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よりかなり外れた出題であると考えられる 分野別では 政治史の知識 理解を問う設問が 26 問と大きな割合を占め 文化史が4 問 経済が3 問で 政治史が増加した 地域別では 非ヨーロッパ世界は 13 問 ヨーロッパ アメリカ関連が 20 問である なかでも中国とヨーロッパに関わる設問が多かった 昨年

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世界史A、世界史B

第2 教育研究団体の意見・評価

 ○ 全国歴史教育研究協議会

(代表者 山 崎   茂  会員数 約16, 200名) TEL 042-364-8411 1 は じ め に 今年度の大学入試センター試験(以下「センター試験」という。)の分析を終えて、ここ数年来 の傾向を継承し、問題の内容やレベルともに教科書に準拠しており、日常の授業でほぼ対応できる ものになっていることは、センター試験の本質を踏まえたものとして有り難く受け止めている。 学力の3要素として、学校教育法第30条では「基礎的な知識及び技能」「思考力・判断力・表現 その他の能力」「主体的に学習に取り組む態度」を挙げている。これらを高等学校「地理・歴史」 に当てはめてみるならば、歴史的事象を時間軸や空間軸など多元的な観点を踏まえた視点から検討 したり、複数の事象間の関連や因果関係を考察したりすること、歴史的事象についての様々な解釈 を比較してどちらにより客観性や妥当性があるかを考えたりすること、つまり歴史的思考力を涵かん養よう することであると言えよう。 センター試験では、基礎的な知識の確認はなされているものの、思考力・判断力の確認、すなわ ち歴史的思考力を発揮して解答に至るような問題という点においては不十分であると思われる。出 題者の方々が意欲的にテーマ設定やリード文作成をしてくださっていることは、問題を見ただけで 十分に読み取れる。しかしながら、例年指摘させていただいているように、解答するに当たって は、ほとんどの設問がリード文や図によらず、設問の文だけを読み、世界史の知識・理解のみで対 処できるようになっている点が改善されていない点が残念である。設問も一貫してその大問のテー マに沿うとか、史料や地図、写真、図や表などを読み取る中で解答の鍵が引き出されるような思考 力を問う設問とか、リード文の全文をきちんと読まなければ解答できないなどの仕掛けを用意して いただくことを、今後とも是非御検討いただきたい。マークシート方式という制約があるにして も、もっと作問に工夫を凝らす余地はあるのではないだろうか。センター試験が、大学入試問題の スタンダードたるべく、更なる御検討いただければ有り難い。 以下、今回のセンター試験「世界史A」と「世界史B」の試験問題について、限られた紙面の中 ではあるが、御検討の一助となることを願って、本協議会としての意見と評価を記す。 2 試験問題の程度・設問数・配点・形式等 ⑴ 「世界史A」について 昨年度同様、「世界史B」との共通問題はなく、大問3題、小問33問であった。 時代別の出題は、正答の選択肢から判断すると、前近代が12問、近代が9問、現代(高等学校 学習指導要領「現代の世界と日本」に該当する部分)が12問、うち昨年は5問だった第二次世界 大戦後史が2問であった。昨年より前近代の出題が大幅に増加し、近代の出題が減り、戦後史は減 少した。現代部分の出題がかなり減少し、「近現代史を中心とする」高等学校学習指導要領の目標

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パ世界は13問、ヨーロッパ・アメリカ関連が20問である。なかでも中国とヨーロッパに関わる設 問が多かった。昨年と比較すると、非ヨーロッパ世界が減少した。 問題形式では、正しい文を選ぶ設問が14問、誤った文を選ぶ設問が4問、選択肢の文の一部に 波線部がある問題は出題されず、地名と地図上の位置の組合せが1問、人名や地名と文の組合せが 2問、リード文中や設問で新たに掲げられた文の空欄に適語を補充する設問が4問、二つの文の正 誤の組合せが5問、年表中の位置を選択する設問が1問、語句選択が2問、年代整序が2問であっ た。6択問題は2問出題された。地図が1点使用されたが、図版やグラフなどの統計資料や史料は 用いられなかった。 誤った文を選ぶ設問と二つの文の正誤の組合せが増加したので、受験者はやや解答しにくかった かもしれない。 第1問 「歴史上の交易と交通・輸送について」 Aは、ユーラシア大陸各地域の文明圏を結ぶ陸上及び海上交易路がテーマである。 問1は、東南アジアの歴史や文化についての4択問題である。標準的な出題。ただし、1 の スコータイ朝が本文に記載されている教科書は少ない。問2は、海上交易活動について述べた 文章中の二つの空欄に入れる語に組合せの設問である。高等学校学習指導要領の「⑴オ ユー ラシアの交流圏」に関わる出題と考えられる。文章中に「中国南部の」とあり、日常の学習で 地図を利用し、空間的な把握を心掛けているかを測る良問である。問3は、10世紀以降のイ スラーム世界についての4択問題である。3 のサラーフ=アッディーンがアイユーブ朝を開い たことは、「世界史A」では詳細すぎる。正答の4 の誤りが明白であるので、受験者は解答可 能であったと考えられるが、ほとんどの受験者が目に触れたことがない事柄を選択肢にするこ とはなるべく避けていただきたい。問4はモンゴル帝国についての4択問題である。モンゴル 帝国を学習する場合は地図を活用することが多いと推測できる。1 、 3 、 4 の選択肢とも地図 を活用して空間把握をしているとより解答しやすかったであろう。これも良問である。 Bは、ヨーロッパの河川と運河がテーマである。 問5は、8~15世紀のヨーロッパについての4択問題。時代の特色をおおまかに把握して いるかを図る良問である。ただし、4 は「清教徒革命」としか記載がない教科書もあるので、 今後は配慮をお願いしたい。問6は、世界史上の交易や交通についての4択問題。3 の正答 「玄奘」が陸路でインドに赴いたことは意外なことに、記載されている教科書は大変少ないよ うである。前高等学校学習指導要領であれば、「⑵諸文明の接触と交流 イ8世紀の世界」に 関連させて記載されていたように記憶するが、現行の教科書には記載が少ないとなると、正答 とするのは不適切であったのではないか。1 の道路(「王の道」)はほとんど教科書では地図上 にしか記載されておらず、本文には書かれていない。前近代の部分で、授業でも細かく取り扱 いにくい項目である。一方、4 は現代史の内容で、記載されている教科書も多い。この選択肢 とともに、スエズ運河開通に関わることや大陸横断鉄道開通などと組み合わせて近現代に重き を置いた選択肢となっていれば良かった。問7は、18世紀の文化または思想についての4択 問題。「世界史A」の特性を押さえた選択肢となっており、好感が持てる。問8は、飛行機が

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世界史A、世界史B 使用された出来事について2文正誤問題。Aについては中学でも扱い、またほとんどの教科書 にピカソの『ゲルニカ』が記載されているので、正誤は容易に判定できたであろう。ただし、 Bについて「ベルリン封鎖」は記載されていても、意外なことに対抗手段として「物資の空 輸」が行われたことに言及がない教科書もある。内容は現代史に関するもので、世界史Aとし て大変好ましいが、2文正誤問題は4択問題と異なり、1文、1文を正確に判定しなくてはな らない。教科書のみで学習する受験者もいると思われるので、是非配慮をお願いしたい。 Cは、鉄道がテーマである。 問9は、文章中の空欄に入る人名を答える設問。標準的な出題。ただし、正答の3 セシル= ローズが記載されていない教科書もあった。問10は、鉄道についての2文正誤問題。標準的 な出題と考えるが、Bはバグダード鉄道については記載されていても、「敷設権」に言及され ていない教科書もあった。上述したように、2文正誤問題は文中の1語ずつ正誤を判定しなく てはならない。難易度が高まるので、出題数を減らしていただけると良いのではないか。問 11は、1830年に工業都市マンチェスターと鉄道で結ばれた都市の名とその地図上の位置の組 合せを答える問題。地図上にマンチェスターが記載されており、ほとんどの教科書が産業革命 の項目で記載しているイギリスの地図を学習しておれば容易に解答できる。良問である。 第1問は前近代(高等学校学習指導要領の「⑴諸地域世界と交流圏」)に関わる設問が多 かった。リード文では交易や交通・輸送について多様な視点で書かれており、好ましい。ま た、設問はバラエティに富んでいた。 第2問 「世界史上の政治体制について」 Aは中国で議会制の実現を指向した宋教仁がテーマである。 問1は、20世紀前半の出来事についての4択問題である。2 の間宮林蔵は教科書に記載がな いが、中学校の歴史で学習する内容である。3 の朴正熙は記載されている教科書が少ないが、 正答の1 が明白であるので、解答可能であろう。また、露土戦争については「ロシア=トルコ 戦争」としか記載していない教科書が存在するので、今後は配慮していただきたい。問2は、 清朝の皇帝についての4択問題である。2 多くの教科書では選択肢にあるように、「改革開放」 と書かれていない。受験者はささいなことでも試験場で戸惑ってしまうので、教科書での記載 について確認をしていただきたかった。3 多くの教科書には勘合貿易については記載があるが、 開始した皇帝については記載がない。また、後漢の皇帝、光武帝はほとんどの教科書に記載が ない。昨年も指摘したことであるが、受験者は「初見」に弱い。正答ではない選択肢について もなるべく多くの教科書に記載されている内容で作問をお願いしたい。そして、「4 宣統帝は、 清朝最後の皇帝であった。」が正答であるが、その他の選択肢同様、皇帝の事績についての選 択肢の方が適切ではないだろうか。問3は、憲法大綱を公布した年表上の時期を選択する問題 である。年表に記載されている事項の年代がやや近すぎる感がしないではない。戸惑った受験 者もいることだろう。しかし、天津条約以後、日清戦争を経て中国の弱体化が明白となり、義 和団事件以後、光緒新政が始まっていくという経過を把握し、かつ「武昌蜂起」が辛亥革命の 始まりであることを理解していれば解答できる。やや難しいが、歴史の流れを把握しているか どうかを測る良問と考えられる。 Bはイランがテーマである。

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体制の変化についての年代整序である。標準的な出題である。問6は、イスラーム教とイス ラーム文化についての4択問題である。正答の『ラーマーヤナ』は多くの教科書で記載しての で、受験者は解答できたであろう。ただし、ウンマについては記載されていない教科書もあ る。問7は、1979年のイラン革命を指導した人物の名を選択する問題である。標準的な出題 であり、モサデグ(モサッデク)とサダトは記載されていない教科書もあるが、正答の1 ホメ イニについては多くの教科書で記載しているので、受験者は解答できたであろう。 Cは戦間期ドイツがテーマである。 問9は、パリ講和会議についての2文正誤問題である。Aはウィーン会議、Bはロカルノ条 約に関する基本的な内容で、パリ講和会議を含め、国際関係における転換点についての理解を 問う良問である。問10は、戦間期のヨーロッパ各国の政治についての4択問題である。正答 の2 ヴァイマル共和国については多くの教科書に記載されており、受験者は解答可能であった と考えられるが、意外にも戦間期におけるイギリス労働党内閣成立、及びユーゴスラヴィアの 独自の社会主義路線については言及がない教科書もあった。「世界史A」の作問の難しさを感 じた。問11は、第二次世界大戦についての4択問題である。選択肢も練られており、標準的 な出題である。 第2問の宋教仁を扱ったAのリード文は生徒の興味・関心を高めるものであると感じた。近 現代史の出題が多く、「世界史A」の趣旨に沿っている。 第3問 世界史上で起こった反乱について Aは唐代の反乱がテーマである。 問1は、リード文の空欄に対する適語補充の問題である。正答の2 安史の乱も記載されてい ない教科書があり、1 黄巾の乱、 2 三藩の乱も記載がない教科書がある。適語補充はその語の みで判定しなくてはならないので、多くの教科書に記載されている事項を問うていただきた い。また、各社が創意工夫している「世界史A」の教科書でも前近代すなわち、高等学校学習 指導要領の「⑴諸地域世界と交流圏」については扱う時代・事項も実に多様である。適語補充 の出題は各社ともかなり似通った記述になる「⑶現代の世界と日本」ならばよいが、前近代に ついてはなるべく避けていただきたいと考える。問2は、唐の文化についての2文正誤問題で ある。Aの「杜甫」が本文に記載されている教科書はほとんどない。Bの「雲崗の石窟」につ いても、図版として記載されているものは「竜門の石窟」もあり、言及がない教科書がある。 他教科での学習成果が問われる出題になっており、残念である。問3は、9世紀に起こった出 来事についての4択問題である。標準的な出題。出来事の起こった時代をおおまかに捉えてい るかを測る良問と考える。ただし、4 ガーナ王国の崩壊については記載している教科書は少な く、その他の選択肢に比べてやや違和感を覚える。問4は、唐の滅亡後に東アジア世界で起 こった出来事についての4択問題である。1 遼は記載していても、「契丹族」については言及 されていない教科書があった。2 新羅は記載していても、「統一」については言及されていな い教科書があった。3 南詔は地図や図版のみで本文中に記載されていない教科書があった。 「世界史B」であれば、唐と周辺諸国の関係性に注目して学習していたかを測る良問と考えら

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世界史A、世界史B れるが、先にも述べたように、高等学校学習指導要領における「世界史A」の内容に即した出 題を心掛けていただきたい。 Bはネーデルラントにおける反乱がテーマである。問5は、14世紀から15世紀にかけて起 こった出来事についての4択問題である。正答の3 教会大分裂(大シスマ)について記載され ている教科書は大変少ないのではないか。また、1 の「聖像禁止令」についても、記述内容全 体から「聖像禁止令」を述べていても、この用語自体を記載している教科書も少ない。2 イギ リス国教会の設立と3 イエズス会の組織が16世紀の宗教改革に関わること考え、 1 聖像禁止令 は東西教会の分離前であるはずと考えれば、解答可能かもしれない。しかし、上述したよう に、受験者は一般的に「初見」に大変弱いものである。「世界史B」としての出題なら良問で あろうが、是非、「世界史A」の趣旨に沿った出題を心掛けていただきたい。問6は、歴史上 のクーデタや革命についての2文正誤問題である。標準的な出題。第1問の問5の選択肢4 で もイギリス革命が扱われているので、なるべく選択肢が重ならないようにしていただきたい が、「世界史A」の特性を考えると、致し方なかったと考える。問7は、ハプスブルク家につ いての4択問題である。1 マリア=テレジア、マリ=アントワネットそれぞれについては記載 されていても、二人が母娘関係であることは、記載がないか、囲み記事にあるぐらいである。 これを正答とするのは不適切なのではないか。また、3 のカール5世はほとんど記載されてお らず、またウィーン包囲は「第2次」と書かれていない場合が多い。4 のオーストリア継承戦 争も意外なことに記載されている教科書が少ない。繰り返して申し上げるが、世界史Aの趣旨 に沿った出題を心掛けていただきたい。問8は、ネーデルラントの反乱に関連する文章中の空 欄補充の組合せである。アのフェリペ2世がカトリックを強制した経緯に全く触れていない教 科書がある。また、イのウェストファリア条約は記載されていても、ネーデルラント連邦共和 国の独立がこの条約で承認されたことに言及している教科書は少ない。「世界史A」の趣旨に 沿った出題を重ねてお願いする。 Cはロシアにおける反乱がテーマである。 問9は、リード文中の空欄補充である。正統の3 プガチョフは記載されていない教科書もあ る。1 エリツィン、 2 フルシチョフ、 4 トロツキーともほとんどの教科書に記載されているの で、消去法で解答は可能であるが、本文の趣旨は20世紀のロシア人の理解を問うことであっ たのだろうか。問10は、ピョートル1世の事績についての4択問題である。正答の4 サンク ト=ペテルブルクについてはピョートル1世が建設したことについて言及がない教科書があ る。また、サンクト=ペテルブルクの表記であるが、「ペテルブルク」としか表記していない 教科書が多いので、今後は配慮していただきたい。受験者は異なるものと判断してものもいる かもしれない。2 のロシアがクリミア半島を奪ったことは直接言及しているものは少なく、ロ シアの対外政策について記載されている内容と記載されている地図などから把握するしかない 内容である。「世界史B」ならば発展的な学習を行っているかどうかを測る良問であろうが、 「世界史A」としてはいかがなものか。問11は、1905年に始まるロシア第一革命前後の出来事 についての年代整序である。標準的な出題であり、cは「日露戦争開戦時のロシア皇帝はニコ ライ2世」であることを把握していれば、解答可能であろうが、「世界史A」の受験者として は戸惑ったのではないか。いたずらに受験者を年代暗記に走らせる懸念がある。

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最後に全体を通して。今年は前近代に関わる出題が多く、高等学校学習指導要領の「現代の世界 と日本」に該当する内容の出題が昨年に比して少なめであった。ほとんどの教科書に掲載されてい る事項を正答とするように工夫なさっている問題も多かった。しかし、残念なことにまだ一部、教 科書本文にほとんど記載されていない事項を正答する問題があった。これはやはり避けていただき たい。また、人物にかかわる出題が多かったが、「世界史A」の教科書では案外、コラムでは取り 上げられていても、本文には人物が取り上げられていないことが多い。 何度もお願いしていることであるが、「世界史A」を作問される先生には高等学校学習指導要領 を熟読の上、各社の「世界史A」の教科書を精査して上で作問に当たっていただきたい。「世界史 A」での受験者は「世界史A」専用の参考書などがほぼないなかで、教科書のみで学習する場合が 多いと考えられる。一方、「世界史A」の教科書は、「世界史B」に比べて各社の特色が色濃くでて おり、記述内容は様々であり、取り上げられている事項も異なる。その上、単位数の少ない「世界 史A」の作問は大変困難であることは承知しているが、是非とも「世界史A」で受験する生徒の立 場に立った問題をお願いしたい。 ⑵ 「世界史B」について 今年度も、例年どおり大問が4問、高等学校学習指導要領を反映して大問ごとにテーマ設定がな されている。各大問とも3問から成る三つの小問に分かれ配点が25点、計36問で100点であり、 ここ数年間の出題傾向を踏襲し、「世界史A」との共通問題はなかった。 出題を時代別に見ると、正答となる選択肢から判断するに、古代に関わるものが6問、中世に関 わるものが4問、近世に関わるものが5問、近代に関わるものが10問、現代に関わるものが7問、 古代と中世に関わるものが1問、古代と近世に関わるものが3問であった。また地域別に見ると、 東アジアに関わるものが9問、東南アジアに関わるものが3問、南アジアに関わるものが2問、内 陸アジアに関わるものが1問、西アジアに関わるものが2問、ヨーロッパに関わるものが12問、 アフリカに関わるものが1問、南アメリカに関わるものが1問、東アジアとヨーロッパに関わるも のが4問、アフリカと南アジアに関わるものが1問であった。 出題形式で見ると、正しい語句を選ぶものが4問、文章の正誤文を選ぶものが16問(うち誤文 を選ぶものが6問)、穴埋め語句の組合せを問うものが3問、穴埋め語句と関連する人物の組合せ を選ぶものが1問、年代整序が3問、文章の正誤の組合せを問うものが6問、地域とその位置を問 う地図問題が1問、地名とその位置を問う地図問題が1問、年表で時期を問うものが1問であっ た。 第1問 「世界史における死の文化」 Aでは、前漢及び後漢の副葬品・壁画に関連して出題されている。問1は、世界史上の法律 に関する誤文選択問題。誤りが明確であり判断しやすい。問2は、焼き物の写真を見て唐三彩 の名称を選ばせるもの。教科書や資料集などによく掲載されているもので、判断しやすい。問 3は、オリシス神とシヴァ神について書かれたA・B二つの文章の正誤の組合せを問う問題。 Aのオリシス神は「死者の書」に関連して授業でもよく扱われているものと思うが、迷う生徒

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世界史A、世界史B は多いだろう。 Bでは、宗教の開祖、指導者、殉教者らの墓に関連して出題されている。問4は、文章中の 文章中の二つの空欄を埋める問題。標準的な問題であるが、問題文をきちんと読まないと正解 にいたらない。問5は兵馬俑とカタコンベについて書かれたA・B二つの文章の正誤の組合せ を問う問題。問6は、トルコ系の国家・王朝に関する誤文選択問題。いずれも標準的な問題で ある。 Cでは、天国と地獄のイメージに関連して出題されている。問7は、「最後の審判」の思想 に影響を与えた宗教を問う問題。やや易。問8はフィレンツェに関する正文選択問題。誤りが 明確であり判断しやすい。問9は、ルネサンス期の文学に関する年代整序問題。『愚神礼賛』 と『ドン=キホーテ』の成立年を覚えている受験者は少ないと思うが、エラスムスからルター、 セルバンテスからレパントの海戦を想起できれば解答は難しくない。同時代史的理解力を問う 良問である。 第2問「世界史上の国境」 Aでは、ロシアの東方進出とそれに伴う清との国境問題に関連して出題されている。問1 は、キャフタ条約と当時の清の皇帝名の組合せを問う問題。定番の問題であるが、この形式の 出題は近年なかった。問2は、シベリアに関する誤文選択問題。これも標準的な問題。問3 は、日本とロシアの関係史を問う正文選択問題。ここ数年、新高等学校学習指導要領を受け て、世界史における日本に関する出題が必ず出題されているが、この傾向を踏襲する問題。選 択肢はいずれも中学校教科書で扱われている内容であるが、教師の側が省かずにきちんと教え ているかが問われる問題である。 Bでは、第一次世界大戦後のヨーロッパの国境に関連して出題されている。問4は、ポーラ ンドの現代史を問う正誤組合せ問題。問5は、ドイツの現代史を問う誤文選択問題。問6は、 国境の変更や領土の帰属に関する正文選択問題。いずれも標準的な問題である。 Cでは、イギリス・フランスの進出に伴う清朝との国境問題に関連して出題されている。問 7は、年表を用いて、中越戦争の時期を問う問題。年表で用いられている事項はそれぞれ関連 性がありよく練られているが、中越戦争は受験者にとってはやや細かい事項かもしれない。問 8は、中国と日本の朝貢関係に関する正誤組合せの標準的な問題。問9は、清朝の藩部支配に 関する機関を問う標準的な問題。 第3問「世界史上の経済政策」 Aでは、漢の経済政策に関連して出題されている。問1は、紀元前2世紀後半の出来事を問 う正文選択問題。いずれの選択肢も時期がはっきりしており判断しやすい。問2は、ヴェトナ ム地域に建設された国を問う問題。誤りの選択肢がはっきりとしており、判断しやすい。問3 は、漢の武帝の経済政策に関する正文選択問題。これも誤りの選択肢がはっきりとしている。 Bでは、16世紀における銀の流通に関連して出題されている。問4は、ポルトガルのアジ ア貿易の拠点の位置とその地名の組合せを問う、地図を用いた正語選択問題。問2は、ポトシ 銀山を問う問題。問6は、中国の税制の順番を問う年代整序問題。いずれも定番の標準的な問 題。 Cでは、19世紀以降のヨーロッパにおける自由貿易体制から保護貿易政策の台頭に関連し

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である。 第4問「世界史上の言語」 Aでは、言文一致に関連して出題されている。問1は、19世紀の出来事を問う誤文選択問 題。誤りがはっきりしており判断しやすい。問2は、アジアにおける民族文字の成立を問う標 準的な年代整序問題。受験者にとってはやや苦手とするところか。問3は、1910年代の中国・ 朝鮮の言文一致運動と啓蒙運動に関する2語穴埋めの組合せ問題。標準的な問題である。 Bでは、南アジアの言語に関連して出題されている。問4は、文章中の2語の穴埋めの組合 せ問題。基本的な知識を問う問題であるが、受験者にとってはやや苦手とするところか。問5 は、南アジアの言語に関する文についての正誤選択問題。ムガル帝国の公用語がペルシア語で あることを問うのはやや難しい。問6は、1950年代の出来事を問う正文選択問題。正解ははっ きりしているが、判断に苦しむ受験者は多かっただろう。 Cでは、アフリカーンス語に関連して出題されている。問7は、古代ギリシアとルターに関 する文の正誤組合せ問題。判断は容易。問8は、「未回収のイタリア」に含まれる地域とその 位置の組合せを問う地図を用いた組合せを問う標準的な問題。問9は、アフリカの歴史に関す る正文選択問題。やや難しいか。 3 ま  と  め 例年指摘しているように、入試問題に求められているのは、落とすための問題ではなく、受験者 の高等学校における学習活動や成果が評価されるような問題であり、本稿におけるセンター試験問 題の評価もかかる視点によるものである。今年度も昨年度同様、高等学校学習指導要領や教科書の 記述量に比例した問題の配分に十分配慮された出題であることと、出題の形式・内容について、全 体的に奇をてらうことなく受験者に対して親切で、言わば「定番」とされる問題が出題されてお り、「入試問題のスタンダード」という意味合いにおいても大いに評価できる。次年度以降も同様 に留意していただきたい。リード文もよく練られており、受験者に対して歴史的な考え方を喚起す るような文章になっていて好ましい。しかしながら、第1問のCの写真が問題に直結せず単なる参 考・興味付けになってしまっていることは、残念である。配点に関しては、例年通り3点の問題が 28問、2点の問題が8問であった。この8問の形式・難易度は一定ではなく、3点の問題との軽 重が明確でない。 今年度の「世界史B」の平均は60. 93点で昨年に比べ0. 47点下がった。おそらく出題に際して60 点前後の平均点を想定されていると思われるので、出題者の意図どおりの結果であろうし、問題の 検討からも妥当な結果と言える。しかしながら、他教科、特に「日本史B」との平均点の差につい ては御配慮を願いたい。受験者の実態として、「世界史B」の場合、能動的・積極的に選択した者 が多いのに対し、「日本史B」の場合、消去法的に選択した者が少なからずいるということが言え よう。いわゆる「高校の難易度」と世界史受験者の数は比例するというのが現場の実感である。そ れにもかかわらず、「日本史B」の平均点が「世界史B」のそれより7点高いということは大いに 問題である。なお、今年度の「世界史B」の受験者は91, 247人で、昨年に比べ約3, 000人近く増加

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世界史A、世界史B した。これは「地理歴史」と「公民」から2教科を選択するという変更に伴う影響かと思われる。 今年度の「世界史B」の問題は、高等学校における学習活動や成果が反映された良問と評価でき る。出題者の方々に敬意を表したい。しかしながら、他教科との平均点の差によって、結果的に受 験に際して受験者の「学力」が結果的に正当に評価されないことは、極めて残念である。大学入試 センターにおいては、教科の平均点がばらつかないように、最大限の御配慮を願いたい。

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