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茨城大学教育学部紀要(教育科学)47号(1998)75−82

チャート法による大学女子バレーボールおよび バスケットボール選手の身体組成評価

服部恒明*・飯泉栄子*・吉田 佳代*・佐藤  綾*・田中 茂穂*

(1997年10月13日受理)

Body Composition Assessment of Female College VoHeyba1貰and Basketb紐畳1 P皿ayers by a Chart Method

Komei HATToRl*, Eiko IlzuMI*, Kayo YosHIDA*, Aya SATo*and Shigeho TANAKA*

(Received October l3,1997)

緒  言

運動競技者はそれぞれの種目に応じて,形態や機i能の面で特徴が認められる。Tanner(1964)

は,オリンピックレベルのパフォーマンスについて言及し,その競技にふさわしい体格が備わっ ていないことは,十分なパフォーマンスの発揮を妨げる,と述べている。バレーボールやバスケ ットボール競技では,高身長者が有利であり,一流競技者は総じて高身長であるといえる。すな わち,一流のバレーボールやバスケットボール競技者の高身長は「適性者」が選抜された結果と いえる(服部,1996)。大学女子バレーボールやバスケットボール競技者に関しても,体格や身 体組成の面で特徴が認められることが報告されている(Kovaleski et al.,1980;Nowak et a互.,1988

;永井ら,1994)。本研究では従来の研究結果を補完する目的で,大学女子バレーボールやバスケ ットボール競技者の身体組成を「身体組成チャート法」(Hattori,1991)によって検討した。こ の方法は,BMIの算出法に準じ,体脂肪量,除脂肪量を身長の2乗で割ったものに10の4乗をか けた体脂肪量指数除脂肪量指数をもとめ,それぞれの指数をxおよびy軸に対応させ,グラフ上 にプロットするものである。これにより,従来の身体組成評価法では明らかにされなかった体格

(身長)の影響を除去した脂肪量および除脂肪量を定量化することができ,さらに身体組成を視 覚的に把握できる。また,各競技者の全身持久力を知る目的で最大酸素摂取量を測定し,その結 果と身体組成評価との関連性についても検討する。

*茨城大学教育学部保健体育講座(〒310−8512水戸市文京2丁目1番地;Department of Health and Physical

Bducation, Faculty of Education,1balaki University, Mito,310−8512 Japan)

(2)

研究対象と方法

研究対象は,関東大学女子バレーボール3部リーグに所属する大学女子バレーボール選手(平均 年齢19.9歳)13名,及び関東学生女子バスケットボール2部リーグに所属する同大学バスケット

ボール選手(平均年齢20.2歳)13名である。また,対照群として,日常特別な運動をおこなって いない同大学一般女子学生(平均年齢19.6歳)52名を用いた。測定は,茨城大学教育学部保健体 育講座生体測定室,実験室において1995年から1996年に実施した。

1.身体組成の評価

身体組成の測定は,密度法である水中体重秤量法により行った。肺残気量は酸素希釈法

(Wi1more,1969)を用いて,水中体重の測定直前に水中体重測定時の姿勢に近似する椅座位に て測定し,体密度を算出するときに要因として組み入れた。得られた体密度よりSiri(1956)の 式を用いて体脂肪率を算出し,ついで体脂肪量,除脂肪量を求めた。また,BMI,体脂肪量指数,

除脂肪量指数を算出した。

身体組成チャートによる身体組成の類型化はHattori(1991)に従った。それによると,女子の 体脂肪量指数が3.4未満なら少脂肪,3.4以上6.2以下なら中脂肪,6.2以上なら多脂肪と分類され,

除脂肪量指数では14.4未満なら少筋,14.4以上16.8以下なら中筋 16.8以上なら多筋と判定され

る。

2.最大酸素摂取量

測定は,漸増負荷法の中のAstrand法にほぼ準拠し,スピード漸増法により行った。すなわち,

傾斜4%に固定したトレッドミルを用い,初期速度は100〜140m/minに設定し,最初は3分,そ の後は2分毎に20m/min増速していき,9〜15分で疲労困憲に達するようにした。心拍数の測 定と心電図のモニターにはハートモニターを使用し,呼気ガスはエアロモニターにより30秒毎に 分析した。疲労困億の評価基準は山地(1992)に,体重当りの最大酸素摂取量によるエアロビッ

ク・パワーの評価は小林(1982)に従った。

3.統計処理

各測定項目について,グループ別に平均値と標準偏差を求めた。各グループ間における平均値 の差の検定は,対応のないt検定を用いて行い,有意水準は1%(P〈0.01),5%(P<0.05)と

した。

結  果

表1にバレーボール選手,バスケットボール選手および一般学生の体格,身体組成および最大酸 素摂取量の平均値と標準偏差,並びに2群間の平均値の有意差検定(t検定)の結果を示した。ま た図1には3群の平均値がグラフによって比較されている。バレーボール選手とバスケットボール 選手の比較では,最大酸素摂取量を除いて,有意差を示す項目はなく,両群の体格,身体組成は 比較的近似したものであることが窺える。しかし,競技者群と一般学生との比較では体脂肪量と 体脂肪量指数(両群),体脂肪率(バレーボール群)を除いて全ての項目で有意差を示している。

(3)

服部ほか:チャート法による大学女子バレーボール・バスケットボール選手の身体組成    77

平均値をみると,体脂肪率,体脂肪量,体脂肪量指数の体脂肪に関する項目は一般学生が運動者 群より大きい値を示しているが,他の項目は全て運動者群の平均値が大きい。身長,体重では,

バレーボール選手165.8cm,61.1kg,バスケットボール選手1645cm,57.5kg,一般学生15&5cm,

5L2kgと,バレーボール選手,バスケットボール選手とも一般学生に比べ顕著に高い値を示してい る(Pく0.Ol)。体脂肪率,体脂肪量及び体脂肪量指数は,バスケットボール選手が最も低い値を 示し,次いでバレーボール選手,一般学生の順であった。体脂肪率において,バスケットボール 選手(18..%)が一般学生(2Z2%)に比べ有意(Pくα01)に低い値を示した。

表1.大学女子バレーボール,バスケットボール選手および一般学生の基本統計結果

バレー選手(v)       バスケ選手(B)       一般学生(C)

@ (N・13) t一検定i) (N。13)       レ検定  (N.52)       t一検定

       (Vvs.B)      (Bv&P)      (Vvs.C)Mean  SD       Mean       S.D

年齢(yrs.)     19.9  1.1      2α2  1.2      19.6  0.7

身長(cm)     165.8  55   −  1645  5.9  ・・  158.5  60  ・・

体重(kg)     61.1  6。3  −   575  77  ・・  51.2  61  ・・

体脂肪率(%)    2α8  4.8  −   1&0  3.5  寧*  23.8  5.0  **

体脂肪量(kg)    12.8  3.7  −   1α5  3.3  _   123  3.6  _ 除脂肪量(kg)    48.3  46  −   472  49  零*  38.9  3.9  **

BMI(k創cm2)     222  1.4   −   2L2  1.7   **   20.3  2.0   **

体脂肪量指数2)

(kg!cm2)   4.6   12    −     3.9   H}   −     49   1.4    一 除脂肪量指数3)

(kg!cm2)   17.5   1.3    −    174   0.8   **    15.5   L2    *家

最大酸素摂取量

(mllk轡min)  5L4  死2   −    565   5.5   掌*   41.1  4.4   **

1)  **P<0.01,*P〈0。05

2)体脂肪量×104/身長2 3)除脂肪量×104/身長2

つぎに除脂肪量指数は,バレーボール選手が175,バスケットボール選手が174で近似してお り,両群とも一般学生の値155に比べ有意(P<0£1)に高かった。最大酸素摂取量は一般学生 と比べ,バレーボール選手およびバスケットボール選手の方が有意(P<O」001)に高い値を示し,

また,バレーボール選手よりバスケットボール選手の方が0.5%水準で高かった。

一方,トップ選手に関する報告(Puhl et al.,1982;池川ら,1988;西澤ら,1990;Bale,1991)と 比較すると,大学女子バレーボール選手の体格,身体組成項目の平均値は体脂肪率,体脂肪量,

BMI,体脂肪量指数を除いて,トップ選手より小さい(表2)。バスケットボールでもバレーボー ルの場合と同様に,体脂肪率を除いてトップ選手群の値が大学選手群より大きくなっている(表 3)。最大酸素摂取量ではバレーボール選手514(ml/kg/min)はトップ選手50.6と近似した 値に,大学バスケットボール選手の値(56.5)はトップ選手の値(512)よりも高かった。

図2は,バレーボール選手とバスケットボール選手および一般学生のデータを身体組成チャート にプロットしたものである。体脂肪量指数においては,運動競技者が一般学生に比してやや低い が,いずれも中脂肪のゾーンに位置している。一方,除脂肪量指数においてはバレーボールおよ びバスケットボール選手は大学選手,実業団選手とも多筋型に属している。バレーボール,バス

(4)

[コー般学生

身長

icm)

霧、,     尊管       静,鴎卿刎 瞭、楓・・軌 ・ 四 ・.惧 圏 バスケットボール選手

。 バレーボール選手

150   155   160   165   170

体重 ,     醸  聾      骨

BMI

識    _糞  管・      静

(㎏)  醒1

(㎏/cm2)

45    50    55    60    65 19    20    21    22    23

体脂肪率 体脂肪量

   戸i%) 囎縄 一  ・ 指数  縣・     …

(㎏/cm2)

0    10   20   30 OX)     2.0      40      6.0

体脂肪量 塵為 除脂肪量 .        糞静

(㎏) ・・一    . 指数  偲       静

(㎏/cm2)

0    5    10    15

14    15    16    17    18

除脂肪量 静  静 最大酸素 韓照   、       静静

(㎏)    ・・一   静 摂取量  閣      静静

(m1/㎏・min)

0    20    40    60

0    20    40    60

図1 大学女子バレーボール及びバスケットボール選手,一般学生の身体組成と最大酸素摂取量の比較

6

(**Pく0.Ol, *P<0.05)

(5)

服部ほか:チャート法による大学女子バレーボール・バスケットボール選手の身体組成    79

表2 女子バレーボール選手の体格,身体組成及び最大酸素摂取量の平均値の比較

本研究      日本実業団1)  米大学トップ選手2)

(N=13)        (N=15)        (N=15)

年齢(yr&)      199       20、1       2L6 身長(cm)       165.8       173。7       178.3 体重(kg)      61.1       66、1       7α5 体脂肪率(%)       2α8        18.O        l7.9 体脂肪量(kg)      128       12、 l       l2.7 除脂肪量(kg)      48.3       545       57・8

BMl(kg/cm2)      22.2        21.9         22.2

体脂肪量指数(kg/cm2)       46        40        40 除脂肪量指数(kg/cm2)       175       18.1       1&0 最大酸素摂取量(ml/k餅min)    514      50・6 1)池川ら,1988

2) Puhl et al.,1982

表3.女子バスケットボール選手の体格,身体組成及び最大酸素摂取量の平均値の比較

本研究     日本実業団り   英エリート選手2)

(N=13)        (N315)         (N=18)

年齢(yr帥      20.2       21.2       15.6 身長(cm)       164.5       168.2       170.6 体重(kg)       57.5       63.6       63.6 体脂肪率(%)       18。0        17.8        18.0 体脂肪量(kg)       105        11.4        1L5 除脂肪量(kg)      472       521       52.1 BMI(kg/cm2)      21.2        225         21.9 体脂肪量指数(kg/cm2)       3.9        4.0        4,0 除脂肪量指数(kg!cm2)      17.4       1&4       17.9 最大酸素摂取量(ml/kg・mln)    565       51.2

1)西澤ら,1990

2) Bale,1981

ケットボールのそれぞれで,大学選手群と実業団選手群は近似した値を示している。また実業団 選手のプロットは大学選手のプロットに比べ,多筋型の傾向が一層顕著であることがわかる。

(6)

(㎏/cm 2)

10 ●大学バレーボール

O実業団バレーボール

多 9 ◆大学バスケットボール

体 脂

◇実業団バスケットボール

肪8

■一般学生

脂   7 肪   6

@ 中@ 脂 5

ハ  肪4

●◆ O◇

指   3

数篇

肪1

012

13     14     15     16     17     18     19

少筋      中筋      多筋

除脂肪量指数 (㎏/cm 2)

図2女子バレーボール及びバスケットボール選手の身体組成チャート 区分線はHattori(1991)による

考  察

大学女子バレーボール及びバスケットボール選手が一般学生に比べ顕著に高い身長をもつこと はバレーボール,バスケットボール競技が高身長者に有利であることに起因する。このことは,

第10回ソウルアジア大会(1986年)に出場した我が国の女子ナショナルチーム選手の中で,バレー ボール選手が最高値の175.2cm,次いで陸上跳躍171.1cm,そしてバスケットボール選手は170.3cm であったことからもうかがえる(雨宮,1990)。すなわち,一一般大学の部活動レベルにおいても,

競技特性に応じた体格上の淘汰の機能が働き, 「適性集団」の形成がみられることを意味する。

この体格上の適性のうえに身体組成や機能面での適応的変化が重なり,種目ごとの身体的特徴が 形成される。ことに運動が脂肪組織や除脂肪組織に与える影響に関しては多くの報告によって明 かにされているが(Wilmore,1983;Ballor and Keesey,1991;Forbes,1991;Despres,1994;福永と 小林,1994),身体組成はトレーニング等によって変化しうるもので,競技力評価の面からも重要 である。運動選手では一般学生と比較して脂肪量は少なく,除脂肪量が多くなることが期待され る。なぜなら,除脂肪量の48.2〜54.4%は骨格筋からなり(Fobes&Lewis,1956),除脂肪量は 筋量を反映すると考えられるからである。しかし,今回の大学女子バレーボールおよびバスケッ

トボール選手の体脂肪量や体脂肪量指数では一般学生と有意な差が認められず,運動選手の身体 組成面の特徴は顕著な除脂肪量指数(筋量)の中に示されている。このことは「身体組成チャー

ト」によって明瞭にみることが出来る。一般学生と比べ競技者群のプロットは体脂肪量指数の軸

(7)

服部ほか:チャート法による大学女子バレーボール・バスケットボール選手の身体組成    81

(y軸)ではわずかに低くなるが,なお中脂肪のゾーンの中にある。これに対して除脂肪量指数の 軸(x軸)では明瞭に右方向にシフトしており,多筋型に位置している。この傾向は大学選手より 実業団選手でより鮮明となる。女子の体脂肪量が男子より豊富なことは,生物学的な必要度によ

るもので,運動競技者においても,体脂肪を一定量保持しようとする機構は男子より強く働く結 果,体格やパフォーマンスに違いがある集団間でも脂肪量の差は明瞭に示されなかったと考えら れる。これらの結果は,女子のバレーボールやバスケットボール競技者においては,脂肪量はパ フォーマンスに影響する重要因子とはなりえないことを意味するもので,脂肪を意識した減量に 過度に注意を向けるのではなく,筋の発達を視野にいれたトレーニングメニューが推奨されるこ

とを示唆している。

その際注意を要することはBMIの評価である。今回の結果から, BMIはバレーボール選手が 最も高く,次いでバスケットボール選手で,一般学生は最も低い値を示した。すなわち,BMIは 脂肪率の低い運動者群で大きい値を示すことから,肥満度の増大を意味するものではないことが わかる。むしろ脂肪組織と除脂肪組織の比重が違うため,体のサイズが同じであっても脂肪量が 多ければ体重は軽くBMIは低い値を示し,除脂肪量が多ければ体重は重くBMIは高い値を示すこ

とになる。これらの問題点は服部ら(1997)やGam et a1.(1986)によって指摘されていること であるが,今回の結果も,大学女子バレーボールおよびバスケットボール競技群では非運動者に 比べ筋量が多いことからBMIが大きくなったものと解釈される。すなわち運動者については,体 重に基づいて安易に身体組成を推定し,トレーニング等の参考として組み入れることは妥当でな

い。

大学女子バレーボール及びバスケットボール選手の最大酸素摂取量は,一般学生より有意に大 きく,小林(1982)によるとこれらの値は「非常に良い」と評価される。また実業団選手と比較 しても優れた値を示しているが,測定条件等の違いもあり,優劣を論じるのは困難である。いず れにせよ,大学女子選手レベルにおいても優れた有酸素的体力を持つと考えられ,パフォーマン スの一層の向上を目指すためには,除脂肪量指数に示される筋の発達をさらに促し,基礎体力を 基盤としながら技術的要因の改善に努めることが重要であろう。すなわち,技術的向上の一要因 として,大学女子バレーボール選手およびバスケットボール選手は,身体組成の面から除脂肪量 の一層の増加が求められるであろう。

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参照

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