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燃欝鞘研究室高瀬一男

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(1)

IOI

群馬県磯部鉱泉の化学成分について

一一一k関東における水理地質学的研究(第2報)..・一一一

燃欝鞘研究室高瀬一男

  1 緒    論

   1)

 前報 においては,八塩鉱泉と渡瀬地域の地下水の化学成分について,特にBr/Cl,

1/Cl, HBO2/C1, HCO3/Clの含量比から両者の関係を比較考察した。その結果,八塩鉱 泉の化学成分の起源は,油田塩水系の化石海水と温泉水とが混合して形成されたものと考 えた。また,渡瀬地域の地下水の化学成分の供給源は八塩系鉱泉水が地下水によって希釈 されたものと解釈した。八塩鉱泉が三波川結晶片岩地域に位置するにもかかわらず油田塩 水系の影響を示していることは,地質学的にも地球化学的にも興味ある問題である。

 これらの問題をさらに明らかにするため,八塩鉱泉に関係あると思われる群馬県磯部鉱 泉を調査の対象とした。この鉱泉水は関東北部,信越地方にかけて広く分布する海成第三 紀層の含油層にほぼ対比し得る/酬皇のものに当る。磯部鉱泉はホウ酸,炭酸,重曹,ヨー ド,ブm一ム含有アルカリ性強食塩泉として古来有名であり,本報では磯部鉱泉地域の鉱 泉水,地下水の泉質および水質の特徴を明らかにした。なおその起源および八塩鉱泉と磯 部鉱泉の関係についても若干考祭した。

豆 位置および地形・地質の概要

 ここに調査した資料は磯部鉱泉および上毛天然である。磯部鉱泉は高崎市の西方約7 km,碓氷川畔にあって妙義山の東方約7km,棒名山の南方約20 kmの位置にある。また

上毛天然ガス坑井のある原市町は磯部町の北方約5kエnのところにある。

 本地域は,標高200m前後の丘陵地で北側を東流する九十九川と,南側を東流する碓氷 川のほぼ中間に位地する。

      2) 3) 4) 5)

 本地域の地質に関しては,藤本治義ら ,金原均二 ,藤原健一ら ,服部安蔵ら,

      6)

石和田靖章ら 諸氏の研究があるが,特に,石和田靖章によると,最上部の第四紀層は洪 積世,その下部の第三紀層は中新世の碓氷層群に属するとしている。これを上位より要約 すればつぎのようになる。

(2)

102 茨城大学教育学部紀要第十四号

 〔第四紀洪積世〕 厚さ2〜・4 mからなる砂礫層,厚さ3〜4mからなるu・・一ムあ浮石 層によって構成されている○

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    妻幽

第1図 採水点位置図

 〔第三紀中新世〕

 安中層:砂質泥岩互層,含礫砂岩,礫岩,泥岩などの互層,上部には亜炭暦を爽在す る。下部は純海成褥で,本層の厚さは150m十である。

 原甫泥器層:本1爵の上半は灰黒色無層理塊状泥岩,下半は帯青田灰色無層理塊状砂質泥 岩で凝灰9:も凝灰質砂岩を介在,石油の徴候あり,純海成層,本層の厚さ510 m±であ

る○

 聖明斎砂岩層:本層の上半は無層理塊状淡青色細粒砂岩,下半は凝灰岩,凝灰質岩石で 基底に1〜2mの礫層を有する海成層。本層の厚さは130 m ±である。

 磯部互層;泥質砂岩,砂質泥岩互層でベントナイト質三層および凝灰岩も交える。全般 に凝灰質岩石で海成層○本層の厚さは100 m±であるQ

(3)

高瀬:群馬県磯部鉱泉の化学成分について 103

 塚原泥岩層:灰黒色無層理塊状泥岩を主とする凝灰岩,凝灰質砂岩の薄層を交える海成 層,本層の厚さは300m±である。

 以上のうち,本鉱泉に関係ある地層は安中層の下部の原市泥岩層から塚原泥岩層までで あって特に聖明寺および磯部互層はガスの貯溜層として好適である。また原市泥岩層下部 には関東地方における唯一の石油表面徴候を示す。

 地質構造的には碓氷層群は北ないし北東に緩斜する単斜構造をなし,断層が多い。鉱泉 はこれらの断層に深い関係があり,特に磯部断層との関係が大きいとしている。

 坑井地質について

 筆者が主に調査した上毛天然ガス株式会社所有の炭酸ガス採取井はいずれも磯部断層の 両側から背斜頂部付近に開坑したもので,第2図はR−1〜R・一4,TB−1〜TB−2のう

ちR−1〜R−3の坑井の地質柱状図である。

(4)

  号 四

茨城大学教育学部紀要

10A.

表±

砂質粘土

枯土質凝灰岩 纂黛♪民《コ

凝灰岩 JtkXs

凝灰岩と頁者の互懸 青頷岩 灰亀凝双岩 頁岩層に黄鉄鉱介在 白色凝灰岩 灰色凝灰岩

砂質頁岩に砂岩介在

}疑灰質頁老に黄塗失£を介在

,lll圏圏I l脚ftlけ

1

1111川

mu蕪iio 黄鉄鉱介在

疑灰質轟更砂岩

凝灰質砂岩と頁岩の互層 黄鉄鉱介在

冷争冷φ

灰色}疑灰岩と砂質頁岩の互層

凝灰岩

硬質頁岩と硬砂岩の互層

の互山石の

習ハ出.心

 ロ震F劣 ヘノ モむ山石レし︾心一貝口出如質︸貝再ハ砂質質水硬硬硬塩

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       Om

(ま票葱i212,091

   出仁  出伯 ︸舞翻薦癩

疑灰質砂岩

表土      On

礫         (オ票葛215.GO 青色頁岩

穿占ニヒ質濠是級岩 砂質葺岩 白色凝灰岩 頁巻と凝灰岩の互餐

2eo 亭 硬砂岩

  石英領砂岩のはさみ

↑φ簸物化石   凝灰質砂岩   硬質1且粒砂春 t

盤戸慰一曲石

硬質頁岩

灰質頁岩 30{]

白色凝灰岩

疑灰質砂巻,翼岩の互層

硬砂岩 黄鉄鉱介在 白色凝灰岩

115星

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       o

(手票高216.3

凋− 02

  硬頁岩質砂岩

伍6C

凝双鞭飴

白色葺嵩に礫介を

oo

 砂  山石  の  互  僻憩4 硬質頁岩

凝灰質頁 岩と凝灰質,

石英質硬砂岩 454,2

第(3)翻  R−3土也質柱…)1犬図 添票高212.09m 汐重度 454,2m 硬砂質頁岩

砂質頁岩と石英質砂岩

凝灰質頁岩.

白色凝灰岩

砂質頁岩

擬灰質頁岩と砂岩の互層

   ハ 

↑×塩フi〈.

  硬砂質頁岩

硬頁岩 硬頁岩層中に石灰質介

砂質頁岩

肇  →

♂×凝双質砂岩   x塩水 r

R−1ナ琶質ま主状図 劉1魍

矛玉高216,32m 湯ミ度452.5 m

第2>騒 R−2地質柱状

 匹田潔〕215.COIYI

 深度748.5m

一3」究ナ爵垂惣1質柱状図 Rnt2p

⊥毛.天然ガス R−1,

 図

 2

この柱状図は上毛天然ガス株式.会社の提供による。

士漏rし

(5)

高瀬:群馬県機}rt【≦鉱泉の化学成分について 105

  皿 調 査 方 法

 本調査のうち採水は昭和38年2月25日に行なった。磯部町付近の井戸水2カ所,原市町 上毛天然ガス株式会社所有の炭酸ガス採取井6ヵ所および付近の井戸水1ヵ所計9ヵ所の 水をポリエチレンビンに採水した。鉄などの定量川試料は硝酸酸性にして保存した。水温 pH,重炭酸イオンなどは現地で測定・分析した。

 磯部鉱泉水の分析も一応実施したが,採水時若干純度に疑問があったので,本文には採 用していない。したがって,本文中の磯部鉱泉とは原市町上毛天然ガス株式会社が炭酸ガ ス採取に伴って揚水する鉱泉水を意味する。

  w 分 析 方 法

      1)

 pH,塩素イオン,臭素イオン,ヨウ素イオン,重炭酸イオン,ホウ酸イオンは前報 と 同じ方法によった。

 ナトリウム,カリウムは炎光分析法,カルシウム,マグネシウムはEDTAによる滴定 法,鉄はオルソヘナンスロリンを用いる比色法,硫酸イオンは塩化バリウムを用いる比憲 法,ケイ酸はモリブデン酸法による比色法などによって定量した。

  V 分析結果とその考察

 以上の方法で得た分析結果を第1表に示した。また磯部鉱泉と八塩鉱泉とを比較考察す るため,その分析結果を第1表の下欄に示したQ

 〔1〕 磯部鉱泉と八塩鉱泉の各成分の溶存状態  1.水  温

 上毛天然ガス株式会社所有の炭酸ガス採取井6ヵ所(以後これを磯部鉱泉と呼ぶことに する)の水温は180〜310Cである。水温はほぼ地下増温率に比例して増減しているが,例 外もある。八塩鉱泉は1.0〜4.50Cで温度の差異が大きく,また磯部に比べてはるかに低 温である(鉱泉井の構.造に多少問題があると思う)。

 2. pK

 磯部鉱泉では,pH 7.0〜7.4で,八塩鉱泉のpH 6.7より多少アルカリ性を示すが,ピン 度からみると7.0が多い,,一一方八塩鉱泉では,3源泉ともpH 6.7を示し, pH値からは同 一源泉のようにみえる。

(6)

第1表磯部。八塩鉱泉水の分析結果

採水点No.

上毛天然ガス

       R一ユ

tl R−2

深度

m 水湿(oC)

452.51 31 748.5

tl R 一・ 3 1 454.2

tl R−4

ノ! TB−1

tl TB−2 原市町井戸水

        H.G 456.0 285.0 250.0 10

27 30 23 23 18

八二、懸、い 15

pH (mg/1)Na

7.0 PO,400 7.4 10,500

 K+

(mg/の

280

Ca++

(mg/1)

266 240 215 7.3iユ1,000

   i

280 236

7.e IIO,250

   1 235 263

7.e ]e,130 245 308

Mg

(rng/の Fe

十Fe+一+

(mg/の  Cl一

(mg/1)

52.3 ]    ミ

4・82陣3・630 48.0

Ax8・8 5].4

Ax・84

5.00 13,320 13,590 s.20113,110

 Br一

(m9/の

42.0 40.5

4.1.1

44.7 4g.s 1 5.81113,!60

   1

40.7

  Inv

(mg/の HCO3一

(mg/の 5.841 7,360    E

SOザ』

(mg/1),

2

    

6・03j 8・180 2 6.431 s,23g

2 6.03i 7,890 2

7.2

6.97 7,490 2 11,130 145 380 5bx・2 s.soE12,ggo

40.3 6.2ii 9,3DO 7

}{BO 2

(mg/の 641 537

SiO2

(mg/1)

17.e

31.5 603 26.0 529

576

22.0

6.5 tr

1 s. G一 2

八塩鉱泉 Y1

  i .1

4.01 15.2ii 6.9

5 4.5

11 Y2 1.O

6.7

6.7

16.5

4−4 s.ol 16.7ii s.6sli o.nl 1 3i.oi o.g7

s2・ 51   i     l 3.5il 45.5i       24.e

63 ngti 3821, 6 sgl

   l G・8コi35・ユ

    0。ool   32。2    〜

7,94.0 768 4−31 103 3.4210,430 35.1

438 A.4.0

O.19i 70・8i

26.5 4.10 52.0

ノ! Y31 一 1 G

9,000 885 419 127

    

6・7 1 5・SOO 525 204 151

O.82 O.33

12,560 7,670

215 A.3・O

182 31.0

八塩鉱泉沢水   tl Y 4

  ミ0・212・2 7.2 131 22.51 32.3

   t

IO.4

4.881 tlL,470 960

41.5 2.62 25.7 3.87

4s910 1,280 3,490 600 o.ool s3・4 ,. igl …ユi・75 72.0

   1 4.Il.Oi    l1 45.0 4.92 35.6

7玉1 28.5

843 21.0 479 19.7

,3.21

δ0悪蝉磯峠讐諮燭遷十覆纈

(7)

高瀬:群馬県磯部鉱泉の化学成分について 107

 3.ナトリウム,カリウム

 磯部鉱泉のナトリウムは,10,400〜ll,130 mg/1でほぼ等しい値を示し,第3図からわ かるようにこの値は海水中のナトリウムと等しいか,または幾分多く,海水のナトリウム の平均値に相当する。カリウムは145〜280mg//であるがTB−2の145 mg/1以外はすべ て,200mg〃以上であるが,海水の含:量よりは少ない。ここでナトリウムは,本鉱泉の主

カチオンを示すものである。

 八:塩鉱泉のナトリウム含量は,5,500〜9,000mg/1で3源泉の含量の差が大きく,含量 は,磯部鉱泉より少ない。カリウムの含量は,525〜885mg/1で磯部地区より絶対量がは るかに多く,多いものは海水の2倍以上を示すことになる。しかし,第7図に示すように        くK/Naの比においては両鉱泉ともほぼ同じような関係にある。

 4. カルシウム,マグネシウム

 機部鉱泉のカルシウムの含量は,215〜380mg/1,マグネシウム含量は48.0〜54.2mg/1

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⑧八塩沢水

⑭原畜町井戸水

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   ⑦海水(Ng)

K八

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  {、舞㌧、Mg酷1

         {o 20  30 40so loo 2eo 300 dgesoo fefio 2000 jooo  sooe looee 200so

       Cl (mg//)

       第3図 C1とNa, K:, Ca, Mgの関係

でCa>Mg型の性質を呈する。八塩鉱泉では,カルシウム,マグネシウムともに磯部鉱 り泉よ2倍程度含有されているが,海水に比べるとはるかに低い。

  〔註〕第3,4図中右側に分布する磯部e八塩の各化学成分を表わす記号は海水の各成分の記号     と同様である。

(8)

108      茨城大学教育学部紀要 第十四号

  5.鉄

  磯部鉱泉の鉄含量は,4.82〜5.80mg/1で比較瀬高含量である。八塩鉱泉は0.33〜3.42  mg/1で磯部鉱泉より低含量である。両鉱泉の鉄含量は海水の含量よりはるかに高く,ま  た井戸水は逆にはるかに低く0.00〜0.82 mg/1である。

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    ⑧八塩沢水     o原市町井戸水  Iooe

    o磯部町井戸水

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   ・HCO、(海水)

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  繍磯部

   9k.LI tl(tS水)

Io 2e so os so ioo 2eo sDc deo soo lcoo 20go soeo seoe teooo ?ooDo

         Cl (mg/t)

第4図 C1とBr,1, B:BO 2, HCO3, SO4の関係

 6.塩  素

 磯部鉱泉の塩素含有量は12,990〜13,630 mg/1で海水の塩素量の2/3以上に相当し,陰 イオンの主成分である。Cl, HCO3,SO 4の当量百分率からはCl>HCO,>SO 4であって,

Cl型の鉱泉である。

 八塩鉱泉は7,670〜12,560mg/1で磯1釜β鉱泉より低含量であるが,それに匹敵する濃度 のものもある。磯部と同様C1型の鉱泉である。

 7.臭  素

 磯部鉱泉の臭素含有量は40.3〜44.7mg/1,八塩鉱泉の心墨は25.7〜41.5mg〃であ る。臭素の含量は塩素と比例して増減する傾向がある。海水に比べて低含量であるが第4 図からみると一見海水が希釈されたとみることができる。

 8.ヨウ素

 磯部鉱泉のヨウ素含有量は5.84〜6.97 mg/1,八塩鉱泉は2.62〜4.88 mg/1である○こ

(9)

高瀬:群馬県磯部鉱泉の化学成分について le9

のヨウ素の含量は,塩素,臭素と正の相関をもって変動する傾向がある。なお海水に比す ればはるかに高含量を示す。

 9. :重炭酸イオン

 磯部鉱泉の重炭酸イオンの含量は,7,360〜9,300mg/1の高含量を示し本邦有数の炭酸 含量の著しいところとして:有名である。八塩鉱泉はこれより低含量で3,490〜4,910mg/1 である。重炭酸イオンは,ハロゲン元素,ホウ酸などとともに変動している。

10. 硫酸イオン

 磯部鉱泉の硫酸イオンの含有量は2〜7㎎/1で極めて少ない。これに反し,八塩鉱泉で は600〜1,280mg/1の高含量を示す。この関係については,両者の起源を考察する.ヒに注 意する必要があろう。

11.ホウ酸

 磯部鉱泉のホウ酸含有量は,438〜641mg/1であるが,八塩鉱泉では479〜843 mg/1で 前述の硫酸イオンの含量と似た傾向がみられる。

12.ケイ酸

 ケイ酸含有量は,磯部鉱泉16.5〜44.0 mg/1,八塩鉱泉19.7〜28.5 mg/1であって,第 1表が示すように全体的にはあまりばらつきがない。

 〔1[〕 磯部鉱泉の化学成分の概括

 磯部鉱泉の泉質は6源泉とも陰イオン,陽イオン,その他成分の含量がほぼ同程度であ

る。

 陽イオンの含量は,Na>Ca≧K>Mg>Feの関係を示し,特にナトリウムは10,250 mg/1以上を含み,海水の10,500 mg/1を上まわるものが50%もあることが特徴である。

カリウム,カルシウム,マグネシウムの含量は,ともに海水のそれより少なく,なかでも マグネシウムは2ケタも小さい値であり,ナトリウムの含量傾向とは相反する。

 一方陰イオンの含量は,Cl>HCO 3>Br>1>SO 4のB3111係を示し,塩素は海水の2/3以 上,重炭酸イオンは海水の60〜70倍含有しているのに対し,硫酸イオンは2mg/1程度で極 めて少なく海水の1/1000にもみたない。重炭酸イオンは7,360〜9,300mg/1で,前述の陽 イオンからみて本邦有数の含炭酸,重曹,強食塩泉といえる。Cl−HCO 3−SO 4の3成分 の当量百分率を求め,三角座標で表現すれば第5図のようになる。すなわちCl>1{CO,>

SO 4型の性質を示し, Cl−HCO 3で特徴ずけられる。また,八塩鉱泉のCl−HCO 3−SO 4 の3成分についても磯部鉱泉と類似した関係にあるが,多少SO 4側に片寄る。

 なお,臭素は海水に比して低含量であるが,ヨウ素,ホウ酸の含量はかなり高く相当濃 縮された状態にある。

(10)

110 茨城大学教育学部紀要 第十四号

Cl

        HCO, th−SO,

       第5図 cレHCO 3−SO4当量百分率  〔皿:〕 磯部鉱泉の起源

 以上のような泉質を示すが,磯部鉱泉の起源についてはこれまで若干の報告がある。山

  7)

県登 は群馬県鉱泉の地球化学的研究のなかで磯部鉱泉は化石水に由来するものと考えて        8)

いるようである。また武藤覚 は「海水に類似した源泉または太古に内陸に包蔵された海 水の如きものであろうと考えられる。これと同種のものと見倣されるものに油田地方の油 田塩水があるが,さらに調査してみなければ確定したことは判らない」と述べている。な       9)

お,本島公司 は「磯部ガス鉱床は成因的には,第三紀中新世の海成層に由来するメタン 系天然ガスおよびその同時生成的塩水に,地下深所から炭酸ガスが加ってでき,それが地 上の空気と動的平衡を保っているものと解釈した。」そしてさらに「炭酸ガス成因につい ては,浅間山,榛名山などのような第四紀火山活動に関連深いものと考えてよさそうであ る」と述べている。

 したがって,本鉱泉水の起源に関する現在までの諸氏の考え方は,化石水に火山活動に よって生じた物質が加って生成されたものということになる。

      10)

 つぎに,太秦康光ら の油田塩水・海水・温泉水の化学成分の含有比と対比して,本鉱 泉の起源について考察してみる。

 太秦ら*)の方法にしたがって求めた当量比および重量比を第2,3表に示した。また,

第2,3表をまとめた主要化学成分の含量比を太秦らの結果と一緒に第4表に示した。

 なお,第4表の油田塩水,温泉水,海水などと磯部・八塩鉱泉の含量比を比較する場

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*)ここに採用した油田塩水および温泉の化学成分は太秦らによる北海道地域のものに限られ  る。このうち温泉水では成分の範囲の極めて広いものがあるがそのまま採用してある。しか  し北海道の湿泉は地質学的に見ると種々の型がはるはずで,比較の対象としては不適当なも  のがあると予想される,この点今後検討するつもりである。

(11)

       高瀬:群馬県磯部鉱泉の化学成分について       111

合,数値のみの比較では明瞭に判定しがたいため,これら含量比の対比図を作成し,これ を第6,7図に示した。

      第2表 磯部・八塩鉱泉水の化学成分当量比 採水 点 No.

上毛天然ガスR−1

ノ1 R−2

tl R−3

tt R−4

!x T B−1

tt T B−2 原市町井戸水       1{.G 磯部町井戸水     Is.Gl

  tt    王s.G2 八塩鉱泉  Yl

rr Y2

1r Y3

八塩鉱泉沢水       Y4

K+Na/Ecation

O.96

Ca+M9/

  Ecation

i O.04

O.97 O.03

O.97 e.96 O.96

O.03 O.04 O・04

Cl/Eanion

O.76

HCO3/2anion

1

O.74

O.24 O.26

e.74 O.26

.9:・Zi174

O.75

O.26

e. 25

SO4/2anion

o.oo o.oo

C.95 0.6玉

O.36 e.53

e. 92

O.93 O・92 O.72

e.eo

O・05 O.71

〇二39

O.64 O.47 e.os O.07 O.08

e.34 o.1忌.

O.20 O.76 e・77 e.76

O.28 O.26

O.BO

o. oo

O.29 o.oo

O・45 O.21

O.65 O.17

O.66 O.14

O. 19

t

O.05

O.17 o.2e O.49

O.06 O.04 O.25

(12)

112    茨城大学教育学部紀要 第十四号

第3表 磯部・八塩鉱泉水の化学成分璽量比 採水点N・・IK/N・×・・2M・/C・…

上毛天然ガスR−1 2.69 1.97

!ノ   E

R−21 2.29 2.23

1t R−3

tt R−4

1t TB−1 tt TB−2

2.55 2.07

2.29 2.42

!.30

1.95

1.61

1.43

Br/Cl × ie3

3.08 3.04

3.e2 3.41

1/cl×le  IHCO&.1ellE[BO2/.L fo,

         

Br/1

4.28 5.40 a..70 7.!9

4一.53 6.14 4.03

原市町井戸水       }1.G

4.73 6.e6 4.44

4・60 6.e2 4.04

3.04 5.30

3.IO 4.78

5.69 4一.38

11.4 3.40 3.13

1 7.i6 3.37

61.3 2.28 13.2

6.72 6.39 7.41 5.84

磯部町井戸水

         6.67

    1s・G1 5.27

tl

茎s.G2 八塩鉱泉  Y】

tl Y2

fl Y3

八塩鉱泉沢水

Y4

6.35 1.80

9.68 2.39 3.41

9.83 3. 03 3.31

9.55 7・ta,D 3.35

17.2 3.22 e 22.2

6.49

6.13 5.65

4. os 4.29

2.09 5.04 76・7

3.91

い・54

3.?..8

5.11 11.7

15.3

6.81 6.71 6.24 24.7

7.19 15.83 6.64 2.90

第4表 油田塩水・海水・温泉水と磯部・八塩引泉水の化学成分含量比の関係      k

含  量  比 油田塩水 温泉水 工部鉱泉 八塩鉱泉

当 量比

Na−y K/£cation

Ca十M9/Σcation Cl/Eanion HCO3/2anion SO4/2anion

O.91NO.97 o.03t−o.og O.61t−O.98

O・02rvO・39

〈o.oo

e.so o.leNl.eo o.gsNo.g7 1 o.g2No.g7 O.20

10〜0・90

O.90 O.004 O.093

O.02NO.98 o 一vo.gs O tv 9.97

O.03tvO.05 O.07tvO.08 o.7]t−o.76

I

l O・76−o.77 O.24tvO.29

〈o.oo

O.17!一一〇.20

O.04NO.06

重量『比

K/Na Mg/Ca

Br/C1 1 /Cl

Br/1

2〜7×10−3

O. 3−6

3・6 X 10 2 ln × 10−2 vlOMille3iNv2・7 x 10−219.6tv9・8 × 10−2

3.2

irmn一× i91 一li

1・4t−v2・2 × 10 i2・4,tv7・4×10−i

2Av8 × 10 3 3.4×ユOM3 t r−v 4 × 10−3 13・Onw3・4 × IO E ll,3・3N3・4 × 10−3

      i      F  1

2t−v7×E.o−3 1 2.6×iom6 1 ii. Nio×ii.o 一 414.3t一一vs.3xiomu4[2.i/vs.o×iom4

〈2 1300 >2 5・8tv 7・4 16・6 v 15・8

HBO 2/C1 1・6tv6 x 10−2 1・6x10−3 ln×lo 2 13.4N4.7 x !o−216.2N6.s × li.o−2

(13)

000◎◎0◎D◎OO

ω09脇解粥α5餌傭α2釦σゆ

K十Na/2cation 油田7    io﹁暮匪霞匠qo   α温泉⑳一

Oa8

    八  磯  塩  部  a97==皿    o.93  0.qs tu E

    OA2

温泉個

Ca+Mg/2cation

八塩

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磯部鰯馳

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油田

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Cl/2anioB 油田  朋温泉︒ 磯部ゴ.

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温泉

8 Oq

ao

HCO3/2anion

e.3q

O,02

磯部 八塩脚藩

四 24︑ヨα

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温泉

α7

SO4/2anion

騨  八     臨

]一

    〇,D4

油  磯 田  部

第6図 温泉水,油田塩水,海水の化学成分の当量比と磯部・八塩鉱泉水中の化学成分の当量比の関係     〔註〕 磯部。八塩におけるiなどの印はその当量比のピン度分布を示す。

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(14)

10−t

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温泉

K /Na

海水︒

油田 磯部 ︐o

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温泉

1 1g/Ca

田・

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IO2

10−i

温泉 油田 Br/Cl

o二=簸=コ 海 磯 八 水 部 塩、

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温泉

1/Cl

油田

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八塩

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Br/1

・海水

温泉−−−−⁝一−:−:⁝−−;一−聖聾聾雛蓼

・{

八塩磯部

油田

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油田

温泉

HBO, /Ci

八塩

磯部

︒海水

第7図 温泉水,油田塩水,海水の化学成分の重量比と磯部・八塩鉱泉水の化学成分の璽量比の関係     〔註〕 磯部・八塩におけるiなどの印はその重量比のピン度分布を示す。

は麟︾︑輝蝉痴言生血燭 謎︐雲叢砲

(15)

高瀬:群馬県磯部鉱泉の化学域:分について 115

  〔1〕当且比

  (Na+K)/Σcatlon, (Ca+Mg)/Σcat{o鍛, Cl/Σanio3ユ, HCO,/Σa難ionおよびSO 4/

Σaalo1}の5種の当量比からみた磯部鉱泉の泉質は,第2,4表および第6図からみて油 田塩水型の鉱泉であるといえる。第6図を詳細に観察すれば,温泉水型と璽複する部分が あるが,その重複の度合が極めて僅少であることから,前述のように油閏塩水系てあると

・考えられる○

 一方,5種の当量比からみた八塩鉱泉の泉質は,概略油田塩水型に属するが,SO 4/

ΣaniGnの含量比が0.04〜0.06を示し,油田塩水のく0.00よりはるかに大きいことに特 徴的な差異がある。この値は温泉水型の0〜0.97に属し,第6図が示すように温泉水型と 高い相関があると考えられる。したがって,これら当量比の関係からは八塩鉱泉の泉質 は,油1:1日:塩水型と温泉水型の混合.型であると解釈できるQ

 当鍛比から機部鉱泉と八塩鉱泉の泉質を比較すれば,SO 4/Σanion以外は両者ともほぼ 同様な含膚比を示す。しかし,しいていうならば八塩鉱泉はHCO 3/Σanionに多少の問 題はあろうが,総括的にみて磯部鉱泉に比較してより温泉水型の徴候が大きいようであ

る。

 北海道油田塩水においてはナトリウム,塩素が主成分ではあっても,(Na十K)/ΣcatiOH は0.91〜0.97であるが,Cl/Σa揃。ハは0.61〜0.98で,この値の小さいものはH:CO 3

/Σanionが大きくなることを示し,陰イオンの主要成分はCi一であるがHCO 3一の占め る割合がかなり大きくなる場合があることを示している。これに対して陽イオンはNa+

がつねに90%以上を占めていることは重要な特徴であろう。油田塩水ではSO ,.  2が非常 に少なく北海道油田においては6m9/1以下であると報告されている。磯部鉱泉における 以上の関係はナトリウム(90%以上),塩素, (Na+K)/Σcation(0.95〜0.97), CI/

Σanion(0.71〜0.76),硫酸イオン(7mg/1以下)であってよくその値に一致している。

八塩鉱泉ではほぼ同様であるが,ナトリウム(80%程度),硫酸イオンが600 mg//以上 である点などが異なる。

 〔2〕 重  量  比

 K/Na, Mg/Ca, Br/Cl,1/Cl, Br/1およびH:BO,/Clの6種の璽量比からみた磯部鉱 泉の泉質について考察してみる。

 前述のように当量比からみた磯部鉱泉の泉質は,油田塩水型によく一致するが〜重量比 の関係から油田塩水型を指示し得るものは,Br/C1, HBO2/C1であって,数値および第 7図からもわかるように強力にそれを指示し得るか否かは明瞭でない。K/Na, Br/1の 含量比は,油田塩水型の値に比べて大きく,Mg/Ca,1/Clは小さい。

(16)

116 茨:城大学教育学部紀要 第十四号

 ここで,K:/Na, Mg/Ca,1/Cl, Br/1の含量比は,表からわかるように,油田塩水型 に属するのではなく温泉水型の値によく一致している。一方,Br/C1, HBO2/Clの比も 油田塩水型にのJY・一致するのではなく,温泉水型とも同時に一一致している。したがってこ れら重量比の関係から磯部鉱泉の泉質の型を考えれば,温泉水型と油田塩水型の混合型と せざるを得ない。しかし,後報で述べる予定であるが,著者が新潟ガス田のガス付随水の 分析結果と比較した場合,例えばK/Naにおいては磯部鉱泉の値と同様なOrderを示し

た。またBr/1について太秦らは,「野口らの結果によれば,秋田,山形,新潟地方の油 田塩水ではBr/1はさらに大きな値(2以上)を示している場合があり, Br/1が2以下 になるのは北海道の油田の特徴とみるべきかも知れない」とのべている。以上のようなこ とから考えて,重量比に関する問題は本邦諸油田塩水の含量比を堆積環境とか化石海水の 変質の度合,すなわち,イオン交換などの観点からさらに詳細に検討してみる必要がある

と考えられる。

 八塩鉱泉の重量比は,各重量比とも前述の磯部鉱泉の値とほぼ同様で,Orderは全く一 致している。磯部鉱泉の場合とやや異なる点は,Mg/Caの比が油田塩水型に一一致する範 囲が大きいこと。またHBO2/C1の比が油田塩水型よりも温泉水型に属することなどであ る。したがって括概的にみて八塩鉱泉の泉質の起源は,当量比の場合と同様に油田塩水型 と温泉水型の混合型であると考えられる。

 〔3〕 磯部・八塩鉱泉の化学成分の経年変化

 いわゆる磯部鉱泉については多くの研究があるが,特にここでは,上毛天然ガス雪面水       8)

       9)

(鉱泉)の過去の分析結果と比較考察してみる。すなわち,武藤覚(1952),本島公司

(1957),著者(1963)の分析結果と比較した場合,1957年と1963年の結果はほとんど変 化がない。1952年の結果は1957,1963年の結果に比べて多少変化している。その変化の主 なものは,臭素の13.4〜20.Omg/1(1952),39.2〜41 .7 mg/1(1963),ホウ酸の144〜

157mg/1(1952),673〜860 mg/1(1963)であり,これら成分はかなり増加していること を意味する。これと逆に鉄の含量は12.0〜13.6mg/1(1952),0.4〜2.6mg/1(1957)

で減少していることを示す。

 以上のように多少の相異はあるが全体的にはかなり一定している。このように10数年前 と変りないことは本論泉水の供給源が非常に膨大であり,かつ供給物質が一定しているこ とを意味するものと考える。

      11)

 八塩鉱泉(八塩鉱泉Y1について)については,山県登ら(1955)の分析結果と比較 考察してみる。

 八塩鉱泉の成分は磯部鉱泉のそれより経時的変化が認められる。すなわち1955年と1963

(17)

高瀬:群馬県磯部鉱泉の化学成分について 117

年の結果が比較的異なるものは,カリウムの170 mg/1(1955),768 mg/1(1963),カル シウムの610mg/ll(!955),13 mg/1(1963),マグネシウムの600 mg/1(1955),103 mg/1(1963),硫酸イオンの1390■mg/1(1955),9δO mg/1(1963)などである。これ

らの成分はカリウムを除いては一般に減少したことになる。pH,ナトリウム,重炭酸イ オンはほとんど変化がなく一定している。八塩鉱泉Y1の臭素,ヨウ素,ホウ酸の含量に ついては,分析結果(1955)がないので八塩鉱泉群の平均値と思われるものと比較してみ る。1955年における臭素は19mg〃,ヨウ素は52mg/1,ホウ酸は390 mg〃であって,ヨ ウ素以外はかなりの増加を示している。以上のように成分の増減にかなりの変化があるが,

これらの或分を変化させる因子としては,一応火山活動の影響が考えられよう。しかし,

このことは多くの資料を基にして解析しなくては結論できない。

 前述のように,これらの問題を解決するためには今後,湧出機構,流動径路,火山活動 との関係などについてさらに検討する必要があろう。

上口

W 彰酬 ︾旺︑

 磯部鉱泉と八塩鉱泉の化学成分を分析し,両者の関係を比較考察した。また両鉱泉の起 源についても予察的考察を行なった。その結果つぎのようなことが明らかになった。

1.磯部鉱泉の特徴

 (1)pHはすぺて7.0以上である。

 (2)ナトリウム,塩素は極めて高含量であり,両者は主翼,陰イオンである。

 (3)硫酸イオンは極めて低含量である。

 (4)重炭酸イオンは極めて高含量である。

 (5)臭素,ヨウ素,ホウ酸は他の天然水に比べて高含量である。

2.八塩鉱泉の特徴

 (1)pHはすぺて6.7である。

 (2)ナトリウム,塩素の含量が高く,両者は主陽,陰イオンである。

 (3)硫酸イオンは磯部鉱泉とは逆に極めて高含量である。

 (4)重炭酸イオン含量は磯部鉱泉に比して低いが,他の鉱泉に比較すればはるかに高射   量である。

 (5)臭素,ヨウ素,ホウ酸は磯部鉱泉と同じように高含量である。

3.磯部鉱泉の起源について, (Na+K)/Σcation,(Ca+Mg)/Σcation, Cl/Σanion,

 HCO 3/Σanion, SO4/ΣanlORの当量比から考察すれば油田塩水系起源の性格をよく表  わしている。しかし,K/Na, Mg/Ca, Br/C1,1/C1, H:BO2/Cl, Br/1の重量比から

(18)

118 茨城大学教育学部紀要:第十四号

 は,油田塩水系起源よりむしろ温泉水型起源の可能性が有力である。したがって,起源  について含量比の関係を総合的に解釈すれば,油田系の化石海水と温泉水との混合によ  って形成されたものと考える。

4.八塩鉱泉の起源について,含量比からは大約磯部鉱泉と同じように考えられるが,磯  部鉱泉に比して多少温泉水型の傾向が強いようである。

 磯部鉱泉と八塩鉱泉の起源は,本質的には同様に考えられるが,各成分について考察す れば種々の問題が残されている。したがって以上は予察的結論であって,今後さらに含墨 画の問題については,本邦諸油田,本地域の温泉型と類似の地質学的条件にあると思われ る温泉および鉱泉などの統計的考察によって明らかにしたい。また鉱泉の湧出機構につい ても考祭する予定である。

 終りにのぞみ,本研究を行うにあたり地質学,水理地質学的観点から種々御指導と御鞭 燵をいただきました東京教育大学理学部地質学教室渡部景隆博士,また地球化学の立場か ら御意見,御指導をいただいた東京教育大学理学部化学教室松尾禎士博士はじめ三宅研究 室の諸氏に感謝する。なお,現地調査の便宜を与えられ,かつ地質柱状図・鉱泉資料など を提供された上毛天然ガス株式会社原市工場長金沢清作氏はじめ関係者に感謝の意を表す る。さらに採水,現地測定に協力いただいた本学教育学部学生菊地勝彦君に感謝する。

 なお,本研究の費用の一部は文部省科学研究費によるもので,記して謝意を表する。

1)高瀬一男:茨城大学教育学部紀要,No.13, p.129〜142(1963).

2)藤本治義・小林学:地質学雑誌,Vol.45, No.533 P.205〜226(1938).

3) 金原均二:地学雑誌,Vol。50, No。598

4)藤原健一一一一 e斉藤一雄:地下資源調査速報,No.19,(1946).

5)服部安蔵・益子安・甘露寺泰雄。佐藤幸二。細谷昇:磯部鉱泉調査告証書(本書中の一部は益  子安・佐藤幸二:温泉科学,VoL 7, No.2, P.68〜70(1956)に掲載されている。).

6)石和田靖章:石油技術協会誌,Vol。13, No。4, p.41〜50(1948).

7) 山県登。武藤覚・山県頴子。北爪良男:温泉科学,Vol。7, No.4, P.ユ20〜124(1956)t 8)武藤覚:口本化学雑誌,Vol.73, No.2, P.108〜112(1952).

9)本島公司:地質調査所日報,Vol.8, No.1, p.23〜40(1957).

10)太秦康光・那須義和:日本化学雑誌,Vol.81, No.3p.401〜404(1960).

11) 山県登・武藤覚・山県頴子・北爪良男:輪編科学,Vol。6, No.4, p.67〜69(1955)。

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