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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

風食地形の一つであるブロウアウトの研究は、乾燥・半乾燥地域や海岸砂丘を対象とす るものが主流である。温暖湿潤地域での風食は形成条件が限定されるが故に、風食を受け て運ばれた物質の堆積地形である砂丘から過去と現在の自然環境の変化について理解を深 めることが期待される。本研究では、北海道江差、青森県尻屋崎、茨城県磯崎・阿字ヶ浦 と鹿島の北・東日本地域を対象として、ブロウアウトと砂丘の地形判読、露頭観察、地層 試料の採取と鉱物・理化学分析を行い、ブロウアウトの分布・発達過程と砂丘の性状に関 する特徴を明らかにすることを目的としている。さらに、地形形成のプロセスとこれに関 わった完新世古環境の推論を試みている。本論文は、以下の1~5章で構成される。

第1章「Introduction」では、風力と砂の運動、風食作用と風成地形、および砂丘の分 類に関する国内外の既往研究について詳細に述べたのち、湿潤温暖気候で火山活動が卓越 する本邦における風食地形と砂丘形成に関する研究の意義と本研究の目的を明確に述べて いる。

第2章「Geomorphological features of blowouts and dunes on coastal cliffs」では、

ブロウアウト形成の共通条件として、ローム層と海成砂礫層から成る海抜 15m 以上の海食 崖上部であること、海岸線が卓越風とほぼ直交すし、風が収束しやすい対置海岸線湾曲部 または海食崖に卓越風向に開いた河谷があることを明らかにしている。さらに、大規模に 発達するブロウアウトの背後には多くの砂丘が分布することを明らかにしている。

第3章「Physicochemical properties of the deposits in aeolian landforms」では、

砂丘の理化学的特徴として、海食崖にローム層と砂礫層、あるいは砂画分が比較的多いロ ーム層が存在し、これらが風食を受けて再堆積した場合、砂丘の粒度分布は砂画分と粘土・

シルト画分にピークを持つバイモーダルであり、腐植物質を集積させて黒ボク土様の性状 を持つ黒スナ層の発達が顕著であること、一方で、砂礫層のみあるいはローム層の粘土・

シルト粒子が除去されて残った砂画分のみが風食を受け堆積した場合は、砂丘の粒度分布 はユニモーダルであり、腐植物質の集積は見られないことを明らかにしている。

第4章「Forming process and environment of the blowouts and dunes」では、ブロウ アウトの開口方向と砂丘の分布、構成層の性状、黒スナ層の 14C 年代値と風向・風速デー タの解析結果をもとに、砂丘の形成プロセスと環境について検討している。その結果、江 差と尻矢崎の砂丘は8500 yrsBP頃に始まるヒプシサーマルに埋没腐植土層が形成され、そ の形成期間は江差では3000年であったが、尻屋崎では海岸砂丘の形成によって一時的に中 断され、砂層と腐植土層が互層を成す黒スナ層の形成によって引き継がれたとしている。

本格的な風食による砂丘の形成はヒプシサーマル後の冷涼な気候下で縄文中期小海退の頃 に始まり、その後、砂丘の形成は2300yBP、江差のみ1900 yBP、1000 yBPの2~3期の中断 を経て、黒スナ層を形成させたと推定しており、シベリア高気圧から吹き出す北西季節風 による風食が温暖期に活動が穏やかになることが示唆された。

東日本の磯崎・阿字ヶ浦と高天原砂丘は、冬から春または秋に低気圧や台風がこの地域

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の南側を通過するときに吹く強い北東風により形成されたとしている。磯崎・阿字ヶ浦砂 丘には二つのタイプがあり、風食期は二期あったと推定している。一つ目のタイプは、関 東ローム層の大部分と見和層の一部が風食を受けたもので、この風食期は2800 yBP頃に寒 冷化がピークに達した後の急激な気候回復期に相当すると推論している。二つ目のタイプ は、風食第一期で関東ローム層の大部分が除去されたため、その残りの一部と見和層が風 食を受けたものであり、この風食期は層序から、1200yBP~900 yBP までの平安温暖期の弱 い寒冷期に南岸低気圧の活動が活発化して形成されたと推論している。

第5章「Conclusion」では、本研究で対象とした砂丘は、風食を受ける海食崖を構成す るローム層中の火山灰質の微細粒子が膠着し、アグレゲート粒子として砂の様に挙動し、

形成されていることから、「テフリックレスデューン」と呼ぶのがふさわしいと結論づけて いる。

以上を要約すると、本研究は、温暖湿潤気候下においても風食地形の一つであるブロウ アウトと砂丘の形成がみられることを北日本と東日本の海蝕崖が発達する沿岸域での調査 により確認し、風食によって運ばれた物質の一部には海食崖や海岸段丘の構成の一部であ るローム層を起源にもつ特異的な性質がみられることを明らかにした最初の研究である。

こうした砂丘が完新世の風系発達を含む古環境情報を包含することを示しており、風成地 形学および第四紀土壌学の発展に寄与する学術的価値が高いものであることから、博士(理 学)に値すると判断する。

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