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平成30年度修士論文要旨

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

平成30年度修士論文要旨

雑誌名 奈良教育大学国文 : 研究と教育 

巻 42

ページ 41‑44

発行年 2019‑03‑31

URL http://hdl.handle.net/10105/00013369

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平成三〇 年度修士論文要旨 井伏鱒二における初期歴史小説の実践

河 津 侑 真

本論では︑昭和年前後の井伏鱒二による歴史小説を扱い︑代状況と関連させながらその実験的手法について検討した︒第一章では︑行く記録﹂︵文学﹄一九三〇・三︶をた︒本章での分析に際して主に注目したのは︑本作が日式で書かれているという点である︒一日ずつの﹁現在﹂を書きいく日記は︑パーソナルなテクストであると同時に︑︿今・ここ﹀で起きる物事しか書き得ないという点において︑断片的なテクストであるといえる︒しかし︑敢えてこうした日記によって歴史小れることによっ︑﹁史実﹂の中への積極的な参加を促す作品の造が立ち現れていたのである︒第二章では︑﹃さざなみ軍記﹄︵河出書房一九三八・四︶を扱った︒本章では︑作中において公達の日記と︑架空の歴書﹁寿永記﹂とが並行して書き継がれているという構造に目した︒これ作中における小さな個人の生きられた︿歴史﹀と︑事実よりもプロットとストーリーが先行する︑作られた︿歴史﹀の象徴あると考えられる︒こうしたの構造と関連させて︑作品前後半における文体の変化を︑個の︿歴史﹀が大きな物語とし︿史﹀の存在によって︑抑圧されく過程であると意味づけた︒第三章では︑ヶ島大概記﹂︵﹃中央公論﹄一九三四・三︶を取 り上げた︒本章では︑本作品の発表と同時期に流した郷土研究土教育がら︑柳田国男の﹁青ヶ島還住﹁青大概記﹂との比較行った︒両作品を比すると︑青民の﹁還住﹂を輝かしい栄光として描き出したヶ島環住記﹂に対し﹁青ヶ島大概記﹂が︑島の未だ荒廃し様子や︑島民間の不和を積極的に描いていることが明らかになっ﹁青ヶ島大概記︿歴史﹀の要素を用いながらも同時代への高い批評性を持つ作品だったのである︒では︑森鷗外の歴史観と井伏の歴史説に対り方を比較し︑それが﹁現代﹂の時代状況やされるもので︒井伏のは︑︿歴と﹁現代﹂とを結ぶ試みとして固定的な︿歴史﹀という見方する流動的なテクストとしての︿歴史﹀の在り方を示すもであり︑︿史﹀や﹁史実﹂そのものの可能性を広げるもであったと結論づけた︒

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佐藤春 夫における︿犯罪 ﹀の修 辞 学

中 嶋 優 隆

は︑春夫の一九二〇︱三〇年代の文学実践について︿犯を切り口に考察したものである︒これまで︑探偵小説﹂を歴する文脈においてその名が挙げられてきたでは︑佐藤春夫の︿芸術﹀論を検討することで︑その﹁探偵﹂が︑必ずしも︿事件︱謎解き︱解決﹀を連想させるジャルでは︑﹁人間の真実﹂をく縮図として想定されていたことを明らかにした︒第一章では﹁指紋﹂︵一一八︶を取り上げ︑特に﹁無意識﹂という語によって観察者の主体性を断ち切り︑視覚に映るイメージに特化た描写は︑同時代に発達した︿映﹀の可能性を描写方法として応用したと考察した︒その上で︑︿狂気が語り手にまで反転していく﹁指紋﹂の物語は︑︿文学︿視覚﹀的イメージを表象することの限界が示されているのだ意味づけた︒第二章では﹁警笛﹂︵一九二六︱二八︶を取り上げ︑作家自身と作中の︿殺人者﹀が連続した地平に置かれ︑︿殺人﹀の心理的経緯が語られていることの意味を考察した︒このテクストの背景には︑心境小説についての価値論争があったのだが︑︿人﹀をモチーフとして作家がその心境を普遍化して描いていくとの仕みは︑この論争を止揚しいくために要請されたものだったと意 味づけた︒第三章で維納の殺人﹂︵一三二︶を取り上げ︑実際の陪審裁判に取材し︑﹁記録﹂という叙述形式を採ったことの意味を検討した︑﹁陪審法を背景に︑︿実﹀の位相をが読む対象から︑参画する対象へと転倒させる実践だったと言える︒そして︑この読書行為のなかで読経験するの︑︿事実﹀における理性や合理性の揺らぎであり︑それは翻って︑︿実﹀を合理的に切り取ろうとする姿勢への批評性をもでいると考た︒終章では︑﹁探偵小説﹂の文学としての位置を論じた先行論︑および春夫の︿批評家﹀としての側面をする指摘まえ︑︿犯探偵小説﹂の枠組はな近代文学﹂として表象することが︑作品に作家の内面をみるという﹁代文学の制性﹂を揺るがし︑作品において何を告白するかではなく︑読者が︿虚構世界﹀に参入するためのインターフェイスをいかに構築するか︑ということを問い直す契機となっていたのだと論じている︒

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- 1 -

尺度形容詞と名詞との共起傾向の分析

―主述関係と連体関係との比較を中心に―

劉 偉 艶

本研究では、主述関係での尺度形容詞と名詞との共起関係に関し分析を加えた服部匡の 一連の研究を基礎とし、そこで扱われていなかった連体関係での共起についてもコーパス を用いた調査をおこない、二つの関係での共起傾向のずれとして、どのようなものがある か、詳しく分析し報告をおこなった。2章では関連先行研究のまとめをおこない、3章で 調査結果を掲げ考察を記述している。

本研究が調査対象とした121 の名詞それぞれに関し、15の尺度形容詞の共起数を、主 述関係(「名詞ガ形容詞」)の場合と連体関係(「形容詞 名詞」)の場合とにわけて計数し た。その上で各名詞と 15 の形容詞とに関し、「名詞ガ形容詞」共起数と「形容詞 名詞」

共起数の合計を計算すると、その合計数が大きい名詞としてはどのようなものがあったか を報告した(3.1節)。また逆に各形容詞に関し、121 の名詞との共起数の合計が多い のは、どのようなものであったか、主述関係と連体関係の場合をわけて報告した(3.1 節)。次に、主述関係と連体関係の共起比率を分析した。まず名詞と尺度形容詞との共起 に関する全般的傾向として、主述関係か連体関係か、いずれに大きく 10 倍以上の比率で かたよりやすいかというと、主述関係、つまり「名詞ガ形容詞」での共起であった。また 連体関係での共起に比べ大きく主述関係での共起にかたよる名詞の数が多いのは大値語、

小値語のいずれであるかをみると、「薄い、少ない、浅い、小さい、低い、軽い」といっ た小値語のほうであり、逆に、連体関係での共起に大きくかたよる名詞の数が多いのは、

「濃い、強い、深い、大きな、高い、重い」といった大値語のほうであることがわかった

(3.2節)。以下、共起比率が㱣、つまり分母の共起数が 0 となる場合について3.3節 で分析し、3.4節では主述関係と連体関係とで共起傾向に大きなずれを見せた名詞と形 容詞はどのようなものであった考察し、最後に3.5節では名詞の意味とのかかわりにつ いて、意味が直接数量にかかわる名詞とそうでない名詞の二つのグループにわけ、全般的 傾向を分析した。今後はずれが生じるのはそもそもなぜかや本研究で明らかになったこと を日本語教育で生かしていくことが課題である。

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- 1 -

平成30年度修士論文要旨

日本語の語彙的受動文に関する研究

周 欣 然

本研究では、受身の意味を表す機能動詞「受ける」が「される」と置き換えられるかに 関して考察した。その結果、名詞が漢語の場合、「受ける」と結びつくものは「される」

に置き換えられる可能性が高いのに対し、「される」と結びつくものが「受ける」と結び つくことができるものに置き換えられる可能性が低い。名詞が和語の場合、「受ける」と 結びつくものが「される」と結びつくものに置き換えられる可能性と「される」と結びつ くものが「受ける」に置き換えられる可能性、どちらも低い。名詞が外来語の場合、「受 ける」と結びつくものが「される」に置き換えられる可能性は半分であるが、「される」

と結びつくものが「受ける」に置き換えられる可能性は非常に低いことが分かった。

また、本研究は「あう」と「許す」を中心に、機能動詞と結びつく名詞の特性に関する 研究を行った。その結果、「あう」という機能動詞はマイナスの意味を表すサ変名詞と結 びつきやすい一方、「許す」という機能動詞は中立の意味を表すサ変名詞と結びつきやす いことが分かった。また、「あう」と結びつくサ変名詞の中で名詞性が高いものは一番多 く現れ、動詞性と名詞性が近いものは一番少なく現れ、動詞性が高いものは中間であるの に対し、「許す」と結びつくサ変名詞については、名詞性が高いものが一番多く現れ、動 詞性の高いものは一番少なく現れ、動詞性と名詞性が近いものは中間であることが分かっ た。

また最後に、中国語を母語とする日本語学習者に役立つと考えられる研究について調査 し、日本語機能動詞に関するアンケート調査を行った。国際交流基金の『2012 年度日本 語教育機関調査結果概要』によると、世界で最も日本語学習者が多い国は中国で、1,046,490 人であった。中国語圏からの留学生は留学生総数の 7 割以上を占め、今後さらに増加す ると思われる。日本語の受動表現を既に学んだ中国人中上級学習者でも、さまざまなミス がある。受身は学習が難しい項目の一つとされている。受身を表す機能動詞はさらに難し いものといえる。今後、中国語を母語とする学習者がどのような場面においてどのような 誤りを犯すのか、またどうしてそのような誤りを犯すのか、に焦点を絞って、考察するこ とが日本語教育にも役立つだろう。

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参照

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