複数窓 口同時サー ビス並進 待 ち行列の入力制御
中 村 隆 志
1
.まえか き
独立 な到着過程 を持っ複数個 の待合室があ り,すべての待合室 に客 がいると きに扱 い者が各待合室か ら一人ずつ客 を受 け入 れてサー ビスを行 うような待 ち 行列 を同時サー ビス並進待 ち行列 と呼 ぶ (2) 。 例 としては, 複数 の下 請会社 か らの部品の到着 を待 ち, それ らのすべてが揃 った ときに組み立てを行 う工場 な どが挙 げ られ る
。この待 ち行列 システムは負荷 の大小 によ らず,本質的に不安 定であることが知 られている
(1)・(2)。 このため,実際には待合室の容量制限や, 到着率を制御す る入力制御 などにより安定化 を計 る必要 が あ る
。文献 (
2),
(3)
で は,入力制御法が提案 され, それを適用 した ときの単一窓 口システムの 特性が詳細 に述べ られているα しか し,窓 口が複数 の システムは扱 われていな い。複数窓 口の場合 もシステムが不安定 であることにかわ りはない。 なぜな ら ば,各待 ち行列へ到着す る客数 の差が システムの不安定性を引 き起 こす原因で あ るか らである
。そ こで,本論文では複数窓 口のシステムについて,文献
(2)と同様 の入力制御 を行 った場合 の特性 を近似解析 とシ ミュ レーションによ り考 察す る 。 これによ り,窓 口増設 の効果 などを明 らかにす る。
なお,本論文で は解析 を容易 とす るため, ポアソン到着,指数 サー ビスで, 待合童が
2個 のモデルのみを扱 う
。2.
モデル
本論文では図
1のよ うな待合 室 が
2個
(Ql,Q2)のモデルを考察 の対象 と
〔51〕
口調窓
1
‑1
‑‑‑I...一IIl.‑t....1
‑‑‑I‑1
‑‑ノ図 1 システムモデル
す る 。 窓 口数 は
S個であ り, サー ビス時間 はすべての窓 口と もサ ー ビス率
FLの 指数分布 とす る
.到着 は到着率 ス 1 , ス2 のポア ソン分布 に従 う。
また,
max(l
l
,12)/SFL< 1(1) とす る 。
空 いてい る窓 口の扱 い者 は,両方 の待合室 に少 な くとも一人 の客がいるとき に, それぞれ一人ずつ先着順 に客を受 け入れて同時 にサー ビスを行 う。両方 の 待合室 に客が揃わない場合 にはサー ビスを行わない。 したが って, ある客 が待 ち行列 の先頭 にいて,空 いている窓 口があ った として も,他方 の待 ち行列 の客 がいなければサー ビスは受 け られず,待 たされ ることとな る 。
3.
人力制御
この複数窓 口モデルが単一窓 口モデル と同様 に不安定であることは, シ ミュ
レー シ ョンによ り確 かめることがで きる 。 す なわ ち, ス 1 キ
ス2で
Å1と
ス2の差
があ る程度以上大 きい場合 は,
max(ス 1
,ス2)の方 の待 ち行列が不安定 とな っ
て待 ち行列長 は増大 し続 け,
min(Å1,人2)の方 の待 ち行列 は安定 とな る
。複数窓 口同時サー ビス並進待 ち行列の入力制御 53
また,
ス1‑ス2の場合 は, ある期間毎 に交互 に一方が不安定側, 他方 が安定側 とな る 。 このふ るまいの定性的な説明 は文献
(2)に詳細 に述べ られている 。
この不安定性 は,各待 ち行列へ到着す る客数 の差 に起因 している 。 そ こで, 文献
(2)と同一 の次 のよ うな入力制御を行 い,到着率を変化 させて安定化を図
ることとす る 。
簡単 の ため, 制御 が行 われて いな い ときのQ l
,Q2の到着率 を
Al‑Å2 ‑ A とす る 。
あ る時刻 にQ l ,Q2 に い る客 数 を nl
,n2とす る
。制 御 限 界CL ( 正 整 数 ) を定 め,
fnl‑n2I<CL (2)
である間 は制御を行 わず,
Alニス2 ‑ 人のままとす る。式 ( 2 )が満 た されな く な ったときに次のように制御 を行 う
。Th‑n2≧CL
の場合 は
11‑aL
l,
12‑aHlとし,
n2ln
l
≧CLの場合 は
ll‑aHl, 12‑aLl
とす る 。 ただ し,
(3)
(4)
(5)
(6)
aH≧ 1, 1≧aL
≧0
(7)文献
(2)ではこの制御方法 をQ l
,Q2の双方 を制御 す る ことか ら両側制御 と 呼んでいる
.また,
aHとaL の選 び方 によ り,
a) aL‑ 1
,
aH≧ 1 b)aL≦ 1,
a H‑ 1C) aL≦ 1
,
aH≧ 1,
aL+a H‑2
の三つの場合 を考え,下請 け工場 の工員 の増減 に当てはめ, それぞれ, a) パ
ー ト制御,
b)帰休制御,C)出向制御 と名付 けている
。r‑‑‑
‑ ‑ ‑ ‑
‑‑.‑ ‑ I ‑ ‑ ‑ ‑ ‑
‑‑‑I‑‑‑‑B部 図2 図
1
と等価なモデル4.
近似解析 /
解析を容易 に行 うために,文献
(2)と同様 に図
1の システムを図
2のような 等価 なモデルに変形する
。 Ql
,Q2 をそれ ぞれ A 部 と B 部 に分 け る
。 B部 に は
Ql
,Q2に揃 った客が対をな して並ぶ。 これ にはサー ビス中 の対 も含 む。
A部 には対 となる他方 の客が未到着の客が並ぶ。 したが って,
A部の片方 は必ず空 となる。 また, A 部か ら B 部‑の移動 には時間を要 しないものとす る
。A
部の挙動 は単一窓 口の場合 とま った く同一 あ る。 あ る時刻 にお ける
Ql ,
Qの客数の差
k‑T h‑n 2
(8)を
A部の状態 とす ると, これは連続時間マルコフ連鎖 として厳密に解析できる
。A
部 における平均 システム内客数
NA,制御を行 った場合 の平均到着率 a
‑A, 平均 システム内時間TAは
Ql ,
Q2とも等 しく,文献
(2)より次 のようになる。
CL(CL‑
D
CLNA‑Plo
aL
a H‑
aL (aH‑ αL )
2) (9)複数窓口同時サービス並進待ち行列の入力制御
aH+
aL
a H‑
aL
百
人‑PAOATA‑NA/ (百人)
ただ し,
PAO‑
・ 2CL‑ 1)
2
Cムー 1+(12)
55
aH‑ aL
次 に B 部 を含 めた システム全体 の挙動 を考 える
。そのためには A 部 の待 ち客 数の差kと
B部 の客数 の組を状態 とした無限連続時間マル コフ連鎖 を解析 しな ければな らない。 この状態推移を考 え ることは容易であるが一般的な解析 は困 難 と思 われ るので,文献
(2)のように,
B部 を近似的に扱 うこととす る 。
B 部 の到着過程 は A 部 の退去過程であ り, したが って,厳密 には A 部 の状態
hによ り変化す る
.しか し, ここでは, それを到着率 夜 Aのポア ソ ン到着 と し て近似す る
.そ うす ると, B 部 はサー ビス率 pの指数サー ビスであ るか ら, M
/M/Sシステムとして扱 うことがで きる
.したが って,
B部 の平均 システ ム 内客数
Ⅳβ は次 のよ うになる
(4 ) 0
pBS房AFLS NB‑PB+
S!(FLS一百人)2
ただ し,
pB‑有A/ P
PBO ‑ [ , s i . 1 j p B ! j
S! (1‑pBP BS
/S)(13)
(14)
(15)
これ らより,
A部,
B部 を含めた システム全体 の平均 システム内客数 〃,平 均 システム内時間
Tは次式 となる。
N‑NA+N
B
T‑N/訂ス1
.5図3
制御特性
(入‑0.5.p‑1,CEL‑1)5.
数値例 とシミュレー シ ョン
ここでは,近似式 によるい くつかの数値例 とシ ミュ レー ションによ り,入力 制御 の有効性,近似式 の妥当性,窓 口増設 の効果な どにつ いて考察す る 。
図3はス‑0.5
,
LL‑1,
αL‑1とし,
aHを 1か ら
2まで変化 させ た ときの平均 システム内時間の近似値,及 びシ ミュ レーシ ョン値 を示 している
。窓 口
数
Sは
1と
2で,
CL‑10,
3としている。 これ よ り, 近似解 析 の精 度 は十 分
よい ことがわか る 。 また,複数窓 口の場合 にも当然ではあるが,入力制御 の効
果があ り, システムが安定化 されている
。この例で は,
aHが大 き くな るほど
制御 は強 くな るが,単一窓 口の場合 について文献
(2)で述 べ られているの と同
様 に,複数窓 口の場合 にも, ある程度以上 の強 い制御 を して もそれ ほど効果 は
上が らない。 さ らに, この例で は
aHが大 きくな るにつ れて窓 口増設 の効 果 が
大 き くなることがわか る 。 これは
aHが大 き くな ると,
B部 ‑ の到着 率 が増 加
複数窓 口同時サー ビス並進待 ち行列 の入力制御
1.5
図4
制御特性
(入‑0.8,LJ‑ 1,aL‑ 1,CL‑3)57
す るためである 。
図
4は
ユニ0.8,
FL‑ 1で
CL‑3の場合である
。S‑1, 2,
3の場 合 につ
いて全体 の システム内時間の他 に, A 部, B 部 の システム内時間の近似値 を示
している.
a L, aH の条件 は図
3と同 じで ある
o A部 の値 は
S‑1, 2,
3で
すべて同一 となる。多 くの場合 は,図
3の例 のように制御が強 くなるにつれて
平均 システム内時間 は減少す る。 しか し,高 トラフィックの場合 に制御限界 の
選 び方 によ っては,図
4の
S‑ 1の場合 のように, ある程度以上制御 を強 くす
ると,かえ ってその値が増加 して しまうこともあ る
。これ は,
A部 の システム
内時間 は制御 を強 くす ることによ って減少す るが, B 部への到着率が上 が るこ
とによ り, B 部の システム内時間が増加す るためである。 この例 の場合 は B 部
の システム内時間の方が A 部 よ りも大 きいために このよ うな現象 が起 きる
。窓
口の増設 は B 部 の システム内時間を減少 させ るので, このよ うな場合 には特 に
効果があることがわか る
。図
5はaL
‑1, aH
‑1.5に固定 して, 到着 率 Aを変化 させ た場 合 の
A部,
B
部,及 び,全体 の平均 システム内時間の変化 を
S‑1
, 2,
3につ いて近似 式 によ り示 した ものである
.これよ り, Aの変化 による,全体 の シろテム内時 間 に対す る A 部 と B 部 の システム内時間の関係,及 び,窓 口増設 の効果などが 読 み取れ る
。1 2
2.7図5
制御特性
(p‑ 1,aL‑ 1,α H‑
1.
5,CL‑3)システムによっては,入力制御 の開始,停止 の判断か ら実際の実行 までの時 間遅 れがある場合 がある I
。文献
(2)と同様 に,制御 の開始 , 停止 の判 断か ら
D
時間後 に到着率が変化す る場合 の シ ミュレーションを行 ってみた。図
6はÅ‑
0.5
, L L
‑1, aL
呈0.5, aH
‑1.
5, CL
‑3とし,
Dを変化 させ た ときの シ ミュ レーションによる システム内時間
(S‑1,
2,
3)を実線 で結んだ ものであ る。複数窓 口a j場合 も D を大 き くす ると,平均 システム内時間 は増大す る。 ま た,遅れ時間βが大 きいほど窓 口増設 の効果の度合が小 さ くなることがわかる。
これ は,遅 れ時間が大 き くなると A 部 の システム内時間の増加 によって B 部へ
複数窓 口同時サー ビス並進待 ち行列 の入力制御
100 200 10
59
図
6 制御時間遅れDのある場合の到着率が減少 し,全体のシステム内時間に占める
B部の システム内時間の割 合が小 さ くなるためと考え られ る。
6..むすぴ
2
個の待合室を持つ複数窓 口同時サー ビス並進待 ち行列 システムにおいて入 力制御法を適用 し,近似解析 とシ ミュレーションにより, システムの挙動 を明
らかに した。得 られた主な結果 をまとめると次のよ うになる
。1)窓 口が複数の場合 も,入力制御 の効果があり, システムが安定化される。
2)近似解が有効である。
3)B
部への到着率が大 きいほど,窓 口増設の効果がある。
4)制御 に時間遅れがある場合 には,時間遅れが長 いほど,窓 口増設 の効果
の度合が小 さ くなる。
本論文では待合室が
2個の場合のみを扱 ったが,待合室が
3個以上の場合の
一般的な入力制御法 の考案 と,その場合 の システム特性 の考察が今後 の課題 と して残 されている 。
文 献
(1)∫.M.Harrison:"Assembly‑likequeues",∫.AppliedProbability,vo
l . 1 0,
pp.354‑367(1973).
(2)
福 田,佐藤,椋本 :"同時サー ビス並進待 ち行列 とその人力制御 ",信学論
(A),
J69‑A,7,pp.829‑839
( 昭
61‑07).(3)
福 田,佐藤,椋本 :"同時サー ビス並進待 ち行列 の入力制御 ",信 学論
(A),J69‑ A,ll,pp.1310‑1318( 昭
61‑07).(4)H.M.