職 孚 経 濟 と 清 費 節 約
ー第一次欧洲大職に關する二研究ii
士口
田.
秀 夫
近代的職争は︑それが南米の局地や印度の田舎で職はれるものでない限り︑極度の大規模消費の基礎の上に
︑職はれるものである︒そしてこのことは︑驚くべき彪大な國家財政の膨脹といふ形をとつて噛現れる︒これは
吾々が今日の日本や欧洲の情況から直ちに知つてゐることであるが︑各種の研究調査が行届いてゐる第}次大
職の結果からこのことは最も端的に知り得られるところである︒すなはち第一次大職中に於ける交職各國の歳
出総額を畢時に於ける其の歳出と比較して︑其の増減を見るならば︑このことは極めて明瞭になる︒併しなが
ら大職申には︑'交戦各國に於いては何れも大なり小なりρ紙幣便値の憂動が見られるので︑その各國各年の数
戦争経濟と清費節約(吉田)二五九
二六〇
字を漠然と合計したのでは︑結果臨全く無意味なものとなつてしまふ︒そこで先づ毎年の紙幣贋値を求め︑こ
れを大職勃襲の前年たる一九=二年を基礎とせる卸費物債指数で除して︑これを一九=二年債値に還元し︑更
にこれを手債で弗に計算するといふ方法をとる時は︑可成ρに近い数字が得られるであらう︒かくの如ぐして
一九一三年弗債値に還元した歳出額を︑大職勃護以前の各國の財政歌態より推測し得られるその期間中の正常
歳出見積額と比較して見ると︑次の如き推定職費が得られる︒(拙著﹃戦争と國家財政﹄第三章Y
第剛表一九一四1一九一九合計年度に於ける各交職國推定職費
(軍位百萬弗︑一九ニニ年儂値に換算)
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戦ロ ル ポ 日 イ ギ フ ベ 英
ウ ル タ リ ラ,レ
シ マ ト 帝
リ シyギ ニ ガ
ア ア,レ 本 ヤ ヤ ス イ 國
時歳出
三六︑八一五
一︑二八〇
一山ハ︑二ご八
蓋五
七︑四≡
一︑三九〇
六四二
三〇
一三︑垂2 正常歳出
一〇︑翫七八
六天
五︑〇二〇
一三四
二︑九四二
一︑四七六
﹁四六八
四=
五︑九〇菖 同盟國へ融資
五︑〇四就
一︑一〇四
ご九二 差額
二一︑一ご一八
㌦杢ハニ
言︑一〇四
〇六九
四︑四八九
ω八六
一七四
〇二9
七︑三六六
合 津
〃 衆
.ビ.
國 ア
︑三六六
,島二〇︑一一四 西五
二︑七七七五︑〇四一︒ :二三
︑三三九六
聯合國合計九八︑二二八三〇︑五六二ご︑四八二五六︑一八四︑
奥旬國
プルガリア
ドイツ
トルコ 一〇︑八四八
一西六
二三︑︼七六
一︑山ハ一三 .五︑四一〇
四七三
三︑二八一
九ご三 i
一︑二八九 五︑四三八
〇一ご毛
一漕八︑山ハ○山ハ
六益
協商國合計
︑ 已孟︑八八三一〇︑〇九七温,2一八九一西︑四九七
・・総計ここ四︑一一一四〇︑六五九;︑七主八〇︑六八一
これによると交職國の職費は弗に換算七て約八〇七億弗といふご之になる︒﹂これは前述の如く一九一三年債
値に還元した上での計算であつて︑その爲めに数字は比較的に小さく現れてゐるのであるが﹂計算によつては
この数字を二〇八六億弗とし︑叉ぱ直接職費一八六二億弗︑聞接職費一五=ハ億弗酒合計實に三三七八億弗と
してゐるのである︒聖'︑.'︑﹂■風
約八百億弗壱炉ふ前掲の藪字倣最後の藪字の僅か四分の一にも當らぬもので﹁あるが︑それにしてもこれは驚
戦箏経濟と浩⁝費節二約(吉田)二六一
二六二
くべき漠大な数字である︒例へば大英國は一六八八年の名響革命より第一次欧洲大戦の勃襲に至るまでのニニ
六年間に︑屡々大職争を行つてゐる︒すなばちウィリアム三世の職争は一億五千萬弗を要し︑アン女王の職争
には二億五千萬弗以上を費し︑スペイン職争とオウストリア王位縫承職役は二億弗以上を要した︒叉七年職争
には三億五千萬弗以上を費し︑アメリカ猫立職争には五億弗以上を費し︑更にナポレオンを相手に廻しての大
職箏では實に六十億弗が失はれ︑更に下つてはクリ︑︑︑ア職争では三億五千萬弗を費し︑最後に南阿職孚でも殆
んど十五億弗が失はれた︒併し英國はこの二百歎十年間に︑職孚に樹してのみ國費を支出してゐたものではな
い︒職争以外の幾多の事業に封して多額の維費が支出されて來たのであるが︑英國が大をなずにつれてこの非
軍事支出は増加する一方であり︑加之國債費の員澹も著しく増加して來たのであつた︒而もこの二二六年間を
通じ,て大英國の歳出額は︑その凡ゆるものを合算しても︑概激で僅かに五三〇億弗である︒然るに大⁝戦は︑大
職後の亘大な復興費其の他は全く別にして︑僅かに職争申の数年間の而も職費としての支出だけで︑内輪に計
算しても八〇七億弗といふ亘額を消費してゐるのである︒すなはちこの八〇七億弗といふ職費は︑大英國の二
世紀と共の上四分の一の期間の全財政を賄つてな低その後に約八分の三を饒すところのものである︒アメリカ
の場合をとつて見ればこのことは一暦明かとなる︒アメリカは一七九一年の建國以來一九一三年末に至る約一
世紀四分の一の間に︑これ亦多額の國費を支出してゐる︒すなはち一.八一二年には英國と戦ぴ︑次いでメキシ
コと職ぴ︑叉六十年代には破壌的な南北戦孚があり︑更に世紀末には米西職争が職はれた︒その上叉ルイジア
ナの買牧︑アラスカ獲得の爲あの支佛︑ヴアジン諸島の買牧︑フィリピン諸島獲得の爲めめ支彿があり︑更に
叉パナマ蓮河の大工事がある︒これ等総ての外に更に凡ゆる他の國費を合致して︑而もその合計は二四五億弗
である︒これは八〇七億弗の三分の一にすら達しない数字である︒
かくの如くに近代的大職争は︑天丈學的な数字に達する國費の支出の上に職はれる︒そこで屡々それは國費︑
の支出能力にょつて戦はれるかの如き錯畳が生する︒成程財政的叉は金融的な操作は︑職争経濟の運螢に於い
て︑極めて重要なる役割を演するものである︒これは何人も否定することは出來ない︒併しそれが近代的大職
の争を賄ふ根本的なものであると考へるならば︑それは大きな誤謬であると云はなければならない︒
二︑
戦
上述の如くに近代的大職争に於いては國費は異常なる大膨脹を告げるものである︒この國費の大膨脹は李時
財政に於けるとは比較にならぬ重大な蹄結を伴ふものであρ︑更に國費の多くが経濟的には不生産的沈滑費さ
れるといふ黙では︑小さからぬ特異性を有つものであるけれども︑而も職時に於ける経費な根本的性質に於い
て卒時のそれと異るものではあ砂得ない︒すなはち一定の貨幣額としての租視乃至公債が︑そわだけに於いて
何物かを生産するものでは決してないのである︒
この關係を最も端的に示すものは租税である︒職争財政に於いては必然的に増視の手段がとられ︑叉事實そ'
戦争経播⁝と沿⁝費節約(吉田).=六三
二六四
れは極めて重要な⁝載争経濟運螢の手段であるが隔そ0経濟的意義は︑・その根本に於いては一一般の租税の場合
と攣るものではない︒すなはち増税が行はれた場合に於いては︑納税者はそれだげ消費能力を喪失し︑從つて
そ肌だけの消費を節して︑この節約分は國家の手に移るの容あゐ︒勿論増視そのものにょつて直ちに商侃量は
攣化するものではなく︑叉増視しないからと炉つても同様に商品量は増加するものではないから︑無炉ものは
同じく無く有るものは有るといふだけのことであρ︑假に紙幣の形で所謂購買力が納税者の手に残つてゐても
商品が無ければ買入ないわけであゐが︑こ蕊ではインフレイションを問題としてゐちのではないからρこれは
こ∬では問題ではない︒とに角租税にょつて溝費力が國民の手から國家に移輻せられることは攣りぼない︒
所が租税に代へて職費は屡々公債によつて賄はれる︒問題が公債になると︑︑右に述べた租税の場合に於ける
極めて看易い事實は往々にして看過されて︑一つの謬見が撰々起うて來るつそれは︑公債による時には︑將來
きの浩費力が現在のそれに韓化されると考へる錯畳である︒
.通俗財政學者の財政論の結果として世上往々にして極めて誤つた公債論が信ぜちれてゐる︒すなはちこれに
よれば︑現實に國家浩費力が存在るない場合に一これを借金によつて賄ふ爲めに公債の手段がとられ︑すなは
ち將來の消費力がこれによつて現在の浩費力たらしめられるといふのであろ︒これは翠に國家経濟の立場から
のみ云ふならば︑一慮便利な読明であるかも知れないけれども︑實はか﹂る読明は経濟的事實の正反封を述べ・
てゐるものである︒
例へ拭で玉に國家が一億圓の公債を嚢行したとしよう︒それは如何にも一見したまころ︑現在一億園が國家
の手に麟し後に至つて利子附きで一億側が戻つてて來るといふとてうから︑國家が一時一億圓を預つて︑償還
後に於ける國民の將來〇一億圓の滑費力を國家の手によつて現在化七たものであるかの如く感ぜられるかも知
れない︒併し事實はこれに反する︒國家が一億圓を徴牧すゐならば︑物債騰貴があらうとなからうと︑とに角
一億側の債格に該當する商晶は,一般市場から國家の手に引上げられること玉なる︒そして一般市場に淺るもの
ほ商品に代へての公債であ濁︒﹂然ら拭將來に於いて公債が償還せちれる時はどうなるのであるかゆそれは極め
て簡軍なヒとである︒國家がその時に於ける一億園を國民の一部から租税其の他の方法で徴牧して︑これを國
民の他の部分売る公債所有者の手に移韓するだけのことである︒要するに公債が償還せられる場合に於いて︑
この償還に充てちれるものは︑その償還の時に於ける國民の浩費力叉は浩費に充てらるべき商品であり︑國家
は軍に國家禮力によつてこの移輻を媒介すゐだけのことでしかない︒國家は何も公債募集の時に於ける消費力
を償還するのではない︒極端に云ふならば︑公債は償還しても破棄しても︑これだけとして何も國民的富〇一
銭をも増減せしめるものではない︒これを反面より云ふならば︑公債とは︑︑將來に於ける債値の分配蘭係のあ
るものを︑國家権力によりて保誰することによつて︑國民の現在の浩費力を徴牧する手段であの︑結局閃題は
常に現在の消費力にあるのであゐ︒.
ぬ要するに︑職争に於いて國家が何等かの形に於払て徴牧せる脇のはその際の現在の梢費力であり︑又は現在
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