関与を考慮した消費者のメディア選択モデル
その他のタイトル A Model of Consumer Media Choice Concering Involvement
著者 大田 謙一郎
雑誌名 關西大學商學論集
巻 55
号 6
ページ 61‑79
発行年 2011‑02‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/4842
関西大学商学論集 第
55巻第
6号
(2011年
2月 )
61関与を考慮した消費者のメディア選択モデル
大 田 謙 一 郎
第
1節 は じ め に
近年.
IT革命によるコミュニケーションインフラが急速に整備され.消費者は従来よりも 容易に製品やサービスに関する情報を取得することが可能となった。その結果.自ら積極的に 情報を取得したり.他の人と情報を共有したりするプロアクテイプな消費者が台頭してきた。
そうした環境の変化にもとづき.消費者の能動性をふまえたプランド・コミュニケーションを いかに行うかが問われるようになった。そのためには.消費者が自らメデイアを選択するメカ ニズムの解明が必要となる。
消費者のメデイア選択に関わる既存研究には,たとえば
IMCおよびブランド・コンタクトポ イ ン ト に 関 す る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 戦 略 に つ い て の 研 究
(Schultz,Tannenbaum and Lauterborn, 1995 ; Duncan 2002)やロコミに関する広告効果研究(澁谷.
2007).その他に消 費者行動論
(Ratchford,Lee and Talukdar, 2003;清水.
2006; 岸 .
2010),の
3つある。この
3 つのなかでもとくに消費者行動研究において消費者の知識·記憶•関与が消費者の情報探索活動に影響を及ぽすとされ.これらの概念をもちいた広告効果モデルが期待されている。し かし.その多くは情報探索意向や情報探索量との因果関係を説明したモデルであり,消費者の メデイア選択に関する研究はほとんどない。
本稿の課題は.消費者行動論の視点から.情報探索に影響する関与概念を考慮した消費者の メデイア選択行動に関する新たなモデルを構築し.そのことを通じてプランド・コミュニケー ションの新たな展開をめざすことである。
本稿の構成は次の通りである。第
2節では.消費者行動論における消費者の情報探索行動を 明らかにする。第 3節では.消費者関与概念や関与と情報探索との因果関係を過去の研究から 整理し.これらにおける研究課題を明らかにする。第 4節では,各メデイアの特徴を提示する。
第
5節では,関与とメデイアに関する先行研究をレビューした上で.それらを参考にしながら,
新たな視点から関与概念を用いた消費者のメデイア選択に関するモデルと仮説を示す。第
6節
では.本稿の理論的な貢献と限界について述べる。
62
関西大学商学論集 第
55巻第
6号
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2月 )
第
2節 消 費 者 の 情 報 処 理 プ ロ セ ス に お け る 情 報 探 索
第 1項消費者の購買意思決定プロセス
消費者行動論における情報探索とは,購買意思決定の中の
1つの過程である。
その消費者の購買意思決定は,「個人が慎重に製品・プランド・サービスに関する属性を評価 し,最小限のコストで問題を解決するモノを功利的あるいは感情的に判断し,選択すること」凡
「
2つあるいは複数の代替品案から選択する行動」
2)'「目標に導かれ,問題を解決する過程」
3)と定義されてきた。
購買意思決定に関する上記の定義における共通点は,消費者がプランド・サービスを自ら選 択する過程であるということである。他方,各定義の相違点は,
Hawkinsら
(2001)が,消費 者は最小限のコストで意思決定することを強調しているのに対して,
Shiffman (2008)は ,
2つ以上の選択肢から意思決定すること,田中
(2008)は,問題を解決することが前提となるこ とを考察している。
以上を踏まえ,本稿では購買意思決定を「最小限のコストで問題・目標を解決するために
2つないし複数の選択肢の中から,功利的あるいは感情的に判断し選択する行動」と定義する。
消費者の購買意思決定プロセスには,主に ( 1 ) ニーズの認識,( 2 )探索,( 3 )購買前の代替案評価,
( 4 ) 購買,( 5 )消費 ( 6 ) 消費後の評価,( 7 )満足/不満足,の 7 つのステージがある
4)。他の消費者 行動論における購買意思決定プロセスを,( 1 )問題認識,( 2 )情報探索,( 3 )代替案評価と選択,( 4 ) 購買,(5 )購買後評価の
5つのステージという捉え方もある叫
前者と後者の違いは,消費と満足/不満足の
2つのステージが含まれているかどうかである が,購買後に評価するためには,当然,財やサービスの消費が必要であり,それらに対する満 足/不満足が含まれている。そのため本稿では,購買意思決定プロセスを,①ニーズの認識,
②探索,③購買前の代替案評価,④購買,⑤購買後評価の
5つとみなす。
消費者のブランド選択には,消費者自身のプランドに対する評価や態度が影響する。そのよ うな評価や態度は,過去の消費体験やメデイアによるプランド・イメージなどによって形成さ れる。メデイアによって提示されるプランドのイメージは,消費体験のきっかけとなったり,
購買使用後のプランド態度をより強化したりする役割を果たす。以上から,情報探索は,消費 者の一連の購買行動のなかでも特に重要なプロセスの
1つであるといえる。
1) Hawkins, Best and Coney (2001) p.504 2) Schiffman (2008) p.444
3)
田中
(2008)p,534) Blackwell. Engel and Miniard (2006) pp.84‑85.
5)
たとえば.
Hawkins,Best and Coney (2001) pp.474‑475. Schiffman and Kanuk (2000) pp.442‑443.関与を考慮した消費者のメデイア選択モデル(大田)
63第 2項 情 報 探 索
情報探索は,「消費者が自己の内外から適正な情報を収集し, 目標を達成できるような意思 決定をするために必要な情報を集める過程」
6)'「満たされていないニーズを解決するために内 外の情報を探索すること」 と定義されてきた。
ここでは,情報探索の定義のなかで,①消費者がもつ課題を解決するなどの目標を達成する ために情報を探索する過程であること,②内外の情報を探索すること,のこの
2点が指摘され ている。内外の情報とは,内部情報(記憶内部にある製品・サービスに関する知識)と外部情 報(マスメデイアを中心としたマーケティング活動による情報や家族のロコミなど非マーケテ
ィング活動を含む情報)といった
2つの情報のことである。
情報探索に影響を与える要因には,①環境影響要因(文化,社会階層,人的影響要因,家族,
状況)と②消費者要因(資金,モチベーションと関与,知識,態度,パーソナリティ,価値観,
ライフスタイル),③外部刺激(マーケティング活動,マーケティング活動以外)の 3つがある
8)0その
3つの要因の関連性について述べておく。外部刺激は環境影響要因の一部である。ただ し,文化や家族の影響よりも, TVCM や店頭情報などのマーケティング活動の方がより消費 者の情報探索活動に影響を与える。他方,消費者要因は内在的な要因である。これは外部刺激 だけでなく,消費者の生活スタイルや価値観,経験によっても形成されるのである。
それらの要因のうち,情報探索に最も影響を与えるのは消費者要因である。他の
2要因は,
消費者要因によってその影響の態様と度合いも異なるからである。具体的にいうと,その理由 は
2つある。
1つは,消費者の知識水準における高低の程度が,消費者の外部情報探索活動を 大きく左右するからである。消費者の情報探索は,主に内部情報と外部情報という
2つの情報 源を利用する
cこのうち,自身の記憶から知識を引き出すという内部探索がまず試みられる。
この内部探索が十分であれば,外部探索が行われることなく代替案評価がなされて購買にいた る。もし内部情報のみでは判断できない場合,消費者は外部探索を行う
9)。その際, どのメデ ィアを探索すれば,いかなる情報が得られるかといったメデイアに関する知識とそれらを判断 する能力が必要になる。もしそれらが不十分であれば,的確な情報選択ができず,その結果とし て購買リスク
10)が高まる。すなわち,消費者の知識水準の高さが,消費者の外部情報の探索 活動を大きく左右する。
6) Solomon (2002) p.260
7) Blackwell, Engel and Miniard (2006) p.74
8) Blackwell, Engel and Miniard (2006) pp.85‑88., Hawkins, Best and Coney (2001) p.474., Schiffman and Kanuk (2000) pp.442‑443.
9) Blackwell, Engel and Miniard (2006) pp.74‑75.
10)
購買リスクとは,消費者が製品を購入する際に,引き起こるリスクのことを指し,知覚リスクと同等の
概念である。知覚リスクとは,消費者が感じる購買の結果から生じる負の結果の程度と,彼らが感じる
購買の結果の不確実性の
2つの意味を含む。
Cox(1967) p.38.64
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さらに.消費者要因が情報探索プロセスに大きな影響を与えるもう
1つの理由は,消費者が 当該製品・サービスに対する関与がなければ,外部情報探索そのものが行われないからである。
外部情報探索活動は,消費者にとって何らかの労力(コスト)がかかる。したがって,製品情 報をより詳しく知りたい.購買リスクを減らしたいといった動機がコスト要因を上回らなけれ ば,探索されない。このため,消費者の当該製品・サービスに対する関与の程度が,消費者の 外部情報の探索活動を大きく左右する。
これら関与と知識のうち,関与の方が知識に比べ,消費者の情報探索活動により影響を与え るのではないかと思われる。
第 3 節 消費者関与概念とその役割
第 1 項 関 与 の 定 義
消費者行動研究のなかで論じられてきた関与は,社会心理学の社会的判断理論から援用され た概念をもとにしている。社会心理学における関与は,「考察対象である態度形成事象が当該 個人にとって重要である程度」といった「自我関与」を意味する
II)。しかし,消費者行動研究 での関与は,そうした「自我関与」だけではなく,購買関与
12),コミュニケーション関与
13)と いった様々な関与が議論されてきた。
関与は,「『目的志向的な処理能力の喚起(覚醒)』として捉えられるが,具体的には,消費 者の価値と動機とを基盤とし,動機づけの結果として喚起(覚醒)された目的志向的状態であ り,情報処理能力の活性化水準を指す構成概念」と定義される
14)。他の論者は,関与を「自己と の関係したもしくは個人の目的を達成しようとする状態」
15)'「対象や状況といった諸要因によ って活性化された消費者個人内の目的志向的な状態であり消費者個人の価値体系の支配を受 け,当該対象や状況に関わる情報処理や意思決定の水準およびその内容を規定する状態変数」
16)と定義した。
いずれの論者も,関与を,自己の価値基盤に基づいた目的志向的な状態であり消費者の情
11) Sherif (1973) p.311
12)
購買重要性という概念は,
Howardand Sheth (1969)が提唱し,それは「動機の強度に関わる買い手の 参照フレームにおける変数,
p.419」と定義される。
13)
コミュニケーション関与は,
Krugman (1965)が提唱し,それは「広告に対する自己関与
(personal involvement),p.355」と定義した。ここでいう自己関与とは,「単なる注目や興味,興奮という意味では なく. 自己と当該対象との関連性あるいは重要性の程度,
p.355」として捉えていることから. 自我関与 に近い概念であると推論できる。
14) Park and Mittal (1985) pp.209‑210. 15) Celsi and Olson (1988) p211. 16)青木 (1989)p.125.
関与を考慮した消費者のメデイア選択モデル(大田)
65報処理能力に大きく規定されるものととらえている。あるいは,関与を永続的関与と状況特定 的関与に分けて定義することもある。
これらの定義を踏まえつつ,本稿は関与を,「動機的基盤による自己と考察対象との関わり 合いの程度やタイプを表わす状態変数」と定義し,その程度によって,消費者の情報処理のプ ロセスが異なるものととらえることとする。
第
2項 関 与 の 特 性
それでは関与はどのような特性をもつのか。ここでは関与の特性には,①動機的基盤をもつ こと.②関与は状態変数であること,の
2つがあげられる(B
loch,1982 ; Bloch and Richins, 1983 ; Park and Mittal. 1985 ; Peter and Olson, 2002)。第
1の特性は,関与は動機的基盤をもつことである。動機とは,「目標対象に向けて消費者 に行動を促す動因や覚醒の状態」
17)を意味する。つまり関与は.消費者がもつニーズや問題を 解決しようとする目標志向的な性格をもつ。この動機によって関与は次の
2つに分類される。
1
つは,関与には動機による覚醒の水準がある。消費者が考察対象に動機づけられた.あるい
は興味•関心をもった状態を高関与と呼ぶ。逆に彼らが考察対象に動機づけられない,もしく は全く興味•関心をもたない状態を低関与と呼ぶ 18) 。もう 1 つは.関与の動機によるタイプで ある。消費者意思決定プロセスにおける動機には,製品プランドの便益に対する重要度を評価 する功利的動機
(rationalmotives)と消費者の感情によって評価をおこなう感情的動機
(emotional motives)という
2つある叫
Parkand Mittal (1985)は こ の
2つのタイプの動 機に注目し,功利的動機を持つ消費者は認知的関与と関連が高く.感情的動機を持つ消費者は 感情的関与と関連が高いことを示した
20)0第
2の特性は,関与は,状態変数であることである。関与は,永続的関与
(enduring involvement)と状況的関与
(situationalinvolvement)の
2つに大別できる
(Bloch,1982)。
永続的関与とは,消費者が個人の目標や価値観を達成するために,内在的に知覚する自己と 対象との関わりの程度のことを指す。またその対象が製品であった場合,これを製品関与
21)という。製品と自己との関わりは個人が知覚するニーズ・目的・価値や製品知識の間の結び
17) Solomon (2001) p.102 18) Park and Mittal (1985) p.205. 19) Schiffman and Kanuk (2000) pp.69‑70. 20) Park and Mittal (1985) pp.214‑215.
21)
製品関与とは,「消費者の価値観による彼らが知覚する製品と自己との関連性の程度」を指す
Peter and Olson (2008) p.85。
Houstonand Rothschild (1978)によれば,永続的関与は,消費者個人の購買す
る状況(過去の経験による製品の評価,製品と自己との関連性の強さ)がもたらす製品の継続的な関心の
程度を指す。対象が製品であることや製品と自己との関連性の程度を表わす変数であることが相似して
いることから,両者はほぽ同一の概念である。
66 関亜人学尚学論集 第55巻 第6
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つきによって表現され
22),それは永続的な性格をもつ
23)0他方.状況的関与とは.製品やサービスあるいは企業といった対象ではなく.購買をする時 や広告を見た時といった特定の状況と個人との関わり合いの程度のことを指す
24)。状況的関与 は.具体的な購買状況や予想される使用状況との関連において知覚されるもの
25)であり.そ れは状況特定的で一時的な性格をもつ
2610第 3項 関 与 と 情 報 探 索
消費者の関与が高まれば,マーケット刺激などの情報処理が促進される
27)。つまり関与と情 報探索は密接な関係にある
28)。次に前節であげた関与水準の程度やタイプが情報探索にどのよ
うな影響を与えるかを考察する。
まず関与の活性化水準と情報探索との関係には.正の相関がある
29)。消費者がある対象に高 い関与を有する時彼らはそれに関する情報を集めようとし.逆に彼らがある対象に低い関与 を有する時それに関する情報を集めようとしない。さらに,情報収集意向だけでなく.情報 探索の量も正の相関があることが明らかとなっている
30)。
次に.先に述べた永続的関与・状況的関与と情報探索との関係について説明する。まず永続 的関与と情報探索量との関係については,正の相関があるという主張
(Bloch,1982 ; Bloch, Sherrell and Ridgway, 1986)と無相関であるという主張
(Beattyand Smith, 1987)という相 反する
2つの主張がある。この理由として,関与の測定方法の相違や消費者の製品やサービス に対する態度が調壺によって一定でないことがあげられる
31)。特に,
Beattyand Smith (1987)は.永続的探索と事前購買探索の違いに注目し,永続的関与と永続的探索には正の相関がある が,永続的関与と事前購買探索は,時間的なプレッシャーや知覚リスクなどのコスト要因がよ り影響しているため,たとえ梢費者が製品ブランドに関心があったとしても,消費者の立場や 状況によって,情報探索量は異なるため,正の相関になるとは限らないと指摘している`
32)0次に状況的関与と情報探索批との関係について説明する。ここでいう状況的関与は,上記で挙
22) Celsi and Olson (1988) p.211. 23) Bloch and Richins (1983) p. 70. 24) Bloch (1982) p.413.
25) Bloch and Richins (1983) pp. 71‑72.. 26) Bloch and Richins (1983) p. 70. 27) Celsi and Olson (1988) p.210. 28) Beatty and Smith (1987) p.85.
29) Zaichkowsky (1985) p.346 ; Hawkins and Hoch (1992) p.213. 30) Houston and Rothschild (1978) pp.185‑186.
31) Zaichkowsky (1985) pp.341‑342. 32) Beatty and Smith (1987) pp.92‑93.
関与を考慮した消費者のメデイア選択モデル(大田)
67げたようにその製品を買うといった特定の状況を含んだ製品に対する個人の重要度を指す
33)0購買関与が高まれば,消費者の情報探索量は増大する。なぜなら.彼らは購買を意識し,購買リス クや知覚リスクを低減させようとするためである
34位他方,消費者が情報を探索するとき.探索 にかかるコストが発生する。探索コストが増大すると,彼らの情報探索量が低下する
35)。つまり,
購買における関与と情報探索は,情報を探索したいという消費者の関与度の程度だけでなく,情 報探索における負担の程度も影響し.その両者のウェイトによって情報探索量は変容する
36)0他方,消費者の動機のタイプをもちいた関与では,そのタイプによる情報処理プロセスが注 目され,情報探索量との因果関係は明らかとなっていない。
以上より関与と情報探索との関係にかかわる先行研究では,消費者がもつ動機による活性化 の水準の高さと情報探索の量は正の相関があることを示しつつ,その個人が置かれている状況 によって,それら関与と情報探索との関係は絶えず変化することが明らかとなっている。特に.
情報探索を行う際にかかるコスト要因が最も影響を与えている。一方で,これらの関係につい ての先行研究に対しては以下のような限界を指摘しなければならない。
1つは,永続的関与と 状況的関与ともに,実際にどれだけの情報探索が行われてきたかといった情報の量的な側面の みが問題視されており消費者が購買意思決定プロセスの中で,どのようなメデイアを参照し ているのかといった質的な側面は,ほとんど議論されていないことである。
2つは,関与のタ イプについても情報探索との因果関係はほとんど扱われてこなかったことである。
そうした関与とメデイア選択行動の関係性を説明するには,まずはその情報源となるメデイ アとその特性について考察する必要がある。なぜなら,メデイアごとにその役割・機能が異な り消費者のメデイア選択行動に影響を及ぽすからである。
第
4節 メデイア特性
メデイアは,「広告効果を達成するために創造力を刺激するメッセージ内容をターゲットオ ーデイエンスに伝達するためのビークル」と定義される
37)。
マーケティング活動におけるメデイアの特徴について説明する。
Belchand Belch (1995)は , メディアの種類を電波メデイア (TVCM, ラジオ),印刷メデイア(雑誌,新聞),サポート メデイア(屋外広告,ダイレクトマーケティング,セールスプロモーション
38)), PR (Public33) Bloch (1982) p.413.
34) Bloch and Richins (1983) pp.71‑72.
35) Newman and Staelin (1972) pp.251‑252.; Beatty and Smith (1987) p.85. 36) Celsi and Olson (1988) pp.212‑213.
37) Rossiter and Percy (1997) p.419
38)
セールスプロモーションとは,製品・サービスの付随的な価値によって顧客を引き寄せたり.製品・サービスの利点を
強調することで,顧客がその商品を購買してもらうことを目的とする活動のことを指す, B e l c h
andB e l c h (
1995) p.476.68
関西大学商学論集
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Relation)
,人的販売の
5つに分けている。彼らはそのなかでも電波メデイア.印刷メデイア,
サポートメデイア,それぞれの長所と短所を列挙した。それをまとめたものが図表
1となる。
図表 1 広告媒体の特性
媒 体 長所 短所
テレビ マス・カバレッジ 選択性が低い
高いリーチ メッセージの寿命が短い
映 像 音 声 , 動 き の イ ン パ ク ト 絶対コストが高い
高い信望 制作コストが高い
露出あたりのコストが低い クラッター 注目を集める
好ましいイメージ
ラジオ ローカル・カバレッジ 音声のみ
低いコスト クラッター
高いフリークエンシー 注目を集める力が弱い
柔軟 メッセージが一瞬で過ぎる
制作コストが低い
オーデイエンスがよく細分化されている
雑誌 細分化の潜在性がある 掲載までのリードタイムが長い
再現の品質が高い 視覚のみ
情報内容が濃い 柔軟性に欠ける
寿命が長い 複数の読者が読む
新聞
ハイ・カバレッジ 短命
低コスト クラッター
掲載までのリードタイムが短い 注目を集める力が弱い 関係欄に広告を掲載できる 再現の品質が低い
タイムリー 読者の露出が選択的
読者が露出をコントロール クーポンとして使うことが出来る
屋外広告 ロケーション特性 露 出 時 間 が 限 ら れ て お り 短 い 広 告 が 必 要
反復性が高い とされる
容易に気づいてもらえる イメージがよくない 場所が制約される
ダイレクト・ 選択制が高い コンタクトあたりのコストが高い レスポンス 読者が露出をコントロール イメージがよくない
情報内容が濃い クラッター
反復露出の機会
(出所)
Belch,G.E. and Belch, M, A (1995). "Introduction to Advertising and Promotion: An Integrated Marketing Communications Perspective." 3rd ed., Richard D. Irwin, INC., p.346.これらの総括表は企業側の視点と消費者側の視点の両方が含まれている。本節では,消費者 のメデイア選択に焦点を当てていることから,消費者側の視点から各メデイアの特徴を整理す る 。
まずテレビCM は,映像•音声を通じて消費者に情報を伝達する。電波による配信を行うため.
消費者は即時的に情報を得ることができる。しかし,特定の
TVCMを随時的に確認すること
は困難である。なぜなら,どの時間帯に放映されているのかは消費者側には把握できないから
である。上記の理由から,消費者は情報を受動的に得るため,情報を取得するための消費者の
関与を考慇した消費者のメデイア選択モデル(大lll) 69
負荷はほとんどない。
ラジオは,音声を通じて消費者に伝達する。それは
TVCMと同様に,電波による配信を行 うため,即時性はあるものの,随時性はなく,情報を取得するための消費者の負術はほとんど ない。
雑誌は文字やイラストなど視覚的情報を通じて消費者に伝達する。掲載までのリードタイム が長いため,即時性はないものの,何度も繰り返し情報を取得することが可能なことから随時 性はある。雑誌は消費者が自ら取得する必要があるので,能動的なメデイアであるといえよう。
また雑誌情報を得るための消費者コストは,雑誌そのものを購入する必要があることから,
TVCM
のメデイアよりも高い。
新聞は雑誌同様,文字やイラストなど視覚的情報を通じて消費者に伝達する。
TVCMほど の即時性はないが,随時的に確認することが可能である。能動的メデイアであることや新聞を 閲覧するためには購読しなければならず,消費者の探索における負荷が大きい。
屋外広告は文字やイラストを通じて消費者に伝達する。即時性はないが,反復性が高いため,
随時的に確認することが可能である。ほとんど注目されず,意図的に取得するメデイアではな いため,消費者は探索における負荷はほとんどない。
DM (Direct Mail)
は文字やイラストを通じて消費者に伝達する。即時性はないが,随時性 はある。
DMの場合イラストによる情報もあるが,ほとんど文章で製品ブランドの特徴など が記述されており消費者はそれを読むのを面倒に感じる加)ことから,消費者の負荷が大きい。
上図の総括表で挙げたメデイアの他に,消費者の購買意思決定に関わる重要なメデイアは,
インターネット,店頭メディア,ロコミの 3つである。まずインターネットのメデイアの特徴 について説明したい。
Schumannand Thorson (2006)によればインターネットの特徴を
5つ挙げている。
1つは,コミュニケーション効果の短縮である。従来の広告は,認知などの態 度変容といった広告効果を目的としてきたが,消費者に製品に関するより詳細な情報を与える だけでなく,映像やイラストを交えて消費者によりプランドの魅力を引き付けることができる。
そうしたことでより購買やブランドロイヤルティといった行動レベルの広告効果が期待でき る 。
2つは,インタラクティブ性である。従来は企業から消費者への一方通行のメッセージ発 信しかできなかったが,インターネットを利用すれば,それだけでなく消費者から企業へ発倍 することが可能になり,企業はそれらの要望に合わせた柔軟な対応が可能となる。
3つは,消 費者同士で価値共有できる点である。
4つは,時間的・空間的な制約がないことである。従来 ならメディアから他のメデイアヘ移動するときには,そのような制約があるが,インターネッ
トのハイパーリンク機能を利用すれば,広告バナーから他の広告へと瞬時に移動することがで きる
10)。
5つは,伝達機能だけでなく,購買地点にもなることである。インターネットは,消
39) Belch and Belch (1995) p.463.
40) Schumann and Thorson (2006) pp.17‑18.
7 0 関
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費者に製品の告知機能や詳細情報を伝えるだけでなく購買地、点にもなりうることから,認知・
態度・行動のすべてのコミュニケーション効果が期待できる
4l)0購買地点である店頭で商品に関する説明や販売促進活動の役割を呆たすメデイアを店頭メデ ィアと呼ぶ。値札.店頭 POP や山積み陳列, ビデオを使ったデイスプレイなどが挙げられる。
食品や日用品などを購入する時,多くの消費者は店頭で購買意思決定をおこなうため,店頭メ デイアの役割が非常に重要になる叫またそれらのメデイアだけでなく,製品のパッケージ自 体に記載されている商品説明も,同様に購買意思決定に大きな影響を与える。製品パッケージ の説明は,イラストによる視覚的情報源から商品に関する詳細な説明といった言語的情報まで 含まれる。それらの情報は商品のパッケージに記載されているため,消費者が情報を取得する ための負荷はほとんどない。
次に,ロコミは.使用プランドに関する
1本験談などの情報を共有するための消費者間の会話 のことを指す。ロコミの特徴は,①音声のみ.②対面形式,③情報コストがかかる,④情報の 信頼性が高い,⑤企業にとって悪い情報も含まれる,⑥操作の困難性,の
6つである。まず,
ロコミは一対ーないし複数間で会話するため,音声による情報伝達がなされる。次に, コミュ ニケーション方法は対面形式であるため,消費者は即時的に情報を取得することが困難である ことから,ある程度の消費者コストがかかると想定される。さらに,誰が語り手を担うかによ って,その情報における信頼度が異なるとする研究もあるが已実際に使用したブランドの体 験談であるため,消費者はその情報に高い信頼をもち,購買意思決定により役立てるのである。
しかしながら.これらの情報は.企業にとって有益なものばかりだけでなく.製品に対する不 満といった製品のイメージを下げるような情報も含まれている。また.これらの情報は企業側 がこれらの情報を完全に操作することは困難というデメリットがある。
近年の情報インフラの発展に伴い,対面形式のロコミだけでなく.インターネットを利用し たクチコミも存在する。これと対面形式のロコミとでは異なる特徴が主に
2つある。
1つは,
インターネットの掲示板などを利用するため,伝達内容が文字やイラストによる視覚的な情報 であるという点である。もう
1つは,インターネットによっで情報が伝達される点である。イ
ンターネットの検索機能を利用すれば即時的に情報を取得することができさらにその機能 により容易に必要な情報を取得することができる。そのため消費者にば情報を探索する時間や 努力はかからない。他方.インターネットに接続するための固定費用はかかるため.金銭的コ ストはある程度かかる。
41) Schumann and Thorson (2006) p.16. 42) Belch and Belch (1995) p.434.
43) Blackwell. Engel and Miniard (2006) pp.113‑114
関与を考慮した消費者のメディア選択モデル(大田)
71上記の議論をふまえて,メデイアの特徴をまとめると下の図表
2のようになる。
図表
2各メディアの特徴のまとめ
機能 伝達内容 消費者コスト
即 時 性 随 時 性 言語的メデイア/ 探索 金銭的 音声・映像的メデイア 視 覚 聴 覚
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