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「 集団的権利保護‑ 大規模損害および 拡散損害の場合 の規律の必要性 ‑ 」

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(1)

「 集団的権利保護‑ 大規模損害および 拡散損害の場合 の規律の必要性 ‑ 」

河 野 憲一郎 訳

【 訳者前注】

本稿 は ,Ge r ha r dWa gne r ,Ko l l e kt i ve rRe c ht s s c hut z‑Re ge l ungs be da r fbe i Ma s s e n‑undSt r e us c h畠 de n, i n: Ca s pe r / J a ns s e n/ Po hl ma nn/ Sc hul z e( H g . ) ,Au f de m We gzue i ne reur opa i s c he nSa mme l kl age? , 2 0 09 , S. 41‑8 6 の全訳であ る。

原著 は,訴訟による消費者の拡散利益 の主張 をは じめ とする集団的権利保護 の問題 について, 広 く比較法的な観点か ら議論 を展 開 してお り, 今 日の ヨーロッ パお よびアメリカ合衆国におけるこの間題の議論状況 を知 る上で, きわめて有 益である。 しか も議論は,単 にこの間題 に関する民事訴訟法立法のあ り方に限 られることな く, さらに深 く不法行為法や法 と経済学 にまで踏み込んでいる

周知のごとく,わが国で も消費者契約法中に適格消費者団体 による差止請求権 に関する規定はおかれているが,損害賠償 による救済についての規律 はおかれ ていない。 このためその必要性や規律のあ り方 をめ ぐり,なお議論がなされて いる。原著 において展 開されている議論は,わが国の今後の議論 にとって も資 するところ大であると思われる。

ちなみに,著者のヴァ‑グナ一教授 は,現在の ドイツ民法学 をリー ドす る研 究者の一人で もあ り,特 に不法行為法の分野で著名 な業績 を上げている。その 不法行為法理論の全体像 を知 るには,本稿 注63) で も引用 されている Kb ' t z / Wa gne r ,De l i kt s r e c ht ,1 0 .Au f 1 . , 2 0 0 6 が有益である。同書 については,吉村良 一戟授 ( 立命館大学)お よび中田邦博教授 ( 龍谷大学) を中心 に した翻訳プロ ジェク トが進行 してお り,同書の翻訳が近 く法律文化社 よ り刊行 される予定 と

〔 2 0 1 〕

(2)

のことである。両先生のご厚意によ りその翻訳の草稿 を参照す る機会 を得 るこ とがで きたことをここに記 して感謝することに したい。

A.序

2006 年, シュ トウ トガル トにおける第66 回 ドイツ法曹大会 は,他のテーマ と ともに 「 損害賠償法における新 たな展望 ( NeuenPer s pekt i veni m Sc hadener ‑ s at zr echt ) 」 を取 り扱 った。 この新 たな展望 は,特 に商業化,懲罰的損害賠償 お よび集団的損害の領域 において見 られた。準備の鑑定意見の中で示 された集 団的損害の処理のための法的な条件の枠組みを改善するための提案 は,仝貞で の議論の後,それぞれ絶対多数で もって否決 された。特 に ドイツ法曹大会の民 事法部会 は,団体訴訟 ( Ver bands kl age) の制度によって消費者の拡散損害の 領域 における権利行使 による欠損 に対処することに対 して反対 を表明 した

1)

0 大規模損害 を考慮 して,訴訟の集束の制度 としてのグループ訴訟 ( Gruppen‑

kl age) に明 白な拒 否 を与 え, これ に代 えて,投 資家 ムス タ手 続 法 ( 以 下

「 KapMuG 」 とす る。)の形態 に もとづいたムス タ訴訟 ( Mus t er ver f ahr en) が推奨 された2 ) 。

ブリュッセルにおける最近の展開を見れば, ドイツ法曹大会が当時予定 して いたこととは異 なった印象 を拭 うことはで きない。2006 年 になお突拍子 もない もの と思われ,明白に多数によって否決 された事柄が,2008 年に欧州委員会の 重要 な 2 つの声明,す なわち,《2008 年 4 月 2日の EC競争法侵害 を理 由 とし た損害賠償請求 に関す るホ ワイ トペーパー

≫3)

並 びに 《2008 年 1 1月 27 日の消費 者のための集団的権利行使手続 に関す るグ リー ンペーパー ≫4 ) の中に再度見 出

1)Ve r ha ndl unge nde s6 6. De ut s c henJ ur i s t e nt a gs( DJ T) , Bd. I I /1 ,Mt i nche n2 00 6 , L9 2 ,Nr ,ⅤⅠ Ⅰ Ⅰ2a .

2)Ve r ha ndl unge nde s6 6 .Deut s c he nJ ur i s t e nt a gs( o p. ° i t . Fn.1 ) , L9 2 , Nr . ⅤⅠ Ⅰ Ⅰ3 . 3)We i Bbuc h" Sc ha de ne r s a t z kl a ge nwe genVe r l e t z ungde sEG‑ We t t be we r bs r e c ht s ,

KOM( 2 0 0 8 ) " ,1 6 5e ndgt i l t i gvom02 . 0 4 . 2 0 0 8 .

4)Gr Gnbucht i berkol l e l t i veRecht s dur chs et zungs ver f ahr enf t l rVer br aucher

,

(3)

される。す ぐ後 ろで指摘 されるように,欧州委員会は第66 回 ドイツ法曹大会が 多数で否決 したような手段,すなわちグループ訴訟 と団体訴訟の導入 を検討 し ている。

B. ブ リュ ッセル ( 欧 州委 員会 ) の考慮

Ⅰ. カルテル法

EC競争法侵害 を理 由 とした損害賠償請求訴訟 に関す るホ ワイ トペーパー は,遅 くとも Cour a ge 諸事件 における EC裁判所 ( 以下 「 EuGH 」 とす る。 ) の判決で もって2001 年 に始 まった展 開の暫定的な決算である

5)

。 この判断の中 で EuGH は,今 日の EC条約 ( 以下 「 EG 」 とす る)81 条 1 項 ( EGV85 条 1 項) の 「 完全 な実効性」 は,全ての人がその者 に対する競争制限行為 によって発生 した損害の賠償 を求め ることがで きる とい うことを要求 している, と宣言 し た

6)

。裁判所 はこの理由づけのために, この ような損害賠償が,「 ECの競争法 規の実行力」 を高め,かつ 「 競争 を制限 し又は歪曲 しうる合意又 は行動様式 を 阻止す る」のに適切であると述べ た

7)

。 こうした観点か ら‑ EuGH は言 うの だが‑ 損害賠償訴訟 は,本質的に ECにおける有効 な競争の維持のために寄 与 しうるであろう, とい う

競争法上の損害賠償請求権 を第一次的には客観法の実現のための手段 と理解 した EuGH の Cour a ge 判決 は, EC競争法 を,最低 阪,部分的に私人の手 に

ヽヽヽヽヽヽヽ 委ねようとい う欧州委員会の努力 と一致 している。 この私人による実現 とい う 政策の成果が, EC規則1 /2003EGであ り,これによって加盟国の競争官庁 と

KOM ( 2 0 0 8 )7 9 4e ndgt i l t i gvo m 2 7 . l l . 2 0 0 8 .

5)EuGH,20. 09. 2001 ,Rs .C1 45 3/ 99 ( Co ur a geLt d. / . Cr e han) ,Sl g.2 001 , I I 1 62 97

Eur o pa i s c heZe i t s c hr i f tf urWi r t s c ha f t s r e c ht( EuZW)2 0 01 ,71 5 ; これに対 して批判 的なのは, We ye r ,Sc hadene r s a t zans pr t 1 ChegegenPr i vat ekr a f tGe me i ns c ha f t ‑ s r e c ht ,Ze i t s c hr i f tf t i rEur o pa i s c he sPr i va t r e c ht( ZEuP)2 0 0 3 , 31 8 .

6)EuGH ( o p. ° i t .Fn. 5 ) ,Rn.2 6‑EuZW 2 0 01 ,71 5 .

7)EuGH ( o p.c i t .Fn. 5 ) ,Rn.2 7‑EuZW 2 0 01 ,71 5 .

(4)

裁判所 は, EG81 条 1 項お よび同82 条 を直接 に適用す るだけではな く, さらに EG81 条 3 項の例外構成要件 をも直接 的に適用す る とい う授権が なされた

8)

0 この 《2005 年1 2 月1 9 日の EC競争法侵害 を理由 とした損害賠償請求 に関するグ リー ンペーパー≫の中で,欧州委員会 は, EuGH の Cour a ge 判決の提案 を承 認 し , ECカルテル法の侵害 を理由 とした私人による損害賠償請求の成果ある 主張 を改善す る可能性 を問 うた

9)

。そ こでは損害賠償請求権 を手段 とす る理解 が支配的である。 けだ し,損害賠償請求訴訟 は,はっ きりと 「 EC競争法の実 現のための手段 として」理解 されているか らである

10)

。さらに引用箇所では, 次の ように述べている。すなわち,「 EG81 条お よび82 条の競争規定 は,国家の サイ ドだけではな く,私人のサイ ドか らも主張 され うる。両方の形式が,競争 法実現の共通の制度の一部であ り,共通の 目的に奉仕す る。すなわち,競争法 によって禁止 された競争違反の術策 を阻止す ること並びに企業お よび消費者 を この術策お よびその他のそれによって惹起 された損害か ら保護することに奉仕 す る

」11)

。欧州委員会が ここで問題 に しているのは,当該顧客お よび消費者の 補償ではな く,特 に競争 に違反 した行態の コン トロールである

12)

0

グリー ンペーパーは,多 くの批判的意見 を誘発 したが,そこでは損害賠償請 求権の手段 的な見方 を基本的に否定 し,アメリカ的な諸関係か ら警告がなされ ていた

13)

。 EuGH は,2004 年 に再 び, Man fr e di 事件 において,現実 に全 て 8)Ve r o r dnungNr .1 / 2 0 0 3/ EGde sRa t e sz urDur c hf t l hr ungde ri nde nAr t t . 81und

82de sVe r t r a gsni e de r ge l e gt e nWe t t b e we r bs r e ge l nvo m 1 6 ,De z e mbe r2 0 0 2 ,Abl . EU2 0 0 3L1 /1f f . ;これに対 して批判的なのは,Me s t mL 2 c k e r ,TheECCo mm is s i on' s Mo de r ni s a t i ono fCompe t i t i onPo l i c y: aCha l l e nget ot heCo mmuni t y' sCons t i t ut i on‑

alor der , ( 2 000) Eur opeanBus i nes sOr gani z at i onLa wRevi ew( EBOR)1 , 401f f . ; Sc hmi dt ,Pr i va t i s i e r ungdesEur opa ka r t e l l r ec ht s .Au f gabe n, Ve r a nt wo r t ungund Cha nc e nde rPr i va t r e c ht s pr a xi sma c hde rVONr .1 / 2 0 0 3 ,ZEuP2 0 0 4 , 8 8

1

.

9)Gr t i nbuc h KOM ( 2 0 0 5 ) , 1 0 )Gr 〔 i nbuc h l l )Gr ( i nbuc h 1 2 )Gr L l nbuc h 1 3 )Bas e do u J

" Sc ha dene r s a t z kl a ge nwe ge nVe r l e t z ungde sEU‑ We t t be wer bs r e c ht s

"

6 7 2e ndgt i l t i gvom 1 9 . 1 2 . 2 0 0 5 . ( o p. ° i t . Fn. 9 ) , 3 .

( o p. ° i t . Fn. 9 ) , 3 . ( o p. ° i t . Fn. 9 ) , 4 .

( Hr s g . ) , Pr i vat eEnf or cemento fECCompe t i t i onLaw,Al phena.d.

Ri j n[ u. a . 】2 0 0 7 . における問題の実用志向的な討議。

(5)

の人が損害 を国家裁判所 に訴求す る権限を有するか どうか,有効 な威嚇の効果 を得 るために, EC競争法が加盟国に現実 にその ような侵害が確認 された場合 には懲罰的害賠償請求権 を義務付 けているか どうか を問 うた

14)

。 EuGH は, イタリアの裁判所 に対 して,た しかに実際の ところ全 ての人が損害賠償 を請求 しうるべ きではあること, しか しなが らEC条約は,国内法が EC競争法 に対 する侵害に対 して懲罰的損害賠償 という手段 で もって罰するとい うことを命 じ てはいない, と回答 した

15)

。引用 された判断の中で, EuGH はた しか に明示 的には Cour a ge 判決か らは離れてはいないのだが, しか し,文章の間か ら, 第一次的には填補 に‑ そ してわずかに予防に‑ 向け られた民事損害賠償法 の理解がに じみ出ている。

2 008 年 4 月の EC競争法侵害 を理由 とした損害賠償請求訴訟 に関するホワイ トペーパーは,填補 とい う考 え方 を復帰 させ,威嚇の効果 を二番 目に戻す こと によって,その間の発展 を反映 させた。すなわち,「 EC競争法に対する侵害行 為 によって損害 を被 ったすべての市民 と企業 は,法規 を侵害 した者か ら損害の 賠償 を請求す ることがで きなければならない」 とホワイ トペーパーのは じめに 綱領的に書かれている

16)

。欧州委員会 は,「 最重要の指導原理」 として 「 完全 な 〔 損害の〕填補 とい う目標」 を要求 している

17)

。 よ り強力 な威嚇効果 は, 損害賠償請求権の行使の改善の積極的効果であると歓迎 されている。 したがっ て,ヨーロッパの法文化 にもとづいた調和の取れた措置が要求 されるのであ り, 付 け加 えると,アメリカ合衆国の法文化 とは違 って調和の取れた措置が要求 さ れる

18)

。集 団的権利保護の手段 として,欧州委員会 は 2 つの手段,す なわち 有資格の組織の団体訴訟 と被害者 自身のオプ ト・イ ン型のグループ訴訟の組み

1 4 )EuGH,1 3. 07. 20 06, Rs .C‑ 29 5/ 04‑ 29 8/ 04 ( Man fr e di . /. Adr i at i c oAs s i c ur a z i o ne S . p . A. ) ,SI 営. 2 0 0 6 ‑ I , 6 6 41Rn. 5 3 , 8 3‑EuZW 2 0 0 6 , 5 2 9 .

1 5 )EuGH ( o p.c i t .Fn.1 4 ) , Rn. 5 9

f

f

.

, 9 2 f f . ‑EuZW 2 0 0 6 ,5 2 9 . 1 6 )We i Bbuc h( o p. ° i t . Fn. 3 ) , 2 .

1 7 )We i Bbuc h( o p. ° i t . Fn. 3 ) , 3 .

1 8 )We i L i buc h( o p. ° i t . Fn. 3 ) , 3 .

(6)

合 わせ を もくろんでいる

19)

。両者 は,拡散損害 を理由 とした損害賠償請求権 の行使の改善に奉仕す るはずである

20)

Ⅰ. 消費者保護法

消費者保護法の分野 においては,集団的権利保護は,既 にかな り前か ら欧州 委員会にとってのテーマである。 1 99 8

5 月に出された消費者保護のための不 作為請求訴訟 についての EC指令 は, EG l条 1 項 に もとづいて 「 消費者の集 団的利益の保護のための」不作為請求訴訟についての加盟国の法規定お よび行 政規定の調整 に奉仕す る

21)

。 この EC指令 によって作 り出 された消費者 団体 ない し同指令 3 条の意味におけるその他の 「 有資格の組織」の団体訴訟 は, し か しなが ら,同指令 2 条の意味での不作為請求訴訟 に限定 されている。消費者 団体お よび有資格の組織 は, この EC指令で損害賠償請求権 を基礎づ けること はで きない。

この ような状況 を超 えて,欧州委員会の保健 ・消費者保護総局は,消費者の 集団的権利行使手続 に関す るグリー ンペーパーの示唆にもとづ き, さらに進 も うと求めた。消費者のための集団的権利保護の改善は,消費者 に国境 を越 えて 購入 をすることについてのイ ンセ ンテイヴを与 えることによって,個別取引に おける域 内市場 を強力 にす るはずである

22)

。その際 に欧州委貞会 は,消費者 が他 の法体系の実効性 ( Lei s t ungs f ahi gkei t )への信頼 を欠いていること, し たがって外国における購入が制限されるとい うことか ら出発 している。 この前 提 は非常 に脆い もの と思われる。けだ し,消費者 は,加盟国の一方又は他方 に おいて団体訴訟又 はクラス ・アクシ ョンの態様 による集団的権利保護が利用で きるか どうかに国境の こち らかあち らでの購入 についての決断を依存せ しめる

1 9 )We i L i buc h( o p. ° i t . Fn. 3 ) , 4

f.

2 0 )We i L S buc h( o p. ° i t . Fn. 3 ) , 4 .

21 )Ri cht l i ni e

98/27/EG

desEur op畠i schenParl ament sunddesRat esvom 1 9. 05. 1 998t i berUnt er l as s ungs kl agenzum Schut zderVer br aucher i nt er es s en ABl .EU 1 9 9 8L1 6 6 / 51

ff.

2 2 )Gr t l nbuc h( o p. ° i t . Fn. 4 ) , 2 ,Rn. , 2 .

(7)

ことはほ とん どないか らである。

さらに欧州委員会 は集団的権利保護か らコン トロールの改善 も期待 している が, この点はカルテル法の領域ほ どには強調 されているわけではない。それで ち,多数の消費者 にかかわる消費者法の侵害は,集団的権利保護手続 によって 緩和 され又 は除去 されるであろう市場の歪み という結果にな りうるであろう, と断言 されている

23)

。その際 に欧州委員会 は,消費者が,た しかに至 る所 で E U において消費者保護法の侵害 を理 由 とした損害賠償請求権 を裁判上行使す る資格 を与 えられている, との所見か ら出発 している。 しか しなが ら,加盟田 の裁判手続 は, 1, 0 0 0 ユーロを超 えない額の主張 にとって適切ではない。高価 なコス トと訴訟の リスクは , 〔 権利〕行使 を採算の とれない もの とし, しか も 手続が複雑かつ時間のかかる結果,消費者 にとって利用 されないだろ う

24)

0 その ような事例 においては , ADR の様 々な手段 も機能 しない

25)

0

グリー ンペーパーの任務 に対応 して,保健 ・消費者 〔 保護〕総局が既 に具体 的な基準 ( Vorhaben) を公言 しているわけではな く , 4 つの選択肢 にもとづ く

1 つの束 を展開 しているにす ぎない

26)

。欧州委員会によって もくろまれている 選択肢の最初の 3 つは,それ らが, これ‑ 事実上又 は推定上の問題‑ に直 接的にはかかわ らない とい う点で相互 に共通 してお り,選択肢 1 によれば,全 てが旧来の ままであ り , E Uの局面での措置は放棄 される。選択肢 2 は,加盟 国の協力 を強化する点にあ り,選択肢 3 は異 なった小 さな措置 を組み合わせて いるが,それ らは ADR メカニズムの改善,少額債権 についての国家の手続の 大規模債権への拡大,消費者保護並 びに消費者の苦情 をよ りよく顧慮すること への企業の奨励の領域 における加盟国の協力の改善,並 びに消費者 に対 して成 立 した法的救済をさらに利用するように奨励す ることのごときものである

27)

3)Gr

unbuc h( op. ° i t .Fn.

4),4

,Rn.7 .

4)Gr

unbuc h( op. ° i t .Fn.

4),4

f

.

,Rn.9

5)Gr

L l nbuc h( op. ° i t .Fn.

4),5

,Rn.1 0.

6 )Gr t i nbuc h( op. ° i t .Fn.4) ,8 f f . ,Rn.1 9

ff

.

7)Gr

t l nbuc h( op. ° i t .Fn.

4)

,l l ,Rn.

32ff.

(8)

真の火種 は,選択肢 4 の中にのみかかっている。すなわち , E Uの局面での法 的行為 ( Recht s akt ) の可決であ り,それで もって,すべての加盟国において 集 団的な裁判手続が存在す るとい うことが保障 されるであろ う

28)

。その よう な手段 は EC 指令又 は EC 規則の形態でのみ採択で きる。欧州委員会 は , EC 法上の団体訴訟,グループ訴訟又 はムス タ訴訟 を導入す ることを内容上検討 し ている。 これ らがオプ ト・イン主義又は 〔 これ と〕競合するオプ ト・アウ ト主 義 によって編成 されるか どうかは,なお未解決の問題 である

29)

。吐 き出 しを 命 じられ,かつ支払われた損害金額の被害消費者‑の分配の問題は,全 く同様 に未解決である

30)

。 しか しなが ら欧州委員会 は,資金調達の諸問題 に大 きな 価値 を置いてお り,その際に,裁判所手数料 を削減 しない しはその徴収 を完全 に放棄すること,訴額 を制限すること,訴訟資金提供者 に接続す ること又 は訴 訟費用敗訴者負担原則 を放棄す ることも検討 されている

3

1 ) 。それに もかかわ らず,保健 ・消費者総局 もアメリカ合衆国法に対す る違いに重大 な価値 を置い ている。「 すべての場合 に,人が言 うように,若干の非 ・ヨーロ ッパ諸国に存 在す る,例 えば懲罰的損害賠償,成功報酬お よびその他の因子 を含 む法的争訟 の文化が促進 される」 ような因子 は回避 されるべ きである

32)

。 アメ リカ合衆 国が ここで名指 しされていないのは,おそ らく単に外交お よび礼譲の問題に過

ぎないであろう

Ⅱ. ベル リンの反応

連邦司法省 は, どうみで も欧州委員会の諸計画 を精確 に追跡 し,既 に集団的 権利保護の領域 における未解決の行為の必要 ( Handl ungsbedar f ) の用意 を し ている。その際に行為 を指導する観点は,填補主義はわずかであ り,む しろ行

8)Gr unbuc h( op. ° i t . Fn.4) ,1 5 , Rn.48.

9)Gr unbuc h( op. ° i t . Fn.4) ,1 6 , Rn.54f

f.

0)Gr L l nbuc h( op. ° i t . Fn.4) ,1 6 , Rn. 5 7 1 )Gr t i nbuc h( op. ° i t . Fn.4) ,1 5 , Rn.5 1 .

2)Gr t l nbuc h( op. ° i t . Fn.4) ,1 5Rn.48,16, Rn.56 も参照。

(9)

態の コン トロール とい う考 えであるように思われる 。2008 年11 月 25 日の連邦司 法省 の解説 出版物の中では,次の ように述べ ている。す なわち‑

「 少額損害の場合 には,費用 と費用 リスクが損害 に対 して釣 り合 わないので, 個人が裁判所 に出て くることはほ とん どない。 しか し,多 くの人が同様の少額 損害 を被 ったのであれば,結論 において著 しい額が問題 となる。 われわれの法 は,企業が,損害賠償請求権 に直面 させ られることはない とい うことに依拠 し えない とい うことを保 障 しなければな らない。その ような取引モデルが報 われ てはな らない

」33)。

た しかに連邦司法省 は,オプ ト ・アウ ト方式 による, したがってアメ リカ型 によるグループ訴訟の導入 のための必要性 を認識す ることはで きなか った。〔 す なわち,次の ように述べ てい る。〕憲法上 の法的審尋請求権 は,市民が意図せ ず に裁判手続へ引 き込 まれ ることを排 除 している。ついでに言 うと, ドイツは 集 団的権利保護の領域 において うま くや っている。段 階的かつ均衡 のある集 団 的権利実現 の システムが存在 し , 3 つの因子か ら成 っている。す なわち,( 1 ) 公 正競争法お よびカルテル法の領域 における団体 による利益剥奪請求権

,(2)

相 当 す る賠償請求権 の譲渡 に よる消費者 団体 の回収権 限お よび( 3)KapMuGの基準 による資本市場損害の主張のためのムス タ訴訟である

34)

, と。

C. 集 団 的権 利 保 護 の諸機 能

Ⅰ . 填補主義 と予防主義の間で

ヨー ロ ッパ と各 国の局面 にお け る法政策的 な展 開につ いて概観 をす るこ と は,損害賠償法の機能の理解が変化 している とい うことを明確 に示 した。損害 賠償法の規範的な支配 をめ ぐって,填補主義が予 防思想 と争 っている。

3 3 )Bunde s mi ni st eri um derJus t i z( BM J ) ,Mi t t ei l ungf t i rdi ePr es se,Ber l i n , 2 5 . l l . 2 0 0 8 ,1 .

3 4 )BM J( op.c i t .Fn.33) ,2 i .

(10)

ドイツでは,損害賠償法 は伝統 的に填補主義‑ 向け られて きた

35)

。それに ょる と,損害賠償法の任務 は,端 的に損害 を填補す る点 にある

36)

。 この填補 主義は,損害賠償義務者が相手方の損害 を完全 な範囲で填補す ることを要求す るが, しか しなが ら財産損害が問題 となってお り,かつ被害者に何 ら共働過失 ( 過失相殺)が課 されるべ きでない場合 に限る。 この枠組みの中で,填補主義 は 「 その範囲内では」完全賠償主義 によって守 られるが,「 それを超 えた」反 対の方 向においては,利得 の禁止が限界 を設定 している

37)

。 これによれば, 被害者 は完全 な填補 を獲得することがで きるが, しか しなが らこの填補以上 を 獲得することは決 してで きない とされる。

予防主義, したがって損害回避のための行態の コン トロールとい う観点は, ドイツ損害賠償法 においては従属的な役割 を演 じているにす ぎない。た しかに 損害賠償義務が課 されるとい う見込みは,潜在的な加害者 に対 して,適法かつ 注意 を尽 くして行動することの きっかけとなるが

38)

, しか し損害賠償法の独 自 の規範的な指導基準 として,行態の コン トロールが承認 されるわけではない。

予防効果 を 「 望 ましい副産物

」39)

として組み込 むことは,予防機能が損害賠償 義務 を根拠づけることに適切ではない,すなわち原因によって も,範囲に関 し て も適切ではない とい う結果 になる。 このや り方で損害回避 に対す る強力なイ ンセ ンテイヴを設定す るために, とりわけ填補額 を実際上受 けた不利益の程度 を超 えることは,排 除 されている。別 な箇所 で詳細 に論 じた ように

40)

,予防

3 5 )以下の詳細については , Wa gne r ,Sc ha de ne r s a t z‑Zwe c ke , I nha l t e .Gr e nz e n,i n:

Lor e nz( Hr s g. ) , Kar ・ l s r uher ・ For um 2 006 , Kar l s r ・ uhe 20 06,1 2

ff.

3 6 )Lan ce /Schi e mann,Schadener s at z ,3. Auf 1 . ,Tt i bi ngen 2003 , Ei nl . Ⅰ Ⅰ Ⅰ2,9 f f . ; La r e n z ,Le hr buc hde sSc hul dr e c ht s , Ba nd I ,1 4. Au f l . , ML l nc he n 1 9 87 ,§ 27I , 423 f . 3 7 )Lan ge /Sc hi e mann( op. ° i t .Fn. 36) , Ei nl . Ⅰ Ⅰ Ⅰ2 ,1 0; Oe t k e r ,i n:Mt l nchenerKom一 ment arz um B( i r ger l i c henGe s e t z buc h , 5 .Au f l . , BandI I ,Mt i nc he n 2 007 ,§249 Rn.

2 0 .

3 8 )Lan ge / Sc hi e mam ( o p. ° i t .Fn. 36) , Ei nl . Ⅰ I I2 ,l l ; Lar e nz( op. ° i t .Fn. 36) , § 27I

,

423.

3 9 )La r e n z( o p. ° i t . Fn. 3 6) ,§27Ⅰ ,42 3.

4 0 )Wa gne r ,NeuePer s pekt i veni m Schadener s at zr echt :Kommer zi al i s i er ung

,

St r a f s c ha de ne r s a t z , Ko l l e kt i vs c ha de n, i n:Ve r ha ndl unge nde s 66. De ut s c he nJ ur i s ‑

(11)

機能を填補機能の背後‑再整序す ることは,現代的な損害像の克服 に際 しての 多様 な諸問題 にとっての原因である。 このことは少 な くとも ドイツ損害賠償法 だけでな く, ヨーロッパ大陸法秩序一般 について妥当す る。 したが って,例 え ばフランス損害賠償法 も 「 あ らゆる損害, しか しただ損害だけ ( Tousl edom‑

mage,ma主 sr i enquel edommage) 」の原則 によって動いている

41)

0

ヨーロッパ競争法お よび消費者法 における集団的権利保護 についての欧州委 員会の声明は,責任法お よび損害賠償法の機能についての明確 な立場 を示 して はいない。それについて何 ら批判すべ きことは存在 しない。 けだ し,損害賠償 法の規範的な基礎 を解明 し, さらに展開せ しめることは,ブ リュッセルの法設 定機関の任務ではないか らである。それは,損害賠償法の填補機能の形態にお ける無害な正面の後 ろに,その独 自の関心事‑ 行態の コン トロールー を隠 していたように思われる。 この粉飾戦略は,行態の コン トロールとい う目的の ために損害賠償法 を動員す ることが,ただちに ヨーロッパ にアメリカ的な諸関 係 を取 り込 もうと望んでいるとい う評判 を立て られるとい う事情 におそ らくは 負 うものである。 アメ リカ合衆国法の行 き過 ぎを是が非で も回避 しようとして いる と断言す ることは ,EC 競争法 に関す るホワイ トペーパー

42)

ぉ よび消費 者のための集 団的権利行使手続 についてのグ リー ンペーパー

43)

を一貫 して流 れるモチーフである。

欧州委員会が アメ リカ的な諸関係 を回避 したい とい うことが 自明だ として ち,やは り湯水 とともに赤子 を流す ものであ り,責任法お よび損害賠償法の コ ン トロール機能が第二番 目へ指示 されることは,不誠実かつ事柄 において非生 産的であると思われる。 アメリカ法の 「 毒入 りカクテル」は,無制限の訴訟上 の解明,素人裁判官 [ 陪審員]の大幅な投入,過度 な額かつ無制約なや り方で t ent a gs , Bd. Ⅰ ,Mt l nche n2 00 6,A 1 4f f . ; また , de r s . ,Pr a ve nt i onundVe r hal t ens ‑ s t eue r ungdur c hPr i va t r e c ht‑Anma L S ungode rl e g it i meAu f gabe? , Ar c hi vf L i rdi e c i vi l i s t i s c hePr a xi s( Ac P)2 0 6( 2 0 0 6 ) , 3 5 2( 4 51f f )も参照。

4

1

)Vi ne y,Le sobl i ga t i ons ,Lar e s pons i b i l i t e : e f f e t s , Pa r i s1 9 8 8, Nr . 5 7 . 42 )We i Bbuc h( o p. ° i t . Fn. 3 ) , 3 .

43 )Gr t l nbuc h( o p. ° i t . Fn. 4 ) ,1 5 , Rn. 4 8 ,1 6 , Rn. 5 6 .

(12)

の損害賠償金の課金,訴訟費用不償還の原則,成功報酬の広範な普及,損害賠 償請求権 をビジネスの理念 とした高度 に専 門化 された訴訟弁護士 の形成 にあ る。評判の悪いアメ リカ民事訴訟法のクラス ・アクシ ョンは,い ま叙述 された 毒入 り料理 にささやかな貢献 を しているにす ぎない。 さらに,その濫用の可能 性 は, とりわけアメリカ合衆国の南東 における若干の裁判所管区の裁判所が見 え透いた選挙戦術上の又はその他の事柄 に異質の考慮か ら濫用 を助成 している とい うことにもとづいているのだが,それは彼 らが実際上 自分たちに提起 され たすべての クラス ・アクシ ョンに認可 を出す ことに よってである

44)

。 この種 の関係 は,今 日の ヨーロッパ において,必ず しも脅威ではない。それ らが,欧 州委貞会お よび ヨーロッパの専門家 をして先入観 にとらわれることな く集団的 権利保護の個 々の手段 のメ リッ トお よびデメリッ トについて熟慮す ることを妨 げてはならない。これ らが意味 をもっ ことは, 損害の填補又 は行態の コン トロー ルが中心的な法政策上の 目標 を示 しているか どうかについて明瞭性が支配する 場合 にのみ可能である。

Ⅰ.損害類型の分類 1.分類の必要性

集団的権利保護の概念 は高度に抽象的であ り,非常 に様々な事例群 に関係 し ている。別 な箇所で既 に詳 しく述べた ように,集団的権利保護の問題 は,「 一 つの ものが全 てに当てはまる」式に統一論的な評価で もって解決 されるもので はない

45)

。詳細 には, 3 つの事例群 に分類 されるべ きである。す なわち,紘 散損害,大規模損害お よび公共財損害である。 この専門用語 は, よ り良い意思 疎通のための提案以上の ものでは決 してない。損害の タイプを他の概念によっ て示す こともで きよう。

いずれにせ よ重要かつ不可欠なのは,分類それ 自体である。なぜ な らば填補

4 4 )

柱9 7 ) を見よ。

45 ) Wa gne r ,Gut a c ht e nz um 6 6 .DJ T( o p. c i t . Fn. 4 0 ) , A 1 0 6

ff

.

(13)

主義 と予防主義の関係 は,その際にいずれにせ よ別 な形 をとるか らである。優 れた法政策は, まず第‑にその都度追求 される法的 目標 とその都度それに付属 している規律の選択肢 に関 しての明確性 を作 り出さなければな らない。それゆ え,消費者のための集団的権利行使手続 に関するグリー ンペーパーが,明確 に 拡散損害 と大規模損害 とを分けてはお らず, したがって欧州委員会 によって委 託 された加盟国の法における集団的権利保護の手段 についての研究 もまた, こ の ような分類 を分析の出発点 としていないのは,残念 なことである

46)

2. 公共財損害

公共財損害 とは,個 々の権利主体お よび権利主体のグループに帰属 していな い法的財貨又 は利益 に対す る不利益 である

47)

。公共財の保持 については,む しろ住民全体 ない し‑ 全世界的な問題の場合 には‑ 人類それ 自体が利益 を 持 っている。 これに該当す る事例 は,環境法が豊富 に,すなわち環境損害の形 態で提供 している。典型的には,気候の変化,海洋の生態系の変化,土地の 自 然の生活圏の侵害,種の断絶,狩猟法に服 さない野生動物の侵害等 々である

損害賠償法の機能の観点の下では,その ような損害像 は問題 とはな らない。け だ し,ほかならぬ古典的な個人の損害の場合 には,損害の填補 と予防が同時に 保障 されることが問題だか らである。原因者が環境損害の再生の費用負担 をさ せ られることによって,同時に再生の必要のある侵害の惹起 を回避するインセ

ンテ イヴが与 えられる

もし法秩序がその ような損害 について,それにもかかわ らず困難に陥ってい

46 )2 0 0 8

8

2 6

日の

Ci v i cCo n s ul t i n g/Ox fo r dEc o no mi c s ," Eva l ua t i o no ft hee f f e c ‑ t i vene s sa nde f f i c i enc yo fc o l l e c t i ver edr e s sme c hani s msi nt heEur ope anUni on.

Par tI :Ma i nRe por t "2 4 。そこでは 3 つの設例が出されてお り,古典的な拡散損害 ( 電話サーヴィス提供者のインチキ包装),資本市場責任の領域における典型的な 大規模損害 ( テレコム事件),給付責任法のコンテクス トにおける大規模損害 ( 派 行 トラブル)に関係 している。たしかに 「 少額債権 ( l ow‑ va l uec l ai ms ) 」 と 「 高 額債権 ( hi gh‑ va l uec l ai ms ) 」の区別には触れられてはいるが,体系的に分析 され ているわけではない。

4 7 )Wa gne r ,Gut a c ht e nz um 6 6 .DJ T( o p. c i t . Fn. 4 0 ) , A 1 2 6f f .

(14)

るとすれば,損害が何 らかの形で 「 無主体」だか らである。損害賠償請求 を主 張 しうるであろう個人又 は人的集団が存在 しない。問題がその ように描写 され るのであれば,その解決は多かれ少 なかれ明白であ り,す なわち公益の担い手 としての国家の能動的事件適格 ( Akt i vl egi t i mat i on)にある。環境損害の回避 お よび再生のための環境責任 に関す る EC 指令の 5 条は,所轄の各官庁 に損害 賠償請求権の行使 を委ねることによって, まさにこの規律モデルを追求 してい る

48)

。 こうした解決の もっ とも深刻 なデメ リッ トは,所轄官庁 ない しその職 員が,環境損害の原因者か ら填補 を求めるイ ンセ ンテイヴをほとん どもってい ない点にある。そこか ら EC 指令 1 2 条は結論 を導 き出 し,環境団体お よび私的 な利害関係人に所轄官庁 に介入 を要求す る権限を与 えている。

最後 に,現地又 は空間的に近接 した別 な場所での侵害の事実上の填補が不可 能な事例 における損害 「 利得」が,大 きな問題 をもた らしている。その場合 に は,原因者が填補基準の負担 に代 えて,いわゆる環境慰謝料の支払いを課せ ら れるか どうか とい う問題が提起 されている。その ような義務付 けの付加 は,哩 論上は首尾一貫するか もしれないが,合理的な評価のための手がか りが広 く欠 けているので,実務的にそれを行なうことは非常 に難 しい。

公共財損害 についての考察は, これで終わ りとしよう。実際上 はるかに意義 深 い環境 損害 の事例群 に とって,環境責任 指令 の形 を とった解 決が存在 す る

49)

。競争法お よび消費者保護法 においては,集団的な法的財貨の損害では な く,全 く,私人によって処理 される個人的損害が問題である

4 8 ) Wa gne r ,Di ege me i ns c ha f t s r ec ht l i c heUmwe l t ha f t ungausde rSi c htdesZi

v

i

1‑

r echt s ,i n: Hendl er / Mar bur ger( Hr s g . ) , Umwe l t ha f t ungma chneuem EG‑ Re cht , Be r l i n2 0 05 , 7 3( 8 4f f

.

)

;

de r s . ,Di ege me i ns c ha f t s r e c ht l i c heUmwe l t ha f t unga usder Si chtdesZi vi l r echt s ,Ver s i cher ungs r echt( Ver s R)2005,1 77( 1 78f . ) :de r s "Das neueUmwe l t s c ha de ns ge s e t zVe r s R2 0 0 8, 5 6 5( 5 6 6 f f . ) .

49)

これについて,詳細は ,Wa gne r ,Di ege me i ns cha f t s r ec ht l i cheUmwel t ha f t ung

ausderSi chtdesZi v il r echt s( op. ci t .Fn. 48) ,73f f . : de r s . ,Ver s R2005,1 77f f . ;

de r s . ,DasneueUmwel t s c hadens ge s e t zVer s R2 0 08, 565 : de r s . ,Gut a c ht enz um

66.D

J

T( o p. ° i t .Fn. 4 0 ) ,A 1 2 6f f .

(15)

3. 拡散損害

個人的損害 とい う残 された部分は,決 してまとまったブロックではな く,そ れ 自体が 2 つの中心的な事例群 に,すなわち大規模損害 と拡散損害 とに分け ら れる。両方の事例群 は,一つのかつ同 じ行態又 は同 じ危険源によって同種の個 人的損害の多数が惹起 されるとい うことを共通 に有 している。 したがって大規 模損害お よび拡散損害の集団的因子 は, まず多数の私的な権利主体が原則的に 同種の態様で不利益 に関わるとい う点にある。 しか し,それで もって通有性 は 終わる。大規模損害 と拡散損害 は,個 々の関係人が被 った個人的損害の範囲 と 重大性 によって区別 される。

拡散損害 にとって特徴的なのは,あ らゆる個人が,た しかにその填補 をす る ことは難な く可能であるにせ よ,不釣 り合いな費用 を生 じさせ る微細 な損害 を 被 るということである。通常の損害 は,おそ らく既 に常 に存在 して きた し,そ れ については古 くか ら 「 法務官 は些事 を取 り上 げず ( demi ni mi snoncur at pr aet or ) 」の原則が残 され うるにせ よ,現代の拡散損害はそれが集合体 として

は全 く非常 に大 きな秩序 を形成 しうるとい う点で異 なっている。消費者保護の 領域 における適切 な事例 は,いわゆるイ ンチキ包装であ り,例 えば,20 グラム 詰め られるべ きティーバ ッグが,実際には 1 9. 5 グラム しか詰め られていなかっ た場合である。義憤 に駆 られた紅茶の消費者で さえも,彼のその時々の個人的 損害 を,訴 えとい う手段 で又 は ADR とい うメカニズムを利用 して も,テ ィー バ ッグの生産者に対 して行使することは,冷静 に考 えれば思い とどまるであろ う。 ドイツにおいて裁判上顕著 になったその他の事例 は,振替送金 に際 しての 銀行の利息起算 日の決定の実務 に関係 している。振替金額がす ぐに送金人の口 座か ら抹消 されるが,受取人の口座 に

2 ・3

日遅れては じめて記帳 されるな ら ば,た とえ振替金額が多額であって も振替当事者の利息損害 はご くわずかであ る。他方で,銀行 にとっては全ての振替送金の合計 にもとづいて利息収益が生 じ,それは ドイツにおいてかつては年 間数百万マルクに も及んでいた

50)

。そ 5 0 )Sc hi mans k y,i n: Sc hi ma ns ky/ Bunt e / Lwo ws ky( Hr s g . ) , Ba nkr e c ht s I Ha ndbuc h, 3 .

Au f l . , Ba ndI ,Mt i nc he n2 0 0 7 , §4 7Rn. 6 4 . 参照。

(16)

れゆえ BGH は正 当にもこの実務 に対 して干渉 したのだが,そのためには団体 の訴 えが必要であった

51)

。第三の事例 は,消費者 のための集 団的権利保護 に 関す るグリー ンペーパーの中に正当にも引用 されているのであるが,その顧客 に包括費用 とい う形で当座貸越のためのかな り高額 な利息 を請求す るイギ リス の銀行の実務 に関連 している

52)

0

拡散損害の法実務上の中心問題は,個別的な請求の額 と訴訟上の行使費用 と の間の不均衡である。例 えば,1 00 ユーロを下 回る領域 における損害賠償請求 権 は,訴訟物の価値 と釣 り合 わない訴訟費用 を生 じさせ る。予納 され るべ き GKG1 2 条 1 項,同34 条, KV1 21 0 号 による三種の裁判所手数料 は,既 に75 ユー ロに達 し,そ して弁護士の手続手数料が32. 50 ユー ロにおいて さらに付 け加 わ り,同時に,立替金の償還費用並 びに場合 によっては30 ユーロの額の期 日の手 数料が加わる。 これ ら全 ての場合 に考慮 しなければならないのは,上述 した料 金規定額がその ような法的争訟の実際の費用のおお よそを反映 した ものです ら ない ということである。 自由業の人が生計のほかにオフィスルーム,人的お よ び物的費用 をもカヴァ‑ しなければならない とすれば,5 0 ユーロの総手数料で 20 分以上働 くことはで きない。職業裁判官の場合 に,仮 に裁判官の時間の真の 費用が どこにも算出されず, 証明 されない として も実態 は異 なるところはない。

したがって,わずかな係争価値の費用が,強力 に補助金 を与 えられ,ない しは, 高い係争価値の場合 に課 される手数料か ら回されるにもかかわ らず,それ らは 末 だなお個 々の原告 に とっては高額 にす ぎる。誰が,1 00 ユー ロの金額 を獲得 す るために,合 わせて約27 0 ユー ロの費用 リス クを引 き受けるであろうか

53)?

5 1 )BGH,1 7 . 01 . 1 9 8 9 , BGHZ1 0 6 ,2 5 9 ; BCH ,0 6 . 0 5 . 1 9 9 7 , BGHZ1 3 5 , 31 6 .

5 2 )Gr unbuc h( op. ° i t .Fn. 4 ) , 3f . , Rn. 6 ; また, Of f i c eo fFa i rTr adi ng,Pe r s ona lCur ‑ r e ntAc c ount si nt heUK, 2 0 0 8 , Rn.1 . 5 ,2 . 3 f f

.

も参照。

5 3 )2 7 0 ユーロの金額が生 じるのは,三種の裁判所手数料 ( ‑7 5 ユーロ)および弁護

士 2 人の手続手数料および期 日の手数料の費用,同時に立替償還,同時に売上税

( 3 2. 5 0 ユーロプラス3 0 ユーロプラス 2 0 ユーロの立て替え概算額,同時に1 5. 67 ユー

ロの売上税 ‑9 8. 1 7 5×2‑1 9 6. 5 5 ユーロ)が加算される場合である。原告は,請求

を棄却された限 りにおいて,ZPO91 条により約27 0 ユーロの総額を負担 しなければ

ならない。

(17)

この ような選択 を前 に して,個人による権利行使 を断念すること, したがって

「 合理 的な無 関心」 の状況 を取 り続 けることが全 くもって分別 にか なってい る

54)

責任法お よび損害賠償法の機能 という観点の下では,拡散損害の場合 には, 損害の填補ではな く, もっぱ ら行態の コン トロールが問題 となっている。個人 は被 った損害 を自ら担 うことはで きないので,拡散損害は原状 回復 を必要 とし ない。消費者が団体か ら彼の権利の保護のためのほんの数ユーロ又は数セ ン ト の範囲での償還 を受 けるとすれば,消費者 はこの ような額で彼がほんの少 し足

りない食料品のパ ックについて,あま りにも多 くの支払いを したことについて の総額が填補 されることはない。関係人の所得 と資産状態か ら独立 して,各個 人の補償金は運営上の費用 を生 じさせ るが, これは利用の様 々な関係のほかか ら生 じ,その受取人への支払いにもとづいている。それにもかかわ らず,拡散 損害の原状 回復 について考慮 されな くてはな らない とすれば,行態の コン ト ロールとい う利益 においでである。 これ独 自の 目標 は,潜在的な原因者 に対 し て,遵法行動 をとり,第三者 に不利益 を加 える行態 を回避するための費用上の インセ ンテ イヴを与 えるとい う点にある。

4. 大規模損害

大規模損害の下で,唯一の損害発生事象又 は同様の損害発生源の若干が同種 の個人的損害の多数 を惹起するシナ リオが理解 されな くてはな らない。拡散損 害 との決定的な違いは,個別的な損害の総計がは じめて著 しい量 に達するので はな く,各個別の被害者が著 しい打撃 を受 けている点にある。拡散損害が実際 上純粋経済損失 としてのみ生 じるのに対 して, 大規模損害の古典的な事例群 は,

54)Kb'

t

z

,Kl agenPr i va t e ri m 6 f f ent l i chenI nt er e s s e, i n:Hombur ge r / K6t z( Hr s g . ) , Kl agenPr i vat eri m 6 f f ent l i chenI nt er es s e, Fr ankf ur tam Mai n1 975, 69( 70i . ) : Scha fer ,Aus w i rkungenbeiderCl as sAct i onundderVerbandskl age,i n:

Ba s edo w/ Hopt / K6 t z / Ba e t ge( Hr s g. ) , Di eBt i nde l unggl e i c hger i c ht e t erl nt e r e s s e n

i m Pr o z e s s ,Tt i bi nge n1 9 9 9 ,6 8 f . ; Wa gne r ,Gut a c ht enz um 6 6 .DJ T( o p. ° i t .Fn. 4 0 ) ,

A 1 07.

(18)

生命お よび身体 といった法益の侵害 に関係 している。典型的な例 として,列車 事故,航空機の墜落事故,登 山鉄道 における事故,それか らまた欠陥のある製 造物 よ り生 じた大規模損害 も挙げ られな くてはならない。純粋経済損失の領域 における大規模損害の現代 的 な形態 は,投 資家が証券発行者お よび金融サー ヴィス業者 による誤解 を招 く情報又 は情報の不提供の結果被 った損失である。

大規模損害の場合の問題状況は,拡散損害の場合 とは全 く関係 しない。それ は後者 に対 してまさに対極的に置かれる。拡散損害の場合 には,権利行使がそ もそ も試み られるときに,関係人の合理的無関心の結果 として訴 えの提起 はほ とん どないが,大規模損害の場合 にはこれに対 して訴えは多す ぎる !

航空機事故 によってその家族 を失 った者,列車事故で きわめて深刻 な後遺症 をそ こか ら負 った者,全貯蓄を新たな市場で失 った者, これ らは思慮分別に し たが うと消極的態度にとどまることはで きず,その権利 を有す ると思われる賠 償要求の貫徹 を試みるであろう。 また,関係人が 「 多数で」権利保護 を求めて いるので,司法制度は著 しい困難に直面する。個 々の裁判体 は,数年 にわたっ て麻痔 させ られるとい う怖れがあ り, よ り複数の裁判体が取 り組む場合 には, 矛盾 した受訴裁判所の判決の怖れがあるが, しか しとりわけ一個の,そ して同 じ責任原因が常 に法治国家的な要求 を満た した手続の助 けを借 りて収集 された 証拠の提出 と評価の下で確定 されなければならない場合 には,わずかな司法資 源が大がか りに浪費 される。 こうした考慮 は全 ておぼろげ理論 とは異 な り,経 験上満足 させ るものである。誤 った資本市場の情報 による投資家損害 とい う特 別領域 においては,裏切 られたテ レコムの株主の1 4, 000 以上の訴 えが提起 され たフランクフル ト・アム ・マイ ン高等裁判所 の負担過剰 は, KapMuG とい う 形での立法者の介入 をさえ招 いた

55)

。それに もかかわ らず,最初の訴状 の到

5 5 )John, Der Tel e kom‑ Pr ozes s :St ress t est f t l r das Kapi t al anl eger ‑

Mus t e r ver f ahr ens ges e t z ,Ze i t s c hr i f tf L l rWi r t s c ha f t s r e cht( ZI P)2 0 0 8,1 31 4( 1 31 5 )

によるフランクフル ト・アム ・マイン地方裁判所の負担過重の印象深い記述 ;ムス

タ訴訟の憲法上の許容性 については , BVe r fG,27. 07. 2004, NeueJur i s t i s che

Wo c he ns c hr i f t( NJ W)2 0 0 4 , 3 3 2 0( 3 3 21 )e i nge he ndunt e nD. Ⅰ V3 . ; F. Ⅰ Ⅰ Ⅰ .

(19)

着か ら,フランクフル ト ( マイン)高等裁判所の面前でのムスタ訴訟での口頭 弁論の開始 まで 7 年以上が経過 した

56)

。要す るに,大規模損害 は合理的無 関 心の問題ではな く,訴訟上の効率性の問題なのである

5

7 ) 。この間題の解決は, 機能的に活動 しうる司法 に対 しての公共の利益のみにではな く,他の場合,そ の要求の処理 を待つために大量の原告の後塵 を拝 さな くてほな らないであろう 多 くの権利追求者の個人的利益 にも存す る。

拡散損害 とは異 な り,大規模損害の場合の責任の規律 は, コン トロール機能 に限定 されない。大規模損害の場合 には,他の場合 にも責任法が規定する機能 に もとづ く通例 の両輪,す なわち填補 と予 防ない し損害填補 に よる予 防であ る

58)

。すべ ての個人が典型的な形で著 しい不利益 を被 っているので,損害填 補 に対する正当な利益が存在する。カラブレイジによって展 開された法の経済 分析 の専門用語の中で,大規模損害の場合 には,いわゆる第一次事故費用‑

事故費用 と回避費用 の総和‑ だけでな く, さらに第二次事故費用 も問題 と なっている

59)

。 これによ り被害者が引 き受 けることがで きないか,ただちに は引 き受けることので きない損害の負担 を負 うので,その者が被 るさらなる不 利益のことが意味 されている。第二次事故費用 は,被害者が生 じた不利益 を填 補す る十分 な金額 を受け取 った場合 に軽減 されるか,あるいは完全 に消滅す る。

根本 において,損害の填補 は,深刻 な損失 を被 るリスクを処理す るところの被 害者のための保険 と同様 に作用す る。

責任法は被害者 に対 して填補 を保障す るので,原因者に事故費用 を課 してい る。 この ような事象 は,既 に発生 し又は回復不能に生 じた費用の単 なる再分配

5 6 )Jahn( op. ° i t .Fn.5 5 ) ,1 31 4; Sc hi l der ungpr akt i s c he rEr f ahr unge ni nkr i t i s c he r Abs i c htauc hbe iVar adi 7 2 e k / As mu s ,Ka pi t a l a nl e ge r ‑ Mus t e r ve r f a hr e ns ge s e t z : Ve r ‑ f a hr e ns be s c hl e uni gungundVer be s s er ungde sRe c ht s s c hut z e s ? ,ZI P2 0 0 8 ,1 3 0 9 . 5 7 ) Wa gne r ,Gut a c ht e nz um 6 6 .DJ T( o p. c i t . Fn. 4 0 ) , A 1 1 9 .

5 8 ) Wa gne r ,Pr a vent i o nundVe r ha l t e ns s t eue r ungdur c hPr i va t r e c ht‑Anma L S ung o de rl eg it i meAu f gabe?( o p. c i t .Fn. 4 0 ) , 4 5 8 f .

5 9 )Cal ab r e s i ,TheCos t so fAc c i dent s , Ne wHa ven1 9 7 0 , 3 9 f f . ;また, Sc hd fe r /O t t ,

Le hr buc hdel ・6konom is c henAna l ys ede sZi vi l r e c ht s , 4.Au f l . , Ber ・ l i n/ He i de l ber g

2 0 0 5 ,1 3 4 f f .も参照。

(20)

をもた らすのではな く, さらに加害者 にその ような損害 を惹起す ることを回避 するインセ ンテイヴを与 える。損害の惹起 をは じめか ら回避す るために, 2 つ の戦略,す なわち注意措置 を講 じることと行為水準 を引 き下げることが考 え ら れる。加害者 は,それが可能であ り,かつそれで もって回避 される事故の費用 よ りもわずかな費用が もた らす限 りにおいて,注意措置 を講 じるであろう。 さ らに加害者は,過失によって左右 されることのない危険責任の場合 には,その 活動の範囲を,そこか ら引 き出される利益が総費用‑ そこでは,事故費用 と 回避費用の額 も顧慮 されな くてはな らない‑ よりも大 きい ように調整す ると い うイ ンセ ンテ イヴをもつ。

Ⅱ.集団的権利保護の基本問題

大規模損害 と拡散損害が またその ように異 なるが,それ らは中心点を共通 に 持 っている。すなわち,その問題点は権利行使の局面にあるのであって,権利 の根拠づけにあるのではない。紙の上では,典型例 として挙 げ られた事例 は 「 万 事が順調」である。 けだ し,鉄道企業が列車事故 とい う結果の補償 を しなけれ ばな らないこと,インチキ包装の製造者が不正競争 を営んでいるとい うことは, 責任法上は疑いの余地はないか らである。実際上の権利行使の蓋然性が問われ, 対応す る賠償請求権の主張のための法的お よび制度的な枠組み となる条件が よ

くよく考 え られては じめて,困難が始 まる。 この ような理由か ら議論の中心 は 実体法 にあるのではな く,訴訟法の領域 にある。 したがって,欧州委員会の声 明では訴訟上の概念が優位 に立 ち, したがって,それがそれに関連 した議論 を も規定 している。実体法上の請求権 ではな く,集団訴訟 ( S a mme l k l a g e n ) , クラス ・アクシ ョン,団体訴訟, 共同訴訟等 々の訴訟上の法的救済が問題 となっ ているのである。拡散損害お よび大規模損害についての特殊 な解決の提案 と取 り組 むに先立 って

60)

, こうした規律の選択肢が まず第一 に詳細 に検討 されな ければならない。

60 )下記 E"F

(21)

D. 集団的権利保護の規律モデルの概観

集団的権利保護の手段 をめ ぐる議論 は,クラス ・アクシ ョン,集団訴訟お よ び団体訴訟の諸概念 をめ ぐった ものであ り, したがって実際上,それで もって もっとも重要な規律の選択肢が挙げ られている。 しか しさらに,伝統的ない し 現行法上存在す る損害賠償請求権の集束化の可能性が視野 に収め られな くては ならない。以下の叙述では,包括的な比較法的な所見が問題 となっているので はな く,場合 によってはなお詳細が形作 られなければな らないか もしれない中 心的な規律モデルの理解が問題 になっているのである

61)

Ⅰ.懲罰的損害賠償 1.理論的な萌芽

まず第一 に, しか しヨーロッパの関係 にとってまことに異常 な集団的損害 に 関す る解決が叙述 されな くてほな らないが,それはグループ全体 に成立 した全 損害 を精算することを個 々の原告に許容する。 このモデルは,経済学者たちに よってアメ リカ合衆国由来の懲罰的損害賠償 を正当化す るために出されたある 提案 に関連 している

62)

。それによると,懲罰的損害賠償 は責任法の刺激効果 を減殺 し,又 は無 にす る ( ような)行使 による欠損の填補 に奉仕す る。 この考 慮 は,責任法お よび損害賠償法が,個人にその価値がその時々の活動 によ り得 る総収入 よ りも大 きい損害 を回避するとい うインセ ンテ イヴを与 えるべ きであ

61 )欧州委貞会によって委託された研究は,若干の加盟国における現存の諸制度につ いての概観を提供 している。前

柱46)0

6 2 )Co o t e r ,Puni t i veDa ma ge sf orDe t e r r e nc e :Whena ndHo wMuc h? , ( 1 9 8 9 )Al aba ‑

maLawRev iew( Al a. L. Rev. )40,11 43( 11 49

ff.):

Pol i ns ki / Shave l l ,Puni t i ve

Da ma ge s :AnEc o no mi cAna l ys i s ,( 1 9 9 8 )Ha r va r dLa wRe vi e w( Ha r v.L. Re v. ) 1 1 1 ,

869( 887f f . ) ;Cool er /Ul en ,LawandEconomi cs ,5. Auf 1 . , Bos t on2007,393

ff.:

Sc hav e l L ,Founda t i onso fEc onomi cAna l ys i so fLa w,Ca mbr i dge ,Mas s a chus et t s

2004, 244 f . ;以下 については,既 に , Wagner ,Pr avent i onundVer hal t ens ‑

s t e ue r ungdur c hPr i va t r e c ht‑Anma Bungo derl egi t i meAu f gabe?( o p. c i t .Fn. 4 0 ) ,

4 6 3

f

f . ; de r s . ,Gut a c ht e nz um 6 6 .DJ T( o p. ° i t . Fn. 4 0 ) ,A9 8f

.参照。

(22)

る とい うことを前提 に している6 3 ) 。 さらなる安全対策費用 の限界費用が,そ れで もって回避 されなければな らない損害の価値 よ りも大 きくなるに至 る ま で,費や されるべ き注意はそのぶん拡張すべ きであ り,危険な活動の量 はそれ だけ軽減 される。 この前提 に対応 しているのは,過失責任お よび危険責任 とい う伝統的な責任 システムであ り,それは一般に,それが原因者に事実上その者 によって惹起 された損害 を再び償 う‑ それは, よ り多 くもな く, よ り少な く もな くである‑ ことを義務付 ける。その際に,注意義務 に違反 し又は特 に危 険な活動 によって惹起 された全ての損害が,実際上 も主張 され,加害者が回復 を求め られるとい うことが暗黙 に前提 とされている

64)

。現実 において, この 前提 は決 して完全 には満たされない。特定の損害類型では, しか しなが ら,損 害賠償請求権の大部分は主張 されない。 この ことが起 こる限 りにおいて,責任 法のインセ ンテ イヴは空転する。

この ような害悪 を除去す るために, と りわけポ リンスキー/ シ ャヴェル に ょって懲罰的損害賠償 とい う手段 を組み入れることが提案 された

65)

。 この提 案 に よれ ば,実 際 に存 在す る損害賠償 請求権 の実行 の蓋然性 が 明 らか に 1

( 1 00%) よ りも小 さい場合 には,超填補的な損害賠償 を命ず る給付判決が常 になされる。現存する行使 による欠損 を埋め合わせ るために,原告 に与 え られ るべ き賠償額 は,請求権の行使の蓋然性 に反比例 して掛 け算 されなければな ら ない という。したがって,例 えば,請求権の行使の蓋然性が0. 25( 25%又 は方) であるな らば,個人的に被 る損害 とそれで もって負担 される賠償額 に因子 4 ( 1:0. 25) が掛 け算 されな くてほな らない とい う。 個 々の被害者が, 例 えば1, 000 の範囲で損害 を被 るとすれば, この提案 による とその者 には4, 000 の賠償額が 与 え られな くてはならない。

6 3 )以下については , Kb ‑ t z /Wa gne r ,De l i kt s r e c ht ,1 0.Auf l HMOnc hen2 00 6, Rn.5 9 f f .のみ参照。

6 4 )Wa gne r ( op. c i t .Fn. 3 5) , 32 i . ; de r s . ,Gut a cht enz um 6 6.DJ T ( op. c i t . Fn. 40 ) ,A 2 3 , 9 8 .

6 5 )Po l i n s k i / Sh av e l l( op. ° i t . Fn. 6 2 ) , 8 6 9 .

(23)

2. アメ リカ合衆国における実務

いま述べ られた経済学的な計算 は,アメ リカ合衆国法において決 して承認 さ れているわけではな く,アメ リカ合衆国の裁判所の実務 を説明で きるもので も ない とい うことが,強 く強調 されな くてはな らない

66)

。陪審員 は懲罰的損害 賠償 を課す るに際 して,依然 として行使 による欠損ではな く,特別の不快 な行 態 に反応 し,それによって呼び起 される憤慨 によって,部分的に法外 な額の給 付 を命ず るに至 る

67)

。 これに対 して,経済学理論 は懲罰的損害賠償の合理化 お よび限定化 の試み であ る。 ア ラバ マ州 のあ る裁判所 は, BM W o fNort h Ame r i c aL ' .Go r e 事件の悪名の高いことで有名 な判断の中で前 に叙述 された根

本思想 を取 り上げ,輸送中に損害 を受け,引渡 し前 に修理がなされた思い もか けない新車の買主 に,その者個人の損害 はたった4, 000 ドルの額であるに もか かわ らず,400 万 ドルの額の損害賠償 を与 えた

68)

.このことにとって決定的だっ たことは, 事故に遭 った新車‑ 裁判所 はその数 を1, 000 と見積 もっている‑

の買主の多 くが, しば しばその事故 について全 く知 り得 なかったので,損害賠 償の主張 を断念 した とい うことにある。州最高裁判所 はこの判決 を破棄 し,懲 罰的損害賠償の範囲を限定 し, したがって原告 は結局の ところなお5 0, 000 ドル を受 け取 った

69)

。他 の点で もアメ リカ合衆国最高裁判所 は経済学モデルに依 拠す ることや,懲罰的損害賠償 を行使 による欠損の填補 に適応 させ ることを拒 絶 した

70)

。か くて実務 に関 しては,懲罰的損害賠償が単 に行態の コン トロー

6 6 )

詳細 は

, Wa gne r ,Pr a vent i onundVer hal t ens s t euer ungdur chPr i vat r ec ht‑

Anma L ミ ungode rl e g it i meAu f gabe ?( o p. ° i t .Fn. 4 0 ) , 4 7 3

ff

.

6 7 )Kahnemann/ Schkade / Suns t ei n,SharedOut rage,Errat i cAwards,i n:

Suns t e i n/ Ha s t i e / Pa yne / Sc hkade / Vi s c us i( Hr s g . ) , Puni t i veDa ma ge s‑Ho wJur i e s De c i de ,Chi c a go2 0 0 2 ,31 f f .

6 8 )BMW o fNo r t hAme r i c a ,I nc .vGo r e ,64 6So . 2d61 9( 62 7f . ) ( Al aba ma1 9 94 ) . 鰭 償金額はアラバマ州最高裁判所によって2 0 0 万 ドルに減額された ; a a O, 6 2 9 . 6 9 )BMW o fNo r t hAme r i c a ,I nc .vGo r e ,51 7U. S.5 5 9 ,5 6 8f f

.

( 1 9 9 6 ) .

7 0 )Co o pe rI ndus t r i e s ,I nc . ,vLe at he r manTo olGr ou p,I nc . ,532U. S. 424( 439) ( 2 001 ,perSt evens , ∫ . ) :「 そのような懲罰的損害賠償に対するアプローチが抽象的

な政策問題としてはいかに魅力的であれ, 陪審員が懲罰的損害賠償を与えるときに,

(24)

ル とい う意味での威嚇だけではな く,犯 された不法 についての報復 とい う意味 での処罰にも奉仕するとい うところにとどまっている

71)

3. 評 価

実際上, 行使 による欠損の填補のために懲罰的損害賠償 を動員することには, 集団的損害 にとって顕著 な行使の問題の解決に一つの寄与 をなす可能性 はある のだろうか。いずれにせ よ包括的に適切 な手段 に関わる問題ではない。大規模 損害の場合 には,最初の原告 に全関係人の損害全体 に相当する額 を与 えること は全 く排除されな くてはな らない。 もしその ような態度が採 られるとすれば, さらなる被害者の後続の訴訟は棄却 されなければな らないが,それは後続原告 の募集 とい う結果 にな り, またそ うでない とすれば被告が さらに敗訴 させ られ なければな らないが,それが責任の重複 に匹敵することになるであろうかのい ずれかである

72)

0

行使 による欠損の埋め合 わせの 目的で組み込 まれた懲罰的な損害賠償 は,た だ拡散損害の場合 にのみ ま じめに議論す る価値があ り,その場合 には,個々の 被害者 は個 々の損害の範囲が ご くわずかであるがゆえに全 く無関心であ り, し たがって動かない とされる。第三者が彼 らの損害賠償請求権 を束ねて主張 し, その者がそれで利得 を得 ないのであれば,懲罰的損害賠償 には不 当な点は生 じ そのような最終的に調整された抑止の目盛 りの行使に通常は従事 しないことは明白 である‑‑・ 。いずれにせよ,予防は懲罰的損害賠償によって提供される唯一の日的 ではない・ ‑‑。むしろ懲罰的損害賠償の予防機能でさえ,経済上の 「 最適な抑止」

によってはじめて提供されることは少 しも明白ではない

」( 強調は原文におけるも

の)

o Co l b y,Beyondt heMul t i pl ePuni s hmentPr obl em: Puni t i veDamagesas Puni s hme ntf orI ndi vi dua l , Pr i va t eWr o ngs ,( 2003) Mi nne s o t aLa wRe vi e w ( Mi nn, L Re v. ) 87,583( 607 f . ) .

7 1 )Paci fl ' cMut ualLi feI ns ur anc eCo.vHa s l

i

p,499 U. S. 1( 19)( 1991) ; BMW o f No r t hAme r i

c

a ,I nc .vGo r e( o p. ° i t . Fn. 69) ; St a t eFa r mAut o mo b i l eMut u alI n s ur ‑ anc eCo .vCampb e l l ,538 uS. 408( 416)( 2003) ; Br oc k me i e r ,Puni t i vedamages , mul t i pl edamagesunddeut s cherordr epubl i c,Tt i bi ngen 1999,18; Mb ‑ r s do r f‑

Sc hul

t

e ,Funkt i o nundDogma t i kUS‑ a mer i ka ni s c herpuni t i veda ma ge s ,Tt i bi nge n 1 999,61f f

.

( 11 2)

参照。

7 2 )Wa gne r ,Gut a c ht e nz um 66. DJ T( o p. c i t . Fn. 40) ,A 1 00 f .

(25)

ない。問題は, ここでは個 々の損害の集束が一つの集合体 とな り,それに応 じ て生 じた賠償金額 とい う賞金が訴え提起のイ ンセ ンテイヴを歪曲す るとい う点 にある。最初の原告が,訴額の基準 に したが って費用 を要求 されるとすれば, 訴訟 リスクは著 しく高い ものであ り,その結果,ほとん ど誰 もそれを引 き受け ないであろう。 これに反 して,訴額が法律上の上限によって限定 されるのであ れば,それで もって高額が勝ち取 られるであろう第一の訴 えをめ ぐって競争が 生 じるであろう。いずれの事例 において も,不法な行為のゆえの多 くの訴 えの 競合 を規律する必要があ り,その場合 に 「 裁判所手続‑の レース」が回避 され るべ きだ とするな らば,決 して優先主義 に したがった手続が許 されてはな らな い。おそ らくは後続訴訟が第‑の訴 えに引 き続いて許容 され,か くして集団的 権利追求 を可能にする以外の道は残 されてはいない。 しか しその場合,それに よって多数の人が共同 して又 は人的団体が原告 として登場する集団的な訴訟追 行の手段 を直接設定す ることが有用であるように思われる

73)

0

Ⅰ.共同訴訟

ヨーロッパの諸民事訴訟法は,多数の被害者の請求権が,一つの法的争訟 に おいて並行的に主張 されるとい うことを例外 な く許容 している。 このことはこ こではより詳細 に叙述 されえず,む しろ ドイツ法 を例 に して例示的に記述 され る。 ZPO59 条 2 選号 によれば,複数の者が事実上又 は法律上 同一の原因に よ り権利 を有するとき共同訴訟人 として訴 えることがで き, ZPO60 条によれば, 同種の請求権お よび本質的に同種の事実上お よび法律上の原因に もとづ く請求 権 について同 じことが妥当する。いずれの規定が問題 となるか どうか とはかかわ りな く,いずれにせ よ同一の不法行為 を理由として賠償 を要求する複数の被害者 は共同訴訟人 として訴えることがで きるとい う点について一致がある

74)

。た し

7 3 )Wa gne r ,Gut a c ht e nzum 6 6 .DJ T( o p. c i t . Fn. 4 0 ) , A 1 0 2 .

74)

Bor k,i n:St ei n/ Jonas,ZPO, BandI I ,22.Auf l . ,Tt i bi ngen2004 ,§ 60Rn. 3;

H

i

i Bt e ge ,i n:Thomas / Put z o,ZPO, 2 9.Auf l . ,Mt i nc hen2 00 8 , §§ 59 , 60Rn. 3;Vo l 1 ‑

ho mme r ,i n:Z6 1 1 e r ,ZPO, 2 7 .Au f l . ,K6 1 n2 0 0 9 , § § 5 9 , 6 0Rn. 7 .

(26)

かに異なってはいるが, しか し同種の不法行為,例えば一連の欠陥のある製造物 の販売が問題 となっている場合に,同 じように判断がなされなければならない。

共同訴訟は,弁論 と判決が共通に実施 される一個の裁判に多 くの個別的な訴訟 を 統合す ることを可能 にす る。それ を超 えた請求権 と訴訟法律 関係 の 「 共 同化 ( Ve r ge me i ns c ha f t ung) 」 はいずれにせ よ認め られず,独立 した請求権 と訴 え の集束 にとどまっている。原告側の共同訴訟の場合 には,個 々の原告全てが, 法治国家的手続の完全 な保障, とりわけ法的審尋が成立 し,主張 されている請 求権 と訴えについての無制約の処分権限を行使する当事者である。全ての個人 は,訴 えをさらに追行するか,取 り下げるか,あるいはまた訴訟上の和解 に同 意す るつ もりかを自律的に決断す ることがで きる。

か くして,共同訴訟 を ZPO にとって不可欠の ものにす るが,集団的権利保 護の問題の解決が問題 となっている場合 に,他方で不十分であると思わせ る原 因が これによって示 されている。共同訴訟 は,単体の集団訴訟ではな く,多 く の同 じ方向を向いた個別訴訟の共通の弁論 と判決に関す る呼称である。それに

「 関与」するためには個 々の被害者全てが訴 えを提起 しなければな らないので, 拡散損害に関 して典型的な合理的無関心の問題 は除去 されない。大規模損害の 場合には共同訴訟 はよ り良い成果 を収めるが,それで もやは り,一つの訴えで 個 々の訴訟 を純粋 に訴訟上集束化す る場合 に達成 されるであろう削減可能性 に はずっと劣 っている

75)

0

Ⅱ.譲渡と消費者団体およびカルテル企業の債権回収の訴え ( Ei n z i eh u n gs k l a ge) 連邦司法省 は,既 に構築 された集団的権利保護の手段 に,いわゆる債権 回収 の訴えを含めている

76)

。その際に,団体, とりわけ消費者団体が, 自らの名に おいて主張するために,構成員の損害賠償請求権の譲渡 を受けるとい う事例が 問題になっている。譲渡の代わ りに,債権回収権限の授権 も問題 となっている。

7 5 )下記 F. 参照。

7 6 )BM J( o p. c i t . Fn. 3 3 ) , 2 i .

参照

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