• 検索結果がありません。

面接場面における面接者の言語的応答に対する相談者の印象評定―不安特性および不安への対処のあり方の視点から― [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "面接場面における面接者の言語的応答に対する相談者の印象評定―不安特性および不安への対処のあり方の視点から― [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)面接場面における面接者の言語的応答に対する相談者の印象評定 ―不安特性および不安への対処のあり方の視点から― キーワード:架空の面接場面,言語的応答,対処方略,不安 人間共生システム専攻 岩男 芙美 Ⅰ. 問題・目的. 動を減じるという知見が得られているが、加えて永井ら. 一人では解決できないような悩みを抱え続けることは、. (2007)は、相談者が問題に対して“自らなんとかしたい思. 不適応につながる可能性があり、何らかの他者からの援助. い”を持つとき援助要請が減じることを指摘し、また笠原. 獲得が必要と考えられる(永井,2007)。ただし、援助を受け. (2002)もカウンセリングを受ける援助対象として学生を捉. ることがある個人にとって肯定的な体験となることを示す. えるのではなく、自主的な解決志向があるためにカウンセ. 研究がある(久田,1987 など)一方で、それが否定的な体験と. リングを受けないでいられるという研究視点も必要となる. なることを示す研究もある(菊島,2003 など)。そのため、援. と指摘している。これらのことを踏まえると、何らかの脅. 助者はこの両者の可能性を認識しておく必要がある。. 威状態を抱えつつも、そこに自ら対処することが可能であ. 相談行動は、「個人が問題の解決の必要性があり、もし他. ると認知される時、ある個人の援助の捉え方は異なると考. 者が時間、労力、ある種の資源を費やしてくれるのなら問. えられる。こうした人々にとっての援助における体験はい. 題が解決、軽減するようなもので、その必要のある個人が. かなるものになり得るかに関する検討が必要とされよう。. その他者に対して直接的に援助を要請する行動. 援助を受けるという行為は、援助場面において肯定的体. (DePaulo,1983)」と定義される、援助要請行動の一形態と捉. 験・否定的体験の両者を持たせうる。しかもその体験には、. えられる。近年、客観的には援助が必要と思われるにもか. 援助者側の要因と、相談者側の要因の双方が関連している. かわらず、援助を求めない個人に対して、どう援助を提供. ことが考えられる。. していくかという視点から、①デモクラティック要因、②. 援助場面には様々な形態が想定されるが、本研究では、. ネットワーク変数(ソーシャルサポートや事前の援助体験の. 面接者・相談者が 1 対 1 で行う個別面接の場面を想定する。. 有無など)、③パーソナリティ、④個人が抱えている問題の. 「行動的問題および現実生活における中心的な問題を抱え、. 深刻さとの関連など様々な要因から、援助要請のあり方に. 援助を求めて来談した個人」を相談者、「カウンセリングや. ついて検討が進められている。. メンタルヘルスサービスの専門家」を面接者とし、「相談者. 中神(2011)は、専門的援助者への援助に関しては、事前の. の問題を解決するために面接者との間で専門的心理的援助. 被援助体験がある人の方が援助を求めやすいと指摘したが、. が行われる場」を面接場面とする。. 実際の援助の質に関しては検討されていない。一方で、援. その上で、相談者の個人特性(不安と不安への対処)と面接. 助が肯定的・否定的の両効果を持つのは、実際の援助場面. 者の言語的応答によって、面接場面における相談者の肯定. での援助者のかかわりの中に、相談者にとって肯定的・否. 的・否定的な捉え方に違いが生じると考え、以下の仮説に. 定的に捉えられるものがあるためと考えられる。また、ロ. について検証することを目的とする。. ーレンス(2011)が援助過程の初期に確立された良好な協力. 仮説 1:面接場面の肯定的・否定的な評価は、相談者の不安. 関係が重要と指摘したように、特に援助初期の段階におい. 特性、不安への対処及び面接者の応答様式によって異なる. て、相談者が援助場面で肯定的な体験を積むことで、より. 仮説 2:不安に対して、なんとか処理しようと自分なりの認. スムーズに援助における協力関係が確立されるであろう。. 知的・行動的努力をしているにもかかわらず、面接場面に. 本研究では、 援助場面での援助者のかかわりの1つとして、. 臨むと、面接を否定的に捉える。. 言語的応答について取り扱うこととする。 また、同じように提供される援助であっても、個人によ. Ⅲ. 方法. って捉え方が異なる。援助に対する捉え方に影響を及ぼす. 1.調査協力者 A・B 大学 2~4 年生 154 名(男性 92 名,女. 要因に、ここでは相談者のパーソナリティを取り上げて検. 性 60 名,不明 2 名)。平均年齢は 20.1 歳(SD=0.77)、132 名. 討する。これまでに、援助不安(木村ら,2004)が援助要請行. が有効回答であった。 1.

(2) 2.調査時期 2011 年 11 月下旬~12 月中旬. 「 不 安 へ の 対 処 」 下 位 尺 度 標 準 化 得 点. 3.調査手続き 個別自記記入形式の質問紙調査 4.調査内容 質問紙の構成および内容は Table1 に表記 Table 1 質問紙の構成と内容 1 . フェイスシート. 性別・所属学部・学年・年齢. 2 . 新版STAI‐Y 特性不安尺度. 肥野田(2000)によるもの(4件法・20項目)。 不安存在尺度(anxiety-present scale:P尺度と不安不在尺 度(anxiety-abesent scale:A尺度)からなり、得点が高い ほど高不安であることを示す。. 3 . 不安への対処尺度. 尾関(1993)の14項目に新たに6項目を加えて作成した(4件 法・20項目). 4 . 悩み事相談場面のスクリプト①. .60 .40 .20 .00. 回避・逃避方略. -.20. 対話方略. -.40. とらわれ方略. -.60. 問題焦点方略. -.80 -1.00 -1.20. 積極的対処型. 楽観的対処型. 対処放棄型. Fig 1 「不安への対処」のクラスター. 3.不安への対処と不安特性との関連. ※詳細は以下に記述する。. 不安への対処型を独立変数、STAI-Y の P、A、および特. 玉瀬ら(1996)、福島ら(2007)を元に作成した(4件法・25項 目)。『Aさんは、この相談を通して、どのような気持ちに なったとあなたは思いますか?』と教示の上、各項目への 回答を求めた。. 5 . 相談場面評価尺度①. .80. 性不安尺度得点を従属変数とした一要因分散分析を行った。. 6 . 悩み事相談場面のスクリプト②. 同上. P 尺度(F(2,129)=6.71,p<.01)、特性不安尺度(F(2,129)=4.30,p<.05)に. 7 . 相談場面評価尺度②. 同上. 有意差が見られ、多重比較(Tukey)の結果、以下が得られた (Table4)。A 尺度に有意差はなかった。. スクリプトは、本研究で独自に作成し臨床心理士による 検討を経た。<友人関係><生活>に関する悩み事につい. Table4 不安への対処のクラスターごとの不安得点. て A(相談者)が B(面接者)に相談する 7 ターンの会話からな. ①積極的対処型(n =52)②楽観的対処型(n =49) ③対処放棄型(n =31) Mean SD Mean SD Mean SD P(不安存在) 24.23 6.21 20.33 4.93 23.16 4.89 A(不安不在) 23.94 4.54 23.57 4.97 24.10 3.82 特性不安合計 48.17 7.81 43.90 7.47 47.26 7.30 a) MeanおよびSDはSTAI-Y各尺度得点によるもの。 ***:p <.01, **:p <.05, +:p <.10. る場面。B の言語的応答は Table2 に示すもので、A の発言 は統制された。悩み事(2)×応答(3)の 6 種類のスクリプトの うち、1 人 2 種類がランダムに提示された。. F値 多重比較 6.71 *** ②<①③ .15 n.s. - 4.30 ** ①<②. これらの結果から、「積極的対処型」は、不安への感受性. Table 2 面接者の言語的応答の定義 承認 相談者自身の考えや行動を積極的に承認する. が高いものの、多様な対処を有し状況に応じた適切な対応. 解決. 面接者側から積極的に解決策を提案する. をなしうる認知構造の柔軟性(安田ら,2000)のある比較. 整理. 相談者自身の考えが明確になるように促す. 的適応的な群と解釈された。「楽観的対処型」は、全体的に 低不安で、ものごとを楽観的に捉える傾向にある群と解釈. Ⅳ. 結果と考察. された。「対処放棄型」は、自分なりの対処を行うものの、. 1.不安への対処の構造. そこに回避への偏りがあり、森田(2011)の言う積極性と回. 避性のバランスが得られていない。高不安であるがそれ. 「不安への対処」尺度の因子分析(重みなし最小二乗法・プ ロマックス回転)の結果、 【回避・逃避】 、 【対話】 、 【とらわれ】 、. を積極的に解消しようとすることが少ない群と解釈された。. 【問題焦点】から構成されると解釈された (Table3)。. 4.面接場面に対する捉え方の構造 「面接場面の捉え方」尺度の因子分析(主因子法・プロマッ. Table3 「不安への対処」の因子分析:回転後の因子負荷量 項目内容. 13 6 4 8 11 7 17 3 16 15 19 9 12. Ⅰ 回避・逃避(α=.71) こんなこともあると思ってあきらめる .74 時の過ぎるのにまかせる .70 なるようになれと思う .61 大した問題ではないと考える .44 対話(α=.64) 自分のおかれた状況を人に聞いてもらう -.06 人に問題解決に協力してくれるよう頼む .07 自分の気持ちを言葉にする -.06 自分で自分を励ます .12 とらわれ(α=.67) 気がくじけて、どうしようもないと思う .19 いらいらして過ごす -.27 そのことばかりを考える .00 問題焦点(α=.57) 問題の原因を見つけようとする -.06 情報を集める .08 Ⅰ Ⅱ Ⅲ. Ⅱ. Ⅲ. クス回転)の結果、「未来に対する肯定的な捉え方」、「相談に. Ⅳ. -.08 -.08 .11 .13. .00 .09 -.05 -.06. -.01 .09 -.02 -.09. .63 .61 .53 .37. .12 -.05 .05 -.04. -.03 -.06 .11 .16. -.05 .00 .13. .82 .59 .53. .00 .03 -.08. -.03 .21 .15. -.01 -.03 .04 .34. .89 .41 .03 .35 .01. 対する否定的な捉え方」、「相談に対する肯定的な捉え方」か ら構成されると解釈された (Table5)。 Table5 「面接場面に対する捉え方」の因子分析:回転後の負荷量 Ⅰ 9 3 17 2 10 14 16 13 12 4 8. 2.不安への対処方略による分類. 23 24 5 22 20 19. 「不安への対処」尺度の因子下位尺度平均点によるクラス ター分析(Word 法)を行い「積極的対処型」、 「楽観的対処型」、 「対処放棄型」の 3 群を得た (Fig1)。 2. 未来に対する肯定的な捉え方(α =.82) 努力してみようという気持ちが沸いてきた 問題が解決しそうだ 問題に向き合う気力が沸いてきた また相談したいと思った 気持ちの整理ができた 話してすっきりした Bの言うとおりにしようと思った 相談に対する否定的な捉え方(α =.74) Bは専門家であることを誇示していた 不自然だった 話を聞いてくれなかった Bに見定められていた 現在に対する肯定的な捉え方(α =.80) 自分の気持ちを大切にしたいと思った 楽観的な気持ちになった 話しやすかった 私(A)のことを真剣に考えてくれた 感じ方や見方が広がった 一緒に考えてくれた Ⅰ Ⅱ. Ⅱ. Ⅲ. .82 .78 .71 .65 .56 .54 .48. .00 .11 -.04 .01 -.04 -.08 .22. -.09 -.10 .05 .06 .02 .06 -.02. .07 -.20 .01 .19. .79 .66 .65 .53. .09 .11 -.05 -.11. -.16 .20 .12 .32 .30 .18. .06 .32 -.18 -.11 -.02 -.22 -.33. .83 .51 .45 .43 .43 .39 .71 -.16.

(3) 5.不安への対処と面接者の応答による面接場面に対する捉え方 不安への対処型および面接者の応答を独立変数、「面接場 面の捉え方」尺度の各因子下位尺度平均点を従属変数とす る二要因分散分析を行った(Table7)。 生活に関する面接場面:「相談への否定的な捉え方」に関し、 不安への対処の主効果が有意であった(F(2,123)=3.95,p<.05)。 多重比較(Tukey)の結果、「楽観的対処型」よりも「対処放棄 型」の方が高かった(p<.05)(Fig2)。 「未来への肯定的な捉え方」および「相談への肯定的な捉. Fig4 友人に関する面接場面に対する相談への肯定的な捉え方. え方」に有意差はなかった。. Table7 対処のあり方と応答による「面接場面の捉え方」平均の比較. 友人に関する面接場面:「未来への肯定的な捉え方」におい. 承認 解決 整理 承認 解決 整理 承認 解決 整理 承認 解決 整理. N 23 14 15 23 14 15 23 14 15 24 16 12. 積極的対処型 M 2.61 2.74 2.65 2.05 2.07 1.68 2.63 2.99 2.69 2.71 2.57 2.77. SD .56 .45 .46 .69 .80 .43 .56 .39 .68 .57 .58 .53. N 17 10 22 17 10 22 17 10 22 19 16 14. 楽観的対処型 M 2.52 2.76 2.44 1.90 1.60 1.98 2.47 2.88 2.53 2.33 2.90 2.24. SD .60 .79 .61 .57 .47 .57 .47 .58 .43 .60 .38 .49. N 11 8 12 11 8 12 11 8 12 10 11 10. 対処放棄型 M 2.69 2.57 2.54 2.25 2.19 2.19 2.77 2.54 2.54 2.74 2.56 2.79. SD .45 .43 .32 .51 .46 .48 .51 .35 .33 .37 .41 .41. 承認 解決 整理 承認 解決 整理. 24 16 12 24 16 12. 2.15 1.88 1.77 2.63 2.99 2.69. .70 .68 .82 .56 .39 .68. 19 16 14 19 16 14. 1.99 1.69 1.68 2.47 2.88 2.53. .64 .57 .47 .47 .58 .43. 10 11 10 10 11 10. 1.85 2.27 1.75 2.77 2.54 2.54. .53 .47 .44 .51 .35 .33. 悩み事 内容. て、交互作用効果が有意であった(F(2,123)=4.14,p<.01)。単純. 未来への肯定的 な捉え方. 主効果の検定の結果、不安への対処の効果が有意であり、 「楽観的対処型」において「承認」および「整理」より「解決」の. 生活. 方が高かった(p<.01)。応答の効果が有意であり、「承認」に. 相談への否定的 な捉え方 相談への肯定的 な捉え方. おいて、「楽観的対処型」よりも「積極的対処型」の方が高か った(p<.05)。また、「整理」において、「楽観的対処型」より. 未来への肯定的 な捉え方. も「積極的対処型」の方が高かった(p<.05)(Fig3)。. 友人. 「相談への肯定的な捉え方」に関して、交互作用が有意で あった (F(4,123)=3.60,p<.05)。不安への対処の単純主効果の. 相談への否定的 な捉え方 相談への肯定的 な捉え方. 検定の結果、「積極的対処型」において、「解決」よりも「承認」. 主効果 クラスター 応答. 交互作用 F値. .40. .72. .41. 1.34**. .20. .55. 1.26. 1.88. 1.35. 2.24. .34. 4.14**. .98. 1.93. 1.40. .41. .12. 3.60**. ***p <.01 **p <.05 +p <.10. の方が、「解決」よりも「整理」の方が高かった(p<.05)。「楽観. 生活に関する面接場面:否定的な側面の捉え方にのみ、. 的対処型」において、「承認」よりも「解決」の方が高かった. 不安への対処による差があることが明らかになった。本. (p<.05)。また、応答の単純主効果の検定の結果、「承認」に. 田ら(2008)は、中学生を対象に援助評価と学校適応との. おいて、「楽観的対処型」よりも「積極的対処型」の方が高か. 関連について検討しており、肯定的評価より否定的評価. った(p<.10)。「整理」において、「積極的対処型」よりも「楽観. と学校適応との関連の方が強いことを示したが、個人の. 的対処型」の方が高かった(p<.05)(Fig4)。. 適応という視点からこの面接場面を捉えるとき、この結 果には重要な意味があると考えられる。対処を用いるこ. 「相談への否定的な捉え方」に有意差はなかった。. と少ない人よりも、用いる対処が「回避・逃避」に偏って いる人のほうが、生活に関する面接場面において、相談 を否定的に捉えやすかった。しかも、面接者の応答のが いかなるものであっても変わらずに、面接場面に対して 否定的な評価をしていた。ここに従来の研究で回避・逃 避型が“非適応的”と捉えられ(尾関ら,1991)、森田(2011) でも問題焦点型とのバランスが得られない回避型方略は 適応的とみなされなかった理由の一端が示されているよ. Fig 2 生活に関する面接場面に対する相談への否定的な捉え方. うに思われる。すなわち、本研究において、「対処放棄型」 とされた群は、脅威に対して積極的な対処をすることは ないが、回避という方法で自分なりに何らかの認知的・ 行動的努力を行っていた。しかしそこで援助的に振舞わ れることで否定的な評価を高めやすい群であることが考 えられる(仮説 2)。しかも、回避・逃避によって不安状態 から抜け出せるわけでもなく、「とらわれ」ていく傾向を 有する。北川ら(1995)は、ストレスレベルの高い時に援 助的な言動を受け続けると、かえって精神的健康を低下. Fig3 友人に関する面接場面に対する未来への肯定的な捉え方. 3.

(4) させることを示したが、こうしたサポートのネガティブ. た者が、こうした回避に偏ったタイプの対処を用いやすい. な効果に、より当てはまりやすい群と考えられた。. 人であった場合に、もともと援助抑制的であったのに、相. 友人に関する面接場面:肯定的な側面の捉え方にのみ、. 談を受けてますます否定的に捉えるようになり、次の援助. 不安への対処による差があった。「積極的対処型」の人々. につながりにくい状況が生じうることが推測された。この. は、相談者自身の考えや行動を明確化したり、積極的意. タイプへの援助のあり方に関しては、今後さらなる検証の. 味を与えたりするような応答によって、「楽観的対処型」. 必要性があるだろう。しかしながら、どういったアプロー. の人々は、面接者側から積極的に解決策を提案されるこ. チが有効になりそうか、研究手法上の問題から今回は検討. とで、未来や相談に対する肯定的な捉え方を高めること. を行うことができなかった。. が明らかになった。「楽観的対処型」の人々は、他者から. ただし、同じく何らかの形で「不安への対処」を行ってい. の与えられた解決策を適用することに対する構えや抵抗. ることが推測される「積極的対処型」の人々に関しては、各. 感が比較的低く、 自分自身での対処することが少ない分、. 面接場面を際立って否定的に捉えることはなかった。これ. 周囲のサポートを受け入れやすいことが考えられる。反. らの結果から仮説は修正され、脅威に対して何らかの対処. 対に「積極的対処型」の人々は、不安が高いものの、様々. を自ら行えると認知する個人は、そのあり方のバランスが. な対処を有し自分自身で脅威場面に対応していくことが. 偏っており、常に同じ対処をとりがちである場合には、相. できる。だからこそ、他者から新たな解決策を提案され. 談に対して否定的に捉えがちになるが、複数の対処方略を. 続けることで、解決を迫られる感覚を持ったり、情報過. 柔軟に用いることができる場合には、相談に対して否定的. 多で受け入れがたいと評価されたりするかもしれない。. に捉えることが少ないことが考えられる。. 一方で、相談者自身の行動や考えを引き出し、整理し、. また、友人に関する面接場面において、「積極的対処型」. 肯定的なフィードバックが得られることが、侵入的でな. の対処を行う人々は、自らのこれまでの行動や態度、思考. く自身の良いところを認められ支えられる感覚を抱き、. について振り返り、認められる応答について、肯定的に捉. 肯定的な評価へつながったのではないか。. えがちである。「解決」は、対処を多く用いないものの低不 安で、それにとらわれにくい「楽観的対処型」にとっては肯. Ⅴ. まとめ. 定的に捉えられるが、「積極的対処型」にはそうではない。. 本研究の目的は、以下の仮説を検証することであった。. このことが、各タイプの特徴から考察された。. 仮説 1:「面接場面の肯定的・否定的な評価は、相談者の不. ある個人の不安や不安への対処のあり方は、面接場面に. 安特性、不安への対処及び面接者の応答様式によって異な. おいて面接者の応答による面接場面への捉え方や、面接=. る」に関しては、一部支持された。. 援助の場への捉え方そのものに影響をもたらす可能性があ. 仮説 2:「不安に対して、なんとか処理しようと自分なりの. る。今後、相談者がどういった対処のあり方を有するかに. 認知的・行動的努力をしているにもかかわらず、面接場面. 着目して、面接者がそのかかわりを変化させるという視点. に置かれなければならない場合に、面接に対して否定的な. での知見の積重ねは、面接場面を相談者にとってより肯定. 捉え方をする」に関して一部支持された。. 的な体験の場とするために、有益であると考えられた。. まず、「不安に対して、なんとか処理しようと自分なりの. 実際の臨床場面への適用の困難性、尺度の信頼性、およ. 認知的・行動的努力」である「不安への対処」にどのようなタ. び調査実施上の刺激提示のあり方や質問紙の内容に関して、. イプが存在するか検証したところ、「積極的対処型」、「楽観. 今後の課題とされた。. 的対処型」および「対処放棄型」の3つのタイプが想定された。 このうち何らかの形で、より「不安への対処」を行っている. Ⅵ. 引用文献. のは、「積極的対処型」および「対処放棄型」であった。不安. 本田真大・新井邦二郎 2008 中学生の悩みの経験,援助要請. の高さに関しては両型に差はないが、「積極的対処型」は. 行動,援助評価が学校適応に与える影響 学校心理学研究. 様々な対処を行う群であり、「対処放棄型」は、対処方略が. 8(1), 49-58. 回避・逃避に偏った群であった。面接者の応答との関連を. ローレンス・M.ブラマー・ジンジャー マクドナルド 2011. 検証したところ、「対処放棄型」で、生活に関する面接場面. 対人援助のプロセスとスキル: 関係性を通した心の支援. を否定的に捉えられやすかった。このことに関して、援助. 堀越勝・大江悠樹・新明一星・藤原健志訳 金子書房. のネガティブな効果を生じやすい対処型としての「対処放. 森田美登里 2011 回避型対処方略の適応性をもたらす要. 棄型」の可能性が示唆された。例えば、 “本当は、相談など. 因に関する研究--気晴らしの用い方に注目して 心理臨床. 受けたくはないのに、周囲から言われて仕方なく”来談し. 学研究 29(2), 153-164 4.

(5)

参照

関連したドキュメント

直接応答の場合と同様に、間接応答も一義的に Yes-response と No-response と に分かれる。先述のように、yes/no 疑問文の間接応答は

このように,先行研究において日・中両母語話

ところで、ドイツでは、目的が明確に定められている制度的場面において、接触の開始

保安業務に係る技術的能力を証する書面 (保安業務区分ごとの算定式及び結果) 1 保安業務資格者の数 (1)

接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式

接続対象計画差対応補給電力量は,30分ごとの接続対象電力量がその 30分における接続対象計画電力量を上回る場合に,30分ごとに,次の式

認知症診断前後の、空白の期間における心理面・生活面への早期からの

の会計処理に関する当面の取扱い 第1四半期連結会計期間より,「連結 財務諸表作成における在外子会社の会計