5
総 合 都 市 研 究 第
68
号、1999
鉄筋コンクリート造建築物の耐震性能の分布に関する調査研究
一構造耐震指標の分布についてー
l.はじめに
2 .
対象建物3 .
構造耐震指標の分布4 .
既往のI s f l
直分布との比較5 .
まとめ男 男 久 利 利 孝 山 月 本 栗 望 荏
要 約
1 9 9 5
年兵庫県南部地震以降、全国各地で既存建築物の耐震診断が数多く実施されるよう になった。耐震診断の結果として得られる構造耐震指標は、地域の地震被害想定調査など における建物の被害を予測するための基礎資料となっている。しかしながら、この種の資 料は静岡県における学校建築主体のデータ以外には整備されていないのが現状である。都 市に存在する様々な建物の耐震性能を把握しそれを体系的に整理することは、都市の地震 被害想定調査などにおける建物被害予測の精度向上のために重要な課題である。このような背景において、本研究では全国で実施されている耐震診断データを収集し、
鉄筋コンクリート造建築物の構造耐震指標を体系的に整理した。その結果、建物の耐震性 能は、建物の建設年代、高さ(階数)、建物用途毎に様々な分布となることを示した。ま た、都市の地震被害想定調査などにおいて多くの自治体で普遍的に用いられている鉄筋コ ンクリート造建築物の耐震性能分布との比較を行った結果、本研究による結果は、従来の ものよりも低い耐震性を示しており、現在用いられている耐震性能分布を見直す必要性の あることを示した。
1
.はじめにた。耐震診断により得られる構造耐震指標(I
s
値) は、個々にはその建物の耐震性能評価や補強計画 に用いられるが、それらを統計処理したI s
値の分 布は、地震被害想定調査などにおける建物の被害 予測を行う為の基礎データともなっている。1 9 9 5
年兵庫県南部地震以後、全国各地で既存建 築物の耐震診断が数多く実施されるようになっ本株式会社構造計画研究所・東京都立大学大学院都市科学研究科研究生 日東京都立大学都市研究所・大学院都市科学研究科
日事神奈川大学工学部・東京都立大学都市研究所非常勤研究員
様々な種類の建築構造物が多数混在する都市の 地震被害想定調査や地域危険度測定において、そ の精度を向上させるためには、それぞれの構造物 が有する耐震性能を構造形態・建設年代・用途・
規模別等体系的に把握することが重要となってく る。この種の資料としては、現状では主に中埜ら (1
9 8 9 )
による鉄筋コンクリート構造物の調査結 果が普遍的に用いられているが、そのデータは静 岡県における学校等の公共建物主体の資料であ り、データの偏りは避けられないと考えられる。また、都市に数多く建設されている事務所建築や 共同住宅などの構造物の資料は整理されていない のが現状であり、様々な建築物の耐震性を体系的 に整理することは急務であるといえる。
筆者らは、公文書(実施責任者望月)により
1995
年阪神淡路大震災以降、全国各地で実施され ている様々な建物の耐震診断データの収集を行っ てきた。本研究では、収集した耐震診断結果を基 に、鉄筋コンクリート構造物について、建設年 代・建物高さ(階数) ・建物用途別に構造耐震指 標の分布を整理するとともに、地震被害想定調査 などにおける鉄筋コンクリート造建築物の地震被 害予測を行うための基礎資料として従来から多く の自治体において普遍的に用いられてきた構造耐 震指標の分布との比較を行った。2.
対象建物収集した耐震診断データは
1 6 7 4
棟であり、その うち1294
棟が鉄筋コンクリート造建物である。残 りは鉄骨鉄筋コンクリート造建物や鉄骨造建物お よび権合構造の建物となっている。また、データ の収集先は3 0
の都道府県や市区町村、ゼネコン1 1
社、設計事務所7
社であり、収集した建物棟数は 地方自治体と民間とで約半数ずっとなっている。図
1
に本研究で用いた鉄筋コンクリート造建物1294
棟について棟数分布を建設年代別に示し、図2に建物高さ(階数)および建物用途別の棟数分
布を示す。本研究で対象とした建物は、鉄筋コンクリート 構造物の帯筋が強化された
1971
年の旧基準改定前後に建設された建物が中心となっており、
1 9 8 1
年 以降の新耐震設計法によるものも若干ではあるが 含まれている。また、建物の高さ別ではそのほとんどが
5
階建 て以下の3
、4
階建てを中心とした建物となってい る。建物用途別では学校建築が全体の約半数近く で最も多く、続いて事務所、共同住宅となっており、数としては少ないが防災上重要な拠点となる 庁舎、警察署・消防署、病院等も含まれており、
その用途は多岐にわたっている。
3
.構造耐震指標の分布耐震診断の結果として得られる構造耐震指標 (I
s
値)は建物の各階別および方向(はり問方向、桁行方向)別にそれぞれ求まるが、ここでは、建 物の階数や方向に関係なく最も小さL、値をその建
1 0 0 9 0 8 0 7 0 6 0
要
5 0
4 0 3 0 2 0 1 0
o
1 9 5 0 1 9 6 0 1 9 7 0 1 9 8 0 1 9 9 0
図1 対象建物の建設年代別棟数学校 事務所
共同住宅
2
工編
3
保育園
病院
4
庁舎
童量
E
話5庖舗
公民館
6
体 育 館 7
警察・消防
纏合施股
8
宿泊施霞
9
倉庫
その他
1 0
。 2 0 0 400 600 。 200 4 0 0 600
図2
対象建物の用途別、高さ(階数)別棟数栗山・望月・荏本:鉄筋コンクリート造建築物の耐震性能の分布に関する調査研究
7
物のI
s
値として採用した。図31
二本研究で対象と した1 9 2 4
棟の鉄筋コンクリート造建物についてのI s
値分布と、その分布を対数正規分布曲線式で近 似した結果を示す。図
3に示されるように、 I s
値の頻度分布は一 般的に言われている対数正規分布により近似で きることが確認できた。また、図3
よりI s
値の 頻度分布は0.3‑0.5
程度が最も多いことがわか る。全体的には0.2‑1.0
の範囲に分布しており、建物の耐震性能にはかなりの幅があることが確 認できる。
以 下 、 診 断 次 数 ・ 建 設 年 代 ・ 建 物 高 さ ( 階 数) ・建物用途別に
I s
値の分布について述べる。1)診断次数
RC
造建築物の耐震診断は、一般には1
次から3
次診断までがあり、診断次数が高いほどより精度 の高い診断となっている。図
4に診断次数別のI s
値の相対頻度分布を対数正規分布で近似した結果を示す。図4より、診断次数が高くなるとその
I s
値の頻度分布は、より低い値で比較的鋭いピークを示していることがわかる。特に
3
次診断によるI s
値の分布は、そのほとんどが一般的な構造耐震 判定指標である0 . 6
を下回っている。これは一般 に3次診断は、 2次診断の結果からその耐震性に 疑いのある建物についてのみ実施されることによ る結果である。なお、各診断次数毎のサンプル数 は、1
次診断のみのデータが62 4
棟、2
次診断での2 . 5 2
議1.
5
E 1
0 . 5
。
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9 1 . 2 1 . 5
.18
Is値図
3
鉄筋コンクリー卜造建物12 9 4
棟のIs値分布データが4
5 4
棟、3
次診断でのデータが1 8 8
棟とな っており、3
次診断のデータは少なくなっている。2
)建設年代RC
構造計算基準が改定された1 9 7 1
年および新 耐震設計法が施行された1 9 8 1
年を境として、建物 の建設年代を1 9 7 1
年以前、1 9 7 2
年‑1981
年、1 9 8 2
年以降の3
時代に区分してI s
値の分布を整理し た。なお、I s
値は2
次診断の結果を用いた。図5
1
二建設年代別のIs
値の分布を示す。1 9 7 1
年 以前に建設された建物ではIs
=0 . 3
付近の頻度が最 も高い。I s
値が2
次診断の一般的な構造耐震判定 指標(lso)である0 . 6
以上を示す建物は20%弱し かなく、ほとんどの建物が低い耐震性能となって L 、る。1 9 7 2
年‑1981年に建設された建物では、I s
= 0
.4‑0.5
付近の頻度がもっとも大きく1 9 7 1
年以前 に建設された建物より0 . 1程度大きくなってお
2 . 5 . . . . 国ーーー1
次診断
jA
‑・・一一一一3 2
次診断次診断最
1
実1 . 5
思1 0 . 5
。
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9
1.2
1.5
1.8
Is値図
4
診断次数別のIs値分布3
2 . 5
ーーーー1 9 7 1
年以前・・・
1 9 7 2 ‑ 1 9 8 1
年制整
1 2 5
思
1
、、
0 . 5
、句
‑ . .
。 。 。 0 . 3 0 . 6 0 . 9
司・1‑.‑2
‑‑1.5
1.8
Is値図5 建設年代別のIs値の分布
り、
0 . 6
以上を示す建物は約1 / 3
となるO このこ とは、1 9 7 1
年の基準改訂により耐震性能が向上し たことを示している。なお、新耐震以降の建物に ついてはそのデータが少なく、対数正規分布では 近似できないが、今回の調査範囲ではI s
値が0 . 3
を 下回る建物は存在しない。逆に、0 . 6
以上となる 建物がほとんどであり、新耐震設計法により建物 の耐震性能は大きく向上したといえるo
しかし、I s
値が0. 6
未満の建物もいくつか存在しており、こ のことは新耐震設計法による建物においても、何らかの理由により耐震性の{忠、建物がいくつかは 存在することを示している。
3
)建物高さ(階数)図6に建物高さ(階数)別に、
I s
値 が0. 6
以上、0.6‑0
.4および0
.4未満となる比率を示す。図より、1
,2
階建ての低層建物については、約半数の建物 のI s
値が0. 6
を越えているが、3
階建て以上の建物 については、20‑10%
程度と極端に少なくなって L 、る。本データは6
階建て以上の建物のデータ数 が少ないので一般的には言えないが、本調査範囲 の鉄筋コンクリート造建物では、建物高さが高く なるほど耐震性は低く、逆に1,2
階建ての低層建 物は比較的耐震性が高いと評価できるO 図7
に比 較的データ数の多 Lな‑5
階建てのI s
値について、対数正規分布で近似した結果を示す。図より
2
階 建てと3
階建て以上の建物とでは、その耐震性能 の分布が大きく異なり、耐震性能を評価する際に階 階 階 階 階 階 階 階
4 1 n L
勾
d a a
守
E D n O
守
d o o
白 一
ー .
τ. ‑ 1
ー ムーτ一?プ 一
千 一 0'1 一『一
0
覧20
弘40
弘60% 80%
・ 0.4未満ロ0 . 4 ‑ 0 . 6
ロ0 . 6
以 上
図6 建物高さ(階数)別の 18値
1 0 0 %
は、 2階建て迄の低層建物と3階建て以上の建物 とを分けて考える必要があることを示している。
4)建物用途
図
8
に建物用途別のI s
値の平均値とI s
値が0. 6
未 満および0
.4未満となる比率を示す。学校、事務 所、共同住宅を除いては図2
に示したようにデー タ数が少ないが、本研究の調査範囲に限ってみれ ば、I s f l
直が0
.4に満たない建物、すなわちその耐 震性が低いとされる建物の比率が最も高いのは庁 舎、病院、警察・消防署、学校の順になっている。サンプル数が少なくデータに偏りがあるとして も、これらの防災上重要な拠点となる施設におい て、耐震性の低L、建物が存在している事実は、都
2 . 5
住~
2
雲1.
5
思1 0 . 5
公 民 館 体 育 館
3
ー 四 回 目
3
借・
・
4
階一一一一
5
階2借
。
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9
1.2
1.5
1.8
15値図
7
建物高さ(階数)日J I
の18値の分布ぷ語き
/ 1
ムミ
i i ; 1 : ; ; ; ‑
てt :
︑ 二 己
一 己
μ
叫 喰 唯
K尽
7 F
砕一由片目⁝一
U
︺!
恥 弘 匁 山 市 M
=
よ γ
. A詳 時 γ 叫
T;
一 司 戸
) ‑ J ‑ ‑ ‑
⁝ 一
÷ t
一k J
一
Jバ 一
γ
い 一
3開bふb
山 棋 恥 一 叫 三
ニ
4引τ τ +
⁝ 一 ‑ 己 怖 怖 ( 吋 町 ‑ ‑ 一 一 一 一 一
二 冗 守 冗 ) 一
4
司斗 な匁 ゆ t五仇司占︐圃町琵Jど =
設 所 宅 施 務 住 合 事 同 複 共
場 園 設 舗 校 紡 院 舎 工 育 施 底 学 消 病 庁 保 泊
t r 宿 署
警
‑
.'立: 担九; " : l d
γ J
乍‑ ‑ F u f ; i . ; 1
‑
'"~':r~~ 器t;:~:~V司
E
子;~許可:;?~行苧前 1i 三五
0
弛20% 4
0'弛6 0
覧80% 1 0 0
拍.0.4
未満ロ0 . 4 ‑ 0 . 6
ロ0 . 6
以 上 図8
建物用途別の 18値栗山・望月・荏本:鉄筋コンクリート造建築物の耐震性能の分布に関する調査研究
9
市の防災対策上問題であり早急に耐震性の向上を 計る必要があるといえる。
4.既 往 のIs値 分 布 と の 比 較
地域における地震被害想定調査などにおいて、
鉄筋コンクリート造建物の被害予測を行う際の基 礎データとして従来からよく用いられている中埜 ら(1
9 8 9 )の I s
値分布(以下、既往データと称す) と本研究で収集したI s
値分布との比較を行った。既往データは、静岡県の学校建築が主体の
1 6 1 5
棟のデータであり、採用している
I s
値 は 、 第2
次 診断による1
階部分の値C I s < 2 . 5
のみ)である。また、はり間方向、桁行方向の
I s
値を別々のサン プルとして扱っており、サンプル数としT
は建物 棟数の約2
倍となっている。この既往データと本 研究によるI s
値分布とを比較した結果を図9
に示 す。なお、ここでは既往データとの比較を行うた め、本研究によるデータも既往のデータと同様に2
次診断による1
階のI s
値を採用し、はり間・桁 行方向のデータを別々のサンプルとして扱ったo
p 図
9
より、本研究により収集した建物の耐震性 能は、既往の結果よりも低いことがいえ、I s f l
直の 相対頻度分布のピークでみると、既往データによ るI s
値分布のピークよりも概ね0 . 1
程 度 低p値を 示している。1)建設年代別による既往のIs値分布との比較 建物の建設年代を
1 9 7 1
年以前、1972
年‑1981年1.
6
.".圏、
ーーーー既往データ
,
、
1.
2 . 、
制警
0 . 8 " A
‑ ・ ・本デー研タ究による思
0 . 6 0 . 4 0 . 2
o
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9
1.2
1.5
1.8 1 8
値図9 既往のIs値分布との比較
1.
8
1.6
1.4
世 晦 友
話12 1 0 . 8
思0 . 6 0
.40 . 2 。
園田田ー既往データ ー・・本研究による
データ
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9 1 . 2
1.5
1.8 1 8
値図
1 0
既往のIs値分布との比較( 1 9 7 1
年以前)1.
6
制護
0 . 8
0 . 4 ~ , :
0 . 2 ~ :
。
,
J・
,
, e
、ーーーー既往データ
・・・本研究によ るデータ
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9 1 . 2
1.5
1.8 1 8
値図1
1
既往のIs値分布との比較( 1 9 7 2
年‑1981
年)に区分して、既往データとの比較を行った。図
1 0
および図11に結果を示す。年代別に比較すると、既往のデー夕、本研究によるデータともに
1972
年一
1 9 8 1
年に建設された建物の方が1971年以前に建 設された建物よりも高い耐震性を示している。各年代における既往のI
s
値分布と本研究によるI s
値分布との比較においては、両年代ともに本調 査によるI s
値よりも、既往のIs
値分布の方が大き くなっており、本研究の対象となった建物の面構 性能は年代に関わらず低いといえる。特に1972
年‑1981
年に建設された建物のIs
値分布は、1971
年 以前に建設された建物のI s
値分布よりも既往の結 果との隔たりが大きい。2
)建物用途による既往のIs債との比較本研究で収集したデータのうち、用途が学校、
事務所、共同住宅となっている建物について、既 往のデータと同条件となるように、第
2
次診断の1
階部分のI s
値をはり問、桁行方向それぞれ別々の サンプルとして扱い、各I s
値分布を対数正規分布2
1.8
1.6
1.4
世 懸 葉 話
1.2 ー
遣思
0 . 8 0 . 6 0 . 4 0 . 。 2
1 . 8
1.6
1.4
u ・1.
2
螺 1
1
支0 . 8
嬰0 . 6 0 . 4 0 . 2 0
。
。
. '
‑ '
'
、ーーーー学校 一一一ー事務所
・ ・ ・ 共 同 住 宅
0 . 3 0 . 6 0 . 9
1.2
1.5 1 . 8 1 5 f
直図
12
建物用途別の1 5
値の分布ー園田ー既往データ
・ ・ ・ 学 校
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9
1.2
1.5
1.8
1.
4
1.2
制 1雲
0 . 8
恩
0 . 6 0
.40 . 2
・0
1 5
値図13 既往の1
5
値分布との比較 (学校建築、1 9 7 1
年以前), /
, ,
a
,
a
,・・.
ーーーー既往データ ー ・ ・ 学 校
0 . 0 0 . 3 0 . 6 0 . 9
1.2
1.5
1.8 1 5
値図
14
既往の15
値分布との比較 (学校建築、1972
年‑1981
年)で近似した結果を図
1 2
に示す。図より用途別の耐 震性能は、事務所、学校、共同住宅の順に低くな っており、建物用途によってI s
値の分布に若干の 違いのあることが認められる。なお、他の用途に ついてはデータ数が少ないので対数正規分布による近似はしていない。
既往データは前述したように静岡県における学 校建築が主体のデータである。従って、既往デー タと本研究による学校建築の
I s
値分布を建設年代 別に比較した。結果を図1 3
および図1 4
に示す。全 体的な傾向は、図1 0
および図1 1
に示した結果と変 わらないが、学校のみを取り出して比較した方が 若干ではあるが、既往の結果に近くなっている。しかし、その隔たりは
I s
値にして0 . 1
程度あり、今 回収集した建物の耐震性能は、既往の結果よりも 低いことを示している。この要因としては、既往のデータが静岡県の学 校建築主体のデータであることのみに起因してい るのではなく、他の要因にもよると考えられる。
例えば、既往の耐震診断から
10
年以上経過してお り、経年変化により耐震性能そのものが低下して いる可能性がある。また、今回収集した耐震診断 結果は、1995
年阪神淡路大震災以降に実施された ものが主体であり、社会的背景から耐震診断その ものが当時よりかなり厳密に行われていることに よるとも考えられる。5.
まとめ主に、阪神淡路大震災以降に全国各地で実施さ れてきた耐震診断結果から構造耐震指標を整理し た結果、建設年代・建物高さ(階数)などにより 建物の耐震性能は様々な分布を示しており、その 分布形状は対数正規分布で表せることを確認し た。建設年代別では、従来から言われているよう に、建設年代が古い建物においては、その耐震性 能は低く、
1971
年の基準の改訂により建物の耐震 性能が向上していることがI s
値の分布から認めら れた。しかしながら、I s
値が0 . 6
を越える建物は基 準改訂後においても約1/3
程度しかなく、従来 から指摘されているように新耐震以前の古い建物栗山・望月・荏本:鉄筋コンクリート造建築物の耐震性能の分布に関する調査研究 11
は、その耐震性に問題があることが本調査からも 確認された。
建物高さ別では、
1
,2
階建ての低層建物と3
階 建て以上の建物とではI s
値の分布は大きく異なっ ており、建物高さ別に両様性能を評価する必要性 を確認した。地域の地震被害想定調査などにおいて、建物の 被害予測を行うための基礎資料として、東京都を はじめとする多くの自治体などで普遍的に用いら れてきた
I s
値分布との比較を行った結果、今回調 査した建物のI s
値分布は、全体的に低い耐震性を 示した。以上の結果から、地震時の鉄筋コンクリート造 建築物の被害率を予測するための基礎資料となる 既存建物の耐震性能分布は、建物の建設年代、高 さ(階数)、用途別など体系的に整理するととも に、これまでに多くの自治体で用いてきた既存建 物の耐震性能分布
O s 1 1
直分布)を見直していく必 要があることを示した。筆者らは今後、鉄骨造なども含めてデータを詳 細に分析し、都市の地震被害想定調査などにおけ る非木造建築物の被害予測を行うための基礎資料 を整備し活用してL、く予定である。
最後に貴重な耐震診断データをご提供いただき ました諸機関に心より感謝申し上げます。
参 考 文 献
1)栗山手
J I
男・望月利男・荏本孝久「既存非木造建築 物の耐震性能の分布に関する調査研究その1
:構造 耐震指標(Is
値)の建設年代・階数・用途別分 布J, r日本建築学会大会(関東)学術講演梗概集J
B‑2
,p . 7
‑8,1 9 9 7 .
2)栗山利男・望月利男・三上純一郎・荏本孝久「既 存RC造建物の構造耐震指標の分布に関する調査 研究
J •
r第3
回都市直下地震災害総合シンポジウム論文集jp
. 3 0
3‑3 0 6
,1 9 9 8 .
3)中埜良昭・岡田恒男 f信頼性理論による鉄筋コン クリート造建築物の耐震安全性に関する研究
J
,『日本建築学会構造系論文報告集jp
. 1 9 1
・1 9 7
,1 9 8 9
Key Words (キー・ワード)
Structural Seismic Index (構造耐震指標),RC‑building (RC構造物), Earthquake Damage Estimation (地震被害想定), Seismic Diagnosis (耐震診断)
Study on Seismic Perfonnance o f Reinforced Concrete Buildings : τbe D i s t r i b u t i o n o f S t r u c t u r a l Seismic lndex
T o s h i o K u r i y a m a
*,T o s h i o M o c h i z u k i ホ・ a n d T a k a h i s a Enomoto' ホホ
ホ KozoK e i k a k u E n g i n e e r i n g I n c .
* 事
C e n t e rf o r Urban S t u d i e s
,Tokyo M e t r o p o l i t a n U n i v e r s i t y
•
* *F a c u l t y o f E n g i n e e r i n g
, Kanagawa U n i v e r s i t y C o m p r e h e n s i v e U r b a n S t u d i e s , N o . 6 8 , 1 9 9 9 , p p . 5
・1 2
Aft
e r t h e 1 9 9 5 Hyogoken‑Nanbu E a r t h q u a k e , S e i s m i c d i a g n o s i s w e r e c a r r i e d o u t a t e v e r y p l a c e o f t h e c o u n t r y . I t i s v e r y i m p o r t a n t t h a t we u n d e r s t a n d t h e s e i s m i c p e r f o r m a n c e o f t h e e x i s t e n t b u i l d i n g s f o r e s t i m a t i o n o f bu
:ild i n g damage by e a r t h q u a k e .
百lI