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一般社団法人日本手外科学会 第 19 回春期教育研修会抄録 日時 会場 2013 年 4 月 20 日 ( 土 )9:00 ~ 神戸国際会議場 3F(301) 8:30 受付開始 9:00 10:00 1. 手外科領域の創外固定の応用 澤泉卓哉 ( 日本医科大学整形外科 ) :00 11

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一般社団法人日本手外科学会

第 19 回春期教育研修会 抄録

日時 2013 年 4 月 20 日(土)9:00 ~

会場 神戸国際会議場 3F(301)

〈8:30 ~〉   〈9:00 ~ 10:00〉 〈10:00 ~ 11:00〉 〈11:10 ~ 12:10〉 〈12:20 ~ 13:10〉 〈13:20 ~ 14:20〉 〈14:20 ~ 15:20〉 〈15:30 ~ 16:30〉 受付開始 1. 手外科領域の創外固定の応用 澤泉 卓哉(日本医科大学整形外科) 2. バイオメカから見た手関節疾患 森友 寿夫(大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科) 3. 肘周辺骨折-小児から成人まで 信田 進吾(東北労災病院整形外科) ランチョンセミナー「肘軟骨損傷に対する治療」 岩崎 倫政(北海道大学大学院医学研究科整形外科学分野) 4. 上肢の広範囲軟部組織欠損に対する治療 ~アルゴリズムに沿った再建法~ 田中 克己(長崎大学医学部形成外科) 5. CRPS を取り巻く諸問題(医原性神経損傷を含めて) 古瀬 洋一(医療法人有光会サトウ病院) 6. 生物学的製剤時代を迎えたリウマチ手の治療 小畠 康宣(奈良県立医科大学整形外科)

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手外科領域の創外固定の応用 日本医科大学整形外科 澤泉 卓哉 創外固定を用いた手指の骨延長は 1970 年の母指中手骨の骨欠損に対して行った Matev の報告 に始まる.以後骨延長の報告は末梢のより小さな指節骨へと進み,本法では 1995 年,佐々木が 末節骨延長の 1 例を初めて報告した.1998 年の Pensler の骨延長の論文には末節骨の症例が含 まれていたが,詳細は述べられておらず,10mm 以下の指節骨に対する骨延長の詳細な報告は 2001 年の Dalla の論文に記載されている.演者は 1999 年以来,試行錯誤を繰り返しながら手指 に対する創外固定の応用の可能性を探ってきた.この講演では文面ではわかりにくい手外科領 域の創外固定を用いた骨延長や骨接合の手技を,図解や写真を中心に解説する. 【機材】本手技にはロシアのイリザロフセンターで開発された Ilizarov MiniFixator を使用する. この機材は本邦でも 2002 年からイト−医科から発売され使用が可能となり,軽量化と小型化が 進められてきた.本機材は中空式のボルトとナット,ワッシャー,スリットワッシャー,ボルト を固定する半円型のロッド,ワイヤーから構成され,ヒンジの作製も可能である.本機材の最大 の特徴は,パーツを自由に組みたてられ,骨に刺入したワイヤ−を多方向から刺入して自由に曲 げて固定することが可能なことである.しかし自由度が高い反面,手技がやや煩雑で多少の熟 練を要する. 【骨延長】手指の骨延長には,骨の部位や形状に合わせてワイヤーを選択する.通常末節骨で 1.0-1.2mm,中手骨で 1.5mm の骨に刺入したワイヤーをパンタグラフ状に曲げてスリットワッ シャーに填め込んでボルトに固定していくことを基本とするが,さらにワイヤーを縦方向に曲げ て使用することにより,末節骨であっても 5mm 程度の骨長があれば延長可能である.また,中 空ボルトを通るロッドにヒンジを作製することにより,骨延長中に延長方向を変えることが可能 である.延長部の骨切りは小切開からノミを入れて行い,骨延長は 1 週間の待機後,1 日 3 回 0.5mm( ナット回転 120°× 3 回 =0.5mm) で開始する. 【骨接合】骨折に対して本機材を用いる場合には,関節近傍・関節内であっても可能な限り non-bridgeing として装着する.従来の発想と異なり,創外固定器を装着後に整復操作をおこなう “装着後整復”を基本とする.手指の骨折に対する K- 鋼線固定は簡便で侵襲も少ないが,固定 力が比較的弱いため積極的な早期可動域訓練は困難である.またプレートやスクリューによる 内固定は比較的強固な固定性が得られるものの,腱や骨膜などに対する剥離操作が必要となる. 本法は低侵襲でかつ早期からの可動域訓練が可能である. 【変形矯正】骨延長と骨接合の手技を組み合わせることにより,低侵襲でおこなうことが可能で ある.一期矯正を行っても通常骨移植は必要としない. 澤泉 卓哉(さわいずみ たくや) 日本医科大学整形外科 准教授 講師略歴 略歴 昭和 59 年 3 月 昭和 59 年 5 月 平成 2 年 5 月 平成 6 年 4 月 平成 9 年 8 月 平成 18 年 4 月 日本医科大学卒業 日本医科大学整形外科教室入局 日本医科大学大学院卒業 日本医科大学整形外科医員助手 日本医科大学整形外科講師 日本医科大学整形外科准教授

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手外科領域の創外固定の応用 日本医科大学整形外科 澤泉 卓哉 創外固定を用いた手指の骨延長は 1970 年の母指中手骨の骨欠損に対して行った Matev の報告 に始まる.以後骨延長の報告は末梢のより小さな指節骨へと進み,本法では 1995 年,佐々木が 末節骨延長の 1 例を初めて報告した.1998 年の Pensler の骨延長の論文には末節骨の症例が含 まれていたが,詳細は述べられておらず,10mm 以下の指節骨に対する骨延長の詳細な報告は 2001 年の Dalla の論文に記載されている.演者は 1999 年以来,試行錯誤を繰り返しながら手指 に対する創外固定の応用の可能性を探ってきた.この講演では文面ではわかりにくい手外科領 域の創外固定を用いた骨延長や骨接合の手技を,図解や写真を中心に解説する. 【機材】本手技にはロシアのイリザロフセンターで開発された Ilizarov MiniFixator を使用する. この機材は本邦でも 2002 年からイト−医科から発売され使用が可能となり,軽量化と小型化が 進められてきた.本機材は中空式のボルトとナット,ワッシャー,スリットワッシャー,ボルト を固定する半円型のロッド,ワイヤーから構成され,ヒンジの作製も可能である.本機材の最大 の特徴は,パーツを自由に組みたてられ,骨に刺入したワイヤ−を多方向から刺入して自由に曲 げて固定することが可能なことである.しかし自由度が高い反面,手技がやや煩雑で多少の熟 練を要する. 【骨延長】手指の骨延長には,骨の部位や形状に合わせてワイヤーを選択する.通常末節骨で 1.0-1.2mm,中手骨で 1.5mm の骨に刺入したワイヤーをパンタグラフ状に曲げてスリットワッ シャーに填め込んでボルトに固定していくことを基本とするが,さらにワイヤーを縦方向に曲げ て使用することにより,末節骨であっても 5mm 程度の骨長があれば延長可能である.また,中 空ボルトを通るロッドにヒンジを作製することにより,骨延長中に延長方向を変えることが可能 である.延長部の骨切りは小切開からノミを入れて行い,骨延長は 1 週間の待機後,1 日 3 回 0.5mm( ナット回転 120°× 3 回 =0.5mm) で開始する. 【骨接合】骨折に対して本機材を用いる場合には,関節近傍・関節内であっても可能な限り non-bridgeing として装着する.従来の発想と異なり,創外固定器を装着後に整復操作をおこなう “装着後整復”を基本とする.手指の骨折に対する K- 鋼線固定は簡便で侵襲も少ないが,固定 力が比較的弱いため積極的な早期可動域訓練は困難である.またプレートやスクリューによる 内固定は比較的強固な固定性が得られるものの,腱や骨膜などに対する剥離操作が必要となる. 本法は低侵襲でかつ早期からの可動域訓練が可能である. 【変形矯正】骨延長と骨接合の手技を組み合わせることにより,低侵襲でおこなうことが可能で ある.一期矯正を行っても通常骨移植は必要としない. 澤泉 卓哉(さわいずみ たくや) 日本医科大学整形外科 准教授 講師略歴 略歴 昭和 59 年 3 月 昭和 59 年 5 月 平成 2 年 5 月 平成 6 年 4 月 平成 9 年 8 月 平成 18 年 4 月 日本医科大学卒業 日本医科大学整形外科教室入局 日本医科大学大学院卒業 日本医科大学整形外科医員助手 日本医科大学整形外科講師 日本医科大学整形外科准教授

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バイオメカから見た手関節疾患 大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科 森友 寿夫 手関節尺側部痛は日常診療で多く見られるが病態はいまだ不明な点が多く手外科のブラック ボックスといえる。病態の理解を困難にさせるのは矛盾する臨床的事実があるからでる。TFCC 損傷は常に病態解明、新しい治療法の開発などの努力が続けられているが、橈骨遠位端骨折に 伴う TFCC 損傷や茎状突起骨折を放置してもほとんど問題にならないと認識されている。どの ような時に TFCC 損傷を治療すべきなのかはよくわかっていない。患者の遠位橈尺関節 (DRUJ) が非常に不安定でも、健側も同様に不安定なことも多いため必ずしも異常とは言えない。逆に TFCC 損傷が明らかでもあまり不安定性がないことも多く、DRUJ 不安定性と痛みの関係はい まだ不明である。一方、原因が何であろうと尺骨短縮術(Milch 法)を行えばほとんどの手関 節尺側部痛は消失する。では TFCC 修復術や再建術はどのような時に適応となるのであろうか。 このような疑問を解明する一助になるのがバイオメカニクス研究である。バイオメカニクス研究 は解剖学的研究と組み合わせることによって難解な病態の理解、さらには病態に見合った新し い治療法の開発に有用である。本講演では DRUJ の安定性に関与する補助的な支持機構である 遠位骨間膜と尺骨手根靭帯複合体 (UCLC) の機能・病態・治療法に関する最近のバイオメカニ クスおよび解剖学的研究の知見について述べる(図 1)。近年、遠位骨間膜が DRUJ に関する臨 床的矛盾に関係していることがわかってきた。遠位骨間膜には橈骨の背側脱臼を制動する機能 があり、掌側と背側橈尺靭帯が切れた時、橈骨は掌側に不安定になるが背側不安定性は出ない。 橈尺靭帯と遠位骨間膜を両方切離してはじめて掌側にも背側にも非常に強い不安定性を生じる ようになる。Milch 法による尺骨短縮術は DRUJ を安定化する効果があるがそれは遠位骨間膜 が緊張するからである。Colles 型橈骨遠位端骨折では遠位骨片が背側に転位するが、転位が大 きければ橈尺靭帯背側線維は深枝、浅枝とも橈骨骨片に牽引され限界を超えると断裂する。一 方、骨片が背側転位しても掌側橈尺靭帯はほとんど緊張しないため切れずに残存することが多 い。遠位骨間膜も通常の骨折型では大部分は残存する。橈骨遠位端骨折で TFCC 損傷や茎状 突起骨折がほとんど問題にならない理由は、掌側橈尺靭帯と遠位骨間膜が残存することが多い ため、骨性に正確に整復すれば不安定性が消失するためであろう。骨折のない TFCC 小窩部断 裂は転倒などの手関節背屈強制により生じることが多いがこのとき UCLC、特に尺骨有頭骨靭 帯が緊張し掌側から TFCC 小窩部断裂が起こることが多い。陳旧性 TFCC 損傷で高度な不安 定性があっても UCLC は残存していることが多いため、掌側から UCLC を利用して TFCC を 再建できる。 森友 寿夫(もりとも ひさお) 大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科 講師略歴 略歴 平成 2 年 平成 10 年 平成 12 年 平成 20 年 平成 24 年 日本医科大学医学部卒業 大阪大学整形外科学教室入局 米国テキサス大学ガルベストン校留学リサーチフェロー 大阪大学整形外科助教 大阪大学整形外科学部講師 大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科教授  行岡病院手外科センター医 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター招聘教授 現在に至る

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バイオメカから見た手関節疾患 大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科 森友 寿夫 手関節尺側部痛は日常診療で多く見られるが病態はいまだ不明な点が多く手外科のブラック ボックスといえる。病態の理解を困難にさせるのは矛盾する臨床的事実があるからでる。TFCC 損傷は常に病態解明、新しい治療法の開発などの努力が続けられているが、橈骨遠位端骨折に 伴う TFCC 損傷や茎状突起骨折を放置してもほとんど問題にならないと認識されている。どの ような時に TFCC 損傷を治療すべきなのかはよくわかっていない。患者の遠位橈尺関節 (DRUJ) が非常に不安定でも、健側も同様に不安定なことも多いため必ずしも異常とは言えない。逆に TFCC 損傷が明らかでもあまり不安定性がないことも多く、DRUJ 不安定性と痛みの関係はい まだ不明である。一方、原因が何であろうと尺骨短縮術(Milch 法)を行えばほとんどの手関 節尺側部痛は消失する。では TFCC 修復術や再建術はどのような時に適応となるのであろうか。 このような疑問を解明する一助になるのがバイオメカニクス研究である。バイオメカニクス研究 は解剖学的研究と組み合わせることによって難解な病態の理解、さらには病態に見合った新し い治療法の開発に有用である。本講演では DRUJ の安定性に関与する補助的な支持機構である 遠位骨間膜と尺骨手根靭帯複合体 (UCLC) の機能・病態・治療法に関する最近のバイオメカニ クスおよび解剖学的研究の知見について述べる(図 1)。近年、遠位骨間膜が DRUJ に関する臨 床的矛盾に関係していることがわかってきた。遠位骨間膜には橈骨の背側脱臼を制動する機能 があり、掌側と背側橈尺靭帯が切れた時、橈骨は掌側に不安定になるが背側不安定性は出ない。 橈尺靭帯と遠位骨間膜を両方切離してはじめて掌側にも背側にも非常に強い不安定性を生じる ようになる。Milch 法による尺骨短縮術は DRUJ を安定化する効果があるがそれは遠位骨間膜 が緊張するからである。Colles 型橈骨遠位端骨折では遠位骨片が背側に転位するが、転位が大 きければ橈尺靭帯背側線維は深枝、浅枝とも橈骨骨片に牽引され限界を超えると断裂する。一 方、骨片が背側転位しても掌側橈尺靭帯はほとんど緊張しないため切れずに残存することが多 い。遠位骨間膜も通常の骨折型では大部分は残存する。橈骨遠位端骨折で TFCC 損傷や茎状 突起骨折がほとんど問題にならない理由は、掌側橈尺靭帯と遠位骨間膜が残存することが多い ため、骨性に正確に整復すれば不安定性が消失するためであろう。骨折のない TFCC 小窩部断 裂は転倒などの手関節背屈強制により生じることが多いがこのとき UCLC、特に尺骨有頭骨靭 帯が緊張し掌側から TFCC 小窩部断裂が起こることが多い。陳旧性 TFCC 損傷で高度な不安 定性があっても UCLC は残存していることが多いため、掌側から UCLC を利用して TFCC を 再建できる。 森友 寿夫(もりとも ひさお) 大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科 講師略歴 略歴 平成 2 年 平成 10 年 平成 12 年 平成 20 年 平成 24 年 日本医科大学医学部卒業 大阪大学整形外科学教室入局 米国テキサス大学ガルベストン校留学リサーチフェロー 大阪大学整形外科助教 大阪大学整形外科学部講師 大阪行岡医療大学医療学部理学療法学科教授  行岡病院手外科センター医 大阪大学臨床医工学融合研究教育センター招聘教授 現在に至る

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肘周辺骨折−小児から成人まで 東北労災病院整形外科 信田 進吾 肘関節周辺の骨折は小児、成人ともに日常診療でよくみられる外傷であり,治療の目的は後遺 症を残すことなく肘関節の生理的外反位と可動域、支持性を獲得することである。日本手外科 学会の研修カリキュラムにおける肘周辺骨折、脱臼、靭帯損傷の項目の中から重要な外傷の診 断と治療の要点を述べる。 1)小児の外傷 1 − 1)上腕骨顆上骨折:小児の肘周辺骨折の中で最も多い。伸展骨折が多く、阿部の分類で 転位の大きい3型と4型は整復・固定が必要であり、徒手整復・経皮ピンニング固定、観血的 整復・固定、牽引療法などが行われる。内反肘を防止するためには、末梢骨片の尺側転位を残 さず、Baumann 角 77°以下に内反を整復することが重要である。 1 − 2)上腕骨外側顆骨折:肘周辺骨折の中で上腕骨顆上骨折に次いで多い骨折であり,Salter-Harris 4型の骨端線損傷である。外顆骨幹端から滑車中央部に向かう Milch 2型が多い。X 線 像で転位が側方3㎜以上または回転転位ならば観血的整復固定術の適応である。転位が3㎜以 上で骨癒合すると滑車部の魚尾状変形を残し、将来変形性肘関節症が生じる。 1 − 3)上腕骨遠位骨端離開:年少児にみられ、X 線像での診断が重要である。転位の大きいも のは整復固定術が必要となる。 1 − 4)上腕骨内側上顆骨折:骨端の裂離骨折で肘外反力により生じる。脱臼に合併したものは 骨片が関節内に嵌入することもある。 1 − 5)撓骨頚部骨折:X 線像で傾斜が 30°以上は整復固定術の適応である。 1 − 6)Monteggia 脱臼骨折:新鮮例では尺骨骨折と撓骨頭の脱臼の徒手整復が可能であるが、 陳旧例には撓骨頭の観血的整復・尺骨骨切り術が必要である。 2)成人の外傷 2 − 1)上腕骨遠位部骨折:AO 分類の A 1〜3型は関節外骨折であるが,B 1〜3、C 1〜3 は関節内骨折であり、正確な整復と強固な内固定、早期のリハビリが極めて重要である。 2 − 2)撓骨頭・頚部骨折:関節面に3㎜以上の転位があれば手術適応である。 2 − 3)肘頭骨折:転位例には Tension Band Wiring 法・整復固定術が一般的。

2 − 4)肘関節脱臼:後方・後側方脱臼が多く、尺骨鉤状突起と撓骨頭の骨折を伴う Terrible Triad Injury に対しては骨折の整復固定も必要である。 2 − 5)Essex-Lopresti 骨折:撓骨頭骨折に遠位撓尺関節離開を伴う骨折である。 信田 進吾(のぶた しんご) 東北労災病院整形外科 講師略歴 略歴 昭和 58 年 3 月 昭和 58 年 5 月 昭和 63 年 9 月 平成 4 年 7 月 平成 5 年 9 月 平成 6 年 8 月 平成 9 年 9 月 平成 16 年 4 月 平成 21 年 4 月 平成 24 年 4 月  東北大学医学部卒業 国立水戸病院研修医 東北大学整形外科 東北労災病院整形外科 米国キャンベルクリニック留学 塩釜掖済会病院整形外科部長 東北労災病院整形外科副部長    同   関節外科部長    同   整形外科部長 東北大学医学部臨床教授(外科・整形外科担当)

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肘周辺骨折−小児から成人まで 東北労災病院整形外科 信田 進吾 肘関節周辺の骨折は小児、成人ともに日常診療でよくみられる外傷であり,治療の目的は後遺 症を残すことなく肘関節の生理的外反位と可動域、支持性を獲得することである。日本手外科 学会の研修カリキュラムにおける肘周辺骨折、脱臼、靭帯損傷の項目の中から重要な外傷の診 断と治療の要点を述べる。 1)小児の外傷 1 − 1)上腕骨顆上骨折:小児の肘周辺骨折の中で最も多い。伸展骨折が多く、阿部の分類で 転位の大きい3型と4型は整復・固定が必要であり、徒手整復・経皮ピンニング固定、観血的 整復・固定、牽引療法などが行われる。内反肘を防止するためには、末梢骨片の尺側転位を残 さず、Baumann 角 77°以下に内反を整復することが重要である。 1 − 2)上腕骨外側顆骨折:肘周辺骨折の中で上腕骨顆上骨折に次いで多い骨折であり,Salter-Harris 4型の骨端線損傷である。外顆骨幹端から滑車中央部に向かう Milch 2型が多い。X 線 像で転位が側方3㎜以上または回転転位ならば観血的整復固定術の適応である。転位が3㎜以 上で骨癒合すると滑車部の魚尾状変形を残し、将来変形性肘関節症が生じる。 1 − 3)上腕骨遠位骨端離開:年少児にみられ、X 線像での診断が重要である。転位の大きいも のは整復固定術が必要となる。 1 − 4)上腕骨内側上顆骨折:骨端の裂離骨折で肘外反力により生じる。脱臼に合併したものは 骨片が関節内に嵌入することもある。 1 − 5)撓骨頚部骨折:X 線像で傾斜が 30°以上は整復固定術の適応である。 1 − 6)Monteggia 脱臼骨折:新鮮例では尺骨骨折と撓骨頭の脱臼の徒手整復が可能であるが、 陳旧例には撓骨頭の観血的整復・尺骨骨切り術が必要である。 2)成人の外傷 2 − 1)上腕骨遠位部骨折:AO 分類の A 1〜3型は関節外骨折であるが,B 1〜3、C 1〜3 は関節内骨折であり、正確な整復と強固な内固定、早期のリハビリが極めて重要である。 2 − 2)撓骨頭・頚部骨折:関節面に3㎜以上の転位があれば手術適応である。 2 − 3)肘頭骨折:転位例には Tension Band Wiring 法・整復固定術が一般的。

2 − 4)肘関節脱臼:後方・後側方脱臼が多く、尺骨鉤状突起と撓骨頭の骨折を伴う Terrible Triad Injury に対しては骨折の整復固定も必要である。 2 − 5)Essex-Lopresti 骨折:撓骨頭骨折に遠位撓尺関節離開を伴う骨折である。 信田 進吾(のぶた しんご) 東北労災病院整形外科 講師略歴 略歴 昭和 58 年 3 月 昭和 58 年 5 月 昭和 63 年 9 月 平成 4 年 7 月 平成 5 年 9 月 平成 6 年 8 月 平成 9 年 9 月 平成 16 年 4 月 平成 21 年 4 月 平成 24 年 4 月  東北大学医学部卒業 国立水戸病院研修医 東北大学整形外科 東北労災病院整形外科 米国キャンベルクリニック留学 塩釜掖済会病院整形外科部長 東北労災病院整形外科副部長    同   関節外科部長    同   整形外科部長 東北大学医学部臨床教授(外科・整形外科担当)

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上肢の広範囲皮膚軟部組織欠損に対する治療 ~アルゴリズムに沿った再建法~ 長崎大学医学部形成外科 田中 克己 皮膚は身体にとって生体を被覆する最大の器官である。その機能は外界の物理的な刺激に対し ての防御作用を有し、身体の運動に対してはその抵抗が最小限となるような形で連動する。触 覚の感覚器としての働きや水分の透過性や熱交換の機能も有しており、さらには整容的な面で の視点も併せ持つことになる。このように皮膚軟部組織は構造的にも役割のうえでも非常に多 様性な面を持っている。 そのため、皮膚軟部組織の欠損はその広さや状態にもよるが、感染・拘縮などの問題を生じる とともに上肢においては整容的な面の障害も残ることになる。今回は上肢における広範囲皮膚 軟部組織欠損に対して、基本的な閉鎖法から最新の治療までを解説する。『広範囲』の定義とし ては、縫縮やいわゆる局所皮弁などのように創周囲組織の処置だけでは治療困難なものとした。 治療法を選択する上で、①年齢・性別、②原因疾患、③期間、④欠損の状態(部位・広さ・深達度・ 深部組織の合併欠損の有無など)、⑤汚染・感染の有無、⑥既往歴などが重要な点として考え られる。また、深部組織の合併欠損に対する再建時期(一次・二次再建)の判断も必要となる。 再建の具体的な方法としては、大きく分けて遊離植皮術、有茎皮弁(隣接皮弁・穿通枝皮弁・ 遠隔皮弁)、遊離皮弁を患者個々の条件や希望に応じて選択するが、同時に皮膚軟部組織の被 覆だけなのか、機能再建も必要なのかなどの検討も行う。また、組織移植だけではなく、創傷 被覆材、人工真皮、陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy)、ティッシュー・エキ スパンダーなどの併用も症例によっては有用な治療法であると考えられる。 機能と整容の両面の回復が必須であるため、再建時期を含めて厳密な治療方針が重要である。 アルゴリズムに沿った再建法について詳述する。 田中 克己(たなか かつみ) 長崎大学医学部形成外科 講師略歴 略歴 1984 年 3 月 同年      1984 年 8 月 1986 年 6 月 1988 年 12 月  1989 年 9 月 1992 年 9 月 1999 年 4 月 2003 年 12 月 長崎大学医学部卒業 長崎大学病院研修医(形成外科) 山口県立中央病院形成外科 長崎大学病院形成外科医員 松江赤十字病院形成外科 大分中村病院形成外科 長崎大学病院形成外科助手   同 講師 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 形成外科助教授(現 准教授) 現在に至る

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上肢の広範囲皮膚軟部組織欠損に対する治療 ~アルゴリズムに沿った再建法~ 長崎大学医学部形成外科 田中 克己 皮膚は身体にとって生体を被覆する最大の器官である。その機能は外界の物理的な刺激に対し ての防御作用を有し、身体の運動に対してはその抵抗が最小限となるような形で連動する。触 覚の感覚器としての働きや水分の透過性や熱交換の機能も有しており、さらには整容的な面で の視点も併せ持つことになる。このように皮膚軟部組織は構造的にも役割のうえでも非常に多 様性な面を持っている。 そのため、皮膚軟部組織の欠損はその広さや状態にもよるが、感染・拘縮などの問題を生じる とともに上肢においては整容的な面の障害も残ることになる。今回は上肢における広範囲皮膚 軟部組織欠損に対して、基本的な閉鎖法から最新の治療までを解説する。『広範囲』の定義とし ては、縫縮やいわゆる局所皮弁などのように創周囲組織の処置だけでは治療困難なものとした。 治療法を選択する上で、①年齢・性別、②原因疾患、③期間、④欠損の状態(部位・広さ・深達度・ 深部組織の合併欠損の有無など)、⑤汚染・感染の有無、⑥既往歴などが重要な点として考え られる。また、深部組織の合併欠損に対する再建時期(一次・二次再建)の判断も必要となる。 再建の具体的な方法としては、大きく分けて遊離植皮術、有茎皮弁(隣接皮弁・穿通枝皮弁・ 遠隔皮弁)、遊離皮弁を患者個々の条件や希望に応じて選択するが、同時に皮膚軟部組織の被 覆だけなのか、機能再建も必要なのかなどの検討も行う。また、組織移植だけではなく、創傷 被覆材、人工真皮、陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy)、ティッシュー・エキ スパンダーなどの併用も症例によっては有用な治療法であると考えられる。 機能と整容の両面の回復が必須であるため、再建時期を含めて厳密な治療方針が重要である。 アルゴリズムに沿った再建法について詳述する。 田中 克己(たなか かつみ) 長崎大学医学部形成外科 講師略歴 略歴 1984 年 3 月 同年      1984 年 8 月 1986 年 6 月 1988 年 12 月  1989 年 9 月 1992 年 9 月 1999 年 4 月 2003 年 12 月 長崎大学医学部卒業 長崎大学病院研修医(形成外科) 山口県立中央病院形成外科 長崎大学病院形成外科医員 松江赤十字病院形成外科 大分中村病院形成外科 長崎大学病院形成外科助手   同 講師 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 形成外科助教授(現 准教授) 現在に至る

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CRPS を取り巻く諸問題(医原性神経損傷を含めて) 医療法人有光会サトウ病院 院長 古瀬 洋一 CRPS は未だに病因が解明されていないので、診断、治療、さらには補償など種々の問題を抱 えているが、その問題は時代により変化してきている。CRPS という用語が登場する前の 1980 年代には、RSD を知らない臨床医が多数いたことが最も問題で、早期診断・早期治療が盛ん に啓蒙された。RSD を見落とした医師が訴えられ、損害賠償を命ずる判決が出たため、over diagnosis, over treatment が推奨され、とにかく疾患の見落としは避けなければならないとさ れてきた。ところがその後、CRPS と診断されれば補償額が増額される傾向が顕著になったため、 患者とその代理人が CRPS と診断されることを歓迎した。最近のポイントは over diagnosis し ないことで、当然であるが正しい診断が求められている。 診断基準もかつてよく使われていた Gibbons’s RSD score は使われなくなり、国際疼痛学会基 準や厚労省研究班判定指標が用いられている。後者を用いた場合の感度は 82.6%、特異度は 78.8%で、精度はまずまずであるが、擬陽性が 22.8% 含まれることが問題である。また、厚労省 研究班判定指標は国際疼痛学会基準を準拠しているので「痛みや機能不全の原因を説明できる 病態が存在する場合には除外」される。すなわち、他の疾患の完全な除外ができているかが問 題である。 治療に関しては、かつて星状神経節ブロックが唯一無二のように行われていたが、時代ととも に神経ブロックの占める割合が減り、薬物療法とリハビリテーションの重要性が増した。近年、 神経障害性疼痛治療薬が脚光を浴びているが CRPS は正確には神経障害性疼痛には分類され ず、したがって有効率も低い。CRPS と一括りにされているが、その症状・所見・病態は各症 例で異なり、症例毎に最も適切な治療法を選択できるかが問題である。 交通事故や労災、医療事故が原因の場合には、補償や後遺症診断が問題となる。労災にはカウ ザルギーと RSD の障害等級認定基準があるが、国際疼痛学会基準や厚労省研究班判定指標と は基準が異なるためにしばしば問題となる。最近、医原性の神経損傷(殊に注射針による針刺 し損傷)が増加している。患者の被害者意識が高まったことが大きいが、事故直後の対応と診 断が拙いために長期化している場合が多い。特に肘部での採血による針刺しで正中神経損傷と 診断され、正中神経損傷後の CRPS と後遺障害診断される例が問題である。その多くは内側前 腕皮神経損傷であり、医療側の注意義務違反を問われるものではないと思われる。 古瀬 洋一(こせ よういち) 医療法人有光会サトウ病院 院長 講師略歴 略歴 1985年(昭和60年)3月 1985年(昭和60年)5月 1985年(昭和60年)7月  1989年(平成 元年) 7月  1993年(平成 5年) 7月  1994年(平成 6年) 4月  1999年(平成11年)2月  2000年(平成12年)7月 大阪市立大学医学部卒業 大阪市立大学医学部整形外科入局 国立大阪病院整形外科 大阪市立住吉市民病院整形外科 大阪市立城北市民病院整形外科 大阪市立総合医療センター整形外科医長 大阪府済生会中津病院整形外科 医療法人有光会サトウ病院院長 現在に至る

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CRPS を取り巻く諸問題(医原性神経損傷を含めて) 医療法人有光会サトウ病院 院長 古瀬 洋一 CRPS は未だに病因が解明されていないので、診断、治療、さらには補償など種々の問題を抱 えているが、その問題は時代により変化してきている。CRPS という用語が登場する前の 1980 年代には、RSD を知らない臨床医が多数いたことが最も問題で、早期診断・早期治療が盛ん に啓蒙された。RSD を見落とした医師が訴えられ、損害賠償を命ずる判決が出たため、over diagnosis, over treatment が推奨され、とにかく疾患の見落としは避けなければならないとさ れてきた。ところがその後、CRPS と診断されれば補償額が増額される傾向が顕著になったため、 患者とその代理人が CRPS と診断されることを歓迎した。最近のポイントは over diagnosis し ないことで、当然であるが正しい診断が求められている。 診断基準もかつてよく使われていた Gibbons’s RSD score は使われなくなり、国際疼痛学会基 準や厚労省研究班判定指標が用いられている。後者を用いた場合の感度は 82.6%、特異度は 78.8%で、精度はまずまずであるが、擬陽性が 22.8% 含まれることが問題である。また、厚労省 研究班判定指標は国際疼痛学会基準を準拠しているので「痛みや機能不全の原因を説明できる 病態が存在する場合には除外」される。すなわち、他の疾患の完全な除外ができているかが問 題である。 治療に関しては、かつて星状神経節ブロックが唯一無二のように行われていたが、時代ととも に神経ブロックの占める割合が減り、薬物療法とリハビリテーションの重要性が増した。近年、 神経障害性疼痛治療薬が脚光を浴びているが CRPS は正確には神経障害性疼痛には分類され ず、したがって有効率も低い。CRPS と一括りにされているが、その症状・所見・病態は各症 例で異なり、症例毎に最も適切な治療法を選択できるかが問題である。 交通事故や労災、医療事故が原因の場合には、補償や後遺症診断が問題となる。労災にはカウ ザルギーと RSD の障害等級認定基準があるが、国際疼痛学会基準や厚労省研究班判定指標と は基準が異なるためにしばしば問題となる。最近、医原性の神経損傷(殊に注射針による針刺 し損傷)が増加している。患者の被害者意識が高まったことが大きいが、事故直後の対応と診 断が拙いために長期化している場合が多い。特に肘部での採血による針刺しで正中神経損傷と 診断され、正中神経損傷後の CRPS と後遺障害診断される例が問題である。その多くは内側前 腕皮神経損傷であり、医療側の注意義務違反を問われるものではないと思われる。 古瀬 洋一(こせ よういち) 医療法人有光会サトウ病院 院長 講師略歴 略歴 1985年(昭和60年)3月 1985年(昭和60年)5月 1985年(昭和60年)7月  1989年(平成 元年) 7月  1993年(平成 5年) 7月  1994年(平成 6年) 4月  1999年(平成11年)2月  2000年(平成12年)7月 大阪市立大学医学部卒業 大阪市立大学医学部整形外科入局 国立大阪病院整形外科 大阪市立住吉市民病院整形外科 大阪市立城北市民病院整形外科 大阪市立総合医療センター整形外科医長 大阪府済生会中津病院整形外科 医療法人有光会サトウ病院院長 現在に至る

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生物学的製剤時代を迎えたリウマチ手の治療 奈良県立医科大学 整形外科 小畠 康宣 2003 年に日本にて生物学的製剤が導入されて以来 10 年が経過しようとしているが、この間リウ マチの治療は「パラダイムシフト」と呼ばれるようなドラスティックな変化が見られた。それま では関節炎による関節破壊を防止することが困難で、臨床症状を和らげる治療に終始していた ものが、注射された翌日には患者も驚くような改善がみられるようになり、長期的にも関節破壊 の進行をかなりの部分防止可能となった。現在はさらに Treat to Target の概念を背景にして、 早期よりの tight control が提唱されている。 われわれ手外科医が扱う手・手指はリウマチの初発症状が生じる部位としては最多であり、リ ウマチ歴=手・手指の関節障害歴である患者さんが多い。日常的に使用する関節であるがゆえ に痛みや関節破壊による ADL 障害も多く、以前は多くの滑膜切除、関節形成や固定術などが 施行されていた。しかし前述した生物学的製剤の登場以来、関節腫脹が比較的よく改善するた めに滑膜切除術が必要な症例は減少しており、リウマチ手の手術は変形した手指や断裂腱の再 建術にシフトしてきている。 現在の施行されている手術としては十分な薬物療法にても改善しない1〜数個の関節に対する 滑膜切除術、関節腫脹の既往によるスワンネック変形やボタンホール変形などの手指関節変形 に対する矯正術、摩耗により断裂を生じた伸筋腱や屈筋腱の再建術、すでに破壊が高度に進ん でいる関節に対する人工関節置換術や関節固定術等があげられる。術式も鏡視下手術などが多 く取り入れられるようになり、エコー下ブロックでの手術など低侵襲で合併症の多い RA 患者に も適応可能な方法が模索されている。基本的には手術が必要な症例は、すべて生物学的製剤の 適応症例と考えられ、まず手術を行うか、薬剤の投与を行うかの判断が必要である。そのため には手術療法はもちろん薬物療法についてもある程度の知識を持っておくことが必要である。 単に変形に対して手術をするだけの時代は終わり、現在は生物学的製剤や充分量の MTX 等の 抗リウマチ薬による薬物治療でどれだけの効果が得られるかも判断し手術適応、手術方法を選 択する必要がある。また術後も適切なリハビリテーションはもちろんであるが、他の罹患関節の ケアや強力な薬物療法の継続が術後成績を大きく左右することを肝に銘じておく必要がある。 小畠 康宣(こばた やすのり) 奈良県立医科大学 整形外科・リウマチセンター 講師略歴 略歴 平成 3 年 3 月 平成 3 年 4 月 平成 11 年 1 月 平成 14 年 5 月 平成 23 年 4 月 奈良県立医科大学卒業 奈良県立医科大学 整形外科入局 奈良県立医科大学 整形外科 医員 奈良県立医科大学 整形外科 助手(助教) 奈良県立医科大学附属病院 リウマチセンター(併任)

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生物学的製剤時代を迎えたリウマチ手の治療 奈良県立医科大学 整形外科 小畠 康宣 2003 年に日本にて生物学的製剤が導入されて以来 10 年が経過しようとしているが、この間リウ マチの治療は「パラダイムシフト」と呼ばれるようなドラスティックな変化が見られた。それま では関節炎による関節破壊を防止することが困難で、臨床症状を和らげる治療に終始していた ものが、注射された翌日には患者も驚くような改善がみられるようになり、長期的にも関節破壊 の進行をかなりの部分防止可能となった。現在はさらに Treat to Target の概念を背景にして、 早期よりの tight control が提唱されている。 われわれ手外科医が扱う手・手指はリウマチの初発症状が生じる部位としては最多であり、リ ウマチ歴=手・手指の関節障害歴である患者さんが多い。日常的に使用する関節であるがゆえ に痛みや関節破壊による ADL 障害も多く、以前は多くの滑膜切除、関節形成や固定術などが 施行されていた。しかし前述した生物学的製剤の登場以来、関節腫脹が比較的よく改善するた めに滑膜切除術が必要な症例は減少しており、リウマチ手の手術は変形した手指や断裂腱の再 建術にシフトしてきている。 現在の施行されている手術としては十分な薬物療法にても改善しない1〜数個の関節に対する 滑膜切除術、関節腫脹の既往によるスワンネック変形やボタンホール変形などの手指関節変形 に対する矯正術、摩耗により断裂を生じた伸筋腱や屈筋腱の再建術、すでに破壊が高度に進ん でいる関節に対する人工関節置換術や関節固定術等があげられる。術式も鏡視下手術などが多 く取り入れられるようになり、エコー下ブロックでの手術など低侵襲で合併症の多い RA 患者に も適応可能な方法が模索されている。基本的には手術が必要な症例は、すべて生物学的製剤の 適応症例と考えられ、まず手術を行うか、薬剤の投与を行うかの判断が必要である。そのため には手術療法はもちろん薬物療法についてもある程度の知識を持っておくことが必要である。 単に変形に対して手術をするだけの時代は終わり、現在は生物学的製剤や充分量の MTX 等の 抗リウマチ薬による薬物治療でどれだけの効果が得られるかも判断し手術適応、手術方法を選 択する必要がある。また術後も適切なリハビリテーションはもちろんであるが、他の罹患関節の ケアや強力な薬物療法の継続が術後成績を大きく左右することを肝に銘じておく必要がある。 小畠 康宣(こばた やすのり) 奈良県立医科大学 整形外科・リウマチセンター 講師略歴 略歴 平成 3 年 3 月 平成 3 年 4 月 平成 11 年 1 月 平成 14 年 5 月 平成 23 年 4 月 奈良県立医科大学卒業 奈良県立医科大学 整形外科入局 奈良県立医科大学 整形外科 医員 奈良県立医科大学 整形外科 助手(助教) 奈良県立医科大学附属病院 リウマチセンター(併任)

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