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厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)
ホルモン受容機構異常に関する調査研究 分担研究報告書
甲状腺クリーゼ診療に関する研究
研究分担者 赤水尚史 和歌山県立医科大学内科学第一講座 教授
研究要 旨:甲状腺ク リーゼは甲 状腺中毒症に何らかの誘因が加わ って 発症する致 死的疾 患である。これまでに委員会では甲状腺クリーゼの予後改善を目的として、診断基準策定、
全国疫学 調査、診療ガイドライン策定など の活動 を行 ってき た。 診療ガイドライ ンの有効性 を評価するとともに、甲状腺クリーゼの各種要因と予後に関するさらなるエビデンス創出を目 的として、多施設前向きレ ジストリ研究を計画し運用を開始した。将来的にはレ ジストリ研究 から得られたエビデンスを基に、より質の高いガイドラインに改訂する方針である。
A.研究目的
甲状腺クリー ゼは放置すれば生命の危 機 に瀕する切迫した状況下にあり、早期診断と 緊 急 治 療 が 必 要 と さ れ る 。 本 研 究 班 が 行 っ た全国疫学調査の解析から国際的に最高の 医療水準を有する日本におい ても死亡 率は 10%を越えており、また、治療の実態が教科 書 的 な 治 療 法 と 必 ず し も 一 致 し て い な い 場 合があることが認められ た。 このような 状況を 鑑み、本症の予後改善のためには臨床現場 で すぐ に活用 でき るようなわ かりやす い診療 ガ イ ド ラ イ ン の 確 立 が 必 須 と 考 え ら れ た 。 我々はこれ まで に、甲状 腺クリーゼの診断、
治 療 を 包 括 し ア ル ゴ リ ズ ム 化 し た診 療 ガイ ド ラインを策定し英文誌や書籍、学会ホームペ ージなどで公表した。
このガイドラインの有効性を評価するととも に 、 甲 状 腺 ク リ ー ゼ の 各 種 要 因 と 予 後 に 関 するさらなるエビデンス創出を目的として、多 施設前向きレジストリ研究を行うこととした。
B.研究方法
本研究は日本内分泌学会(企画部会にお け る臨床重 要課題 )お よび 日本 甲状 腺学会
( 臨 床 重 要 課 題 ) と の 共 同 で 行 っ た 。 「 甲 状 腺クリーゼの診断基準作成と全国調査」委員 会 が 設 置 さ れ て お り 、 現 在 は 各 学 会 員 お よ び 循 環 器 内 科 、 小 児 科 、 疫 学 ・ 統 計 学 の 専 門家を加えた計14名の委員で活動している。
委員間の意見調整、討議は主に電子メール で行い、研究計画を立案した。
研究デザインは前向きコホート試験で、追 跡期間は診断時から 6カ月時までとした。デ ータ管理システムは愛媛大学大学院医学系 研究科 内に設 置したデータ集 積管理システ
ムであるREDCapを利用した。参加協力を依
頼 す る 対 象 施 設 は 、 主 と し て 内 分 泌 学 会 認 定専門医施設とし、研究期間は 2 年で 500 例 を 目 標 症 例 数 と し た 。 登 録 項 目 は 以 前 に 我々が行った全国疫学調査との整合性を加 味し て、性 別、年齢 、発症 時期、既 往歴、合 併 症 、 身 体 所 見 、 血 液 検 査 デ ー タ、 画 像 検 査 デ ー タ、 治 療 状況 、 転帰 等 の 既 存情 報 を 選 定し た。 症例 蓄 積 後 の統 計 解 析 は 、多 変 量 ロ ジ ステ ィ ッ ク 回 帰 分 析 を 用 い 、 補 正 オ ッ ズ比を算出する。
(倫理面への配慮)
17 本 研 究 に つ い て は 、 「 甲 状 腺 ク リ ー ゼ : 多 施設前向きレジストリ研究」として中核施設で ある愛媛大学(受付番号 1801017)および和 歌 山 県 立 医 科 大 学 の 各 倫 理 審 査 委 員 会 の 承認(受付番号2280)を得ている。研究遂行 にあたっては「人を対象とする医学系研究に 関する倫理指針に従い行っている。
C.研究結果
中核施設における倫理審査の承認を経て レ ジ ス ト リ の 運 用 を 開 始 し た 。 ま ず 日 本 内 分 泌 学 会 認 定 教 育 施 設 の 教 育 責 任 者 に 電 子 メ ー ル に て 参 加 協 力 を 依 頼 し 、 続 い て 日 本 内 分 泌 学 会 お よ び 日 本 甲 状 腺 学 会 会 員 に 学 会 ホー ム ペー ジお よ び電 子 メー ル に て研 究 開 始 を 周 知 し た 。 ま た 、 日 本 甲 状 腺 学 会 学 術 総 会 や ニ ュ ー ス レ ター ( 紙 媒 体 ) に て も 研 究 開 始 と 経 過 を 報 告 し た 。 レ ジ ス ト リ 運 用 開始後に、調査項目の内 容に不備を認めた ため 若 干 の 修 正を 行っ た。 登 録 促 進 のため の対策について適宜委員間 で討議し、学会 ホームペ ージや学術集会、 各種講演会 等を 通じて登録を促した。現在、全国各地の専門 施設から登録がなされており、徐々に症例数 が蓄積されている。
ま た、 以 前 に同 委員 会 が策 定し た甲 状 腺 クリーゼ診療ガイドライン 2017 については、
Mindsガイドラインライブラリーへの掲載準備
が 開 始 さ れ 、 ガ イ ド ラ イ ン の 評 価 結 果 が
Mindsよりフィードバックされた。
D.考察
以 前に委員会が行っ た 全国疫学調査 から は、疫 学データや 診療の実 態に関する貴 重 な情報が得られたが、各種要因と予後との因 果関係については仮説あるいは可能性が示 唆されるにとどまった。多施設前向きレジスト
リ 研 究 で は 各 種 要 因と 予後 と の時 間 的 関 係 が明確であり、因果関係についてより強いエ ビデンスが得られることが期待される。
E.結論
甲 状腺クリーゼ のレ ジス トリ研究を開始 し、
登 録促 進を 図っ た。今 後はレ ジ ストリ 研 究か ら 得 ら れ た エ ビ デ ン ス を 基 に 、 よ り 質 の 高 い ガイドラインに改訂する方針である。
F.健康危険情報 該当なし
G.研究発表
1. 論文発表
1) 赤水尚史:甲状腺クリーゼ.内分泌代謝 科専門医研修ガイドブック、日本内分泌 学会編集、診断と治療社、東京 279-281, 2018
2) 古 川 安 志 、 佐 藤 哲 郎 、 磯 崎 収 、 鈴 木 敦 詞 、 飯 降 直 男 、 坪 井 久 美 子 、 脇 野 修 、 手 良 向 聡 、 金 本 巨 哲 、 三 宅 吉 博 、 木 村 映 善 、 南 谷 幹 史 、 井 口 守 丈 、 赤 水 尚 史: 甲状 腺クリー ゼの診断 と 治 療. 内 分 泌 ・ 糖 尿 病 ・ 代 謝 内 科 48(1):18-23, 2019
3) 赤水尚史:甲状腺クリーゼの診断と治療.
診 断 と 治 療 Vol.106 No.9:1117-1122, 2018
4) 赤水尚史:甲状腺クリーゼ.週刊医学の あゆみ Vol.265 No.2:124-127, 2018
2. 学会発表
1) 古 川 安 志 、 赤 水 尚 史 、 佐 藤 哲 郎 、 磯 崎 収 、 鈴 木 敦 詞 、 飯 降 直 男、 坪 井 久 美 子 、 脇 野 修 、 手 良 向 聡 、 金 本 巨 哲 、 三 宅 吉博、木村映善、南谷幹史、井口守丈:
甲 状 腺 ク リ ー ゼ 多 施 設 前 向 き レ ジ ス ト リ
18 ー研究の進捗状況.第 61 回日本甲状 腺学会学術 集会 埼玉県川 越市 2018 年11月22‐24日
2) 竹島 健、有安宏之、岩倉 浩、山岡博 之、古川安志、西 理宏、割栢健史、村 田 晋 一 、 赤 水 尚 史 : シ ン チ グ ラ フ ィ で
focal uptakeを認めたバセドウ病合併甲
状腺髄様癌の 1 例.第 61 回日本甲状 腺学会学術 集会 埼玉県川 越市 2018 年11月22‐24日
3) 栗 本 千 晶 、 山 岡 博 之 、 唐 戸 嶋 麻 衣 、 竹 島 健 、 古 川 安 志 、 稲 葉 秀 文 、 有 安 宏 之 、 岩 倉 浩 、 西 理 宏 、 赤 水 尚 史 : 免 疫 チ ェ ッ ク ポ イ ン ト 阻 害 剤 に よ る 甲 状 腺 障害の予測因子と臨床経過.第61回日 本 甲 状 腺 学 会 学 術 集 会 埼 玉 県 川 越 市 2018年11月22‐24日
4) 山 岡 博 之 、 栗 本 千 晶 、 河 井 伸 太 郎 、 唐 戸 嶋 麻 衣 、 上 田 陽 子 、 竹 島 健 、 古 川 安 志 、 松 谷 紀 彦 、 松 野 正平 、 稲 葉 秀 文 、 有安宏之、岩倉 浩、西 理宏、赤水尚 史:免疫チェックポイント阻害剤による甲 状 腺 有害 事 象の 発 症 予測 因 子 .第 27 回 臨 床 内 分 泌 代 謝 Update 福 岡 市 2018年11月2‐3日
5) 上 野 山 仁 美 、 有 安 宏 之 、 岩 倉 浩 、 稲 葉 秀 文 、 浦 木 進 丞 、 竹 島 健 、 古 川 安 志、 古田浩人、 西 理宏 、 赤水尚史:バ セ ド ウ 病 の経 過 中 に 甲 状 腺 ホ ル モ ン 不 応症の併存が発覚した1例.第 19 回日 本 内 分 泌 学 会 近 畿 支 部 学 術 集 会 大 津市 2018年10月13日
6) 稲 葉 秀 文 、 有 安 宏 之 、 赤 水 尚 史 : 免 疫 チ ェ ッ ク ポ イ ン ト 阻 害 剤 に よ る 甲 状 腺 障 害.第 91 回日本内分泌学会学術総会
宮﨑市 2018年4月26‐28日
H.知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得
該当なし
2. 実用新案登録
該当なし 3.その他
特記事項なし
研究協力者
佐藤哲郎(城南医院)
磯崎 収(甲状腺のクリニック若松河田)
鈴木 敦 詞(藤 田医 科大 学医学 部内分泌 ・代 謝内科学)
脇野 修(慶應義塾大 学医学部腎臓内分泌 代謝内科)
坪井久美子(東邦大学医学部糖尿病代謝内 分泌センター)
手良向聡(京都府立医科大学生物統計学)
飯降直男(高島平中央総合病院 内科)
金本巨 哲(大阪市立総 合医療セ ンター内分 泌内科)
古川安志(和歌山県立医科大学内科学第一 講座)
有安宏之(和歌山県立医科大学内科学第一 講座)
井口守丈(京都医療センター循環器内科)
木村映善(国立保健医療科学院)
南 谷幹 史 (帝京 大 学ち ば総 合医療セ ン ター 小児科)
三宅吉博(愛媛大学 疫学・予防医学)