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(1)

The Bulletin of Saitama Prefectural University

要旨

埼玉県立大学におけるIP演習は地域に根ざした演習を行ってきた。 この実践的教育基盤を形成するためには、

大学と地域との連携が重要であり、2006年頃から埼玉県下に12カ所、地域専門職連携推進会議を設置し活動展 開している。

本研究では、2007年から7年間の埼葛南地域における専門職連携推進会議の取組みを概観し、専門職連携教育

(IPE)と専門職連携実践(IPW)における課題やその過程を検討した。

結果、IPEでは「専門職連携のための教育の重要性の認識」 「現場とともに進めるIPEの必要性」 「IPEの意義の 共有」が、IPWでは「現場でのIPWに関する現状と課題」が議論される中、本会議に「多職種が議論する場」 「情 報共有の場」 「課題解決の場」 「住民への啓発」 「ニーズ把握」 「大学と現場の有効なgive and take」が求められて おり、IPE、IPWにおける連携支援モデル発展の方向性を確認した。

キーワード:専門職連携推進会議、専門職連携教育、専門職連携実践

Key words:interprofessional, meeting, interprofessional education, interprofessional work

1.緒 言

今年、総務省統計局の人口推計によると、 「団塊の 世代」である1949年生まれが、新たに65歳に達し たことにより、その人口は過去最大となった。

1)

この状況の中、団塊の世代(約800万人)が75歳 以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要 急増を鑑み、厚生労働省は2025年を目途に、高齢者 の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもと、可能 な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生 の最期まで続けることができるよう、地域の包括的 な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)

の構築を推進している。

2)

そのため、医療と介護に おける専門職連携実践(Interprofessional Work、

以下IPW)や、卒前教育としての専門職連携教育

(Interprofessional Education、以下 IPE)の重要 性がますます論じられている。

3,4)

たとえば、介護

支援専門員(以下、ケアマネジャー)の約5割が「医 師との連携がとりづらい」

5)

と指摘する現状は平成

21年度から指摘されており、4年後の調査でも「主

治医との連携における困難点」として、 「 (特に病院 における)主治医と話し合う機会が少ない」 、 「主治 医とコミュニケーションすることに苦手意識を感じ る」 「連携のために必要となる時間や労力が大きい」

6)

等の報告があり、在宅医療推進において、医師を 頂点としたヒエラルキー構造ではない医療と介護の 連携促進は喫緊の課題である。

埼玉県立大学では、教育理念に今後高度化、複雑 化する保健医療福祉の課題を解決すべく、各分野が 連携し、利用者に統合したサービスを提供の必要性 を説いており

7)

、その具現化のため「地域専門職連 携推進会議」を埼玉県内8ヶ所で展開している。 【表 1】

■ 研究報告 ■

1) 埼玉県立大学保健医療福祉学部社会福祉子ども学科 2) 埼玉県立大学保健医療福祉学部理学療法学科

1) Department of Social Work and child Science, School of Health and Social Services, Saitama Prefectural University 2) Department of Physical Therapy, School of Health and Social Services, Saitama Prefectural University

原稿受付日:2014年10月15日

専門職連携実践(IPW)と専門職連携教育(IPE)

-埼●南専門職連携推進会議7年間の実践からの考察-

小川 孔美 原 和彦 木下 聖

Interprofessional Work & Interprofessional Education

~Consideration from the Practice of “Interprofessional Meeting in Saikatsuminami”

for Seven Years

Kumi Ogawa1) Kazuhiko Hara2) Tadashi Kinoshita1)

(2)

なかでも「埼葛南地域専門職連携推進会議」は、

2007

年2月に設置

8)

され、以降埼葛南保健福祉圏域の専 門職や専門機関間の連携に関する課題と必要とされ る研修及び研究事業の検討に取り組んできた。

本研究では、埼葛南専門職連携推進会議における

2007年~2014年10月までの7年間の取り組みのな

かで、地域におけるIPW及びIPEについてどのよう にその理解、考え方を変容させているのかその過程 と、課題をどのようにとらえ、何をこの場に期待し ているかを明らかにする。

2.方法

Merriam9)

を参考に質的研究手法にて行う。分析 は、2007年~2014年10月までの7年間にわたる埼 葛南専門職連携推進会議、運営委員会の議事録、及 び研修会における自由記述、フィールドワークメモ 等の素材を用いドキュメント分析

(注1)

を行った。分 析は、ドキュメントの内容を要約し、共通群をサブ カテゴリー化し、さらにそれらのサブカテゴリーの なかから共通項目を集め分類・体系化し、抽象度を 高めていった。その内容分析の結果については、 『』

カテゴリー、 《》サブカテゴリー、 「」コードの一部 と記載する。また、カテゴリー化し、まとまった意 味をもつ期間について、結果において「期」として

示した。本研究において、対象(参加者)選定が必 ずしも標準化されているとは限らないことから、そ れらを踏まえたうえ、IPE、IPWに関するメンバー による検証(peer examination)と繰り返しの現象 観察、研究者からのスーパーヴィジョンを受けるこ とにより、信頼性、妥当性の確保に努めた。

なお、研究結果報告の前に、地域専門職連携推進 会議における「埼葛南専門職連携推進会議」につい て、その設立背景と目的を記す。

2005年、文部科学省「特色ある大学教育取組支援

プログラム」および「現代的教育ニーズ取組支援プ ログラム」において「保健医療福祉の専門職連携教 育」が採択され、かねてより交流のあったthe UK

Centre for the Advancement of Interprofessional Education(以下、CAIPE)の理念及び教育体制、

方法等について、

CAIPEの講師を招き、積極的に交

流をしながら検討を重ねた。結果、各学科の学生が 専門に基づく実習課程を終えた4年後期に、協力を 得られた実習施設、 機関等において、 患者や利用者、

専門職からのヒアリング、観察、そして共に行う実 践を通して、各職種を超え連携し、患者・利用者本 位のサービスとして統合された実践を学び、養うた めのプログラムを、行政や地域の援助者及び住民と の協働により開発した。このプログラムが、インタ ープロフェッショナル演習(以下、

IP演習)である。

2006年度から3回の試行を経て、2009年度に全学

必修科目としての実施に至っている。

10)

本大学のIP演習は地域基盤型のため、施設や機関 等との連携が重要となることから、2005~2008年 度にかけ、 埼玉県保健医療部と福祉部の後援を得て、

当時の福祉保健総合センター

(注2)

の協力(参加候補 施設の選定と一部は当該施設への説明)をもとに、

県内12ヶ所(平成22年から保健所体制が変更された のを契機に、現在8ヶ所で展開)に「地域専門職連 携推進会議」を立上げ、IP演習の教育理念とその手 法について理解、協力を求める一方、地域での専門 職連携における課題解決策に大学として寄与するこ とを目指している。

本会議の設置目的は、要綱に、1)埼葛南保健福 祉圏域の専門職や専門機関間の連携に関する課題と 必要な研修事業及び研究事業の検討、2)研修事業 及び研究事業の実施及び評価、3)埼玉県立大学が 実施するIP演習 (専門職連携演習) の実施に際して、

プログラムや指導者養成方法にかかる課題の検討、

4)その他、埼玉県立大学と埼葛南保健医療福祉圏

域との間における教育・研究上の協働についての課 題の検討の4点が掲げられている。この会議の構成 員の範囲は、

7市1町内にある機関、団体等で構成さ

表1 埼玉県内8ヶ所にある地域専門職連携推進会議:2014

専門職連携推進会議名 地 域 保健所 福祉 事務所

比企専門職連携推進会議

東松山市、滑川町、嵐山 町、小川町、川島町、吉 見町、ときがわ町、東秩 父村

東松山保健所 西部

秩父専門職連携推進会議 秩父市、横瀬町、皆野町、

長瀞町、小鹿野町 秩父保健所 秩父 埼葛南専門職連携推進

会議

春日部市、越谷市、松伏 町、草加市、八潮市、三 郷市、吉川市、蓮田市

春日部保健所 草加保健所 東部中央 北足立県央専門職連携

推進会議

鴻巣市、上尾市、桶川市、

北本市、伊奈町 鴻巣保健所 東部中央 さいたま専門職連携推

進会議 さいたま市 さいたま市 東部中央 北足立・川口保健所管内

専門職連携推進会議 川口市、蕨市、戸田市 川口保健所 東部中央 埼葛北保健・医療・福祉

専門職連携推進会議

久喜市、(蓮田市)、幸 手市、宮代町、白岡市、

杉戸町

幸手保健所 東部中央 北埼玉専門職連携推進

会議 行田市、加須市、羽生市 加須保健所 東部中央

入間東専門職連携推進 会議

所沢市、飯能市、狭山市、

入間市、日高市、朝霞市、

志木市、和光市、新座市、

富士見市、ふじみ野市、

三芳町

狭山保健所 朝霞保健所 西部

入間西専門職連携推進 会議

川越市、坂戸市、鶴ヶ島 市、毛呂山町、越生町、

鳩山町

坂戸保健所 川越市 西部 児玉専門職連携推進会議 本庄市、美里町、神川町、

上里町 本庄保健所 北部 大里専門職連携推進会議 熊谷市、深谷市、寄居町 熊谷保健所 北部

(3)

れ、現在58施設、機関であり【表2】 、定例会議は1 年に2回をベースに行われ、2014(平成26)年6月 までに15回実施している。

3.結 果

1)現場におけるIPE導入期-IPW課題の言語化:

2007年度~2008年年度6月【第1回~4回】

第1回埼葛南専門職連携推進会議(以下、会議と する)は、2007年2月に開催され、31施設・機関、

44名の参加があった。会議内容は、大学側から主に IP演習についての説明がなされ、その後、出席者ら

が6グループに分かれて意見交換が実施されている。

意見交換は、多職種で検討できるよう構成員が配置 され、1グループメンバーは看護3名、社会福祉2 名、施設長1名、行政1名、理学療法1名等の職種 で構成されている。グループ討議では、IPEが地域 で展開されることについて、 「制度変革と実践との挟 間で専門職連携教育に活路を見出すことが重要」、

「各実践現場で、チームワークを高めていく上での

IPへの期待」

、 「各専門職のモチベーション向上の機 会」とする《地域における現場ベースでの教育の必 要性》への期待が多く挙げられている。一方、IP演 習を受入れていくにあたり、1年時のフィールド体 験学習(2012年よりヒューマンケア体験実習)に続 く、「1年から4年への継続学習の重要性」に言及し た『大学におけるIPEの充実』を求める声や、「IPE で学生に何を学ばせるのか」 「利用者のことを理解せ ず、ケア提供もせず、利用者についての目標・援助 の計画はできない」 「FTとしては、何を指導すべき か」など《IPEにおける戸惑い》《IPE指導方法の確

立》等、 『現場とともに進めるIPEの必要性』を求め る意見も多く出されている。詳細については【表

3-1】を参照。

第2回[2007年5月開催]の会議では、オンライ ン化年金記録データのずさん管理が話題となり、年 金のみならず医療制度改革、介護保険制度の改正、

障害者自立支援法(2013年4月1日から、 「障害者 総合支援法」 )による混乱など、わが国の保健医療福 祉は大きな転換期にあり、国の施策が揺らいでいる 今こそ、地域の保健医療福祉力を再構築していく必 要性が指摘されている。この会議で、埼葛南専門職 連携推進会議議長が構成員の中から選出された。そ の後の意見交換会では、 『現場でのIPWに関する現状 と課題』について主に議論されている。詳細につい ては【表3-2】を参照。

表2 埼葛南専門職連携推進会議における構成員と IP 演習 実施施設数

種別 機関数 IP 演習

実施施設数

病院 17 9

介護老人福祉施設 9 5

介護老人保健施設 6 1

地域包括支援センター 7 0

障害児者施設・相談機関 4 1

行政 4 0

福祉事務所 2 0

保健センター 2 0

保健所 2 0

居宅介護支援事業所 2 0

社会福祉協議会 1 0

クリニック 1 1

薬局 1 1

合計 58 18

表3-1 埼葛南専門職連携推進会議において議論された IPE、IPW、地域専門職連携推進会議の役割

カテゴリー サブカテゴリー コード

IPE

専門職連携 のための教 育の重要性 の認識

地域におけ る現場ベー スでの教育 の必要性

制度変革と実践との挟間で専門職連携教育に 活路を見出すことが重要

実践現場で、チームワークを高める上でのIP 演習への期待

各専門職のモチベーション向上の機会

現場ととも に進める IPEの必要 性

大学におけ るIPEの充 実

1年から4年への継続学習の重要性

IPEにおけ る戸惑い

利用者のことを理解せず、ケア提供もせず、

利用者についての目標・援助の計画はできな い

IPEで学生に何を学ばせるのか 専門職不在、専門職外の助言は可能か 入院期間の短縮、急変、退院による事例変更 による困難

IPE指導方 法の確立

FTとして何を指導すべきか 各ポイントにおける接し方 リフレクシ

ョンの重要 性

多職種間で何故、どの段階で葛藤が生じたの か振り返る

葛藤をいつ乗り越えることができたのかを明 確化

IPEの意義 の共有

IPEによる 自己の学び

保健医療福祉だけでなく教育の現場と連携の 課題に触れ視点が広がる

KJ法にも戸惑うことがなくなってきた 専門実習では見られない多職種の視点を通し 連携を学ぶ

IPEによる 働き方の変 化

教員と現場職員が共に関わることで臨場感が ある

利用者に対する援助は、これまで施設内で完 結していたが、施設外の多職種との協働や連 携の重要性を認識する

近くにある施設でも名前だけしか知らず、そ の実際を知らない施設について、報告発表会 を聞いて理解が深まる経験をした。この積み 重ねが連携に違った意味を持たせてくるので はないか

院内の職員同士が知り合うきかっけとなり、

職員間での声掛けが多くなる

地域連携の前に、院内の連携の重要性に気付 く

IPEにおけ る指導者と しての新た な体験と学 び

主体性に任せ、『何もしない』という役割を 果たすことがかえってよい経験

中立的な立場で見守ることの困難性を学ぶ IPEにおけるプロセスの重要性

(4)

一方、実際IP演習にてFTを行った専門職からは、

「保健医療福祉だけでなく教育の現場と連携の課題

に触れ視点が広がる」「KJ法にも戸惑うことがなく なってきた」等《IPEによる自己の学び》について 発せられる。

第4回[2008年6月開催]の会議では、2009年度 からIP演習が4学年の必修科目になること、

400人以

上の学生のIP演習を行う施設、機関確保の必要につ いて埼葛南福祉保健総合センター副所長兼春日部保 健所長から伝えられている。

また、

2007年度試行的にIP演習を実施した施設か

ら報告を受けての意見交換では、IPEについて「教 員と現場職員が共に関わることで臨場感がある」 「利 用者に対する援助は、これまで施設内で完結してい たが、施設外の多職種との協働や連携の重要性を認 識する」 「近くにある施設でも名前だけしか知らず、

その実際を知らない施設について、報告発表会を聞 いて理解が深まる経験をした。この積み重ねが連携 に違った意味を持たせてくるのではないか」と、IP 演習を自身の施設、機関で行うことで《IPEによる 働き方の変化》を自覚している。さらに、 「主体性に 任せ、 『何もしない』という役割を果たすことがかえ ってよい経験」 「専門実習では見られない多職種の視 点を通し連携を学ぶ」 「中立的な立場で見守ることの 困難性を学ぶ」等、IPEを通じて何を現場実践者と して学べるのか《IPEにおける指導者としての新た な体験と学び》ついて言語化され始める。このよう な体験をすることで、あらためて大学が展開する地 域専門職連携推進会議に求めることとして、 「会議の 意義を高めるため組織化の必要性」 「異なる立場・職 種間で話し合う機会の確保の重要性」等に意識が高 まる言葉が発せられる。

2)IPEの現場における成長期-IPW課題の明確化:

2009年度~2010年度3月

【第5回~7回】

第5回会議[2007年2月開催]では、

2008年度か

ら新たにIP演習を受け入れたFTの報告にて、学生へ の介入を通して理解した「IPEにおけるプロセスの 重要性」 について多くの賛同が得られている。 また、

地域には「営利事業者があり連携が難しい現場では 行政を含めた検討の場が必要」 、

IP演習により、院内

の職員同士が知り合うきっかけとなり、職員間での 声掛けが多くなったことから導き出された「地域連 携の前に、院内の連携の重要性に気付く」等を共有 する話題が増えている。

急性期病院では、入院期間の短縮により事例の変 化の予測が立ちにくいことから事例選択において

「入院期間の短縮、急変、退院による事例変更によ る困難」が指摘される一方、 「多職種間で何故、どの 段階で葛藤が生じたのか振り返る」 「葛藤をいつ乗り 越えることができたのかを明確化」するという《リ

表3-2 埼葛南専門職連携推進会議において議論された IPE、IPW、地域専門職連携推進会議の役割

IPW 現場での IPW に関す る現状と課 題

地域におけ る問題点

行政の市町村間差 施設間差 専門職間相

互理解不足

互いの業務について理解していない 実務上の引継ぎをどこまで行えばよいかわか らない

連携におけ る職種間姿 勢の違い

職員間で連携に対する考え方に温度差 患者中心とはいえない現状

連携において医師の協力が得られない(訪問 診療特に)

連携に必要

な手法 施設内外における連携パスの必要性 連携におけ

る現実上の 制約

通常業務に追われ連携するための活動に時間 が取れない

連携は理想であり目標

施設における保護者の協力が重要

連携におけ る役割や資 源の不足

情報共有システムが不十分 在宅支援システムの整備が不十分 調整役がいないため、意思統一や浸透が不十 分

継続性が弱い

教育・人材 育成上の問 題点

教育への現場の協力は限界がある(実習生受 入れ、実習指導・アレンジ等)

現場では多(他)職種を理解するゆとりが時 間的にない

社会福祉現場に携わる専門職の立場が弱い

IPW への疑 問

連携で業務は楽になるのか。作業・負担が増 え多忙になるだけ

出張や会議への旅費がかさむ 連絡票の印刷費、電話代などが負担

地域専門職連携推進会議

IPE,IPW 推 進の場とし ての地域専 門職連携推 進会議への 期待

多職種にて 議論できる 場

異なる立場・職種間で話し合う機会の確保の 重要性

会議の意義を高める組織化の必要性 営利事業者があり連携が難しい現場では行政 を含めた検討の場が必要

地域のケアマネジャーと出会える等顔の見え る関係の構築

情報共有の 場

マイノリティ対象の支援の必要性を発信 現場で対応困難な事例の共有

他の地域の取組みを知る

課題解決の 場の必要性

IPE と IPW 推進の課題は多様なため方向性の 明確化が必要

市町村行政へのアピールの場

所属する施設、機関、仕事のレベルアップの ための場

地域に多様な会議の場はあるが、会議だけで は連携とれない。

全体を見渡せる保健医療福祉分野のトータル 的システムの欠如

住民への啓 発

地域包括ケアシステムに住民の思いをどこま でくみとるかが重要

ニーズの把 握

地域包括ケアシステムを作り上げる土台とな るニーズについて

大学と現場 の有効な give and take

就職を鑑み、地域の人材資源を豊かにする 支援の質を実際に高めていくこと

(5)

フレクションの重要性》が共通理解された。

その後GP事業は、

2009年3月をもって終了するが、

IP演習は教育として、地域専門職連携推進会議は、

地域産学連携センターの社会貢献事業の一部として 埼玉県全域で展開すること、また、施設FTを担うた めの「ファシリテーター」の教育を大学の研修事業 として実施することになる。また、千葉大学、筑波 大学、札幌市立大学、群馬大学、神戸大学等、全国 的にIPE、IPWの取組が活発化していること、2008 年より日本保健医療福祉連携教育学会が設立された こと等、構成員からの質問に応じる形で示された。

第6回会議[2009年6月開催]では、 「地域に多様な 会議の場はあるが、会議だけでは連携とれない」と 感じていること、 「全体を見渡せる保健医療福祉分野 のトータル的システムの欠如」等、IPW課題が明示 されている。

3)IPEにおける転換期-IPW向上のための検討準備

期:2010年度~2011年度【第8回~11回】

会議に大きな転機があったのは、 第8回会議 [2010 年7月開催]である。

埼玉県内10ヶ所の福祉保健総合センターと3保健 所が、13か所の保健所に再編された。また、人口バ ランスを考え保健所の管轄市町村再編についても報 告があった。

第9回会議[2011年3月開催]では、 「IPEとIPW 推進の課題は多様なため方向性の明確化が必要」、

「市町村行政へのアピールの場」 「所属する施設、機 関、仕事のレベルアップのための場」など多様な意 見が提示されるようになる。結果、構成員が主体と なった会議運営の促進、及び会議の方向性を明確化 するため、本会議での審議に先立ち、議案について 調査、 審議する機関 「埼葛南専門職連携推進会議 運 営委員会(仮) 」設立について議長から提案され、第

10回会議[2011年7月開催]にて承認された。

第11回会議[2012年3月開催]において、この運 営委員会の「会議の位置づけ」「目的」「活動内容」

「委員の構成」等「埼葛南専門職連携推進会議 運 営委員会のあり方」について議長より示された(図 1) 。 「埼葛南専門職連携推進会議 運営委員会」発 足当初、有志9名【特別養護老人ホーム施設長、ケ アハウスマネジャー、老人保健施設PT、特別養護老 人ホームSW、居宅介護支援事業所SW(2名) 、病院 看護師、病院MSW、社会福祉協議会生活支援課】と 大学の埼葛南地域担当教員2名の11名による運営委 員会で、埼葛南専門職連携推進会議の企画検討が行 われるようになり、各運営委員が活動する現場から の意見が、会議に組み込まれやすくなるよう改善さ れた。

結果、2011年6月「介護サービス基盤強化のため の介護保険法等の一部を改正する法律」の成立・公 布、一部施行を受け、

2012年から住まい・医療・介

護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包 括ケア」の実現を念頭においた各現場での取り組み を志向する際、すでに各職種では解決できない、複 合的な問題を抱える困難事例が多くなっており、先 進的な取り組みをしている地域を理解し、知見を広 めたいとする意向が示され、その後の計画が遂行さ れていく。

4)現場におけるIPE成熟期-IPW向上のための熟慮

期2012年度~2014年度【第12~15回】

2012年4月、介護保険制度が2度目の法改正、4度

目の報酬・運営基準の改定を迎え、平成24年度制度 改正の最も大きなテーマである「地域包括ケアシス テムの基盤強化」は、医療ニーズの高い要介護者で も、住み慣れた地域でこれまで本人が歩んできたそ の人らしい「生活」を尊重し、その総体をとらえた うえでいかにサービス提供していくかが課題となっ ている。こうした現況においては、まさにIPEを基 盤としたIPWが必要という認識のもと、2012年7月 から「埼玉県立大学保健医療福祉専門職連携推進研 修会~地域包括ケアシステム構築のための専門職連 携のあり方とは~」を3回(2013年8月、2014年2 月と7月)シリーズにて開催した。これらを通し出 された意見には、 「他の地域の取組みを知る」 「地域 包括ケアシステムに住民の思いをどこまでくみとる かが重要」 「地域のケアマネジャーと出会える等顔の 見える関係の構築」など、この場を通して、地域実 践における関係づくりを積極的に行おうとする姿勢 が強くみられてきている。この他、 「マイノリティ対 象の支援の必要性」や、 「地域包括ケアシステムを作 り上げる土台となるニーズについて」等、 《ニーズ把

2012

3

月 第

11

階会議 議長提案資料より

図1 埼葛南専門職連携推進会議 運営委員会のあり方

(6)

握》を『IPE,IPW推進の場としての地域専門職連携 推進会議への期待』として求める発言もある。

また「就職を鑑み、地域の人材資源を豊かにする」

「支援の質を実際に高めていくこと」等を含め、 《大 学と現場の有効なgive and take》が必要だとする多 角的な視点をもつ意見が出されるようになる。

4.考 察

1)IPEにおける地域専門職連携推進会議

IPEとは、複数の領域の専門職者が連携およびケ

アの質を改善するために、同じ場所でともに学び、

お互いから学び合いながら、お互いのことを学ぶこ とを指す。

11)

地域専門職連携推進会議では現場にお けるIPE導入期には、 「IPEで学生に何を学ばせるの か」等の否定的な意見が多く出されるが、IPEの現 場における成長期では、保健医療福祉と教育と現場 との連携課題、施設外の多職種との協働や連携の重 要性の認識、視点の広がり、モチベーションの高ま り、学生の主体性に任せ何もしないという役割をと ることで、人材が成長するという経験、中立的な立 場で見守ることの困難さの経験、 介入の程度よりも、

プロセスの質を担保することの重要性を理解するこ となどを通して、 『専門職連携のための教育の重要性 を認識』できるようになっている。また、IP演習を 通して、 「多職種間で何故、どの段階で葛藤が生じた のか振り返る」こと、 「葛藤をいつ乗り越えることが できたのかを明確化」するという《リフレクション の重要性》について現場と共有することで、 『現場と ともに進めるIPEの必要性』が自覚されていた。現 場からの意見をIPEにおける教育方法や教育カリキ ュラムに反映させることと、現場のスタッフとその 体験を共有し、サポートし、うまくいかない点を共 にアセスメントし、IPEの目的を再び共有し直すこ とこそが、 地域専門職連携推進会議の役割といえる。

一方、IPEにおける転換期を経て、現場における

IPE成熟期において、IPEを一生懸命実習場所として

受けても、就職先としての選択がないことを通して あらためて現場から提起された「就職を鑑み、地域 の人材資源を豊かにする」 「支援の質を実際に高めて いくこと」等の必要性を求める意見は、IPEをふま え現場における保健人材確保に努めるべきとする

WHOの指摘にも通じており、大学側において対応す

べき重要な検討課題といえ、

12)

引き続きIPEとIPW を連動させるなかで検討する必要がある。

2)IPWにおける地域専門職連携推進会議

IPWとは複数の領域の専門職が、それぞれの知識

と技術を提供しあい、相互に作用しつつ、共通の目 標の達成を患者・利用者とともに目指す援助活動で ある。

11)

これまで見てきたとおり、

IPW上の課題は

実に幅広く、深い。地域における連携実践上の課題

(機関間連携)、職場内における連携実践上の課題

(機関内連携) 、教育・人材育成における課題、専門 職種が抱える社会背景上にある連携実践課題など多 様である。

とはいえ、これらの課題をIPEと連動させながら 真摯に向き合う必要がある。

WHOによると、現役あるいは将来的な保健人材を、

協働実践準備ができている人材、つまりIPWレベル の人材として育てるためには、

IPEにおいて、

「履修 メカニズム」 レベルでの教育と、 「教育者メカニズム」

レベルでの教育を取り込む必要性があるとし、 「実践 レベルでの専門職連携教育形態におけるメカニズム の例」

13)

として[図2]を提示している。埼玉県立 大学では従来より、学士教育にて行うIPEの連携・

協働モデルとして、 [図3]を掲げ、IP演習において 学生が専門職連携で体験する協働の要素として「チ ーム形成」 「多領域の相互理解」 「チームで取り組む 目標とその内容」があり、協働はそれらが互いに影 響し合う活動であるとして巴でイメージを持たせて いる。また、統合は利用者の立場から、サービスが 統合されていることとしている。そこまでの過程に は、ケアの理念や課題を自覚すること、自己理解と 他者理解を進めること、コミュニケーションを豊か にすることと、何よりも各専門職領域で身につける 独自の専門的知識・技術の必要性が論じられている が

11)

、実践レベルでの真の協働実践可能な人材を養 成するには、要素が不足しており、そのギャップを 埋めるためのIPE体制を整える必要性がある。

IPWにおいて、現場から地域専門職連携推進会議

に求める要望には、多職種で議論でき、情報が共有 されるだけでなく、課題解決できる場、住民の啓発 しつつも、そのニーズの把握できる場であった。先 進的な取り組み情報の提供、情報の共有化、市町村 行政と連携して取り組む場として、地域における多 様な連携の取組の見える化をし、IPEとIPWを連動 させ、地域における支援の質を担保していくために 尽力する必要がある。

「公立」の位置づけにある埼玉県立大学は、地方 公共団体が設置・管理するという性格から、地域に おける高等教育機会の提供と、地域社会での知的・

文化的拠点として中心的役割を担うことが期待され

ている。平井、秋山

14)

は、 「自分たちの地域の医療

(7)

は地域自らが守り育てていくもの」として、そのた めに必要な要素として、 経済的な利益だけではなく、

「地域を変えたい、良くしたい」という強い意思、

地域への愛情、 やりがいという取組の発端となる 「イ ンセンティブ」 、 インセンティブを共有する主体相互 間の「トラスト(信頼) 」 、地域の中の多様な主体、

そして地域の中と外をつなぐ機能としての「コネク ター(つなげる人) 」の3要素を挙げている。これら の三要素は、一朝一夕で醸成されるものではない。

2025年問題を目前として、持続可能な医療と介護シ

ステムの再構築が志向される今、7年という時をか けて醸成してきた「地域専門職連携推進会議」を地 域のIPWを育み、地域のIPEに影響を与える場とし て、さらに検討していく必要性がある。

3)IPEとIPW 連動の重要性

本研究では、埼葛南専門職連携推進会議における

7年間の取り組みを概観し、地域におけるIPE及び IPWについてその理解、考え方を変容させているか、

その過程から課題を検討してきた。

大学におけるIP演習の実施について地域に協力を 求める形で、現場にIPEが明確な意図をもって導入 されていく中、現場でのIPEを考えることから、地 域におけるIPWの課題が言語化されていく過程があ った。また、IPEを通して各専門職が、連携を通し て学ぶ意義を共有することによって、次第にIPWに おける実際の現場における課題を明確化する過程へ と繋がっていた。

さらに現場におけるIPEの意義の共有から、自身 の専門性へのさらなる学びの必要性や、働き方の変 化を志向するという現場でのIPEの成熟期を迎える 時、IPW向上のための熟慮がなされ、それを豊かに するための場を真摯に求めていくという過程があっ た。

このことからも、IPEとIPWは常に連動した形で、

地域に根ざすことが重要である。

5.結 果

本研究は、埼玉県立大学における埼葛南地域とい う一地域の地域専門職連携推進会議を対象とした研 究であり、現在8ヶ所にて展開している地域専門職 連携推進会議全体から得られた結果ではない。今後 は、可能な限り、地域専門職連携推進会議のあり方 について、地域性を考慮に入れつつ、その全体像を 本研究の結果をふまえ検証していくことが必要だと 考える。

6.謝 辞

埼葛南専門職連携推進会議を継続するにあたり、

御協力、御支援いただいております、埼葛南専門職 連携推進会議運営委員の皆さま、 構成委員の皆さま、

そして、埼葛南地域の多職種の皆さまに心から感謝 申し上げます。なお、本研究は、埼玉県立大学専門 職連携推進会議保健医療福祉専門職ネットワーク推 進事業費を得て行ったものである。

注1.ドキュメント分析とは、日記,詩,小説,議 事録,裁判記録,新聞,調査票の自由記述,HP,

ブログなど,文字で書かれたものすべてを素材に分 析する手法である。

注2.2010年3月31日「埼葛南福祉保健総合センタ

図2 実践レベルでの専門職連携教育形態におけるメカニズ ムの例

図3 連携・協働のモデル

(8)

ー」は廃止され、

4月1日より「春日部保健所」と「東

部中央福祉事務所」に再編された。なお、同時に保 健所の所管区域が一部変更となり、蓮田市は幸手保 健所の所管区域になり、越谷保健所の所管区域であ った越谷市、松伏町は春日部保健所の所管区域とな っている。 「埼葛南専門職連携推進会議」の名称は、

この再編前の組織体制に基づくものである。 詳細は、

埼玉県庁の「埼玉県福祉事務所」

15)

及び「春日部保 健所」

16)

を参照されたい。

文 献

総務省統計局. 「統計トピックスNo.84「統計からみた我が 国の高齢者(65歳以上)-「敬老の日」にちなんで-」.

http://www.stat.go.jp/data/topics/topi840.htm. 2014

9

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http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukush i_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/.2014年8月1日

閲覧

朝比奈真由美. プロフェッショナルへの初期教育の実際専門 職連携教育(IPE)-質の高い専門職連携(IPW)をめざす卒 前教育-. 日本内科学会雑誌2011 ; 100(10): 3100-3105.

上村伯人, 布施克也. 新潟県魚沼地域における地域包括ケア

-地域医療魚沼学校によるIPEで包括ケアシステムを育てる.

日本医師会雑誌2014 ; 143(4) : 793-796

株式会社三菱総合研究所. 平成21年度老人保健健康増進等事 業 居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の実態に関する 調査報告書

2010 ; 90-91

株式会社三菱総合研究所. 平成25年度老人保健事業推進費等 事業 居宅介護支援事業所及び介護支援専門員の実態に関す る調査報告書 2014;77-83

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http://www.spu.ac.jp/view.rbz?ik=1&pnp=100&pnp=212

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参照

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