博 士 ( 農 学 ) 山 口 拓 也
学 位 論 文 題 名
曲 uring 加嫡朋ぬ而 eSDS ・ 502 株由来 Cry8Da の 殺 虫 活 性 機 構 解 析
学位論文内容の要旨
コガネムシ類の幼虫は芝草や農産物の根を食害する害虫であり、地中に広範囲に生息 しているため、発生の予察や生息域の推定は困難である。そのため幼虫の生息域に対し て適切に殺虫剤を散布することが難しい。そこで、幼虫だけでなく成虫に対しても防除 を行うことでコガネムシ類を効果的に防除することが可能となる。当研究室で選抜され たBacillus thuringiensis galleriae SDS −502 株由来のCry8Da および
BBT2―5 株由来 のCry8Db はマメコガネに対し、幼虫だけでなく成虫にも殺虫活性を示すことが明らか にされ(Yamaguchi et al. ,2009) 、Cry8D 以外でコガネムシ類成虫に対して殺虫活性 を示すCry 夕ンバク質は報告されていない。Cry8Da のマヌコガネ成虫に対する殺虫活 性機構を解明することで、新たにコガネムシ類成虫に対して殺虫活性を示すCry トキシ ンを創出できると考えた。そこで、Cry8Da の殺虫活性機構解明を目的にマメコガネ幼 虫 お よ び 成 虫 に お け る 殺 虫 活 性 機 構 の プ 口 セ ス の 比 較 を 行 っ た 。
Cry8Daのプ口卜キシンは約130 kDa であり、マメコガネ幼虫および成虫消化液によ り
64 kDa断片、 さらにDomai ロI の
a3ヘリックスと
a4ヘリックス間のループで分子 内切断が生じ、
6 kDa断片と
54 kDa断片が生じる。カラムク口マトグラフイーによっ て6 kDa 断片と
54 kDa断片を分離できないことから、分子内切断が生じても両断片は 乖離せずにトキシンの構造を維持していると考えられた。Cry8Da トキシンの中腸消化 液による2 断片化が殺虫活性に与える影響を明らかとするため、これらの断片とマメコ ガネ中腸BBMVs との結合および、マメコガネMidgut Cells (MGCs) に対する細胞毒性 を調査した。Cry8Da トキシンの54 kDa 断片だけがマメコガネ幼虫および成虫中腸BBMVs に結合し、64 kDa 断片および
6kDa断片と中腸
BBMVsは結合しなかった。このことか ら、中腸BBMVs と結合する際に54 kDa 断片と6kDa 断片が乖離することが示唆される。
また、64 kDa 断片または54 kDa 断片と
6kDa断片の混合物をマメコガネ幼虫および成
虫から調 製したMGCs に投与した結果、54 kDa 断片と6kDa 断片の混合物はMGCs に対
して細胞毒性を発揮したが64 kDa 断片は細胞毒性を発揮しなかった。また、トキシン
投与後のMGCs は幼虫、成虫で共通してブレビングが、成虫
MGCsにおいては明確な細胞
のパーストが認められた。Cry トキシンは中腸細胞表面のレセプターと結合後、オリゴ
マー化し細胞膜に細孔を形成することで中腸細胞の浸透圧の制御不全により中腸細胞
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をバーストさせるとされている。そこで、Cry8Da トキシンを投与したマメコガネ成虫
MGCsを回収し、
Cry8Daトキシンのオリゴマーを検出した結果、トリマーおよびテトラ マーが検出されたことから、
Cry8Daトキシンも細胞膜に細孔を形成することで細胞毒 性を発揮することが示唆された。これらのことから、マメコガネ幼虫、成虫どちらにお いても
Cry8Daト キシンは
DomainIの
a3ヘリッ クスとa4 ヘリ ックス間のループにお いて分子内切断されることで殺虫活性を担うトキシンとなることが明らかとなった。
Cry
トキシンの標的特異性を決定する重要な要因であるレセプター分子の比較をマメ
コガネ幼虫および成虫で行った。リガンドブ口ッ卜解析により、Cry8Da トキシンはマ メコガネ幼虫中腸
BBMVsの約
110 kDaのタンパク質、成虫中腸BBMVs の約
150 kDaのタ ンパク質と結合することから、Cry8Da 結合夕ンバク質がマメコガネ幼虫、成虫におい て異なることが明らかとなった。よって、殺コガネムシ類成虫活性を示すCry トキシン の創出は、コガネムシ類成虫中腸BBMVs のレセプターと結合できるように改変すること で可能となると考えられる。次に、成虫中腸BBMVs 由来のCry8Da 結合夕ンバク質の粗 精製および同定を試みた。Cry8Da 結合夕ンパク質をカラムクロマトグラフイーにより 粗精製し、Cry8Da 結合夕ンパク質のべプチドマップをクリーブランド法により作製し、
生じた断片のN 末端アミノ酸配列解析を行った結果、ロ―glucosidase と相同性のある 配列が得られた。また、ロ―glucosidase に保存された一次構造とCry8Da 結合夕ンパク 質の内部配列から
degenerate oligonucleotide primerを作製し、PCR を行うことで 〆‑gl ucosidase の部分配列が増幅された。以上のことから、マヌコガネ成虫中腸BBMVs にある
Cry8Da結合夕ンパク質はロ―glucosidase であることが示唆された。今後、
汐‑glucosidase の全長をク口ーニングすると共に、Cry8Da トキシンのレセプターであ ることを証明する必要があると考えられる。
これらのことから、マメコガネ成虫由来のロ―glucosidase と結合できるようにCry トキシンを改変することで、新たな殺コガネムシ類成虫活性を示すCry トキシンを創出 できると考えられた。
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学位論 文審査の要旨 主査 副査
副査 副査
准教授 教授 教授 講師
浅野 伴戸 木村 佐原
学 位 論 文 題 名
眞一郎 久徳 淳夫
健
Bacillus 舶uringiensis galleriae SDS ・502 株由来 Cry8Da の殺虫活性機構解析
本論 文は 、 本文
64頁 から なる 和論文であり、表1 、図18 を含む。男lJ に、3 編の参 考論文 が添えられている。
コガ ネムシ類の幼虫は芝草や農産物の根を食害する害虫であり、地中に広範囲に生息 してい るため、発生の予察や生息域の推定は困難である。そのため幼虫の生息域に対し て適切 に殺虫剤を散布することが難しい。そこで、幼虫だけでなく成虫に対しても防除 を 行 う こ と で コ ガ ネ ム シ 類 を 効 果 的 に 防 除 す る こ と が 可 能 と な る 。
本研 究では、Cry8Da のマメコガネ成虫に対する殺虫活性機構 を解明することで、新 た にコ ガネ ム シ類 成虫 に対 して 殺虫 活性 を示 すCry トキ シンを創 出できると考え、
Cry8Da
の殺 虫 活性 機構 解明 を目 的にマメコガネ幼虫およぴ成虫に おける殺虫活性機 構 の プ ロ セ ス の 比 較 を 行 っ た 。 得 ら れ た 結 果 は 以 下 の よ う に 要 約 さ れ る 。
Cry8Daの プ ロト キシ ンは 約130 kDa で あ り、 マメ コガ ネ幼虫お よび成虫消化液に よ り
64 kDa断 片 、 さ ら に
domainIの
a3ヘ リ ッ ク ス と
a4ヘ リ ッ ク ス 間 の ル ー プ で 分 子内 切断が生じ、6 kDa 断片と54 kDa 断片が生じる。カラムクロ マトグラフイーに よ って
6 kDa断片と54 kDa 断片を分離できないことから、分子内切 断が生じても両断 片は季 離せずにトキシンの構造を維持していると考えられた。
Cry8Daトキシンの中腸 消化液 による2 断片化が殺虫活性に 与える影響を明らかとするため、これらの断片とマ メ コ ガ ネ中 腸BBMVs と の結 合お よぴ 、マ メコ ガ ネMidgut Cells (MGC8) に 対 する 細 胞 毒性 を調 査 した 。Cry8Da トキ シンの54 kDa 断片だけがマメコガ ネ幼虫および成虫 中 腸
BBMV8に 結 合 し 、
64 kDa断 片 お よ び
6kDa断 片 と 中 腸
BBMV8は 結 合 し な か っ た 。 こ の こ と か ら 、 中 腸
BBMV8と 結 合 す る 際 に
54 kDa断 片 と
6kDa断 片 が 乖 離 す る こ と が示 唆さ れ る。 また 、64 kDa 断片 また は54 kDa 断片 と6kDa 断 片の 混 合物 を マ メ コ ガネ 幼虫 お よび 成虫 から 調製 した
MGC8に投 与し た結 果、
54 kDa断 片 と6kDa 断 片 の 混合 物は
MGCsに 対し て細 胞毒 性を 発揮 した が64 kDa 断片 は細 胞毒 性 を発 揮 し なか った 。 また 、ト キシ ン投 与後のMGCs は幼虫、成虫で共通し てブレビングが、
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1073一
成 虫MGCsに お い て は 明 確 な 細 胞 の バ ー ス ト が 認 め ら れ た 。Cryト キ シ ン は 中 腸 細 胞 表 面 の レ セ プ タ ー と 結 合 後 、 オ リ ゴ マ ー 化 し 細 胞 膜 に 細 孔 を 形 成 す る こ と で 中 腸 細 胞 の 浸 透 圧 の 制 御 不 全 に よ り 中 腸 細 胞 を バ ー ス ト さ せ る と さ れ て い る 。 そ こ で 、Cry8Daト キ シ ン を 投 与 し た マ メ コ ガ ネ 成 虫MGCsを 回 収 し 、 Cry8Daト キ シ ン の オ リ ゴ マ ー を 検 出 し た 結 果 、 ト リ マ ー お よ ぴ テ ト ラ マ ー が 検 出 さ れ た こ と か ら 、Cry8Daト キ シ ン も 細 胞 膜 に 細 孔 を 形 成 す る こ と で 細 胞 毒 性 を 発 揮 す る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら の こ と か ら 、 マ メ コ ガ ネ 幼 虫 、 成 虫 ど ち ら に お い て もCry8Daト キ シ ン はdomainIのa3ヘ リ ッ ク ス とa4ヘ リ ッ ク ス 聞 の ル ー ブ に お い て 分 子 内 切 断 さ れ る こ と で 殺 虫 活 性 を 担 う ト キ シ ン と な る こ と が 明 ら か と な っ た 。
Cryト キ シ ン の 標 的 特 異 性 を 決 定 す る 重 要 な 要 因 で あ る レ セ プ タ ー 分 子 の 比 較 を マ メ コ ガ ネ 幼 虫 お よ ぴ 成 虫 で 行 っ た 。 リ ガ ン ド ブ ロ ツ 卜 解 析 に よ り 、Cry8Da卜 キ シ ン は マ メ コ ガ ネ 幼 虫 中 腸 BBMVsの 約110 kDaの タ ン パ ク 質 、 成 虫 中 腸 BBMVsの 約150 kDaの タ ン パ ク 質 と 結 合 す る こ と か ら 、Cry8Da結 合 タ ン パ ク 質 が マ メ コ ガ ネ 幼 虫 、 成 虫 に お い て 異 な る こ と が 明 ら か と な っ た 。 よ っ て 、 殺 コ ガ ネ ム シ 類 成 虫 活 性 を 示 すCry ト キ シ ン の 創 出 は 、 コ ガ ネ ム シ 類 成 虫 中 腸BBMVsの レ セ プ タ ー と 結 合 で き る よ う に 改 変 す る こ と で 可 能 と な る と 考 え ら れ る 。 次 に 、 成 虫 中 腸BBMVs由 来 の Cry8Da結 合 タ ン パ ク 質 の 粗 精 製 お よ び 同 定 を 試 み た 。Cry8Da結 合 タ ン パ ク 質 を カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー に よ り 粗 精 製 し 、Cry8Da結 合 タ ン パ ク 質 の ペ プ チ ド マ ッ プ を ク リ ー ブ ラ ン ド 法 に よ り 作 製 し 、 生 じ た 断 片 のN末 端 ア ミ ノ 酸 配 列 解 析 を 行 っ た 結 果 、 ロ ーglu( 舶ida8e と 相 同 性 の あ る 配 列 が 得 ら れ た 。 ま た 、 ロ .g・luc08ida8eに 保 存 さ れ た 一 次 構 造 とCry8Da 結 合 タ ン パ ク 質 の 内 部 配 列 か らdegenerateoligonucleotideprimerを 作 製 し 、PCRを 行 う こ と で 鹹 〆tlo鍛 洫 鉛 の 部 分 配 列 が 増 幅 さ れ た 。 以 上 の こ と か ら 、 マ メ コ ガ ネ 成 虫 中 腸BBMVsに あ るC珂8Da結 合 タ ン パ ク 質 は ロ .glu008ida8eで あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 今 後 、 ぢ 菖 ′ ‖ の 鹹 也h卵 の 全 長 を ク ロ ー ニ ン グ す る と 共 に 、C珂8Daト キ シ ン の レ セ プ タ ー で あ る こ と を 証 明 す る 必 要 が あ る と 考 え ら れ る 。
こ れ ら の こ と か ら 、 マ メ コ ガ ネ 成 虫 由 来 の ロ .gluo帖ida舶 と 結 合 で き る よ う にC珂 ト キ シ ン を 改 変 す る こ と で 、 新 た な 殺 コ ガ ネ ム シ 類 成 虫 活 性 を 示 すC珂 ト キ シ ン を 創 出 で き る と 考 え ら れ た 。
本 研 究 に よ り 、C螂Dト キ シ ン の マ メ コ ガ ネ 殺 虫 活 性 に お け る 消 化 液 に よ る プ ロ セ ッ シ ン グ の 過 程 お よ び 成 虫 に お い て ト キ シ ン レ セ プ タ ー が ロ ‐gluc08idaseで あ る こ と を 突 き 止 め 、 Cry8Dト キ シ ン の 成 虫 殺 虫 活 性 機 構 の 一 端 を 明 ら か に し た 。 よ っ て 、 審 査 員 一 同 は 、 山 口 拓 也 が 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。
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