Ⅰ.緒言
昨今、大学や短期大学等の高等教育機関では、
従来の講義形式の授業を行うだけでなく、アク ティブラーニングなど能動的学習において、多く の手法が取り入れられている。その中で『PBL学 習』いわゆる「プロジェクト型学習」または「問 題解決型学習」がある。PBLとは、Project-based Learningま た はProblem-based Learningの 略 で ある。このPBL学習の定義は、「ある問題につい て理解あるいは解決をしようと努力する目的のプ ロジェクトに従事する過程で習得される学習」と されている
1)。本報告では、健康栄養学科の授業 を通してPBL学習を活用し、経営学部および中津 川駅前商店街振興組合(以下、振興組合)と行っ た地域連携活動の事例について報告する。
Ⅱ.目的
学部、地域連携を活用したPBL学習を取り入 れ、新たな食の情報発信をする中で主体性を養う ことを目的とした。
Ⅲ.方法
(1)実施方法
食生活演習1回目の授業でPBL学習を展開する ために、教員が昨年度までに実施した地域連携活 動の事例を報告した。2回目以降は、食について 現状を調査し、新たな情報発信をするための検討 を行った。まず、平成26年度国民健康・栄養調査 の結果から、野菜の摂取不足が問題点として挙げ られた。そこで活動目標を「野菜摂取の啓発ため に、地元野菜を活用した新しい野菜料理を販売す
*本学専任講師,**本学教授,***本学助手
学部・地域連携を活用した実践的なPBL学習と その教育的効果に関する事例報告
Case Report about Educational Effect by Participation to the Shopping Area Activation Project as Regional Cooperation
浜野 純*・須栗 大**・山本麻衣***
Jun H AMANO ,Masaru S UGURI ,Mai Y AMAMOTO
要 約
昨今、大学や短期大学等の高等教育機関では、従来の講義形式の授業を行うだけでなく、アクティブラーニングな ど多くの能動的学習を取り入れている。その中に『PBL学習』いわゆる「プロジェクト型学習」または「問題解決型 学習」がある。本報告では、学部・地域連携を活用したPBL学習についての事例を報告する。目的は、新たな食の情 報発信をする中で主体性を養うこととした。方法は、調査、目標の設定、実施内容の検討・決定、実施、評価の手順 で行った。その結果、中京短期大学部健康栄養学科(以下、健康栄養学科)と経営学部の教育特性を生かし、多角的 なアプローチを行うことができた。さらに中津川駅前商店街振興組合の客観的な評価を受けることで、より主体的な PBL学習に繋がったと考える。今後、PBL学習の教育的効果をより高めるためには、客観的な「評価指標」の作成や 習得度を図る「評価法」の検討が必要である。
キーワード:
地域連携,実践型PBL,教育的効果,大学生 Key words :
Regional cooperation, project based learning (PBL) for resolving actual problem, educational effect, university students
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ること」とした。次に経営学部と連携し、食の情 報発信の方法について検討した。販路は、振興組 合と話し合いの中で、中津川市の「まちなか活性 化事業」を活用することになった。この事業の目 的は「地域の特性やニーズをとらえた商品を立 案・展開することで、まちづくり活性化の足掛か りとすること」である。そこで経営学部および振 興組合との協議を重ねた結果、販路を地域の大き なイベントの1つである「十日市(2016年1月10 日開催)」に決定した。
(2)具体的な実施内容
より実践的な出店内容にするために、学生代表 者は振興組合と会議を重ねた。学生の計画が飲食 店等の経営者にプロの視点から評価され、それに 基づき課題改善していく方法で進めた。また各学 部の特性に合わせ、経営学部が主にマーケティン グおよび販売戦略を、健康栄養学科が商品開発お よび製造を担当した。さらに必要に応じて、経営 学部と合同ゼミを開催し、情報交換や販売戦略に ついて意見を出し合いながら検討を重ねた。出店 までの準備期間は、2015年 7 月から2016年1月ま での約半年間であった。
①市場調査(経営学部)
ニーズを把握するために、2015年の十日市来場 者数および出店数を調査した。(表1)また主催 者に調査した結果、客層は20〜60歳代の家族連れ が多く、店舗利用数の平均は5.24店、平均利用金 額は40代が最も高額で2,002円であった。このこ とから、ターゲットを「40代の家族連れ」とし た。またニーズにあった販売価格検討のために、
ポジショニングマップ(図1)を作成した。
②プロジェクト名(合同ゼミ)
プロジェクト名をアルファベット表記で「中京 学院大学」の頭文字 C と、「まちなか活性化 事業」の頭文字 M をとり、『CMプロジ ェ ク ト』とした。
③商品開発(健康栄養学科)
出店にむけて、地元野菜の活用とターゲットを 確認しながら、試作を重ねた。商品は、中津川市 の名物「とりトマ丼」からヒントを得て、地域に なじみ易くかつ目新しさのある料理として『とり トマカレースープ』を提案した。中津川産のトマ トを使用することで、甘味のあるすっきりとした 味わいとなり、子供でも食べ易い料理となった。
試食会は、振興組合と学生合同で実施された。
④キャッチコピー(合同ゼミ)
『カラダ・リセット』『リ・コラーゲン』に決定 した。「年末年始で食べ過ぎてしまったカラダを 十日市からリセット」と「トマトのリコピンと、
鶏肉のコラーゲンで体の中からきれいにする」こ とを意味するキャッチコピーとした。
⑤商品パッケージとチラシ作製
商品パッケージは、シンプルかつ持ち易い形状 を選んだ(図2)。チラシは、野菜の栄養につい ての情報や作り方等を記載し、野菜摂取の啓発と
図1 2015年十日市出店商品ポジショニングマップ(学生作成)
表1 2015年 十日市 来場者数および出店数
学部・地域連携を活用した実践的なPBL学習とその教育的効果に関する事例報告
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なるように工夫をした(図3)。
⑥販売数の目標設定
販売数の目標を500食とした。
(3)学部間および振興組合との会議
①第1回会議 2015年 7 月30日
事業目的の確認、役割分担を検討した。
②第2回会議 2015年11月11日
市場調査報告、ターゲット決定、商品を提案 した。
③合同ゼミ会議 2015年11月18日
プロジェクト名、キャッチコピー、商品内容、
新聞折り込みチラシ掲載内容を決定した。
④第3回会議 2015年12月21日
出店商品の試食、パッケージ及びチラシの内 容、当日の各分担を確認した。
⑤報告会
十日市終了後、各学部で資料を作成し、決算報
告や実施内容、反省点について報告を行った。
(4)十日市での出店
実際の販売数は、合計421杯であった(表2)。
売 り 上 げ は126,300円 で、必 要 な 諸 経 費 は 合 計 89,333円(試作含む)となった(表3)。
Ⅴ.実施の効果と今後の課題
全国的に商店街が衰退する中で、大学と地域 との連携した取り組みは、新規客層の獲得に一定 の効果を上げていることが、前例として報告され ている
2)3)。今回の十日市への出店は、マーケティ ング及び地元野菜を活用した商品提案により、
「まちづくり活性化事業」の役割の一端を担い、
効果を上げたと考える。一方で、実践的PBL学習 としては、健康栄養学科と経営学部の教育的特性 を生かし、多角的なアプローチを行うことができ た。これは、学生だけではなく、振興組合と協働 して計画を進めたことで、本来は学生が地域にお
表2 各時間の販売数図2 商品パッケージ
表3 十日市出店の経費
図3 チラシ
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けるフィールド学習の意義を全て理解することは 容易ではない
1)が、組合を含めた定期的な会議の たびに客観的評価を受けることで、実施目的が明 確化し、主体的な学習に繋がったことによると考 えられる。
今後、PBL学習を取り入れた地域連携を進める には、学生達に事前学習を通じて、過去の事例や 地域連携に関しての知識をより深く学習させるこ とが必要である。また、学部及び地域間での情報 共有を強化して、会議の議事録を確実に残す等、資料 の共有化も進めたい。さらに、PBL学習の教育的 効果を高めるために、客観的な「評価指標」の作 成や習得度を図る「評価法」の検討が必要である。
【引用(参考)文献】
1)西田明紀,眞部真紀子,岡部千鶴: 実践的PBL学 習としての商店街賑わい創出について〜産官学連 携の可能性〜 ,久留米信愛女学院短期大学研究 紀要第39号,pp.77−84,2016
2)藤原ひとみ,中山徹: 商店街活性化事業に関する 研究−「いまこいバル」を事例として ,日本建 築学会大会学術講演挭概集,pp.69−70,2015 3)豊田章起,服部敦,岡本肇: 豊川市中市街地区
におけるすごろくを用いたまちづくりイベントの 効果検証 ,日本建築学会大会学術講演挭概集,
pp.713−714,2015
学部・地域連携を活用した実践的なPBL学習とその教育的効果に関する事例報告