六
大
縁
起
説
の
史
的
考
察
栂
尾
祥
雲
目 次 一 、 序 言 二 、 六 大 縁 起 の 語 義 三 、 原 始 佛 教 の 六 大 種 四 、 顯 の 大 乗 教 に 於 け る 六 大 五 、 密 教 に 於 け る 五 字 と 五 大 と 五 色 六 、 密 教 に 於 け る 五 形 と 五 輪 七 、 悉 地 出 現 の た め の 五 大 觀 八 、 高 祖 の 六 大 縁 起 説 九 、 高 祖 以 後 に 於 け る 六 大 縁 起 説 十 , 結 言 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 一 、 序 言 密 教 の 六 大 縁 起 説 な る も の は 古 來 幾 多 の 人 々 に 依 り て 論 じ 盡 さ れ た 極 め て 陳 腐 な 問 題 で あ る 。 そ れ に も 拘 ら ず 、 此 の 問 題 は 今 な ほ 完 全 に 研 究 し 盡 さ れ た 鐸 で は な い 。 顯 教 の 六 大 説 に 比 較 し て 密 教 の 六 大 説 が 如 何 に し て 起 り 、 如 何 に し て 発 達 し 、 如 河 な る 點 に 於 て 特 色 を 有 し て 居 る か と 云 ふ 様 な こ と を 詮 明 し た も の は 極 め て 勘 い 様 で あ る 。 高 祖 大 師 は 御 著 述 の 此 所 彼 所 に 於 て 、 顯 の 六 大 に 比 較 し て 密 教 の 六 大 を 高 調 し て あ る に 拘 ら ず 、 後 に は 却 つ て 密 教 の 六 大 を 顯 教 化 し た 様 な 傾 向 が あ る 。 元 來 密 教 の 六 大 説 な る も の は 絶 待 體 を 抽 象 的 に 空 的 に 觀 察 す る 顯 教 に 慊 ら な い で 、 妙 有 觀 の 上 か ら , 之 れ を 六 大 と せ ら れ た こ と は 明 瞭 で あ る け れ ど も 、 さ ら ば と て ﹃ 體 大 東 聞 記 ﹄ や ﹃ 宗 義 决 擇 ﹄ に 説 く 様 に 此 の 六 大 を 別 體 あ る も の ゝ 様 に 考 へ る の も 、 恐 ら く 秘 密 六 大 説 の 眞 意 を 得 た も の で は あ る ま い 。 い ま 吾 人 は 教 理 史 上 の 立 塲 に 立 ち 、 密 教 の 六 大 縁 起 説 な る も の が 如 何 に し て 起 り 、 如 何 な る 點 に 於 て 特 質 を 有 す る か を 明 か に し て 見 た い と 思 ふ の で あ る 。
二
、
六
大
縁
起
の
語
義
説 明 の 順 序 と し て 六 大 縁 起 の 語 義 か ら 穿 鑿 す る こ と に す る 。 六 大 の 原 語 は シ ヤ ツ ド 、 マ ハ ー ブ フ タ ー ニ で あ る が 、 此 れ に 六 大 種 と 云 ふ 義 と 單 に 六 大 と 云 ふ 義 と が あ る 。 之 れ 浮 多 、 な る 語 に 種 即 ち 原 素 の 義 と ﹃ あ る こ と ﹄ 若 く は ﹃ あ る 所 の も の ﹄ の 義 と が あ る か ら で 、 之 れ に 摩訶 即 ち 大 の 語 が 加 つ て 大 種 と も な り 、 ﹃ 大 で あ る も の ﹄ 即 ち 大 の 義 と も な る の で あ る 。 そ の 中 古 い 所 で は 大 底 之 れ を 大 種 即 ち 根 本 原 素 の 義 に 用 ひ 、 阿 含 経 や 倶 舍 論 な ど で は 之 れ を ま た 六 界 と も 呼 ん で 居 る 、 何 故 に 此 の 六 大 種 を 六 界 と 名 く る か の 理 由 に つ き て は 、 衆 賢 の 阿 毘 達 磨 藏 顯 宗 論 第 二 (冬 七 、 九 左 ) に 左 の 如 く 論 じ て 居 る 。 此 の 諸 大 種 を 何 に よ つ て 界 と 名 く る や 、 一 切 の 色 法 の 出 生 す る 本 な る が 故 に 、 ま た 大 種 よ り 大 種 を 出 生 す 、 す べ て 出 生 の 本 を 世 間 に は 界 と 名 く 。 金 等 の 礦 山 を 金 等 の 界 と 名 け 、 或 は 種 々 の 苦 を 出 生 す る 本 な る が 故 に 説 い て 名 け て 界 と な す 。 喩 へ ば 前 説 の 如 し 。 あ る が 説 か く 、 能 く 大 種 の 自 性 及 び 所 造 の 色 を 持 す る が 故 に 界 と 名 く と 。 是 の 如 き 諸 界 を ま た 大 種 と 名 く 。 何 故 に 種 と 言 ふ や 、 云 何 ん が 大 と 名 く る や 、 種 々 の 造 色 差 別 し て 生 す る 時 、 彼 々 の 品 類 差 別 し て 能 く 起 る 。 是 故 に 種 と 言 ふ 。 四 大 種 差 別 あ る に 由 る が 故 に 造 色 差 別 す 。 乃 至 、 言 ふ 所 の 大 と は 大 用 め る が 故 に 。 然 る に 此 の 六 大 種 に 關 す る 思 想 が 一 轉 し て 、 後 に 説 明 す る 様 に 、 絶 封 界 の 風 光 を 象 徴 す る た め に 使 用 せ ら る ゝ に 至 り 、 原 素 の 義 が 全 く 失 は れ 、 六 の 屬 性 を 有 す る 大 な る も の 、 即 ち 六 大 の 義 に 用 ひ ら る ゝ 様 に な つ て 來 た 。 密 教 に 六 大 と 云 つ て 六 大 種 と も 六 界 と も 云 は な い 理 由 も 此 所 に あ る と 云 つ て 可 い 。 更 に 縁 起 の 語 で あ る が 梵 語 に は 之 れ を プ ラ チ ー チ ヤ 、 ナ ム ツ ト パ ー ダ と 云 ふ 。 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 寮 三
六 大 縁 配 説 の 史 的 考 察 四 倶 舍 論 第 九國譯五八四頁 に は 此 の 語 を 分 析 し て 種 々 に 釋 し た る 後 。 ﹁ 此 に 依 り て 、 有 の 法 の 縁 に 至 り 己 は り て 和 合 す る に 至 る に 昇 起 す る 、 是 れ 縁 起 の 義 な り ﹂ と 説 い て 居 る 。 即 ち ﹁ 物 (有 ) が 相 縁 り て 生 起 す る も の 之 れ 縁 起 で あ る ﹂ と の 義 で あ る 。 併 し 原 始 佛 教 で ば 此 の 緑 起 な る 語 を 縁 生 ま た は 因 縁 生 法 な ど と 譯 し 、 物 が 相 縁 り て 生 超 す る 過 程 よ り も 、 そ の 相 縁 り て 生 じ た る 事 物 を 指 す こ と に な つ て 居 る 。 從 つ て 、 眞 如 が 無 明 の 縁 に よ つ て 萬 法 を 生 起 す と 説 く 眞 如 縁 起 論 な ど の 縁 起 と は 少 し く そ の 意 義 を 異 に も て 居 る 。 然 る に も 拘 ら ず 、 之 れ を 縁 起 と 云 ふ 所 以 は 原 始 佛 教 の 語 を そ の ま ゝ 轉 用 し た に 過 ぎ な い 。 と は 云 へ 、 現 象 に 即 し て 實 在 を 認 め 此 の 現 象 界 は そ の ま ゝ 六 大 を 以 て 象 徴 す る 實 在 の 表 現 だ と す る 密 教 の 六 大 縁 起 説 の 縁 起 は 原 始 佛 教 に 使 用 せ ら れ た る 原 義 に 近 い と 云 つ て 宜 し い の で あ る 。
三
、
原
始
佛
教
の
六
大
種
地 水 火 風 の 四 大 若 く は 五 大 を 以 て 萬 有 の 本 體 と し 原 素 と す る こ と は 古 代 印 度 、 古 代 希 臘 に 共 通 の 思 想 で あ つ て 、 特 に 印 度 に 於 て は ウ パ ニ シ ヤ ツ ト で も 數 論 で も 勝 論 で も ジ ャ イ ナ 教 で も 何 れ も 皆 之 れ を 主 唱 し て 居 る 。 さ れ ば 决 し て 佛 教 の み の 專 有 で は な い 。 併 し 此 の 地 水 火 風 空 の 五 大 種 の 外 に 第 六 識 大 を 立 て る の は 恐 ら く 佛 教 が 最 初 で あ る ら し い 。 原 始 佛 教 の 六 大 種 即 ち 六 界 の 説 は 中 阿 含 第 三 、 増 一 阿 含 第 二 十 九 、 大 毘 婆 沙 論 第 七 十 五 等 に あ る ので あ る が 、 要 す る に 物 質 た る 吾 人 の 身 體 は 地 水 火 風 空 の 五 原 素 よ り 成 り 、 吾 人 の 精 神 作 用 は 識 な る 原 素 を 本 と し て 生 ず る の で 、 此 の 六 大 種 が 和 合 し て 母 胎 に 生 じ 、 そ れ が 発 展 し て 眼 耳 鼻 舌 身 意 の 六 根 等 と な る の で あ る と 主 張 す る の で あ る 。 世 親 の 倶 舍 論 第 一 (牧 九 、 九 九 右 ) に は 之 れ を 継 承 し て 左 の 如 く に 論 じ て 居 る 且 く 彼 の 経 中 に 説 く 所 の 六 界 の 中 に 於 て , 地 水 火 風 の 四 界 は 已 に 説 き た り 。 空 識 二 界 は 未 だ 其 の 相 を 説 か ず 。 即 ち 虚 空 を 名 け て 空 界 と な す と せ ん や 、 一 切 の 識 を 名 け て 識 界 と せ ん や 。 爾 ら ず 。 云 何 ん 。 頌 に 曰 く 空 界 は 謂 は く 竅 隙 な り 、 傳 説 す ら く 是 れ 明 暗 な り と 、 識 界 は 有 漏 の 識 な り 、 有 情 の 生 の 所 依 な り 。 之 れ に 依 つ て 見 る も 明 か な る 如 く 、 有 漏 識 は 吾 人 の 精 神 作 用 の 原 因 即 ち 原 素 と な る も 、 無 漏 識 は そ の 原 素 と は な ら な い 。 之 れ 無 漏 識 は 流 轉 生 起 の 原 因 と な ら な い か ら で あ る 。 ビ ユ ル ヌ フ 氏 の 佛 教 史 序 論 四 四 三 頁 井 に ブ レ ー 、 ブ ツ サ ン 氏 譯 の 倶 舍 論 に 依 る と 、 此 の 倶 舍 論 中 に 引 用 せ る 経 と は 入 胎 藏 経 の こ と で あ る と 云 ふ 。 此 の 経 は 大 寳 積 経 第 五 十 六 卷 (地 三 、 七 七 ) に 收 容 せ ら れ 、 ま た 義 淨 譯 の 根 本 説 一 切 有 部 毘 奈 耶 雑 事 第 十 一 (寒一、四〇左 ) に も 引 用 せ ら れ て 居 る 。 そ の 内 容 は 中 阿 含 等 に 説 く 所 と 大 し た 異 り は な い 。 六 大 縁 起 觀 の 史 的 考 察 五
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 六 原 始 佛 教 中 で 吾 人 の 最 も 注 意 す べ き こ と は 十 偏 處 觀 中 に 於 け る 地 水 火 風 空 識 の 六 偏 庭 觀 で あ る 。 此 の 六 偏 處 觀 な る も の は 古 來 の 六 界 説 を そ の ま ゝ 觀 行 に 應 用 し た も の で 、 後 に 説 く 密 教 の 六 大 と は 密 接 な 關 係 を 有 し て 居 る 。 大 體 、 十 偏 威 觀 の こ と は 中 阿 含 第 六 十昃七 、 九九右 集 異 足 論 第 十 九 、 秋一、一一五左 解 脱 道 論 第 四藏三、三三左 婆 娑 論 第 入 十 五收四、四〇右 倶 舍 論 第 二 十 九收十、一〇五右 等 に 説 か れ て 居 る が 、 ハ ー デ イ 氏 は 巴 利 語 経 典 を 本 と し て そ の 著 、 東 方 寺 院二 五 二 頁 已 下 に 細 説 せ ら れ て 居 る 。 い ま そ の 要 を 取 つ て 云 ふ と 。 十 偏 處 觀 の 中 、 地 偏 處 觀 を 修 せ ん と す る も の は 二 定 の 方 式 に 依 っ て 、 恰 も 鏡 の 中 に 自 の 影 像 の 映 ず る が 如 く に 、 地 の 幻 像 が 心 の 中 に 顯 現 す る 様 に 地 の 形 を 取 ら ね ば な ら ぬ 。 そ し て そ の 地 が 吾 人 の 身 體 を 構 成 す る 一 原 素 で あ る こ と を 觀 察 せ ね ば な ら ぬ 。 そ の 地 の 形 は 餘 り 大 き 過 ぎ て は 不 便 で あ る か ら 、 粘 土 若 く は 地 を 以 て 眞 鍮 の 粥 椀 倉 9 位 の 大 き さ に し 、 そ れ を 自 分 の 前 に 畳 き て 遠 か ら す 近 か ら す 、 眼 を 半 開 に し て そ の 地 の 幻 影 が 常 に 心 に 現 す る 様 に 、 専 心 に そ れ を 凝 視 す る の で あ る 。 之 れ に 依 っ て 悪 念 を 解 脱 し 、 念 力 に 依 る が 故 に 空 中 を 遊 行 し 、 水 上 を 歩 み 、 人 が 起 居 動 作 す る 大 地 を 造 る こ と も 出 來 る 。 更 に 一 定 の 水 を 觀 法 の 對 象 と し て 水 偏 處 觀 を 修 す る 力 に 依 っ て 、 大 地 を 浮 動 せ し め 、 雨 を 降 ら し 、 河 海 を 創 造 す る 等 の こ と が 出 來 る 。
等 と 云 ふ の で あ る 。
四
、
顯
の
大
乗
教
に
於
け
る
六
大
地 水 火 風 空 識 を 以 て 萬 有 の 本 體 と 考 へ て 居 つ た 原 始 佛 教 の 思 想 は 般 若 経 の 興 起 と 共 に 一 變 し た 。 之 れ 地 水 火 風 空 等 は 何 れ も 現 象 界 の 法 に し て 、 斯 か る 現 象 界 の 法 は 悉 く 空 な り と な す が 船 若 の 思 想 で あ る か ら で あ る 。 從 つ て 大 般 若 経 第 百 二 十 九 卷洪七、三六左 に は ﹃ 云 何 ん か 名 け て 無 性 の 自 性 と な す か ﹄ と の 問 に 對 し 、 六 大 等 を 否 定 し て 若 し 地 界 性 な け れ ば 水 火 風 空 識 界 性 あ る こ と な し 、 乃 至 、 是 の 如 き 諸 法 の 無 性 の 自 性 を ば 皆 悉 く 名 け て 無 爲 の 法 性 と な す 。 と 答 へ て 居 る 。 ま た 羅 什 譯 の 仁 王 般 若 経 上 卷月九、四七右 に は ﹃ 十 二 入 も 十 入 界 も 空 に し て六 大の 法 も 空 な り ﹄ と 説 い て 居 る 。 そ の 他 、 中 論 第 一暑一、二十八左 般 若 燈 論 第 四暑一、七七右 等 に 六 大 の 空 無 な る こ と を 力 説 し て 居 る 。 併 し 諸 法 皆 空 の 思 想 は 古 來 の 僻 説 を 排 除 す る に は 最 も 適 切 で あ る が 、 さ ら ば と て 此 の 眞 室 思 想 を 以 て 永 く 人 心 を 繋 ぐ こ と は 到 底 不 可 能 で あ る 、 そ こ で 此 の 眞 空 の 中 に 妙 有 の 一 面 を 開 展 し や う と す る 努 力 が 起 つ て 來 た 。 そ の 妙 有 の 思 想 開 展 に 努 力 し た 入 と し て は 、 密 教 を 龍 樹 に 授 け た と 稱 せ ら る ゝ か の 西 藏 傳 の 羅 喉 羅 跋 陀 羅 ( 後 に と 云 ふ ) な ど が 先 達 で あ つ た ら し い 。 こ の 羅 喉 羅 跋 陀 羅 は 龍 樹 と 同 時 代 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 七六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 八 の 人 で 積 極 的 實 相 觀 即 ち 妙 有 説 を 主 張 し た 人 で あ る 。 西 藏 傳 に は 彼 を 龍 樹 の 師 と し て 居 る 。 思 ふ に 龍 樹 が 思 想 上 に 於 て 、 此 の 羅 喉 羅 跋 陀 羅 に 負 ふ 所 多 き こ と は 、 か の 大 智 度 論 第 十 八 卷 中 に あ る 、 般 若 讃 の 二 十 偶 が 羅 喉 羅 跋 陀 羅 の 作 な る に 徴 す る も 明 か で あ る 。 更 に ま た 龍 樹 が 眞 空 の み の 主 張 者 で な く 妙 有 の 思 想 を 繼 承 し て 居 る こ と は 、 智 度 論 第 七 十 二 卷 に 於 て 、 般 若 波 羅 蜜 多 の 中 、 或 時 は 分 別 し て 諸 法 は 空 な り と 云 ふ 。 是 れ 淺 な り 。 或 時 は 説 き て 世 間 法 即 浬 槃 に 同 じ と 云 ふ 、 是 れ 深 な り 。 色 等 の 諸 法 は 即 ち 是 れ 佛 法 。 と あ る に よ り て 知 る べ き で あ る 。 此 の 羅 喉 羅 跋 陀 羅 が 付 法 藏 因 縁 傳 等 に 謂 ゆ る 羅 喉 羅 と 同 一 人 で あ る こ と は 宇 井 氏 の ﹃ 印 度 哲 學 研 究 ﹄ 第 一 、 三 四 二 頁 已 下 に 考 證 し て 居 る か ら 一 切 を そ れ に 護 る こ と に す る 。 タ ー ラ ナ ー タ ー の 佛 教 史第十四章并に第十七章 で は 龍 樹 の 師 た る 羅 喉 羅 と 提 婆 の 弟 子 た る 羅 喉 羅 と の 二 人 あ つ た や う に 記 し て あ る け れ ど も 、 思 ふ に 此 は 誤 り で 、 羅 喉 羅 が 龍 樹 と 提 婆 と に 關 係 す る 事 蹟 を 本 と し て 、 之 れ を 異 人 と 考 へ た も の ら し い 。 大 體 に 於 て 、 羅 喉 羅 は 龍 樹 提 婆 と 同 時 代 の 入 で あ る が 、 年 齢 の 上 に 於 て は 羅 喉 羅 が 最 も 若 く 、 龍 樹 の 滅 後 、 提 婆 と 共 に 教 法 を 宣 布 し 、 提 婆 の 滅 後 に も 尚 生 存 し て 居 つ た 上 か ら 付 法 藏 因 縁 傳 第 六 な ど で は 、 彼 を 提 婆 の 弟 子 と し て 記 し た も の ら し い 。 嘉 祥 大 師 の 中 論 疏 第 三 に 依 る と 、 此 の 羅 喉 羅 は 般 若 の 皆 空 説 を 以 て 満 足 せ す 、 そ の 皆 空 の 入 不 を 釋 す る に 常 樂 我 淨 の 四 徳 を 以 て し た と 云 ふ 。 此 の 絶 對 空 を 釋 す る に 常 樂 我 淨 の 四 徳 を 以 て し た と 云 ふ 妙 有 觀 は 確 か に 密 教 思 想 の 先 驅
を な し た も の と も 見 ら れ る の で あ る 。 何 故 か と 云 ふ と 、 霜 教 に 謂 ゆ る 大 日 如 來 は 絶 對 空 を 妙 有 的 に 表 現 し た る も の な る と 共 に 、 そ の 屬 性 た る 金 寶 法 業 の 四 波 羅 蜜 は 常 樂 我 淨 の 四 徳 に 過 ぎ な い か ら で あ る 此 の 四 波 羅 蜜 が 四 徳 で あ る こ と は 理 趣 釋 経 の 四 姉 妹 品 の 下 に 説 明 せ る 通 り で あ る 。 斯 く 顯 の 大 乘 教 に 於 て 、 妙 有 の 思 想 が 開 展 せ ら る ゝ と 共 に 、 皆 空 派 の 聖 權 た り し 八 千 偶 の 般 若 経 、 即ち小小品般若經十卷 を 以 て 満 足 せ ず 、 妙 有 思 想 の 上 か ら 之 れ を 改 變 し た も の が 二 萬 五 千 頌 の 般 若 即 ち 羅 什 譯 の 摩 訶 般 若 波 羅 蜜 経 二 十 七 卷 で あ る と 稱 せ ら れ る 。 か か る 徑 路 を 経 て 、 陳 代 月 婆 首 那 の 譯 た る 勝 天 王 般 若 経 顯 相 品 第 二 に 相 當 す る 玄 弉 譯 の 大 般 若 経 第 五 百 六 十 七 卷 に は 此 の 絶 對 空 の 境 地 を ば 妙 有 的 に 地 水 火 風 空 の 五 大 を 以 て 左 の 如 く に 形 容 し て 居 る 。 爾 の 時 に 最 勝 ま た 座 よ り 起 ち て 、 偏 覆 右 肩 に し 、 右 膝 を 地 に 著 け 、 合 掌 し て 佛 に 向 つ て 白 し て 言 さ く 、 世 尊 よ 、 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 は 何 を 以 て 相 と な す か と 、 是 に 於 て 世 尊 、 最 勝 に 告 げ て 曰 く 、 天 王 よ 、 當 に 知 る べ し 、 地 水 火 風 空 等 の 相 の 如 く 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し と 。 是 の 時 、 最 勝 便 ち 佛 に 白 し て 言 さ く 、 世 尊 よ 、 云 何 ん が 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 は 地 水 火 風 空 等 の 相 の 如 く な る か と 、 佛 最 勝 に 告 ぐ 、 天 王 よ 當 に 知 る べ し 、 普 偏 廣 大 に し て 度 量 す べ き こ と 難 し 、 是 を 地 相 と な す 、 甚 深 般 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し 。 何 を 以 て の 故 に 、 諸 法 眞 如 普 遍 廣 大 に し て 測 量 す べ き こ と 難 き が 故 に 。 天 王 富 に 知 る べ し 、 一 切 の 藥 事 、 地 に 依 つ て 長 生 す 、 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し 、 普 く 能 く 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 九
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 〇 一 切 の 善 法 を 生 長 す 。 乃 至 、 天 王 當 に 知 る べ し 、 譬 へ ば 水 大 の 高 き よ り 赴 下 し て 、 水 族 の 蹄 す る 所 な る が 如 く 、 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し 、 眞 法 界 よ り 世 間 に 流 趣 し て 一 切 の 善 法 の 依 止 す る 所 な り 。 ま た 水 大 の 能 く 草 木 を 潤 し て 花 果 を 生 ず る が 如 く , 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し 、 乃 至 、 天 王 當 に 知 る べ し 、 譬 へ ば 火 大 は 一 切 の 樹 木 藥 草 を 焼 く と 錐 も 而 も 我 れ 能 く 物 を 焼 く と 念 言 せ ず 、 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し 。 乃 至 、 天 王 當 に 知 る べ し 、 書 へ ば 風 大 の 能 く 一 切 の 物 類 を 増 長 せ し む る が 如 く 、 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し 、 能 く 一 切 の 世 出 世 間 の 善 法 を 増 長 せ し む ま た 風 大 若 し 増 盛 な る 時 に は 普 く 能 く 一 切 の 物 類 を 摧 滅 す る が 如 く 、 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 も 亦 復 是 の 如 し 。 若 し 修 増 盛 な れ ば 遍 く 能 く 生 死 の 煩 惱 を 摧 滅 す 。 乃 至 、 天 王 當 に 知 る べ し 、 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 は 離 垢 無 著 に し て 、 寂 靜 無 量 無 邊 の 智 慧 あ り 、 昂 等 に し て 諸 法 の 實 相 に 通 達 す る こ ご 太 虚 空 性 の 無 所 住 な る が 如 し 。 境 界 相 を 離 れ 、 尋 伺 等 を 超 へ 、 心 及 心 所 、 都 べ て 無 分 別 に し て 生 な く 滅 な く 自 性 を 離 る ゝ が 故 に 。 と 、 此 所 に 説 く 所 の 五 大 は 、 か の 原 始 佛 教 な ど に 言 ふ 所 の 原 素 と し て の 五 大 と は 全 く そ の 趣 き を 異 に し 、 ﹁ 六 大 の 法 も 空 な り ﹂ こ し て 否 定 し 去 つ た 般 若 皆 空 中 に 含 む 所 の 妙 有 の 屬 性 を 形 容 し た も の で あ る さ れ ば 此 の 勝 天 王 般 若 経 に 於 け る 五 大 は 原 素 で は な く 、 たゞ 般 若 の 屬 性 を 形 容 し た る も の 若 く は そ の 象 徴 に 過 ぎ な い の で あ る 。
更 に 三 界 唯 心 を 主 張 す る 唯 識 家 で は 、 五 大 等 の 色 法 は 悉 く 假 有 な り と し な が ら 、 三 界 唯 識 の 勝 解 を 得 る た め の 方 便 と し て 、 地 水 火 風 等 の 六 大 觀 を 採 用 し て 居 る 。 そ れ は 十 偏 處 觀 中 に 於 け る 地 水 火 風 空 識 の 六 偏 處 觀 が 即 ち そ れ で あ る 。 喩 伽 論 第 十 二 卷 に は 此 等 の 偏 處 觀 を 釋 し て 、 觀 行 を 修 す る も の は 先 づ 所 縁 に 於 て 思 惟 し 勝 解 し 、 次 に 能 く 制 伏 す 。 既 に 制 伏 に 於 て 自 在 を 得 已 は つ て 後 に 、 即 ち 此 に 於 て 一 切 處 に 偏 じ て 其 の 所 欲 の 如 く 勝 解 を 作 す 。 と 云 ひ 、 そ の 偏 處 觀 の 功 穂 を 左 の 如 く に 述 べ て 居 る 。 八 色 偏 處 善 く 清 淨 な る が 故 に 、 能 く 賢 聖 の 勝 解 、 神 通 及 び 諸 の 事 に 於 て 轉 變 す る 神 通 を 引 き 、 其 勝 解 の 如 く 轉 變 す る 所 に 随 つ て 皆 能 く 成 就 し 、 又 能 く 金 銀 等 の も の を 變 作 し て 所 用 あ る に 堪 へ た り 。 識 偏 處 善 く 清 淨 な る に 由 る が 故 に 、 便 ち 能 く 無 諍 、 願 智 、 無 磯 解 等 の 諸 の 勝 れ た る 功 徳 を 引 発 す 。 空 偏 處 善 く 清 淨 な る に 由 る が 故 に 、 其 の 所 欲 に 随 つ て 皆 轉 じ て 空 と な る 。 譬 へ ば 世 間 の 瓦 鐵 金 の 師 初 め 泥 等 に 和 し て 未 だ 善 く 調 練 せ ざ る が 如 く 、 解 脱 位 も 亦 爾 な り 、 善 く 調 練 す る が 如 く 勝 處 の 位 も 亦 爾 な り 、 調 練 し 已 は つ て 欲 に 随 つ て 轉 變 す る が 如 く 、 偏 處 の 位 も 亦 爾 な り 。 と 、 此 に 於 て 之 れ を 考 ふ る に 、 顯 教 大 乘 に 於 て は 萬 有 の 原 素 と す る 原 始 佛 教 の 六 大 種 説 を 否 定 す る と 共 に 眞 空 妙 有 の 形 容 語 と し て 之 れ を 採 用 し 、 更 に 三 界 唯 心 の 勝 解 を 得 し む る 方 便 と し て 、 原 始 佛 教 の 十 偏 處 觀 を も 依 用 し た も の で あ る と 云 つ て 可 い 。 二 方 に 之 れ を 否 定 し な が ら .一 方 に 之 れ を 他 の 形 式 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 一
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 二 に 於 て 採 用 し た る 所 以 は 、 之 れ 全 く 大 乘 教 徒 の 包 容 思 想 に 基 く の で 、 二 萬 五 千 頌 の 般 著 た る 摩 訶 般 若 遍 學 品 第 七 十 四 に 依 る と ﹁ 菩 薩 た る も の は 聲 聞 . 緑 覺 等 の 一 切 の 道 を 學 し 、 之 れ を 以 て 衆 生 を 導 く べ し 、 之 れ を 淨 道 種 智 と 云 ふ ﹂ と の 旨 趣 が 證 か れ て 居 る 。 大 乘 教 徒 の 立 塲 が 那 邊 に あ つ た か は 此 に 依 り て も 知 ら る ゝ の で あ る 。
五
、
密
教
に
於
け
る
五
字
と
五
大
と
五
色
眞 言 密 教 の 五 大 説 が 顯 大 乘 の 思 想 を 繼 承 し た も の な る こ と は 大 日 経 住 心 品 に あ る 左 の 文 に 依 つ で も 窺 知 す る こ と が 出 來 る 。 即 ち 此 の 一 切 智 々 の 道 は 一 味 な り 、 謂 ゆ る 如 來 の 解 脱 味 な り 。 世 尊 よ 、 譬 へ ば 虚 空 界 の 一 切 の 分 別 を 離 れ て 分 別 も な く 無 分 別 も な き が 如 く 、 是 の 如 く 一 切 智 々 も 一 切 の 分 別 を 離 れ て 分 別 も な く 無 分 別 も な し 。 世 尊 よ 、 譬 へ ば 大 地 は 一 切 衆 生 の 依 た る が 如 く 、 是 の 如 く 一 切 智 々 も 天 人 阿 修 羅 の 依 た り 。 世 尊 よ 、 譬 へ ば 火 界 の 一 切 の 薪 を 焼 く に獣足 な き が 如 く 、 是 の 如 く 一 切 智 々 も 一 切 無 智 の 薪 を 焼 く に 獣 足 す る 所 な し 。 世 尊 よ 、 譬 へ ば 風 界 の 一 切 の 塵 を 除 く が 如 く 、 是 の 如 く 、 一 切 智 々 も 一 切 の 諸 の 煩 惱 の 塵 を 除 去 す 。 世 尊 よ 、 喩 へ ば 水 界 は 一 切 衆 生 之 れ に 依 つ て 歡 樂 す る が 如 く 是 の 如 く 、 一 切 智 々 も 諸 天 、 世 人 の 利 樂 を な す 。 と 、 之 れ 全 く 先 き に 引 用 せ る 勝 天 王 般 若 と 同 一 で 、 勝 天 王 般 若 に 甚 深 般 若 波 羅 蜜 多 と 呼 ん で 居 る も のを 一 切 智 々 と し た 位 に 過 ぎ な い 。 斯 く 絶 對 界 を 形 容 し 象 徴 す る に 五 大 を 以 て す る 思 想 と 相 並 ん で 、 眞 言 を 宗 と す る 密 教 で は の 五 字 を 以 て 絶 對 界 を 象 徴 す る 様 に な つ て 來 た o 之 れ 遠 く そ の 思 想 の 淵 源 を 尋 ぬ る と 、 吠 陀 、 婆 羅 門 書 等 に ま で 湖 る こ と を 得 る が 、 近 く は 龍 樹 の 智 度 論 等 に 於 け る 文 義 陀 羅 尼 に 負 ふ 所 が 多 い と 云 つ て 可 い 。 即 ち 契 は 不 生 の 義 た る ア ヌ ヅ ト パ ー ダ の 首 字 な る が 故 に 之 れ を 以 て 絶 對 界 の 不 生 不 滅 の 常 恒 體 な る こ と を 示 し 、 は 言 説 の 義 た る バ ク ト バ ハ の 首 字 な る が 故 に 、 之 れ を 以 て 絶 對 界 が 離 言 説 の 境 地 へな る こ と を 表 し 、 は 塵 垢 の 義 た る ラ ジ ヤ の 首 字 な る が 故 に 之 れ を 以 て 絶 對 界 に は 煩 惱 の 塵 垢 な き こ と を 示 し 、 は 因 業 を 意 味 す る へ ー ト バ の 首 字 な る が 故 に 之 れ を 以 て 絶 對 界 は 相 對 倶 成 の 因 縁 造 作 を 離 れ た る こ と を 指 し 、 は そ の ま ゝ 虚 空 の 義 な る が 故 に 之 れ を 以 て 絶 對 界 は 虚 空 の 如 く に 無 碍 渉 入 す る も の な る こ と を 象 徴 し た も の で あ る 。 此 の 如 く 、 絶 對 界 を 象 徴 す る に 、 一 方 に は 五 大 を 以 て し 、 一 方 に は 五 字 を 以 て す る 思 想 が あ る 。 次 で 此 の 二 思 想 を 合一 し 統 一 せ ん と す る に 至 る は 思 想 進 化 の 自 然 で あ る 。 况 ん や 五 大 と 云 ふ も 五 字 と 云 ふ も 共 に 絶 對 界 の 風 光 を 形 容 し 象 徴 し た も の に 過 ぎ な い を や で あ る 。 此 に 於 て 五 字 即 ち 五 大 な り と の 思 想 は 大 日 経 の 至 る 所 に 漲 つ て 居 る 。 西 紀 入 世 紀 の 中 葉 の 人 で 、 恰 も 不 空 三 藏 と 時 代 を 等 う し て 、 印 度 に 密 教 を 宣 傳 し た 佛 陀 瞿皿 耶 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 三
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 四 は そ の 著 、 大 毘 盧 遮 那 成 佛 神 變 加 持 大 経 疏 の 中 に 於 て 、 五 字 と 五 大 と の 關 係 を 左 の 如 く に 説 明 し て 居 る 。 は 一 切 法 本 初 不 生 な り と 了 解 す る 三 摩 地 門 を 説 い た の で あ る 。 そ の 門 よ り 蘊 、 界 、 處 等 の 諸 法 は 不 生 な り と 悟 る こ と で あ つ て 、 不 可 得 を 以 て 蘊 魔 を 降 伏 す る こ と で あ る 。 は 一 切 法 離 言 説 を 指 示 す る 三 摩 地 門 で あ る 。 言 説 の 道 は 分 別 で あ つ て 、 無 分 別 を 悟 り 分 別 な き が 故 に 天 魔 を 降 伏 す る こ と で あ る 。 此 の 如 く 蘊 等 の 諸 法 と 、 そ れ を 想 念 す る 分 別 な き が 故 に 此 等 に 著 す る 慾 等 の 煩 惱 な き こ と を の 門 よ り 表 示 し て 、 一 切 法 は 塵 垢 を 離 れ た る こ と を 悟 る こ と で あ る 。 塵 垢 と は 煩 惱 の こ と で あ つ て 、 之 れ を 以 て 煩 惱 魔 を 降 伏 す る こ と で あ る 。 は 一 切 法 の 因 を 離 る ゝ こ と を 悟 る 三 摩 地 門 で あ る 。 煩 惱 よ り 業 と 生 と を 生 す る が 故 に 、 若 し 煩 惱 な け れ ば 業 生 を も ま た 生 せ ず 生 な け れ ば 死 も ま た 無 き 故 に 之 れ を 悟 る こ と に 依 つ て 死 魔 を 降 伏 す る の で あ る 。 此 の 如 く 、 諸 法 本 來 不 生 等 の 方 法 で 、 空 性 の 自 性 を 悟 る 門 が で あ つ て 、 諸 法 は 虚 空 の 如 し と 説 い た の で あ る 。 此 等 の 三 摩 地 を ば 俗 諦 の 方 面 よ り 、 等 の 文 字 を 大 地 等 の 輪 と し て ま た 説 明 す る の で あ る 。 の 門 よ り 證 入 し た 三 摩 地 を 以 て 葱 魔 を 降 伏 す る 。 そ の 蘊 は 堅 固 で あ つ て 且 つ 重 荷 を 載 せ 得 る も の で あ る 。 そ の 如 く に そ れ に 随 順 し て 此 の が 地 輪 と な る 。 之 れ 地 は ま た 堅 固 に し て 重 荷 を 載 せ 得 る も の な る が 故 で あ る 。 よ り 分 別 を 離 れ た る 三 摩 地 門 を 成 ず 、 之 れ 分 別 等 の 垢 を 清 淨 に な す も
の で あ る 。 そ の 如 く に よ り 水 輪 を 成 す 、 之 れ ま た そ れ に 随 順 し て 垢 を 清 淨 に す る か ら で あ る 。 よ り 一 切 法 離 塵 垢 の 三 摩 地 門 を 戒 ず 、 之 れ 貪 染 等 の 煩 惱 を 焼 く も の に し て 、 そ の 如 く に そ れ と 随 順 し て 、 よ り 火 輪 を 成 す る の で あ る 。 火 は 一 切 の も の を 焼 い て 空 無 に す る が 故 で あ る 。 之 れ と 同 じ 様 に 、 よ り 一 切 法 離 因 の 三 摩 地 門 を 成 す 、 之 れ 煩 惱 の 因 よ り 生 じ た る 業 等 を 消 散 す る が 故 で あ る 。 之 の 如 く に よ り 風 輪 を 成 ず 、 之 れ ま た そ れ に 随 順 す る の で あ つ て 、 風 は 一 切 の も の を 消 散 し 、 若 く は そ れ を 破 壊 す る 自 性 な る が 故 で あ る 。 よ り し て 、 一 切 法 空 に し て 、 虚 空 の 自 性 な る こ と を 悟 る 三 摩 地 門 を 成 ず 、 そ の 如 く に よ り し て 空 輪 を 成 す 、 之 れ 虚 空 の 自 性 に 合 致 す る が 故 で あ る 。北京板第六十五函下百二十葉已 下 と 、 以 て 五 字 を 五 大 と す る 意 趣 を 知 る べ き で あ る 。 之 れ 地 水 火 風 空 を 以 て 堅 濕 嬬 動 無 碍 と す る 原 始 佛 教 の そ れ と は 全 く そ の 意 義 を 異 に し て 居 る の で あ る 。 此 の 密 教 の 五 大 を 本 と し て 、 更 に 黄 、 白 、 赤 、 黒 、 青 の 五 色 を 之 れ に 配 し 定 め た の で あ る 。 原 始 佛 教 で は 顯 色 を ば 青 、 黄 、 赤 、 白 、 影 、 光 、 明 、 暗 、 雲 、 煙 、 塵 、 霧 の 十 二 種 と し 、 唯 識 大 乘 で は 更 に 空 一 顯 色 を 加 へ て 十 三 種 と す る に 對 し 、 此 の 五 色 を 以 て 一 切 顯 色 の 根 本 と す る は 全 く 霜 教 の 特 色 で あ る 。 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 五
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 六
六
、
密
教
に
於
け
る
五
形
と
五
輪
原 始 佛 教 に 依 る と 、 一 切 の 形 色 の 根 本 は 長 、 短 、方 、 圓 、 高 、 下 、 正 、 不 正 の 八 で あ る と し 、 唯 識 大 乘 で は 之 れ に 粗 、 細 の 二 を 加 へ て 十 と し て 居 る 。 そ れ に も 拘 ら ず 、 眞 言 密 教 で は 方 . 圓 、 三 角 、 半 月 、 團 形 の 五 種 を 以 て 一 切 形 色 の 墓 本 と し て 居 る 。 こ れ ま た 眞 言 密 教 の 特 色 と 云 つ て 可 い 。 そ も 何 故 に 一 切 の 形 色 の 中 で 、 特 に 此 の 方 、 圓 、 三 角 、 半 月 、 團 形 の 五 を 擇 ん だ か と 云 ふ こ と を 考 へ て 見 る 必 要 が あ る 。 思 ふ に 此 は 絶 對 體 を 象 徴 す る に 五 字 、 五 大 を 以 て し た と 共 に 、 そ の 五 大 に 形 色 を 附 し 、 之 れ を 以 て 更 に 絶 對 體 を 象 徴 せ ん と し た 結 果 に 外 な ら な い 。 そ れ に し て も 、 何 に 基 い て 此 の 方 、 圓 、 三 角 、 半 月 團 形 を ば 地 水 火 風 空 の 形 と 考 へ る 様 に な つ た か と 云 ふ こ と で あ る 。 水 輪 中 に 立 つ 須 彌 山 の 基 底 が 方 形 で あ り 、 火 の 燃 ゆ る 形 が 三 角 に 類 す る か ら 、 之 れ を 方 形 若 く は 三 角 と し た と し て も 、 何 故 に 水 の 形 が 圓 形 で あ り 風 の 形 が 半 月 で あ り 、 空 の 形 が 團 形 で あ る の か 、 之 れ に 對 し 、 大 日 経 悉 地 出 現 品 に は 智 者 眉 間 に 、 深 青 の 半 月 を 觀 ぜ よ 、 憧 旛 を 吹 動 す る 相 な り 。 と 説 い て あ る 。 之 れ に 依 つ て 考 へ る と 、 半 月 を 風 の 形 と す る こ と は 風 が 憧 旛 を 吹 動 し 、 そ れ が 曲 線 を 書 い て 恰 も 半 月 に 似 た 形 を な す 上 か ら 思 ひ つ い た も の ら し い 。 更 に 大 日 経 悉 地 出 現 品 に 於 け る ﹃ 端 嚴 遍 金 色 、 四 角 金 剛 標 ﹄ の 文 を 釋 す る 時 、 佛 陀 瞿皿 耶 の 大 日 徑 疏 に は 註 し て 、 水 輪 を は 蓮 花 を 以 て 表 し 、 火 輪 を ば 三 角 印 を 以 て し 、 風 輪 を ば 旛 の 相 を 以 て 示 す 。と し て 居 る 。 之 れ に 依 つ て 考ふ る に 、 水 輪 を 圓 形 と す る こ と は 水 中 に 抽 出 す る 合 蓮 か ら 思 ひ つ い た に 蓮 ひ な い 。 最 後 に 塞 を 團 形 と す る 由 來 如 何 と 云 ふ に 、 頼 寶 師 の 體 大 東 聞 記 な ど で は 團 形 と は 方 圓 不 二 の 衆 形 具 足 の 姿 な り 。 謂 く 上 は 三 角 、 下 は 半 月 、 二 相 を 合 し て 團 形 と な す 。 と 云 ふ 様 に 解 釋 し て あ る け れ ど も 、 此 は 後 の 獨 断 的 の 解 釋 で 、 團 形 と 云 ふ 語 は 秘 密 の 経 典 に 於 て も 、 大 師 の 章 疏 に 於 て も 説 か れ て な い 。 恐 ら く 、 覺 鑁 上 人 が 五 字 略 頌 等 に 用 ひ ら れ て あ る の が 最 初 か と 思 は れ る 。 大 日 経 疏 第 十 四 に は ﹁ 半 月 の 中 に唸 冶 字 を 置 け 、 點 の 中 に 欠 字 を 置 け 。 ﹂ と あ っ て 、 空 點 を 以 て 虚 空 の 形 と し て 居 つ た こ と が 分 る 。 之 れ そ の 空 點 が 虚 空 の 義 を 表 す る か ら で あ る 。 然 る に そ の 畫 い た 空 點 が 團 丸 の 形 で あ る か ら 、 之 れ を 團 形 と 名 け た も の ら し い 。 か く て 五 大 の 形 と し て の 方 圓 三 角 半 月 空 點 の 五 形 が 出 來 、 此 の 五 形 説 が 成 立 す る と 共 に 、 之 れ を 器 界 觀 に 應 用 し て 謂 ゆ る 五 輪 觀 な る も の が 出 來 た の で あ る 。 原 始 佛 教 で は 宇 宙 の 成 立 を ば 地 水 風 の 三 輪 若 く は 地 水 風 空 の 四 輪 に 依 る と す る の が 通 例 で 、 長 阿 含 第 十 八 、 起 世 因 本 経 第 一 、 起 世 経 第 一 、 樓 炭 経 第 一 、 立 世 毘 曇 第 一 、 倶 舍 論 第 十 一 等 の 説 は 何 れ も 之 れ で あ る 。 た ゞ 一 の 異 例 と し て 培 一 阿 舍 第 三 十 七昃三、六右 に 地 水 火 風 空 の 五 輪 が 説 か れ て 居 る 。 併 し 五 輪 説 と 云 つ た 所 で 、 此 等 の 五 輪 が 方 圓 三 角 等 の 五 形 を な し て 居 る と 云 ふ 説 で は な い 。 原 始 佛 教 で は 水 輪 で も 火 輪 で も 風 輪 で も 李 圓 形 の も の 即 ち 、 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 七
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 八 チ ャ ク ラ ヴ ー ダ と し て 考 へ ら れ て 居 つ た に 過 ぎ な い 。 宇 宙 構 造 の 五 輪 の 形 を ば 方 圓 三 角 半 月 空 點 の 五 形 と 見 た の は 霜 教 の 特 質 で 此 の こ と は 秘 藏 記 の 中 に も 説 明 し て あ る 通 り で あ る 。 以 上 の 器 界 五 輪 觀 を ば 推 し 進 め て 、 更 に 有 情 の 上 に 應 用 し た の が 、 か の 大 日 経 第 五 第 七 等 に 説 け る 五 字 嚴 身 觀 で 、 我 等 の 一 身 は 本 初 不 生 、 離 言 説 、 離 塵 垢 等 の 五 種 の 屬 性 を 有 せ る 絶 待 界 の 顯 現 な る と 共 に 、 之 れ を 文 字 に 示 せ ば 五 字 と な り 、 性 徳 を 以 て せ ば 五 大 と な り 、 形 を 以 て 表 せ ば 五 形 と な る の で 此 の 象 徴 を 統 一 し た も の が 即 ち 五 輪 塔 婆 で あ る 。 故 に 密 教 で は 此 の 五 輪 塔 婆 を 以 て 絶 對 界 の 象 徴 た る 大 日 如 來 そ の も の を 表 は す と す る の で あ る 。 七 、 悉 地 出 現 の た め の 五 大 觀 五 輪 觀 で も 、 五 字 嚴 身 觀 で も 、 約 ま る 所 は 此 の 宇 宙 も 此 の 一 身 も 共 に 絶 對 界 の 表 現 に 過 ぎ な い こ と を 觀 ず る 外 は な い の で 、 此 は 全 く 純 宗 教 的 の も の で あ る 。 然 る に 密 教 で は 、 神 道 を 得 、 若 く は 不 可 思 議 力 を 得 る た め に ま た 五 大 觀 を 修 す る こ と を 説 く 。 此 が 悉 地 出 現 の た め の 五 大 觀 で 、 大 日 経 悉 地 出 現 品 中 に 説 け る 攝 持 法 等 が 即 ち そ れ て あ る 。 い ま 佛 陀 瞿皿 耶 の 疏 を 本 と し て 、 そ の 要 點 を 説 明 す る と 、 初 に 諸 法 の 本 性 は 絶 對 體 の も の な る こ と を 觀 察 し た る 後 、 そ の 絶 對 を 表 す る 大 日 如 來 が 地 輪 た る 方 形 の 曼 茶 羅 に 佳 す る こ と を 思 念 し 、 次 に そ の 大 日 如 來 が 即 ち 自 身 な る こ と を 觀 ず る 、 そ れ と 共 に 一 身 の 上 に そ の 絶 對 體 の 屬 性 を 表 す る 五 大 の 字 義 を 観 ず る の で あ る 。
先 づ 字 の 攝 持 の 法 か ら 説 明 す る と 、 此 の 字 が 金 色 を な し て 身 中 に 満 ち 、 息 風 と 共 に 鼻 の 孔 よ り 出 で ゝ 外 界 に あ る 病 人 な ど の 鼻 の 孔 よ り 入 り て 、 彼 の 身 體 中 に 遍 満 す る こ と 、 恰 も 水 中 に 綿 の 廣 が れ る が 如 く で あ る 。 そ の 綿 が 病 人 の 一 切 の 疾 病 を 吸 收 し て 、 集 つ て 一 の 字 の 自 性 と な り 、 再 び 病 人 の 鼻 孔 よ り 出 で ゝ 息 風 と 共 に 返 り 來 り て 、 自 の 鼻 孔 よ り 入 り て 自 の 體 中 に 滿 つ と 觀 す る 、 此 の 觀 に 依 り て 一 切 の 他 の 疾 病 を 平 癒 せ し む る こ と が 出 來 る と 云 ふ の で あ る 。 そ の 如 く に 此 の 字 を 以 て 他 人 の 心 を 自 身 に 攝 持 す る と 他 の 八 の 心 を 自 由 に す る こ と が 出 來 る 。 若 し 他 人 を 呼 び 寄 せ ん と 欲 す る な ち ば 、 そ の 嚢 字 が 他 の 眼 根 等 に 充 満 し 、 そ れ を 自 身 に 攝 持 す る 様 に 觀 ず る と 、 實 際 に 於 て 他 人 が 來 る こ と に な る 。 若 し 爭 圏 な ど を 鎭 定 せ ん と 思 ふ 時 に は 、 此 の 字 大 地 の 曼 茶 羅 に 佳 し 、 爭 闘 者 の 頭 上 に 須 彌 山 を 思 惟 す る と 、 そ の 力 に 依 つ て 之 れ を 鎭 定 す る こ と が 出 來 る 、 更 に 同 一 の 方 法 で 可 字 を 觀 ず る ど 一 切 の 患 を 除 き 、 難 調 者 を 降 伏 す る 二 と が 出 來 、 ま た 字 を 修 觀 す る と 一 切 の 煩 惱 と 災 厄 と を 除 き 、 字 を 觀 す る 三 切 の も の を 摧 壊 す る こ と が 出 來 る北京第六十五 函 下 一 二四葉已下の取 意 と 云 ふ の で め る 。 此 の 五 大 觀 の 上 に 不 可 思 議 力 を 認 め 、 之 れ に 依 り て 悉 地 を 得 る こ と が 出 來 る と 云 ふ 思 想 は 、 遠 く は 原 始 佛 教 の 十 偏 處 觀 に 由 來 し 、 近 く は 諸 法 を 唯 心 の 變 現 と し て 、 一 心 に 萬 法 を 自 由 に し 得 る 力 あ り と す る 喩 伽 論 の 十 偏 處 觀 に 基 い て 居 る こ と は 想 像 す る に 難 く は な い の で あ る 。 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 一 九
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 ○ 八 、 高 祖 の 六 大 縁 起 説 已 に 説 け る 如 く 、 大 日 経 に は 絶 對 界 を 象 徴 し て 、 五 字 五 大 五 色 五 輪 五 形 等 と 證 い て あ る 。 併 し 第 六 識 大 の こ と は 説 い て な い 。 然 る に 初 會 の 金 剛 頂 経 の 別 序 の 中 に は 、 此 の 絶 對 界 を 大 普 賢 金 剛 薩捶 と し 此 の 普 賢 金 剛 薩 捶 よ り 曼 茶 羅 三 十 七 尊 を 初 め 、 器 界 草 木 等 の 一 切 の も の を 出 生 す る こ と を 説 い て 居 る 此 の 経 文 の 内 容 を 明 瞭 に 知 る た め に は 、 釋 迦 彌 恒 羅并 に 慶 喜 藏 の 釋 を 参 照 す べ き で あ る 。 此 の 普 賢 金 剛 薩 捶 と は 堅 固 不 壊 な る 金 剛 智 心 の 本 質 の こ と で あ る か ら 、 高 祖 は 之 れ を 以 て 第 六 識 大 と し 、 大 日 経 の 五 大 に 合 し て こ れ を 六 大 と し た の で あ る 。 さ れ ば 高 祖 の 謂 ゆ る 第 六 識 大 と は 、 か の 倶 舍 論 等 に 説 く 如 き 有 漏 の 識 を 指 す の で は な く 、 悟 り の 心 た る 五 智 を 總 稱 し て 名 け た の で 、 原 始 佛 教 に 云 ふ 所 の 識 大 と は 全 く 之 の 意 義 を 異 に し て 居 る の で あ る 。 高 祖 の 六 大 説 は 、 か の 原 始 佛 教 な ど に 言 ふ 如 き 原 素 と し て の 六 大 で は な く 、 絶 對 界 の 風 光 を 形 容 し た 標 幟 と し て の 六 大 な る こ と は 即 身 義 の 中 に 、 六 大 説 の 證 據 と し て 引 用 せ る 大 日 経 井 に 三 摩 地 儀 軌 等 の 文 よ り 見 て 明 か で あ る 。 人 或 は 高 祖 が 即 身 義 の 中 に 六 大 を 釋 し て 四 大 等 ,心 大 を 離 れ ず 、 心 色 異 な り と 雖 も 其 性 即 ち 同 な り 。 と あ る 文 を 本 と し て 、 色 と は 四 大 等 を 指 し 、 心 と は 心 大 即 ち 識 大 を 指 し た の で 、 通 途 顯 教 に 云 ふ 所 の 原 素 と し て の 六 大 の 様 に 考 へ る か も 知 れ な い 。 已 に 頼 寶 師 の 如 き は 斯 く 解 釋 し て 、 そ の 體 大 東 聞 記 の
中 に 於 て ﹁ 色 法 の 五 大 、 心 法 の 五 智 之 れ を 開 立 す る を 六 大 と 云 ふ 也 、 心 色 異 な り と 雖 も 其 性 即 ち 同 の 故 に 。 ﹂ と 云 つ て 居 る 。 若 し 果 し て 頼 寶 師 の 云 ふ 様 に 高 祖 の 謂 ゆ る 六 大 が 一 一 別 體 で 、 通 途 顯 教 に 云 ふ 所 の 原 素 と し て の 六 大 で あ る と す る と 、 高 祖 が そ の 次 上 の 文 に 於 て ﹁ 諸 の 顯 教 の 中 に は 四 大 等 を 以 て 非 情 と し 、 密 教 に は 則 ち 此 を 説 い て 如 來 の 三 摩 耶 身 と な す 。 ﹂ と 云 ふ 説 明 が 全 く 無 意 味 に な つ て 仕 舞 ふ 。 思 ふ に 高 祖 の 意 趣 は ﹃ 通 途 顯 教 で は 此 の 四 大 等 を 以 て 物 質 と し 且 つ そ の 原 素 と し て 、 之 れ を 扱 ふ け れ ど も 、 密 教 の そ れ は 絶 對 界 の 象 徴 で あ り 標 幟 で あ る ﹄ と の 義 に 外 な ら な い 。 高 祖 の 謂 ゆ る 三 摩 耶 身 が 標 幟 を 意 味 す る こ と は 、 高 祖 自 ら そ の 即 身 義 の 中 に 於 て 、 大 日 経 の 標 幟 な る 語 を 釋 し 、 ﹃ 標 幟 と は 三 昧 耶 身 な り ﹄ と あ る に 依 つ て も 明 か で あ る 。 さ れ ば 高 祖 の 即 身 義 に 於 け る ﹃ 四 大 等 心 大 を 離 れ ず ﹄ 等 の 文 は ﹃ 四 大 等 を 以 て 象 徴 す る 絶 對 も 金 剛 薩 捶 の 心 大 を 以 て 標 幟 す る 絶 對 も 共 に 同 一 の も の で あ る か ら 、 四 大 等 の 標 幟 は 心 大 の そ れ と 離 れ た も の で は な い 。 そ の 象 微 す る 絶 對 は 非 色 非 心 で あ る か ら 、 現 象 界 に 於 て こ そ心 色 異 な り と 雖 も 其 性 同 一 な り ﹄ と の 義 に 外 な ら な い 。 更 に 高 祖 の 六 大 説 が 標 幟 と し て の 六 大 で あ つ て 、 顯 教 に 云 ふ 如 き 原 素 と し て の 六 大 で な い こ と は 、 高 祖 の 聲 字 義 の 中 に 於 て 、 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 一
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 二 ﹁ 顯 の 五 大 は 常 の 釋 の 如 し 。 密 の 五 大 と は 五 字 五 佛 及 び 海 會 の 諸 尊 是 れ な り 。 ﹂ と 公 言 せ ら れ て 居 る よ り 考 ふ る も 明 か で あ る 。 さ る に も 拘 ら ず ﹃ 古 徳 云 く 、 此 の 教 は 還 つ て 毘 曇 の 性 相 に 同 ず ﹄ な ど 云 つ て 、 之 れ を 顯 教 化 せ ん と す る は 决 し て 高 祖 の 眞 意 を 得 た も の で は あ る ま い 。 要 す る 所 、 高 祖 の 六 大 説 は 大 疏 に 於 け る 善 無 畏 三 藏 の 字 縁 起 説 と 異 つ た も の で は な い 。 善 無 畏 三 藏 が の 一 字 を 以 て 消 極 的 に 皆 空 的 に 絶 對 界 を 詮 顯 し た る に 對 し 、 高 祖 は 六 大 の 標 幟 を 以 て 妙 有 的 に 積 極 的 に そ れ を 明 示 し た の に 過 ぎ な い 。 た ゞ 高 祖 の 功 績 と し て 欽 仰 す べ き こ と は 、 標 幟 と し て の 大 日 経 の 五 大 ご 金 剛 頂 経 の 心 大 と を 合 一 し て 六 大 と し 、 之 れ に 依 つ て 兩 部 大 経 の 妙 旨 を 遺 憾 な く 統 一 し 組 織 ー 得 た と 云 ふ こ と で あ る 。 九 、 高 祖 以 後 に 於 け る 六 大 縁 起 説 高 祖 の 六 大 縁 起 説 は 已 に 説 け る 如 く 、 疏 家 の 字 縁 起 と 根 本 的 に 異 つ た も の で は な く 、 たゞ 消 極 的 に 一 阿 字 を 以 て 表 詮 し て 居 つ た 絶 對 體 を ば 六 大 の 標 幟 を 以 て 積 極 的 に 説 明 し た に 過 き な い 。 從 つ て 六 大 と 云 ふ も た い 標 幟 で あ り 屬 性 で あ つ て 純 一 絶 對 體 を 指 す 外 は な い の で あ る 。 此 の 思 想 は 高 祖 の 肉 弟 で 、 且 つ 法 流 の 根 本 た る 眞 雅 僧 正 に 依 り て そ の ま ゝ 繼 承 せ ら れ て 居 る 。 こ の 眞 雅 僧 正 の 證 を 南 池 院 源 仁 記 す と し て 妙 瑞 師 の 法 性 大 日 義 に は 左 の 如 く 引 用 せ ら れ て あ る 。 難 し て 曰 く 、 既 に 如 如 同 一 體 な ら ば 佛 の 如 き も 六 大 也 、 此 の 菩 薩 の 如 き も 六 大 也 、 同 一 と 云 ふ と 雖
も 彼 の 如 、 此 の 如 、 其 の 體 各 別 也 。 然 し て 復 會 し て 一 體 を 成 ず と 云 ふ 。 若 し 同 一 心 な ら ば 一 佛 成 覺 の 時 、 諸 の 衆 生 共 に 一 覺 を 成 ず べ し 。 亦 一 衆 生 地 獄 に 堕 す る 時 、 諸 の 衆 生 地 獄 に 堕 す べ し 。 然 る に 此 の 義 な し 。 即 ち 是 れ 本 有 よ り 各 別 の 心 な る が 故 に 修 生 に も 亦 差 別 あ る べ き を や 。 答 ふ 、 一 相 の 摩 尼 は 色 に 随 つ て 影 を 分 つ が 如 く 、 無 相 の 本 源 は 一 相 の 摩 尼 に 似 た り 。 純 一 實 相 の 體 に し て 別 異 あ る 事 な し 。 然 り と 雖 も 六 大 法 界 法 爾 に 宛 然 た り 。 是 れ 諸 法 の 實 性 な る が 故 に 外 縁 の 赤 黒 來 る 時 は 本 有 の 細 色 外 色 に 牽 か れ て 粗 色 の 相 を 現 ず 、 珠 體 を 動 か し て 諸 の 色 相 を 現 ず る に は 非 ず 、 珠 體 本 來 不 生 に し て 諸 相 を 具 す 。 外 縁 の 不 同 に 因 つ て 無 量 の 衆 相 を 現 す , 之 れ を 感 應 道 交 不 思 議 幻 と 名 く る 也 。 と 、 此 の ﹁ 一 相 の 摩 尼 は 色 に 隨 つ て 影 を 分 つ ﹂ と 云 ひ 、 ﹁ 無 相 の 本 源 は 一 相 の 摩 尼 に 似 た り ﹂ 等 と 云 ふ よ り 見 る も 、 六 大 を 以 て 象 徴 す る 實 體 が 純 一 の 絶 對 體 な る こ と が 分 る の で あ る 。 然 る に そ の 後 、 台 密 な る も の が 勢 力 を 得 て 、 東 密 の 量 を 摩 す る に 至 り 、 東 霜 家 た る も の 此 の 台 密 に 對 し て 、 何 等 か の 特 異 點 を 発 揚 せね ば な ら ぬ と 云 ふ 形 勢 に な り 、 此 所 に 事 相 上 に 於 て も 教 相 上 に 於 て も 一 法 界 説 、 多 法 界 説 な る も の が 起 つ て 來 て 、 絶 對 體 を 一 如 と 見 る が 正 意 か 、 多 如 と 見 る の が 正 意 か と 云 ふ 議 論 が 矢 釜 し く な つ て 來 た の で あ る 。 南 山 秀 翁 師 の 决 擇 材 林 に は 一 法 界 、 多 法 界 の 語 は 秘 藏 記 が 出 處 だ と 記 し て 居 る け れ ど も 、 秘 藏 記 に は 多 法 界 な る 熟 語 は な い 。 た い 一 法 界 、 諸 界 の 語 が あ る 計 り だ 。 加 ふ る に 、 後 世 の 謂 ゆ る 一 法 界 多 法 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 三
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 四 界 と は 餘 程 意 義 が 異 つ て 居 る 。 更 に ま た 高 祖 の 畔 字 義 に は 多 而 不 異 、 不 異 而 多 、 一 非一一 、 無 數 爲 一 と あ る け れ ど も 、 一 法 界 多 法 界 そ の ま ゝ の 熟 語 は な い 。 吾 人 の 管 見 で は 、 頼 喩 師 の 顯 密 問 答 抄 下 卷 に 栂 尾明惠上人 等 の 義 と し て 、 顯 乘 は 無 相 の 一 心 が 諸 法 を 作 る が 故 に 一 法 界 と 云 ひ 、 密 藏 は 本 有 の 六 大 が 諸 法 を 造 す る が 故 に 多 法 界 と 云 ふ 。 と の 文 が 引 用 し て あ る が 、 之 れ 等 が 一 番 古 い ら し い 。 此 の 一 法 界 多 法 界 な る 語 は 時 代 に よ り 人 に よ つ て 意 義 を 異 に し て を る が 、 そ の 最 初 の 意 義 は 一 法 界 と は 本 體 を 平 等 一 味 と す る こ と 、 多 法 界 と は 、 本 體 を 多 様 と す る こ と で あ つ た こ と は 明 か で あ る 。 明 恵 上 人 が 説 け る 如 く 、 顯 教 は 無 相 の 一 心 を 以 て 諸 法 の 本 體 と す る と 同 時 に 、 台 密 の 如 き も 、 大 日 経 并 に 大 疏 を 中 心 と し て 、 消 極 的 に 字 無 相 の 一 如 を 高 調 す る 、 之 れ に 對 し 、 東 密 で は 六 大 妙 有 の 性 徳 を 高 調 し て 相 對 立 す る に 至 つ た 。 恰 も 顯 教 大 乘 に 於 け る 、 入 千 偈 の 般 若 に 對 す る 勝 天 王 般 若 の 如 く で あ る 。 そ れ が 後 に は 六 大 を 性 徳 と す る だ け で は 結 局 、 台 密 の 無 相 に 同 す る 嫌 ひ あ り と の 考 へ か ら 、 道 範 師 は そ の 著 、 非 相 傳 抄 の 中 に 於 て 、 別 趣 の 方 面 か ら 多 法 界 説 を 主 唱 す る に 至 っ た 。 即 ち 一 法 界 の 義 は 顯 家 の 圓 一 眞 如 の 義 也 。 今 眞 言 の 實 義 は 衆 生 と 佛 と 各 別 の 法 界 な り 。 即 ち 多 法 界 の 義
を 眞 言 の 意 義 と 爲 す 也 。 彼 此 の 六 大 法 界 各 々 別 々 也 。 是 れ 法 相 の 入 識 は 一 切 有 情 各 々 別 々 な る に 同 じ き 也 。 と 、 之 れ 道 範 師 の 自 ら 公 言 せ る 如 く 法 相 宗 に 謂 ふ 所 の 各 々 唯 識 の 思 想 を 経 と し 、 高 組 の 畔 字 義 に 於 け る ﹃ 一 非 一 一 、 無 數 爲 一 ﹄ の 文 を 緯 と し て 立 て た 説 で あ る 。 併 し 法 相 宗 に 云 ふ が 如 く 、 各 々 唯 識 の 位 は な ほ 現 相 に し て 、 一 眞 如 の 本 性 に 結 歸 す る が 如 く 、 各 々 別 々 の 六 大 法 界 も 詮 じ つ む れ ば 純 一 絶 對 に 歸 す る こ と 、 恰 も 此 の 燈 彼 の 燈 、 別 體 な る が 如 き も 一 大 光 明 の 實 體 に 露 す る が 如 く で あ る 。 然 ら ざ る 限 り 、 六 大 の 無 碍 融 即 も 談 す る こ と は 不 可 能 で あ る 。 此 の 六 大 法 界 各 々 別 々 の 説 が 本 と な つ て 、 後 に 凡 聖 六 大 な ど の 論 則 も 出 來 た の で あ る 。 併 し 此 の 六 大 法 界 各 々 別 々 の 説 で は そ の 六 大 法 界 中 に 於 け る 六 大 各 自 の 關 係 が 明 瞭 で な い 。 道 範 師 の 遍 明 抄 第 七 に は 六 大 一 具 論 と 六 大 多 具 論 と を 列 ね て あ る け れ ど も 、 之 れ 六 大 法 界 の 位 に 四 曼 の 形 相 が 存 在 す る か 否 や の 論 で あ つ て 、 六 大 各 自 の 關 係 に は 觸 れ て 居 ら な い 。 思 ふ に 此 に つ き て は 古 來 の 説 を そ の ま ゝ 依 用 し た ま で ゞ 特 別 の 説 は な か つ た ら し い 。 道 範 師 の 後 、 百 有 餘 年 に し て 東 寺 に 頼 寳 師 あ り 、 體 大 東 聞 記 を 著 は し て 、 六 大 縁 起 を 詳 説 し 、 道 範 師 な ど の 未 だ 觸 れ な か つ た 六 大 各 自 の 關 係 を 明 に せ ん と 努 め た 様 で あ る 。 頼 寶 師 の 證 は 道 範 師 の 様 に 唯 識 論 な ど に 依 つ て 各 々 別 々 の 六 大 法 界 を 主 張 す る の で は な く 、 此 の 因 縁 所 造 の 現 象 界 を ば そ の ま ゝ 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 五
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 六 に 法 爾 の 六 大 の 顯 現 と 見 る の で 、 恐 ら く 此 は 大 佛 頂 首 楞 嚴 経 に あ る 因 線 の 六 大 そ の ま ゝ を 如 來 藏 の 性 徳 と す る 説 に 負 ふ 所 が 多 い こ と ゝ 思 ふ 。 か く て 頼 寶 師 は 性 の 六 大 を 建 て 六 大 は 諸 法 の 所 に 於 て 各 々 に 之 れ を 具 す 、 一 々 に 別 體 あ り 。 と 主 張 し て 居 る 。 此 の 六 大 の 別 體 を 主 張 す る 上 に 於 て 、 師 の 説 は 原 始 佛 教 に 於 け る 原 素 と し て の 六 大 種 に 接 近 し て 來 た 。 そ こ で 、 師 は 體 大 東 聞 記 に 於 て 、 古 徳 云 く 、 此 の 教 は 還 つ て 毘 曇 の 性 相 に 同 ず 、 深 義 更 に 問 へ 。 な ど ゝ 説 い て 居 る 。 加 之 、 原 始 佛 教 に 六 大 種 の 實 體 と し て 列 ね た る 堅 、 濕 、 煙 、 動 、 無 碍 、 了 別 や 、 そ の 屬 性 と し て 擧 げ た る 持 、 攝 、 熟 、 長 養 、 不 障 等 を 秘 密 六 大 に 配 當 す る に 至 つ て 、 密 教 の 特 色 た る 標 幟 と し て の 六 大 の 意 義 が 全 く 没 却 せ ら れ て 仕 舞 つ た と 云 つ て 可 い 。 之 れ を 要 す る に 、 高 祖以 後 の 六 大 縁 起 説 は 顯 密 對 辮 の 上 か ら 殊 更 に 、 そ の 特 質 を 發 揚 せ ん と し て 、 却 つ て 唯 識 化 し 、 原 始 佛 教 化 し た 嫌 が あ る と 思 ふ の で あ る 。 十 、 結 言 以 上 に 考 證 し 論 述 し たし注 意 事 項 を 條 書 に す る と 左 の 通 り で あ る 。 一 、 密 教 に 於 け る 六 大 の 原 語 は 原 始 佛 教 の そ れ と 同 一 で あ る け れ ど も そ の 意 義 に 異 り あ る こ と 。 二 、 眞 如 縁 起 論 な ど 云 ふ 時 の 縁 起 は 原 始 佛 教 に 於 け る 縁 起 の 語 の 轉 用 に 過 ぎ な い が 、 密 教 の 六 大 縁
起 説 の 縁 起 は 却 つ て 原 始 佛 教 の そ れ に 近 き こ と 。 三 、 五 大 原 素 説 は 古 代 印 度 古 代 希 臘 に 共 通 の 思 想 な る も 第 六 識 大 を 建 つ る は 佛 教 に 初 ま る も の ゝ 如 く 考 へ ら る ゝ こ と 。 四 、 原 始 佛 教 の 六 大 説 は 要 す る に 原 素 と し て の 六 大 な る こ と 。 五 、 原 始 佛 教 に 修 す る 十 偏 處 觀 中 の 地 水 火 等 の 五 偏 處 觀 は 喩 伽 論 を 経 て 密 教 中 に 入 り 、 悉 地 出 現 の 五 大 觀 と な り し こ と 。 六 、 顯 大 乘 に 於 て は 原 素 こ し て の 六 大 を 否 定 し 般 若 の 境 地 を 妙 有 的 に 形 容 す る 方 便 と し て 、 再 び 六 大 を 採 用 し た る こ と 。 七 、 妙 有 思 想 の 開 展 に 努 力 し た 先 達 は 羅 喉 羅 跋 陀 羅 若 し く は 龍 樹 な る が 故 に 、 密 教 の 開 祖 と し て 羅 喉 羅 若 し く は 龍 樹 を 推 す も 強 ち 無 理 な ら の こ と 。 入 、 密 教 の 六 大 縁 起 説 は 顯 大 乘 の 形 容 語 と し て の 六 大 説 を 繼 承 し 、 更 に 之 れ を 發 達 せ し め 組 織 し た る も の な る こ と 。 九 、 五 字 を 以 て 絶 對 體 を 象 徴 す る と 共 に 、 之 れ に 配 合 し て 出 來 た も の が 密 教 の 五 大 な る こ と 、 從 つ て そ の 指 示 す る 意 義 は 原 飴 佛 教 の そ れ と は 全 く 異 な る こ と 。 十 、 大 日 経 に 説 け る 五 形 、 五 輪 の 説 は 全 く 密 教 特 有 の 説 な る こ と 。 六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 七
六 大 縁 起 説 の 史 的 考 察 二 八 十 一 、 高 祖 の 六 大 説 は 大 日 経 に 説 け る 標 幟 と し て の 五 大 と 金 剛 頂 経 に 於 け る 金 剛 薩 捶 の 心 大 と を 合 し た る も の な る こ と 。 十 二 、 此 の 兩 部 大 経 の 妙 旨 を 一 丸 と し 、 六 大 と し た る 所 が 高 祖 の 創 見 で あ つ て 、 そ こ に 高 祖 の 六 大 説 の 特 色 が あ る こ と 。 十 三 、 高 祖 以 後 の 六 大 縁 起 説 は 顯 密 對 辮 の 上 か ら 殊 更 に 妙 有 の 徳 を 發 揚 せ ん と し て 、 却 つ て 唯 識 論 化 し 、 原 始 佛 教 化 し た る 嫌 あ る こ と 。 ( 完 )