‑ 特 にコンツェル ン形成 における少数株主保護手段の三類
型 につ いて
(1) コンツェル ン形成阻止 モデル (以上 本号)
( 2 )
合意 (コンセ ンサス) モデル‑ 契 約上の利害調整(3)代償 モデル
Ⅳ 結 び
〔83〕
悼
8 4
Ⅰ 序
商 学 討 究 第 41 巻 第 4
号企業結合関係 とい う事象を会社法の観点か ら問題 にす る場合, その結合関係 が形成 され る段階を捉 えて, その段階で利害調整 をはか ることが実 り多 い成果 を もた らすので はないか。 こうした着想が,従来 いずれか とい うと結合関係 が 既 に存在す る段階 ‑ 企業結合 のいわば静 的な状態 ‑ を規制 の対 象 とす る ものであった ドイツ株式法 におけるコンツェル ン法 の もとで,関心 を集 めてい る
1)。その ことは, わが国の文献 において も,既 に言及 され て い る
2)。本稿 も 同様 の関' 山 こもとづ くものであるが, その際考慮 に入れてお くべ き様 々の観点 があると患われ る
。企業結合の形成 の段階 において利害調整を考 えなければな らないとす る着想 の本質的な機能 の一つ は,企業結合関係 の存続中従属会社 の少数株主および債 権者 は限 られた範囲で保護 され るにす ぎない との認識 の もとで,その保護 は, よ り前 の段階,すなわちいわゆるコンツェル ンの形成時, またはさ らには従属 性 の成立時‑ と移 され る必要があ り, そ こにおいて保護 は強化 され うるとい う
ことである
3)01 )例 えば ,Be hr e ns,Re c ht s pol i t i s c heGr unds at z f r age nz ue i ne rEur opai s c he n Re ge l ung f 也rUbe r nahme ange bot e,ZGR1 9 7 5 ,
S. 4 3 3 , 4 4 0.Wi e de mann , Di eUnt e r ne hme ns gr uppei m Pr i vat r e c ht( 1 9 8 8 ),
S. 4 0 f f . Lut t e r,St andund Ent wi c kl ungde sKonz e r nr e c ht si nEuropa, ZGR1 9 8 7, S. 3 2 4, 3 4 8. Ti mm, Zur Sac hkont r ol l eYonMe hr he i t s e nt s ' C he i dunge ni m Kapi t al ge s e l l s c haf t s r e c ht
,ZGR1 9 8 7,
S. 4 0 3, 4 2 3 f .Homme l ho f f , Konz e r nmode l l eundi hr eRe al i s i e r ung i m Re c ht ,i n: Dr ue y( Hr s g . ) ,Das
St.Cal l e rKonz e r nr e c ht s ge s pr ac h( 1 9 8 7 ) , S. 1 0 7,1 1 5 f .
2 ) 早川勝 「 競業禁止 と会社 の従属関係 ‑SGs s e n 事件 を中心 と して ‑ 」 産 大 法学 1 7 巻 1・2
号 (昭5 8 )1 0 1 貢。前 田雅 弘 「支配株式 の譲渡 と株式売却 の機会均等 (
‑)」法学論叢 1 1 5 巻 4
号 (昭5 9 )6 4 頁 ,8 2‑8 3 頁。神作裕 之 「商 法 にお け る競 業 禁 止 の 法理 (
≡)」法協 1 0 7
巻1 0
号 (平2)1 6 1 7 頁。 また, これ よ り早 く事前 の保 護 の必 要 性 を指摘す る もの と して,久保欣 哉 「株 式 会 社 法 と私 的 自治 」 一 橋 論叢 7 9 巻 4 号 ( 昭 5 3 )4 6 9 頁。 なお,宮 島司 「外部株主保護 の法理 」 『 企業結合法 の論理
』 (平1)
所収8 6 頁 も参照。
3 )Homme l ho f f ,aaO( Fn. 1) ,S. 1 1 5 f .
会社法の見地か らの企業結合形成段階の法規制 について (
1) 8 5 企業 の結合関係 は様 々な方法 ・手段で形成 され るが,結合 の基本 は株式 の所 育 ( 資本参加)であ る
。次 のよ うな方法が考え られ る
。まず,統一的指揮を可 能 にす るだ けの持分 の取得 によって他 の会社 の支配 を取得す る場合であ り, こ れには, いわゆる支配株式譲渡,公開買付 および市場 における株式 の大量買集 め といった方法 のと られ ることが考 え られ る。次 に, ( 支配) 企業 か らその企 業 の一部 を新設 または既存 の ( 従属)会社 に分割す る場合 ( いわば自己増殖) がある
4)。 さ らに,大量 の新株 を発行 して特定 の第三者 ( 企業) に割 当て る方 法 の とられ る場合があ り, これに関連 して は, これまでの完全子会社 に外部 の 第三者 が株主 として新 たに受 け入れ られ る場合5 )も考 え られ る。‑ なお結合 の要 素 には, その他,取締役 の兼任や派遣 とい った人的 な結 びつ きや契約 に よ る結
びつ きが存す るが, その場合 にも資本参加 を基礎 に している場合 が多 い。
これ らの企業結合形成 に関す る個 々の措置 につ いて,従来,企業結合法的側 面か らの体系的な把握が不十分であ った ことは否定で きない。それ らの事象が,
4)企業分割 に関す る規制 はわが国には存在せず, これまでは通常,事後設立 の方法 が とられて きた。すなわち, まず金銭 出資 により新会社を設立 し, その後新会社 と譲 渡会社 との間で営業を譲渡す る方法である。譲渡会社および新会社の双方 において, 株主総会 の特別決議が必要 となることが多 い (商
2 4 5
条1
項1
号・2 4 6
条)。 不賛成の株主 には株式買取請求権 (商
2 4 5
条 ノ2)
を与え, 投 下資本 を回収 して経済 的救 済を得 る途が開かれる。新会社の株主 は実質上親会社だけであるか ら問題 は存 しな い。親会社の局面での利害調整 については,株主および債権者の保護 が不十分 で あ ると指摘 されている。鈴木竹雄 ・竹内昭夫 『会社法 〔新版〕
』 (昭6 2)5 0 2
貢以下参 照。 なお,平成2
年改正商法 において, いわゆる一人設立が可能 とされ る (新商法1 6 5
条参照) とともに,現物出資 ・財産引受 ・事後設立 に共通 した規制 が実現 され る (新商法1 7 3
条2
項・3
項,1 81
条2
項,2 4 6
条3
項) こととな り, 以前 の よ うに 事後設立の方法 に限 らず,現物出資,財産引受の方法 もそれぞれの場合 に応 じて合 理的に振 り分 け られ,活用 されることになろう, とみ られる。丸山秀平「 M&A
に かかわ る法制度を理解 しよう」法学 セ ミナー1 9 9 0
年1 2
月号 (「特集企業 の結 合, 法 的問題 はどこに」)44貢。さらに,分割の場合,支配の交替 とは別 の法的 ・経済的根拠 を もち, そ して とり わけ地域的,国家的に適合 させ, リスクを限定 し,税上の利益を実現 しまた は法律 上の監視規制を回避す ることに役立っ ことを指摘 す る もの と して,
Wi e de mann
,aaO( Fn.
1)
S. 4 2.
5 )Lut t e r,aaO( Fn.
1),S. 3 4 8 f .
これは,新 たに企業結合 が形成 され る場合 とは異 なるが, この企業結合 の継続的形成 の意味について は,本稿Ⅱ(2)1
で言及す る。8 6
商 学 討 究 第41巻 第4号独立 した会社 を規制 の理念型 とす る伝統的な会社法秩序 によ っては,全 く問題 . ̀ にされないか, または別 の観点 でのみ問題 にされ るとい うことも, その原因 の 一つであ ったか と思 われ る6 ) 。 ただ, それ らの措置の企業結合法 的 な側面 に着 目す る議論が,近年 わが国で もみ られ るよ うにな って きて い る7 ) 。 次 の ことが 指摘 され る
。支配株式譲渡 は,非支配的 ブロ ックの株式譲渡 と同 じ形で行 なわ れ,現行商法上譲渡 の対象 とな る株式 の量 によ って株式 の 自由譲渡性 ( 商 2 0 4 条 1 項本文) は区別 されないのであ って,法令 ・定款 による譲渡制限 にあた ら ない限 り,会社 の介入が及ぶ ことはな く,支配企業 ( 社員) としての地位 は, 全 く持分所有者 の私的な領域 に属す ることとな る
。しか し,支配株式の譲渡は, 支配権移転を伴わない少量 の株式 の譲渡 と本質 を異 にす る。すなわち,支配権 移転を伴 わない少量 の株式 の譲渡 は,通常,取 引当事者 ( 売手 串よび買手) に 関係す るのみである
。持分 は他 の者 の手 に移 るが,当該会社 の持分価値 および 他 の株主 の立場 は影響 を受 けそ うにない。 これに対 して,支配株式譲渡の場合, 当該会社 の価値 に影響 を もた らし8 ),他 の株主 の立場 も必然 的 に変化 を被 る こ
とになる
9)。公開買付 による支配権取得 の場合 も状況 は同様であ り, 公 開買付 は取得 されない株式 の価値 にも影響 を与 え るもの と考 え うれ る。対象会社 の株 式 は,公開買付 の結果,一般的 に, (これまでの)独立 した会社 持分 とは異 な る ‑ 高 いにせ よ低 いにせ よ ‑ 価値 を持っ ことにな る。 この ことは, これ まで 「 独立 した ( 対象)会社 の株式」であ った ものが,「 取得 された ( 対象)
6 )Wi e de mann,aaO( Fn.
1), S . 4 3.
7)いわゆる支配株式譲渡 につき,前田 ・前掲注2)。 また第三者割 当の方法 による新 株発行 につ き,森本滋 「新株の発行 と株主の地位」 法学論叢
1 0 4
巻2 号 ( 昭 5 3) 1
頁,同 「第三者割当をめ ぐる諸問題(1
)」金融法務事情1 2 3 8 号 ( 平 1) 6
頁,8
頁,宮島司 「企業結合 と新株の有利発行」
『企業結合法の論理』 (前掲注2 )) 所収
2 4 5
頁。8)「支配株式の譲渡 は会社の支配株主の交替を意味 し, ひいて は経営陣の交替, 経営 方針の変更 に至 る可能性を持っ。それゆえ良 くも悪 くも会社 に急激な変化 を及 ぼ し
うる」。前田 ・前掲注2)
6 5
頁。9 )Be bc huk,Towar dUndi s t or t e dChoi s eandEqualTr e at me nti nCor por at e
Take ov e r s,9 8 Har v.LRe v.1 6 9 3,1 7 1 5.( 1 9 8 5 )
会社法の見地か らの企業結合形成段階の法規制について
(1) β7 会社 の少数派株式」 に変容す る1 0 )とい う事態を意味す る。 ただ,株式公開買付
の場合 には,証券取引法上 の厳格 な手続 に従 って行 われ ることが要請 されてい る
。この もとで,株主 は熟慮 の上で対応で き, また株主間の公平 も確保 され る ことか ら,利害調整のための制度が比較的整備 された領域 といえる 1 1 ) 。さらに, 企業結合関係 を形成 ない し強固 にす るために第三者割当の方法 による新株発行 がなされ る場合であるが, ここで は資金調達 とい う業務執行的側面 よ りも会社 の支配関係 に質 的変更 を加え るとい う意味において,組織法的側面 が前面 に出 て くる,と把握 され る。 しか し,現行法 は, このよ うな ことを必ず しも十分 に は考慮せず に,発行価額 と発行方法の公正 を個別的 に問題 とす る ( 商 280 条 ノ 2 第 2 項 ,280 条 ノ 1 0) 。発行価額が公正であ る限 り株主 は持株比率 の維持 を主 張 しえず,支配権争奪等 の場合 に不公正発行 との関連 において持株比率の維持 が問題 となるにす ぎない
12)。新株引受権 を法定せず
13), しか も場合 によ って は 取締役会 が四倍増資を も行 い うるわが国の規制 は,諸外国の規制 と比較 して極 めて異例 ともいえ るほど取締役会 に強力 な新株発行権限を与 えていると指摘 さ れ る
14 ) 0
以上,企業結合 とい う事象 の うち, ここでは資本参加を基礎 とす るものに限 っ たが, その形成段階の個 々の措置 につ いての会社法上 の法規制 は,企業結合法 的観点か らさ らによ く考 えてみ る広範 な余地 を残 しているといえよう。 しか し,
1 0 )I bi d.
ll)詳 しくは,本稿Ⅲ (3)参照。
1 2 )
森本 ・前掲注7)
(金融法務事情1 2 3 8
号)8
頁。なお, 現行法 の解釈 と して, 特定 の第三者に対 して支配的地位を付与ない し強化するような新株の第三者割当につき,「支配株式」の価値の分析を通 じて,株主の経済的利益 を保護すべ きことで は共通 するか ら,商法
2 8 0 条 ノ 2
第2
項 による株主総会の特別決議要件 を借用で きるとす る見解 も存する。森淳二郎 「支配株式の価値の法理」
『商事法 の解釈 と展望 (上柳 還暦)」(昭5 9 )
所収1 9
頁,2 9
頁。1 3 )
平成2
年改正商法 は,株式の譲渡制限の定めを した会社の株主 は,原則 と して新株 引受権を有するものとす る (新商法2 8 0 粂 ノ 5 ノ 2
第1
項) が, 株式 の譲渡制限の ない会社 については,旧法を受 け継いでいる。1 4 )
洲崎博史 「不公正な新株発行 とその規制 (二)」民商法雑誌9 4 巻 6
号 (昭6
1)7 31
頁。イギ リス, フランス, ドイツ,アメ リカとの対比がなされている。
β β 商 学 討 究 第
41巻 第
4号この検討 に際 して は,考慮すべ き多 くの要素 の存す ることが,近時の ドイツ法 ̲ の議論か ら見て とることがで きる。 また, むろん,形成段階の規制を企業結 合 法制全体か ら切離 して考 えることに限界 のあることは認識 しなければな らない。
後述す るように,企業結合形成時の規制 は, その運営時 における規制 と密接 な 相関関係 にあるといわれ る1 5 ) 。 ところがわが国法では,運営時 について も, 断 片的な規定がそれに関係す るのみで,未整備 の状態 にある1
6)。その状態で固定 してみ ることは,必ず しも妥当 とはいえない。 また,従来比較法的研究 の対象 とされて きた諸外国 にお ける企業結合 の運営時 の規制 をみて も,利害調整の方 法や程度 は様 々である。従 って,本稿 において は, Ⅱで,結合関係 の形成時 に おいて規制 を考 える際の様 々な視角を,主 に近時の ドイツ法 における議論 を参 考 に しなが ら, 明 らか に し, Ⅱで は,考 え うる規制 モデルについて, その妥当 す る範囲や限界 ・問題点 を明確 にす ることを課題 とす るにとどめざるを得ない。
Ⅱ 企業結合形成段階の規制の視角
会社法 の観点か ら企業結合関係 の形成 を捉 えようとす る場合 には, ある会社 を他 の会社,すなわち支配企業 に対す る従属状態へ導 き, また この従属性を強 め るすべての法律行為 またはその他 の措置が重要であ る
17)。具体的な個 々の措 置 は,序 において例示 した。従属性 の程度 には, たん なる多数持分取得 ( 資本 参加)か ら最終的な合併 まで,様 々な段階が存す る 1 8 ) 。合併 はその完成後企業 が単一 にな って しまい, ・複数企業間の結合関係 を残 さない。
1 5 )Lut t e r,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 3 4 8.
1 6 ) 企業結合についての現行法規制の状況を整理するものとして,森本滋 「 企業結合」
『 現代企業法講座 2 ( 企業組織
)』( 竹内昭夫 ・龍田節編) ( 昭 6 0)
所収9 7 頁 ,1 0 9 貢 以下,早川勝 「 結合企業に対する現行法規制の素描」産大法学 2 4
巻1
号 (平2) 1 7 頁,等を参照。
1 7 )Wi e de mann,aaO ( Fn. 1 ) , S. 4 1 .
1 8 ) ドイツ法のもとで ,Ti mm,aaO ( Fn. 1 ) , S . 4 2 3. は,いくつかの企業の新 しい経 済的または法的単一体への統合の過程を,次の四つの段階に区分する。すなわち,
①過半数株式の取得,②過半数支配の行使
(「 事実上のコ・ ンツェルン化
」),③契約
会社法の見地か らの企業結合形成段階の法規制について (1) 8 9 この支配 ・従属 関係 な い しは コ ンツェル ンの形成段 階 の意 味 につ いて, ドイ ッ法上判決 お よび学 説 にお いて,様 々の角度 か ら光 が当 て ら打 る。 その契機 と な ったの は Si i s s e n 判決 で あ り, そ こで は予 防 的保護 の考 え方 が示 され た。 さ らに Hol z mul l e r 判決 で は別 の手 がか りが明瞭 に述 べ られ, 学 説 も コ ンツ ェル ン形成 の問題 に段 階 的 に近 ず く。
(1 ) コ ンツ ェル ン形成 と コ ンツ ェル ン指 揮 の区分
企業結 合 とい う事 象 は, 時間 の流 れ に沿 って考 え る と, 企業結 合 の形 成 とい う段 階 とそれ に続 くグル ー プの運営 ( 執行 ) とい う段 階 に区分 され る。 この区 分 は, ドイ ツの最近 の コ ンツェル ン法上 の議論 にお け る新 たな体 系化 に際 して 重要 な役割 を果 た して い る
19)。それ は,事 実上 の コ ンツ ェル ン, 契約 コ ンツ ェ
ル ンお よび編 入 とい う法律上 定 め られ た分類 とは別個 の区分 であ って, コンツェ ル ンの入 口, 移転,存続 お よび終 了 の間で保護規 制 を区分 しよ うとす る。大雑 把 に は, その構想 は , 「コ ンツ ェル ン形 成 規制 ( Konz e r nbi l dungs kont r ol l e) 」
お よび 「コ ンツェル ン指 揮 規 制 ( Konz e r nl e i t ungs kont r ol l e) 」 とい う見 出 し 語 に還 元 され る 2 0 )。
この両者 の関係 につ いて は, まず,単独 の会社 にお いて会社設 立 お よびその
コンツェルン,④合併 ・編入,の四段階である。ただ,例えば事実上 の コンツェル ンで も,分権的に営まれ, コンツェルン指拝が従属会社の取締役によって 自治的に 利用 されるべき広範な責任領域を残す場合 もあれば,強度に集権化 され, 従属会社 取締役には限 られた自治領域が残 されるにすぎない場合 も存す るように, さらに細 分化することも考え られる。なお,早川 ・前掲注 2)1 2 9 ‑1 3 0 亘参照。 ところで, コンツェルンの一般的特質 としての統一的指揮 ( 株式法 1 8 条参照)は上記 の分権的 に運営 される組織体において もう成 り立っ ものであり,その際上位会社 に配 された コンツェルン指拝 は,資金投入に関する独自の構想を伴わない財務上の認許の決定, または下位会社の最高地位 の人員配置 に限 られ る 。Dr ue y,Ze nt r al i s i e r t e rund de z e nt r al i s i e r t e rKonz e r n‑i s tdi eDi f f e r e nz i e r ung r e c ht l i c h wi i ns c hbar undr e al i s i e r bar?i n:Dr ue y ( Hr s g.) Das S t . Cal l e rKonz e r nr e c ht s ge ‑ s pr ac h ( 1 9 8 7 ) ,S. 8 9 ,1 01.統一的指揮概念の理解の移 り変わりについて, Wi e de ‑ mann,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 4. 参照。
1 9 ) Homme l ho f f ,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 1 5.
2 0 ) H。mme l ho f f , aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 1 5. なお,「コンツェル ン指揮」ゐかわ りに 「コン
9 0
商 学 討 究 第
4 1
巻 第4
号後 の構造上 の措置が通常 の業務執行 と質 を異 にす るものとみ られるように, コ ンツェル ンの形成 に関す る行為 には企業指揮力の行使 とは別の行為規制が求め られると説かれ る
21)。コンツェル ン形成 は, コンツェル ン法のアルキメデスの 点 ともいわれる2 2 ) b また, コンツェル ンの形成段階での利害調整が効率的に行 われるよ うになるにつれて,従属会社の保護法制 は柔軟 に組立 て られ うるとの 認識が存す る2 3 ) 。その意味で,両者 は緊密 な相関関係 にあるといえる。 しか し,
コンツェル ン運営時の規制が不要 になるわけではない。一つ には, これまでの 運営時の規制が従属会社 の外部者保護 につ き限 られた機能 しか有 していなか っ た として も,その ことが,保護機能を高 める方向での改善を しな くてよいとい うことにはな らないことである2
4).いま一つ は,コンツェル ン入 口において, 殊 に 「 欲す る者 に損害 は与え られない ( vol e nt iDonf i ti ni u ri a) 」 に もとづ い て従属性が存在す る場合 に,保護 を強調 し過 ぎることは, コンツェル ンとい う 近代的な, そ して非常 に成功 した軍繊形態がその多種多様な活動を法規制をか
い くぐってその領域外で広範 に展開す るという結果 にな りかねないことである 2 5 ) 。 そのため,形成時 と運営時の両規制 は,両者 の調和 に配慮 しつつ, 共 に発 展 させ るべ きもの と思われる。
(2)上位会社の局面 と下位会社の局面
コンツェル ン形成/ コンツェル ン運営 という区分 に加え,近時の ドイツコン ツェル ン法の議論 において,規制 の必要 は上位会社 と下位会社 の二つの局面 に 分 けて考慮 され る。
ツ ェル ン運 営
( Konz e r nf i i hr ung) 」 という見出し語が用いられることも多い。
Lut t e r,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 3 4 4 f f . ,Wi e de mann,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 40f f . 2 J l ) ‑蔽 占 de ma益n,aao ( i l n. 1 ) ,S. 4 1 .
2 2 )Wi e de mann,aaO ( Fn. 1 ) , S. 41 .早川
・前掲注2)1 2 4 頁。
2 3 )Lut t e r, aaO ( Fn. 1 ) ,S. 3 4 8.
2 4 )Homme l ho f f ,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 1 6.
2 5 )Homme l hof f ,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 1 6.
会社法の見地か らの企業結合形成段階の法規制 について
(1) 9 1 1 .上位会社の局面
企業結合法の問題 は,主 として従属会社 に目を向けて発展 きれて きた。上位 会社の局面 における規制の必要性 は断片的に考慮 され るのみであった
26)01 97 0 年代 に,上位会社, ことにその機 関 に着 冒 した試 みが, Ma r c u sLl l t t e r お よ
びその門下 の学者 によ って進 め られ た。 それ は, 「コ ンツェル ンの内部構造 ( Bi nne ns t r u kt u rd e sKo nz e r ns ) 」 と呼ばれ る問題 に属す る
。そ して それ は, 遅 くとも連邦通常裁判所 ( BGH) の Ho l z mn 1 1 e r 判決
27)によ って法律家 の関 心 をひ くこととなった。同判決‑の反響 は圧倒的に批判的であったが,他面, コンツェル ン法 にとっての取締役 と株主総会 との間の権限配分を改めてよ く考 えてみるべ き広範 なきっかけを提供 したとも評 されている2
8)0さて, コンツェル ンは,経営経済学的な視点か らは,集権的または分権的な 形で運営 される一個の企業 として理解 され る組織形態である
。法 は, その規制 2 6 ) Wi e de mann,aa O( Fn.
1),S. 3 9 f .
次の諸規定が関係す る。 株式法1 3 1
条1
項2
文 (株主の解説請求権 に関 して,取締役の 「解説義務 は結合企業 に対 す る会社 の法 律上および営業上の関係 に も及ぶ」)
;2 9 3 条 2
項 (企業契約の締結の ため総会 の同 意 を要求す ることに閲 し,
「支配契約 または利益供出契約 は, 契約 の相手方 が株式 会社 または株式合資会社であるときは, この会社 の総会 もまた同意す る場合 に限 り 有効 になる。
‑」) ;31 9
条2
項(
「編入 に関す る決議 は, 将来 の主会社 の総会が同 意す るときに限 り有効 にな る。」)なお,慶応義塾大学商法研究会編 『西独株式法』( 昭 4 4 )
を参照 した。2 7 )BGHZ8 3 , 1 2 2 .
本件 において問題 とな ったのは,株式会社の株主が次 の場合に決定 に 参加する権利を有するかどうかであった。 すなわ、ち,業務執行機関が, 決定 的 な意 味を もつ事業部門をそのために新 しく設立 した1 00%
子会社 に分離 し, 子会社 において増資が意図 されている場合。
連邦通常裁判所 は,当該分離 についての絵会の同意権 を, 株式法
1 1 9
条2
項 (莱 務執行上の問題 に関 して,株主総会 は,取締役が これを請求す るときにか ぎ り決定 す ることがで きる, と定める規定) にもとづ き,肯定す る。それによって, 取締役 は,
「株主 の権利および利害 に重大 な介入」がなされ る場合 には,例外的に総会 の決 定 を導 くことを義務づけ られ る。 それ とな らんで,子会社 の設立後の定款 にかか わ る措置に際 し, これにも親会社総会が決定 に参加す る権限を認 めるには, 規定 が な くとも,その法の欠鉄 は,株式法の体系 と評価 により補充 されるべきもの とす る。その ことは,子会社 における増資について,親会社の取締役が営業財産 の最 も価値 のある部分を完全従属子会社 に移す とき,常 に妥当す るものとされる。本件を紹介 ・ 検討す るもの として,早川勝 「コンツェル ンにおける上位会社の局外株主 の保護‑
Hol z m ii l l e r
判決 を中心 と して‑」産大法学1 9 巻 4 号 ( 昭 6 1 ) 1
頁.2 8 ) Wi e d e ma n n,aa O( Fn.
1),S. 5 0 .
9 2
商 学 討 究 第41
巻 第4
号を個 々 の コ ンツ ェル ン構 成 会 社 に対 して の み用 意 し, 全 体 と して の結 合 体 に対 して は備 え て い な い
。Lut t e r
学 派 は, コ ンツ ェ ル ン構 成 会 社 の 法 律 上 お よ び 組 織 上 の独 立 性 に は触 れ る こ とな く, 企 業 結 合 体 の核 心 を求 め て現 代 的 な単 一 性 理 論 を立 て よ う と試 み29), コ ンツ ェル ンの 内部 秩 序 は, む しろ, 支 配 企 業 の 機 関 が 同 時 に, コ ンツ ェル ン機 関 の役 割 を 引受 け, そ して あ るい は存 しうる企 業 契 約 が コ ンツ ェル ン法 上 の基 本 秩 序 の要 素 を含 む こ とを通 して, 確 立 され る べ きで あ る と考 え る30)。 この方 向 の探 究 の成 果 は, 形 成 段 階 に関 して は, と り わ け子 会 社 の統 合 ・分 離 に よ って支 配 企 業 に生 ず る権 限 お よ び持 分 構 造 の変 更 に注 意 が 向 け られ る こ とに存 す る。 す な わ ち, 当初 単 一 企 業 と して成 立 した会 社 が垂 直 的 に連 続 して細 胞 分 裂 す る こ と を 通 して , 上 位 会 社 の 執 行 機 関 だ け (も し くはそ れ に加 え∴ 対 応 す る人 事 政 策 を とお して上 位 会 社 の 多 数 社 負 ) が 影 響 力 を行 使 し うる措 置 の範 囲 が極 め て増 大 す る可 能 性 は看 過 し得 な い31)。2 9 )
古典的な単一体説 と対比。古典的な単一体説の端初 とな った論者 はI s ay
で あ る。I s ay,DasRe c htam Unt e r ne hme n ( 1 91 0 ) 0
「イザイはここで,合 目的々に組織 された人及び経済財 の総体 たる企業 には,企業者 とその機関によりて作 られた る無 体財産が体現 して居 り, この財産 に企業権( Re c htam Unt e r ne hme n)
が存在 す ることを認 め,更 に進んでかかる単一の企業権 は,彼の所謂総合企業又 は複合企業 換言すれば経済的単一体を為す全体企業 にも,仮令その各部分が各別個 の権利主体 に属す る場合 に於て も,存す るとな し,実質上単一なる企業を,それが外面 的 な原 因により二つの法律的形態 をとるの故 に,二つに分離す るのは純形式主義 で あ ると 為 している。単一体説 はここか ら出発 して,而 も単 に全体企業 に於て単一 の法益 を 見 るのみな らず,進んで多数 の結合せ る企業の法律的単一体をまで も論結 せん とす る。従 って内部関係 に於 ける経済的単一性 を概念的要件 とす るコンツ ェル ン及 び ト ラス トをば,法律 的 に も亦独 自の団体 と して見 ん とす るので あ る。」 大 隅健一郎『企業合同法の研究』 (昭
1 0 )1 7 8 ‑1 7 9
頁。 (なお,引用 に際 し, 旧字盲新字体 で表 記 した。) この古典的な単一体説 に対 しては,従来 よ り消極 的 な見方 が な されて き た。 その着想 は,企業結合 の基本 となる前提,すなわち個々のコンツ ェル ン構成会 社 の法律上および組織上の独立性を危 くし,従来解決で きなか った利益衝突 を蘭 整 しうるわけで はな く, また企業 の組織 自由性を制限す るとも思われるか らで あ る。Wi e de mann,aaO ( Fn.
1),S. 1 5.
3 0 )Wi e de mann,aaO ( Fn.
1),S. 1 6.
3
1)一例 として,株主 の新株引受権を法定す る ドイツ法の もとでの議論であ るが, 次 の ことが示 され る。増資 は, コンツェル ンにおいて, コンツェル ン上位会社 にお いて 実行 されるので はな く,む しろその分枝 (子会社 または孫会社) にお いて行 われ る こともある。 そこで新株主 の受 け入れについて,場合によっては,上位会社 の業務会社法 の見地か らの企業結合形成段階の法規制 について ( 1) 9 3 このように,上位会社 の局面で は,他 の会社 に対す る影響力の行使 または営 業活動 の全部 または一部の子会社への移転 によって支配企業 の機関の任務 およ び責任が どのよ うに変化す るかが問われ, そ してその際, コンツェル ン形成お よび指揮 との関係で,上位会社 の株主 に対 してその決定への参加権 を保障 しよ うと努 め られ る
32)0以上 は,企業結合法 を保護法 としてだけでな く,組織法 としての側面 に も光 を当て る試みであ り,誰が コンツェル ン形成を決定す るか, その際少数派 に対 しいかなる保護 を用意す るか とい う形成段階の問題 は,その一環 として捉 え ら れ る3
3)。その構想 の射程 は広範 に及ぶ。 コ ンツェル ンは創設 され,相互 に融 資 がなされ,指揮 および監視がなされねばな らず, その構成体 の もとでの内部的 な利益衝突が解決 されねばな らず,情報が提供 され,決算報告がなされねばな らない.そ してある日,再 び結合関係が解消 され ることもある3 4 ) 。 このように, コンツェル ン自体 は独立 した法人でないにもかかわ らず,全体 としてのコンツェ ル ンにおいて個別 の会社 において生ず るの と同 じ問題が生 じる。後 にみ るコン ツェル ンの利点3 5 ) . と合 わせ考 えてみ ると, コンツェル ン自体 が確か にあ る意 味
執行機関 (または間接的 に上位会社 の多数株主)が少数派 の関与 な しに決定 す る こ とにな る。 コンツェル ン分枝 たる子会社や孫会社 に他 の社員を受 け入れ る場 合, こ の事象 は,つ きつめて考 え ると, コ ンツェル ン上位会社 における株主 の新 株 引受権 の排除 と何 かある形で似 ていないか,の問題 が生 じる 。 Ti mm, Mi nde r he i t e ns c hut z undunt e r ne hme r i s c heEnt s c he i dungs f re i he i t1 m Mut t e r unt e r ne hme n,ZHR 1 5 3( 1 9 8 9 ) , S6 0, 6 1 .
3 2 ) 子会社 の分離 および参加取得 は, なお完全 には一致 していないが,支配 的 な学説 に よれば, 会社 な い し上 位会 社 株主 の同意 に服 せ しめ られ る 。Homme l ho f f , aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 2 6. コンツェル ン運営段階の支配会社 におけ る法規制 につ いて は, そ こでは , 「コンツェル ン形成 の際 に推奨 され た総会の関与 の義務 づ けが, コ ンツェ ル ンの運営 に も及 ぼされ るべ きであ るか どうか」が問われ, その際には, また 「い かなる措置が コンツェル ンの ( 継続的)形威 に, そ していかな る措置 が コ ンツ ェル ン指棒 に含 め しめ られ るべ きであるかが問題 にな る」とされ る 。Wi e de mann,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 7 0.
3 3) Lut t e r
,ZurAu短abee i ne sKonz e r nr e c ht s: Sc hut zvorMi s s brauc h ode r Or gani s at i ons r e c ht ?,i n :Dr ue y( Hr s g. ),DasS t . Gal l e rKonz e r nr e c ht s ‑ ge s pr ac h,S. 2 2 5, 2 3 0 f f .
3 4 )Lut t e r,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 3 2 9.;de r s.aaO ( Fn. 3 3 ) ,S. 2 2 9 f f .
3 5 ) 本稿 Ⅱ (3) 参照。
9 4
商 学 討 究 第41
巻 第4
号を もたねばな らな いが,個別 企業 にお いて上 記 の問題 は事細 か に規制 され て い るの に対 し, コ ンツェル ンにつ いて はほ とん ど規 制 が な されて こなか った。以 上 の認識 を出発 点 に,
Lut t e r
は, 株式会社法 お よ び有 限 会 社 法 が組 織 法 で あ るの と同 じ意 味 で コ ンツェル ン法 もまた組織 法 と して理解 され るべ き ことの正 当性 を力説 す る36)。 そ して, コ ンツ ェル ン法 の現在 の状態 を,会社 法 が発 展 せ られ た1 7 5 0
年 か ら1 85 0
年 の間 の法状況 と類似 して い る と し, 「我 々 は ス ター ト 地点 に立 って い る。̲我 々 はあ る意 味 で よ り高 次 の段 階 へ と, 会社法 の新 しい章に進 む」37)と述 べ る.
こ う した,コ ンツェル ンに属 さない個別 の会社 の法 と並行 して独 立 した コ ン ツェル ン法 を構 想 す る考 え方 に対 し, 「確 か に大 きな思 考 上 の躍 動 を感 じさせ る もので あ るが, しか し私 の印象 で はそれ に もかか わ らず, た った今行 わ れ な ければ な らな い ことと も優先 に値 す る こと と も思 わ れ な い」 38)と
Homml hof f
は評 す る。 その評価 はわが国 の法状況 にお いて い っそ う妥 当す るよ うに思 われ る。コ ンツェル ンの関係 を秩序 づ け,利 益 を保護 す る法 は,まず は,コ ンツェル ン 頂上会社 の法, コ ンツェル ン下 位会社 の法 お よび個 々の コ ンツェル ン構成 会社のみを対象 とす るに ととま らず, それ らの間 の連結線 をめ ぐらす法規制 の総体, の三 つ の基点 よ りそれ ぞれ注意 廉 く発展 せ られて い くべ き もの と思 われ る39).
3 6 )Lut t e r, aaO ( Fn. 3 3 ) ,S. 2 2 9 f f
.なお,わが国の学説 において,例えば, コ ンツェ ルンの合理的運営のために,現行法上問題のあることを指摘 し,
「コンツェル ン政 策を効果的に遂行することを可能にするためには,支配企業の指揮力 を法律上承認 し,子会社取締役の自己決定 ・自己責任原則を修正する必要を生ず る」 とす る議論 が存する (森本滋『 EC
会社法の形成 と展開』 (昭5 9 )3 6 5
頁.)が, これはここで いわれる組織法の観点に属するものと思われる。3 7 )Lut t e r, aaO ( Fn. 3 3 ) ,S. 2 3 2.
3 8 )Homme l ho f f ,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 0 9.
3 9 )Homme l ho f f ,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 1 1 .
4 0 )BGHZ8 0,S. 6 9.
本件では,大雑把には,次のことが問題 とな った。 有限会社 の業 務執行者一社員は,彼が競業企業の持分の多数を自己の勘定で取得 した後,定款上 の轟業禁止の免除を埴案 した。競業行為の認許に伴い,認許 した会社が,認許 を与 え られた業務執行者が支配する会社に従属する結果を生 じる可能性 もある。提案 さ れた免除は,その親族の投票をもって,そ して外部社員の意思に反 して承諾を与 え られたが,競業行為の認許が従属関係を成立 させる場合には,いわば独立 の会社 に おいて妥当 した競業行為の認許基準については,会社の従属化により生ず る危険 と会社法の見地か らの企業結合形成段階の法規制について
(1) 9 5
2 .従属 ( 下位)会社の局面
序 において, コンツェル ン従属会社 の少数株主および債権者 は,結合関係存 続中には限 られた範囲で しか保護を受 け得 ないとの認識 に基づ き,その保護 は
よ り前の段階,すなわちコンツェル ン形成 もしくは従属化の段階に移 されねば な らず, そ こにおいて保護 は強化 され うるとす る着想 に言及 した。形成段階で すでに規制を考えることの意義 は,従属会社 の局面で は, この予防的な保護 の 考えが中心 となる
。こうした予防的保護 の考え方 は, ドイツで は Sもs s e n 判決4 0 )において現 われ, 学説上 もその認識 は広 く見 られ る
。そ して, これはなにも規制の横能面での効 率性だけでな く,運営段階での危険
41)は潜在的に従属化が発生 した時点に存 し,
その段階を捉え ることが理 にかなっているという理解 を基礎 とす る
42)0ここにおいて, ドイツ株式法が コンツェル ン形成のカテゴリーに属す る法 に おいてそのアルキメデスの点を捉えてお らず, いわば 「 船が波の高 い海を沖 に 出てか ら乗客 に降 りてよいとい うような」4 3 ) 状態 にあることが明瞭 に認識 され ることになった。. 株式法 は,支配企業が従属会社 との間で株式法 2 91 条 による 支配契約 または利益供与契約を締結す ることに同意す る時点で局外株主の利益 を保護す る。局外少数株主 は,配当保証を提供す る株式法 30 4 条 によ る補償 ま
いう要素 も考慮 に入れる必要 はないか問題 となり,第二民事判事会 はコンツェル ン 法上の予防的保護を根拠づけた。本件 については,早川 ・前掲注2)論文に詳 しい。
また,本稿Ⅱ 2)において も, さらに検討する。
4
1)典型的な例 として持ち出されるのは,支配 ・従属会社間の取引および財務上 の行為 に関する。 さらに支配会社 は,税上の利益を得 るため,経営者のポス トを 占め るた め,競業する商品を干上が らせるため, また単一の事業機会および経験 を 自 らの も のとす卑ため,その影響力を利用することが可能である。Wi e de mann,aaO ( Fn.
1)
, S . 4 4.
また, アメ リカ法律協会( ALI)
の 「会社の管理についての原則 ・分 析 と勧告」第Ⅴ編( 1 9 8 6
年改訂)の5. l
o薬,5. 1
1条,5. 1 2
条 は,多数株主 の忠実 義務 に閲 し,会社 との利益衝突の生ずる類型 ごとのルールを定めるが, それ は圧倒 的に企業結合の事例か ら発展 されたことを窺わせる。ALI ,Pr i nc i pl e sofCor po‑
r at eGov e r nanc e : Anal ys i sandRe c omme ndat i ons,Te nt at i v eDr af tNo.5 ( Apr i l 1 5/1 9 8 6 ).
4 2 )Ti mm,aaO ( Fn.
1), S . 4 2 4.
4 3 )Wi e de mann,aaO ( Fn.
1),S. 5 8.
9 6
商 学 討 究 第4 1
巻 第4
号たは支配企業 に対 し株式を有償で取得す ることを義務 づ け る同法3 0 5条 による 代償 を追求 しうる
。補償,代償 は 「 相当の」 ものでなけれ ばな らない ( 株3 0 6 秦) 。 しか し,企業契約 の締結 は支配企業 の裁量 に属す る。 事 実上 の コ ンツェ ル ン関係 の もとで,経済的結果 において独立 していた場合 と同様であることを 企図す る株式法 3 1 1 条, 31 2 条 による規制が不完全であるため,株主 は保護 され ない。株主 は,株主法3 0 4条,30 5 条 の措置を強制で きない。保護が効果的であ る限 り,任意 に企業契約が締結 され, それ らの措置が提供 され ることも期待で きない。支配企業が企業契約 を成立 させ, または法律上 の編入 を実行 し,正当 な法律上 の救済 を行 うに して も, それ は経験上支配権取得後長期間た ってか ら 起 こり, それ も局外株主 の利益 のためとい うよ りも税法上 または決算政策上 の 考慮か らなされ る4 4 ) 0
以上 の他 に形成段階での保護 の必要性が認識 され るよ うにな った ことには, 他 の国 においてその段階を捉 えて利害調整をなす例 がみ られ ることも作用 して
いると考 え られ る4 5 ) 。 その一部 について は, Ⅱで言及す る
。保護 のあ り方 には,様 々の ものが考 え られ る。それぞれの機能や妥当す る範 囲については, 皿で詳 しく検討す る
。(3) 企業結合 の実態 と規制 の適合性 について
企業結合 の形成段階での規制 を考え る際 に, ドイツの学説 の中には,上述 の 視角 に加 え,企業結合 とい う組織形態 の利点 との関係で,規制が結合関係 q ) 成 立やそのあ りよ うに及 ぼす影響 に も配慮 しよ うとす る考え方があ る
。これ は形 成段階の規制だけでな く,運営時の規制や子会社債権者 に対す る親会社 の責任
との関係で も同様 にあて はまる観点である
。昭和 4 9 年私法学会 シ ンポジウム 『 企業結合』 において,河本教授 は,企業結 合法が企業結合 に与え る影響 ‑ それを抑制 または促進 す る影響 ‑ に関 し て,「 商法上 の規定は少 な くともたてまえ として は中立でな ければな らな い」
4 4 )Wi e de ma nn,aaO ( Fn.
1),S. 5 8.
4 5 )
早川 ・前掲注2)1 2 4
頁。会社法 の見地か らの企業結合形成段階の法規制 について (ll)
97 と発言 されている。 ただ, それ と同時 に 「 『 少 くともたえて まえ と して は』 と 言 いま したのは, どんな ことがあ って も,企業結合 その ものを推進す る方 向に 進 んで はな らないとい うことで、 ぁ ります」,「 商法の方で も集 中を押 え るよ うな 効果 の出て くる規定 を設 けるとい うことは, これは,決 してち ゅうち ょす るこ‑
とはないのであ ります」 と述べ られ る
46)0以上 は,競争政策 の観点 に もとづ くもの と思われ る
47)。本稿で は,会社法 の 観点 に しぼ って考 えることとす る。 その場合,企業結合関係 が必ず しも弊害 の 多 い もの とはいえない。企業結合が問題 にされ る場合,極端 な形 の緊密 な指揮 関係を基礎 に して運営 され るものが想定 されがちであるが,結合企業 とい う経 済単一体 の内部 で個 々の構成会社 に与 え られ る自治 の程度 は様 々であ り,上記
の想定 は社会的現実 に対応 していない との指摘がある 4 8 )0
さて, コンツェル ンない し企業 グループは,今 日経済的 に重要 な企業 の典型 にな っている
。単独企業 に対 し結合企業 には,様 々の利点 ・優位性 の存す るこ とが指摘 されて きた。①海外 に進出す るためには, コンツェル ンは不可欠 の も のであ る
.現地 において対等 のパー トナーと して受 け入れ られ るためには, 当 該国の国内法秩序 に適合 していなければな らず, それは子会社 の設立,す なわ ち国際的 コンツェル ンの成立 を意味す る.( 参コンツェル ンは最 も単純 な形 の分 4 6 )
私法3 7
号 (昭5 0 )1 0 4
頁。47 )
企業結合 による少数の巨大 な企業集団の形成を防止す ることに向け られた独 占禁止 法の規定 としては,持株会社を禁止す る9
条,大規模事業会社 の株式保有 の総額 を 制限す る9
条 の2
,および金融会社の他 の個々の会社 に対す る株式保有 を制 限す る1
1条。4 8 )Wi e de mann,よao ( Fn.
1),S.6
ff.また,わが国の状況 について,次のよ うな叙 述がみ られ る。Bl e i c he r
は, 日本 の企業結合の経験を もち出 して,「よき親 (会社)は子 (会社) を成長 させ る」 という関係 の例 とし, 「コ ンツェル ン構成会社 の広範 な経済上および法律上の独立性 は (日本 の企業結合の経験か ら) この よ うな関係 を 確かにす る」 とい う
。Bl e i c he r,For de r unge ns t r at e gi s c he runds t r ukt ur e l l e r Unt e r ne hme ns e nt wi c kl ungandi er e c ht l i c heKonz l pl e r ungde sKonz e r ns
,i n:Dr ue y( Hr s g. )
,DasSt . Gal l e rKonz e r nr e c ht s ge s pr ac h,S. 5 5, 6 6.
ま た, 青木昌彦教授 は,「日本 は,緩やかな ヒエラルキーの組織‑ ヒエ ラルキーで はあ る が,下請企業 とか子会社 とかの下部組織 に, 自律権をできるだけ委譲 した形 の緩 や かな ヒエラルキー システムをつ くって い く」, と述 べ られ る。 青木 ・小池 ・中谷『日本企業の経済学』 (昭
6 1 )1 2 0
亘。9 8
商 学 討 究 第41
巻 第4
号権 的な組織 ( de z e nt ra le nOr gani s at i on) の成立 を意味 し, そ こか ら多様 な利 点が生 み出され る
。③法的 に子会社 の独立性 を維持 し,有 限責任 の特権 を享受 す ることによ り,責任 の リスクを限定 す る。④個 々の会社 がその商号 によ って 大衆 によ く知 られてお り,固有 の顧客層 を もつ場合,法人格 を維持 す ることで 子会社 の商号 の維持 が可能 とな る
。⑤資金 の面で,資本多数決制度 による企業 集 中 コス トの極小化 を はか る ことが可能 とな る4
9)。経営経済学 の見地 か らコ ン
ツェル ンの利点 は,上記② に関連 す るが,それが とりわ け組織柔軟性 を提供す る ことに見 出され る。例 えば Ki rc hne r は, 「コンツェル ンとい う企業形態が 『集 権 的な』組織 の要素 と分権的 な組織 の要素 とを結 びつ け,その結果,場合場合 の 状況 に応 じて有利 な制度的制御 ‑ すなわち市場 か また は ヒエ ラル キ ーの い ずれか ‑ が選択可能 な完全 な組織 の 自由性 を与 え る5 0 ) 」 との指摘 をな して い
る。 ‑
以上 のよ うな多様 な利点 を求 めて, コンツェル ンとい う企業形態 が利用 され る
。そ して,法 のあ り方 もそれを受 け入 れて きた
。すなわち,株式所有 を基礎 とす る企業 の結合形態 が高度 に発展 した ことには,資本多数決制度, しか し何 よりもまず あ る会社 が他 の会社 に資本参加す ることを認 め る法秩序 が存 し5 1 ), これ に法が コ ンツェル ンの組織 自由性 を これ まで企業執行上 の決定 に属す るも の と して受 け入 れて きた こと も寄与 してい ると考 え られて いる5 2 ) 0
4 9 ) 以上につき ,Lut t e r,aaO ( Fn. 3 3 ) ,S. 2 2 7 f . ,ヴェルディンガー‑河本編 『ドイ ツと日本の会社法≪改訂版 ≫
』 (昭5 0 )2 5 4 頁,龍田節 「 多国籍企業 」 『 基本法学 7‑
企業
』 (昭5 8 ) 所収 3 6 5 貢 ,3 7 2 貢,参照。
5 0 )Ki r c hne r,Okonomi s c heObe r l e gunge nz um Konz e r nr e c ht , ZGR1 9 8 5,S. 21 4 , 2 3 1.また,江頭教授 も,統一的指揮をたもっておりなが ら,単一の会社ではなくあ
る企業による株式所有をつうず る他の企業の支配 という企業形態がとられる理由に つき,その組織構造の特色が企業 グループ全体 としてみた場合の組織の柔軟性にあ ることは疑いない,とされる。江頭憲治郎 「 会社の支配 ・従属関係と従属会社少数 株主の保護 1
)」法協 9 6 巻 1 2
号 (昭5 4 )1 5 4 2 頁 ,1 5 61 頁。
なお,どの程度に組織柔軟性が必要かは,企業の経営方針ないしは市場の状況お よび企業の市場に占める地位によって異なる。市場の動向や企業展開の不確実 さの 程度が高 くなればなるほど,あらゆる状況に適合できる柔軟性が重要になる。組織 柔軟性 もその一部である 。Homme l hof f .aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 2 6 f .
5
1)Lut t e r,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 3 3 1 .
5 2 )Ti mm,aaO ( Fn. 3 1 ) ,S. 6 1 .
会社法の見地か らの企業結合形成段階の法規制 について (1 ・ ) 99
他方,前述 の コンツェル ン内部秩序 に関す る議論 ( Ⅱ( 2 ) 1 )で は, コ ンツェ ル ン形成や場合 によっては運営 に関 し,社員 ( 株主)総会 が決定 に参与す る権 限を検討す る
。この立場 は, これまでの企業 (とりわけ取締役) の自由裁量性 と衝突 し, コンツェル ンの利点 とされ る組織柔軟性 に影響す る可能性がある。
総会の同意 を求 めることが柔軟性 の要請 といかに調和す るか とい う問 い‑ と展 開 してい く5
3)。これ は,企業結合法 の組織法 の側面 に光をあて る試 みにつ いて だけでな く,企業結合 の形成段階 において考 え られ る少数株主保護規制 のあ り 方 につ いて も, それの結合 の実態 との適合性 または企業結合 に及 ぼす影響 を も 視野 に入れよ うとす る研究が存す る5
4)。むろん, コンツェル ンにおける組織柔 軟性 を規制 の出発点 において考慮 しなければな らないと指摘す る者 も,それを 絶対視す るのではな く,例えば株主総会での意思決定 を求 めることが妥当な対 象 のあ ることを認 め る。 ただ, コ ンツェル ン関係を秩序づ け, また少数派 を保 護すべ き具体的な法規制を考 え る場合 に, それが組織柔軟性 にどのような具体 的影響 を もた らすか, コンツェル ンに不可欠 の柔軟 さを過度 に狭 くしないかの 注意深 い機能面 での分析が必要であるとす るのであ る5 5 ) 0
こうした検討 に際 しては, さ らに,実態 において多様 な結合の形態を区分す ること, そ してその区分 に照 らしてその規制が相当であるか等 の検討が必要 に な って くる
。しか し,以上 は, ‑む しろ経済学 的,組織論的分析が求 め られ る領 域であ り、法的 アプローチで解決で きる問題 ではない。以下, そ うした視点か らの議論 を若干紹介す るが, それは全 く素描 にとどまるもので,網羅的で はな い。 また, コンツェル ン法規制 の経済的作用 に関 し分析を発展 させ ることも意 図 しない。 ただ,組織論研究者およびコンツェル ン実務家 との共同作業 な しに コンツェル ン法 を構想 してゆ くことは,砂 の上 に家 を建て るよ うな結果 になる
5 3 )Ti hm,aaO ( Fn. 3 1 ) ,S. 61 . Homme l hof f .aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 2 6 f .
5 4 )Homme l hof fundKl e i ndi e k,Take ov e r‑Ri c ht l i ni eunde ur opai s c he s Konz e r nr e c h t ,AG1 9 9 0,S. 1 0 6,1 1 0 f .
5 5 )Homme l ho f f ,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 2 7.
5 6 )Homme l ho f f ,aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 2 7. また, Ki r c hne r,aaO ( Fn. 5 0),S. 2 3 3 f .
参照。
1 0 0 商 学 討 究 第 4 1 巻 第 4
号と危倶す る見方 もある5 6 ) o経営経済学説 か らの コンツェル ンの体系 づ け5 7 ) は会 社法上 の規制課題 を目的に して いるわ けで はな く5 8 ) , そ こか ら包括的に組立 て られた企業結合法制を発展 させ る総体的なモデル としては不適切であるが,法 の領域 に得 るところの多 い示唆 を与え る可能性を もつ5 9 )0
さて, そ うした組織論上 の成果 と法 とを結 びつ けることに関 して注 目され る ものに Aut okr an 判決6 0 )がある
。本来従属会社 に広範 な自律権 の認 め られ た分 権的な結合形態 をモデル として想定す る事実上 の コンツェル ンであ りなが ら, 従属会社 に対す る ( 実体的に)包括的で, ( 時間的に)継 続 的 な統一 的指揮 の 結果,従属会社 の自己利益が持続的に侵害 されてい る場合 に,契約 コンツェル ンの諸規定 の援用が学説上検討 されていた ( 「 特殊 な事実 上 の コ ンツ ェル ン学 読 ( di eL e hr evom qua li f i z i e r t e nf akt i s c he nKonz e r n) 」)
61)が, 有 限会社 に 関す る Aut okr an 判決 は 「 支配 企業6 2 )」 と して の被告 の 「欠 損額填 補 の責任 ( di eAus f al l haf t u n g) 」 を肯定 し,上記 の学説 を受 け入れた もの とみ られて い る6
3).そ して,業務執行 を包括的かつ継続的 に営んだ ことという基準の採用は, 組織密度 ( Or gani s at i ons di c ht e ) による法的効果 の区分 を行 うもの と して注
目され る6
4)。残念 なが ら問題 とな った事案 は明 らかに極端 な ものであ り, い っ
5 7 )Homme l hof f .aaO ( Fn. 1 ) ,S. 5 7. 参照。
5 8 ) 経済学や経営学では , 「 結合関係に入った企業の行動様式が,単独の場合 とどのよ うに違ってくるか,その違いが資源配分にどう影響するか,効率性などの価値基準 に照 らしてどう評価するかといった視点」が中心になると思われる。参照,龍田節
「 企業結合は実にさまざま」‑ 「 特集企業の結合,法的問題はどこに ?」 前掲注
4)3 8 頁。
5 9 )Homme l hof f .aaO ( Fn. 1 ) ,S. 1 1 4 f .
6 0 )BGHZ9 5,3 3 0.( DB1 9 8 5,2 3 41,BB1 9 8 5,2 0 6 5,ZI P1 9 8 5,1 2 6 3 ) 本件につき, マルクス ・ルッター 「ドイツコンツェルン法の体系
(2)」( 山口賢訳注) 甲南法学 2 7 巻 3・4
号 (昭6 2 )2 4 9 頁 ,2 5 5 頁以下,拙稿 「 企業結合関係と会社債権者保護」
商学討究 3 9 巻 1
号 (昭6 3 )1 5 9 頁 ,1 8 4 頁以下,参照。また,本稿 Ⅲ (3)4 も参照。
6 1 )Wi e de mann,aaO ( Fn. 1 ) , S . 4 6. ルッタ一 ・前掲注 6 0)2 5 3 頁以下。 なお,
"de rqual i f i z i e r t e nf akt i s c heKonz e r n "の訳語につき,同論文の訳に従った。
6 2 ) 有限会社の過半数参加社点で,また自然人である
。6 3 ) ルッタ一 ・前掲注 6 0 )2 5 8 頁, Wi e de mann,aaO ( Fn. 1 ) , S . 4 6.
6 4 )Dr ue y,aaO ( Fn. 1 8 ) ,S. 9 5 f .
会社法の見地からの企業結合形成段階の法規制について ( 1) 1 0 1 たい何が 「 特殊 な コンツェル ン」 にあて はまるか, そ して支配企業 の責任 を肯 定す る際,厳密 に何が きめて とな ったか ‑ 例 えば, 解 きほ ぐせ ない財産混 同または過小資本を考 えに入れようとす る観 点 が はた らいたか ‑ は十 分 に 明 らか にな っていない。
「 特殊 な事実上 の コンツェル ン」 の考え方が提案 され ることは,現行 の ドイ ツ株式法が個 々の コンツェル γの形式 をみてその法的効果を導 くため,コンツェ ル ンの実態 に対応 しきれない ことに起因す るとも考 え られ る
。ドイ ツ株式法 の規制 を組織密度 ない しはコンツェル ン指揮 と下部組織 に与 え られ る自律権 の程度 の観点か らみると,大雑把 には,契約 コンツェル ンは,支 配企業 に広範 な指揮権限が認 め られてお り, その指揮構造 が相当程度集中され, 軍属会社取締役 は限定 された自治領域 を もつ にす ぎない集権的な結合の像がモ
デル と して想定 されそお り,事実上 の コンツェル ンは,前述 のよ うに,従属会 社取締役 に自治的に行使 され るべ き広範 な責任領域 の残 されねばな らない分権 的な コンツェル ンの像が想定 されている6
5)。しか し,事実上 の コンツェル ンで あ りなが ら密か に 「 特殊 な コンツェル ン 」 にはい り込む例 があ り, この場合, 事実上 の コンツェル ン規制の個別的補償の対応で は十分機能 しない ことが, ・一 般 に認識 されている。
そ こで,集権的なコ ンツェル ン ( z e nt r al i s i e r t e rKonz e r n) と分権 的 な コ ン ツェル ン ( de z e nt r al i s i e r t e rKonz e r n) とい う経営経済学 ない し組織 論学説上 の区分 に もとづ き, それに応 じて法規制 を考 えようとす る方 向の試 みが注 目さ れ ることとな る6 6 ) . この区分 は, コンツェル ン従属会社 に与 え られ, またそ こ に存す る意思決定 の自治 の程度 を基準 とす るものである
。その考え方 は,次 の 認識 を背景 にす るもの と思われ る。すなわち,既 にみたコ ンツェル ンが形成 さ れ る利点 にふ さわ しい形態 は分権的な コンツェル ンにあるのであ って,指揮関 係が強固 に集権化 された結合体 ‑ いわば,事実上 の合併 のよ うな ‑ は,
6 5 )Homme l hof f .aaO ( Fn.
1),S. 1 1 9. ,S. 1 4 4.
6 6 ) 例えば,Dr ue y,aaO ( Fn. 1 8 ) ,S. 9 5 f f . は,とりわけ債権者保護について検討す
る。
102 商 学 討 究 第
41
巻 第4
号いろいろな点で企業結合が形成 され る利点 を逆 に不利益 に変 える可能性がある との認識 である
。これ は, コ ンツェル ン形成 の組織上 の目的が, 自律権が与 え られなが らも他方で束 ね られた下部組織 を とお して最 も高度 に柔軟 な安定性 を 経済生活 において達成す ることであるとし, それは強固な指揮系統 で束ね られ た関係で はな く, む しろ末端神経で市場 その他 の外部環境 に適切 に対応す る組 織 たる企業結合 を想定すべ きであると考え るものである
。そ して,企業 グルー プの指揮 にとっては欠 けるところのない情報 および成果 コ ン トロールで十分 と いえ, それを もって コンツェル ン政策 は貫徹 され,上位会社 の影響力 は一定期 間,また特定 の下部組織 に対 して強め られ ることがあるのみである, とする 6 7 ) 0 また,従属会社 の利益, ひいて はその株主 ・債権者 の利益が害 され る危険 も, 分権的な結合関係 よ りも集権的な結合関係 において大 きいと考え られ る。
こうした認識 の もとでは,集権的な コンツェル ンについて は厳格 な規制での ぞむ必要 があ り, またそ うした コンツェル ンに抑制的 に働 く規制であって も, その規制 の影響 を考慮す る必要性 はないと考 え られよ う
。他方,分権的な コン ツェル ンについて は, それを奨励 しないまで も,抑制す る効果を もつ規制 は現 実的ではないと考え られ よう
。もっとも,上記区分 に もとづ いて一定 の法的効果の限界線 を引 くことにつ い て は,法的観点 より基準 が不明確 にす ぎるとの指摘 も少 くないことに注意す る 必要があ る6
8)0いずれ にせよ,以上 の議論 は,形成時の規制 に固有 の もの とい うよ りも,運 営時の規制や子会社債務 に対す る親会社 の責任 との関係で も論ぜ られ るもので ある。組織密度 ない し従属会社 に与え られ る自律権 の程度 の観点が,企業結合 法 の構想 にいかなる意味を有 し得 るか について は,別 に検討 してみたいと考 え ている
。ただ,形成時の規制 に分類 され るものの中 には,例 えば会社 の全株式の一部 T 6 7 )Wi e de mann,aaO ( Fn.
1),S: 1 3 f .
6 8 )Dr ue y( Hr s g . ) ,DasSt . Cal l e rKonz e r nr e c ht s ge s pr 呂 . c h, S. 1 0 4 f . ( Homme l hof f
発言)会社法の見地か らの企業結合形成段階の法規制 について (