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エンジンと Z ペラ推進器が船舶の騒音に及ぼす影響エンジンと Z ペラ推進器が船舶の騒音に及ぼす影響 * 及びその低減手法の評価に関する研究 * 及びその低減手法の評価に関する研究 ** ** 田代大和井桁正 ** 樹田代大和井桁正樹鹿窪 *** 勇太三浦信之鹿窪勇太三浦信之 Evaluation

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*原稿受付 平成26年 12月 15日. **正会員 新潟原動機株式会社 (太田市西新町125-1). *** 新潟原動機株式会社 (太田市西新町125-1). 1. はじめに 近年,IMO 船内騒音規制の策定や水中放射雑音のガ イドライン化など,船内騒音・水中音に関する静音化 の要求は以前にも増して強くなっている.船舶に搭載 される様々な機器の中でもエンジンと推進器は主要な 騒音源と考えられ,静音化の実現には効果的な低騒音 化対策が必要であり,そのためにはこれらの騒音源の 定量的な評価が必要である. 本論文では,エンジン(主機関ならびに発電機関) とダクトつきアジマススラスタ(以下Z ペラ推進器) の騒音源としての大小関係について,ハイブリッドタ グボートでの計測試験から考察した.次に,エンジン の騒音源としての起振力の定量的な評価と,Z ペラ推 進器キャビテーション音低減に取り組んだので,その 結果を報告する. 2. ハイブリッドタグボート計測試験 2.1 試験内容 ㈱ウィングマリタイムサービス殿のタグボート「翼」 は,当社 6L28HX 主機関,6NSD 発電機関,ZP-31 型Z ペラ推進器と推進モータ,バッテリーを組み合わ せて航行可能なハイブリッドタグボートであり,省エ ネルギー性や静粛性が確認されている1) また,船舶の騒音評価に着目した場合,エンジンと Z ペラを独立に運転できることから各機器の騒音への 影響度合いの評価が可能と考えられる.そこで,実船 にて振動騒音計測を実施し,船内騒音を評価した. 表1 に「翼」の主要目を,図 1 に船内配置および振 動騒音計測位置を示す.船尾推進器室のZ ペラ推進器 は主機直結または推進モータで駆動される.推進モー タの動力源は発電機関またはバッテリーであり,主機 関,発電機関,バッテリーの出力は任意に調整可能で ある. 本試験では,表2 に示す条件で航行したときのエン ジン,Z ペラ推進器,船内各部の振動騒音データを計 測し,航行状態による船内騒音の違いと,船内各部の 振動計測データから,騒音源としてのエンジン,Z ペ ラ推進器について評価した. 表1 ハイブリッドタグボート「翼」主要目 項目 要目 全長 37.20 m 船幅 9.80 m 主機関 ニイガタ6L28HX 1324kW ×2 発電機関 ニイガタ防振据付400kW ×2 推進モータ 発電機兼用 294kW ×2 推進器 ニイガタZP-31 型 Z ペラ推進器 1618kW×2

エンジンと Z ペラ推進器が船舶の騒音に及ぼす影響

及びその低減手法の評価に関する研究

* 田代 大和** 井桁 正樹 鹿窪 勇太 三浦 信之**

Evaluation and Reduction Approach of Ship Noise from Engine and Z-peller By Yamato Tashiro, Masaju Igeta, Yuta Kakubo, Nobuyuki Miura

Recently, the reduction of ship noise and underwater radiated noise has become animportant issue. Engines and Z-pellers (azimuth thrusters) are considered as major sources of noise, and a quantitative evaluation of each sound source is required. In this paper, the contributions of engine and Z-peller were evaluated by noise and vibration measurement results in a hybrid tug ship. In order to predict the structure-borne noise level from the engine, an excitation force measurement was performed for both rigid and rubber-mounted engines. Underwater radiated noise emitted from the Z-peller was evaluated from cavitation noise tests using a water tank. In these tests, two types of Zpeller configurations were proposed, and the noise reduction effect was confirmed. Theresults are presented in this paper.

エンジンと Z ペラ推進器が船舶の騒音に及ぼす影響

及びその低減手法の評価に関する研究

田 代 大 和**   井 桁 正 樹***

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表2 計測条件 図1 船内一般配置図および計測位置1 船内一般配置図および計測位置 2.2 航行状態による船内騒音評価 図2 に各計測条件での居室の騒音計測結果を示す. 図2 居室騒音計測結果 2.2.1 動力源(主機関とバッテリー)の違い 居室の騒音レベル(O.A.)は動力源がバッテリーの 場合,主機関と比べて約10dB 小さいことが確認され た.その周波数特性を比較すると,4000Hz までの広 い範囲でバッテリー航行時の方が10~20dB 騒音レベ ルが小さく,特に250~1000Hz において違いがみら れる.一方,バッテリー航行と停泊時暗騒音を比べる と,100~250Hz の範囲でバッテリー航行時の方が約 5dB 大きく,O.A.では 1dB 程度の差となる.停泊時 とバッテリー航行時はZ ペラ推進器の作動有無が主な 違いであることから,この騒音の差はZ ペラ推進器の 機械騒音や航行に伴う船体振動の影響と考えられる. 2.2.2 発電機関(防振据付)の作動台数の違い Z ペラ推進器の出力が同じで,発電機関が 1 台のみ 作動している場合と,2 台作動している場合を比較す ると,4000Hz までの範囲で 1~2dB 程度しか変わら ないことから,適切に防振据付されたエンジンは騒音 への影響が小さいことが確認された.ただし,63Hz のみ,発電機関が2台作動している方が約8dB大きい. これは,後述する振動計測結果と併せて検討した結果, 排気管系統の影響と考えられる. 2.2.3 Z ペラ推進器の出力の違い 動力源がバッテリーの場合において,Z ペラ推進器 出力200kW と 290kW の船内騒音を比較すると,高 出力の方が40~315Hz の範囲で 2~3dB 程度大きい が,O.A.値は 1~2dB 程度しか変わらない.一方で, 動力源が主機関の場合は同じ出力差であっても,騒音 の差がO.A.値で 2~3dB と大きくなっている.周波数 特性を確認すると,動力源が主機関の場合は出力上昇 に伴い,250~2500Hz の聴感特性の大きい周波数で 騒音が増大していることがわかる.よって,本船にお いては船内騒音に対しては推進器よりも主機関の影響 が大きいと考えられる. 2.3 船内各部の振動計測データによる騒音評価 船内騒音は,船舶の各機器の振動が船体を伝播して 居室に到達し,壁から音として放射された結果である. そこで,各機器の騒音源としての特徴を評価するため, 船内各部の振動速度計測を実施した.振動速度計測結 果を図3 に示す. 2.3.1 エンジンの影響 試験Eの各部の振動速度と居室振動速度を比較した 結果,主機関の振動は船体を伝播して居室壁の振動の 主要因となっていることがわかった.特に,試験E の 200~2000Hz に注目すると,機関本体および船底の 振動速度が大きく,これが居室壁の振動速度に影響し ていると考えられる.また,低周波(100Hz 以下)に ついては,主機関排気サポートの振動速度が大きく, 居室振動への影響が大きいと考えられる. 2.3.2 発電機関の作動台数の違い 前項で,発電機関の作動台数が2 台になると,居室 航行モード 試験 No. モータ 出力 [kW] 主機関 出力 [kW] プロペラ 軸出力 [kW] Zペラ推進器 入力回転速度 [min-1] 発電機関 作動台数 A 200 停止 200 410 1台 B 290 停止 290 460 1台 C 290 停止 290 460 2台 D 停止 200 200 410 1台 E 停止 290 290 460 1台 停泊 F 停止 停止 0 - 1台 バッテリー + 推進モータ 主機関 発電機関 ④防振台上 ⑤防振台下 ⑥排気サポート 主機関 ①据付部 ②据付部付近の船底 ③排気サポート ⑦Zペラ台床 ⑧居室 振動は①~⑧各部で計測 騒音は⑧居室で計測 20 25 30 35 40 45 50 55 60 40 50 63 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 1000 1250 1600 2000 2500 3150 4000 騒 音 レ ベ ル [d B( A) ] 1/3オクターブバンド中心周波数[Hz] A 47dB(A) B 48dB(A) C 49dB(A) D 60dB(A) E 62dB(A) F 46dB(A)

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騒音の63Hz前後のみが約8dB程度大きくなることが 確認された.また,振動データからも,発電機関排気 サポート部および居室壁振動が63Hz で増加している ことが確認された.この発電機関排気サポートの振動 が居室騒音の増加の原因と考えられ,その他の周波数 においては暗騒音と同レベルであることから,適切に 防振据付された機関による居室騒音への影響は小さい と考えられる. 50 60 70 80 90 100 110 120 40 50 63 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 10 00 12 50 16 00 20 00 25 00 31 50 40 00 50 00 63 00 80 00 10 00 0 振動 速 度 レ ベ ル [0 dB =10 ‐9 m /s ] 1/3オクターブバンド中心周波数[Hz] ①据付部 ②据付部付近の船底 ③排気サポート ④防振台上 ⑤防振台下 ⑥排気サポート ⑦Zペラ台床 ⑧居室 50 60 70 80 90 100 110 120 40 50 63 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 1000 1250 1600 2000 2500 3150 4000 5000 6300 8000 10000 振 動 速 度 レ ベ ル (0 dB =1 0‐ 9m /s ) 1/3オクターブバンド中心周波数[Hz] 50 60 70 80 90 100 110 120 40 50 63 80 100 125 160 200 250 315 400 500 630 800 10 00 12 50 16 00 20 00 25 00 31 50 40 00 50 00 63 00 80 00 10 00 0 振 動 速 度 レ ベ ル (0 dB =1 0‐ 9m /s ) 1/3オクターブバンド中心周波数[Hz] 図3 船内各部の振動速度計測結果 3. 低騒音化の取組 3.1 エンジン起振力の低減 ハイブリッドタグボートの振動計測値から騒音源の 特性を評価可能であることが確認された.しかし,船 体の振動自体は機器が持つ船体を振動させようとする 力(起振力)の大きさと,船体側の剛性が複雑に関係 した結果であるため,低騒音対策として振動値から騒 音源の大きさを単純に評価することはできない.そこ で,起振力の観点から機関の防振効果を確認した. 3.1.1 エンジン起振力の定量化2) エンジンの起振力の計測方法は,「日本建築学会 環 境工学委員会 音環境小委員会」がまとめた「第 42 回音シンポジウム 設備機器の加振力計測法」から引 用した弾性支持法と置換法を用いて行った. 弾性支持法は,図4 に示すようにエンジンを防振据 付した状態で運転中の振動加速度 Aiとエンジン全体 の質量 M との積で起振力を求める.置換法は,図 5 に示すようにエンジンを据付けた状態でハンマリング 試験によりエンジン据付部を加振し,周波数ごとにハ ンマーの加振力 Fiとエンジン据付部の振動応答速度 Vi1の比Fi/Vi1を求める.次にエンジン運転状態で据え 付け部の振動応答速度 Vi2を計測し,先に求めた比 Fi/Vi1とエンジン運転中の振動応答速度Vi2から,エン ジン運転中に作用している起振力を推定する. 本稿では,弾性支持法と置換法のそれぞれの特徴を 考慮し補正して,機関の起振力を推定した. 対象機器 加速度センサー 振動加速度:Ai 機器質量:M 図4 弾性支持法による起振力の算出方法 対象機器 機器停止時 振動応答速度:Vi1 ハンマーによる 加振力:Fi 加速度センサー 振動応答速度:Vi2 機器運転時 対象機器 図5 置換法による起振力の算出方法 3.1.2 エンジン防振効果の評価 本項では,「翼」と同型のエンジンについて,防振支 持の有無による起振力の違いの実測結果を示す. 240kW(410min-1)時の直据付エンジンにおける起振 力レベルと周波数の関係を図6 に示す.起振力レベル 試験B(バッテリー航行,発電機関 1 台作動) 試験C(バッテリー航行,発電機関 2 台作動) 試験E(主機関航行,発電機関 1 台作動)

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想定するプロペラ径[m] 模型プロペラ径[mm] 展開面積比(Ae) 0.5 0.65 0.8 翼数 2.2 240 4 試験状態 ボラード状態 9knt状態 13knt状態 KT 0.31 0.19 0.21 σ 2.202 7.155 2.408 は,30~50dB で変化し,エンジン回転の 3 倍,6 倍, 9 倍の周波数成分を含む周波数帯で起振力レベルが比 較的大きくなる傾向が見られた.. 直据付と防振据付エンジンの各出力における起振力 レベルのO.A.値(8~500Hz)を図 7 に示す.直据付 エンジンと防振据付エンジンの起振力レベルを比較し たところ,防振据付エンジンの方が 5~15dB 程度小 さい値となった. 10 20 30 40 50 60 70 80 8 10 1 2. 5 16 20 25 3 1. 5 40 50 63 80 1 00 125 160 200 250 315 400 500 起 振力レ ベル [dB ](0dB =1N) 周波数 [Hz] ▲ 240kW(410min-1) 図6 240kW 時の直据付エンジンの起振力レベルと周波数 40 50 60 70 80 90 0 500 1000 1500 起振力レベル [ dB](0 dB= 1N) 出力 [kW] 直据付6MG28HX 防振据付6L28HX 図7 直据付エンジンと防振据付エンジンの出力と起振力レ ベルO.A.値(8~500Hz)の違い 3. 2 Z ペラ推進器キャビテーション音低減 ハイブリッドタグボートの計測結果より,船内騒音 に対してはエンジンの影響が大きく,Z ペラ推進器の 影響は防振エンジンと比べて比較的小さいことが確認 された.水中音については第一にキャビテーション音 が問題とされていることから,Z ペラ推進器のキャビ テーション音について模型水槽試験を用いて評価し, 低騒音化を検討した. 3. 2.1 適切なプロペラ要目の選定 a) 試験方法 キャビテーション音はキャビテーションのボリュー ムに比例することが知られており,荷重度が小さいほ どキャビテーションは発生しにくくなる.しかし,荷 重度を小さくするために展開面積比Ae(以下 Ae)を 広くすると,プロペラ表面積が増え粘性抵抗が増加し, プロペラ効率が低下する. 本試験では,Ae だけを変えた 3 種類のプロペラ要 目でキャビテーション観察と水中音レベルの評価を行 った.表3 に試験に使用したプロペラ要目,図 8 に試 験装置を示す. 表3 プロペラ要目 図8 試験装置:キャビテーション水槽 b) 試験条件 計測洞内に設置されたプロペラ動力計の先端に模型 プロペラを配置し,プロペラ回転数,水槽内流速及び 水槽内圧力を調整することにより,プロペラスラスト 係数(以下,KT)とキャビテーション数(以下,σN) を実機と模型で一致させて試験を行った. 各試験状態のKTとσNを表4 に示す.なお水槽内に 流速を発生させないボラード状態については,キャビ テーション水槽内が閉水路であるため循環流の影響が 大きく,完全なボラード状態での計測が困難である. そのため水槽内で実現可能な最大の KTの状態を,ボ ラード相当状態として試験を実施した. 表4 試験条件 サポート

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c) 試験結果 キャビテーション観察結果を図9 に示す.いずれの 条件でもキャビテーションが発生した場合,サポート の直後で不安定な崩壊を起こしていた.これは,流れ がサポートを通過すると,周囲よりも低速で乱れるた めと考えられる.またAe の大きいプロペラほどキャ ビテーションが間欠的になりボリュームが減った一方 で,KT が大きい状態ほど Propeller Hull Vortex Cavitation(以下,PHVC)の発生頻度が増えた.PHVC は特に不安定な流場に発生するキャビテーションであ り,崩壊時の水中音が大きいことが知られている. 図9 ①:ギヤケース後方サポート部分でキャビテーション 崩壊(Ae=0.8) ② :Ae=0.8 で発生した PHVC ③ :Ae=0.5 シート状のキャビテーション 110 115 120 125 130 135 140 145 150 155 160 1000 10000 100000 水 中 音 レ ベ ル [d B] 周波数[Hz] ボラード状態 Ae=0.5 Ae=0.65 Ae=0.8 110 115 120 125 130 135 140 145 150 155 160 1000 10000 100000 水 中 音 レ ベ ル [dB ] 周波数[Hz] 13knt状態 Ae=0.5 Ae=0.65 Ae=0.8 図10 キャビテーション観察及び水中音レベル計測結果 左側Ae=0.5 ボラード状態,右側 Ae=0.8 13knt 状態 水中音レベル計測結果を図10 に示す. ボラード状態の水中音レベル(10kHz 以上)は, Ae=0.5 のプロペラが,他のプロペラと比べて 5dB ほ ど小さい結果となった.Ae=0.8 とすることでキャビ テーションボリュームが減った一方で,PHVC の発生 頻度が多くなった為と考えられる. 13knt 状態の水中音レベル(10kHz 以上)は,Ae=0.8 のプロペラが,Ae=0.65 と比べて 10dB ほど小さいと いう結果が得られた.これはキャビテーションの発生 が間欠的であったことに加え,ボラード状態に比べ PHVC の発生頻度が下がった結果と考えられる.なお, 9knt 状態ではいずれのAe でもキャビテーションの発 生がなかったことから,キャビテーションによる水中 音は計測されなかった.表5 に本試験における Ae と キャビテーションの関係をまとめる. 表5 展開面積比(Ae)とキャビテーションの関係 キャビテーション PHVC Ae 小 定期的に発生する。ボリ ュームが大きく振動騒 音が大きい。 発生しない。 Ae 大 発生しない。または発生 しても小規模で間欠的 である。振動騒音は小さ い。 間欠的に発生する。発 生した場合、大きな振 動騒音を生む。 発生 位置 ギヤケースとダクトを締結しているサポート周 りの流れの遅い領域をプロペラが通過する際に キャビテーションが不安定な崩壊をする。 以上より,Ae の増加はキャビテーションの抑制に一 定の効果があることを確認した.また,サポート後方 の流れがキャビテーションの崩壊に影響していること がわかった.サポートの形状を変更し,サポート後方 の流れを改善し,キャビテーションの不安定な崩壊を 抑制すれば騒音低減に繋げられると考える. 3. 2.2 ギヤケース周りの流れの改善効果 a) 試験条件 キャビテーション音を低減させるために,図 11 に 示す流入改善効果を狙ったギヤケースで試験を実施し た.二つのギヤケースは,サポートの凹凸をなくし, 滑らかにギヤケースと繋げていることは同じだが,フ ェアリングA は,ギヤケースに垂直につなげた形状に 対し,フェアリングB は,プロペラを側面から見たと きに投影されるプロペラの輪郭と一定の間隔を維持す る後縁形状とした.プロペラAe=0.65 にて,表 4 の試 験条件で試験した. ② ① ③ PHVC

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図11 左:フェアリング A 右:フェアリング B b) 試験結果 ボラード状態ではフェアリングの効果は見られず 9knt 状態においてはキャビテーションが発生しなか った.図12 に 13knt 状態のキャビテーション観察結 果を示す.フェアリングB の方は,キャビテーション のボリューム及び不安定な崩壊の度合いが小さいこと が確認された. 図12 13knt 状態 左:フェアリング無,中央:フェアリン グA,右:フェアリング B 図13 に 13knt 状態の水中音レベルを示す.13knt 状 態では,フェアリングを付けた場合,キャビテーショ ン音の低減が確認された.特にフェアリングB では不 安定なキャビテーションの崩壊を抑制することができ, 水中音レベルは,フェアリング無と比べて10dB 程度 減少した. 124 126 128 130 132 134 136 138 140 142 144 1000 10000 100000 水 中 音 レ ベ ル [d B] 周波数[Hz] フェアリング無し フェアリングA フェアリングB 図13 13knt 状態 フェアリング整流効果比較 4. まとめ ハイブリッドタグボートの振動騒音計測を実施し, エンジンとZ ペラの低騒音設計に重要な騒音源の定量 評価について以下の結論を得た. ・直据付エンジンは船内の主要な騒音源であり,騒音 の原因として機関本体の振動と排気系統からの振動が 顕著である. ・Z ペラの船内騒音への影響は,本船においては特定 の周波数範囲(100~300Hz)において騒音値にして5dB 以下(O.A.で最大 2dB 程度)であり,エンジ ンと比べると騒音への影響は小さいといえる. ・適切に防振据付されたエンジンは船内騒音への影響 は小さく,推進器(Z ペラ推進器)よりも船内騒音へ の影響が小さい.ただし,排気系統からの低周波(~ 100Hz)振動に対して,機関防振と別に対策する必要 がある. 上記結論を踏まえ,低騒音化対策の機関防振につい て起振力計測試験を実施し,以下の結論を得た. ・防振据付による固有振動数付近の低周波域では,防 振ゴムの選定やエンジンの回転速度などで起振力レベ ルの低減効果は変化する. ・直据付エンジンと防振据付エンジンの起振力レベル を比較したところ,防振据付エンジンの方が10dB 程 度低減した.但し,起振力の低減効果は防振ゴムの選 定や運転条件により異なるため注意が必要である. また,模型水槽試験を実施し,ダクト付きアジマス スラスタのキャビテーション音について以下の結論を 得た. ・キャビテーション音低減の為にAeを大きくすると, ボラード状態では,キャビテーションボリュームは小 さくできるが,PHVC の発生頻度が増え,キャビテー ション音が低減されない場合がある.一方で,一定以 上の船速では,キャビテーションボリュームを小さく することができるため,Ae の増加は航走状態で低騒音 を求められる船に有効な手段である. ・サポートにフェアリングを取り付けると,フェアリ ングの形状によってはキャビテーションの不安定な崩 壊の度合いを小さくし,キャビテーション音の低減が 図れる.プロペラの形状が変更できない場合等で,有 効なキャビテーション音低減手法と考えられる. 謝辞 本研究は株式会社ウィングマリタイムサービス様, 株式会社三井造船昭島研究所様の御協力により実施す ることができました.厚く御礼申し上げます. 参考文献

1) IHI 技報 Vol.54 No.1 (2014)「環境配慮型曳船(ハ

イブリッドタグボート)システムの開発 白石他

2) JIME Vol.44,No.2(2009) 193-198「エンジン起 振力実測方法とその結果」三浦

表 2  計測条件  図 1  船内一般配置図および計測位置 図 1  船内一般配置図および計測位置 2.2 航行状態による船内騒音評価  図 2 に各計測条件での居室の騒音計測結果を示す.  図 2  居室騒音計測結果  2.2.1 動力源(主機関とバッテリー)の違い 居室の騒音レベル( O.A.)は動力源がバッテリーの 場合,主機関と比べて約 10dB 小さいことが確認され た.その周波数特性を比較すると, 4000Hz までの広 い範囲でバッテリー航行時の方が 10~20dB 騒音レベ ルが小さく,特
図 11  左:フェアリング A  右:フェアリング B  b)   試験結果  ボラード状態ではフェアリングの効果は見られず 9knt 状態においてはキャビテーションが発生しなか った.図 12 に 13knt 状態のキャビテーション観察結 果を示す.フェアリング B の方は,キャビテーション のボリューム及び不安定な崩壊の度合いが小さいこと が確認された. 図 12  13knt 状態  左:フェアリング無,中央:フェアリン グ A,右:フェアリング B  図 13 に 13knt 状態の水中音レベルを

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本報告書は、日本財団の 2015

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