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幼児のカテゴリー化様式に及ぼす刺激の言語化及び 分離可能性の影響
著者 桜井 茂男, 桜井 登世子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 41
号 1
ページ 201‑207
発行年 1992‑11‑25
その他のタイトル The Effects of Stimulus Verbalization and Separability on Young Children's
Categorization
URL http://hdl.handle.net/10105/1758
幼児のカテゴリー化様式に及ぼす刺激の 言語化及び分離可能性の影響
桜 井 茂 男 ・ 桜 井 登世子 (奈良教育大学心理学教室) (桜井人間科学研究所)
(平成4年4月30日)
幼児のカテゴリ一化における全体的(holistic)一分析的(analytic)様式に関しては様々な研 究が行われてきた。全体的様式とは、刺激が未分化な全体として扱われ、全体的な類似性によっ てカテゴリー化されることであり、分析的様式とは、刺激が次元的な成分に分析されたセットと
して扱われ、共有する次元価によってカテゴリー化されることである。
Smith (1979)は、色と大きさの2次元が8価で変化する二等辺三角形を刺激として、カテゴ リ一般化課題を考案したO この課題では、グループAに属する3つの刺激とグループBに属す る3つの刺激を標本刺激としてブロック呈示し、それぞれが仲間であることを教えた後で、別に 用意した刺激を1枚ずつ呈示して、それがグループAに属するか、グループBに属するかを判 断させる。その結果、色や大きさの次元によっても刺激の全体的な類似性によってもカテゴリー 化できる課題では、幼児は全体的類似性によってカテゴリー化する者が多く、小学5年生は次元 によってカテゴリー化する者が多かった。
Kemler Nelson (1984)は、耳、髪、ひげ、鼻の4次元が変化する図式的な顔の絵事例の分 類学習課題を用いて、大学生と子どものカテゴリー化様式を査定した。大学生を被験者とした実 験1では、明確な学習を促す教示を与える意図条件とそのような教示を与えない偶発条件のもと で、学習事例を2つのカテゴリーに分類させ、その後でカテゴリー化が事例問の全体的類似性に よって行われたか、それとも1つの基準次元によって行われたかを調べるために、テスト事例を 呈示した。 10試行のテストの結果は、意図条件では次元によって分析的にカテゴリー化される 試行数が多く、偶発条件では全体的類似性によってカテゴリー化される試行数が多かった。この ように、偶発条件下では大人でも全体的様式でカテゴリー化を行っていることから、全体的様式 から分析的様式へという発達のもとにある要因として、 Kemler Nelson (1984)は学習‑の意 図の有無が関与していることを示唆している。
幼児と小学5年生を被験者とした実験4では、上述のようなテスト事例の呈示によってではな く、分類学習の難易度によってカテゴリー化様式を査定した Rosch & Mervis (1975)の族類 似の考えを取り入れて考案された族類似課題の学習が容易であれば、族類似によって全体的にカ テゴリー化したとみなされ、すべての事例に共通する1つの次元価をもつ基準属性課題の学習が 容易であれば、基準属性(次元)によって分析的にカテゴリー化したとみなされた。学習基準に 達した者の人数の割合は、幼児では族類似課題が70%、基準属性課題が58%であり、小学5年生 では同じ順に90%と92%であった。このように、族類似課題では年齢差がなかったが、基準属 性課題では幼児よりも小学5年生の学習基準達成者が明らかに多かった。このことから、
Kemler Nelson (1984)は、幼児は全体的にカテゴリー化を行い、小学5年生は分析的にカテ
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桜 井 茂 男・桜 井 登世子 ゴリー化を行うと主張した。
以上のように、大人の偶発条件の結果と幼児の結果はともに全体的様式が優勢であるという点 で一致しており、このことからKemler Nelson (1984)は、幼児が全体的様式を用いがちなの は学習の意図が乏しいことによるものと示唆している。 Sugimura&Inoue (1987)は、幼児に 対し5次元2価の図式的な顔刺激を用いて、規似性と基準次元の両方で分類できるルールを持ち、
類似性の高い構造のカテゴリ一般化課題を行った。その結果、正誤のフィードバックを与え、学 習の意図を強めた場合には分析的様式を用いる者が増加した。
本研究では、課題を始める前に標本事例がどんな次元で構成されているかを言語化させること により、幼児の課題へのサ」蝣、を高め、その言語化の影響について検討するO さらに、 2種類の刺 激を用いて、刺激の分類可能性がカテゴリー化様式にどのような影響を及ぼすのかについても考 察を加える。
Garner (1974、 1976、 1983)は、様々なタイプの刺激の本質と、これらの刺激がその処理に どのように影響を及ぼすかを明らかにした。彼によると、分離可能(separable)次元(たとえ ば、大きさと明るさ)は各次元が相互に分離して知覚され、独立に処理されるので、一方の次元 に注目し、他方の次元を無視するのは容易である。これに対し、統合(integral)次元(たとえ ば、色彩と明度)は各次元が統合して知覚されるので、選択的に一方の次元に注目し、他方の次 元を無視するのは困難である。 Garner (1974)によると、分離可能刺激は次元構造によって知 覚され、統合刺激は全体的類似性によって知覚される。
本研究では、対照刺激がなくても、事例を構成要素に分離しやすい図式的な顔刺激と、対照刺 激がないと、事例を構成要素に分離しにくい図形刺激を用いた。桜井・桜井(1990)は、幼児の カテゴリー化様式に及ぼす個人差の研究において、本研究で用いたのと同様の2種類の刺激を用 いたが、図形刺激の方が全体的様式を用いた者が多かった。この知見は、 Garner (1974)の見 解と一致している。
しかし、課遍を始める前の言語化により、課題への関心が高められ、分類の意図が強まるので あれば、全体的様式を用いる者が減少し、分析的様式を用いる者が増加すると思われる。本研究 では、人工的な場面であることは否めないが、日常場面において幼児がカテゴリーの等価性を兄 いだしていく場面に類似していると思われるカテゴリ一般化課題を用いた。
方 法
実験計画 言語化(有、無)×刺激(顔、図形)の要因計画が用いられた。いずれも被験者間要 因であった。
被験者 幼稚園年長児80名であり、平均年齢は6:2 (5:8‑6:7)であった。年齢と男 女別を考慮し、 4群に分けられた。
刺激 耳の大きさ(大・小)、前髪の分け目(左・右)、両目の間隔(広・狭)、鼻の形(三 角・四角)、ロの大きさ(大・小)の5次元2価で変化する図式的な顔と、大きさ(大・小)、位 置(たて・ななめ)、形(九・三角)、色(白・黒)、数(2つ・3つ)の5次元が2価で変化す る図形。
課題 カテゴリ‑1の典型価を1、カテゴリー0の典型価を0としたとき、図1は本研究で用
いた課題のカテゴリー構造を示している。
ed
Cl h U
a
プロトタイプ事例 標本事例
テスト事例
1
1H H
H H
1
1 ^D i‑H i‑I t‑I
i‑I CD i‑( i‑I
蝣 i‑I O i‑H
i‑t i‑1 t‑I CD
1 1 1
0 1 1 1 11
ed
Cb
a 0000
0 i‑H CD CD CD
CD i‑I CD CD
O O r H O O O O r
‑ 1 o o o
o 0 0 0 0
1
図1 カテゴリー構造
(a)標本事例 カテゴリ‑1では価lを4つ持っ4事例、カテゴリー0では価0を4つ持っ 4事例で構成されている。図が示すように、 1つの基準次元(たとえばa次元)においてカテ ゴリ‑ 1では全ての事例が価1、カテゴリ‑Oでは全ての事例が価0であるので、この基準次元 によってカテゴリー1とカテゴリー0に分類できる。また、カテゴリ‑1は価1を16、カテゴ
リー0は価0を16持っているので、この典型価による類似性によってもカテゴリ‑1とカテゴ リー0に分類できる。
(b)テスト事例 カテゴリ一化様式をテストするために、 2つの事例が用いられた 01111を カテゴリ‑1に、 10000をカテゴリー0に分類したときは全体的類似性によってカテゴリー化し、
全体的様式を用いたと判定する。 01111をカテゴリー0に、 10000をカテゴリ‑1に分類したと きは基準次元によってカテゴリー化し、分析的様式を用いたと判定する 01111と10000を同一 カテゴリーに分類した場合は、分析的様式、全体的様式のいずれでもないと判定し、不定とする。
手続き 図2、図3に示すように、カテゴリ‑1とカテゴリー0の4つの標本事例を各々枠で 囲み左右に並べ、下の中央にテスト事例を呈示した。枠で囲まれた4つの顔(図形)は仲間であ り、下の顔(図形)はどちらの仲間と恩うかを指で指し示すように教示した。言語化有群には課
図2 カテゴリ一般化課題(顔)
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○ ▲
○ ▲
△ △
△
△ △
□
図3 カテゴリ一般化課題(図形)
題を始める前に、カテゴリ‑1とカテゴリ‑Oの顔(図形)のプロトタイプ事例を対呈示し、ど こが異なるかを言語化させた。課題は5(基準次元)× 2(テスト事例)の合計10枚を冊子にまと め、被験者ペースで進められた。
結 果
表1は、幼児が用いたカテゴリー化様式を言語化の有無および刺激の種燥別にまとめたもので ある。標本値で見ると、言語化については、分析的様式は言語化無群の方が多く用いており、全 体的様式は言語化有群の方が多く用いていた。不定に関しては、言語化の有無による差異は見ら れなかった。刺激については、分析的様式は差異が見られず、全体的様式は図形刺激の方が多く 用いられ、不定は顔刺激の方が多かった。
各々の群について期待値に関しx2検定を行ったところ、図形刺激は言語化有群(Z(2サ‑
19.48, p<.001)、言語化無群(*!,‑ 10.22, p<.01)とも期待値との有意な差が認められた。
顔刺激は、言語化有群では有意な傾向が見られたが(x(22)‑ 5.00, p<.10)、言語化無群では有 意差がなく(x(2)‑ 1‑36, n.s.)、期待値と同様のカテゴリー化様式を用いていた。
表1言語化の有無および刺激の種類別にまとめたカテゴリー化様式(%)
カテゴリー化様式 刺 激 言語化有無有無
oo o o c‑ o
<y
>
oo c o
CM CM CM CM o
o o o M* C O O LC LO
"
^‑
^ CO
o o o o
蝣
*
C
O
t
‑
t
‑
CM OJ CO CO
刺激を込みにして言語化の有無について2 (言語化)× 3 (カテゴリー化様式)のx2検定を行っ たところ、両者間に有意差は見られなかった。
言語化の有無を込みにして刺激に関して2(刺激)× 3(カテゴリー化様式)のx2検定を行った ところ、 xc0‑ 10‑14, p<.01となり、図形刺激と顔刺激では用いられるカテゴリー化様式が有 意に異なっていることが認められた。そこで、標本値に差が見られる全体的様式と不定について、
それぞれx2検定を行った。全体的様式についてはx&‑7.39, ♪<.01となり、図形刺激におい て用いられやすかった。不定も、 zci>‑8.64,/>く.01となり、顔刺激の方が多かった。
さらに、刺激および言語化の両方が影響を及ぼしていると思われる全体的様式に関して角変換 法による2(刺激)×2(言語化)の分散分析を行ったO その結果、刺激の主効果のみが‑2 ‑ 7.45,♪<.01, oc0 ‑8.21で有意であった。
% m
本研究の結果は、課題を始める前に各事例がどんな構成要素で成り立っているかを言語化させ ることが、街着ではないけれども、幼児の用いるカテゴリー化様式に影響を及ぼしていることを 示した。予想に反して、いずれの群も全体的様式者が多く、分析的様式は言語化無群の方が用い
る者が多く、全体的様式は言語化有群の方が用いやすかった。このことは以下3つの点に関係す ると考えられる。まず、 1つ目の点は本研究においてカテゴリ一般化課題を用いたことに関係が あると考えられる。人工的であるとはいえ、カテゴリ一般化課題は日常場面において、カテゴ リーの等価性を兄いだし概念を獲得していく場面と類似している Rosch (1973)が示唆するよ うに、自然概念においてはカテゴリーの典型性に基づく類似性による認知が行われる。したがっ て、カテゴリ一般化課題では類似性による全体的様式を用いることが最適分類方略であると患わ れる。
第2点目に考えられることは、事例の各構成要素が独立したものとして認知され、特定の要素 が顕著になるのではなく、相互に干渉しあったのではないかと考えられる。言語化有群の幼児は、
全員が各事例の構成要素を正しく言語化できたので、幼児も大人と同様に刺激が構成要素に分化 した状態での全体的様式を用いていたとも考えられる。
最後に、幼児は情報を持ってはいるが、それを使うことができなかったということである。課 題の前の言語化は、 2つのカテゴリーのプロトタイプ事例を対呈示し、どこが異なるかを認知さ せるものであったo しかし、カテゴリー般化課題は4事例が1つのカテゴリーとしてブロック呈 示されるので、各事例に対して持っている情報を使って1つ1つ分析していくのは心的エネル
ギーを要するため、直感に頼ってしまったとも考えられる。本研究では、言語化を‑度しか行わ なかったので、課題を始める前に前訓練的に何度も行った方が言語化の影響がもっと明らかに なったかもしれない。
つぎに刺激に関しては、桜井・桜井(1990)と同様に、図形刺激の方が全体的様式を用いた者
が多く、不定は顔刺激の方が多かった。図2と図3に示したように、顔刺激の方は対照刺激がな
くても、耳、口、鼻、目、髪といった構成要素に分離できるが、図形刺激の方はテスト事例でみ
た場合、黒い丸が3つ並んでいるくらいにしか分離できない。したがって、 Garner (1974)が
示唆するように、図形刺激において全体的様式が用いられやすかったのは、刺激の分離可能性に
帰因すると思われる。
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期待値に関するx2検定の結果、図形刺激において期待値とは有意に異なり、全体的様式が最 も用いられやすく、顔刺激においては言語化有群においてのみ、同様の傾向が見られた。このこ とは、顔刺激に関しては全体的様式を用いにくいため、言語化によって情報を得た方が、それら を関係させて全体的様式を用いるようになる、ということを示唆するものである。
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幼児のカテゴリー化における全体的様式、分析的様式に及ぼす刺激の言語化の有無と刺激の分 離可能性の影響について検討した. 5次元2価の図式的な顔と図形で構成されたカテゴリー般化 課題を用いた。課題を始める前に、言語化有群には刺激がどのような構成要素で成り立っている かを言語化させた。
その結果、言語化有群の幼児は、全員が各事例の構成要素を正しく言語化できたにもかかわら ず、分析的様式よりも全体的様式を多く用いていた。その原因として、日常場面に類似したカテ ゴリ一般化課題を用いたこと、言語化情報を相互に関係させたこと、言語化情報を使えなかった こと、が考えられた。
刺激については、図形刺激の方が顔刺激よりも全体的様式が用いられやすく、不定は図形刺激 よりも顔刺激の方が多かった。このことから、刺激の分離可能性がカテゴリー化様式に影響を及 ぼすことが明らかになった。
引 用 文 献
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桜井茂男・桜井登世子1990 幼児のカテゴリー化様式に及ぼす人物画描写能力と刺激の影響 奈良教育大 学紀要, 39, 181‑188.
Smith, L. B. 1979 Perceptual development and category generalization. Child Development, 50, 705 ‑ 715.
Sugimura, T., & Inoue, T. 1987 Role of classification training on children's categorization. Psychol‑
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The Effects of Stimulus Verbalization and Separability on Young Children's Categorization
Shigeo Sakurai
(Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630,加an)
gfiTSI Toyoko Sakurai
(Sakurai Institute of Human Sciences, Nara 630, Japan) (Received April 30, 1992)
This study was conducted to clear the effects of stimulus verbalization and separabi‑
lity on categorization mode in young children. Eighty 5‑ and 6‑years‑old children were showed the category generalization tasks of schematic faces or geometoric figures with five dimensions varying in two values and required to calssify the test exemplars.
Before starting this task, verbalization groups were required to say components of the stimuli. As a result, verbalization groups could say components of the stimulus correct‑
ly, but they used holistic mode rather than analytic mode. It seems that this result is due to using the category generalization tasks, relating stimulus components each other, or not being able to use verbalizing information about stimulus components. Geometric figure test exemplars were calsshed by holistic mode rather than shematic face test ex‑
emplars. This result suggests that integral stimuli may be likely to be classhed by hoh‑
stic mode.