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イ ト ウ の 生 息 環 境 保 全の た め の 基礎 的 研 究 学 位 論 文 内 容 の要 旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 佐 川 志 朗

学 位 論 文 題 名

イ ト ウ の 生 息 環 境 保 全の た め の 基礎 的 研 究 学 位 論 文 内 容 の要 旨

1. 1997年cDjh‑I)II法 改 正 前 ま で は 河 川 事 業 の 考 え 方 の 柱 は 治 水 お よ て 屏 怺 で あ り 自 然 環 境 保 全 に 対 す る 配 慮 は 十 分 で は な か っ た . 上 流 域 に は 防 災 ・ 利 水 目 的 で 多 数 の ダ ム が 建 設 さ れ 。 中 流 か ら 下 流 喊 の 蛇 行 河 川 は 直綿 化 さ れ , 洪 水 時 の 通 水 障 害 に な る と い う 理 由 で 河 畔 粥 戈 採 , 河 道 内f 1J71<の 除 去 カ 鞆 あ 加 て き た し か し 近 亀 自 然 嬲cDf全 に 封 艮 を 風 ヽ たii或 管 理 に 対 す る 祉 黼 羇 青 | 嫻 し て き て お り , 諸 外 国 で | 蟻 々 なm. 鰥 ― 渥 開 さ れ て い る . 我 が 国 に お い て も 河 川法 の 改 正 , 環 境 影響 評 価 法 や 自 然 再生 推 進 法 の 制 定 | こ伴 い ヽ 景 観 や 生態 系 保 全 を 目 的 と し た 拒I暗 理 が 求 め ら れ て お り , 効 黯 拘 ・ 効 率 的 な 流 峻 管 理 手 法 を 検 討 し て い く 必 要 が あ る ,   本 研 究 で は , 河 川 生 態 系 の 厦 景 に 立 ち , 水 系 全 体 を 利 用 す る と 考 え ら れ て い る 日 本 最 大 の 淡 オ 漁 で あ る イ ト ウ を 題 材 と し , 緩 勾 配 丘 陵 地 J)f| に お け る 本 種 の 河 川P晰 岬 様 式 お よ び 生 息 場 所 環 境 を 明 ら か に し た. さ ら に , こ れ ら の 緒 瓢 こ 駘 字 の 知 見 を カ 田 未 し て , 今 ま で 明 ら か と さ れ て い 斌 カ めた イ ト ウ の 蛍 蔀 と 矧生 を 接 示 し , 本 種鄭 絶 減 危 惧 種 に 至 っ た 要 因 お よ び 保 全 の た め の 河 川 管 理 の あ り 方 を 考 察 し た , な お , イ ト ウ の 生 活 史 に つ い て は不 明 な 点 が 多 く , 廊 漁 に つ い て の 研 夢 辞 晧は , 早 着g輯 こ お け る J)IIヒ 流ik‑caの産 卵 生 態 に 限 定 さ れ, 産 夢f瑚 か ら 翌 年 の 産 刑 調 ま で の7田 ‖ 中 淵 或 か ら ― 聞 臓 で の 生 勘 昜 所 利 用 に つ い て は , 今 ま で 研 究 が 実 施 され て こ な か っ た .ま た 未 成 魚 鱈 蝋 瞞 よ び 稚 魚 ) に つ い て は , 道 央 の ダ ム に 隔 離 さ れ た 山 地 渓 流 で の 生 ー 皀 場 所 の 知 見 は あ る も の の, イ ト ウ の 主 要 な 生 息 場 所 と な っ て い る 道 東 や 道 北 の 緩 勾 配 丘 陵 地 剛 |1で の 研 究 事 籾iIぼi鈎 生 し な か っ た ,

2. イ ト ウ の 水 系 内 分 布 様 式 お よ て 睚n遊 パ タ ー ン を 検 討 す る た め に , 水 系 次 数 を 勘 案 し て 設 け た 猿tll流 喊 の 17の 諷 蔔 蛙 三 で4季 に わ た る 捕 獲 調 査 を 実 晦 し た , そ の 結 果I成 魚 は2q次 水 流 で 若 魚 は1一4次 水 流 お よ ぴ 旧 河 道 で , 緲 漁 は1− ・4次 水 流 およ ぴ 排 冴 く 路 で ,稚 魚 は2―3次 水済 臼 § よ び 湖 財 く路 で 生 息 カ湖 された ,以 上より ,イ ト ウ は そ の 生 活 史 に 渡 っ て 各 年 級 群 が 河 川 を 広 曦 に 利 用 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た . 特 に 成 魚 は , 河 ‖中 流 か ら 下 流 曦 の4次 水 流 で 多 く 確 認 さ れ た こ と か ら , 早 春 季 に は 産 卵 域 と な る 洞 川 ― お 耐 或 との 問 で 洞 川 内 回 遊を 行 っ て い る こ と が 示 唆 さ れ た . ― 方 で 稚 魚 は , 河 川 ヒ 沸 蒟 沁 鷆J夏 に 浮 上 し た 後 ,産 卵 域 に 残 留 定 着 するfgaf#( 定 着 傴 崩 め と 浮 ヒ 後 す ぐ に 本 川 の 河 口 域 ま で 降 下 す る 個 体 雅F鬥 固 体 ) が 存 荏 す る こ と が 明 ら か と な っ た . 以 上 よ ル イ ト ウ の 生 活 史 に 抖 丶 て , 中 潮 ゝ ら 下7jFdこ カ 叫 す て の 成 魚 の 生 皀 場 既 水 系 全 体 に わ た る 稚 魚 の 生 皀 場 元 水 系 全 雉 を と お し た 成 魚 の 遡 ヒ お よ び 降 下 ; ヒ 流 喊 か ら 河 口 域 ま で の 稚 魚 の 降 下 に つ い て の 重 要 陸 を 指 摘 し た ,

3. イ ト ウ の 成 魚 が 選 択 す る 流 離 溝 維Zお よ 乙J吐 息 場所 の 物 理 環 境 特 性 を明 ら か に す る た めに , 問 寒 男 | りIf本 流 (4 次 水 お め の17. 5Km区 間 に お い て 成 魚 の 確 認 調 査 お よ ひ 骸 昭 環 境 諦 渣 を 実 施 し た . そ の 結 果 , 多 く の イ ト ウ 成 魚 の 生 息 が 確 認 さ れ 螺 積ii 109個 粥 , そ の 生 息 は 淵 に 限 定 さ れ た . さ ら に ,3回cD纏 闘 稙 ! で 常 に 生 勧 ミ

―189ー

(2)

確認された淵(生皀湘は11箇所に限定され。生ー皀・淵は非生皀淵と蝕:較して,満渤洲ヽさく(平均0. 21m/sec), 水 底 面 積 が大 き く ( 平 均1323mつ , 樹 冠 被 覆も し く は カ バー 率が 大き い(平 均32%)環 境特陸 を示し た.ま た,

生ー皀淵における最大確認数は,樹冠破覆もしくはカノくー率と,最オごナイズtあK底面積と正の相関関係が認められ た ,イト ウの廊 漁が生 息する 河If中 汾滅は ,ヒ流や‑流1或に比べてi昼去の農地盤帥鱒により河II環境ニの改変程度 が 大 き か っ た こ と を 指 摘し , 河 川 中 流 喊の 環 境 改 変 がイ ト ウ 個 体 群の 減 少 要 因 とな っ た こ と を 考察 し た .

4. イト ウの幼 稚魚が 選択す る微 生皀場 所およ びft畆 痂形) 物理蘗兜特陸を明らかにするために,狩男り1|本瀦粥 よび 支流の 雪の沢 で幼 稚魚の 確認調 直およ び物理 環境 調査を 実施し た.そ の結 果,稚 魚は本 支流の 岸寄りの浅場

( 平 均38cm) を , 幼 魚 出 蹴 のUcJ都 の 深 場 ( 平 均117cm) 篩 惆 し , そ れ ら の 箇 所m吋 凱 も , 満 勅 ミ ほ ぼ

(ソsecの 緩流域 であっ た. また, イトウ 稚魚の サイ ズと水i瓣Sよび カバ ー長と の問には有意な関係が認められ〜

成長に伴い必要とする水深およびカノや・ ̄の規模が大きくなることが示唆された.このような成長髑鍜熱こ伴う稚魚 から 幼魚^ の下流 流|b深場 ^の 生息場 所移動 は,稚 魚が底 生劃 形殉婚 望型の ,幼魚が魚類放存型の採餌楠ミ式を 持っ ことに 起因し た行 動であ ること を考察 した. さら に,稚 魚およ 乙鴎憔 にと っての 生割場 所とな るカバーを有 する様々な水深嚠黝喊およ翻瞬生物の生息場瀦脚重要陸を指摘した.

5. イ ト ウ が降 下移 動する ことの 重要陸 を鑑み ,河 川全嚇 こ設置 されて いる コンク リート 水叩部 を有す る河 川工 作 物 ( 床 固 工等 ) か ら イ ト ウが 落 下し た場合 の影 響を検 討する ために ,河 川に実 際に設 置され ている 落差2mの 水 叩 部 を 有 ナ る 床 固 工 で ニ ジ マ ス を 用 い た 落 下 実 験お よ び 生 存 分析 を 行 っ たIそ の 纔 暴 稚 魚性 存 率73%)

| こ 影 響 が み ら れ 幼 魚 性 存 率100% ) , 若 魚 は 存 率93% 冫 お よ て 廟漁 性 存 率100% ) に | 鵡繊 認 め ら れ な か っ た . 稚魚 に影響 が認め られた 要因 として は,結 合組織 翻翻 擶巒ぎ 囀の形 態形質hi髟f匕で あるこ とが考 え ら れた .続い て,落 下の影 響を緩 和さ せるた めに床 固工の 落下 部に水 深0. 7mのプー ッレ を施工 し,落差を1.3m と して 同様の 落下実 験を行 った結 果, 稚魚の 歹E亡によ る落下罵駕醫瑚食出されなかったaミ存率93%).以上より,

河 川内 に設置 されて いる横 断工作 物に 対して ,従来 から魚 類の 保全対 策とし て日を 向けて いた 魚道等 による遡上 機 能だ けでは なく, 稚魚の 落下対 策を 合めた 降下機 能への 配慮 もイト ウの生 活史保 全のた めに は泌要 であること を 指摘 した.

6. 以 上 の 結 果 に既 存 の 知 見 をあ わせ 水系 全雉に おける イトウ の生 活史特 陸を整 哩し, 保全事 頃と して次 の6 点を提示した.1:―ヒ請減におけるj竃卵場所の保全l:水系全:粥こおけるカ′くーを有する滴速の小さI t節櫛或の 保 全緲 雕 魚 の 生 息嚇cDfを錨.3: 採 餌環 境 の 保 全 (餌 : と な る 底 生動 物 お よぴ 魚類 の生皀 場所の 保錨.4: 稚 魚の降下経路の保:全5:威魚の遡ヒおよて坪筝・F経路の保:全, 6:河川中流或において櫂睦ミ鬱閉度が高く満潮洲ヽ さ く水 底 面瞶 の大き な淵 の保全 (成魚 の生ー 魯易 訴の保 全), また,j舗 潮拓以 来,主 に中 流から 下流域 で行わ tた 農地fヒ牧 草地化 が河川 環境の 改変 を引き 起こし ,ひい ては イトウ 個体群 の縮小 に影響 した 可能陸を指摘し,

上 述 し た 保 全 事 頃 の 中 で も 中 流 曦 に お け る 事 頃2,5,6の 対 策 が 緊 急 陸 を 要 す る こ と を 提 言 し た .   最後 にイト ウ保全 に向け たゴ剛lI管理 を進め るにあ たり,水系内の河川工作物に対するイトウ移動に関する影響 評価の実晦,イトウ生息場所に関するポテンシャルマップのf´日戎,および生罍場所治I』出のための技術的検p tlこつ いての 必要陸 を提 言し, 事業推 進のた めに は事業 者,研 究者および雛嚠劾ミ三位一体となり,順応的管理を実施す ることが不可欠であることを指摘した.

190 ‑

(3)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 助教授

中 村 太 丸 谷 知 前 川 光 井 上 幹

学 . 位 論 文 題 名

士 己 司

生(愛媛大学理学部)

イトウ の生息 環境保全のための基礎的研究

  

本 論 文 は , 図

27

, 表

15

を 含 む 総 頁 数

144

の 和 文 論 文 で あ り , 他に 参 考 論文

3

編 が添 え られ ている。

  

近年 , 自 然環 境 の 保全 に 主 眼を 置 いた流 域管理 に対する 社会的 要請は増 してき ており,

今 後 ,景 観 や 生態 系 保 全を 目 的 とし た効 果的・ 効率的な 流域管 理手法を 検討して いく必 要 が あ る. 本 論 文は , 河 川生 態 系 の頂 点に 立ち, 水系全体 を利用 すると考 えられて いる日 本 最 大 の淡 水 魚 であ る イ トウ を 題 材と し, 河川内 利用様式 および 生息場所 環境を解 明し, 本 種 の 生 活 史特 性 か らみ た 河 川( 流 域 )管 理 の あり 方 を 提示 す る こ とを 目 的 とし て い る.

  

1

章 で は,イト ウの研 究小史を 概説し生 活史解 明のため の研究 の必要性 を説い ている.

イ ト ウの 生 活 史に つ い ては 不 明 な点 が多 く,そ の研究報 告は成 魚では, 早春季に おける 河 川 上 流域 で の 産卵 生 態 に限 定 さ れて いた .また ,未成魚 (幼魚 および稚 魚)では ,道央 の ダ ム に隔 離 さ れた 山 地 溪流 で の 生態 知見 はある ものの, イトウ の主要な 生息域と なって い る 道 東や 道 北 の緩 勾 配 丘陵 地 河 川で の知 見は存 在しなか った. 以上より ,本種の 生活史 解 明 の ため に は ,緩 勾 配 丘陵 地 河 川の 中流 から下 流域を含 めた水 系全体に おける分 布様式 , お よ び 各 年 級 群 の 生 息 場 所 特 性 に つ い て の 研 究 が 不 可 欠 で あ る こと を 指 摘し て い る.

  

2

章 で は, イ ト ウの 水 系 内分 布 様 式お よ び 回遊 バ タ ー ンを 検 討してい る.イ 卜ウの全 年 級 群は 水 系 を広 域 に 利用 し , 特に 成 魚 は, 河 川 中流 か ら 下 流域 の

4

次 水流に生 息し, 早 春 季 には 産 卵 域と な る 河川 上 流 域と の間 で河川 内回遊を 行って いること を論じて いる. さ ら に 稚魚 は , 河川 上 流 域で 初 夏 に浮 上し た後, 産卵域に 残留定 着する個 体(定着 個体) と 浮上 後すぐに 本川の 河口域ま で降下す る個体 (降下個 体)が 存在する ことを確認している.

以上 より,中 流から 下流域に かけての 成魚の 生息場所 ,水系 全体にお ける稚魚の生息場所,

    

191

(4)

成 魚 の 遡 上 ・ 降 下 , お よ び 稚 魚 の 降 下 に つ い て の 重 要 性 を 指 摘 し て い る .    第3 章では,イトウの成魚が選択する流路単位および生息場所の物理環境特性を明らか にしている.イトウ成魚の恒常的な生息場所は淵であり,生息淵は非生息淵と比較して,

流速が小さく(平均 0 . 21m/sec ),水底面積が大きく(平均1323 耐),樹冠被覆もしくはカ バー率が大きい(平均 32 名)ことを示している.また,生息淵における最大確認数は,樹 冠被覆もしくはカパー率と,最大サイズは水底面積と正の相関関係を示すことを明らかに した.以上の成果を踏まえ,イトウの成魚が生息する河川中流域では,上流や下流域に比 べて過去の農地整備等により環境の改変程度が著しかったことを指摘し,河川中流域の環 境改変(生息淵の消失)がイトウ個体群の減少要因として強く影響したことを論じている.

   第4 章では,イトウの幼稚魚が選択する微生息場所および生息場所の物理環境特性を明 らか にしている .稚魚は 2 次および 3 次水流の岸寄りの浅場(平均38cm )を,幼魚は 3 次 水流の流心部の深場(平均117c めを利用し,それらの箇所はいずれも,流速がほぼOm/sec の緩流域であることを示している.また,イトウ稚魚のサイズと水深およびカバー長との 間には有意な関係が認められ,成長に伴い必要とする水深およびカバーの規模が大きくな ることを示している.さらに胃内容分析の結果から,稚魚は底生動物依存型の,幼魚は魚 類依存型の採餌様式を持つことを示し,前述した成長に伴う生息場所の推移は,採餌様式 の変化および相違に起因した適応的行動であることを論じている.以上より,カバーを有 す る様 々 な 水深 の 緩 流域 , および餌 生物の生 息場所保 全の重要 性を指摘し ている・

   第5 章では,床固工の水叩部へのニジマスを用いた落下実験および生存分析の結果から,

イトウの降下移動の際の落下影響を検討している.成果では,結合組織や脂肪組織等の形 態形質が未分化な稚魚に対して影響が認められた.また,床固工の落下部にプールが存在 する場合には影響が回避されることを検証している.以上より,河川内に設置されている 横断工作物に対して,従来まで注視されていた魚類の遡上機能にあわせて,稚魚の落下対 策を含めた降下機能への配慮が必要であることを指摘している.

   第6 章では,以上の成果に既存の知見をあわせ,水系全体におけるイトウの生活史特性 を示 し,事業者 ,研究者 および地 域が一体 となった 河川管理の必要性を論じている.

   以上のように本研究は,イトウの水系全体における利用様式および生息場所特性を明ら かにし,河川(流域)管理手法の構築に係わる基礎的新知見を提起したものであり,その 成果は学術・応用両面から高く評価される。よって審査員一同は、佐川志朗が博士(農学)

の学位を受ける十分な資格があるものと認定した.

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