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カントリーレポート ( 中国 留学編 ) 目次 1. はじめに 4 2. 留学生数の動向 世界の留学生の動向 2-2. 中国人留学生数の推移 2-3. 中国人留学生の増加の背景 2-4. 中国から海外留学する学生の動向 2-5. 今後の変化の要因 2-6. 各国の留学生受け入れ制度につ

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北京研究連絡センター

カントリーレポート(中国・留学編)

2015 年 4 月 30 日

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2 カントリーレポート(中国・留学編) 目次 1. はじめに 4 2. 留学生数の動向 4 2-1. 世界の留学生の動向 2-2. 中国人留学生数の推移 2-3. 中国人留学生の増加の背景 2-4. 中国から海外留学する学生の動向 2-5. 今後の変化の要因 2-6. 各国の留学生受け入れ制度について 3. 中国人学生の留学指向と準備活動状況 10 3-1. 留学ニーズの特徴と対応 3-2. 中国有名大学における留学動向の概要 3-3. 中国人留学生の留学先選択の方法と情報源 (1)大学の知名度、ランキング (2)個別の大学の留学情報 4. 中国人の優秀な学生を獲得するための方針と課題 17 4-1. 日本の戦略 4-2. 日本の留学生受け入れに対する意見および課題 (1)留学説明会における中国側教員や学生からの声 (2)元日本留学経験者(大学教員)からの意見 (3)JSPS フェローシップ経験者(大学教員)からの意見 5. 優秀な留学生の獲得に向けた情報提供の方策 20 5-1. 中国内における既存の情報ネットワークとの協働 (1)希平会(日本高等教育交流連絡会) (2) JSPS 中国同窓会 (3)欧美同学会同窓会日分会 (4)中国人日本留学帰国者の会(留日学人活動ステーション) (5)各大学の中国同窓会 5-2. 学生が望む情報を提供するための留学説明会 (1)日本留学フェア(中国大都市における開催) (2)中国各地における希平会主催の大学合同日本留学説明会 (3)国際交流基金との共催による「ふれあいの場」における大学合同日本留学 説明会 (4)各個別大学および大学グループ主催の留学説明会 (5)PhD ワークショップ (6)日本高等教育説明会(大使館主催、北京・近隣都市)

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3 (7)JSPS 事業説明会 (8)各留学説明会比較表 (9)最近の留学説明会一覧(JSPS 事業説明会を除く)の例 5-3. 中国留学生の留学準備活動に同期した日本側大学の情報提供活動 (1)中国政府公費派遣留学者プログラムを目指す留学志望学生に対する応募支 援 (2)英語授業やダブルディグリーなどの留学生の期待に対する的確な情報提供 (3)中国人留学生に関するその他の事項に対する考慮 6. おわりに 28 参考文献 29 資料1 「学術大学ランキング」(上海交通大学)にランキングされた大学の一覧 31 資料2 中国教育部指定留学エージェンシー一覧 32 資料3 平成 23-25 年度留学説明会一覧 35 資料4 2015 年国家留学基金助成出国留学者選抜要項 37

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1. は 202 る。 10 年 日本へ 優秀な 目的 以下 人学生 た意見 方、希 察し、 供す なる 2. 留 2-1. 世界 年では 図 1. 出典 はじめに 20 年の達成 日本に滞在す 年の動きをみ への留学生数 な中国人留学 とする。 下ではまず中 生が留学に対 見・課題な 希平会や留学 、留学生獲得 るためのよ ことを目指し 留学生数の動 世界の留学 界の留学生総 はほぼ年率 世界の留学 :OECD, Edu を目指す「留 する留学生の ると、中国人 数は横ばい、 学生を獲得す 中国における 対して抱いて どを分析する 学説明会を実 得における課 り良い方策を して調査・分 動向 学生の動向 総数の推移を 7%の増加を示 学生人数及び ucation at 中国カント 留学生 30 万 の約 60%を占 人の海外留学 あるいは 20 するための活 る留学に関す ている期待と る。また世界 実施する現場 課題と対策を を見出すこと 分析を試みる を図 1 に示す 示している。 び増加率(単位 a Glance 2 4 トリーレポー 万人計画」に 占めるのが中 学のための出 012 年以降に 活動の現状を する動向をマ と要望の動向 界および日本 場近くの視点 を考える。こ とが喫緊の課 る。 す。最近では 。 位:百万人) 013:OECD Pu ート(留学編) より日本への 中国からの留 出国者数は急 には漸減の傾 を分析し、改 マクロデータ 向、および中 本の留学生政 点から見た留 ここでは、学 課題となる。 は急激な増加 ublishing, の留学生の増 留学生である 急上昇してい 傾向が見られ 改善の方策を タから眺める 中国人学生・ 政策やその狙 留学生獲得の 学生が望む留 本報告書で 加が見られ、 June2013, 2015. 増加が叫ばれ る。しかし、 いるにも関わ れる。本報告書 を考察するこ るとともに、 ・教員から出 狙いを参照す の活動の現状 留学関係情報 では、その一 2005 年から p.3241 04.30 れてい この らず、 書は、 ことを 中国 出され する一 状を考 報を提 一助と ら 2010

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この ア、大 布、図 東アジ 4 万人 り、 留学 アフ アジ 欧州 北米 ラテ 大洋 全世 出典 図 2-出典 repet の中での地域 大洋州で大き 図 2-2 には ジア・オセア 人となってい 日本の貢献の 学生登録地域 フリカ ジア 州 米 テンアメリカ及 洋州 世界 :OECD, Edu -1. 2011 年度 :UNESCO, G tition and 域別留学生数 きいことが分 は留学生受け アニアの割合 いる。受け入 の低さ、およ 域 及びカリブ海 ucation at 度 世界留学 GLOBAL EDUCA early scho 数の推移は表 分る。図 2- け入れ地域分布 合が極めて高 入れ側として よび中国の伸 表 1 2011 年 176,9 500,94 2,033,0 913,4 海 78,7 343,2 4,265,5 a Glance 2 学生数(地域 ATION DIGES ool leaving 5 表 1 に示した -1 には 2011 布を図示す 高い。なかで ては、米国 16 伸長の様子が 地域別留学 年 2010 年 90 155, 47 486, 82 1,968, 64 880, 60 77, 98 350, 79 4,119, 013: OECD P 域別) ST 2012: Opp 3 た通りである 1 年データに る。産出側と でも、中国が 6.5%、日本 が分かる。 学生数 年 2009 293 147 076 446 418 1,665 427 850 735 77 013 335 002 3,707 Publishing, portunities る。留学生の増 に基づく留学 としては、中 が最多の約 60 3.5%、中国 年 200 ,338 107 ,055 322 ,829 1,388 ,966 738 ,546 39 ,305 25 ,756 2,982 June 2013 s lost: The 増加の割合は 学生産出地域 中国を中心と 0 万人、日本 1.8%となっ 単位 5 年 20 7,851 2,449 2 8,027 9 8,401 5 9,227 1,904 1 2,588 2,0 3, p.3242 impact of はアジ 域の分 とする 本は約 てお 位:人 00 年 99,117 14,744 20,140 69,640 31,058 18,646 71,963 grade

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図 2-出典 Table 2-2. 図 の数が ら留学 化して 図 3. 出典 2-3. 主要 -2. 留学生受 :OECD and U es C4.4 and 中国人留学 3 に中国か が増えている 学生の受け入 ていることを 中国人学生 :統計局「中 中国人留学 要なファクタ 受け入れ地域 UNESCO Inst d C4.7, ava 学生数の推移 ら留学のため る。留学先と 入れを行って を意味してい 生の出国者数 中国統計年鑑 学生の増加の ターとして、 域分布 itute for St ailable on 移 めの出国者数 としてはアメ てきていた日 いる。 数 鑑 2013」5 HP の背景 人口、GDP 6 tatistics f line4 数を示すが、 メリカへの増 日本としては P を元に作成 、大学数、進 or most data 1994 年の W 増加が顕著で は、中国人の 成 進学率、国家 a on non-OEC WTO の加入以 である。一方 の優秀な学生 家政策などが CD destinat 以降急速に留 方 WTO 加入以 生の獲得競争 が考えられる ions. 留学生 以前か 争が激 る。

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・人 とか ・GDP ーズ ・この の進 ・中国 年に 支援 図 出典 図 出典 口はこれまで から留学生数 P(図 4-2 参 ズも多様化し の 10 年で大 進学率は 50 国では 1990 に高水平プロ 援策をとって 4-1. 年齢別 典:統計局 4-2. GDP 推 典:統計局 で 18 歳人口 数もしばらく 参照)に対応 して広がりを 大学数(図 4 %超(日)~70 年代から留 ログラムを開 ていることも 別人口一覧 「中国統計年 推移 「中国統計年 口が増加して くは大きな減 応して所得の を見せており 4-3 参照)、大 0%超(米、韓 学を支持す 開始した。ま も間接的に留 年鑑 2013」5 年鑑 2013」5 7 ていた。(図 減少には転じ 増加するに り、進学意欲 大学進学率 韓)の水準に向 る政策として また、90 年代 留学生の送り 5 HP を元に作 5 HP を元に作 4-1 参照)大 じないと予測 ともない、研 欲も高い。 (図 4-4 参照 向けて当分伸 て、2003 年に 代以降、頭脳 り出しを促し 作成 作成 大学卒業後の 測される。 研究目的以外 照)とも上昇 伸び続けると に私費留学奨 脳還流を目指 していると考 の留学生も多 外にも海外留 昇している。 と予想できる 奨学金制度、 指して留学生 考えられる。 多いこ 留学ニ 中国 る。 2007 生帰国 19

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図 4-出典 図 4-出典 2-4. 日本 人数、 日本に に移動 学生の 年か きく増 関への いてい http 201 国に限 50 100 150 200 250 300 (校) -3. 中国の大 :統計局「中 -4. 大学進学 :中国教育部 中国から海 本に留学する 、留学先とし に滞在する中 動する人数で の総数であ ら特に 2007 増加している の留学生に関 いる。(2013 ://www.jass 12 年度の各 限らず豪州、 0 00 00 00 00 00 00 1991 年 1992 年 1993 年 大学数 中国統計年鑑 学率の推移 部 HP「各级教 海外留学する る中国人学生 して最近もっ 中国人留学生 であるが、各 り、それぞれ 年以降急激 る。これに対 関する限り、 3 年は 81,88 so.go.jp/st 各国の留学生滞 、英国、カナ 1994 年 1995 年 1996 年 1997 年 年 鑑 2013」5 HP 教育毛入学率 学生の動向 生の状況を見 っとも人気の 生総数、の年 各国における れ異なる人数 激に増加して 対して日本へ ほぼ変化を 84 人、2014 tatistics/i 滞在者のうち ナダなど英語 1998 年 1999 年 2000 年 2001 年 2002 年 8 P を元に作成 率」6より作 向 見るために、 の高い米国に 年度推移を図 る留学生数は 数であること いるが、それ への留学生数 をみせておら 年は 77,792 ntl_student ちの中国人学 語圏を中心に 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 成 作成 中国人学生 における中国 図 5 に示す。 はその国に学 に注意する必 れに伴って米 数は、日本語 らず 2012 年以 2 人: t/data14_g. 学生数と中国 この 5 年間で 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 生で留学のた 国留学生滞在 ここで出国 学業を終える 必要がある。 米国に滞在す 語教育機関を 以降はわずか html) 国人占有率を で中国人留学 2011 年 2012 年 ために出国す 在者総数、お 国者数は各年 るまで滞在す 。出国者数は する留学生数 を除く高等教 かながら減少 を表 2 に示す 学生数が急増 する総 よび 年度内 する留 は 2005 数が大 教育機 少が続 す。米 増し、

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日本の 近いア 図 5 参考 h 表 出典 社刊 の地位が低下 アジアでは高 5. 中国人の :日本学術振 「中国におけ http://www. 表 2 各国に 受け入れ 米国 オーストラ 日本 英国 カナダ 韓国 シンガポ フラン ロシア ドイツ オラン イタリ :「中国留学 (2014)8, 下している。 高く、特に日 留学目的出国 振興会海外協 ける日本の大 jsps.org.c における中国 れ国名 国 ラリア 本 国 ダ 国 ポール ンス ア ツ ンダ ア 学発展報告(2 p.016, 表 1 同時に、中 日本では約 6 国者数の推移 協力員研修報 大学の広報活 cn/jspsbj/s 国人留学生の 中国 2013) No.2」 12 9 中国人比率が 63%と非常に 移と、日本 報告書 北京 活動の効果的 ite/xphjp/r の受け入れ人 人留学生数 19.40 11.88 8.63 7.87 6.70 5.54 5.50 3.50 2.44 2.28 2.00 0.76 」(「国際人材 が欧米諸国で に高いことに ・米国に滞在 京研究連絡セ 的な手法の考 rbdxgtlxjp. 人数と中国人 (万人) 材藍皮書(青 は 30%以下で も注意を要す 在する中国人 センター 武 考察」7 htm をもと 占有率(20 留学生の中 青白書)」)社 であるのに対 する。 人留学生数の 武内亜紀子 とにして作成 11-2012 年) 中国人占有率 25.40 29.53 62.70 14.00 22.04 63.80 55.93 12.59 26.61 9.06 12.05 10.33 社会科学文献 対して の推移 成 率(%) 献出版

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10 2-5. 今後の変化の要因 18 歳人口の増加、大学進学率の急速な増加、海外留学ブームという要因がかけ合わさっ て最大の留学生輸出国となった中国であるが、今後の変化要因としては以下のような事情 が考えられる。 ・18 歳人口の変化:今後 10 年間に 25%程度減少する。これに伴い留学人口の増加は近い将 来鈍化するものと思われる。 ・大学進学率の変化:大学進学率の上昇は続くであろうが、上昇率は鈍化の可能性がある。 ・海外留学ブームの変化:中国国内大学の環境整備による内向き傾向の影響が出てくる可 能性がある。 ・留学目的の変化:かつては研究目的が大半であったが、現在多様化している。帰国後の 就職事情の影響も受けるものと思われる。 以上のような変化の兆しがあることも将来的には見逃せないところであろう。 2-6. 各国の留学生受け入れ制度について 中国を含め留学戦略は単に教育研究の観点からだけでなく、一段高く経済的な発展、国 際人材の獲得、という観点から戦略を検討しているものとみられる。表 3 のように国によ っては留学生に対しても優秀な学生には奨学金などで厚遇し、国内に定着させることで国 家の人材育成投資とし、そうでない留学生からは国内学生よりも高額の学費を徴収するこ とで財源を確保する、という戦略が窺える。こうしたグローバルな留学生獲得競争の状況 を踏まえ、支援を中心とした国際交流のみならず対等な立場での投資という国際交流の認 識が必要とされているといえる。 表 3. 国別学費の状況 国別学費の状況 国名 留学生向けの学費>国内学生向けの学費 オーストラリア、オーストリア、ベルギー カナダ、チェコ、デンマーク エストニア、アイルランド、オランダ ニュージーランド、ポーランド、ロシア スウェーデン、トルコ イギリス、アメリカ 留学生向けの学費=国内学生向けの学費 フランス、ドイツ、イタリア 日本、韓国 メキシコ、スペイン、スイス 授業料免除 フィンランド、アイスランド、ノルウェイ

出典:OECD, Education at a Glance 2013:OECD Indicators, OECD Publishing 2013 9

3. 中国人学生の留学指向と準備活動状況 3-1. 留学ニーズの特徴と対応

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11 大別して特徴を述べ、それぞれのニーズに対して大学側に求められる対応を述べる。 ① 研究指向の留学ニーズ ・アンケート調査によると、研究目的の志向が強いほど研究対象での使用言語による授業 の充実度合いを重視している。一般的には英語授業の充実度を重視する傾向が強くなる。 各大学の特徴や強味が十分伝わるよう情報提供を考えることが必要である。 ・専門性が強いため、研究大学としての知名度や大学ランキング、さらに専門領域におけ るランキングなどを重視する学生が多い。(文末の資料 1「学術大学ランキング」(上海交 通大学)にランキングされた大学の一覧を参照) ② キャリアアップ指向の留学ニーズ ・中国の学歴重視の傾向を反映し、大学の知名度やランキングで留学先を選ぶ傾向が強く なる。取得できる学位に関連して、ダブルディグリー制度の有無などに注目する場合も ある。各大学の受け入れ準備状況を正確に伝えることが必要である。(文末の資料 1「学 術大学ランキング」(上海交通大学)にランキングされた大学の一覧を参照) ・就職や学位取得に関する状況について、以下のようなケースに注意が必要である。日本 においては文系を中心に修士号、博士号の取得が予想以上に困難であるという実態を学 生が知らずに留学を志願する場合、留学生の期待と大学の状況の間にミスマッチが生ず るおそれがある。就職率や、就職先の情報を提供することでこうしたミスマッチを回避 することが必要である。 ③ 英語を中心とした(日本語を含む)語学スキル体得を中心にした留学ニーズ ・留学生の若年齢層化の傾向が強い。(高校から大学への進学時の留学) ・英語だけで卒業可能なコースやダブルディグリーなどの制度のアピールも重要である。 ・中国における日本語学科の位置づけは相対的に低下している。日本の大学には、この状 況を理解した上での進路指導と就職ガイダンスが望まれる。 ・日本語学科の卒業生の留学において研究目的かキャリアアップ目的かが明確でない場合 には、ミスマッチが起こりやすい。学生側には、日本語学以外の文系理系の分野への関 心を深めるなどの認識を持たせることが必要である。 ・日本側では日本語学以外の分野の情報提供とともに、各大学における編入制度、大学院 入学前の研究生制度等の制度の充実化および関連の情報提供を行うことが効果的と思わ れる。 3-2. 中国有名大学における留学動向の概要 有名大学 6 大学の公表データを基に分析した留学動向の分析結果が、在中国大使館名子 学一等書記官によって報告されている。10(希平会 2015 年 3 月 6 日例会で資料配布)これ をまず引用し、またこれに基づいて考察を行う。

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12 2014 年 12 月、教育部直属 75 大学は、「2014 年大学卒業生就業質量報告」を教育部に提 出した。このうち、留学動向や進学動向について確認可能であった北京大学、清華大学、 復旦大学、上海交通大学、武漢大学、中国人民大学の報告書をもとに、有力大学学生の留 学動向について分析を行った。その結果を、2014 年 中国有力大学卒業生の留学動向【概要】 まとめた。(表 4 参照)

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13 表 4. 2014 年 中国有力大学卒業生の留学動向【概要】10 (出典:「2014 年毕业生就业质量报告」の各大学版をもとに作成) 卒業者数に占める留学者数の割合 出国(地域)先 (上位5位) 学部卒業者 修士修了者 博士修了者 全体

北京大学

*本校のみ (国内進学率) 32.6% 855/ 2619 人 (46.4%) 6.2% 236/ 3827 人 (2.5%) 12.8% 121/ 942 人 (16.0%) 16.5% 1212/ 7388 人 *学部卒の割合 70.5% 米 :63.0% 英 : 7.8% 香港 : 6.2% 独 : 3.3% 仏・日: 2.5%

清華大学

*委託生除く (国内進学率) 24.9% 714/ 2869 人 (56.7%) 9.1% 215/ 2366 人 (2.7%) 9.8% 96/ 983 人 (17.5%) 17.5% 1025/ 6218 人 *学部卒の割合 69.7% 米 :70.3% 英 : 6.3% 香港 : 6.2% 日 : 3.1% 独 : 2.8%

復旦大学

*高職生除く (国内進学率) 32.4% 933/ 2875 人 (31.0%) 5.8% 192/ 3323 人 (2.6%) 6.5% 70/ 1078 人 (6.9%) 16.4% 1195/ 7276 人 *学部卒の割合 78.1% 米 :45.9% 英 :12.1% 香港 : 6.5% (上位3カ国のみ記載)

上海交通

大学

(国内進学率) 26.0% 933/ 3547 人 (33.0%) 4.6% 175/ 3777 人 (10.9%) 0.9% 12/ 1320 人 (4.8%) 13.0% 1120/ 8644 人 *学部卒の割合 83.3% 米 :63.5% 香港 : 6.6% 英 : 5.3% 新 : 3.6% 仏 : 3.5%

武漢大学

(国内進学率) 16.9% 1284/ 7614 人 (35.9%) 2.3% 59/ 2550 人 (5.3%) 3.5% 42/ 1216 人 (6.7%) 12.2% 1385/ 11380 人 *学部卒の割合 92.7% 米 :43.5% 英 :13.1% 香港 :10.2% 仏 : 7.8% 豪 : 5.1%

中国人民

大学

(国内進学率) 29.7% 809/ 2726 人 (34.3%) 3.6% 117/ 3293 人 (5.2%) 0.68% 5/ 739 人 (6.5%) 13.8% 931/ 6758 人 *学部卒の割合 86.9% 米 :65.8% 英 : 9.4% 日 : 8.9% 仏 : 6.9% (上位4カ国のみ記載) 凡例) 表中の %は留学者の割合を示す。/右欄の「出国(地域)先」には、復旦大学、武漢大学のみ学部卒の状況を 記載し、それ以外は学部、大学院卒の合計数字を記載。なお、北京大学の学部卒は①米、②英、③香港、④仏、 ⑤独の順、修士卒は①米、②香港、③独、④日、⑤英の順で、上海交通大学の学部卒は①米、②香港、③英、 ④新、⑤仏の順、修士卒は①米、②香港、③英、④独、⑤仏・加・日の順である。/表中(国内進学率)を記載 して、国内大学への進学率と海外大学への進学率がどれくらいあるかが把握できるようにしている。なお、博 士修了者の国内進学とは、ポストドクターに就いた者を示す。 出典:2015.3.6 希平会資料「2014 年 中国有力大学卒業生の留学動向について」10 報告者:在中国日本国大使館一等書記官 名子学

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14 なお、2013 年においては南京大学の動向をも分析されているので、その結果を以下に追 記する。 南京大学の卒業生の留学動向(2013 年): ・卒業者数に占める留学者数の割合 学部卒業者:20.8%(719/3459 人)、修士修了者:4.1%(140/3404 人) 博士修了者:2.5%(31/1253 人)、全体:11.0%(890/8116 人)※学部卒 81% ・出国(地域)先(学部卒業者の上位5位) 米:54.4%, 香港:16.0%, 英:9.5%, 仏:3.9%, 加:3.3% これらの分析によって明らかになったポイントをまとめて、以下に示す。 【留学に関する傾向】 ① 各大学の留学生数の 70~90%程度が学部生で占められている。 ② 各大学の学部生の 20~30%程度が学部卒業後に留学している。 ③ 留学先として、アメリカが 60~70%程度を占めており、次いで、英国、香港がそれ ぞれ 5~10%程度を占め、その次に、フランス・ドイツ・日本が位置。 ④ ただし、学部卒業生の留学先としてみると、日本は、北京大学では 6 番目、上海交 通大学では 7 番目、武漢大学では上位 5 位以内に入っていないなど、優秀な学生の 獲得に苦戦している状況にある。他方、日本留学については、修士課程修了者によ る選択が他国に比して多い。 【進学全体に関する傾向】 ⑤ 学部卒業生についていうと、各大学の 30~50%程度が国内大学院に進学しており、 留学と合計して、50~80%台の学生が国内外の大学院に進学している状況。 ⑥ 修士修了者の動向としては、各大学とも国内外の大学院への進学率が 10%台以下と なっており、就職の割合が高くなっている。 【関連して気づいた点】 ⑦ 北京大学・清華大学だけで一年でアメリカに約 1500 人留学する一方、日本には 62 人に止まっている。 ⑧ 修士課程での日本留学への受入体制の充実。また、国内大学院進学層の取込方策の 必要性(中国の大学と協力した、学部や大学院での共同教育プログラムの実施など) ⑨ 第三国(先進国)にいる留学生に対する日本留学の促進(博士課程、ポスドクでの日本 の留学) このように、トップ大学と言われる大学においては日本への留学は大方の予想を超えて 人気がない。一方、就職先が十分でないことによる可能性もあるが、国内で修士課程に進 学する学生もかなりの率でいる。これは、ダブルディグリー制度などの活用によって日本

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15 に呼び込む機会にもなるものと考えられる。また、北京大学や清華大学では修士から博士 への国内進学率は極めて低く、進学時には留学する場合の方が多い。この場合しかも行先 は米国に集中している。これらの結果は、研究者を目指す学生は学部卒業後、修士課程か ら留学することが多いことを示している。中国の優秀な人材を博士課程やポスドク研究者 として獲得するには、日本の優秀な研究教育拠点に呼び込むなど戦略的な取り組みが必要 なのではないかと考えられる。 3-3. 中国人留学生の留学先選択のための情報と情報源 (1)大学の知名度、ランキング 3-1 で研究者志望やキャリアアップを指向する学生が大学の知名度やランキングを重要 視する傾向を述べた。日本の大学に対する影響に関して、以下の事が指摘できる。 ・タイムズなどに代表される各種ランキングを学生は留学先の選定の際に、また大学は交 流協定の締結にあたって大変重視している。たとえば「上海交通大学 2013 年毕业生就业 质量报告」に紹介されているアンケート結果(学生回答者 609 名)では 75%以上の学生が、 大学の専攻のランキングまたは大学のブランド名を重視したと答えている。 ・例えば、有名なランキングの一つである、上海交通大学のランキングで日中の大学を比 較すると、文末の資料 1 に掲載した「学術大学ランキング」(上海交通大学)にランキン グされた大学一覧* のようなものとなる。自然科学系の強い研究大学、学生ほどこうし たランキングの高低に左右されやすい。 *資料 1:「学術大学ランキング」(上海交通大学)にランキングされた大学の一覧 (2015.3.6 希平会資料「2014年 中国有力大学卒業生の留学動向について」在 中国日本国大使館の名子学氏作成による) 世界大学学術ランキング(上海交通大学): http://www.shanghairanking.com/ja/ ・上記のランキングでは、中国の大学の位置が高まってきているのに対し、日本の大学で 上位に来る大学は極めて限られている。このため、ランキングには現れにくい、日本の 地方国立大学や公立大学、私立大学は、どのようにして、中国におけるどのような大学 に対して、どのような魅力や良さをPR していくかが大変重要になっている。 (2)個別の大学の留学情報 中国人学生がどのようにして留学先を選択しているか、またそれらの情報をどのように して収集しているかについて行われたアンケート調査結果の例を図 6 に示す。

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図 6. 出典 この結 ・「留 の情 ・「留 い 報 実施 ・留学 て が 提 ト ケ ー ・CSC よ れ 「 「 中国からの :麦可思(2 結果からは、 留学希望先の 情報の充実化 留学先海外大 ものの、学生 を得られる機 施状況などつ 学希望者の間 ては ① 教育部指 ② 教育部指 ③ 登記手続 が存在する。 提携した日本 トを作って活 ケースも存在 ー一覧(452 団 C のサイト よく利用され れ、留学希望 「中国留学网 「中国教育之 の留学希望者 2012)「中国 、以下のよう の大学 HP」に 化、また英語 大学による留 生にとっては 機会でもあ ついては後述 間で近年利用 指定の留学エ 指定以外の正 続きを行って ただし、③ 本語学校への 活動するエー 在するので、 団体)を文末 「中国留学网 れるものであ 望者が留学情 网」http://ww 之声」http:/ 者がどのルー 2007~2012 うなことが指 については留 語化・中国語 留学説明会」 は多数の大学 り、影響力は 述する。 用割合が高ま エージェンシ 正式に登記手 ていない違法 では悪質な違 進学を勧め、 ジェンシー 注意が必要で 末の資料 2 と 网」や教育情 る。下記サイ 報を得るため ww.cscse.ed /www.cedcm. 16 ートで留学情 2 届大学毕业 指摘できる。 留学希望者が 語化対応が重 は実施回数 学の情報が得 は大きいと考 まっている シー 手続きを得て 法な留学エー 違法行為が報 、日本語学校 もあるが、学 である。参考 として付した 情報ポータル イトには日本 めに閲覧して du.cn/ .com.cn/ 情報を得たか 业生社会需求 が頻繁に見て 重要である。 からしても全 得られ、また 考えられる。 「中国内留学 ている留学エ ージェンシー 報道等でなさ 校からの紹介 学生に紹介す 考として教育 た。 サイト「中国 本を含めた留 ているとのこ 与培养质量调 ていると考え 全体の中に占 た各大学担当 中国におけ 学仲介エージ エージェンシ ー されている例 介で大学を選 する大学に偏 育部指定の留 国教育之声」 留学情報など ことである。 调查」11より えられるため 占める割合は 当者から直接 ける留学説明 ジェンシー」 シー 例がある。ま 選ぶ、という 偏りがあるな 留学エージェ 」も中国人学 どの情報も掲 り作成 め、HP は小さ 接に情 明会の とし また、 うルー などの ェンシ 学生に 掲載さ

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17 4. 中国人の優秀な学生を獲得するための方針と課題 4-1. 日本の戦略 戦略的な学生交流の推進に関する検討会(2014年12月18日)の『世界の成長を取り込む ための外国人留学生の受入れ戦略』報告書 12 では、当面工学、医療、社会科学(法制度)、 農学といった日本が貢献できる分野を特定するとともに、日本の次世代に必要となる課題 分野や留学生受け入れ施策と、それぞれの国の特徴とを考慮して重点的に施策を実施する ものとの観点から、地域ごと、特に新らたに重点を置くべき国を中心とした対応方針を提 案している。さらに、戦略を実現するための具体的な方策として、以下の項目を挙げてお り、中国に対してもほぼ適応できるものと考えられる。 (1) 戦略的な外国人留学生の受入れ (留学コーディネーターの配置) (我が国の大学の国際展開の促進) (アカデミックパスの工夫) (2)奨学金の充実と運用改善(戦略枠の設定等) (3)外国語で単位や学位が取得できる環境の整備促進 (4)地域と連携した外国人留学生の生活支援 (5)我が国で学修した外国人留学生への対応 (帰国した外国人留学生のフォローアップ) ・各国で有力者となった人物をフォローし、教育、研究、外交、経済に生かす。 ・帰国後,留学志望者等や日本政府や関係機関、企業関係者の間で情報交換等を行 い,帰国留学生のプレゼンスを高め、日本との「つながり」を保つ ・海外での日本留学生同窓会等の設置,ソーシャルネットワーキングサービスを活 用し,オンラインコミュニティを形成する。 (我が国等で就職を希望する外国人留学生の支援) ・企業の協力によるガイダンス、インターンシップ機会の充実 ・卒業後の国内外のキャリアパスの提示、学生の就労計画への対応 出典:世界の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略(報告書12)文科省 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1342726.htm 4-2. 日本の留学生受け入れに対する意見および課題 留学説明会や大使館主催で開かれた日本留学経験者との意見交換会などでは、日本の留 学生受け入れの状況に対する意見を、現場の意見として直接聞くことができる。中国人教 員、学生、日本留学経験者からよく聞かれる意見を中心に、以下に紹介する。

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18 (1)留学説明会における中国側教員や学生からの声 ・留学先の英語授業の充実を重視している。優秀な学生ほど専門分野を英語で学びたいと いうニーズがある。 ・サマープログラムなど短期留学プログラムを通じ、大学の実情を良く分かった上で留学 をしたい。 ・他の国は事前に奨学金が取れるかどうかがわかるが、日本の場合は来日後でないとわか らないのが残念。 ・教員が学生を紹介しても大学間協定がない場合授業料免除とならず、実現できないのは 惜しい。 ・地方の有力大学には優秀な学生がいながらも留学に関する情報が少ない状況がある。 ・大学院留学の場合、専門分野の説明や情報の提供が重要となるが、その機会が少ない。 (2)元日本留学経験者(大学教員)からの意見 2013 年より、大使館と JSPS、JST とが共同で元留学生との意見交換会を重ねている。日 本留学全般、国費留学に関すること、大学の広報活動、日本の大学における教育研究環境 について、元留学生から重複して多く見られた意見について、以下で紹介する。(出典:在 中国日本国大使館の名子学一等書記官による報告13に基づく。) 元日本留学経験者(大学教員)からの主な意見 【日本の大学院への留学等に関して】 ・ 優秀な学生は学部卒業後、修士でのアメリカ留学を希望する。次に就職を考える。 ・ 学部生や修士で、一度、サマーキャンプやダブルディグリープログラム等で海外を経験 すると、博士では一度行った国に行きたいと考える学生が多い。留学プログラムの多様 性と量的な確保が重要。 ・ 日本の修士課程には大変な魅力・良さがある。どこでも通用する基礎能力が身につく。 ・ 国費留学等で修士課程に行く枠を増やした方がよいのではないか。 ・ 国費留学の面接官を経験したが昔に比べて受験者の質が低下している。てこ入れが必要。 ・ 留学には、中国の大学教授と日本の大学教授のつながりは非常に重要。知り合いの教授 に学生の受入れを断られるとそれでだめになる。紹介先を広げるサポートがほしい。 【留学広報について】 ・ 欧米の大学の研究者は、学術講演等の機会をとらえて自分の大学への留学広報をするが、 日本の大学の研究者は、自分の講演が終わったらそれ以上のことはしないので、もった いない。 ・ 日本の大学はもっと学術活動や大学広報を積極的にすべきだろう。例えば、大学の研究 成果の紹介、特色の紹介といったことでよい。積極的に展開すべきではないか。 ・ 学術機関の国際課や管理職等にもっと日本の大学が特色、良い専攻をPRすることも重

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19 要。 ・ 日本留学の情報の入手ルートが少なすぎる。簡便な検索システムも必要。 【研究環境・研究力等に関して(日本の良い点)】 ・ 日本には高い研究力をもった企業が多く、研究環境は大変よい。 ・ イノベーション力、チームとしての研究力は日本は優れている。特に同僚がアドバイス をくれるという点は非常によい。 ・ 地道に長期的な研究を続けられる点は明らかに日本のメリット 【中国留学生に対する取り組み(要望)】 ・ 日本だけが、元留学生のビザの優遇措置がない。 ・ 日中大学間交流や共同研究の推進にあたって、元留学生を活用する仕組みが必要ではな いか。 ・ もっと日本語を学ぶこと、日本に留学したことにインセンティブをもつような政策がほ しい。日本には優れた研究者や企業の研究開発者が多く、彼らがもっと中国で講演をし たり、我々元留学生と最先端の研究動向について意見交換ができたりする機会があれば、 我々の研究の助けにもなるし、学生から見ても日本に行って勉強しようという良い動機 付けになる。 (3)JSPS フェローシップ経験者(大学教員)からの意見 JSPS フェローシップは博士学位取得以降の研究者を対象とするため、意見の焦点は若手 学生とは異なるが、参考のために、フェローシップ経験者(多くは大学教員)によって JSPS 同窓会および JSPS 事業説明会の機会に表明された、日本での研究滞在における利点などの 意見の例を以下に示す。(2015 年 3 月南京農業大学における OB の経験談による) JSPS フェローシップ経験者(大学教員)からの意見 【研究環境について】 ・ 学術研究環境が備わっている。 ・ 技術先進国の研究理念と研究手法を教わった。 ・ 研究チームにおいて、メンバーたちの連携協力が研究結果に如何に繋ぐことに感心した ・ 受け入れ側の先生が学術研究から普段の生活までやさしくて指導して頂き、手厚くて面 倒を見て頂いた。 【フェローシッププログラムについて】 ・ 研究期間が 1~2 年と設定され、中国国内の仕事や研究状況に合わせて自由に選べられ る機動性のあるプログラムである。 ・ 「科研費」の規範化された管理も学ぶべき所だと思う。 ・ 経済的支援が十分なことで、研究に専念できる。

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20 【生活面その他】 ・ 生活習慣の面において、中日はほぼ同じなので日本でも暮らしやすい。 ・ 治安がよくて、生活面が便利で、豊かな余暇活動を楽しめる社会である。 ・ 隣国なので、アクシデントのようないざという際にすぐに帰国するなどの対応が可能で ある。 5. 優秀な留学生の獲得に向けた情報提供の方策 上で述べた現場の意見で出された課題の解決には、各種制度、大学方針、財政など広範 な分野での対策が検討されるべきであるが、学生の必要とする留学情報をいかに的確・迅 速に提供できるかはどの場合にも必須の要件である。中国国内では、北京・上海など大都 市では留学情報も多く、欧米への留学志向も強い傾向が見られるが、一方で各地方の有力 大学には優秀な学生がいながらも留学に関する情報が少ないのが実情である。この観点か らは、たとえば地方の優秀な学生に対し情報を的確にかつ丁寧に伝えることによって学生 獲得を目指すことも考えられる。以下では、優秀な留学生を獲得するための情報提供の具 体的な方法について、既存のネットワークとの協働、学生が望む情報を提供するための留 学説明会、中国留学学生の活動に同期した日本側大学の活動、の 3 つの観点から考察する。 5-1. 中国内における既存の情報ネットワークとの協働 (1) 希平会(日本高等教育交流連絡会) ・ 希平会(日中高等教育交流連絡会)とは、中国に事務所、拠点、同窓会組織等を持つ日 本の大学、政府系機関、研究所等を中心に組織された団体で、会の名称は、「平和を希 求する精神」が国際交流の基本であるという理念から名付けられた。 ・ 約 2 ヶ月に一度、北京市内の会場で例会を開催し、日中間の教育・研究に関する情報交 換および外部からの講師を招いて講演会等を行う。 ・ 日本への留学の促進を図るため「大学合同日本留学説明会」を年に数回以上企画し、中 国各地の大学で実施。(別項に説明あり) ・ 事務局は JSPS 北京研究連絡センターが担当する。 ・ 2014 年の在中国日本人研究者ネットワーク設立大会は、希平会と合同で開催した。年 1 回程度の合同開催を計画している。 [希平会 HP] http://www.jsps.org.cn/jspsbj/site/xphjp/gyxphjp.htm [過去の希平会主催留学説明会] http://www.jsps.org.cn/jspsbj/site/xphjp/rbdxgtlxjp.htm

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21 希平会の写真(2014 年): 左:例会、右:在中国日本人研究者ネットワーク設立大会 (2)JSPS 中国同窓会 ・JSPS 外国人特別研究員、招へい研究者などを使って日本での研究経験者の同窓会 ・会員数:1200 名余 ・総会・理事会および各支部会でセミナー・同窓会などのイベントを開催 ・事務局は JSPS 北京研究連絡センターが担当。 [JSPS 中国同窓会 HP] http://www.jsps.org.cn/jspsbj/site/txhjp/clzzjp.htm JSPS 中 国 同 窓 会 理 事 会 ·総 会 の 写 真 ( 2013 年 12 月 広東省広州市広東省生態環境与 土壌研究所) (3)欧美同学会同窓会日分会 ・日本留学経験者の同窓会 ・会員数:約 700 名 ・日本留学 110 周年記念会開催、文集「留日風采」出版、植林などイベント開催 [欧美同学会 HP] http://www.wrsa.net/index.htm (4)中国人日本留学帰国者の会(留日学人活動ステーション) ・日本留学経験者の同窓会 ・会員数:約 2,300 名 ・名簿出版、シンポジウム・懇談会などの開催、留学フェア支援、留学・日本情報の提供 (5)各大学の中国同窓会 ・多数活動中(詳細略)

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22 5-2. 学生が望む情報を提供するための留学説明会 主な留学説明会について概要を説明し、特徴をまとめる。 (1)日本留学フェア(中国大都市における開催) 中国教育国際交流協会(CEAIE)が毎年開催する中国国際教育展に毎年日本側の大学、専 門学校等 30 校程度が参加している。日本側主催機関である日本学生支援機構(JASSO)が 日本留学フェアとして日本側参加校の募集を呼びかけ、日本学術振興会北京研究連絡セン ターも共催機関として参加している。中国国際教育展では北京、上海、その他の地区を巡 回する日程が組んであり、また日本だけでなく、世界各国の大学が北京や上海の会場で一 堂に会する留学説明会である点が特徴である。JST が主催する日中フェア&フォーラム in CHINA(通常北京および上海)でも日本留学フェアが行われ、JSPS も共催機関として参 加している。 留学フェアの写真:左:2013 年 11 月日本留学フェア(北京)、 右:2014 年 3 月日中フェア&フォーラム in CHINA 2014(北京) (2)中国各地における希平会主催の大学合同日本留学説明会 日本学術振興会北京研究連絡センターが希平会事務局として日本側の参加大学を募集し、 希平会参加大学のうち 1 校が中国側窓口担当大学として開催地となる中国の大学との連絡 調整を行う形式で、中国各地の大学にて大学合同日本留学説明会を実施している。 開催地は大都市に限らず説明会を要望する中国側の大学のニーズに応えるよう選択でき、 また日本側の大学も中国側の大学の窓口となることで交流を深めることができる。大使館、 領事館の派遣する留学アドバイザーにより、日本留学に関する全般説明に加えて個別の大 学の紹介ができるため、参加者にとって個別の留学先の選定をする上で比較検討がしやす くなっている点が利点と考えられる。 大学合同日本留学説明会の全体説明と各大学ブースの様子(2014 年 5 月青島大学)

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23 (3)国際交流基金との共催による「ふれあいの場」における大学合同日本留学説明会 国際交流基金では、日本の最新情報や日本人と接する機会が少ない中国の地方都市にお いて、青少年を主な対象として対日理解と交流を促進する「ふれあいの場」を現在 12 か所 で開設している 14。前項の希平会主催の大学合同日本留学説明会を、2014 年に初めて国際 交流基金との共催の形で済南ふれあいの場(山東師範大学)において開催した。現地大学 の日本語学科には一定レベル以上の日本語学習者が集まっており、日本の大学情報の広報 の要望も高いので、説明会の大きな効果が見込まれる。また、ここでは日本語学科の教員 および学生との意見交換会を設けるなど、ふれあいの場の活動と組み合わせた活動ができ、 留学希望学生の希望など具体的な詳しい情報を収集する機会としても重要である。 2014 年の事業は、中国における留学関連事業としては省庁を超えた機関の共催による初め ての事業となったが、今後機会あるごとに共催事業を展開していく予定である。 済 南 ふ れ あ い の 場 で の 大 学 合 同 日 本 留 学 説 明 会 の 写 真(2014 年 6 月 山東師範大学) (4)各個別大学および大学グループ主催の留学説明会 各個別の大学の PR を中心にできる点で理想的である。ただし中国内に事務所が開設され ていない場合は、スタッフ派遣、折衝などの業務負担が大きくなることがある。 (5)PhD ワークショップ このワークショップ(PhD Workshop China 2014、博士生教育国際交流会)15は中国教育国 際交流協会(CEAIE)主催により、11 月頃北京市で開催される博士課程後期課程を中心とする 大学院生のための大学院生向け面談型の留学相談会である。参加に際しては、まず大学側 が学生募集の情報を共通のウェブサイトに掲載する。学生側では事前にインターネットを 通じて自分の志望する学問分野や成績などのデータとともに希望する大学に対して面談ス ケジュールの設定を申し込む、あるいは、大学側からも全学生のデータを見て適合しそう な学生には面談に来るよう勧誘することも出来る。このような仕組みでスケジュールが決 まるため、各大学の研究科に適した学生と直接面談し深い相談ができる点が、不特定の学 生を相手にする集合型の留学説明会とは大きく違うところである。別室で大学個別の説明 会を開くことも可能である。面談型のものは他にもあるが、この PhD ワークショップが学 生のレベルも高く、最も評価が高い。 昨年まで日本からの参加はなかったが、今年度は希平会を通じて各大学に紹介し、2014

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24 度には 3 校の参加を得た。11 月 22,23 日に北京市のスイスホテルにおいて開催され、ドイ ツ、オランダ、英国、カナダをはじめ各国から 80 以上の大学(研究科)と、約 1,400 名の 学生の参加があった15 。日本からの参加大学も 30-100 名の学生と面談を行い、実際の入 学者も出たとの情報を得ている。今後、優秀で意欲的な中国人大学院生を勧誘するのに有 効な機会となり得ると考える。特に、3 章で述べた有名大学における留学希望者の多くは修 士課程からの留学を考えていることからも、日本の大学からの積極的なアプローチとして 有効なものと考えられる。 PhD ワークショップの写真: 各大学ブースでの面談と個別セミナーの様子(2014 年 11 月) (6)日本高等教育説明会(大使館主催、北京・近隣都市) 日本大使館が主催する大学院、ポスドク研究者向けの説明会である。日本大使館が国費 留学生制度と日本の大学の特徴、研究内容、留学支援内容などの説明を、JSPS が外国人特 別研究員、招へい研究者制度をはじめとする JSPS 事業説明を、JST が研究プロジェクトの 内容と研究者招へい制度などの説明を行う。また参加大学のブースで資料展示と大学概要 の説明を行う。通常参加大学は 10 校以内の程度であり小規模な説明会であるが、詳しい面 談が可能である。 日本高等教育説明会の様子(2014 年 2 月清華大学) (7)JSPS 事業説明会 JSPS の行う共同研究等の交流事業の説明とポスドク・フェローシップ、招へい研究者な ど留学制度の説明を行う。通常大学における専門セミナーや JSPS 同窓会などと併催するこ とが多い。JSPS 制度の経験者がいる場合には、その経験談も交えて事業の特徴が伝えられ る。具体的な興味を持つ大学院生と若手研究者の出席が見込めるため、応募書類の作成方 法など詳しい情報提供と、参加者のもつ具体的な問題に対する質疑が行われる。

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25 事業説明会の写真:左から人民大学、中国科学院図書館、中国科学院半導体研究所にて (8)各留学説明会比較表 以上述べた種々の留学説明会の特質を表 5 にまとめた。 表 5 各種の留学説明会の特質 メリット デメリット 日本留学フェア ( 中 国 大 都 市 中 心) ・集客力が高い(日本ブース合計で 2000 名程度) ・情報の多い大都市のみでの 開催のため競争が激しい。 ・各大学の個別ブース中心の 説明のため、日本全体の留学 制度を説明の機会は乏しい。 ・参加費は比較的高額。 中国各地におけ る希平会主催の 留学説明会 (国際交流基金 との共催を含む) ・日本の大学情報に関心が強い大学で実 施できるため、参加者の希望とのマッチ ングがしやすい。特に地方大学の優秀な 学生の獲得に効果的である。 ・中国側への窓口担当となった日本の大 学は相手大学との交流を深めることが 可能。 ・日本側および中国側の大学関係者の情 報交換会も併催できるため、中国側のニ ーズを詳しく知ることができる。 ・窓口大学、開催大学および 事務局における開催までの 準備に労力が必要。 各個別大学主催 の留学説明会 ・各大学独自のプログラムが構成でき、 説明時間も十分取れる。 ・開催までの準備に労力が必 要。 日本高等教育説 明会(大使館主 催、北京・近隣都 市) ・大学院、ポスドク研究者向け説明会。 ・通常、日本大使館、JSPS、 JST の説明 会と大学資料の展示・説明を行う。 ・小規模であり、詳しい面談が可能 ・参加大学は少数。 PhD ワークショ ップ(CEAIE 他主 催、北京) ・大学院生向けの面談型説明会。 ・熱意ある優秀な学生が参加する。 ・事前に web 上で情報交換ができるため、 大学と学生との面会時に詳細相談がで きる。 ・参加費用と研究科からの人 員派遣が必要。 ・学生との事前交渉・準備に 人員・労力が必要。 JSPS 事業説明会 ・JSPS ポスドク・フェローシップ、共同 研究等事業の説明会。 ・セミナー、同窓会と共催することが多 い。 ・過去の経験者談や、応募方法の詳細な ど具体的な情報を提供できる。 ・通常日本の大学の参加は募 らない。

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26 (9)最近の留学説明会一覧(JSPS 事業説明会を除く)の例 以下に平成 26 年度に開催した留学説明会の実績表を上げておく。 出典:海外協力員研修報告書 北京研究連絡センター 武内亜紀子 「中国における日本の大学の広報活動の効果的な手法の考察」7 http://www.jsps.org.cn/jspsbj/site/xphjp/rbdxgtlxjp.htm なお、他の年度(平成 23-25 年度)の一覧表は資料 3 として文末に付した。 表 6 平成 26 年度留学説明会一覧 開催日 名称 都市 名 会場名 参加 者数 参加 大学 数 備考 1 4/24 大学合同日本留学説 明会 北京 対 外 経 済 貿 易大学 80 7 対外経済貿易 大学主催 2 4/28 日本高等教育説明会 天津 天津大学 60 0 大使館主催 3 5/17 中国地区 6 大学留学 フェア 北京 首 都 師 範 大 学 120 6 広島大学主催 JSPS 共催 4 5/23 大学合同日本留学説 明会 遼 寧 省 大連 大 連 理 工 大 学 200 13 希平会主催 5 6/6 山東大学留学座談会 山 東 省 済南 山東大学 70 9 希平会主催 6 6/7 大学合同日本留学説 明会 山 東 省 済南 済 南 ふ れ あ いの場 160 9 希平会・日本 交流基金の共 催 7 10/25-26 中国国際教育展(留 学フェア)@北京 北京 国 家 会 議 中 心 2,017 22 日本側主催: JASSO 8 11/1-2 中国国際教育展(留 学フェア)@上海 上海 上 海 世 博 展 覧館 874 21 日本側主催: JASSO 9 11/13 大学合同日本留学説 明会 吉 林 省 長春 東 北 師 範 大 学 250 10 希平会主催 10 11/15 大学合同日本留学説 明会 吉 林 省 長春 東 北 師 範 大 学 赴 日 予 備 学 校 380 22 希平会主催 11 12/16 在中国日本国大使館 主催北京大学留学説 明会 北京 北京大学 90 大使館主催 12 12/17 在中国日本国大使館 主催中国人民大学留 学説明会 北京 人民大学 95 大使館主催 注)参加大学数欄の( )は資料参加大学数で、外数。

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27 5-3. 中国留学生の留学準備活動に同期した日本側大学の情報提供活動 (1)中国政府公費派遣留学者プログラムを目指す留学志望学生に対する応募支援 教育部直属の非営利法人である国家留学基金管理委員会(CSC)が公費派遣留学者の派遣 を各国に対して行っている。この派遣プログラムには中国における優秀な学生が多く申請 している。日本の大学としては、これを目指して留学準備する学生に対してタイミングよ く大学から有用な情報が届けられることは学生の望むところである。留学志望生の準備作 業に同期した書類提出期限の設定など可能な限りのフレキシブルな対応、あるいはそれに 関する情報の提供が望まれる。例年この派遣プログラムについては前述の希平会定例会議 において CSC 担当者に講演を依頼してきた。定例会議での説明資料については公開できな かったが、参考として、CSC の HP に掲載された 2015 年度の案内16を日本語に翻訳し資料 2 として報告書末尾に付した。2015 年度の募集数は大幅に増加しており(国家建設ハイレベ ル大学公費派遣研究生 8000 人、など)、これらの情報を、大学が的確に聴取し活用するこ とが必要である。 2015 年度案内: http://www.csc.edu.cn/Chuguo/fc8d228ee3ec4374ae66c004ccb16e1f.shtml (2)英語授業やダブルディグリーなどの留学生の期待に対する的確な情報提供 日本の大学が持つ、それぞれの大学独自の情報で留学生にとって重要な情報となるもの は、一般的情報とは別に学生本人に周知されることが望まれる。たとえば、英語による単 位取得可能科目やダブルディグリー制度など、留学生が強い関心を持つところでもある。 英語による授業については、学部段階で英語による授業を実施している大学はまだ 241 大 学で 32%であり、国外大学院と交流協定に基づくダブルディグリー制度を導入している大学 は 140 大学で 18%(うち国立 41 大学(48%))に過ぎない。(いずれも数値は 2012 年度)どの ような専攻領域でどこまでの制度があるのか、学生が真剣な検討を行うためには個別の情 報が必須となるため、各大学が的確な情報を提供する手段が重要である。 英語による授業とダブルディグリーに関する状況調査結果の原典: 「大学における教育内容等の改革状況について(概要)」17文科省(2012) http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/1353488.htm (3)中国人留学生に関するその他の事項に対する考慮 その他、日本側大学関係者よりよく聞かれる質問について以下に Q&A 形式でまとめた。 Q1.中国から来る学生の質が、かつてに比べて落ちているのではないか? A1. かつて日本に中国で最も優秀な層の学生が来ていた時代(現在 50 歳代中心。多くは日 本留学後、中国における主要な大学における研究者となっている。)は中国における大

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28 学の研究環境も現在ほど整備されていなかった。また米国への留学も少なく、大学進 学率も低かった。この 10 年で大学の数が急増し、大学生進学率も急速に高まった。ま た留学先の選択肢が増えるだけでなく、中国内の研究環境も整備されてきた。留学の 目的も中国内の経済が発展するに伴い、研究目的だけでなく、キャリアアップを目的 とするものが増えてきており、留学生が多様化している。このような変化を考慮する と、最優秀な学生の割合が減り平均的な質が低下しているという傾向は認められるか も知れないが、留学生の多様化に伴う留学受け入れ機会が増加している側面もあるこ とを考える必要がある。 Q2.優秀な学生はアメリカに行ってしまって、もう残っていないのか? A2. 優秀な学生に限らず、中国での海外留学ブームで大きく留学生を獲得できたのはアメ リカである。特に北京、上海といった都市部や都市部の有名大学ではアメリカを留学 先として考える志向が極めて高い傾向がみられる。一方で、地方と都市部の情報格差 が顕著であるものの、地方の有力大学には都市部の有力大学の優秀な学生と同等以上 に優秀な学生が相当いることに注目すべきである。対応としては、諸外国から留学生 獲得激戦区となる都市部だけでなく、地方有力大学の優秀な学生に適切な情報を提供 することで質の高い留学生を獲得する対策が一つの方向性として考えられる。また留 学目的は明確ではないものの、留学を強く希望する学生がいる。これらの学生にも早 期に日本留学に関する情報を提供するとともに、留学の際も編入制度や研究生制度な どの多様な留学ルートがあることを示したうえで、留学生として獲得する等の方策が 考えられる。中国が WTO に加入した 1990 年代中盤以降、アメリカのみならず諸外国が 国を挙げて中国人留学生獲得のために乗り出したため、都市部を中心に想像以上に急 速に競争が激化している。このような認識をもつことは重要である。しかし、中国か ら日本に来ている留学生数が 8 万人前後で大きな変動がみられないため、こうした競 争の激化を実感しづらい面があるため、特に注意が必要である。 Q3.震災の影響や日中情勢の影響が大きいのではないか? A3.震災の影響や日中情勢の影響は直後の 2011 年、2012 年は大きかった面もあるが、年を 追うごとにその影響は小さくなっている。特に訪日中国人観光客はこうした影響の落 ち込みから回復するばかりでなく、2014 年においては過去最高を記録している(日本 政府観光局のデータによると 2012 年訪日中国人が約 132 万人であるのに対し、2014 年 は 83%増加し 240 万人余りに達している)点も見逃せない。 6. おわりに カントリーレポートは 2014 年度より各国に所在する JSPS 研究連絡センターの事業とし て作成が開始されたものである。冒頭でも触れたように、JSPS 研究連絡センターは各国と

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29 日本の研究交流の促進を中心としつつも、近年大学の国際事業展開の支援を中心とした大 学支援事業に力を入れている。その支援事業に関わる中で得ることのできた情報をレポー トとして作成した。 これまでなされた中国における留学生勧誘活動に関しての報告に対して、本レポート の新しい観点としては、JSPS 北京研究連絡センターの国際協力員が大学の国際交流関連部 署からの出向者・研修者を中心としていることも考慮し、より現場に即した情報提供とい う観点から調査を行った。網羅的な情報提供に重きをおいたために掘り下げが足りない項 目も残るが、今後関係各位からの忌憚のないご意見を通じ報告内容の精緻化がなされるこ とを期待する。 本レポートの作成にあたって中国の高等教育の状況に関して、独立行政法人科学技術 振興機構中国総合研究センター(CRC)作成の資料18を参考にした。また、上海交通大学の大 学ランキングに関する分析、中国有力大学の留学生動向の調査・分析、および留学生受け 入れに対する日本留学経験者の意見と分析、については在中国日本国大使館の名子学一等 書記官がまとめられた資料を使わせて頂いた。使用を快諾されたことに深くお礼申し上げ ます。さらに、レポートの作成にあたっては希平会を中心に日本の大学関係者、在中国日 本大使館、および関連政府機関、中国側大学関係者、中国政府対応機関等の多くの方々か ら助言を頂いた。深くお礼を申し上げる次第です。なお、本レポートの最終稿のとりまと めは和田修(センター長)が担当したが、レポート作成の過程で、主たる構成の構築・執 筆を加藤茂行元副センター長が担当し、渡邉幹博現副センター長が引き続いで協力した。 また、中国ホームページ情報の検索・翻訳、図表作成、執筆・編集には瀧瀬由香理国際協 力員、中山尚子国際協力員、江岸助理、佘彬助理の協力を得た。記して感謝申し上げます。 参考文献

1. OECD and UNESCO Institute of Statistics

「中国留学発展報告(2013) No.2」(「国際人材藍皮書(青白書)」)社会科学文献出版社 刊(2014), p.2

2. OECD, Education at a Glance 2013: OECD Publishing, June 2013, p.324 Indicator C4: Who studies abroad and where? Table C4.7

http://www.oecd.org/edu/educationataglance2013-indicatorsandannexes.htm

「中国留学発展報告(2013) No.2」(「国際人材藍皮書(青白書)」)社会科学文献出版社 刊(2014), p.3

3. UNESCO, GLOBAL EDUCATION DIGEST 2012: Opportunities lost: The impact of grade repetition and early school leaving

4. OECD and UNESCO Institute for Statistics for most data on non-OECD destinations. Tables C4.4 and C4.7, available on line および OECD Education at a Glance, 2013, Chart C4.2:

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30 http://www.oecd.org/edu/eag2013%20(eng)--FINAL%2020%20June%202013.pdf 5. 統計局「中国統計年鑑 2013」 http://www.stats.gov.cn/tjsj/ndsj/2014/indexch.htm 6. 中国教育部 HP「各级教育毛入学率」 http://news.sciencenet.cn/htmlnews/2014/7/298374.shtm および http://wenku.baidu.com/link?url=lJZ8STJcPihnR1x_o9786DAn7A4x3_JqyH-0S0OJ3mQgJ Eybr75bdNEm4rIOrBBkICRExfyKvslEMdYUgg8-xad0-qfQeKOy39__rZT06fa 7. 日本学術振興会海外協力員研修報告書 北京研究連絡センター 武内亜紀子 「中国における日本の大学の広報活動の効果的な手法の考察」 http://www.jsps.org.cn/jspsbj/site/xphjp/rbdxgtlxjp.htm および最近のデータについては以下も参照: 中国教育在线(www.eol.cn): http://www.eol.cn/html/lx/2014baogao/content.html#02 8. 「中国留学発展報告(2013) No.2」(「国際人材藍皮書(青白書)」)社会科学文献出版社 刊(2014)

9. OECD, Education at a Glance 2013: OECD Publishing, June 2013

http://www.oecd.org/edu/eag2013%20(eng)--FINAL%2020%20June%202013.pdf 10. 名子学 2015.3.6 希平会資料「2014 年 中国有力大学卒業生の留学動向について」希平 会 2015 年 3 月 6 日配布資料 11. 麦可思(2012)「中国 2007~2012 届大学毕业生社会需求与培养质量调查」 12. 世界の成長を取り込むための外国人留学生の受入れ戦略(報告書)文科省 www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1342726.htm 13. 名子学氏作成の報告「元日本留学経験者(大学教員)からの主な意見」による 14. 国際交流基金 HP 中国ふれあいの場事業 http://www.chinacenter.jp/japanese/fureai/ 15. 博士生教育国際交流会 HP http://www.phdchina.org/phd/index.shtml 16. 2015 年国家留学基金资助出国留学人员选拔简章 CSC の HP http://www.csc.edu.cn/Chuguo/fc8d228ee3ec4374ae66c004ccb16e1f.shtml 17. 「大学における教育内容等の改革状況について(概要)」文科省(2012) http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigaku/04052801/1353488.htm 18.「中国の高等教育の現状と動向 本文編」平成 22 年度版 独立行政法人科学技術振興 機構中国総合研究センター(CRC)刊(2007) http://www.spc.jst.go.jp/investigation/downloads/r_201102_01.pdf 19.南部広孝「中国にとっての留学」IDE 現代の高等教育, 2014 年 2-3 月号, p. 57

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31 資料1 「学術大学ランキング」(上海交通大学)にランキングされた大学の一覧 【要約】 研究評価が中心の「学術大学ランキング」(上海交通大学)にランクインした大学数の状況 を見ると、100位以内に日本3校・中国0校、200位以内に日本9校・中国5校、5 00位以内で日本20校・中国28校という状況である。 【評価方法】 第三者データと客観指数を引用する。例えば、ノーベル賞とフィールズ賞の校友換算数、 ノーベル賞とフィールズ賞の教師換算数、各学科分野における論文引用率の最も高い教員 の数、「Nature」と「Science」雑誌で発表した論文の数、「SCIE」と「SSCI」に収録され た論文の数などを考慮する。 出典: 2015.3.6 希平会資料「2014年 中国有力大学卒業生の留学動向について」報告 者:在中国日本国大使館一等書記官 名子 学

図 2- 2-出典 Table 2-2.  図 の数が ら留学 化して 図 3. 出典 2-3.  主要 -2. 留学生受:OECD and Ues C4.4 and中国人留学3 に中国か が増えている 学生の受け入ていることを 中国人学生:統計局「中中国人留学要なファクタ 受け入れ地域UNESCO Instd C4.7, ava学生数の推移 ら留学のためる。留学先と 入れを行ってを意味してい生の出国者数中国統計年鑑学生の増加のターとして、 域分布  itute for Stailable on 移  めの
図 4- 4-出典 図  4-出典 2-4.    日本 人数、 日本に に移動 学生の 年か きく増 関への いてい http 201 国に限50100150200250(校)300 -3
図 6. 出典 この結 ・「留 の情 ・「留 い 報 実施 ・留学 て が 提 ト ケ ー ・CSC よ れ 「 「  中国からの:麦可思(2 結果からは、留学希望先の情報の充実化留学先海外大 ものの、学生を得られる機施状況などつ 学希望者の間ては ① 教育部指② 教育部指③ 登記手続が存在する。提携した日本トを作って活ケースも存在ー一覧(452 団C のサイトよく利用されれ、留学希望「中国留学网「中国教育之 の留学希望者2012)「中国 、以下のよう の大学 HP」に化、また英語大学による留生にとっては機

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