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州による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

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(1)

〈研究ノート〉

州による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

−CTS事件を契機として−

古山正明

Ⅰ.問題の所在

Ⅱ.事件の概要

Ⅲ.連邦最高裁判所判決とその問題点 1.先占問題について

2.通商条項との関係について

Ⅳ.結びに代えて

Ⅰ.問題の所在

(1)

本稿は, CTS Corporation v. Dynamics Corporation ofAmerica事件(以下, CTS 事件という)を素材として,近時,アメリカにおいて各州により展開

されているいわゆる「第二世代」の企業買収規制について,一つの分析を行

(2)

うものである。同事件では, Indiana州事業会社法に基づいて設立された会 社の支配株を取得する者は,対象会社株主のうち以前から株式を保有しかつ 利害関係のない者の過半数が株主総会で当該取得を承認しない限り,取得し た株式に基づいて議決権を行使することができない,と定めている同法の支

(3)

配株取得に関する章(以下,場合に応じてIndiana州法または支配株取得規

(4)

制という)が,公開買付に関する連邦法上の規制であるウィリアムズ法によ り先占されないのか,また,連邦憲法の通商条項に違反しないのかが争われ

(5)

たが,連邦最高裁判所はいずれも否定的に解し, Indiana州法は合法的なも のと認められた。

このIndiana州の支配株取得規制をめぐっては,株式の持つ持分証券的性

格と流通証券的性格のいずれを重視するかという形で,連邦法と州法をめぐ

(2)

る立法管轄権の問題が最も鋭く現われているように思われる。すなわち,株 式に表章されている議決権の持つ効力をひたすら重視すれば,

lndiana

州の 支配株取得規制は組織法的な規制であり,伝統的に州が立法管轄権を有する いわゆる「会社の内部事項

(corporate internal  affairs) J

の問題として処理 されることになる。これに対し,株式が州際通商においてさらには国際的に 取引される流通証券である側面を重視すれば,支配株取得規制が直接的には 議決権の行使を制限する形態を採用しているのだとしても,少なくとも間接 的に株式の自由譲渡性を制限するものである以上,連邦法の規制目的との整 合性および州際通商に及ぼす影響が厳格に審査されることになる。その意味 で,取締役会内部の変動の制限を定める等他の「第二世代」企業買収規制と 比較した場合,連邦法との抵触の問題がより深刻な形で現われざるを得ない。

ところで ,

CTS

事件は,ウィリアムズ法の規制目的である「投資者保護」

において,いかなる投資者を念頭に置くべきかが改めて関われた。また,企 業買収規制の合法性を検討する際,公開買付に対する抑止的効力に代表され る規制の事前的効果と,いわゆる二段階買収における締出からの株主の保護 に代表される事後的効果との調和をどこに求めるかも問題であることが判明 した。これらの点も,今後,

I

第二世代」企業買収規制の合法性が盛んに議 論されていくにつれ,より詳細に検討されるであろうが,とりあえず本稿は 問題を提起するに止どめる。

以下 ,

CTS

事件の概要を述べた後,連邦最高裁判所の判旨の展開に従っ て検討する。

(1)  107 S.  Ct.  1637 (98

7).なお,本事件の判例評釈は,既に島袋教授が書いておられる。

島袋鉄男「米国証券関係判例研究」琉大法学

42

57

頁以下参照。

(2) 

["第一世代」の企業買収規制がブルー・スカイ・ローを中心とする証券規制を通じて 公開買付を直接規制するのに対し. ["第二世代」の企業買収規制は,公開買付後の吸収合 併等に対する株主の保護を会社法の次元で規制するなどいわゆる会社の内部事項の問題 として処理する点に特徴がある。この州による企業買収規制の動向については,吉原助 教授が既に詳細な検討をしておられる。吉原和志「株式公開買付の規制方法(ー)ーア メリカにおける連邦および州の動向を中心として一」法学5

0

3

9

頁以下,および,

同「株式公開買付の規制方法(二)ーアメリカにおける連邦および州の動向を中心とし

(3)

州による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

‑CTS

事件を契機としてー

125 

て一」法学

51

2

83‑102

頁参照。吉原助教授が引用されたものの他,一般的な参考文 献としては次のようなものがある。Bl

ock

Barton 

Roth

, 

State Takeover Statutes:The

Second Generation"

, 

13 SEC.  REG. L. J.  332  (986)  ; J.  HOFFMAN

, 

INTRODUCTION TO  SECURITIES LA WS

, 

538 ‑559 (1988) . Also see Annual Review 01 Federal Securities Regulation

, 

43 Bus. LAW. 915

, 

973‑978 (988). 

(3)  Ind.  Code 23‑1 ‑42‑1 et seq.  (Supp.  1986). 

(4)  82 Stat.  454  (codified as amended at 15 U.  S.  C. 78m (d)

(e)

78n (d)

ー(f)

0982 ed.  and Supp. 

I l I ) ) .  

(5) 

U. 

S.  CONST. art. 

  , 1

8

, 

cl. 3. 

(6 ) 

連邦証券諸法殊に

SEC

による規制と会社の内部事項をめぐる問題については,次の文 献が参考となる。 M.

1.  STEINBERG

, 

CoRPORATE INTERNAL AFFAIRS 13‑71  (983). 

TI.

事件の概要

19863

4日

Indiana 

州知事は改正

Indiana

州事業会社法に署名した。

同法は支配株取得規制を含むもので,

1987

81

日以降,会社が原始定款 または付属定款を修正し同法の適用がない旨を定める場合を除いて,

In‑

diana

州で設立されたあらゆる会社に適用されることとなった。同日付以前 でも

Indiana

州の会社であれば,取締役会決議によって同法の適用を受ける ことができた。同法は「公開株式会社Ci

ssuingpublic corporation) J

にのみ 適用されるが,これは,①1

00

人以上の株主を有し,かっ,⑦その主たる営 業区域,主たる営業所,もしくは重要な資産を

Indiana

州内に有する会社 で,①

(A)Indiana

州に居住する株主を

10%

以上有する,

(B) Indiana 

州居住者 によって所有されている株式を10% 以上有する,

(c) Indiana

州に居住する株 主を

10

000

人有する,のいずれかに該当する会社であると定義されてい る 。

ところで,同法に含まれる支配株取得規制は,公開株式会社における「支 配株」の取得に焦点を合わせたもので,同法の定める場合を除いて,

20%

, 

33 

~%, 50%

という

3

つの基準のいずれかまでもしくはそれらを超えて議決

権を取得するような株式を取得する場合はいつでも, I 支配株」を取得する

ことになる。この支配株を取得する者は,当該会社の各クラスの株式を保有

(4)

する利害関係のない全株主の過半数の株主によって承認された決議によって 認められた範囲においてのみ,議決権を取得するのである。そして,株主は,

次の定時株主総会か臨時株主総会で,当該支配株に議決権を付与するかどう かを決定する。

一方,取得者は, r取得者通知書」を提出するならば,当該会社の経営者 に対し,総会の費用を支払うことを条件に, 50日以内に臨時株主総会を招集 するよう要請することができる。もし株主が当該支配株に議決権を回復させ ることに賛成しない場合には,当該会社は取得者から公正な市場価格で支配 株を買い戻すこともできる。同様に,取得者が取得者通知書を当該会社に提 出しない場合,当該会社は,原始定款もしくは付属定款に規定されているこ とを条件に,取得者の最後の取得より60日経過後はいつでも,当該株式を買 、戻すこともできる。

被上告人DynamicsCorporation of America (以下, Dynamics社という) Indiana 州の会社である上告人CTSCorporation (以下, CTS社という) の普通株の9.6%を所有していたが,改正 Indiana州事業会社法が発効して から6日後の1986310 CTS社の株式のさらに百万株に対して公開 買付を行う旨を発表した。これらの株式が買い付けられれば, CTS社に対 するDynamics社の持株比率は27.5%1こまで高められるはずであった。同じ 3

月1

0 Dynamics社は, CTS社の連邦証券諸法違反を理由にI1linois 州北部地区連邦地方裁判所に訴えを提起したが 3

27 CTS社の取締 役会がIndiana州、法の適用を受けることを選択したため, 4日後の3

31 同規制はウィリアムズ法により先占されており,かつ通商条項に違反するも のである, という主張に訴えを変更するための許可を申し出た。 Dynamics 社は CTS社による同規制の利用に対して,一時的抑止命令,事前差止,な

らびに宣言的救済判決を求めた。

連邦地方裁判所は,先占問題については

4月 9

日,Edgar v.  MITE Coゆ.

事 件 ( 以 下,MITE事件という)における White判事の相対多数意見に依 拠しつつ, Indiana 州法は「公開買付抗争における投資者,経営者,ならび に公開買付者の間で利益衡量する際の連邦議会の目的ないし目標を完全に抑

(5)

州、│による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

‑CTS

事件を契機としてー

127 

圧するものである」として,宣言的救済判決を下した。また,通商条項との 関係については

4

17

日 ,

I

同法によって生み出される州際通商に対する相 当な干渉は,川、│際通商に許容できないような間接的負担を生み出すほどに,

論じられる地方の便益よりも重要である」として,

Dynamics

社の請求を認 容した。

CTS

社は,第

7

巡回区控訴裁判所に控訴したところ,控訴裁判所は

4

月 2 3日,連邦地方裁判所の判断を認容する命令を発し 5月2 8日に法廷意見を 言い渡した。

控訴裁判所はまず,先占問題について ,

MITE

事件における

White

判事 の相対多数意見に依拠しながら,おおよそ 1月が最短買付期間として強制す るのが妥当なものと連邦議会が考えた結果としてウィリアムズ法が捉えられ るのであれば,対象会社の選択によって最短買付期間が事実上

50

日となる

lndiana 

州の支配株取得規制は,ウィリアムズ法によって利益衡量されたバ

ランスを覆すものである,と判断した。

また,通商条項との関係については,

lndiana 

州、法は,①州、│のブルー・ス カイ・ローと異なり,

lndiana 

州の居住者に対する仔細なないし消極的です らある便益のために,非居住者からの公開買付に応じるという貴重な機会を 非居住者から奪っており,他の州の居住者との聞の取引を阻害するものと考 えられること,および⑦たとえ会社の有形資産が動かし難いものであるとし ても,それらが利用されることによってもたらされる効率性およびそれらが 生み出す利益が経営者と株主との間で配分される際の比率は,州、│際のさらに は国際的な会社支配市場如何であるにもかかわらず,

lndiana

州は,本規制 において,権限なくこの会社支配市場から事実上離脱していること,等を理 由に同条項に違反するものと判断した。

さらに,会社の内部事項との関係については,たとえその結果が

lndiana

什│の会社を買収するのをより困難にならしめるものだとしても,

lndiana

州 が内部事項を規制する際に広範な裁量を有していることを想定してよいが,

本件においては,証券ならびに会社支配における州際市場への影響は直接的

で意図されたものであり,かつ相当なものである以上,規制方法が議決権に

(6)

関連するからといって,通商条項の下での司法審査の対象外に追いやること はできない, と判断した。

この控訴裁判所の判断に対し,

lndiana 

州と

CTS

社は共に上告した。これ に対し,連邦最高裁判所は,冒頭でも述べた通り,

lndiana

州、法はウィリア ムズ法により先占されるものでも通商条項に違反するものでもない,と判断

したのである。

(7)  Ind.  Code ~ ~23-1-17-(a)

, 

23‑1‑42‑5. 

( 8 )  

Id.  ~ 23‑1 ‑17‑3 (b). 

(9)  Id. ~ 23‑1 ‑42‑4 (a).  (

1

Id.~ 23‑1 ‑42‑1 

(ll)  Id. ~23-‑42‑9 (a)

, 

(b). 

なお,

r

利害関係のある株式」とは,取得者,当該会 社の役員もしくは社内取締役が,取締役の選任に際して議決権を行使しまたは議決権の 行使を指示できるような株式をいうものと定義されている。

Id.~ 23‑1 ‑42

3. (12)  Id. 23‑1 ‑42

7.

ちなみに,

r

取得者通知書」とは,取得者の身許および取得案

の条件ないし範囲等を記載した情報説明書であると定義されている。

Id.~ 23‑1 ‑42‑

6. 

( 1 3 )  

Id.  ~ 23‑1 ‑42‑10

(b) (14)  Id. 23‑1 ‑42‑

1 O

(a). 

(15)  457  U. S.  624  (982).

事件の概要とその意義については,吉原(一)・前掲註(

2)3246

頁,島袋・前掲註(

1)7579

頁,拙稿「公開買付をめぐる法規制の現状と課題[二]ーア メリカの動向(その

1

)一」経営と経済6

8

2

64‑67

頁等を参照。

(16)  637 F. Supp. 389

, 

399  (ND 111.  1986).  (

1

Id.at 406. 

(18)  794 F.2d  250  (7 th Cir.  1986).  (19)  Id. at 262‑263. 

Id. at 264. 

1)

昂 i d . 争

107 U. S.  1637  (987). 

i l l . 連邦最高裁判所判決とその問題点

本判決の法廷意見は

Powell

判事が執筆し,

Rehnquist

長管,

Brennan

, 

(7)

州による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

‑CTS

事件を契機として一

129 

Marsha

  , 1 l

Q'connor

の各判事が同意したもので,

Scalia

判事は,通商条項 との関係については部分的に同意し,先占問題については,会社の内部事項 に関するものであることを確認すれば規制目的の審査を行う必要はないとし ながら,やはり,先占を否定している。

これに対し,

White

判事は,

lndiana

州の支配株取得規制はウィリアムズ 法により先占されており,かつ,通商条項にも違反するものである,という 反対意見を表明しており,このうち通商条項違反の部分については,

Black mun

および

Stevens

判事が同意している。

以下,法廷意見の展開に沿って,反対意見等も適宣参照しながら,判旨の 分析を行う。

.先占問題について

法廷意見はまず,連邦議会が州法を先占する意図を明示していない場合の 先占認定根拠として,①連邦法上の規制と州法上の規制の双方に服すること が物理的に不可能である場合,および⑦州法が連邦議会の目的ないし目標を 達成ないし執行するのに障害となって立ちはだかる場合,の二つを挙げ,本 件においてはウィリアムズ法と

lndiana

州法との双方に服することは完全に 可能であるので,

lndiana 

州の支配株取得規制がウィリアムズ法の目的を抑 圧する場合にのみ先占され得る,と問題を持定する。そして,ウィリアムズ 法による公開買付の規制の概要を述べた後,先例となる

MITE

事件におい て違憲とされたIll

inois

州事業買収法(以下, I l l

inois 

州法という)の問題点 を概観した上で ,

MITE

事件において

White

判事より述べられた相対多数 意見は裁判所の多数意見を体現するものではなかった以上,これに拘束され るものではないが,この相対多数意見の中で展開されたウィリアムズ法に 関する広範な解釈の下ですら,

lndiana 

州法は要件を充足する,と述べてい る 。

まず,ここで法廷意見が注目したのは,規制の直接的な効果をめぐるIl・

linois

州法と

lndiana

州法との相違である。すなわち, I l l

inois

升│法は公開買

付者よりも対象会社経営者を有利に扱う結果として株主を害するのに対し,

(8)

Indiana 

州法は争っている両当事者に対置する独立した株主を保護するもの で,投資者保護というウィリアムズ法の目的を推進するものである, と述べ ている。具体的には,

Illinois 

州法においては,①公開買付を行うに際して

20

日 間の待機期間が定められており,この間対象会社経営者は公開買付に関する 意見を表明することができるのに反し,公開買付者には意見表明の機会を与 えられていないこと,⑦対象会社経営者等の請求による聴閉会の開催が認め られているがこれには最終期限が定められておらず,公開買付者を不確定的 に窮地に追いやること,①公開買付の公正に関して州務長官による審査を要 請することによって,投資者の自主決定権を犠牲にして投資者保護を提供し ていること,が問題とされたのに対して,

Indiana

州法においては,①公開 買付に関する意見表明において,対象会社経営者,公開買付者のいずれにも 優位を与えるものではないこと,①ウィリアムズ法の定める

20

取引日に買付 を完了することを何ら禁じておらず,公開買付を不確定的に遅延させるよう なこともないこと,①公開買付の公正に関して州政府が関与するのを許容し ておらず,むしろ株主がこれを集団的に評価することを許容していること,

を挙げ,

Indiana

州法はウィリアムズ法と抵触することなく,投資者保護と L  、ぅ連邦の政策を推進するものである,と述べる。

ただ,ここで注意しなければならないのは,法廷意見の主張する「投資者 保護」の内容である。すなわち,法廷意見は,いわゆる二段階買収において

「公開買付を受け入れないという選択肢は,公開買付が成功すると,より低 い買付価格となる第二段階(の買収)において持株を売り付けなければなら ない,という事実上の確信である」という

SEC

の説明を引用しながら,

In diana 

州法は,公開買付に直面した個々の株主はしばしば不利益を受けてい るという仮定の下に,ある種の公開買付にみられる強制的側面から株主を保 護するものである, と主張するのである。

これに対し,

White

判事は,法廷意見の採用するアプローチに伴う問題は,

ウィリアムズ法の焦点である個々の投資者保護をー集団としての株主の保護

と同一視することである, と問題を提起する。そして,

lndiana 

州法は,会

社の多数派株主が公開買付を阻止しそのために個々の投資者がプレミアム

(9)

州による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

‑CTS

事件を契機として一

131 

を得て持株を売り付ける機会を奪うもので,意図的に個々の投資判断を抑圧 するものであり,投資者保護という連邦法の政策を推進するものなどではな く,公開買付に関する最終的な投資決定を個々の個人投資家に与えたウィリ アムズ法の意味深長なバランスと抵触するものである, と主張する。

この法廷意見と

White

判事の反対意見との間の論争は,さらに二つの論 点に整理することができょう。すなわち,

(1)

ウィリアムズ法の目的である投 資者保護を,このように一つの集団として株主を保護するものと解し,これ を州法によって規制するのが妥当であるのか,および

(2)lndiana

州法は事実 上公開買付を阻止することになるのか,である。

まず

(1)

の点から分析してみよう。法廷意見は,

lndiana 

州法の下での投資 者保護に関し,二段階公開買付が行われるような場合,対象会社株主は,そ の後の吸収合併等において「低落価格」で持株を売り付けざるを得なくなる のを恐れ,当初の公開買付において持株を預託することになる, というある 種の公開買付における強制的側面から株主を保護するものとして把握してい るが,厳密にいえば,同法により最も明瞭に保護される集団としての投資者 とは対象会社株主であり,それも主として公開買付に応じなかったためにそ の後の吸収会併等で締め出されたり,あるいは少数持分として存続する少数 派株主である。多くの株主はプレミアムを得るために持株を売り付けようと するであろうが,同法が公開買付に対して与える事前抑止的効力のために,

このプレミアムを得る機会さえ奪われかねないのである。

このようにある特定の投資者が保護されていれば「投資者保護」というウ

ィリアムズ法の目的を推進するものとして理解できるのかどうか自体が疑問

であるが,仮にこれが肯定されるとしても,

lndiana 

州法の規制方法が,果

たして投資者を保護する方法として妥当なものであるかどうかは,また別の

次元の問題である。法廷意見は,二段階公開買付において締め出される少数

派株主の売付価格が相対的に低いことを盛んに強調するが,価格面での保障

を目的とするのであれば,何も

lndiana

州、法のように公開買付者が取得した

株式の議決権に制限を設けるような方法を取らなくても,公開買付後に行わ

れる吸収合併において反対株主が株式買取請求権を行使した場合には,買取

(10)

価格の算定は公開買付の買付価格を参考とした公正な価格にする,等の規制 を設けるなど,他にもいろいろな方法が考えられるのである。しかもいずれ の規制にせよ,州、│が法律によって設けるのではなく,会社の定款にそのよう な条項を設けることによって,会社内部の自治の問題として処理しながら同 様な目的を達成することも十分可能である。さらに,当初の公開買付に応じ なかった株主は,その後の吸収合併等において公開買付の買付価格を下回る

「低落価格」で持株を売却せざるを得なくなるのだとしても,公開買付が行 われる以前の市場価格を下回る平均価格で対象会社が買収されるような事例 はほとんど考えられず,その意味では何ら搾取されたことにはならないので あり,これは

SEC

による実証分析の結果にも表れている。

次に

(2

)の点について検討してみよう。控訴裁判所は,

lndiana 

州法の実際 上の効果は公開買付の開始より

50

日後までその終了を遅延させることである という見解に基づいて先占に関する判断を下し,

Dynamics

社はこれをより 理論化し,合理的な公開買付者であれば誰しも,当該株式が議決権を備える であろうという確証を得るまで株式を買い付けることはないであろうが,公 開買付の開始より

50

日後の株主総会まで議決権が付与されないことも可能で ある以上,同法は

50

日の遅延をもたらすもので,最短買付期間として

SEC

により設定された

20

取引日というより短い期間と抵触するものである, と主 張する。

lndiana

州、法は,少数派株主が一定の条件の下で持株を自発的な公 開買付者に売り付けるのを事実上阻止するものであり,この実際上のインパ クトこそ,同法がウィリアムズ法によって先占されるという結論に至らしめ るものである,と L 、 ぅ

White

判事の反対意見は,おそらくこれらの見解と 軌をーにするものであろう。

しかし,この点に関しては,法廷意見の方がやや説得力があるように思わ

れる。すなわち,法廷意見によれば,

lndiana

州法は,①

50

日の遅延を絶対

的に課すものでもなければ,連邦法が許容した後直ちに公開買付者が株式を

買い付けるのを阻止するものでもないこと,①公開買付者は一定期間内に議

決権を取得することを買付条件として公開買付を行うこともできること,①

議決権が付与されるような場合,それは公開買付の開始より

50

日以内に行わ

(11)

州による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

‑CTS

事件を契機として一

133 

れることになるが,この期間はウィリアムズ法によって定められた

60

日とい う最長買付期間の範囲内であること,を考慮すれば,さらに多少の遅延を課 すものだとしても,不合理な遅延を課すものとしてウィリアムズ法と抵触す ることにはならない, と述べている。

ただ,法廷意見の言うように

Indiana

州法が実際問題として公開買付を阻 止するような事態にはならないものとしても,同法がより一般的抽象的に公 開買付に対して事前抑止的効果を有するものであることは看過することがで きない。この点について相対多数意見は何ら実質的な検討をしておらず,そ の意味ではこのような観点からWh

ite

判事の反対意見を読み直すことには,

十分意義があるように思われる。

ところで,法廷意見は,仮に公開買付が成功した後の自由な権限行使を制 限しもしくは遅延させる州法であればいかなるものもウィリアムズ法により 先占されるものと解釈すれば,ウィリアムズ法は従来その合法性が問題とさ れなかったような種々の会社法を先占することになろう, と述べ,その具体 例として,取締役の任期その他の条件を交互制にすることや,累積投票制 度を挙げている。

この「会社の内部事項」の問題をよりいっそう重視するのが,

Scalia

判事 の意見である。

Scalia

判事によれば,州の認可した会社の管理について議決 権を規定することは,連邦議会が決して意図的に介入したことのない伝統的 な州の機能であり,

Indiana

州は,ブルー・スカイ・ローを通じてではなく,

州内の会社の機構に関する州の固有権限を通じてここで争点となっている目 的を追及するものであり,連邦法と州法というこつの規制の目的をめぐる論 争に取り掛からなくとも,

Indiana 

州法はウィリアムズ法によって先占され ないという結論に達することになる。

これらの見解に対して,

White

判事は,取締役の任期その他の条件を交互

制にすることや累積投票制度等と異なり,

Indiana 

州、法は一定の公開買付が

絶えず起こるのを阻止するよう意図されており,規制形態としては専ら一定

の株式の議決権だけを問題とするように特徴づけられてはいるが,その性質

上取引的なものである, と反論する。

(12)

確かに

White

判事の主張するように,取締役の任期その他の条件を交互制 にすることや累積投票制度は典型的な組織法的規制であり, したがって州の 立法管轄事項と考えられるのに対し,

lndiana 

州の支配株取得規制は,一定 の株式の議決権を規制する形態をとってはし、るものの,当該議決権が表章さ れている株式の流通性を問題とすれば取引法的規制の性格をも帯びることに なり,殊に同法の定めるように対象会社による任意の株式買戻が認められて いるような場合には,事実上州、│外の者に対する株式の自由譲渡性を制限する ことにもつながる。その意味では,連邦法との抵触の問題がより深刻な形で現 れざるを得ない。ただ,これらの問題をめぐる議論は通商条項との関係の中 でも詳細に取り上げられているので,本稿でもその時点で改めて検討したい。

争 功

107 S. Ct.  1637

, 

1644 

( 1

987).  (24)  Id. at 16441645. 

(25)  Id. at 16451646. 

帥二段階公開買付とは通常,第二段階で企業買収を伴う公開買付を意味するが,これに も種々の形態がある。典型例としては,買収者は,第一段階で,対象会社における支配 的地位を獲得するのに十分な株式を求めて,相当なプレミアムを付けて公開買付を行い,

一度支配を獲得すると,第二段階で,当初の公開買付における買付価格を下回る価格で,

公開買付に応じなかった少数派株主を現金もしくは買収者の発行する証券を対価として 締め出し

(freezeout

ないし

cashout

と呼ばれる),対象会社を吸収合併する場合が挙げら れる。その際,第一段階の公開買付における公開買付説明書の中でこのような吸収合併 が行われることを明示し,株主に持株を預託するよう心理的な圧力を加える戦術がしば しば用いられる。この二段階公開買付をめぐる問題について

SEC

が本格的に検討したも のとして,次のリリースがある。

Release No. 34‑21079 

( J

une  2

1 .  

1984)

, 

30  SEC  Docket 905 

( 1

984). 

(

2

Id.at 906. 

107 S. C

t .  

1637

, 

1646  (98

7).この二段階公開買付における株主への預託圧力をめぐ る問題は,公開買付の経済的機能をめぐる論争において公開買付の富創造機能を否定し,

公開買付は単に対象会社株主の富を公開買付者に移転させる機能を営んでいるにすぎな い,と主張する

Lipton

Lowenstein

, 

Carney

等の有力的な理論的根拠ともなっている。

さらには,公開買付が,①経営者更迭機構となってエージェンシー・コストを減少させ

ること,および①会社資産における配分効率性を高めること,を理由として公開買付の

富創造機能を認める学者の中にも,例えば

Bebchuk

のように,このような株主への預託

(13)

州による「第二世代」企業買収規制に関する一考察

‑CTS

事件を契機としてー

135 

圧力を回避する手段としても,対象会社経営者に競合する公開買付を勧誘する権限を認 めるべきである, と主張する者もある。

SeeLipton

, 

Takeover Bids in the Target

Board room

, 

35 Bus. LAW. 10

  , 1

113‑114 

( 1

979)  ; Camey

, 

Shareholder Coordination Costs

, 

Shark Repellents

, 

and Takeout Mergers: The Case Against Fiduc

必ryD u t t "

es

1983 A.B.F. 

RESEARCH ]. 341

, 

349 ‑353; Lowenstein

, 

Pruning Deadwood in Hostile Takeovers : Pro posal for Legislation

, 

83 COLUM. L. REV. 249

, 

307 ‑309 

( 1

983)  ; Bebchuk

, 

The Case  for Facilitating Competing Tender 

Q

ers

95 HARV. L. REV. 1208

, 

1039‑1045 

( 1

982).  Also See Bradley 

Rosenzweig

, 

Defensive Stock Repurchases

, 

99 HARV. L. REV. 1377

, 

1412‑1413 

( 1

986); Macey McChesney

, 

A Theore

t t "

cal Analysis of Co

orateGreenmail

, 

95 YALE L.  ]. 13

, 

20‑22 

( 1

985). 

ただ,これらの問題点は公開買付の機能をめぐる根本的な論争まで遡らざるを得ない ので,別稿にて連載中である「公開買付をめぐる法規制の現状と課題」の[三]におい て,改めて詳細に検討したい。

(29)  107 S. Ct. 1637

, 

1654  (987). 

Cox

は ,

r

投資者保護」の問題を検討する際,立法によって保護されるべき投資者のタ イプを区別する必要があることを指摘し,これを①一つの集団としての株主であり,対 象会社の株主で持株を提供しあるいは提供しない者,①公開買付が成功した後の対象会 社の少数派株主,①一つの集団としての投資者であり,その投資が現実の対象会社に行 われているかどうかに関連することなく想定される一般投資家,の三つに分類する。そ の上で,

lndiana

州が保護する投資者とは①に分類される投資者であるが,同法が公開買 付に与える事前抑止的効力を考えると,同法の最大の受益者は対象会社経営者である,

と主張する。

Cox

The Constitutional

lnamics"of the Internal 

A .

βairs Rule‑A Com‑

ment on CTS Co

oration

13]. CORP. L. 317

, 

333

335

( 1

988). 

1) COX

は,本件において法廷意見が,先占問題に関する判断基準として「投資者保護」

という抽象的な政策概念を採用し,かつ,

r

中立性」政策よりもむしろ「投資者保護

J

を 強調することは,直接的な規制上の抵触のみが先占の対象となりやすいことを示してい る , と指摘している。

Id.at 336. 

同 このように定款を修正して「公正価格条項」を挿入する方法は,特に二段階公開買付 に対する有力な防衛戦術として従来から指摘されてきた。しかも,いわゆるシャーク・

リペレント

(shark repellent)

と呼ばれる一連の公開買付対抗条項の中では,公正価格条 項は,①株主が支配プレミアムを失うのを防止するものである点,および①あらゆる公 開買付の申出を阻止するものではない点,を考慮すると,機関投資家からは積極的にあ るいは少なくとも中立的に評価されようことが指摘されている。

1 A.  FLEISCHER

, 

]R.

, 

TENDER OFFERS: DEFENSES

, 

RESPONSES AND PLANNING 12‑13 

( 1

983). See Generally

, 

Id. at 30 

35. Also See Hochman Folger

, 

Deflecling Takeovers : Charter and By‑Law Tech

参照

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